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イノベーション(その3)(イノベーションを阻害する「同調圧力」の呪縛、失敗を怖れる人間ばかり集まる大企業にイノベーションはできるのか? 入山章栄が語るイノベーティブ人材論、科学と軍事と民生技術を集約 謎のイノベーション推進組織『DARPA(ダーパ)秘史 世界を変えた「戦争の発明家たち」の光と闇』) [イノベーション]

イノベーションについては、昨年6月27日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(イノベーションを阻害する「同調圧力」の呪縛、失敗を怖れる人間ばかり集まる大企業にイノベーションはできるのか? 入山章栄が語るイノベーティブ人材論、科学と軍事と民生技術を集約 謎のイノベーション推進組織『DARPA(ダーパ)秘史 世界を変えた「戦争の発明家たち」の光と闇』)である。

先ずは、ネットサービス・ベンチャーズ・マネージングパートナーの校條 浩氏が昨年10月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「イノベーションを阻害する「同調圧力」の呪縛」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/179866
・『既存製品の延長線上にある新製品や新サービスの開発は次々と実現できるのに、まったく新しいコンセプトの製品を開発したり、既存製品を破壊するようなイノベーションを起こすことができないと悩む企業は多い。その企業に優秀な人材と多種多様な知識、経験が蓄積されているのにもかかわらず、である。 この答えとしてイノベーションのジレンマが有名だ。既存の市場と顧客のニーズへの対応に集中し過ぎることにより、新しいニーズを見失い、イノベーションができなくなることをいう。 しかし、新たな市場や顧客ニーズを見据えたイノベーションチームを社内につくっても、イノベーションを起こすのが難しいことの方が多い。それはなぜだろうか? 答えを先に言えば、その理由は「同調圧力」にあると考えている。イノベーションを起こそうとする人たちに対する、既存組織や周りの環境からの、変化させまいとする圧力である。 同調圧力は「場の空気」と言い換えることができる。「集団の一員であり仲間としての自分」という自覚を持ち行動すべきという暗黙の了解であり、行動規範のようなものだ。 こうした規範について、各人が意見を言うような直接的なことで「圧力」が顕在化するだけではなく、仲間にとってよかれと思って行動すること自体が空気となり圧力となる。その空気の中で、各人が規範から外れることを抑制するようになる』、同調圧力がイノベーションに対するブレーキ役になっているとは、興味深い指摘だ。
・『一人前の技術者から異端児へ  私自身も同調圧力を経験した。私は社会人となり入社した会社で、写真フィルムの開発部隊に配属された。写真フィルムは「乳剤」と呼ばれる感光体を含む液体を塗布、乾燥して作られる。高度な技術に加えてノウハウの塊であった。 そのため、開発者が実験作業を遂行するには技術や知識だけではなく、“職人芸”も要求された。先輩職人の技術を早く習得しなければ実験ができない。私は入社してから、無我夢中で仕事を覚えた。 実はこの過程では、同調圧力はまったく感じなかった。私が「職人芸を覚えた技術者」として、仲間の信頼を勝ち取っていたからである。 状況が一変したのは、世界で初めての電子カメラの試作品がメディアで発表されてからだ。 私は、これは写真フィルムに取って代わる破壊的な技術だと直感した。それ以降、写真フィルムの将来について上司や同僚と話すようになった。 そのころから私は、仲間の行動規範から逸脱し始めたのだろう。上司からは、「余計なことは心配しないで業務に専念するように」と優しく諭され、同僚たちはデジタル写真についての議論に加わらなくなっていった。 しかし、彼らは声を荒らげるようなことは決してない。先輩も同僚も優しかった。ただ、私の話には反応せず、遠巻きに見ているような雰囲気なのである。私は、職人芸を覚えた技術者から、組織の存続意義に疑問を持つ異端児となってしまったわけだ。 私は、夜まで実験作業をこなしながら、深夜や週末に電子カメラの基礎技術を勉強する二重生活を続けるうちに、心身共に疲れ果ててしまった。 これが同調圧力だと分かったのは、社内で自ら立ち上げに参画した、電子映像技術の研究部隊に異動することができてからである。元の組織の共通規範が及ばない他の組織に移って、初めてその圧力を「見る」ことができたのである』、写真フィルムの開発部隊のなかで、自らの存立基盤を揺るがす電子カメラのことは考えたくないとする同僚や上司の反応は理解できるが、少なくとも上司であれば、社内の適切な部署を巻き込んで検討の場を作るべきであったろう。
・『“起業家精神”は問題ではない  行動生態学・進化生物学者の長谷川眞理子氏と、社会心理学者の山岸俊男氏の共著、『きずなと思いやりが日本をダメにする』(集英社インターナショナル)に、興味深い内容があった。 人間の脳が進化したのは、気候変動により食料が豊富な森林が減り、人間がサバンナに出ていかざるを得なかったからだという。サバンナでは食料を探すのに知恵が必要になるし、他の動物から身を守るには、集団で協力した方が効果的だった。 しかし、集団で行動し、社会を形成するには、今までの動物にない知性が必要だった。それが集団内で上手に生きていくための知恵、「社会脳」だ。それは「同じ空間の中で他者と共存し、協力し合って生きていくための知性」であり、「具体的には集団内での衝突を回避するために他者の心の中を想像する能力が必要」だという。このようにして、人間は、集団生活で社会を形成するための知恵を身に付けていったと考えられる。 少子化などの社会問題も、個人の「心」が原因ではなく、環境により規定された社会や集団の中で、その人が最も生存しやすい条件を選択していることが原因だという。 社会脳の特性を考えると、同じ組織の中で、新しい規範の行動、例えばイノベーションを起こすことが、人間の本性として非常に難しいことが分かる。イノベーションが起こらない理由は、「起業家精神が足りない」などという、心の問題ではないのだ。 そう考えていくと、新たな市場や顧客ニーズを見据えた製品やサービスを生み出すなら、イノベーションチームという別の「集団」と、新しい規範による社会脳をつくる必要があるということだ。そうしないと、既存の組織の持つ同調圧力に押しつぶされてしまう。 既存の集団の社会脳は個人の心構えや頑張りでは変えられないのだから、規範や環境そのものを変えるしかない。具体的には、場所、人事制度、報酬を変えることが考えられる。外部から人材を投入、もしくは異業種のコミュニティーへ自ら入るのもよい。異業種の企業を買収するという手段もある。 人間がサバンナで生き抜いた時代は、集団から逸脱することは死を意味した。イノベーション活動を進めるために既存集団から逸脱した途端に、“キャリアの死”を覚悟しなければならない環境では、誰も新たな社会脳をつくることはできないだろう。 環境を変えられるのは経営トップだ。イノベーションの環境づくりはトップダウンでなくてはならないゆえんである』、、既存の組織の持つ同調圧力は、「社会脳」の存在のためとの指摘は大いに参考になった。ただ、日本企業には同調圧力が殊の外強い点にも触れて欲しかった。

次に、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山 章栄氏が1月29日付け現代ビジネスに寄稿した「失敗を怖れる人間ばかり集まる大企業にイノベーションはできるのか? 入山章栄が語るイノベーティブ人材論」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59554
・『「日本の競争力は今後のイノベーションが握る」。政官財あげて大合唱だ。しかし個々人の中でこれほど腹落ちしない議論も他にないだろう。イノベーションを阻む要因しか社内に見当たらないからだ。 パナソニックなどの大企業に所属する若手社員が有志ではじめたコミュニティ「ONE JAPAN」が発足から2年で50社1200人を擁する団体に育ったのは、そのモヤモヤした空気を突破したいビジネスパーソンがいかに多いかをあらわす。 どうして企業は変われないのか。どうすれば企業で革新的イノベーションを起こせるのか。その発足以来「ONE JAPAN」の意義を認めている早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授は、2018年9月30日に「ONE JAPAN」2周年カンファレンスでプレゼンテーションをおこない、大型台風が迫っていたにもかかわらず集まった1000人が聞き入った。その内容をベースに構成した談話記事をお届けしよう』、「ONE JAPAN」とは初耳なので、興味深そうだ。
・『今のままで10年先はない  今ほど多くの日本企業がイノベーションの必要性を声高に叫ぶ時はかつてなかったかもしれない。その背景には、言うまでもなく人工知能、IoT、ブロックチェーン、将来的には量子コンピュータといった急速なテクノロジーの進歩があり、GAFAのようにそれらを自社の製品・サービスにうまく適応できた新しい企業群が伝統的企業群にとって代わり、産業そのものを根こそぎ変え得る勢力になってきたことがある。 このことは多くの人が共通して認識していることだろう。例えば自動運転テクノロジーの競争の渦中にある自動車産業にいる方々の中には、自社が今のままで10年先を迎えられるとは思えない、というほど深刻な危機感を抱えている方も多い。 では、なぜ日本企業にはイノベーションが足りないのか。イノベーションとは新しいアイデアを生み出すことだ。 どうしたら生み出せるのか、その経営学における原理の一つが、ジョセフ・シュンペーターが80年以上前に提唱した”New Combination”、直訳すると「新結合」である。 イノベーションとは既存の知と既存の知を組み合わせて新しいアイデアを創り出すことになる。すなわち、人・組織は常に新しい知と知を組み合わせ続けなければ、イノベーションはおきないのだ。 ところが人間の認知には限界がある。どうしても目の前で認知できるものだけを組み合わせる傾向になってしまう。 したがって、それを克服するための第一歩が、目の前ではなくて、自分のいる場所からなるべく遠く離れたところを見て、遠くの知を幅広く探索し、それらを持って帰ってきて、いま自分にある既存の知と新しく組み合わせることだ。 これを経営学では”Exploration”と呼ぶ。この概念を私は『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)という著書で「知の探索」と訳した。人間の認知に限界がある以上、この「知の探索」がイノベーションを生むのに果たす役割は決定的に大きい』、「目の前ではなくて、自分のいる場所からなるべく遠く離れたところを見て、遠くの知を幅広く探索し、それらを持って帰ってきて、いま自分にある既存の知と新しく組み合わせることだ」という「知の探索」は、確かに有効そうに思える。
・『TSUTAYAのレンタル事業は消費者金融から発想  日本におけるイノベーションも多くは知の探索で生まれている。例えば必要な部品を必要な時に必要なだけ揃えるトヨタの「ジャスト・イン・タイム」の生産システムは、アメリカのスーパーマーケットの仕組みと自動車生産の仕組みを組み合わせたことで生まれている。 また、TSUTAYAのレンタル事業も同様で、1000円のCDを3日100円でレンタルする仕組みは、同じように元金を貸して利益を取ることで収益を取る消費者金融から発想されたとされる。創業者の増田宗昭氏はそこから着想してあのビジネスに目をつけたと言われているのだ。これくらい遠くを見ないとイノベーションは起きないのである』、TSUTAYAのレンタル事業の原型は昔あった「貸本屋」なのではないかという気もするが、創業者が「消費者金融から発想」と言っているのであれば、そうなのだろう。
・『とはいえ、企業は「知の探索」ばかりしているわけにはいかない。すでに社内に持っている知を改良したり、同質の知を積み重ねたりして、それらをビジネスに活用し収益を生み出そうとする。これを経営学では”Exploitation”、「知の深化」と呼ぶ。 スタンフォード大学のジェームス・マーチが1991年に発表した論文「Exploration and Exploitation in Organizational Leading」で、「知の探索」と「知の深化」の両方をバランスよく実現することが非常に重要であり、このバランスがよい企業、組織、ビジネスパーソンがイノベーションを起こせる確率が高いとされている。これはまた”Ambidexterity”、「両利きの経営」といい、世界のイノベーション研究で多くの経営学者が依拠する考え方だ』、「知の探索」はプロダクト・イノベーション、「知の深化」はプロセス・イノベーションに近い考え方なのではなかろうか。確かに両者のバランスが重要なので、「両利きの経営」が理想形となるのだろうが、現実には難しそうだ。
・『社内から批判「あの部署はカネの無駄」  しかし現実に日本の大企業で「両利きの経営」ができているケースは少ない。先に述べた認知の限界のためであるだけでなく、日本企業の組織に内在する問題もあると私は考えている。ここ10年ほど、多くの大企業で新規事業開発部やイノベーション推進室などが作られた。それらの組織で何が起こっているのか、典型的な例を挙げてみよう。 まず新規事業開発の部門では、最初は元気よく「知の探索」がおこなわれるのだが、3年ぐらい経つと社内で批判され始める。予算ばかり使って結果が出ないことが続くと「あの部署は金ばかり使っているコストセンターだ」などと言われ始めるわけだ。しかし想像も想定もできないものがイノベーションなのだから「絶対に失敗しないイノベーション」などといったものが存在するわけがない。すぐに結果が出なくても、それは当然なのである。 しかし組織では、そんな状況が続くと、なんとか利益を出そうとして目の前で儲かっている分野を深掘りして「知の深化」に頼ることになる。たしかに「知の深化」によって短期的には儲かる。しかし長い目で見たときには、イノベーションに重要な「知の探索」のほうをなおざりにするので、結果的に中長期的なイノベーションが枯渇してしまう。 こうした悪循環に陥り「知の深化」に偏ってしまうことを、経営学では「コンピテンシー・トラップ」などと呼ぶ。世界の経営学の視点から言うと、今の日本の大企業にイノベーションが足りないのは、ほとんどの企業が「知の深化」に偏りすぎている、つまりコンピテンシー・トラップに陥っていると言うことができるのだ』、その通りだろう。
・『失敗を怖れる人間ばかり集まる大企業  ここまでの前提から、なぜ日本企業にはイノベーションが足りないのか、さらに深掘りした二つの理由を提示しよう。まず一つは、日本企業の多くが「失敗」を許さない組織文化を持っていることだ。 誰もがスティーブ・ジョブズを素晴らしいイノベーターだと考えているだろう。それに間違いはない。しかし試みに「ジョブズ 失敗」でインターネット検索してみてほしい。今はかなりマニアックな人しか覚えていないアップルのソーシャルネットワーク「PING」や音楽携帯の「iPodシャッフル」などなど、使いにくく売れなかった彼の失敗作が驚くほどたくさんヒットする。こうした大量の失敗作がある一方で、ほんの一握りの大ヒットがあり、それがiMacであり、iPhoneなのだ。ジョブズは大天才であると同時に大失敗王でもあるのだ』、ジョブズが「失敗王でもあるのだ」というのは初めて知った。
・『ところが、日本の大企業はこうした失敗を許さない。「iPodシャッフル」のような失敗など絶対あってはいけない。徹頭徹尾何一つ間違ってはいけないという組織では「知の探索」などとてもできない。社員からイノベーションなど生まれようがない土壌ができてしまう。 もう一つの理由が人事評価だ。失敗を許さない企業にいれば、社員は失敗を怖れる。人事で評価されないのであれば、あえて失敗をするかもしれないような仕事をする社員などいないだろう。 歴史の長い大企業独特の人事の問題もある。新卒一括採用で終身雇用制度の会社はどうしても自分たちと同じような人間を採用する傾向にある。だから似たもの同士が、同じ組織の中にずっと一緒にいる。これではいけないと思って同業他社を見渡しても、そこでもおおむね自分たちと似たような人たちが集まっている。 右を見ても左を見ても似た傾向の人たちが目の前の知の組み合わせをしているだけでは、イノベーションは生まれない。「最近うちの会社では、新しいことができていない」と思ったら、それは知と知の組み合わせが出尽くしてしまったからなのだ。 このような理由から、「知の深化」に偏った状態から脱して「知の探索」を促すのは、現在の大企業組織ではかなり困難だというのが私の見方である』、残念ながらその通りだろう。
・『手段と目的が混同されるダイバーシティ  では、どうすればいいのだろうか。一つのヒントが、大企業にいながら他業種の多様な人たちと交流できる場を設けている「ONE JAPAN」のような組織だ。私が「ONE JAPAN」に注目しているのは、彼らの考え方と存在価値に共感しているからだ。かれらが出した著書『仕事はもっと楽しくできる 大企業若手 50社1200人 会社変革ドキュメンタリー』に私は「組織でもがきながら、境界を超えてつながる彼らにこそ、日本の未来がある」という推薦文を寄せさせてもらった。 普段は会えない人たちと会うことで「知の探索」に必要なダイバーシティが生まれる。さらに、共通の思いをもって集まる仲間同士には心理的な安全性が生まれるので、失敗も受け入れられやすい。「ONE JAPAN」はこのコミュニティを「実践共同体」と名付けているが、イノベーションが起こるのに必要な条件を持つのは、まさにこのような組織である。私は日頃から、「ONE JAPAN」こそ失敗を許容する組織にしなければならないと主張している。 さらに言えば、ダイバーシティを導入しようとする日本の大企業で起こりがちなのは、その手段と目的を混同するケースだ。2016年に女性活躍推進法が施行されて以来、私の研究室にダイバーシティ推進室長という肩書きのつく方がしばしばいらっしゃる。ダイバーシティを進めるための部署はできたけれど何をしていいかわからないという。 そこで「では何のためにダイバーシティを推進するのですか?」というそもそもの質問をすると、たいてい「わかりません」という答えが返ってくる。会社がそう決めたからとおっしゃる場合もあった。このような認識ではダイバーシティは進まない。ダイバーシティ推進そのものが目的化し、それはイノベーションのための手段であるという理解に乏しいことが多いのだ。 それに対して「ONE JAPAN」はもともとバラバラの個人が集まる組織だから、ダイバーシティな組織になっている。これからもっと多様なバックグランウンドを持つ、多様な業界・多様な年代の人たちを入れて、そのダイバーシティ性をますます徹底してほしい』、「ONE JAPAN」についての具体的な説明がないが、1200人もいるのであれば、多くの分科会に分かれて活動しているのであろう。
・『「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」受賞者たちの共通点  繰り返すと、ダイバーシティはイノベーションを生み出すためのものであり、幅広い知見を組み合わせるための「知の探索」ができる場であると考えられている。しかし、「知の探索」はひとりの個人の中でも起こせる。多様な経験と幅広い知見を持っていたら、その人の中で既存の知と既存の知の新しい組み合わせができる。 これは経営学で「イントラパーソナル・ダイバーシティIntrapersonal Diversity」=「個人内多様性」と呼ぶ新しい概念だ。現在、イノベーティブなことができている人のほとんどは、このイントラパーソナル・ダイバーシティが高い。 リーダー育成のプロである岡島悦子プロノバ社長は「キャリアのタグ=比較優位となる強み」を持てと、よく主張されている。会社の中で「あいつは○○に強い」と「想起される」人になれということなのだが、この考えにしたがえば、自分の中にいくつもタグを持っている人は、それらを組み合わせて発想することができるため、イノベーション人材になり得るわけだ。 私は「日経WOMAN」が主催する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の選考委員をしている。2017年の受賞者たちにはある共通点があった。それはマルチキャリアの持ち主ということだ。異なる職業の経験値を革新的なビジネスにつなげている人たちだったのである。 例えばクリエイターのネットワークを構築し地域創生を手がけるロフトワークの林千晶さんは、花王出身である。その後、ボストン大学大学院を経て、共同通信ニューヨーク支局に勤務したのち日本に戻って起業した。「未来食堂」で有名な社会起業家の小林せかいさんは、元IBMのエンジニアだった。 世界的に評価されるVR用のヘッドマウントディスプレーを開発したFOVEのCEO小島由香さんは、なんと元プロの漫画家だ。彼女はもともと漫画を読むことも大好きで、「漫画の中のイケメンの名前を呼んだら振り返って笑ってくれること」が長年の夢だったという。その発想から生まれたFOVEのヘッドマウントディスプレーは、赤外線で目線の動きを感知する視線追跡機能を搭載して世界中の出資者から12億円を集めた。彼女が漫画家でなければ、この発想自体が生まれなかっただろう。 自身の中に多様性があるからこそ、知の探索ができ、イノベーションを生む。ジョブズの言葉を借りるのであれば、これはコネクティング・ドッツともいえる。事前にはわからないけれど、振り返ると、それぞれの点と点が線でつながっているわけだ』、「イントラパーソナル・ダイバーシティ」が高い人は貴重な存在のようだが、きっと「何をやらせても出来る」ような人物なのだろう。
・『「チャラ男」と「チャラ子」の創造力  もうひとつ、イノベーション人材の特徴について述べたい。 ソーシャルネットワークの分野では、人と人とのつながりを解析して、どのような人脈を持つ人がパフォーマンスを上げるかについて研究されている。 そのなかで最もよく知られている考え方が、スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッターが1973年に発表した論文「The strength of weak ties=弱い紐帯の強み」だ。家族や親友といった「強い結びつき」と、ただの知り合いどうしでつくられる「弱い結びつき」では、どちらのほうが価値のある情報が伝わるのか。一見、親友のほうだと思われるが、実はそうとは限らない。 親友をつくるのは容易ではないが、「弱い結びつき」はごく簡単につくることができる。だから「弱い結びつき」のほうが遠くに伸びやすい。遠くに伸びれば、そこには自分が知らない多様な知見や考えや経験を持った人がいて、そういう人たちが発信する情報は「弱い結びつき」のほうが多く流れる。 私が先ほどから述べている「知の探索」に向いているのは、この「弱い結びつき」なのだ。したがって「弱い結びつき」をたくさん持っている人のほうがクリエイティブであるということが、多くの研究で示されている。 これがどんな人かを一言でいうなら、「チャラ男」と「チャラ子」だ。チャラい奴はたいてい大企業では疎まれる。普段は人脈づくりと称してあちこちの呑み会に顔を出し、名刺コレクターと呼ばれて普段はバカにされている。 しかしいざ会議をやってみると、意外とチャラ男がだれも思いつかないような斬新な視点から画期的な提案をしたりする。そうして部長から「お、チャラ男、やるじゃん!」などと褒められてますます周りから疎まれるわけなのだが、こうしたことが起きるのは、かれらが「弱い結びつき」を持っているからなのだ』、「「チャラ男」と「チャラ子」の創造力」が高いというのは、言われてみれば理解できるが、常識とは異なる意外な結論だ。
・『イノベーションを生む「ONE JAPAN」に注目  そしてこう考えると、「ONE JAPAN」のさらなる重要性がわかるだろう。そう、「ONE JAPAN」こそが、まさに「弱い結びつき」を作れる場なのである。残念ながら、人を企業内・事業部内で抱え込む傾向のある日本の大企業では、人は他企業の人たちと弱い結びつきを作ることが難しい。 そこで「ONE JAPAN」のような、企業の垣根を超えて人と人が繋がるプラットホームがあれば、それは知の探索になるのである。そして、それは個人内の多様性を高めるだろう。 世間には、ONE JAPANを「大企業の若手の仲良しクラブ・交流会」と批判する人もいる。しかし、私に言わせれば、その企業の垣根を超えた交流会こそがまずは重要なのだ。「ONE JAPAN」は人と人が繋がる場だ。ここで多くの今まで知りえなかった多様な人と弱い結びつきを作るはずだ。それ自体に、大きな意味があるのである。 では、ここまで見てきたようなイノベーション人材になるにはどうすればいいだろか。それは別に難しいことではない。まずとにかく「動く」。これしかない。「ONE JAPAN」をその動くきっかけとしてぜひ使って欲しい。 これから日本のビジネスは徐々に「プロジェクト型」に移行していくことになるだろう。個人が自らの中に多様性を持ち、自分らしさが発揮できる機会を求めて「弱い結びつき」の中で多様な人材とプロジェクトごとにつながり、自分が納得できる仕事だけをする。そういう時代が近い将来必ずやってくる。 そうなると、その人にとって企業とは、単なる自分が所属する組織なのではなく、自分らしさを発揮して、自分の作りたい世界を作り、自分がしたいことをするための道具になるだろう。 日本の大企業で働く社員たちにそうした意識が芽生えてきているのは、ここで紹介した「ONE JAPAN」が発足2年で50社1200人も参加するほどのコミュニティになったことが、何よりの証左だろう。イノベーションを生む芽は確実に育ちつつあることを私は実感している』、「ONE JAPAN」の今後の活動を注視していきたい。

第三に、東京大学教授、信州大学教授の玉井克哉氏が1月27日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「科学と軍事と民生技術を集約 謎のイノベーション推進組織『DARPA(ダーパ)秘史 世界を変えた「戦争の発明家たち」の光と闇』」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/191986
・『科学に基づく新たな技術が国家の安全を左右する。1957年、最初の人工衛星スプートニクの打ち上げで旧ソ連(現ロシア)に先んじられた米国は、改(あらた)めてそれを痛感した。 翌58年、対抗策として設立されたのがDARPA(米国防高等研究計画局)である。本書は、かつての機密文書や豊富なインタビュー記録を用い、発足当初から今日に至る足跡をたどっている。 本書が投げかける疑問の一つは、平和研究と軍事研究の境界線だ。旧ソ連との地下核実験禁止条約を締結するため、米国は核実験と地震とを確実に識別する技術を必要とした。そのために、DARPAは大規模な予算を投入し、科学としての地震学を発展させた。軍縮のための基礎科学研究をも、軍事研究と呼ぶべきなのだろうか。 DARPAの実質的な出発点は、ベトナム戦争での60年代以降の秘密作戦だ。軍の旺盛な需要に、彼らは応えた。小型の自動小銃を開発するに止(とど)まらず、ゲリラから隔離した「戦略村」を構想し、空爆による心理的打撃の効果を上げるために社会心理学をも動員した。 もっとも、ベトナム戦争への関与は全体として大きな失敗だった。戦略村は機能せず、社会心理分析は的外れで、枯れ葉剤のように、国際的にも、国内的にも、厳しい非難を浴びた開発成果もあった』、DARPAはインターネットの原型を作ったことで有名だが、ベトナム戦争への関与など功罪相半ばするようだ。
・『研究戦略の観点から興味深いのは、DARPAでの研究者の裁量の大きさと、異常なまでの意思決定の速さである。後世インターネットとして結実した研究は、一人の独創的な研究者の発意を当時の局長がわずか15分で承認したことから始まった。有識者の会議で、長時間かけて意見を集約するようなやり方とは、対照的である』、インターネットの原型を「局長がわずか15分で承認」というのには驚かされた。無論、局長の権限内の予算だったのだろうが、彼我の差を改めて痛感した。
・『とりわけ注目すべきなのは、無人攻撃機、ステルス技術、GPS(全地球測位システム)、自動走行車、音声認識、精密誘導弾、さらにコンピューター間連携による統制支援や兵器群連携システムなどを早くから手掛け、しかもいったんは失敗に終わっていたことだ。 同様のことが、今日も行われている可能性は高い。数十年後に人類が目にする技術は、いま密(ひそ)かに研究されているのかもしれない。成果の公開と自由な相互批判を基盤とする科学研究とは別個に、闇に隠れたダークマターのような技術の世界が、見えないところに広がっているのかもしれない。 近年のDARPAは、有名になった割に活動が低調であり、存在理由すら問われる状況だという。だが、「米中新冷戦」が語られる今日、技術安全保障における米国の躍進をもたらした組織の実像を知る意義は、まことに大きい』、「闇に隠れたダークマターのような技術の世界が、見えないところに広がっているのかもしれない」というのは、不気味だが、とんでもない画期的技術が飛び出してくる可能性があるというのは、楽しみでもある。
タグ:イノベーション ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 入山 章栄 校條 浩 (その3)(イノベーションを阻害する「同調圧力」の呪縛、失敗を怖れる人間ばかり集まる大企業にイノベーションはできるのか? 入山章栄が語るイノベーティブ人材論、科学と軍事と民生技術を集約 謎のイノベーション推進組織『DARPA(ダーパ)秘史 世界を変えた「戦争の発明家たち」の光と闇』) 「イノベーションを阻害する「同調圧力」の呪縛」 一人前の技術者から異端児へ “起業家精神”は問題ではない 新たな市場や顧客ニーズを見据えた製品やサービスを生み出すなら、イノベーションチームという別の「集団」と、新しい規範による社会脳をつくる必要 “キャリアの死”を覚悟しなければならない環境では、誰も新たな社会脳をつくることはできないだろう。 「失敗を怖れる人間ばかり集まる大企業にイノベーションはできるのか? 入山章栄が語るイノベーティブ人材論」 大企業に所属する若手社員が有志ではじめたコミュニティ「ONE JAPAN」が発足から2年で50社1200人を擁する団体に育った なぜ日本企業にはイノベーションが足りないのか 人間の認知には限界 目の前ではなくて、自分のいる場所からなるべく遠く離れたところを見て、遠くの知を幅広く探索し、それらを持って帰ってきて、いま自分にある既存の知と新しく組み合わせることだ 「知の探索」 すでに社内に持っている知を改良したり、同質の知を積み重ねたりして、それらをビジネスに活用し収益を生み出そうとする 「知の深化」 「知の探索」と「知の深化」の両方をバランスよく実現することが非常に重要であり、このバランスがよい企業、組織、ビジネスパーソンがイノベーションを起こせる確率が高い 「両利きの経営」 社内から批判「あの部署はカネの無駄」 「知の深化」によって短期的には儲かる。しかし長い目で見たときには、イノベーションに重要な「知の探索」のほうをなおざりにするので、結果的に中長期的なイノベーションが枯渇 コンピテンシー・トラップ 失敗を怖れる人間ばかり集まる大企業 日本の大企業はこうした失敗を許さない ジョブズは大天才であると同時に大失敗王でもあるのだ 手段と目的が混同されるダイバーシティ 「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」受賞者たちの共通点 イントラパーソナル・ダイバーシティ 「個人内多様性」 「チャラ男」と「チャラ子」の創造力 「弱い結びつき」のほうが遠くに伸びやすい。遠くに伸びれば、そこには自分が知らない多様な知見や考えや経験を持った人がいて、そういう人たちが発信する情報は「弱い結びつき」のほうが多く流れる イノベーションを生む「ONE JAPAN」に注目 玉井克哉 「科学と軍事と民生技術を集約 謎のイノベーション推進組織『DARPA(ダーパ)秘史 世界を変えた「戦争の発明家たち」の光と闇』」 ベトナム戦争への関与は全体として大きな失敗 後世インターネットとして結実した研究は、一人の独創的な研究者の発意を当時の局長がわずか15分で承認したことから始まった 無人攻撃機、ステルス技術、GPS(全地球測位システム)、自動走行車、音声認識、精密誘導弾、さらにコンピューター間連携による統制支援や兵器群連携システム
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