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米中対立(通商問題等)(その5)(米中貿易戦争 第1ラウンドは中国の勝ち?トランプ政権の関税も何のその 敵としての中国を侮る愚、米中首脳会談の勝利者はどっち?表面的にはトランプの一方的勝利だが……、G20に見る 米中の駆け引きの真相とは 中国を巡る問題への対応は着実に進んでいる) [世界情勢]

今日は、米中対立(通商問題等)(その5)(米中貿易戦争 第1ラウンドは中国の勝ち?トランプ政権の関税も何のその 敵としての中国を侮る愚、米中首脳会談の勝利者はどっち?表面的にはトランプの一方的勝利だが……、G20に見る 米中の駆け引きの真相とは 中国を巡る問題への対応は着実に進んでいる)を取上げよう。なお、9月21日までは通商問題としていたが、その枠を超えより広がったため、タイトルを変更した。

先ずは、11月19日付けJBPressが転載した英紙ファイナンシャル・タイムズの米国支局長Gillian Tett氏の記事「米中貿易戦争、第1ラウンドは中国の勝ち? トランプ政権の関税も何のその、敵としての中国を侮る愚」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54698 (リンクで無料なのは1頁目のみ)
・『統計というものは、予想通りには動かないことが時折ある。米中貿易とドナルド・トランプ氏の困難な問題を例に取ってみよう。 トランプ大統領は今年に入ってから、米国の対中貿易の赤字額が大きいことに激怒し、中国からの輸入品2500億ドル相当に段階的な追加関税を課した。 そうすれば米国企業は中国ではなく本国での生産を増やすか、コスト高になる輸入品を回避する方策を見つけるだろう、従って対中赤字は縮小するだろう、というのがホワイトハウスの目論見だった。 しかし、思惑通りには――まだ――進んでいない。 目下の現実はその正反対で、米国政府が今月発表したデータによれば、中国に対するモノの貿易赤字は9月に4.3%拡大し、季節調整済みでは8.8%増の374億ドルと過去最大に達している。 中国からの輸入が8%も増えた一方で、中国への輸出がほぼ横ばいだったためだ。 月次のデータが当てにならないことはよく知られているが、トレンドは明白だ。第3四半期全体で見ると、米国の対中貿易赤字は1060億ドルで、前年同期の929億ドルより拡大している。 これもまた、輸入が驚くほど増えたためだ。今年1月から9月までの対中貿易赤字は3054億ドルに達しており、前年同期の2766億ドルを上回っている』、輸入増加要因は以下で解説があるが、いずれにしろトランプ大統領の経済学知識の欠如を物語っているのかも知れない。
・『多国間で貿易が行われ、サービスの貿易がモノの貿易と同じくらい(ことによると、それ以上に)重要な世界では、2国間の貿易赤字にこだわることはばかげている。 ホワイトハウスは鉄鋼の出荷ではなく、知的財産権の侵害など正当な不満がある分野に注力した方がよい、ということになる。 しかし、この経済学の理屈が直ちにトランプ氏を揺さぶることはなさそうだ。とりわけ、ホワイトハウスが中国の習近平国家主席との会談を準備している今の段階ではないだろう。 そのため、2国間の統計が狙いとは正反対の方向に振れている理由を問うことには価値がある。 まず考えられるのは、皮肉な話だが、米国が好景気だからだという説明だ。経済成長率が高いときには輸入が増えるのが普通だからだ。 裏を返せば、トランプ氏自身のアドバイザーの一部が半ば冗談で言っていたように(あまりウケなかったが)、貿易赤字を解消する最も簡単な方法は景気を後退させることなのだ。 2つ目の要因は、タイムラグの問題かもしれない。米国企業は貿易の混乱から身を守ろうと、輸入品の備蓄に走ったからだ。 例えば、貿易統計の内訳を見ていくと、すでに追加関税が課せられていた品目(鉄鋼製品など)では今年の早い時期に輸入が目に見えて増加し、今では落ち着いている。 しかし、世界貿易の複雑な事情をフォローしている人々の間では、次のような説もささやかれている。貿易戦争の序盤では中国の方が外見的には優勢なのではないか、というのだ。「米国の対中貿易赤字の拡大は・・・(9月の時点で)貿易戦争で米国が劣勢だったしるしだ」 通商データの集計サービスを手がける調査会社パンジバは先日、そんな見解を示した。 また、海運大手A・P・モラー・マースクのソレン・スコウ最高経営責任者(CEO)は11月13日、決算説明の電話会議で、「皮肉な展開だが、トランプ氏が批判のボリュームを上げた後、米国は中国からの輸入をさらに増やす一方となっており」、大豆をはじめとする米国からの輸出が激減する中でもそうなっている、と述べている。 スコウ氏によれば、輸入増の一部は備蓄目的だ。 しかしショッキングなことに、サプライチェーンにおける中国企業の位置づけを考えると、中国が米国製品の代替品を探すことは、米国が中国からの輸入の代替品を探すことよりも容易であるとスコウ氏は指摘している。 3つめの重要なポイントは、トランプ氏には「中国から輸入するなとナイキやウォルマート、ホーム・デポなどに命令できない」ことにある、とスコウ氏は言う。 従って米国企業は「(中国からの)輸入を続けるだろうし、打開策に取り組んでいく」と予想している。 利益率への打撃をそのまま吸収する、というわけだ(もちろん、利益率への打撃は今いずれにせよ、人民元安によって一部相殺されている)』、こんなことは経済スタッフには初めから分かっていた筈だが、きっとトランプは聞く耳を持たないのだろう。
・『そもそも、米国経済よりも中国経済の方が貿易戦争に対しては脆弱だろうし、備蓄がもし終われば(あるいは、終わるときには)状況が変わる可能性もある。 だが少なくとも、スコウ氏が用いた表現を拝借するなら、これらの厄介な貿易統計に見られる「皮肉なねじれ」は、貿易戦争の行方を正確に見通すことがいかに難しいかを示している。 そして、もしかしたら、敵としての中国を――特に、統制され、揺るがぬ決意を持ち、かつ民主主義に煩わされない場合の中国を――過小評価することの愚かしさも示唆しているのかもしれない。 対照的に中国政府は、貿易の相手を変えるよう国有企業に命じることができ、おそらく、すでにそうしているだろう。 中国政府は(混乱しているホワイトハウスとは違って)交渉の立ち位置と基本方針を中央で調整しているからだ。 では、これは中国が交渉で譲歩しないということだろうか。そうとは限らない。 そもそも、米国経済よりも中国経済の方が貿易戦争に対しては脆弱だろうし、備蓄がもし終われば(あるいは、終わるときには)状況が変わる可能性もある。 だが少なくとも、スコウ氏が用いた表現を拝借するなら、これらの厄介な貿易統計に見られる「皮肉なねじれ」は、貿易戦争の行方を正確に見通すことがいかに難しいかを示している。 そして、もしかしたら、敵としての中国を――特に、統制され、揺るがぬ決意を持ち、かつ民主主義に煩わされない場合の中国を――過小評価することの愚かしさも示唆しているのかもしれない』、いかにもファイナンシャル・タイムズらしいクールな見方だ。

次に、元産経新聞北京特派員でジャーナリストの福島 香織氏が12月5日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「米中首脳会談の勝利者はどっち? 表面的にはトランプの一方的勝利だが……」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/120400189/?P=1
・『アルゼンチンのブエノスアイレスで行われたG20サミットの席で現地時間12月1日夜、米大統領トランプと中国国家主席習近平が会談した。両首脳は、米国側が2019年1月1日から予定していた2000億ドル分の中国製品に対する輸入関税25%への引き上げを90日間延期するという妥協案で合意。米中貿易戦争は一時休戦、と海外メディアは報じている。 とりあえず中国側はかなりほっとしたことだろう。だが米中貿易戦争がこれで決着したわけでもないようだ。今後の展開について考えてみたい。 まず中国公式メディア、人民日報3日付けはこの首脳会談をどのように報道しているか、みてみよう。両国首脳は誠実で友好的なムードの中、中米関係及び共同の国際問題で深く意見交換し、重要な共通認識に至った・・・トランプは習近平の両国関係の評価に賛同を示し次のように語った。“米中関係は十分に特殊で重要であり、我々両国はともに世界に重要な影響を与える国家だ。双方が良好な協力関係を維持することは両国と世界にとって利する。米国は中国側に話し合いを通じて両国の協力度を増していくことを願うとともに、双方に存在する問題を積極的に討論し双方に有利な解決法を探っていこうと願う。” 両国元首は継続して様々な方法で密接な交流を維持し、ともに中米関係を発展に導くことで同意。適時、双方が再び往来するとした。双方は各領域で対話と協力の強化に同意。教育、人文交流を増進していくとした。トランプは“米国は中国学生の留学を歓迎する”と語り、ともに積極的な執法強化行動を取り、フェンタニル類管理を含む薬物禁輸などで協力すると同意。…… 経済貿易問題については、習近平は次のように強調した』、中国側報道ではまずまずの成果を謳っているが・・・。
・『ニュアンスが違う米中の公式アナウンス  “中米は世界最大の二つの経済体として、経済貿易交流は十分に密接で、相互に依存している。双方の経済貿易領域には多少の立場の違いが存在することは全く正常なことであり、重要なのは相互に尊重し、平等な相互利益の精神で妥当にコントロールしていくことであり、同時に双方が受け入れ可能な解決方法を探し当てることである。” 両国首脳は中米経済貿易で積極的かつ成果の豊富な討論を行った結果、あらたな追加関税を停止するとともに、両国の経済チームにより緊密に協議を行って、すべての追加関税を取り消す方向でウィンウィンの具体的な協議を達成するように指示することで合意した。 中国側は“中国の新たな改革開放のプロセスをもって、国内市場及び人民の需要に従って市場を開放し、輸入を拡大し、中米経済貿易領域の問題を緩和させるように願っている。双方はお互いの利益とウィンウィンの具体的協議が中国側の米国に対する関連の積極的行動の基礎と前提であるとの合意に至った。双方は共同の努力でもって、双方の経済貿易関係を早急に正常な軌道に戻し、ウィンウィンの協力を実現すべきである”とした。 習近平は台湾問題における中国政府の原則的立場を述べ、米国は政府として一中政策を継続すると述べた。さらに両国元首は朝鮮半島など重大な国際的地域の問題について意見を交換。中国側は米朝首脳の再度の会談を支持し、米朝双方がお互いに合理的関心を顧みながら、半島の完全非核化と平和メカニズムの確立を推進することを望むとした。米国は中国が積極的影響力を発揮していることを称賛し、中国とこの問題についてコミュニケーションと協調を維持したいとした。 新華社もほぼ同じ内容であるので、これが中国の人民に対する公式のアナウンスである。この通りなら、米国は関税を停止し、貿易戦争は休戦、停戦に向かっての話し合いが前向きに進む、という印象である。 だが米国側のアナウンスは、これとかなりニュアンスが違う。ロイター通信によれば、ホワイトハウスが広報し各メディアが報じたのに、中国外交部がアナウンスせず、中国国内の公式メディア(SNSをのぞく)でも報じられていない内容は以下の通りだ。 ①中国の抵抗で7月に破談になったクアルコムによるNXP(オランダ)の買収について習近平は承認する態度を示した。②習近平はすぐさま中国の構造改革についての協議にとりかかることに同意。それには技術移転の強要、知財権保護、非関税障壁、ネット侵入、ハッキングによる情報窃取、サービス業及び農業分野がテーマとして含まれている。 ③来年早々に実施する予定だった2000億ドル分の追加関税は90日間猶予を与えるが、米国サイドが指摘した技術移転強要などの問題を解決しなければ10%の関税を25%に引き上げる。 ④中国側は米国から農産品、エネルギー資源、工業及びその他の産品を大量購入する。とりわけ農産品の購入は即刻開始する』、それにしてもニュアンスは大きく違う。中国に不都合な部分は報道しなかったようだ。
・『首脳会談で勝利したのは  この双方の公表内容の違いをみれば、この首脳会談が中国側の主張する友好なムードのもとで行われたとは思えないし、中国が何度も繰り返すウィンウィンという感じでもない。米国から言うことを聞かねば追加関税を実行すると脅され、ねじ伏せられた印象だ。だから中国国内では、こうした内容は伏せられたのだ。トランプはこの首脳会談について帰国のエアフォースワン内で「信じられないような素晴らしいディール」と語ったらしい。 トランプ側も必ずしも100点の成果を得た、というわけではなかろう。まず、米国にとって切実な安全保障上の問題であった南シナ海問題などについて言及できなかった。また、中国の要求に従って、台湾問題について「一中政策」継続を確認した。また、トランプ政権が技術窃取の尖兵として警戒している中国学生の米国留学問題については、むしろ「歓迎する」と発言した。また、トランプは当初、中国のインターネット開放を求めていたが、それには触れなかった。 つまり安全保障にかかわる問題については、双方とも議論になることを避けたのだ。米国が圧倒的に強気で有利な立ち位置であれば、南シナ海問題でなにがしかの譲歩を求めただろうし、中国人留学生の技術窃取問題に言及したし、人権や中国の閉じられたネットの問題も突いてきただろう。だが、トランプはそこまで強気になれなかったわけだ。おそらくは、中国側の米国産大豆や豚肉の実質上の禁輸措置は米国にとってかなりのダメージであったし、中間選挙の下院敗北も多少は影響したのかもしれない。 中国としても農産物購入や薬物禁輸の部分なら妥協の用意はあったし、また外圧による構造改革推進は共産党としても歓迎する部分はある。問題は技術移転強要や知財権保護、ネット侵入の問題で中国側がトランプ政権が納得いくような善処を3カ月でできるか、だ。だが、たとえそれができなくても、習近平としてはかまわないのだ。彼は年末か年初に開かねばならない四中全会を切り抜け、3カ月後の全人代を無事迎えられれば、それでよいのだ。 なので、この首脳会談、米中どちらが勝利したか、という観点でみれば、表面的にはトランプの一方的勝利、といえるが、習近平にとってみれば、わずか90日間でも猶予を得たことは大勝利といえるかもしれない。この米中首脳会談でのディールが失敗すれば、習近平は失脚しかねない、といわれるまでに追いつめられていたからだ。 四中全会が未だ開かれていないが、一説に、開いてしまうと習近平の対米政策および経済政策の失敗についての責任追及が始まってしまい、総書記の座を維持することすら危ないからだとささやかれている。ただ、ここにきて少しだけ習近平に追い風が吹いてきたのは、台湾の統一地方選挙における与党・民進党の惨敗と日本が習近平の肝入り戦略“一帯一路”に参与するなど習近平政権に協力的な姿勢を示したことだ。さらに米中貿易戦争が一時的にしろ休戦したので、習近平のメンツはかろうじて維持できる公算がつよまり、四中全会はずいぶん遅れたが、無事に開かれるだろう』、トランプも攻撃をかなり緩めたようだ。かろうじてメンツを維持できた習近平が、そこまで崖っ淵に立たされていたとは初めて知った。
・『米中貿易戦争、再燃の可能性  これは米国や日本らの中国に国家安全を脅かされる国々にとってはむしろ残念なことかもしれない。なぜなら中国の改革開放路線(経済の資本主義化、自由主義化)の最大の障害となっているのは習近平自身なのだ。習近平は未だアンチ鄧小平路線であり、鄧小平路線が継続すればいずれ共産党体制は崩壊すると考え、共産党がより市場や民営企業を含めた経済コントロールを強化する国家資本主義路線に転向することが体制維持に絶対必要と考えている。習近平が想定するのは、資本主義や民主主義とは異なる中国発の新たな経済の枠組みや国際秩序でもって人類運命共同体を構築する世界観だ。米国や国際社会の望みがこれを阻止し、従来の米国的経済秩序、国際スタンダードに従う方向での中国の発展であるなら、習近平からより鄧小平路線に忠実な指導者に代わることを期待する以外ない。 なので、米中新冷戦構造は非常に長い今後の国際社会の基本構造となるだろうが、その第一フェーズである米中貿易戦争の決着点は習近平の実質上の引退ではないか、といううっすらとした期待を個人的にもっていたが、追加関税の90日間猶予はこの可能性をさらに低くしたことになる。 さて今後の見通しだが、3カ月後に米中貿易戦争はおそらく再燃する。なぜなら中国が米国と違う新たな国際秩序を打ち建てるという野望を放棄しないからだ。そのためには、半導体その他の米国が保有する核心的技術の国内移転を諦めることはないし、米国に対する産業スパイもサイバーを通じた情報窃取も一層励むことになる。なによりタイミング的に全人代直前であり、習近平としては一寸の妥協も示せない。トランプ側が譲歩しない限り、貿易戦争は再開し、より激しく、長期化することになるだろう。その決着が2020年の米国大統領選直前まで持ち越されるとしたら、それはトランプ政権が維持されるか、あるいは習近平政権が維持されるか、という結果で判定されるかもしれない』、猶予明け後については、ずいぶん悲観的な観測だが、これは福島氏の反習近平の姿勢が影響しているのかも知れない。

第三に、元・経済産業省米州課長で中部大学特任教授の細川 昌彦氏が12月5日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「G20に見る、米中の駆け引きの真相とは 中国を巡る問題への対応は着実に進んでいる」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/062500226/120400010/?P=1
・『12月1日、主要20カ国・地域(G20)首脳会議が閉幕した。日本の大方のメディアの報道ぶりは次のようなものだ。 “米中が激しく対立して首脳宣言を出せないという最悪事態は免れたが、米国の反対で「保護主義と闘う」との文言を首脳宣言から削除され、G20の機能不全、劣化は深刻だ” 果たしてそうだろうか。 海外紙と比較すると、日本のメディアのパターン化した見方、「木を見て森を見ず」に危うさを感じる。 米国の「保護主義と闘う」の削除の主張だけを見るのではなく、中国の対応も含めた、米中の駆け引き全体を見なければいけない』、第二の記事での中国メディアだけでなく、日本のメディアまで偏った報道をしていたとは・・・。
・『真相は中国の危機感にある!  真相はこうだ。 昨年のハンブルグでのG20首脳宣言では「不公正な貿易慣行を含む保護主義と闘う」との文言で合意した。今回も米国も含めて多くの国がこの文言で受け入れたが、中国が反対した。「不公正な貿易慣行」という表現が、中国の国有企業への巨額の補助金や知的財産権の問題を攻める“口実”を与えるとの危惧からだ。しかし、この文言を削除して、単に「保護主義と闘う」との記述だけでは、米国は受け入れない。 これは直前のアジア太平洋協力会議(APEC)において、中国が孤立して決裂して首脳宣言が出せなかった構図と同じだ・・・もう一つ中国がどうしても受け入れない文言があった。「市場歪曲の措置の除去」だ。これも昨年のG20 では既に盛り込まれている。今回、中国が削除を強硬に主張する背景は「不公正な貿易慣行」と同じだ。 むしろ中国が警戒を強めて、こうした文言の削除に転じたことに注目すべきだ。 中国の国家主導の政策への批判が高まり、孤立の結果、軌道修正させられることは何が何でも避けたい、というのが本音だろう。その危機感からか、これまで合意してきた文言も“地雷”に見えるようだ。 中国が徐々に軌道修正していくプロセスとして、この一局面を時間軸を持って冷静に見ていくことが必要だ。 米国の強硬な反対で「保護主義と闘う」が盛り込まれなかった、との一点にしか目が行かない報道には注意したい』、その通りだろう。
・『WTO改革など3点セットの中国対策  むしろ今回のG20首脳宣言をよく読めば、重要な成果を見て取れる。そしてそれがいずれも日本が議長国となる来年のG20を見据えた布石であることに注目すべきだ。 まず最も大事なのは、「世界貿易機関(WTO)の改革を支持する」との文言だ。首脳宣言としては初めて合意されたことに意味がある。現在のWTOのあり様に対しては米国も強い不満を持っており、トランプ大統領もWTO脱退をちらつかせている。米国をWTOに繋ぎ止めておくためにもWTO改革は不可欠だ。 それに対して警戒的なのは中国だ。2001年にWTOに加盟した中国は途上国扱いで優遇されてきた。その甘い扱いに対する反省が米国のWTO批判の背景にある。従って今回の文言を合意しても、「改革」の中身は同床異夢で、これから綱引きが始まる。 次回会合で進捗をレビューすることも合意されたが、その時、WTO改革が頓挫するようでは、トランプ大統領のWTO脱退論も現実化する恐れもある。まさに今後の国際秩序の方向を決める重要な局面だ。 第2に、鉄鋼の過剰生産問題での進展だ。 2年前の杭州でのG20首脳会議からこの問題の仕掛けがスタートした。世界の鉄鋼生産の約半分を生産する中国の過剰生産が問題の根源だ。したがってこの問題はその中国がいかに協力するかにかかっている。 杭州でのG20首脳会議で設立された鉄鋼グローバルフォーラムという場には中国も参加している。ここで情報共有など進めようとしているが、中国の動きは鈍い。来年6月までに実質的な報告をすることを盛り込んで、徐々に中国が協力せざるを得ない状況を作っている。 これは鉄鋼問題にとどまらない。中国による過剰生産問題は様々な分野でグローバルな問題を引き起こしている。深刻なのは半導体産業でも起ころうとしている。 そうした問題の最初のテストケースが鉄鋼なのだ。産業全般の深刻な問題に有効に取り組めるかがこの取り組みの成否にかかっている。 第3に、質の高いインフラ支援だ。中国の一帯一路に対しては、「借金漬け外交」との批判が高まっている。受け入れ国の財政の健全性、債務の持続可能性をも踏まえた対応に軌道修正させるために、原則を国際的に合意していく戦略だ。この国際的な仕掛けも2年前のG20から始まっている。先般のAPECで新たな原則が合意され、G20首脳宣言にも盛り込まれた。そして来年に進捗させることも記述された。 このように、WTO改革、過剰生産問題、インフラ支援と中国を巡る問題を一つひとつブロックを積み上げていくように時間をかけて着実に進展させていき、中国を徐々に軌道修正させていく。いわば「ビルディング・ブロック・アプローチ」こそが中国と向き合う戦略だ。 そういう視点で見ると、今回のG20もそのプロセスの一つとして重要な意味を持つことが理解できよう。そしてその成果が問われるのが、日本が議長国である来年のG20だ。 前稿でAPECに関して指摘したが、これらの国際会議の一つひとつを切り取って評価しても本質を見失う。時間軸をもって大きな流れをつかむことが重要だ』、どうも来年のG20議長国である日本の責任は重大なようだ。大丈夫なのだろうか。
・『米中首脳会談は単なる「小休止」  むしろ併せて行われた米中首脳会談に耳目が集まった。しかしこれも米中関係の本質を左右するものではない。 大方の予想通り、トランプ大統領は習近平主席との取引をしたがったようだ。ただし、当然のことながら米国の対中強硬路線の根っこにある本質的な問題は手付かずで、90日の協議で中国側が対応することなど期待できない。制度改正など政策変更を必要とするもので、中国国内の統治、威信にも関わる。 今回の小休止はクリスマス商戦を控えて、さらなる関税引き上げを避けたぐらいのものだ。トランプ大統領は脅しを背景にした、戦利品をツイッターで誇らしげに語っているが、これらは何ら本質的な問題ではない。 例えば、中国の自動車関税の引き下げを勝ち取ったと言うが、米国から中国への自動車輸出はたかだか28万台に過ぎず、今やほとんどは中国で現地生産されている。しかも28万台の内6割以上がドイツ車の米国生産されるSUVなどで、ビッグスリーはわずかだ。実態的にはこの関税引き下げはあまり意味がない。要するにトランプ大統領がツイッターで誇れればいいだけなのだ。 知的財産権の保護についても中国側が対応しようとしているのは、単なる罰則の強化ぐらいだ。米国が要求する知的財産権の問題(強制的な技術移転、ライセンス契約の内外差別)には答えず、すれ違いの対応で知的財産権の保護を強化すると言っているに過ぎない。 こうした中国側の小出し、本質はずしの対応は今後も予想され、中国の国内経済の状況にも左右されるが、関税合戦の駆け引きはしばらく続くだろう。今回の首脳会談後の米中両国の発表もそれぞれの言い分を発表しているだけで、どこまで米中間で合意があったか定かではない。 トランプ大統領の関心は大統領の再選戦略に向かっており、来年も対中国でひと山、ふた山あると見た方がよいだろう』、「来年も対中国でひと山、ふた山ある」だけでなく、日本への風当たりが強まることも覚悟した方がよさそうだ。

今日夕方のニュースで中国の通信機器最大手のファーウェイの副会長が、米政府の要請を受けたカナダ当局により逮捕されたようだ。本件については、後日、取上げる予定。
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