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機構資本主義批判(「機構資本主義」の影 自分の城 自ら守る気概を、官製ファンドはすべて解散せよ、産業革新投資機構vs.経産省 取締役9人辞任の裏側 経産省が狙う「ゾンビ救済ファンド化」に歴戦のプロたちが反旗、産業革新投資機構 「役員大量辞任」の衝撃 官民ファンドvs経産省で問う国の関わり方) [経済政策]

今日は、機構資本主義批判(「機構資本主義」の影 自分の城 自ら守る気概を、官製ファンドはすべて解散せよ、産業革新投資機構vs.経産省 取締役9人辞任の裏側 経産省が狙う「ゾンビ救済ファンド化」に歴戦のプロたちが反旗、産業革新投資機構 「役員大量辞任」の衝撃 官民ファンドvs経産省で問う国の関わり方)を取上げよう。

先ずは、タイトルの参考になった古い記事の見出しだけ紹介しよう。それは、2012年4月10日付け日経新聞「「機構資本主義」の影 自分の城 自ら守る気概を ニッポンの企業力 第5部 国依存の先へ」である。中身の紹介は、旧聞に属するので省略する。

次に、財務省出身で慶應義塾大学准教授の小幡 績氏が本年12月6日付けNewsweek日本版に寄稿した「官製ファンドはすべて解散せよ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2018/12/post-31.php
・『<9月に発足したばかりの官民ファンド、産業革新投資機構と経済産業省が対立している。経産省側が機構の経営陣にいったん提示した高額報酬を、高過ぎると引っ込めたからだ> 産業革新投資機構(JIC)の問題が報道されているが、報道されている限りでは、明らかに政府、経済産業省の行動があり得ないもので、これでは機構側は対立せざるを得ない。 高額報酬が問題なら人材は集まらないし、今回の問題は、政府側が、あいまいなルールにしておいて、後で介入できる余地を残しておこうとした姿勢、考え方が根本的な問題なのだ。 投資はリターンを追及するものであり、政治的な配慮が少しでもあった瞬間に崩壊する。これまでのいわゆる官民ファンド(実態からいって、私は官製ファンドと呼ぶべきだと思っているが)がすべて失敗に終わっているのはそれが理由だ。 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もあれだけのリスクをとるのであればもっとリターンが出るはずで、実際に企業年金基金にパフォーマンスは劣っている』、GPIFのパフォーマンスについては、やはりそうかという他ない。
・『この問題点を解決するために、今回の投資機構は政府の介入を完全に排除し、すべてリターン優先で、という考え方を貫徹するために作ったものであり、それを根本から崩壊させる、政府が出資しているのだから口出しできないのはおかしい、という議論を声高に主張する政府の関係者(一部かもしれないが)は100%間違っている。 私は、そもそも、今回の革新投資機構にも当初から強く反対しており、その理由は、政府が(政治が)介入しないわけがない、と思っていたからで、これだけの人材を集め、これまでとは違うと強調されても、まったく信じていなかったから、やはり、というだけで、怒りも批判する気もない。 そもそも、官製ファンドなど日本では不可能なのだ』、財務省を飛び出してからは、御用学者になる道を捨てた筆者らしい歯切れ良い批判だ。
・『政治のレベルが低すぎる  日本の政治のあり方からして、日本にはそんなことはできない。GPIFがリスクをとることに反対なのも、同じ理由だ。 投資業界や金融業界の所得や金銭感覚には強い嫌悪感があるが、それが現実であるなら、投資を本気でするなら仕方がない。 もっといえば、政治のレベルが極端に低すぎて、何もまともな改革はできないのだが、それがもっとも顕著に現れるのが投資の領域だ。 ひとつ意外だったのは、今回の動きは政治家サイドの愚かさから生じたものだと思っていたが、報道を聞いていると、どうも経済産業省の官僚サイドの幹部もそのような意見のようなニュアンスがあることだ。もしそうだとすると、日本の官僚(少なくとも経済産業省)の終わりを意味する。 いまだに自分たちが日本でもっとも優秀であり、民間でできることは自分たちが本気でやれば何でもできると勘違いしていること、日本を、世の中をコントロールできると勘違いしていることを示している。 これが事実なら、私のこれまでのかすかな政府に対する期待もはかなく消えることになる。 もし官僚ではなく、これまでどおり政治サイドの問題であったとしても、いずれにせよファンドはうまくいかない。 すべての官製ファンドはただちに解散せよ』、痛烈な政治、官僚批判は、読むだけでスッキリするから不思議だ。

第三に、日経ビジネス出身のジャーナリストの大西 康之氏が12月11日付けJBPressに寄稿した「産業革新投資機構vs.経産省 取締役9人辞任の裏側 経産省が狙う「ゾンビ救済ファンド化」に歴戦のプロたちが反旗」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54916
・『「官民ファンド」産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長ら、民間出身の取締役9人全員が10日、辞任を表明した。経産省からの「高額報酬批判」に端を発した経産省とJIC経営陣の喧嘩だが、この日、記者会見した田中氏は「民のベストプラクティスでやれると思ったが、(実態は)国の意思を反映する官ファンドだった」と語り、争点は「報酬ではなく方針」と主張した。安倍内閣による長期政権が続く中、「官と政の奢り」が民のプライドをないがしろにした結果である』、「争点は「報酬ではなく方針」」との主張よりも、マスコミ報道の多くは報酬問題に焦点をズラしたのは残念だ。
・『日経電子版が辞任の第一報  12月9日、午後11時過ぎ、日経電子版が「JIC経営陣 辞任へ」と第一報を流した。すぐさま情報筋にアクセスすると「明日の午後、記者会見する予定だ」と返事があった・・・永楽ビルに押しかけると、すでに受付が始まっており、会場は満員で後ろにはテレビカメラの三脚が林立している。大手メディアには何時間も前から知らせていたようだ。 午後1時、田中社長が登場し、カメラのフラッシュが焚かれる。 三菱UFJ銀行で副社長を務めた田中氏は米国勤務が長く、海外の投資家とも太い人脈を持つ。田中氏以外の8人を確認しておくと 金子恭規 代表取締役副社長 佃秀昭 代表取締役専務COO 戸矢博明 代表取締役CIO 坂根正弘 社外取締役 取締役会議長 冨山和彦 社外取締役 報酬委員会委員長 星岳雄 社外取締役 保田彩子 社外取締役 和仁亮裕 社外取締役』、なるほど。
・『辞任を決めた「その道のプロフェッショナル」たち  金子氏は、元内科医で投資銀行のパリバ・キャピタル・マーケッツの法人事業部長を務め、自ら米国でバイオ専門のベンチャーキャピタルを経営している「海外投資のプロ」。 佃氏は三和銀行から、企業のガバナンスに強いコンサルタント会社エゴンゼンダーに転じ日本法人の社長を務める「ガバナンスのプロ」。 戸矢氏は大蔵省(現財務省)を飛び出し、投資銀行のゴールドマン・サックスを経てアクティブ(物言う)投資家になった「投資のプロ」。 そこに、産業界の「ご意見番」で、安倍首相の知恵袋でもある小松製作所相談役特別顧問の坂根氏と、初代産業再生機構のメンバーで、日本の再生ファンドに黎明期から関わってきた経営共創基盤CEOの冨山氏、日本の金融システムに詳しく(競争力を失った大企業を国が支える)ゾンビ企業の研究などで知られるスタンフォード大学教授の星岳雄氏らが社外取締役として加わる。 「日本でソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)を立ち上げるなら、ベストに近いメンバー」(金融業界関係者)というメンツが、全員辞任するのだから、ただ事ではない』、確かにこれだけのプロ集団が、政府に反旗を翻して辞任するというのは、政府の大失点だ。
・『記者会見では辞任する9人のコメントをまとめた資料も配られた。 「今回の混乱の経緯はともかく、官側の提案に基づいて取締役会で正式決議したことを根底から覆されたことと、両者間の信頼関係が修復困難な中で、今後取締役会議長としてガバナンスを遂行することに確信がもてなくなった」(坂根氏) 「まことに残念なことですが、これでは内外のトッププロフェッショナルを集め(中略)、グローバルな一流どころと組んで仕事をすることは今後、極めて難しいと見るべきでしょう」(冨山氏) 「産業革新投資機構が、ゾンビの救済機関になろうとしているときに、私が社外取締役に留まる理由はありません」(星氏) その道のプロたちが「本格的なSWFを立ち上げよう」意気込みで集結したのに、経産省(や官邸)に翻弄された悔しさが滲み出ている。 田中氏の発言で一番、印象に残ったのは、「(JICでは)民のベストプラクティスを生かすのだと思っていたが、(実態は)国の意向を反映する官ファンドだった」の一言だった。 JICはすでに、金子氏らの活躍により、米国西海岸で最大2000億円の投資枠を持つバイオベンチャー向けの投資ファンドを立ち上げる手続きに入っていたが、経産省と財務省の待ったで白紙になった。 田中氏は「せっかく集めた優秀な人材が雲散霧消してしまった」と悔やんで見せた』、今回の経産省内の動きの真相はまだ明らかではないが、改革派の担当官が作成した報酬や基本方針についてのメモが、次官までが承認された上で田中氏に渡していたということは、官邸からの強い巻き返しの圧力があったのだろう。
・『政府がやらせたかったのは「ゾンビ企業の救済」  田中氏らがやりたがっていたベンチャー投資を止めてまで、国はJICに何をやらせたかったのか。それは紛れもなく、星氏が指摘している「ゾンビ企業の救済」だろう。 JICの前身で現在も活動している産業革新機構(INCJ、志賀俊之代表取締役会長)は、総合電機の負け組液晶事業の寄せ集めであるジャパン・ディスプレイ(JDI)に2750億円、ルネサスエレクトロニクスに1383億円を出資している。国際競争力を失った日本の総合電機の延命に巨額の税金を投じているのだ。 JICは「ゾンビを救済しない」と決めていたはずだが、そこに民と官の思惑の違いがあった。官はやはり、税金を使ってゾンビ企業を救済したいのだ。例えば債務超過を免れるための東芝メモリ売却にはINCJが一枚噛んでいるが、メモリ事業を手放した東芝はゾンビ予備軍である。トルコの原発輸出が厳しくなった三菱重工業も陸海空で失策が続く。経団連会長を輩出している日立製作所とて、盤石ではない。ゴーン前会長逮捕で揺れる日産自動車もゾンビになる恐れがある。 官は公的資金の注入をチラつかせながら、こうした企業の再編を主導することで存在感を増したいのだろうが、それは「健全な金融機能の強化による日本の産業競争力強化」を掲げたJICと真逆の道である。今回は官に三行半を叩きつけた9人に拍手を送りたい』、今回負けた改革派官僚を除けば、その通りだ。官僚の背後には政治があるので、こうした日本の政官の体質はやはり変わってないようだ。

第四に、慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏が12月11日付け東洋経済オンラインに寄稿した「産業革新投資機構、「役員大量辞任」の衝撃 官民ファンドvs経産省で問う国の関わり方」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/253927
・『官民ファンドの1つ、「産業革新投資機構」(JIC)が大揺れに揺れている。トップの高額報酬に絡み、所管する経済産業省との間で内紛が表面化。両者の確執は解消しそうになく、産業革新革新機構では田中正明社長をはじめ、民間出身の取締役全員が辞任する見込みだ。 産業革新投資機構は、前身である産業革新機構を2018年9月に改組して発足した、国内最大級の投資会社だ。前身の産業革新機構は2009年7月、産業や組織の壁を越えて、オープンイノベーションにより次世代の国富を担う産業を育成・創出することを目的に、2024年度末までの期限で設立された。設置期限を設けるのは政府の出資が民業圧迫にならないようにするためである。民間ファンドだけではできないリスクテイク機能を果たすべく、民間とともに政府からも出資し、中長期のリスクマネー、すなわちエクイティー投資の出し手となることが期待された。 そもそも官民ファンドとは、企業に対する出資、貸し付け、債務保証、債権の買い取りなどを行うことを念頭に、国から出資などを受け、民間からの出資も交えて設立した、株式会社等の形態をとるファンドである。政府の成長戦略の一環として、民業補完を原則とし、民間で取ることが難しいリスクを取ることにより民間投資を活発化させ、民間主導の経済成長を実現することを目的として設立された。特に第2次安倍晋三内閣以降、11もの官民ファンド(13法人)が立ち上がった』、「民間で取ることが難しいリスクを取る」というのは、「市場の失敗」を官がカバーするというのが大義名分だが、これは官によりいくらでも経済合理性が歪められる落とし穴である。
・『ジャパンディスプレイやルネサスを手がけた過去  2009年に設立された産業革新機構は、2016年度末までに114件の支援を手がけ、1兆2483億円の利益を上げた。ただ、その利益は、半導体大手のルネサスエレクトロニクスの株式の含み益が多くを占めるとみられる。他方、当初のもくろみだったベンチャー投資では、多くの案件で収益の回収に苦しんでおり、液晶大手のジャパンディスプレイなど経営不振企業の救済色の強い案件で収益を稼いでいるのが目立った。経営再建中のシャープのように、外資による日本企業の買収を阻止するための対抗馬として担がれることもあった。 そうした中、経産省は省内で2017年10月から検討を進め、同年12月に産業革新機構を改組する方向を打ち出した。産業競争力強化法を改正する形で、第4次産業革命関連などの重点政策分野に投資を絞り、新たな投資基準を策定して透明性を高めて、管理機能と投資機能を分離した新機構を新設することにしたのだ。 その動きに追い討ちをかけたのが、2018年4月に出された「官民ファンドにおける業務運営の状況について」と題した、会計検査院の報告だった。産業革新機構を含む14官民ファンド(16法人)について、投資損益を調べたところ、2016年度末時点で全体の4割強にあたる6つが損失を抱えた状態になっていることが明らかとなった。これで官民ファンドのあり方を見直す機運が高まった。 この会計検査院の検査報告以前から、産業革新機構は分割新設されることが決まっていた。それが官民ファンドが乱立したことによって、間接部門の経費が過大になり人材確保も難しくなっている点で、改組のあり方に影響を与えたといえる』、官民ファンドの乱立を問題視しているところは御用学者の筆者らしいが、真の問題は官民ファンドという存在そのものにある筈だ。
・『そうした背景もあって産業革新投資機構は2018年9月にスタートを切った。社長には三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長で、買収した米銀のトップを務めるなど国際派として知られる田中氏を起用。プロの経営者にファンドを運営してもらい、成功した暁にはしかるべき報酬を与えることも当初は視野に入れていた。 産業革新投資機構はAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など革新的な分野に投資して新規事業を創造したり、「ユニコーン」と呼ばれる企業価値の高い非上場企業にも資金を供給したりすることをもくろんでいる。目下予算編成が佳境に入っている2019年度予算で、経産省は産業革新投資機構の投融資規模を拡大させるため、必要な政府出資の積み増しなどに1600億円の予算要求をした』、当初は改革派官僚が立案したらしいそれなりの形にはなっていたようだ。
・『予算と株主は財務相、所管は経産相  この予算から官民ファンドの複雑な成り立ちが浮かび上がる。政府から官民ファンドへの出資は、当然ながら予算の裏付けがなければできない。その予算は何か。 国民が納める税金が裏付けだと、出資が毀損したら、税金が水の泡と消えてしまう。さすがに大切な税金をそうしたリスクテイクには使えない。そこで国の予算制度では、財政投融資にそうした機能が果たせる仕組みを設けている。それは産業投資と呼ばれる。 もとをたどれば産業投資は、アメリカが戦後復興の支援として拠出した資金にさかのぼるが、近年では電電公社や専売公社の民営化に伴い、NTTやJTの株式を売却して得た資金などが原資となっている。その資金は現在、財政投融資特別会計投資勘定で管理している。特別会計であれ、その予算は、国会の議決を経なければ執行できない。 前身である産業革新機構をはじめとする官民ファンドの多くに対し、政府からの出資金(株式会社形態のファンドは株式)は産業投資から出資され、財政投融資特別会計投資勘定において管理されている。財政投融資特別会計は財務省の所管。産業革新投資機構の株式の約95%は政府出資で、その株主は財務大臣である。 一方、JICの業務を所管しているのは、経済産業省。ここに官民ファンドの予算と統治が、省庁縦割りになっていることが浮かび上がる。産業革新投資機構の場合、予算と株主は財務相だが、業務を司る主務大臣は所管する経産相なのである。 今回の産業革新投資機構トップへの高額報酬は、「政府出資の株式会社なのに民間大企業並みに報酬を出していいのか」という批判に端を発している。しかし、もともとはプロの経営者を招聘して、官民ファンドの再構築を図るつもりだったから、後ろめたくなければ、その批判はかわせたのではないか。 各種報道によると、経産省は「報酬が高すぎる」との批判を受けて、11月に一転して、産業革新投資機構に報酬について方針転換を伝えた。田中社長は報酬案の変更には応じたが、設立時の合意とは異なる要求が含まれていたため、経産省からの方針転換には応じなかったという。 このいきさつを、なんと異例なことに、経産省がニュースリリースとして12月3日に発表したのだ。「経済産業省は、平成30年11月28日(水曜日)に株式会社産業革新投資機構から申請のあった、『平成30事業年度産業革新投資機構予算変更の認可について(申請)』について、12月3日付けで認可しないこととする決定を行いました。」というもの。加えて、世耕弘成経産相は12月4日、自らの監督責任を問い、大臣給与を1カ月自主返納すると発表した。ただ、産業革新投資機構と経済産業省の対立は根深いようで、2019年度予算の1600億円もの追加出資の予算要求を、経産省は取り下げる検討に入った。 こうして両者の対立は修復不可能な事態に至り、産業革新投資機構の民間出身の取締役は全員辞任する意向を固めた。 この事案は官民ファンドのあり方について大きな問題提起となる。官民ファンドといえども、株式会社形態をとるファンドは会社法が適用され、民間企業と同じ企業統治(コーポレート・ガバナンス)が求められる。しかし、大株主は日本政府(財務相)。株主たる政府として官民ファンドにどう関わるか、設立されてから今に至るまで、きちんとした整理がついていないことが今回の事案で浮き彫りとなった』、官民ファンドには矛盾点があるにも拘らず、これまで指摘してこなかった筆者にも責任の一端がある。
・『一律的に高い低いは、決められない  企業統治がしっかりした民間企業なら、株主(の代理)が経営責任者に直接、報酬の多寡について話をすることは通常ありえない。しかし、今回は経産省側から田中社長に報酬の多寡について直接提案をしている。産業革新投資機構には、設立当初から報酬委員会が設けられており、本来はそこで決められるものであって、株主として不服があるならば、株主として正式な手続きを経て提案したり、株主総会で議論したりすべきものだ。そうした統治の手続きがきちんと確立していないことが報酬の多寡以前の問題としてある。 また、官民ファンドの経営者としてプロの民間人を招聘するからには、しかるべき報酬を出さなければ、優秀な経営者がその任に就いてくれないという可能性がある。それなら経営者の権限と責任に応じた報酬体系を考えるべきだ。単に一律的に、独立行政法人や官僚機構など他の政府関係の組織の報酬と比較し、決めるべきものではない。大臣の給与より高くしてはならないとか、事務次官並みならいいとか、そういう次元で決めるべきではない。 これらは官民ファンドに存立意義があることを前提とした企業統治の課題といえる。そもそもの問題として、そうした官民ファンドが必要なのかという疑問に、しっかりと国民に向けて責任ある答えを示せなければ、その意義はない。産業投資は、補助金ではなく、出資という形態をとった財政政策の一手段である。民間でのリスクテイクが不十分というのが、今のところの官民ファンドの意義の1つとなっている。今後、官民ファンドの意義を政府や主務官庁がどこまで国民に納得できる形で説明できるかが、問われてくるだろう』、政府に説明を求めることもさることながら、財政学者たる筆者自身の考え方を示すべきだろう。私自身は小幡氏と同意見で、官民ファンドとは政官にとって使い勝手のよい「財布」に過ぎず、止めるべきと考える。
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