リニア新幹線(その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない) [国内政治]
リニア新幹線については、2016年8月17日に取上げた。だいぶ月日のたった今日は、(その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない)である。
先ずは、8月30日付け日経ビジネスオンライン「「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081500232/082400010/
・『9兆円を投じるリニア新幹線プロジェクトがついに離陸した・・・リニア中央新幹線が走る各県に歓迎ムードが広がる中、1人、怒りが収まらない知事がいる。 「静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」静岡県知事の川勝平太は、そう東海旅客鉄道(JR東海)を批判する。 当初、川勝は「リニア推進派」だった。国土審議会の委員を務め、JR東海系の雑誌でコラムを担当したこともある。静岡を通過すると知って、いち早く南アルプスに登って視察した。 だが、計画が明らかになり、関係は暗転することになる』、なるほど。
・『リニアの線路で「座り込み」 リニアは静岡県北部の山中を11kmにわたってトンネルで貫く。大井川の水源を横切るため、毎秒2トンの水量が減少するという。水道水として62万人が利用しているが、毎年のように水不足に悩まされ、昨年も渇水で90日近く取水制限をした。 JR東海はトンネル内で出た湧き水を、導水路を掘削して大井川に戻し、減量分の6割強を回復させるという。 「全量を戻してもらう。これは県民の生死に関わること」。そう言い切る川勝は、工事の着工を認めない。 「もうルートを変えることも考えた方がいい。生態系の問題だから。水が止まったら、もう戻せません。そうなったら、おとなしい静岡の人たちがリニア新幹線の線路に座り込みますよ」 ルートを変える──。リニアを知り抜いた川勝は、それが不可能に近いと分かって発言しているに違いない。2014年に品川~名古屋間を着工したが、27年の開通に向けてルート変更する余裕はない。 時速500kmで東京~大阪間を1時間で走る。超高速ゆえに直線で走らなければ性能が発揮されない。今から障害物が見つかっても回避できない。 もちろん、カネと時間があれば、路線変更が可能かもしれない。だが、リニア計画に余裕は残されていない。すでに契約を結んだ工事に、開業1年前に完成するものもある。まだ契約していない区間も半分ほど残っている』、導水路で湧き水を大井川に戻しても、減量分の6割強を回復するだけと、意外に少ない感じもするが、そんなものなのかも知れない。水不足に悩まされる静岡県にとっては、確かに重大な問題だろう。
・『東海道新幹線も沈没する では、名古屋開通後に、工事をストップしての体力回復は可能なのか。 実は10年、国土交通省の審議会でリニア計画の意見聴取に立った経済評論家の堺屋太一は、こう言っていた。 「名古屋で乗り換えて大阪は非現実的です。東京~名古屋だけを造るのでは大赤字は確実。大阪まで一気に開通させる以外にない」と提言した。 だが、JR東海や推進派は、「あの発言は、大阪まで早くやれ、という意見だった」として、2段階に分けた工事計画の危険性を顧みようとしない。 さらに採算性を疑うのは、自ら「赤字事業」と認めた過去があるからだ。 13年、記者会見で社長(当時)の山田佳臣が、リニア計画は「絶対にペイしない」と答えた。だが、JRの経営陣は、「本人の意図と違う」と主張する。 「(リニア)単独のプロジェクトとして見たときには、5兆円のプロジェクトを回収するわけにはいかないですよと。やっぱり東海道新幹線と組み合わせて実現ができる」。副社長の宇野護はそう解説する。しかし、巨費を投じた超高速のサービスが赤字で、本当に全体の黒字化が達成できるのか。 「東海道新幹線だって客のほとんどが(リニアに)奪われるから収益が下がる。リニアがペイしなければ、両方沈没するんじゃないの」。立憲民主党でリニア問題を担当する衆院議員の初鹿明博はそう指摘する』、肝心の採算が心もとないのになぜ強行するのだろう。
・『「でっかいことはいいことだ」 では、なぜ巨費を投じて、JR東海はリニアという危険な挑戦に出るのか。「東海道新幹線のバイパス」。経営陣から現場社員までそう答える。1987年に国鉄の分割民営化で東海道新幹線を軸としたJR東海が発足、その取締役に就任した葛西敬之(現名誉会長)がリニア担当となる。以降、一貫してこの考え方でリニア計画を推し進めてきた。 当初は、64年にスタートした東海道新幹線が、半世紀近く大規模改修していないことから、リニアというバイパスを造れば、新幹線を止めて工事できると説明していた。 ところが、JR東海の小牧研究施設で、土木担当者に聞くと、「今の修繕技術で、東海道新幹線は半永久的に使い続けられる」という。経営陣も「完全な取り換えはまずない」(宇野)と認める。5年ほど前に、その結論に行き着いたという。すでに大規模修繕工事を始めており、2022年度に終了する予定だ。では、なぜリニア計画をやめないのか。 「1本の糸にぶら下がったクモじゃないけど、やっぱり2本あることの強み」(宇野)だという。災害時のライフラインとしての重要性を主張する。「地下は地震の揺れに強い」(宇野) だが、落とし穴もある。 「南アルプスをトンネルで貫通するが、そこには中央構造線断層帯や多くの活断層が走っている。ここに時速500kmの列車を走らせるべきではない」。南アルプスの地形や地層を調べ続ける大鹿村中央構造線博物館学芸員の河本和朗は、そう警鐘を鳴らす。 「そもそも、貨物列車がなくて、モノが運べないリニアは、災害時に役に立たない」。米アラバマ大学名誉教授の橋山禮治郎は、そう喝破する。 「でっかいことはいいこと、速いことはいいこと、という発想は時代遅れ」 橋山はかつて、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)で調査部長を務めた経歴を持ち、世界の巨大プロジェクトの失敗を調査研究してきた。 「リニアはコンコルドと同じ」。コンコルドはスピードばかりを追求したが、コストが高く、騒音や排気ガスをまき散らした。赤字続きで技術改良もままならず、事故を起こして廃止された。 ちなみに、リニアの開発を日本と競っていたドイツは、中国・上海でリニア鉄道を実現しながら、08年に国がリニア撤退を決めた。コストが予定額を大きく超えることが分かったからだ』、「リニアはコンコルドと同じ」とは言い得て妙だ。
・年間4200億円のコスト 翻って日本。1962年、国鉄時代からリニアの開発がスタートし、73年には全国新幹線鉄道整備法で開発すべき路線として決定される。国鉄の分割民営化後、JR東海と鉄道総合技術研究所が開発を引き継ぎ、山梨県に実験線を建設する。ところが、地方の整備新幹線が優先され、リニアは「夢」と消えようとしていた。 そこに2007年、JR東海が「自己負担で建設する」とぶち上げる。 09年、JR東海は調査報告書を国に提出する。そこには、驚愕の数字が並ぶ。リニアの維持運営費は年3080億円、設備更新費は年1210億円、合わせて年4290億円がかかっていく。 だが、日本では高コストがさして問題にされなかった。10年、国交省の交通政策審議会に中央新幹線小委員会が設置され、委員長に東京大学大学院工学系研究科教授(当時)の家田仁が任命される。そして、翌11年、3・11の2カ月後、国は整備計画を決定する。 リニアにGOサインを出した家田に聞いた。9兆円もかけて、世界をリードする交通システムになるのか。 「なるかもしれないし、ならないかもしれない。東海道新幹線だって、最初は『世界の3バカ』と言われたわけでね。戦艦大和と万里の長城と。だから、分からないですわ」 続いてバイパス論が展開されていく。 「東海道新幹線を止めますなんて言ったら暴動が起きるわな。やっぱり一刻も早くリニアを造って、負荷を減らしていかないと。バックアップだから」 収入が15%増えるというJR東海の予測や、経済効果が年8700億円という試算は実現するのか。 「ぼくはそんなもの気にしてない。どうしても計算したいというからやったけど、真に受けていない」 財投で3兆円も借りて、本当に返せるのか。大阪まで完成するのは、最短でも約20年後のことだ。 「20年なんてあっという間ですよ。明日みたいなもの」』、家田委員長の余りに無責任な発言にはあきれてものも言えない。やはり、交通政策審議会中央新幹線小委員会は建設承認が前提の形式的お墨付き機関だったようだ。
・『開発トップがダメ出し 家田が「明日」という未来は、どのような世界なのか。 炎天下の山梨県でリニア実験線に試乗した。JR大月駅からクルマで15分、JR東海の山梨実験センターから5両編成のリニアに乗り込んだ。 運転開始から時速150kmまでは車輪で走行する。そこから車体が浮き上がり、騒音が少し静かになる。そして2分半で時速500kmに達する。その時、振動や騒音は少し大きいが、新幹線の車内とさほど差はない。周囲とも会話ができる。逆に、減速していくと、時速300km台は徐行運転しているように感じる。そして、時速150kmでガタンという振動とともに「着陸」する。 わずか30分ほどの試乗だが、50年以上かけて開発を重ねてきた技術の完成度の高さは体感できる。ただ、車内は少し窮屈で、両側2席ずつの配列だが、座席の幅や前後のシート間隔も新幹線より狭い。それは、車両開発を主導した三菱重工業が、飛行機の構造を持ち込んだからだ。 鉄道車両の断面は、通常は四角になるが、リニアは卵のような円形になっている。飛行機の胴体と同じで、車内空間は窓側にかけて狭くなっていく。開発当初は座席上に荷台が設置できず、騒音で隣の人の声が聞こえなかった。 そこで、防音対策や、鉄道車両に近い形状への設計変更を重ね、新幹線に近い乗車感覚に仕上げてきた。 だが、そんな短時間の試乗で「いける」と思い込むのは危険な素人考えだとJR東日本元会長の松田昌士は言う。国鉄時代からの経験を基にこう話す。 「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」。高価なヘリウムを使い、大量の電力を消費する。トンネルを時速500kmで飛ばすと、ボルト一つ外れても大惨事になる。 「俺はリニアは乗らない。だって、地下の深いところだから、死骸も出てこねえわな」(松田) 品川~名古屋間は、路線の86%が地下を走行する。また、地上部分も騒音対策としてフードで覆われる場所が多くなると予想される。 なぜ、これほどトンネルが多いのか。それは、2つの都市を直線で結ぼうとするため、南アルプスなどの山岳地帯をことごとく貫通していくためだ。 もう一つの理由は、土地や建物の買収を回避できること。特に、都心部や名古屋地区は地下40m以深の「大深度地下」を通るため、法律によって公共利用と認められれば、補償する必要すらない。 人知れず、地下を掘り進める計画を練ってきたJR東海。だが、ここにきて、その全貌が水面上に姿を現し始めると、大きな摩擦を生み出している。リニア計画の先行きには暗雲が垂れ込める』、松田氏の「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」との発言には、苦笑してしまった。いくらリニアをやってないJE東日本とはいっても、豊富な人脈で本音の情報が入ってくるのだろう。
・『JR橋本駅(神奈川県)から徒歩10分。5階建てビルのオーナーに、ワイシャツ姿の男が尋ねてきたのは昨年のことだった。 相模原市役所のリニア事業対策課の職員だと名乗ると、こう切り出した。 「このビルの下をリニアが走ることになりまして、ちょっとお尋ねしたいのですが」。橋本駅の地下にリニアの駅ができることは近所の話題になっていた。リニアは通過する各県に1駅ずつ中間駅を造る。人が増え、地価が上がると噂された。だが、自分の敷地の下を通るとは思ってもいなかった。 だが驚くのは早かった』、地方自治体にまで担当課ができているとは、随分、早手回しのようだ。
・『役人をカネで味方にする 「このビル、どのくらい杭を打ってますかね」 オーナーは巨大地震にも耐えられるように、20m以上の杭を打った。業者から「200年もつ」と言われた。 「詳しく調査させていただきたいのですが、恐らくリニアにぶつかります。取り壊していただくことになるので、立ち退きか、低層への建て替えをお願いします」 突然のことに声が出ない。地元で育ち、50年以上ここで商売をしてきた。 「おまえ、JRと市民と、どっちの味方なんだ」 すると、こう返ってきた。「JR側の人間です」 JR東海が背後でカネを払っている。なぜ、自分たちで説明に来ないのか。市役所の職員相手では、強く出るわけにもいかない。 市民も分断された。立ち退きに反対する人もいる中で、早々に受諾する住民もいる。 「地形が悪くて売りにくい物件なのに、急上昇している駅前物件と同じような評価額を提示されたらしい」。東橋本に住む60代の女性はそうつぶやいた。 巨額のマネーで路線の住民を「買収」していく。しかも、交渉役は地元の自治体にカネを払って委託する。 そんなJR東海だが、住民説明会だけは自らが説明に立つことになる。ところが、その会場では荒れた株主総会のような罵声が飛び交う。 5月中旬、都内の区民プラザの壇上に6人の社員が登壇した。住民は1人につき質問3つまで。しかも、3問を続けて述べるよう迫られ、終わるとマイクを取り上げられる。すると、社員が「慎重に進めてまいります」「モニタリングします」などと具体性を欠く回答を続け、住民をいら立たせる。 「おい、答えになってないじゃないか」「質問に1つずつ答えないと、対話にならない」とヤジや怒号が飛び交う。 すると司会の若手社員が会場をにらみつけながら「ご静粛に」と大音量のマイクで繰り返す。最後は、「時間が過ぎている」として説明会を打ち切る。 JR東海の用地取得の手法は、業界内でも異例だという。大手ゼネコン幹部は、山梨や北信越で長く道路やトンネルの工事現場に携わった。道路会社は用地取得に当たって、職員が地域に溶け込むため、酒を酌み交わしながら長期間かけて信頼関係を築いていく。 一方、JR東海は自治体に交渉を任せ、最後は強制収用に踏み切る方針だ。 「土地収用法の対象事業なので、そういうことを考える時期が来るかもしれない」(副社長の宇野) だが、大手ゼネコン幹部はその手法に危険を感じるという。「マスコミが殺到する」。反対住民を押し切り、国民を味方に付ける理念や目的があるのか。 「もしかしたら、成田闘争を超えるかもしれない」』「JR東海は自治体に交渉を任せ、最後は強制収用に踏み切る方針」とは卑怯なやり方だ。
・『あふれる残土、ドーム50個分 山梨県南アルプス市宮沢地区。104世帯の小さな住宅地をリニアが縦断することが分かったのは4年ほど前のこと。自治会長の井上英磨は、JR東海の尊大な態度に反発し、「絶対に動かない」と突っぱねた。 「ちょうどここをリニアが走る」。井上が両手を広げて示した場所には、地神が祭られていた。地区内の立ち退き対象は7世帯だが、残った人にも騒音や日陰の問題が起きる。宮沢地区は、自治会で「住民の総意として反対」と決議し、JR東海の地区説明会の開催を拒否している。 山梨県では甲府盆地を横断するため、地上に高架を建設する区間が長い。そのため、住民との交渉は難航を極める。 山梨県中央市の内田学も、4年前に自分の畑を通過することを知った。「もっと北を走ると思ってたのよ」 そしてリニアのことを調べ始めた。技術者でもある内田は、大量の電力を使ってマイナス269度で超電導状態にすることや、その失敗によるクエンチ現象の事故を恐れた。 「これは地球に挑戦状を突きつけるようなものだ」。そして、反対する人々を募り、畑の桑を1本1000円で売って名札を付ける「立木トラスト」を始めた。JR東海は、一人ひとりに同意を取らなければならない。その数、700人。 「桑は神のように信仰されてきた。それを根こそぎ持っていけるのか」(内田) 山梨県は1990年にリニア実験線の建設が始まってから、すでに四半世紀が過ぎている。その間に、地元の人々はリニア工事が引き起こす問題を間近で見てきた。 慶応義塾大学名誉教授の川村晃生は、その歴史を追い続けてきた一人だ。 「リニア実験線では、トンネルから出た500万m3もの残土の置き場に困った。今回は5680万m3もの残土が出るが、どこに処分するのか」。東京ドーム約50個分といわれる残土を置く場所がなければ、掘り進むことができず、リニア計画は頓挫する。 実験線に近い笛吹市の2つの巨大な谷が、残土で平らになるほど埋められていた。「当時はアセスメントの概念がなかったから、こんなデタラメができた。今回は許されないだろう」 川村が注目しているのは、南アルプストンネルの掘削工事が始まっている早川町だ。この町に行くには、門前町として有名な身延町から、山沿いの一本道を走るしかない。途中で残土を積んだ巨大トラックと何度もすれ違う。 町内には、すでに河原や空き地に残土が積み上がっている。ゼネコン2社が、川沿いに残土を積み上げていた。一方は、12層にも積み上げるという。「予定より遅れたが、あと1カ月ぐらいで終わる」。作業員はそう苦笑いした。 早川町から出るリニア工事の残土は326万m3で、「半分は置き場が決まっている」(副社長の宇野)。裏を返せば、まだ半分の残土の行き場がない。 「知る限り、早川町にはもう、まとまった残土置き場がない。そうすると、一本道を通って、延々と違う町まで運んでいくことになる」(川村) なぜ、小さな早川町が、巨大工事を認めたのか。実は、昭和30年ごろ、ダム建設で町が潤った歴史がある。だが、工事の終了とともに町は寂れていった。 今回、リニアに協力したことで、念願だった北東に抜ける道路が建設される。盛り土方式で造られ、残土の処分場も兼ねる。だからだろう、JR東海が建設費の60億円超を負担する。「まるで麻薬漬け。地域の自然がJR東海にしゃぶり尽くされている」。近隣の住民はそうため息をつく』、地元には道路建設のアメを与えて、大規模な自然破壊が進まざるを得ないようだ。
・『その狡猾な手法は、沿線のあらゆる地域に見られる。 相模原市の山間地、鳥屋。串川が流れ、サルや鹿が生息する地に、リニアの車両基地が建設されると報じられたのは2013年夏のことだった。 「最初は、さして気にならなかった。だけど、翌年から説明会が始まって、これはおかしいと思い始めた」 周辺に土地を持つ栗原晟は、関連資料の閲覧に出向き、その規模に驚愕した。幅350m、長さ2kmにわたる広大な基地だが、驚くべきは、高さが最大で30m近くもあることだった。小学校の体育館に覆いかぶさるように造られる。 「まるで飛行場だ。残土処分との一石二鳥を狙ってるんじゃないか」 栗原はリニア計画に疑念を抱き、同志を集めて、引き込み線がぶつかる土地を11人で共同登記する「土地トラスト」に打って出た。そこに集まって、デッキや布製の屋根を作っている。 森カフェトラスト──。 そう名付けた共同作業は、回を追うごとに人数が増えてきた。直近では、30人近くが集まったが、大学生など若者が目立つようになった。 「木を伐採して眺望をよくし、音楽会などイベントを続けていく」(栗原) 山梨側から入ったリニアは、南アルプスを抜けて、反対側の長野県大鹿村に出てくる。この地の少なからぬ住民が、災害の再来を恐れている。三六災害。昭和36年、集中豪雨が伊那谷を襲い、土砂崩れや地滑りが多発。中でも大鹿村の大西山の大崩壊は災害史に残る惨事で、42人が亡くなった。 南アルプスは隆起が激しく、日ごろから山の崩落や土砂崩れが多発している。だから、トンネルの出口は危険を極める。すでに、リニア工事の影響で県道の土砂崩落事故も起きている。 それでも、JR東海はカネにものをいわせて計画を推し進めていく。「グランドに残土を置かせてくれれば、体育施設を造る」。JR東海からそう提案され、予算が乏しい村議会は了承してしまう。残土で5mもかさ上げした上にテニス場や体育館が建設される。「見上げるテニス場っておかしい。代々、『リニアグランド』と揶揄される」。村議会議員の河本明代は顔が曇る。 それでも村内で300万m3という残土は処分できず、運び出す道路のトンネル工事にJR東海は35億円を投じる。 ダンプが行き交う村で、温泉宿「山塩館」を経営する平瀬定雄は、客の減少に悩まされている。「ダンプの通らない道はありませんか」。宿に着くなり、そう聞いてくる客が後をたたない。 「村もJRに丸め込まれ、下請け会社と化している」。かつてはリニア絶対反対だったが、今では現実主義に転じた。 「やるなら早くやれ」。そして、関連の消費や下請け工事も、少ないながら、搾り取らなければならない。 「それこそ談合でもやらないと、こっちがすり切れていくだけだ」(平瀬) JR東海は、リニアの完成が遅れれば、収入のないまま巨額の投資を続けることになる。その焦りから、カネで解決しようとする。大井川の水量問題で静岡県だけが工事に入れない。そこでJR東海は静岡市と工事連携の合意を取り付けた。だが、その見返りに、地元住民が要望していた3.7kmのトンネルをJR東海が全額負担して建設する。その額は、140億円にも上る。 しかし、県知事や市民団体から猛烈な批判を浴びると、市長は大井川の問題についての発言だけ撤回。結局、JR東海は、巨額のカネを突っ込みながらも、着工のめどが立たない。 金銭面でも、止まって考える余裕がない。総工費9兆円で品川~新大阪を結ぶ計画だが、名古屋までに5兆5000億円が投じられる。工事のピークには年間のリニア投資額が6000億円になる見通しで、名古屋まで開通した27年、JR東海の借金は5兆円に達する。もし1年延びれば、千億円単位で総工費が膨らむ危険がある。当然、開業で得られるはずの収入も入ってこない。 名古屋開通後、そのまま大阪への工事に突き進むことは財務的に難しい。そこで8年間はキャッシュフローを借金返済に充て、3兆円まで借金を減らし、再び大阪に向けて着工する。そのため、大阪開通は45年を計画する。ただ、後に解説するが、低金利の財政投融資で3兆円を調達できたため、最大で8年間の前倒しも視野に入れている。 しかし、1つの疑問が湧く。リニアが品川~名古屋を40分で結んで、どれだけの人が利用するのか。現在、品川駅と名古屋駅で、地下深くにリニア駅の建設を進めている。 「新大阪に行く人が、途中の名古屋で乗り換えるケースは少ないだろう」。JR東海の幹部もそう認める』、ここまでくると、いまさら中止はできないと突き進むのは、太平洋戦争と同じだが、中止のハードルは極めて高そうだ。
・『談合が生まれる構図 リニア談合も後から振り返れば、JR東海とゼネコンの力関係が逆転したポイントと位置づけられるかもしれない。 14年、国からリニア工事の認可が出るころ、リニア談合と呼ばれる大手4社の会合が始まっている。当時は、東京オリンピックに向けた建設需要が予想されてはいたものの、「21世紀最大のプロジェクト」といわれるリニアを前に、「JR東海から仕事をもらう」というゼネコンの姿勢は変わりなかった。 1km200億円といわれるリニアの工事費だが、都心部のトンネルは400億~1000億円の物件もある。「リニアは公共工事よりも安い」(ゼネコン担当アナリスト)ことは業界の常識となっている。 JR東海は発注に際して、施工者の技術力を評価する独自の「競争見積方式」を使っている。まず施工法や価格をゼネコンと交渉する。そして工区への技術提案などを聞いて1社に絞り込む。だが、価格交渉が不調に終われば、他のゼネコンに価格を提示させる。JR東海の立場が強ければ、「言い値」に従わなければならない方式と言える。 だが、建設業界には「汗かきルール」が存在する。調査や設計、試算などに協力したゼネコンを優先するという暗黙のしきたりだ。「設計や技術開発などの協力をして、そのコストを工事価格に乗せなければ赤字になる。それを『高すぎる』と言って他の業者に値段を聞けば、汗をかいてない分、安くなるに決まっている」。中堅建設会社のトップはそう批判する。 大成建設が、名古屋駅のリニア工事でJR東海の想定価格の3倍近い1800億円を提示した。昨年完成した駅直結の高層ビル「JRゲートタワー」を建設した際の赤字を回収するためとみられる。JR東海は清水建設と鹿島にも入札を要請するが、大成からの情報を基に、両社はさらに高い価格を出した。 リニア談合事件では、発注者であるJR東海が高値を強要された「被害者」であるかに見られがちだ。しかし、この事件に、伝統的な談合の概念は通用しない。JR東海は民間会社なので、そもそも工事の発注方法に縛られない。ところが、独自の競争見積方式で、高水準な工事技術を求めながらも価格を抑えようとしてきた。しかも、その交渉過程が見えない』、「汗かきルール」はやむを得ない一定の合理性があるが、それならば、一連の工事をセットにして入札する方式に改めるべきだろう。
・『「リニアはやりたくない」 今後、未発注のリニア工事のコストは上昇カーブを描くのではないか。 「ゼネコン業界全体がバブル期を超える最高益をたたき出している。難工事の割に安価なリニア工事は正直、やりたくないだろう」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストの水谷敏也)。人手不足もあって、生産能力の限界で工事を回している。今後、現場作業員を中心に賃上げは必須で、そのまま工事価格に跳ね返る。 だが、JR東海は早く工事契約を進めなければならない。リニア談合で国交省や東京都が大手ゼネコン4社を指名停止にしたが、JR東海はそうした処分を下していない。ゼネコンはその足元を見透かしている。 「(発注が)止まったらJR東海が困る? そうでしょうね」(清水建設副社長の東出公一郎) 鹿島常務の勝見剛は、一般論としてこう語った。「官工事は途中でコストが変わっても、その分を払ってくれる。民間の場合は渋るし、カネがないケースもある」 JR東海は名古屋開通の期限に追い立てられている。 昨年、三菱重工がリニアの車両製造から撤退したと報じられた。車両開発をリードしてきた会社に何があったのか。取材すると思いがけない答えが返ってきた。 「いや、数年前に撤退しています。なぜ、昨年になって記事が出たのか分かりません」。撤退時期や理由を聞くと、「厳しい守秘義務契約になっていて、こちらからリニアの話は一切できない」と回答を断られた。 JR東海に聞いた。 「こちらの予算と懸け離れていた。2~3割というレベルではなくて、もう倍とか、交渉の余地がない数字でした」。JR東海のリニア開発本部長だった特別顧問の白國紀行は、そう破談の経緯を説明する。 リニアに飛行機技術を持ち込み、時速500kmを実現させた立役者の撤退劇──。 事情を知る関係者は重い口を開く。「先頭車両という困難なところだけを生産させられ、もうかる『どんがら(中間車両)』はやらせてもらえなかった」。先頭車両だけでは量産効果が出せなかったのか。そして残ったリニアL0系の生産実績があるのは、赤字の子会社、日本車輌製造だけになった。 すべてを闇の中でひた隠しにしながら、リニア計画を推し進めるJR東海。そして、膨張するコストと矛盾は、制御不能な域に達しようとしている。 だが、狡猾なJR東海は、まさかの時の「カネづる」を確保している。それは、国民を巻き込む巨大な仕掛けだった』、リニアに飛行機技術を持ち込み、時速500kmを実現させた立役者ながら撤退せざるを得なかった三菱重工も気の毒だ。「国民を巻き込む巨大な仕掛け」は次の記事だ。
次に、8月30日付け日経ビジネスオンライン「財投3兆円投入、リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081500232/082400011/
・『談合問題や企業の撤退などに揺れるリニア新幹線には、安倍首相の号令のもと財投3兆円が投入されている。葛西JR東海名誉会長という「無二の親友」への巨額融資。森友学園や加計学園への「お友だち優遇」の比ではない「第3の疑惑」を追うと、融資スキームの直前に、2人が頻繁に会合を重ねていた事実に突き当たる・・・無担保で3兆円を貸し、30年間も元本返済を猶予する。しかも、超長期なのに金利は平均0.8%という低金利を適用する──。 首相の安倍晋三が、2016年6月1日に記者の前で「新たな低利貸付制度で、リニア計画を前倒しする」と発表し、巨額の財投資金が、この瞬間に動き出した。「いや、あの融資条件は、他に聞いたことがないですね」。同じ財政投融資という融資スキームを扱っている日本政策金融公庫の幹部も首をかしげる。「そもそも、30年後から返すって、貸す方も借りる方も責任者は辞めているでしょうし、生きているかどうかも分からないですよね」』、もともと財投は廃止の方向だったが、政治的な「使い勝手の良さ」から残され、しかもこんな法外な条件まで付けるとは、安倍もやり過ぎだ。
・『責任者は誰だ 破格の融資スキームを設計した責任者を追った。まず、財投をJR東海に貸し付けている鉄道建設・運輸施設整備支援機構に聞いた。電話口で「うちは事務をしているだけで、来てもらっても何も話せません」という。それでも横浜市にある本社を訪ねると、組織の説明はするが、財投に話を向けた瞬間、「それは国交省でお答えいただいている」と繰り返すばかり。 ところが、国交省の幹線鉄道課に足を運んでも、「財投の専門家ではないし、融資スキームなど説明できない」という。そこで、財務省理財局の財投総括課に聞くと、「僕らが(融資条件を)設定しているわけではない。国交省さんじゃないですか」と堂々巡りになる。 そこで、借り方のトップ、JR東海社長の金子慎に財投について問うた。 答 いや、財投を借りたわけじゃありません。 問 え? 答 財投を活用して、鉄道・運輸機構から借りたんです。民間会社としてやるんだから、政府からお借りするのはダメです。民間の金融機関から借りるのと同じ条件で借りたいと思います、と。返せるか、返せないか、事業をよく見て、あなたが判断してくれ、と。 問 「あなた」というのは政府?機構? 答 政府だったり機構(だったり)、どっちでもいいんですが、貸すのが心配だったら貸さなきゃいい。向こうも納得して、私たちも納得して借りた。 問 しかし、政府も機構も、そうした融資判断ができる能力はないのでは。 答 それは向こうに失礼な話です。貸した方は貸した責任があるんですね。 問 通常の融資スキームとは相当違う。 答 だから、政府が本当に知恵を出されたということだと思います。 本当に、民間の金融機関と同じ融資条件なのか。知恵を絞れば、この破格の融資スキームがひねり出せるのか。 実は、安倍が財投融資をぶち上げる前、日本政策投資銀行を使って3兆円の融資を実行しようと画策していた。そこで、政投銀に聞いた。 「話があったとは聞きました。しかし、民間銀行はもちろん、うちでも1社に3兆円を貸し出すことはあり得ません。相手先が倒れたら、銀行も一緒に死んでしまう。うちも他の大手銀行も、1社2000億円がギリギリのラインです。30年返済据え置き? それはないでしょ」 これほど破格の3兆円融資は、官や民の判断能力をはるかに超えている。しかも、返済されなければ、公的処理をせざるを得ない。大きな政治判断なくして実行できない。 金子に問うた。 問 財投の決断は安倍首相がされたということですよね。 答 いや、それはよく分かりませんが、安倍総理以下、国交大臣、あるいは担当大臣、政府としてなさった。 問 最初に発言されたのは安倍首相だから、「安倍主導」で。 答 「安倍主導」って……。 問 ちゃんと返せると思っているから(貸した)。 答 はい』、やはり「安倍主導」だったようだ。
・『安倍、財投直前にJRタワー泊 下の表は、葛西が社長に就任してから、歴代首相との面会数を記録したものだ。社長就任後、最初に会った首相は、国鉄改革で手を組んだ橋本龍太郎だった。しかし、面会数はわずか2回で、年平均0.78回の計算になる。ところが、06年に第1次安倍政権が発足すると、1年で7回も面会する。その後、政権が変わると面会数は急落していくが、12年に安倍が首相に復活すると、その後45回(年平均8.00回)も面会を繰り返している。 アベノミクスの政策や効果を出すため、安倍は財界人の知恵が必要なのだろうが、葛西との関係は突出している。第2次安倍政権で、葛西に次ぐ面会数は経団連名誉会長(東レ相談役)の榊原定征の27回、3番手に富士フイルムホールディングス会長の古森重隆の21回と続く。 安倍を支える経済人の会、「四季の会」は葛西を中心に構成され、東大同期卒の古森や与謝野馨らが名を連ねる。幼少期を敗戦の焦土で育ち、高度成長期の職場を体験した世代だ。ちなみに与謝野は日本原子力発電に勤務経験があり、原発推進論者の代表格だった。 安倍の大親友である葛西は、14歳年上で「経済の師」のような存在に違いない。国鉄改革で、中曽根康弘、三塚博、橋本といった大物政治家を動かし、自らを「日本帝国の官僚」と表現した。その葛西が推し進めるリニア計画は、再び日本が世界の頂点を目指すシンボルと感じているのかもしれない。 14年、米国にリニアを輸出すべく、駐日大使のキャロライン・ケネディをリニア試乗に招いた。その時、安倍と葛西が乗り込み、挟み撃ちにするように売り込んだ。 そして、16年6月、安倍は財投3兆円計画をぶち上げる。 その直前の記録を追うと、安倍と葛西が頻繁に会合を繰り返していたことが分かる。約半年間で6回(年平均14.13回)にも上る。 16年5月27日。財投3兆円決定の数日前、安倍は伊勢志摩サミットを終え、米大統領(当時)のバラク・オバマと広島を訪問する。オバマを見送った後、安倍はJR広島駅からのぞみ60号に乗り、JR名古屋駅で降りた。そこで、葛西に出迎えられ、JR東海本社があるJRセントラルタワーズ内の名古屋マリオットアソシアホテルに宿泊する。 こうした会合で何を話したのか、安倍に質問状を送った。3兆円を投じて、国民にどういうメリットがあるのか。財投を追加投入する可能性はあるのか。 だが、原稿の締め切りまでに回答はなかった。 この3兆円融資は、まさに葛西の思い通りのシナリオだったのではないか。 1980年代、国鉄の若手エリートだった葛西は、井手正敬(後のJR西日本社長・会長)、松田昌士(後のJR東日本社長・会長)と「国鉄改革3人組」と呼ばれた。そして、巨額の赤字と借金に苦しむ国鉄を、分割民営化で再生させようと邁進した。 葛西は著書で、この解体的改革は、「東海道新幹線救出作戦」だったと振り返る。そのドル箱、東海道新幹線で売上高の7割を稼ぐJR東海が87年に発足すると取締役に就任。88年、常務に昇格し、その秋に関西経済連合会の会合で講演に立ち、こう話している。 東海道新幹線とリニアは一元的に経営されなければならない」「(リニア計画の)全額を民間資金で行うことは難しい。3分の2は民間資金で行ってもよいが、残る3分の1は国のカネが必要ではないか。つまりナショナル・プロジェクトとして推進しなくてはなりません。 今から30年前、まだ山梨のリニア実験線すら着手していない時、すでに葛西の頭には、明確に今のリニア計画が描かれていた。資金の3分の1は、国のカネを引っ張ってくることも。 リニアとJR東海の歴史は、葛西によって築かれたものだった。その当人に話を聞くべく、JR東海に申し入れた。だが、「4月に代表権を返上しており、今は金子が経営の責任者。彼の話したことがすべてだ」と断ってきた。 そこで、東京・荻窪の葛西邸を訪れた。平日午後9時、自宅前に軽自動車が止まり、中に数人の男が座っている。警備のためだった。そこで、休日の昼間に再び訪れた。リニアの取材だと告げると、間髪入れずこう返してきた。「それは僕でないと語れないな」』、葛西の安倍との面談回数が45回と、経団連名誉会長の榊原27回と比べても圧倒的に多いとは、驚きだ。しかも、葛西は30年前からリニアの資金の3分の1は、国のカネを引っ張ってくるという計画を描いていたとは、さらに驚きだ。只者ではないようだ。
第三に、上記の続きを8月17日付け日経ビジネスデジタル「名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/081401049/?ST=pc
・『 「(安倍から財投の話は)あったかもしれない」 「だが、財投を国からの支援と見るのは悪意によるねじ曲げ」時間は延長につぐ延長、止まらぬ2時間インタビュー・・・問 なぜ9兆円もかけてリニアなのか。 答 国鉄の分割民営でそれぞれに使命があり、うちは『東海道新幹線会社』ということですよね。しかし、輸送能力が限界に達している。ならば、バイパスを造るしかないと。すでに国の法律で決まっている中央新幹線(リニア)があり、東海道新幹線と旅客流動が同じなので、一元経営しなければならない』、なるほど。
・『“名古屋5.5兆円は大局的な想定” 問 新幹線が二重化しても、人口減少や会議のネット化が起きている。 答 そんなの30年前から言われているけど、そうなってないんだよ。 問 でも人口は実際に減少している。 答 世界の人口動態がどう変わるかということ。日本人だけの人口で測るべきではない。インバウンドが今増えている。日本で定住人口も増えていく可能性がありますね。 問 東海道新幹線の更新ではダメ? 答 東海道新幹線は1時間15本も走っている。17本が限界だから、あと2本ですよ。技術や設備を強化し、効率的な運用をしたが、もうこれ限界なんだよね。この次は東京~名古屋、名古屋~大阪、このバイパスがどうしてもいる。『バイパスはいらない』という議論はないですよね。 問 でも東海道新幹線が活躍していて、満足している人も多い。 答 いや、今はいいですよ。しかし、まだこれから世界やアジアの人口も増え、日本に定住したい人も増えてきますね。常に一定のアローアンス(余裕)を確保しないといけないと。その意味でリニアは新しい時代に即した効率性と高速性を持ったテクノロジーです。 問 当初、リニアは難しいと感じた? 答 難しいのはおカネ。借金が多かったでしょう。我々は国鉄の借金の相当部分を引き取った。新幹線でもうけて、借金を返す会社だった。ところが、借金を返し続け、金利負担が減ってきて、ゆとりができた。で、自分のカネでリニアを造りましょう、と。 問 借金も一時、2兆円ぐらいに減った。 答 そうですね。 問 名古屋までの建設費5.5兆円は、増えることはない? 答 基本的には変わらない。いろいろやっているうちに増えたり減ったりしますから、最終的にぴったりそうなるということじゃない。大局的な想定です』、ずいぶん楽観的だが、「大局的な想定」とは便利な言葉だ。
・『“談合は勝手に話したこと。我々はまったく関係ない” 問 想定がどうなるか。去年からのリニア談合の問題もありました。 答 我々はまったく関係ないからね。 問 でも、ゼネコン幹部はJR東海の工事が採算が厳しいから話し合ったと。 答 それは彼らが勝手に話したこと。要するに、彼らは『もっと高く契約を結んでくれ』と思ったんですよ。我々は『もっと安くできるだろう』と。こちらも技術者がいっぱいいますから、厳しい折衝になったと思うんだけど。 問 ゼネコンは技術開発を一緒にやってきて、利益が薄いときついと思った。 答 だから、新しいタイプの工事もあるし、ゼネコンの最新技術は各社ありますから。互いに情報交換し、勉強会をやったとは思うんですよ。 だが契約を結ぶのは、我々としてはこの範囲内で上げたい、できるはずだと思っている部分はあるし、向こうは10年もかかる工事だから、物価が変わるリスク要素もある。だから知恵を出し合い、契約を区切ったりする。この辺はプロの世界で、素人が口を出すことはない。そのつばぜり合いで、法律に触れたかどうかは彼らの話です。 問 でもゼネコンからすると、「発注者責任もあるんじゃないか」と。 答 発注者責任? 民間企業の工事ですから、公開競争入札にする必要はないので、『あそこにやらせる』という随契(随意契約)でいいわけです。その代わり金額については徹底的につばぜり合いをして、たたき合いますよね。今度は『1対1でやるぞ』ということにはなるかもしれません。しかし契約金額のつばぜり合いは大いにやったらいい。 問 金額のことでいうと、リニア車両の開発をした三菱重工が撤退した。倍ぐらい差があるという声もある。 答 1両12億円で造るということでこちら側が投げたのを、三菱重工は『それでは造れません』と言ったんですよね。今、東海道新幹線の車両というのは、1両3億円ぐらい。4倍の値段だから我々は十分造れるはずだと思いますよね。現に、日本車輌と日立は『それでやらせていただきます』と言っている』、談合問題では尻尾を掴むのは難しいと思っていた通りの展開だ。
・『“財投は自己資金。銀行から借りるのと同じ” 問 リニア9兆円を自分で出してやっていくはずが、2016年6月に安倍首相から「財投を入れる」という話が出ました。 答 あれは自己負担だよ。 問 財投ですから財投債が発行される。 答 財投債だけど、銀行から借りるのとまったく同じですから。 問 いや、無担保で3兆円を0.8%という金利で借りられないのでは。30年間も元本を返済しなくていいし。 答 財投で借りているというのは、財投機関から借りているのであって、財政出動しているわけじゃない。あたかも政府におカネを出してもらったかのごとく理解するのは間違っているのか、ねじくれているのかどっちかなんだよ』、民間銀行ではあり得ない好条件はやはり財投ならではなので、どうみても強弁に過ぎない。
・『“安倍さんの話、どっかであったかも” 問 でも、政府が決めるからこそ、安倍首相がまず宣言したわけですよね。やっぱり葛西さんが「財投で工事期間が短くできる」と安倍さんに言ったのでは。 答 僕は安倍さんには、直接はそういう話をしてないんですよね。 問 そうなんですか。 答 安倍さんを支持しているけど、何かしてくださいというお願いは、基本的にやらないことにしてます。 問 でも、安倍さんもあれだけ葛西さんと頻繁に会っていると、財投の発言の直前など話したくなるのでは。 答 そんな話は安倍さんから出ません。 問 その間、リニアの話は。 答 大阪までの着工をシームレスにやりたいという気持ちは、大阪にも政権にもありますよね。安倍総理や菅官房長官、杉田副長官にもある。そうすると、『方法はないのかな』なんて話がある。 ある日、『こういう案でやったらどうだ』というサウンドがあったのも事実。それは安倍さんが言われるだいぶ前ですよ。 問 安倍さんの方から「何とかならないか」みたいな話があった。 答 どっかであったかもしれませんね。何人かで集まったりするからね。 問 国からおカネを回してもらった。 答 いや、それは国から借りただけであって、そのおカネは金利を払って返すわけです。だからあれを『国から財政支援を受けた』というのは悪意によるねじ曲げとしか思えないよね。 問 財投を借りて国鉄も破綻した。また繰り返される危険はないのか。 答 100%繰り返されないんだって。僕は国鉄に入って財投をずっとやってきて、毎回『これは返せない』と思いながらきましたよね。運賃の値上げをすべきなのに切り下げて、差額を財投で借りるとか。黒字になるような工事じゃないのに財投を付けて、無理やりシナリオを作る。その答弁を僕は書きましたから。返せない、雪だるま(借金)が大きくなるだろうと思ったわけ。 今回のやつはまったくそう思ってないんだよ。僕は財投を散々やってきて、その上の経験に立って、今回のは大丈夫だと。 問 まさに国鉄時代の計画と同じようなものでは。 答 いや、違います。国鉄時代は全部赤字ですよ。 問 例えば、名古屋まで、のぞみプラス700円、新大阪までプラス1000円で需要予測をしています。今の国鉄の話とダブって見えるが。 答 リニアの運賃はまだ決まってないからね。 問 でも、それで需要予測をしている。 答 リニアがどういう運賃政策を取るかまったく決まってない。これから全部決めるわけですよね』、さすが安倍との話は、「請託」ととられないように慎重だ。
・『“神様が見たって、リニアはいける” 問 しかし、東海道新幹線の需要は相当落ちる。 答 ただし、京都や新横浜もあるよね。21世紀半ばの輸送機関が東海道新幹線と同じでは日本の将来のダイナミズムが失われます。そこはやっぱり飛躍しなくちゃいけない。 問 葛西さんは絶対、収支はいけると。 答 私がじゃなくて、神様が見ても、誰が見たっていけるんです。 問 でも、かつて山田社長が「リニアは絶対にペイしない」と言った。 答 山田、そんなこと思ってないよ。あれは質問が悪くて。彼に聞いてごらん。絶対黒字だと思っていますから。 問 リニアの設備更新と維持管理で年4200億円かかり、増収効果よりも大きいことを山田さんは言ったのでは。 答 あの時の計算だと開業時点の厳しいときでも両方合わせると、経常利益が630億円になる。でも今はそこから2000億円ぐらい増えている。だから僕は、収支の心配はいらないと思うよ。 問 心配しなくていい。 答 (心配は)いらない。それは保証してもいいけど。 問 今、6000億円近い経常利益が上がっている。JRグループの北海道や四国といった厳しい会社を救い、鉄道ネットワークを再構築する道はないのか。 答 鉄道は19世紀は陸の王者だったわけ。ところが、20世紀になって競争相手がいっぱい出てきました。今もう日本中に道路ができて、航空網もできている。そういう中で、鉄道が道路に転換していく部分が増えてくる。当然なんですよね。それを『嫌だ』という地元の人たちの意見もある。そういうのに付き合いながら、全国を1本に戻そうなんていうことにはなりませんよね。経済原則に反するから。我々は、与えられた使命、これを徹底的に果たす。 現に今、1260人をリニアの建設に充てている。米国にも(人を)出しています。フル稼働でやっています。それをやって初めて工事が予定通り進むんですから、ここのところ(他社との連携)に手を出す気はないのかなんていう愚問を、発しないでもらいたいですね。 問 しかし、リニアも他の鉄道網も、まったく違う事業ではないし、選択肢としてはあり得るのでは。 答 何が? だって、それぞれが会社の使命が決まっているんだから。(JR各社が)それぞれ定義されていまして、例えば東日本は首都圏の鉄道を強化する。 我々の12の在来線、全部赤字です、東海道本線も含めて。これを維持しながら、東海道新幹線を磨き上げていく。バイパスを造って、さらにゆとりを作っていくと。東海道新幹線のお客さんが切符を取れない。金曜日の夜なんて立っていますよ』、かつての山田社長発言に対する言い訳はよく分からないが、足元の好業績が絶対的な自信につながっているようだ。
・『“リニアができるまで生きていない” 問 リニアの完成で、葛西さんのやろうとしてきたことがほぼすべて実現する。 答 僕はリニアが完成するまで生きてないんじゃないかと……。 問 いやいや、そんなことはない。 答 僕も今年78歳ですから、完成するのが10年先で88歳でしょう。平均寿命を超えちゃうので、僕は。 問 88歳はもちろん、葛西さんは大阪開業まで生きているでしょう。 答 まあ、僕は目の前にある問題にベストを尽くすことを積み重ねてきましたので。リニアも新幹線も大事だし、海外展開も日米同盟を強化するという意味で大事だと思いますよね。いろいろやりますが、しかし、それは明日終わるかもしれないと。それでもいいやと思ってやるしかないよね』、したたかな怪物だ。だが、その圧倒的な権力で、社内外の反対論をねじ伏せた弊害が、最近のスポーツ団体の不祥事と重なって見える。
先ずは、8月30日付け日経ビジネスオンライン「「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081500232/082400010/
・『9兆円を投じるリニア新幹線プロジェクトがついに離陸した・・・リニア中央新幹線が走る各県に歓迎ムードが広がる中、1人、怒りが収まらない知事がいる。 「静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」静岡県知事の川勝平太は、そう東海旅客鉄道(JR東海)を批判する。 当初、川勝は「リニア推進派」だった。国土審議会の委員を務め、JR東海系の雑誌でコラムを担当したこともある。静岡を通過すると知って、いち早く南アルプスに登って視察した。 だが、計画が明らかになり、関係は暗転することになる』、なるほど。
・『リニアの線路で「座り込み」 リニアは静岡県北部の山中を11kmにわたってトンネルで貫く。大井川の水源を横切るため、毎秒2トンの水量が減少するという。水道水として62万人が利用しているが、毎年のように水不足に悩まされ、昨年も渇水で90日近く取水制限をした。 JR東海はトンネル内で出た湧き水を、導水路を掘削して大井川に戻し、減量分の6割強を回復させるという。 「全量を戻してもらう。これは県民の生死に関わること」。そう言い切る川勝は、工事の着工を認めない。 「もうルートを変えることも考えた方がいい。生態系の問題だから。水が止まったら、もう戻せません。そうなったら、おとなしい静岡の人たちがリニア新幹線の線路に座り込みますよ」 ルートを変える──。リニアを知り抜いた川勝は、それが不可能に近いと分かって発言しているに違いない。2014年に品川~名古屋間を着工したが、27年の開通に向けてルート変更する余裕はない。 時速500kmで東京~大阪間を1時間で走る。超高速ゆえに直線で走らなければ性能が発揮されない。今から障害物が見つかっても回避できない。 もちろん、カネと時間があれば、路線変更が可能かもしれない。だが、リニア計画に余裕は残されていない。すでに契約を結んだ工事に、開業1年前に完成するものもある。まだ契約していない区間も半分ほど残っている』、導水路で湧き水を大井川に戻しても、減量分の6割強を回復するだけと、意外に少ない感じもするが、そんなものなのかも知れない。水不足に悩まされる静岡県にとっては、確かに重大な問題だろう。
・『東海道新幹線も沈没する では、名古屋開通後に、工事をストップしての体力回復は可能なのか。 実は10年、国土交通省の審議会でリニア計画の意見聴取に立った経済評論家の堺屋太一は、こう言っていた。 「名古屋で乗り換えて大阪は非現実的です。東京~名古屋だけを造るのでは大赤字は確実。大阪まで一気に開通させる以外にない」と提言した。 だが、JR東海や推進派は、「あの発言は、大阪まで早くやれ、という意見だった」として、2段階に分けた工事計画の危険性を顧みようとしない。 さらに採算性を疑うのは、自ら「赤字事業」と認めた過去があるからだ。 13年、記者会見で社長(当時)の山田佳臣が、リニア計画は「絶対にペイしない」と答えた。だが、JRの経営陣は、「本人の意図と違う」と主張する。 「(リニア)単独のプロジェクトとして見たときには、5兆円のプロジェクトを回収するわけにはいかないですよと。やっぱり東海道新幹線と組み合わせて実現ができる」。副社長の宇野護はそう解説する。しかし、巨費を投じた超高速のサービスが赤字で、本当に全体の黒字化が達成できるのか。 「東海道新幹線だって客のほとんどが(リニアに)奪われるから収益が下がる。リニアがペイしなければ、両方沈没するんじゃないの」。立憲民主党でリニア問題を担当する衆院議員の初鹿明博はそう指摘する』、肝心の採算が心もとないのになぜ強行するのだろう。
・『「でっかいことはいいことだ」 では、なぜ巨費を投じて、JR東海はリニアという危険な挑戦に出るのか。「東海道新幹線のバイパス」。経営陣から現場社員までそう答える。1987年に国鉄の分割民営化で東海道新幹線を軸としたJR東海が発足、その取締役に就任した葛西敬之(現名誉会長)がリニア担当となる。以降、一貫してこの考え方でリニア計画を推し進めてきた。 当初は、64年にスタートした東海道新幹線が、半世紀近く大規模改修していないことから、リニアというバイパスを造れば、新幹線を止めて工事できると説明していた。 ところが、JR東海の小牧研究施設で、土木担当者に聞くと、「今の修繕技術で、東海道新幹線は半永久的に使い続けられる」という。経営陣も「完全な取り換えはまずない」(宇野)と認める。5年ほど前に、その結論に行き着いたという。すでに大規模修繕工事を始めており、2022年度に終了する予定だ。では、なぜリニア計画をやめないのか。 「1本の糸にぶら下がったクモじゃないけど、やっぱり2本あることの強み」(宇野)だという。災害時のライフラインとしての重要性を主張する。「地下は地震の揺れに強い」(宇野) だが、落とし穴もある。 「南アルプスをトンネルで貫通するが、そこには中央構造線断層帯や多くの活断層が走っている。ここに時速500kmの列車を走らせるべきではない」。南アルプスの地形や地層を調べ続ける大鹿村中央構造線博物館学芸員の河本和朗は、そう警鐘を鳴らす。 「そもそも、貨物列車がなくて、モノが運べないリニアは、災害時に役に立たない」。米アラバマ大学名誉教授の橋山禮治郎は、そう喝破する。 「でっかいことはいいこと、速いことはいいこと、という発想は時代遅れ」 橋山はかつて、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)で調査部長を務めた経歴を持ち、世界の巨大プロジェクトの失敗を調査研究してきた。 「リニアはコンコルドと同じ」。コンコルドはスピードばかりを追求したが、コストが高く、騒音や排気ガスをまき散らした。赤字続きで技術改良もままならず、事故を起こして廃止された。 ちなみに、リニアの開発を日本と競っていたドイツは、中国・上海でリニア鉄道を実現しながら、08年に国がリニア撤退を決めた。コストが予定額を大きく超えることが分かったからだ』、「リニアはコンコルドと同じ」とは言い得て妙だ。
・年間4200億円のコスト 翻って日本。1962年、国鉄時代からリニアの開発がスタートし、73年には全国新幹線鉄道整備法で開発すべき路線として決定される。国鉄の分割民営化後、JR東海と鉄道総合技術研究所が開発を引き継ぎ、山梨県に実験線を建設する。ところが、地方の整備新幹線が優先され、リニアは「夢」と消えようとしていた。 そこに2007年、JR東海が「自己負担で建設する」とぶち上げる。 09年、JR東海は調査報告書を国に提出する。そこには、驚愕の数字が並ぶ。リニアの維持運営費は年3080億円、設備更新費は年1210億円、合わせて年4290億円がかかっていく。 だが、日本では高コストがさして問題にされなかった。10年、国交省の交通政策審議会に中央新幹線小委員会が設置され、委員長に東京大学大学院工学系研究科教授(当時)の家田仁が任命される。そして、翌11年、3・11の2カ月後、国は整備計画を決定する。 リニアにGOサインを出した家田に聞いた。9兆円もかけて、世界をリードする交通システムになるのか。 「なるかもしれないし、ならないかもしれない。東海道新幹線だって、最初は『世界の3バカ』と言われたわけでね。戦艦大和と万里の長城と。だから、分からないですわ」 続いてバイパス論が展開されていく。 「東海道新幹線を止めますなんて言ったら暴動が起きるわな。やっぱり一刻も早くリニアを造って、負荷を減らしていかないと。バックアップだから」 収入が15%増えるというJR東海の予測や、経済効果が年8700億円という試算は実現するのか。 「ぼくはそんなもの気にしてない。どうしても計算したいというからやったけど、真に受けていない」 財投で3兆円も借りて、本当に返せるのか。大阪まで完成するのは、最短でも約20年後のことだ。 「20年なんてあっという間ですよ。明日みたいなもの」』、家田委員長の余りに無責任な発言にはあきれてものも言えない。やはり、交通政策審議会中央新幹線小委員会は建設承認が前提の形式的お墨付き機関だったようだ。
・『開発トップがダメ出し 家田が「明日」という未来は、どのような世界なのか。 炎天下の山梨県でリニア実験線に試乗した。JR大月駅からクルマで15分、JR東海の山梨実験センターから5両編成のリニアに乗り込んだ。 運転開始から時速150kmまでは車輪で走行する。そこから車体が浮き上がり、騒音が少し静かになる。そして2分半で時速500kmに達する。その時、振動や騒音は少し大きいが、新幹線の車内とさほど差はない。周囲とも会話ができる。逆に、減速していくと、時速300km台は徐行運転しているように感じる。そして、時速150kmでガタンという振動とともに「着陸」する。 わずか30分ほどの試乗だが、50年以上かけて開発を重ねてきた技術の完成度の高さは体感できる。ただ、車内は少し窮屈で、両側2席ずつの配列だが、座席の幅や前後のシート間隔も新幹線より狭い。それは、車両開発を主導した三菱重工業が、飛行機の構造を持ち込んだからだ。 鉄道車両の断面は、通常は四角になるが、リニアは卵のような円形になっている。飛行機の胴体と同じで、車内空間は窓側にかけて狭くなっていく。開発当初は座席上に荷台が設置できず、騒音で隣の人の声が聞こえなかった。 そこで、防音対策や、鉄道車両に近い形状への設計変更を重ね、新幹線に近い乗車感覚に仕上げてきた。 だが、そんな短時間の試乗で「いける」と思い込むのは危険な素人考えだとJR東日本元会長の松田昌士は言う。国鉄時代からの経験を基にこう話す。 「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」。高価なヘリウムを使い、大量の電力を消費する。トンネルを時速500kmで飛ばすと、ボルト一つ外れても大惨事になる。 「俺はリニアは乗らない。だって、地下の深いところだから、死骸も出てこねえわな」(松田) 品川~名古屋間は、路線の86%が地下を走行する。また、地上部分も騒音対策としてフードで覆われる場所が多くなると予想される。 なぜ、これほどトンネルが多いのか。それは、2つの都市を直線で結ぼうとするため、南アルプスなどの山岳地帯をことごとく貫通していくためだ。 もう一つの理由は、土地や建物の買収を回避できること。特に、都心部や名古屋地区は地下40m以深の「大深度地下」を通るため、法律によって公共利用と認められれば、補償する必要すらない。 人知れず、地下を掘り進める計画を練ってきたJR東海。だが、ここにきて、その全貌が水面上に姿を現し始めると、大きな摩擦を生み出している。リニア計画の先行きには暗雲が垂れ込める』、松田氏の「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」との発言には、苦笑してしまった。いくらリニアをやってないJE東日本とはいっても、豊富な人脈で本音の情報が入ってくるのだろう。
・『JR橋本駅(神奈川県)から徒歩10分。5階建てビルのオーナーに、ワイシャツ姿の男が尋ねてきたのは昨年のことだった。 相模原市役所のリニア事業対策課の職員だと名乗ると、こう切り出した。 「このビルの下をリニアが走ることになりまして、ちょっとお尋ねしたいのですが」。橋本駅の地下にリニアの駅ができることは近所の話題になっていた。リニアは通過する各県に1駅ずつ中間駅を造る。人が増え、地価が上がると噂された。だが、自分の敷地の下を通るとは思ってもいなかった。 だが驚くのは早かった』、地方自治体にまで担当課ができているとは、随分、早手回しのようだ。
・『役人をカネで味方にする 「このビル、どのくらい杭を打ってますかね」 オーナーは巨大地震にも耐えられるように、20m以上の杭を打った。業者から「200年もつ」と言われた。 「詳しく調査させていただきたいのですが、恐らくリニアにぶつかります。取り壊していただくことになるので、立ち退きか、低層への建て替えをお願いします」 突然のことに声が出ない。地元で育ち、50年以上ここで商売をしてきた。 「おまえ、JRと市民と、どっちの味方なんだ」 すると、こう返ってきた。「JR側の人間です」 JR東海が背後でカネを払っている。なぜ、自分たちで説明に来ないのか。市役所の職員相手では、強く出るわけにもいかない。 市民も分断された。立ち退きに反対する人もいる中で、早々に受諾する住民もいる。 「地形が悪くて売りにくい物件なのに、急上昇している駅前物件と同じような評価額を提示されたらしい」。東橋本に住む60代の女性はそうつぶやいた。 巨額のマネーで路線の住民を「買収」していく。しかも、交渉役は地元の自治体にカネを払って委託する。 そんなJR東海だが、住民説明会だけは自らが説明に立つことになる。ところが、その会場では荒れた株主総会のような罵声が飛び交う。 5月中旬、都内の区民プラザの壇上に6人の社員が登壇した。住民は1人につき質問3つまで。しかも、3問を続けて述べるよう迫られ、終わるとマイクを取り上げられる。すると、社員が「慎重に進めてまいります」「モニタリングします」などと具体性を欠く回答を続け、住民をいら立たせる。 「おい、答えになってないじゃないか」「質問に1つずつ答えないと、対話にならない」とヤジや怒号が飛び交う。 すると司会の若手社員が会場をにらみつけながら「ご静粛に」と大音量のマイクで繰り返す。最後は、「時間が過ぎている」として説明会を打ち切る。 JR東海の用地取得の手法は、業界内でも異例だという。大手ゼネコン幹部は、山梨や北信越で長く道路やトンネルの工事現場に携わった。道路会社は用地取得に当たって、職員が地域に溶け込むため、酒を酌み交わしながら長期間かけて信頼関係を築いていく。 一方、JR東海は自治体に交渉を任せ、最後は強制収用に踏み切る方針だ。 「土地収用法の対象事業なので、そういうことを考える時期が来るかもしれない」(副社長の宇野) だが、大手ゼネコン幹部はその手法に危険を感じるという。「マスコミが殺到する」。反対住民を押し切り、国民を味方に付ける理念や目的があるのか。 「もしかしたら、成田闘争を超えるかもしれない」』「JR東海は自治体に交渉を任せ、最後は強制収用に踏み切る方針」とは卑怯なやり方だ。
・『あふれる残土、ドーム50個分 山梨県南アルプス市宮沢地区。104世帯の小さな住宅地をリニアが縦断することが分かったのは4年ほど前のこと。自治会長の井上英磨は、JR東海の尊大な態度に反発し、「絶対に動かない」と突っぱねた。 「ちょうどここをリニアが走る」。井上が両手を広げて示した場所には、地神が祭られていた。地区内の立ち退き対象は7世帯だが、残った人にも騒音や日陰の問題が起きる。宮沢地区は、自治会で「住民の総意として反対」と決議し、JR東海の地区説明会の開催を拒否している。 山梨県では甲府盆地を横断するため、地上に高架を建設する区間が長い。そのため、住民との交渉は難航を極める。 山梨県中央市の内田学も、4年前に自分の畑を通過することを知った。「もっと北を走ると思ってたのよ」 そしてリニアのことを調べ始めた。技術者でもある内田は、大量の電力を使ってマイナス269度で超電導状態にすることや、その失敗によるクエンチ現象の事故を恐れた。 「これは地球に挑戦状を突きつけるようなものだ」。そして、反対する人々を募り、畑の桑を1本1000円で売って名札を付ける「立木トラスト」を始めた。JR東海は、一人ひとりに同意を取らなければならない。その数、700人。 「桑は神のように信仰されてきた。それを根こそぎ持っていけるのか」(内田) 山梨県は1990年にリニア実験線の建設が始まってから、すでに四半世紀が過ぎている。その間に、地元の人々はリニア工事が引き起こす問題を間近で見てきた。 慶応義塾大学名誉教授の川村晃生は、その歴史を追い続けてきた一人だ。 「リニア実験線では、トンネルから出た500万m3もの残土の置き場に困った。今回は5680万m3もの残土が出るが、どこに処分するのか」。東京ドーム約50個分といわれる残土を置く場所がなければ、掘り進むことができず、リニア計画は頓挫する。 実験線に近い笛吹市の2つの巨大な谷が、残土で平らになるほど埋められていた。「当時はアセスメントの概念がなかったから、こんなデタラメができた。今回は許されないだろう」 川村が注目しているのは、南アルプストンネルの掘削工事が始まっている早川町だ。この町に行くには、門前町として有名な身延町から、山沿いの一本道を走るしかない。途中で残土を積んだ巨大トラックと何度もすれ違う。 町内には、すでに河原や空き地に残土が積み上がっている。ゼネコン2社が、川沿いに残土を積み上げていた。一方は、12層にも積み上げるという。「予定より遅れたが、あと1カ月ぐらいで終わる」。作業員はそう苦笑いした。 早川町から出るリニア工事の残土は326万m3で、「半分は置き場が決まっている」(副社長の宇野)。裏を返せば、まだ半分の残土の行き場がない。 「知る限り、早川町にはもう、まとまった残土置き場がない。そうすると、一本道を通って、延々と違う町まで運んでいくことになる」(川村) なぜ、小さな早川町が、巨大工事を認めたのか。実は、昭和30年ごろ、ダム建設で町が潤った歴史がある。だが、工事の終了とともに町は寂れていった。 今回、リニアに協力したことで、念願だった北東に抜ける道路が建設される。盛り土方式で造られ、残土の処分場も兼ねる。だからだろう、JR東海が建設費の60億円超を負担する。「まるで麻薬漬け。地域の自然がJR東海にしゃぶり尽くされている」。近隣の住民はそうため息をつく』、地元には道路建設のアメを与えて、大規模な自然破壊が進まざるを得ないようだ。
・『その狡猾な手法は、沿線のあらゆる地域に見られる。 相模原市の山間地、鳥屋。串川が流れ、サルや鹿が生息する地に、リニアの車両基地が建設されると報じられたのは2013年夏のことだった。 「最初は、さして気にならなかった。だけど、翌年から説明会が始まって、これはおかしいと思い始めた」 周辺に土地を持つ栗原晟は、関連資料の閲覧に出向き、その規模に驚愕した。幅350m、長さ2kmにわたる広大な基地だが、驚くべきは、高さが最大で30m近くもあることだった。小学校の体育館に覆いかぶさるように造られる。 「まるで飛行場だ。残土処分との一石二鳥を狙ってるんじゃないか」 栗原はリニア計画に疑念を抱き、同志を集めて、引き込み線がぶつかる土地を11人で共同登記する「土地トラスト」に打って出た。そこに集まって、デッキや布製の屋根を作っている。 森カフェトラスト──。 そう名付けた共同作業は、回を追うごとに人数が増えてきた。直近では、30人近くが集まったが、大学生など若者が目立つようになった。 「木を伐採して眺望をよくし、音楽会などイベントを続けていく」(栗原) 山梨側から入ったリニアは、南アルプスを抜けて、反対側の長野県大鹿村に出てくる。この地の少なからぬ住民が、災害の再来を恐れている。三六災害。昭和36年、集中豪雨が伊那谷を襲い、土砂崩れや地滑りが多発。中でも大鹿村の大西山の大崩壊は災害史に残る惨事で、42人が亡くなった。 南アルプスは隆起が激しく、日ごろから山の崩落や土砂崩れが多発している。だから、トンネルの出口は危険を極める。すでに、リニア工事の影響で県道の土砂崩落事故も起きている。 それでも、JR東海はカネにものをいわせて計画を推し進めていく。「グランドに残土を置かせてくれれば、体育施設を造る」。JR東海からそう提案され、予算が乏しい村議会は了承してしまう。残土で5mもかさ上げした上にテニス場や体育館が建設される。「見上げるテニス場っておかしい。代々、『リニアグランド』と揶揄される」。村議会議員の河本明代は顔が曇る。 それでも村内で300万m3という残土は処分できず、運び出す道路のトンネル工事にJR東海は35億円を投じる。 ダンプが行き交う村で、温泉宿「山塩館」を経営する平瀬定雄は、客の減少に悩まされている。「ダンプの通らない道はありませんか」。宿に着くなり、そう聞いてくる客が後をたたない。 「村もJRに丸め込まれ、下請け会社と化している」。かつてはリニア絶対反対だったが、今では現実主義に転じた。 「やるなら早くやれ」。そして、関連の消費や下請け工事も、少ないながら、搾り取らなければならない。 「それこそ談合でもやらないと、こっちがすり切れていくだけだ」(平瀬) JR東海は、リニアの完成が遅れれば、収入のないまま巨額の投資を続けることになる。その焦りから、カネで解決しようとする。大井川の水量問題で静岡県だけが工事に入れない。そこでJR東海は静岡市と工事連携の合意を取り付けた。だが、その見返りに、地元住民が要望していた3.7kmのトンネルをJR東海が全額負担して建設する。その額は、140億円にも上る。 しかし、県知事や市民団体から猛烈な批判を浴びると、市長は大井川の問題についての発言だけ撤回。結局、JR東海は、巨額のカネを突っ込みながらも、着工のめどが立たない。 金銭面でも、止まって考える余裕がない。総工費9兆円で品川~新大阪を結ぶ計画だが、名古屋までに5兆5000億円が投じられる。工事のピークには年間のリニア投資額が6000億円になる見通しで、名古屋まで開通した27年、JR東海の借金は5兆円に達する。もし1年延びれば、千億円単位で総工費が膨らむ危険がある。当然、開業で得られるはずの収入も入ってこない。 名古屋開通後、そのまま大阪への工事に突き進むことは財務的に難しい。そこで8年間はキャッシュフローを借金返済に充て、3兆円まで借金を減らし、再び大阪に向けて着工する。そのため、大阪開通は45年を計画する。ただ、後に解説するが、低金利の財政投融資で3兆円を調達できたため、最大で8年間の前倒しも視野に入れている。 しかし、1つの疑問が湧く。リニアが品川~名古屋を40分で結んで、どれだけの人が利用するのか。現在、品川駅と名古屋駅で、地下深くにリニア駅の建設を進めている。 「新大阪に行く人が、途中の名古屋で乗り換えるケースは少ないだろう」。JR東海の幹部もそう認める』、ここまでくると、いまさら中止はできないと突き進むのは、太平洋戦争と同じだが、中止のハードルは極めて高そうだ。
・『談合が生まれる構図 リニア談合も後から振り返れば、JR東海とゼネコンの力関係が逆転したポイントと位置づけられるかもしれない。 14年、国からリニア工事の認可が出るころ、リニア談合と呼ばれる大手4社の会合が始まっている。当時は、東京オリンピックに向けた建設需要が予想されてはいたものの、「21世紀最大のプロジェクト」といわれるリニアを前に、「JR東海から仕事をもらう」というゼネコンの姿勢は変わりなかった。 1km200億円といわれるリニアの工事費だが、都心部のトンネルは400億~1000億円の物件もある。「リニアは公共工事よりも安い」(ゼネコン担当アナリスト)ことは業界の常識となっている。 JR東海は発注に際して、施工者の技術力を評価する独自の「競争見積方式」を使っている。まず施工法や価格をゼネコンと交渉する。そして工区への技術提案などを聞いて1社に絞り込む。だが、価格交渉が不調に終われば、他のゼネコンに価格を提示させる。JR東海の立場が強ければ、「言い値」に従わなければならない方式と言える。 だが、建設業界には「汗かきルール」が存在する。調査や設計、試算などに協力したゼネコンを優先するという暗黙のしきたりだ。「設計や技術開発などの協力をして、そのコストを工事価格に乗せなければ赤字になる。それを『高すぎる』と言って他の業者に値段を聞けば、汗をかいてない分、安くなるに決まっている」。中堅建設会社のトップはそう批判する。 大成建設が、名古屋駅のリニア工事でJR東海の想定価格の3倍近い1800億円を提示した。昨年完成した駅直結の高層ビル「JRゲートタワー」を建設した際の赤字を回収するためとみられる。JR東海は清水建設と鹿島にも入札を要請するが、大成からの情報を基に、両社はさらに高い価格を出した。 リニア談合事件では、発注者であるJR東海が高値を強要された「被害者」であるかに見られがちだ。しかし、この事件に、伝統的な談合の概念は通用しない。JR東海は民間会社なので、そもそも工事の発注方法に縛られない。ところが、独自の競争見積方式で、高水準な工事技術を求めながらも価格を抑えようとしてきた。しかも、その交渉過程が見えない』、「汗かきルール」はやむを得ない一定の合理性があるが、それならば、一連の工事をセットにして入札する方式に改めるべきだろう。
・『「リニアはやりたくない」 今後、未発注のリニア工事のコストは上昇カーブを描くのではないか。 「ゼネコン業界全体がバブル期を超える最高益をたたき出している。難工事の割に安価なリニア工事は正直、やりたくないだろう」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストの水谷敏也)。人手不足もあって、生産能力の限界で工事を回している。今後、現場作業員を中心に賃上げは必須で、そのまま工事価格に跳ね返る。 だが、JR東海は早く工事契約を進めなければならない。リニア談合で国交省や東京都が大手ゼネコン4社を指名停止にしたが、JR東海はそうした処分を下していない。ゼネコンはその足元を見透かしている。 「(発注が)止まったらJR東海が困る? そうでしょうね」(清水建設副社長の東出公一郎) 鹿島常務の勝見剛は、一般論としてこう語った。「官工事は途中でコストが変わっても、その分を払ってくれる。民間の場合は渋るし、カネがないケースもある」 JR東海は名古屋開通の期限に追い立てられている。 昨年、三菱重工がリニアの車両製造から撤退したと報じられた。車両開発をリードしてきた会社に何があったのか。取材すると思いがけない答えが返ってきた。 「いや、数年前に撤退しています。なぜ、昨年になって記事が出たのか分かりません」。撤退時期や理由を聞くと、「厳しい守秘義務契約になっていて、こちらからリニアの話は一切できない」と回答を断られた。 JR東海に聞いた。 「こちらの予算と懸け離れていた。2~3割というレベルではなくて、もう倍とか、交渉の余地がない数字でした」。JR東海のリニア開発本部長だった特別顧問の白國紀行は、そう破談の経緯を説明する。 リニアに飛行機技術を持ち込み、時速500kmを実現させた立役者の撤退劇──。 事情を知る関係者は重い口を開く。「先頭車両という困難なところだけを生産させられ、もうかる『どんがら(中間車両)』はやらせてもらえなかった」。先頭車両だけでは量産効果が出せなかったのか。そして残ったリニアL0系の生産実績があるのは、赤字の子会社、日本車輌製造だけになった。 すべてを闇の中でひた隠しにしながら、リニア計画を推し進めるJR東海。そして、膨張するコストと矛盾は、制御不能な域に達しようとしている。 だが、狡猾なJR東海は、まさかの時の「カネづる」を確保している。それは、国民を巻き込む巨大な仕掛けだった』、リニアに飛行機技術を持ち込み、時速500kmを実現させた立役者ながら撤退せざるを得なかった三菱重工も気の毒だ。「国民を巻き込む巨大な仕掛け」は次の記事だ。
次に、8月30日付け日経ビジネスオンライン「財投3兆円投入、リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/081500232/082400011/
・『談合問題や企業の撤退などに揺れるリニア新幹線には、安倍首相の号令のもと財投3兆円が投入されている。葛西JR東海名誉会長という「無二の親友」への巨額融資。森友学園や加計学園への「お友だち優遇」の比ではない「第3の疑惑」を追うと、融資スキームの直前に、2人が頻繁に会合を重ねていた事実に突き当たる・・・無担保で3兆円を貸し、30年間も元本返済を猶予する。しかも、超長期なのに金利は平均0.8%という低金利を適用する──。 首相の安倍晋三が、2016年6月1日に記者の前で「新たな低利貸付制度で、リニア計画を前倒しする」と発表し、巨額の財投資金が、この瞬間に動き出した。「いや、あの融資条件は、他に聞いたことがないですね」。同じ財政投融資という融資スキームを扱っている日本政策金融公庫の幹部も首をかしげる。「そもそも、30年後から返すって、貸す方も借りる方も責任者は辞めているでしょうし、生きているかどうかも分からないですよね」』、もともと財投は廃止の方向だったが、政治的な「使い勝手の良さ」から残され、しかもこんな法外な条件まで付けるとは、安倍もやり過ぎだ。
・『責任者は誰だ 破格の融資スキームを設計した責任者を追った。まず、財投をJR東海に貸し付けている鉄道建設・運輸施設整備支援機構に聞いた。電話口で「うちは事務をしているだけで、来てもらっても何も話せません」という。それでも横浜市にある本社を訪ねると、組織の説明はするが、財投に話を向けた瞬間、「それは国交省でお答えいただいている」と繰り返すばかり。 ところが、国交省の幹線鉄道課に足を運んでも、「財投の専門家ではないし、融資スキームなど説明できない」という。そこで、財務省理財局の財投総括課に聞くと、「僕らが(融資条件を)設定しているわけではない。国交省さんじゃないですか」と堂々巡りになる。 そこで、借り方のトップ、JR東海社長の金子慎に財投について問うた。 答 いや、財投を借りたわけじゃありません。 問 え? 答 財投を活用して、鉄道・運輸機構から借りたんです。民間会社としてやるんだから、政府からお借りするのはダメです。民間の金融機関から借りるのと同じ条件で借りたいと思います、と。返せるか、返せないか、事業をよく見て、あなたが判断してくれ、と。 問 「あなた」というのは政府?機構? 答 政府だったり機構(だったり)、どっちでもいいんですが、貸すのが心配だったら貸さなきゃいい。向こうも納得して、私たちも納得して借りた。 問 しかし、政府も機構も、そうした融資判断ができる能力はないのでは。 答 それは向こうに失礼な話です。貸した方は貸した責任があるんですね。 問 通常の融資スキームとは相当違う。 答 だから、政府が本当に知恵を出されたということだと思います。 本当に、民間の金融機関と同じ融資条件なのか。知恵を絞れば、この破格の融資スキームがひねり出せるのか。 実は、安倍が財投融資をぶち上げる前、日本政策投資銀行を使って3兆円の融資を実行しようと画策していた。そこで、政投銀に聞いた。 「話があったとは聞きました。しかし、民間銀行はもちろん、うちでも1社に3兆円を貸し出すことはあり得ません。相手先が倒れたら、銀行も一緒に死んでしまう。うちも他の大手銀行も、1社2000億円がギリギリのラインです。30年返済据え置き? それはないでしょ」 これほど破格の3兆円融資は、官や民の判断能力をはるかに超えている。しかも、返済されなければ、公的処理をせざるを得ない。大きな政治判断なくして実行できない。 金子に問うた。 問 財投の決断は安倍首相がされたということですよね。 答 いや、それはよく分かりませんが、安倍総理以下、国交大臣、あるいは担当大臣、政府としてなさった。 問 最初に発言されたのは安倍首相だから、「安倍主導」で。 答 「安倍主導」って……。 問 ちゃんと返せると思っているから(貸した)。 答 はい』、やはり「安倍主導」だったようだ。
・『安倍、財投直前にJRタワー泊 下の表は、葛西が社長に就任してから、歴代首相との面会数を記録したものだ。社長就任後、最初に会った首相は、国鉄改革で手を組んだ橋本龍太郎だった。しかし、面会数はわずか2回で、年平均0.78回の計算になる。ところが、06年に第1次安倍政権が発足すると、1年で7回も面会する。その後、政権が変わると面会数は急落していくが、12年に安倍が首相に復活すると、その後45回(年平均8.00回)も面会を繰り返している。 アベノミクスの政策や効果を出すため、安倍は財界人の知恵が必要なのだろうが、葛西との関係は突出している。第2次安倍政権で、葛西に次ぐ面会数は経団連名誉会長(東レ相談役)の榊原定征の27回、3番手に富士フイルムホールディングス会長の古森重隆の21回と続く。 安倍を支える経済人の会、「四季の会」は葛西を中心に構成され、東大同期卒の古森や与謝野馨らが名を連ねる。幼少期を敗戦の焦土で育ち、高度成長期の職場を体験した世代だ。ちなみに与謝野は日本原子力発電に勤務経験があり、原発推進論者の代表格だった。 安倍の大親友である葛西は、14歳年上で「経済の師」のような存在に違いない。国鉄改革で、中曽根康弘、三塚博、橋本といった大物政治家を動かし、自らを「日本帝国の官僚」と表現した。その葛西が推し進めるリニア計画は、再び日本が世界の頂点を目指すシンボルと感じているのかもしれない。 14年、米国にリニアを輸出すべく、駐日大使のキャロライン・ケネディをリニア試乗に招いた。その時、安倍と葛西が乗り込み、挟み撃ちにするように売り込んだ。 そして、16年6月、安倍は財投3兆円計画をぶち上げる。 その直前の記録を追うと、安倍と葛西が頻繁に会合を繰り返していたことが分かる。約半年間で6回(年平均14.13回)にも上る。 16年5月27日。財投3兆円決定の数日前、安倍は伊勢志摩サミットを終え、米大統領(当時)のバラク・オバマと広島を訪問する。オバマを見送った後、安倍はJR広島駅からのぞみ60号に乗り、JR名古屋駅で降りた。そこで、葛西に出迎えられ、JR東海本社があるJRセントラルタワーズ内の名古屋マリオットアソシアホテルに宿泊する。 こうした会合で何を話したのか、安倍に質問状を送った。3兆円を投じて、国民にどういうメリットがあるのか。財投を追加投入する可能性はあるのか。 だが、原稿の締め切りまでに回答はなかった。 この3兆円融資は、まさに葛西の思い通りのシナリオだったのではないか。 1980年代、国鉄の若手エリートだった葛西は、井手正敬(後のJR西日本社長・会長)、松田昌士(後のJR東日本社長・会長)と「国鉄改革3人組」と呼ばれた。そして、巨額の赤字と借金に苦しむ国鉄を、分割民営化で再生させようと邁進した。 葛西は著書で、この解体的改革は、「東海道新幹線救出作戦」だったと振り返る。そのドル箱、東海道新幹線で売上高の7割を稼ぐJR東海が87年に発足すると取締役に就任。88年、常務に昇格し、その秋に関西経済連合会の会合で講演に立ち、こう話している。 東海道新幹線とリニアは一元的に経営されなければならない」「(リニア計画の)全額を民間資金で行うことは難しい。3分の2は民間資金で行ってもよいが、残る3分の1は国のカネが必要ではないか。つまりナショナル・プロジェクトとして推進しなくてはなりません。 今から30年前、まだ山梨のリニア実験線すら着手していない時、すでに葛西の頭には、明確に今のリニア計画が描かれていた。資金の3分の1は、国のカネを引っ張ってくることも。 リニアとJR東海の歴史は、葛西によって築かれたものだった。その当人に話を聞くべく、JR東海に申し入れた。だが、「4月に代表権を返上しており、今は金子が経営の責任者。彼の話したことがすべてだ」と断ってきた。 そこで、東京・荻窪の葛西邸を訪れた。平日午後9時、自宅前に軽自動車が止まり、中に数人の男が座っている。警備のためだった。そこで、休日の昼間に再び訪れた。リニアの取材だと告げると、間髪入れずこう返してきた。「それは僕でないと語れないな」』、葛西の安倍との面談回数が45回と、経団連名誉会長の榊原27回と比べても圧倒的に多いとは、驚きだ。しかも、葛西は30年前からリニアの資金の3分の1は、国のカネを引っ張ってくるという計画を描いていたとは、さらに驚きだ。只者ではないようだ。
第三に、上記の続きを8月17日付け日経ビジネスデジタル「名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/081401049/?ST=pc
・『 「(安倍から財投の話は)あったかもしれない」 「だが、財投を国からの支援と見るのは悪意によるねじ曲げ」時間は延長につぐ延長、止まらぬ2時間インタビュー・・・問 なぜ9兆円もかけてリニアなのか。 答 国鉄の分割民営でそれぞれに使命があり、うちは『東海道新幹線会社』ということですよね。しかし、輸送能力が限界に達している。ならば、バイパスを造るしかないと。すでに国の法律で決まっている中央新幹線(リニア)があり、東海道新幹線と旅客流動が同じなので、一元経営しなければならない』、なるほど。
・『“名古屋5.5兆円は大局的な想定” 問 新幹線が二重化しても、人口減少や会議のネット化が起きている。 答 そんなの30年前から言われているけど、そうなってないんだよ。 問 でも人口は実際に減少している。 答 世界の人口動態がどう変わるかということ。日本人だけの人口で測るべきではない。インバウンドが今増えている。日本で定住人口も増えていく可能性がありますね。 問 東海道新幹線の更新ではダメ? 答 東海道新幹線は1時間15本も走っている。17本が限界だから、あと2本ですよ。技術や設備を強化し、効率的な運用をしたが、もうこれ限界なんだよね。この次は東京~名古屋、名古屋~大阪、このバイパスがどうしてもいる。『バイパスはいらない』という議論はないですよね。 問 でも東海道新幹線が活躍していて、満足している人も多い。 答 いや、今はいいですよ。しかし、まだこれから世界やアジアの人口も増え、日本に定住したい人も増えてきますね。常に一定のアローアンス(余裕)を確保しないといけないと。その意味でリニアは新しい時代に即した効率性と高速性を持ったテクノロジーです。 問 当初、リニアは難しいと感じた? 答 難しいのはおカネ。借金が多かったでしょう。我々は国鉄の借金の相当部分を引き取った。新幹線でもうけて、借金を返す会社だった。ところが、借金を返し続け、金利負担が減ってきて、ゆとりができた。で、自分のカネでリニアを造りましょう、と。 問 借金も一時、2兆円ぐらいに減った。 答 そうですね。 問 名古屋までの建設費5.5兆円は、増えることはない? 答 基本的には変わらない。いろいろやっているうちに増えたり減ったりしますから、最終的にぴったりそうなるということじゃない。大局的な想定です』、ずいぶん楽観的だが、「大局的な想定」とは便利な言葉だ。
・『“談合は勝手に話したこと。我々はまったく関係ない” 問 想定がどうなるか。去年からのリニア談合の問題もありました。 答 我々はまったく関係ないからね。 問 でも、ゼネコン幹部はJR東海の工事が採算が厳しいから話し合ったと。 答 それは彼らが勝手に話したこと。要するに、彼らは『もっと高く契約を結んでくれ』と思ったんですよ。我々は『もっと安くできるだろう』と。こちらも技術者がいっぱいいますから、厳しい折衝になったと思うんだけど。 問 ゼネコンは技術開発を一緒にやってきて、利益が薄いときついと思った。 答 だから、新しいタイプの工事もあるし、ゼネコンの最新技術は各社ありますから。互いに情報交換し、勉強会をやったとは思うんですよ。 だが契約を結ぶのは、我々としてはこの範囲内で上げたい、できるはずだと思っている部分はあるし、向こうは10年もかかる工事だから、物価が変わるリスク要素もある。だから知恵を出し合い、契約を区切ったりする。この辺はプロの世界で、素人が口を出すことはない。そのつばぜり合いで、法律に触れたかどうかは彼らの話です。 問 でもゼネコンからすると、「発注者責任もあるんじゃないか」と。 答 発注者責任? 民間企業の工事ですから、公開競争入札にする必要はないので、『あそこにやらせる』という随契(随意契約)でいいわけです。その代わり金額については徹底的につばぜり合いをして、たたき合いますよね。今度は『1対1でやるぞ』ということにはなるかもしれません。しかし契約金額のつばぜり合いは大いにやったらいい。 問 金額のことでいうと、リニア車両の開発をした三菱重工が撤退した。倍ぐらい差があるという声もある。 答 1両12億円で造るということでこちら側が投げたのを、三菱重工は『それでは造れません』と言ったんですよね。今、東海道新幹線の車両というのは、1両3億円ぐらい。4倍の値段だから我々は十分造れるはずだと思いますよね。現に、日本車輌と日立は『それでやらせていただきます』と言っている』、談合問題では尻尾を掴むのは難しいと思っていた通りの展開だ。
・『“財投は自己資金。銀行から借りるのと同じ” 問 リニア9兆円を自分で出してやっていくはずが、2016年6月に安倍首相から「財投を入れる」という話が出ました。 答 あれは自己負担だよ。 問 財投ですから財投債が発行される。 答 財投債だけど、銀行から借りるのとまったく同じですから。 問 いや、無担保で3兆円を0.8%という金利で借りられないのでは。30年間も元本を返済しなくていいし。 答 財投で借りているというのは、財投機関から借りているのであって、財政出動しているわけじゃない。あたかも政府におカネを出してもらったかのごとく理解するのは間違っているのか、ねじくれているのかどっちかなんだよ』、民間銀行ではあり得ない好条件はやはり財投ならではなので、どうみても強弁に過ぎない。
・『“安倍さんの話、どっかであったかも” 問 でも、政府が決めるからこそ、安倍首相がまず宣言したわけですよね。やっぱり葛西さんが「財投で工事期間が短くできる」と安倍さんに言ったのでは。 答 僕は安倍さんには、直接はそういう話をしてないんですよね。 問 そうなんですか。 答 安倍さんを支持しているけど、何かしてくださいというお願いは、基本的にやらないことにしてます。 問 でも、安倍さんもあれだけ葛西さんと頻繁に会っていると、財投の発言の直前など話したくなるのでは。 答 そんな話は安倍さんから出ません。 問 その間、リニアの話は。 答 大阪までの着工をシームレスにやりたいという気持ちは、大阪にも政権にもありますよね。安倍総理や菅官房長官、杉田副長官にもある。そうすると、『方法はないのかな』なんて話がある。 ある日、『こういう案でやったらどうだ』というサウンドがあったのも事実。それは安倍さんが言われるだいぶ前ですよ。 問 安倍さんの方から「何とかならないか」みたいな話があった。 答 どっかであったかもしれませんね。何人かで集まったりするからね。 問 国からおカネを回してもらった。 答 いや、それは国から借りただけであって、そのおカネは金利を払って返すわけです。だからあれを『国から財政支援を受けた』というのは悪意によるねじ曲げとしか思えないよね。 問 財投を借りて国鉄も破綻した。また繰り返される危険はないのか。 答 100%繰り返されないんだって。僕は国鉄に入って財投をずっとやってきて、毎回『これは返せない』と思いながらきましたよね。運賃の値上げをすべきなのに切り下げて、差額を財投で借りるとか。黒字になるような工事じゃないのに財投を付けて、無理やりシナリオを作る。その答弁を僕は書きましたから。返せない、雪だるま(借金)が大きくなるだろうと思ったわけ。 今回のやつはまったくそう思ってないんだよ。僕は財投を散々やってきて、その上の経験に立って、今回のは大丈夫だと。 問 まさに国鉄時代の計画と同じようなものでは。 答 いや、違います。国鉄時代は全部赤字ですよ。 問 例えば、名古屋まで、のぞみプラス700円、新大阪までプラス1000円で需要予測をしています。今の国鉄の話とダブって見えるが。 答 リニアの運賃はまだ決まってないからね。 問 でも、それで需要予測をしている。 答 リニアがどういう運賃政策を取るかまったく決まってない。これから全部決めるわけですよね』、さすが安倍との話は、「請託」ととられないように慎重だ。
・『“神様が見たって、リニアはいける” 問 しかし、東海道新幹線の需要は相当落ちる。 答 ただし、京都や新横浜もあるよね。21世紀半ばの輸送機関が東海道新幹線と同じでは日本の将来のダイナミズムが失われます。そこはやっぱり飛躍しなくちゃいけない。 問 葛西さんは絶対、収支はいけると。 答 私がじゃなくて、神様が見ても、誰が見たっていけるんです。 問 でも、かつて山田社長が「リニアは絶対にペイしない」と言った。 答 山田、そんなこと思ってないよ。あれは質問が悪くて。彼に聞いてごらん。絶対黒字だと思っていますから。 問 リニアの設備更新と維持管理で年4200億円かかり、増収効果よりも大きいことを山田さんは言ったのでは。 答 あの時の計算だと開業時点の厳しいときでも両方合わせると、経常利益が630億円になる。でも今はそこから2000億円ぐらい増えている。だから僕は、収支の心配はいらないと思うよ。 問 心配しなくていい。 答 (心配は)いらない。それは保証してもいいけど。 問 今、6000億円近い経常利益が上がっている。JRグループの北海道や四国といった厳しい会社を救い、鉄道ネットワークを再構築する道はないのか。 答 鉄道は19世紀は陸の王者だったわけ。ところが、20世紀になって競争相手がいっぱい出てきました。今もう日本中に道路ができて、航空網もできている。そういう中で、鉄道が道路に転換していく部分が増えてくる。当然なんですよね。それを『嫌だ』という地元の人たちの意見もある。そういうのに付き合いながら、全国を1本に戻そうなんていうことにはなりませんよね。経済原則に反するから。我々は、与えられた使命、これを徹底的に果たす。 現に今、1260人をリニアの建設に充てている。米国にも(人を)出しています。フル稼働でやっています。それをやって初めて工事が予定通り進むんですから、ここのところ(他社との連携)に手を出す気はないのかなんていう愚問を、発しないでもらいたいですね。 問 しかし、リニアも他の鉄道網も、まったく違う事業ではないし、選択肢としてはあり得るのでは。 答 何が? だって、それぞれが会社の使命が決まっているんだから。(JR各社が)それぞれ定義されていまして、例えば東日本は首都圏の鉄道を強化する。 我々の12の在来線、全部赤字です、東海道本線も含めて。これを維持しながら、東海道新幹線を磨き上げていく。バイパスを造って、さらにゆとりを作っていくと。東海道新幹線のお客さんが切符を取れない。金曜日の夜なんて立っていますよ』、かつての山田社長発言に対する言い訳はよく分からないが、足元の好業績が絶対的な自信につながっているようだ。
・『“リニアができるまで生きていない” 問 リニアの完成で、葛西さんのやろうとしてきたことがほぼすべて実現する。 答 僕はリニアが完成するまで生きてないんじゃないかと……。 問 いやいや、そんなことはない。 答 僕も今年78歳ですから、完成するのが10年先で88歳でしょう。平均寿命を超えちゃうので、僕は。 問 88歳はもちろん、葛西さんは大阪開業まで生きているでしょう。 答 まあ、僕は目の前にある問題にベストを尽くすことを積み重ねてきましたので。リニアも新幹線も大事だし、海外展開も日米同盟を強化するという意味で大事だと思いますよね。いろいろやりますが、しかし、それは明日終わるかもしれないと。それでもいいやと思ってやるしかないよね』、したたかな怪物だ。だが、その圧倒的な権力で、社内外の反対論をねじ伏せた弊害が、最近のスポーツ団体の不祥事と重なって見える。
タグ:リニア新幹線 (その3)(「陸のコンコルド」リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末、財投3兆円投入 リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う、名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない) 日経ビジネスオンライン 「「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実 9兆円をつぎ込む超高速列車の行く末」 9兆円を投じるリニア新幹線プロジェクトがついに離陸 静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」静岡県知事の川勝平太 大井川の水源を横切るため、毎秒2トンの水量が減少 導水路を掘削して大井川に戻し、減量分の6割強を回復させる 東海道新幹線も沈没する 自ら「赤字事業」と認めた過去 社長(当時)の山田佳臣が、リニア計画は「絶対にペイしない」と答えた 「でっかいことはいいこと、速いことはいいこと、という発想は時代遅れ」 開発トップがダメ出し JR東日本元会長の松田昌士 「歴代のリニア開発のトップと付き合ってきたが、みんな『リニアはダメだ』って言うんだ。やろうと言うのは、みんな事務屋なんだよ」 地方自治体にまで担当課 役人をカネで味方にする あふれる残土、ドーム50個分 談合が生まれる構図 ゼネコン業界全体がバブル期を超える最高益をたたき出している。難工事の割に安価なリニア工事は正直、やりたくないだろう 財投3兆円投入、リニアは第3の森加計問題 破格の安倍「お友達融資」を追う」 財投3兆円が投入 無担保で3兆円を貸し、30年間も元本返済を猶予する。しかも、超長期なのに金利は平均0.8%という低金利を適用 安倍晋三 「新たな低利貸付制度で、リニア計画を前倒しする」と発表し、巨額の財投資金が、この瞬間に動き出した 「安倍主導」 安倍、財投直前にJRタワー泊 2年に安倍が首相に復活すると、その後45回(年平均8.00回)も面会 葛西社長 経団連名誉会長(東レ相談役)の榊原定征の27回 日経ビジネスデジタル 「名誉会長激白 葛西名誉会長インタビュー どうにも止まらない」 “名古屋5.5兆円は大局的な想定” “談合は勝手に話したこと。我々はまったく関係ない “財投は自己資金。銀行から借りるのと同じ” “安倍さんの話、どっかであったかも” “神様が見たって、リニアはいける”
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