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安倍首相の賃上げ要請(その4)(日本の大病「報われてない感」への特効薬 安倍首相の「官製春闘」への密かなエール、最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由 「韓国の失敗、イギリスの成功」から学ぶこと、最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由 「地域別」に設定している国はわずか4カ国) [経済政策]

安倍首相の賃上げ要請については、2017年6月18日に取上げたままだった。現在は、この問題から派生して統計不正問題がクローズアップされているが、これは別として、今日は(その4)(日本の大病「報われてない感」への特効薬 安倍首相の「官製春闘」への密かなエール、最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由 「韓国の失敗、イギリスの成功」から学ぶこと、最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由 「地域別」に設定している国はわずか4カ国)である。

先ずは、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が1月14日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「日本の大病「報われてない感」への特効薬 安倍首相の「官製春闘」への密かなエール」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00003/?P=1
・『日経ビジネスオンラインが「日経ビジネス電子版」に生まれ変わるのに伴い、コラム名を「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」にちょっとだけ改め、再スタートを切らせていただくことになりました。職場から家庭、社会まで、生きづらい今の時代における人と人の関わりのありようについて綴っていきたいと思っています。今後とも、これまで同様、ご愛読のほど何卒よろしくお願い申し上げます。 で、栄えある(?)第1回となる今回は、「お金と幸せ」についてあれこれ考えてみようと思う。 1月7日に行われた経済3団体の祝賀会で、安倍首相は、「(消費増税で)引き上げた分は全部お返しし、さらにお釣りが来るという、こういう対策を打ちながら、デフレ脱却を確かなものにしていきたい」とコメント。さらに「去年まで、5年連続で最高水準の賃上げが続いた。今年も(引き続き高い水準の賃上げに)期待している」と経営者たちに訴えた。 一方の経済3団体のトップは、「今年の景気は堅調に推移していく」との見通しを述べたと報じられている。 賃上げが続き、好景気か……。「増税でお釣りが来る」という意味不明のコメントも、「景気は堅調に推移していく」という見通しも、ちっとも腑に落ちない。 ふむ、なるほど、この楽観さが“現場”の悲鳴につながっているのだな、きっと。 そもそも首相や経済界トップの人たちの言葉の根拠はどこにあるのだろうか。 経済のことは門外漢なので偉そうなことは言えないけど、素人目にみても世界経済は不安定さを増しているように思う。米国市場を襲ったクリスマス大暴落、中国経済の減速……。地震や洪水などの大規模な自然災害も世界的に頻発している。さらに、ちょっと先まで目を向ければ、五輪不況だって懸念されているし、何よりも2020年以降は社会の超高齢化が一層加速する。 賃上げは「5年連続で最高水準」らしいが、あまり素直にうなずく気にはなれない。「数字」は分析次第で見え方が大きく変わる。数字は嘘をつかないけど、使い方次第で真実を隠す道具にもなってしまうのだ』、経済3団体のトップは本音では先行きを警戒的なトーンで話たかったのだろうが、安倍首相に忖度して楽観的に話したのだろう。
・『増えない賃金、増えるミリオネア  昨年話題になったが、主要7カ国(G7)で日本だけが2000年の賃金水準を下回っていることがOECDの分析で明らかになった。また、日銀によれば、この5年で日本の労働生産性は9%伸びた一方、物価変動の影響を除いた実質賃金の上昇率は2%にとどまることもわかった(日本経済新聞「賃金再考(1) 日本の賃金、世界に見劣り」)。 また、「平成29年賃金構造基本統計調査」のデータを見ても、この20年間、賃金はほとんど上がっていないことがわかる(短時間労働者以外の一般労働者の月額賃金)。 その一方で、18年度における東証一部上場企業の社長の報酬総額は中央値で5552万円で、前年比2.2%増だ(デロイトトーマツ調べ)。また、東京商工リサーチの調査によると、役員報酬が1億円以上だった上場企業の役員数は538人(18年3月期決算)。17年の466人から大きく増え、過去最高を更新している。 約1カ月前の18年12月18日、野村総合研究所(NRI)が「日本の富裕層・超富裕層の世帯数は2013年から増え続け、2000年以降の最多だった」との調査結果を公表した(金融資産保有額5億円以上は「超富裕層」、1億円以上5億円未満を「富裕層」と定義)。 具体的には、+富裕層・超富裕層は126.7万世帯で、最も多かった2015年の121.7万世帯から約5万世帯も増加 +富裕層および超富裕層の純金融資産総額は、15年比で、それぞれ9.1%(197兆円から215兆円)、12.0%(75兆円から84兆円)増加 となった。 お金のデータばかりで恐縮だが、世帯数のデータだといまひとつピンと来ないので、ついでにクレディ・スイス「2016 年度グローバル・ウェルス・レポート」も紹介しておく。 +16年度の日本の富裕層(資産総額100万ドル以上)の数は前年度から74万人ほど増加し、283万人。74万人は世界最大の増加数で、富裕層の数は世界2位 +日本の超富裕層(純資産5000 万米ドル超)の個人は世界最大の伸び率で 3600人。その数は、現在、世界第 6 位 +今後も日本の富裕層の数は増加し、 2021年には27%増になる見込み ……だそうだ』、かつては日本は平等社会といわれたが、いつの間にか富裕層も随分増えたものだ。
・『「リツイートするだけで100人に100万円!」って……  ただ、読者の皆さんもよくご存じの通り、多くの“ミリオネア”は会社員でない。経営者・役員・自営業者・家族従業者などの「資本家階級」などに属し、資産運用している人たちである。 「リツイートするだけで100人に100万円!」などと1億円をプレゼントした経営者が年明け早々話題になったが、あるところにはあるってこと。とにもかくにも「持てる者」と「持たざる者」の格差は確実に広がっていて、言葉は悪いが、現場が汗水流して稼いだカネが、都合よく“ピンハネ”されているのではないかと疑ってしまう。 もちろん世の中には儲かった分をきちんと働く人たちに還元し、現場に足を運び、従業員の声に耳を傾けているトップもいるけれど、先に紹介したデータを見るにつけ、自分たちの報酬水準だけはグローバル並みにし、「持たざる者」など目に入っていないトップが増えているような気がしてならないのだ。 「普通の人々」が眼中にないと思われるのは、政治家やお役人も同じ。先週明らかになった厚生労働省による「毎月勤労統計調査」の“捏造”問題、昨年発覚した裁量労働制の不適切データ問題……。本当に暗澹たる気分になるし、国への不信感も尽きない。 だいたい、「僕たちがんばってます!成果出してます!」とアピールするために、都合よく数字を使う人たちが多すぎる。前述した「平成29年賃金構造基本統計調査」を公表した際の報道発表資料では、「女性の賃金は過去最高で、男女間賃金格差は過去最小」と、“いつもどおり”プラス面だけを強調していたし、当時の野田聖子総務大臣(女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣)が昨年の3月8日の「国際女性の日」に寄せたメッセージでも、「女性の就業者数はこの5年間で約200万人増加し、子育て期の女性の就業率も上昇するなど成果は着実に上がっています」と胸を張ったものの、増加数の半数超が非正規であることには全く触れなかった』、「リツイートするだけで100人に100万円!」で私財から1憶円を出したといっても、遥かに大きな広告効果が出たことだろう。
・『おカネはやっぱり、大切なご褒美  物流大手の日本通運は4月から非正規社員の賃金を引き上げ、正社員との待遇格差を解消する方針だ。これと並行して賃金体系についても、入社年次やキャリアから、能力や担っている役割を重視した形に改める方向で検討しているという。 同一労働同一賃金が盛り込まれた働き方改革関連法の施行も控えており、正社員と非正規の賃金格差は当然、是正されるべきだ。ただ、広がりつつある是正の動きを、諸手を挙げて評価できない自分がいるのもまた事実。待遇格差の解消に伴い賃金体系を変更し、成果主義にシフトする中で、正社員の賃金水準が下がった例も見られるからだ。 非正規と正社員の賃金格差は依然として大きい。30代前半の平均月額賃金は、正社員28.1万円、非正規社員21.1万円で、その差は約7万円だが、年齢が上がるにつれさら広がり、30代後半で約10万円、50代前半では20万円近くにまでなる(平成29年賃金構造基本統計調査)。この差を、非正規の引き上げではなく、正社員の処遇“改悪”によって縮める方向に進む気がしてならないのである。 フォードの創業者のヘンリー・フォードは「1日5ドル」という、当時としては破格の賃金を払うことで、同社を世界的な企業に育てた。彼はのちに取材を受けるたびに、生産性向上と離職対策に大きな効果を上げたこの賃金政策について、「我々が考案した中で最高の費用削減の手段の1つが、1日5ドルの賃金を決めたことだ」と繰り返した。 また、米スタンフォード大学経営大学院教授で組織行動学者のジェフリー・フェファー博士は、経営学を労働史から分析し「人件費を削ることが長期的には企業の競争力を低下させ、経営者の決断の中でもっともまずいものの元凶であることは歴史を振り返ればわかる」と説く。 昨年、Amazonが最低賃金を時給11ドルから15ドルに上げると発表し、大きな話題となった。賃金を上げる企業は優秀な人材を魅了するし、そこで働く人たちのモチベーションだって高まる。高い賃金の仕事を失いたくなければ「肩叩きをされない」ように、働く人たちだって頑張るに違いない。 おカネがすべてではないけれど、おカネは私たちにとって大切なご褒美だし、自分の成果を測る目安にもなる。人間の生きる力であるSOC(sense of coherence)の理論においても、おカネは人の生きる力を引き出す極めて大切なリソースとされる。と同時に、お金は個人の幸福感をも左右する。 人間はやっかいな性癖を持つ生き物で、「他者と比較する」特性がある。平たく言えば「上」か「下」。勝ち組・負け組という言葉が好んで使われるのも、私たち人間は他者のまなざしから逃れるのが極めて難しく、絶対的価値より相対的価値により幸福感や満足感が左右されがちなのだ。だから、比較が容易な「おカネ」は、その意味で重要なのである』、ヘンリー・フォードが「我々が考案した中で最高の費用削減の手段の1つが、1日5ドルの賃金を決めたことだ」と誇った爪の垢でも日本の経営者たちに飲ませたいものだ。人間は「絶対的価値より相対的価値により幸福感や満足感が左右されがち」というのは、確かにやっかいな特性だ。
・『「報われている感」の喪失  たかがカネ。されどカネ。 今の日本の大きな問題は、あらゆる場面で「報われている」という感覚が持てないこと。20年以上賃金が上がっていない状況は、当然、「報われている感」の喪失につながる。 この感覚の背景にあるのが「賃金公平感」だ。これは「自分が要求できると考えている金額が支払われているかどうか」に相当する感覚で、世間の相場など他者との相対的な比較によって決まる。私たちは「もっとお金があれば幸せになれる」としばしば考えるが、「お金があるからといって幸せとは限らない」。賃金公平感こそが、職務満足感や幸福感をも大きく左右するのである。 これまでの「賃金公平感」に関する研究は、同じ職場、同じ産業、同じ年齢など自分が所属する(あるいはした)集団間での相対的賃金比較が、個人の幸福感や満足感へどう影響するかを検討するものが中心だった。しかし、近年は、自分が所属しない集団との比較や、他者ではなく「過去の自分」や「未来の自分」との比較が大きく影響しているという論説が増えた。 その中の1つ、京都大学名誉教授の橘木俊詔氏らの調査結果がとても興味深いので紹介する(橘木俊詔科研調査2012)。 この調査では、比較対象を「過去の自分」「未来に予想される自分」「本来あるべき自分」「職場の同僚や知人」「学生時代の同級生」「親戚・親族」「近所の人」「テレビ、新聞、インターネット、書籍などで知った人」「平均的な日本人」に分類し、対象者に「あなたが今の所得が高いか低いかを評価するときに、もっとも比較しやすい対象」を選んでもらった。 その結果、トップは「過去の自分(27.2%)」、次いで「平均的な日本人(25%)」「職場の同僚や知人(18%)」「本来あるべき自分(11.9%)」「学生時代の同級生(10.2%)となった。 つまり、役職定年になった人がよく、「これからはさ、どんなにがんばっても給料はビタ一文上がらないんだぜ」と、口を尖らせ、やる気を失っていくのは、「過去の自分」との比較に加えて、「本来あるべき自分」とのギャップによると考察できるのである。 橘木氏らの研究では、こうした比較対象が個人の幸福感に及ぼす影響を分析するとともに、本人の所得そのものと幸福感との関連性も調べた。その結果、個人の幸福感に強く影響を及ぼすのは本人の所得だった。一方、比較対象の所得が高いと幸福感は下がり、その効果は「本人所得と幸福感の関連性ほど大きくないものの、統計的に十分に確認できるものだった」のである。 賃金は上がらない、これから上がる見込みもない。その一方で、人生100年時代を迎え寿命は伸びるばかりだ。 もし、もし、本当に「だってあげるカネがないんだもん!」というならわかる。だが、日本企業の内部留保はこの15年で倍以上に増えて446兆円超になり、そのうち221兆円を現預金が占める(2017年度「法人企業統計」)。また、経常利益は11.4%増となったが、設備投資は5.8%増、人件費は2.3%増にとどまった。 なので経営者のみなさま、賃金をきちんと上げてください。もっともっと上げてください。安倍首相どもども、強く、強く、お願い申し上げる次第である。 なんだか「勝手に1人春闘!」になってしまったが……要求を受諾していただけないと、会社の繁栄はありませぬぞ』、説得力ある主張で、その通りだ。

次に、元外資系のアナリストで小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏が2月1日付け東洋経済オンラインに寄稿した「最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由 「韓国の失敗、イギリスの成功」から学ぶこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/263406
・『オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け、『新・観光立国論』『新・生産性立国論』など、日本を救う数々の提言を行ってきた彼が、ついにたどり着いた日本の生存戦略をまとめた『日本人の勝算』が刊行された。 人口減少と高齢化という未曾有の危機を前に、日本人はどう戦えばいいのか。本連載では、アトキンソン氏の分析を紹介していく』、勝算をものにするには、どうしたらいいのだろう。
・『世界中の学者が「最低賃金」と「生産性」に注目  今、アメリカ以外の先進国では、生産性を高めるための政策が最も重要視されています。中でも、最低賃金の引き上げによる効果が注目されています。そして、その理由が大変に興味深いのです。 生産性と最低賃金との間には、強い相関関係があります。これは周知の事実です。 この相関が強くなっているのは、これまで、生産性が高くなれば所得水準が上がり、最低賃金も引き上げられてきたからです。 最低賃金の上昇は、生産性向上の結果だった。このように、最低賃金が事後的に決まると考えるのは、最低賃金を労働政策、強いて言えば貧困対策と捉える考え方です。 しかし、今はまったく逆の発想、つまり最低賃金を「経済政策」と位置づける傾向が強くなっています。「生産性と最低賃金に強い相関関係があるのであれば、最低賃金を引き上げたら、生産性も向上させられるのではないか」と考え始めたからです。 このアイデアを説明する前に、なぜ生産性向上のための手段が注目されているのか、その背景を説明しておきましょう。 コンサルティング会社のマッキンゼーの分析によると、過去50年間、世界の経済成長率は年平均3.6%だったそうです。 経済成長率は人口増加要因と生産性向上要因に分けて見ることができます。過去50年の3.6%という成長率は、人口増加要因と生産性向上要因、それぞれによるものが1.8%ずつでした。 しかし、これからの50年間は、人口増加要因による成長が0.3%まで下がります。生産性向上要因による成長率が今までと同じ1.8%で推移すると仮定すると、世界経済の成長率は2.1%まで下がります。その結果、生産性向上要因への経済成長の依存度が、これまでの50%から86%まで急上昇するのです。 要するに、人口が増加すると、何もしなくても経済は勝手に成長し、政府の税収も伸びます。政府は、人口増加という数の力によって、高齢化により増加する社会保障の負担を捻出することも可能です。このような状況下であれば、政府は賃金など、民間企業の経営に口を出す必要はありません。しかし、人口増加要因による経済成長率が低下すると、政府は生産性向上に注目し始めます。 一方、日本のように人口が減少すると、人口増加要因は経済成長率にマイナスに作用します。経済成長率が下がれば、当然、国は苦境に立たされることになります。社会保障費をはじめ、高齢化によって増え続ける各種の負担分を捻出するためには、どの国よりも生産性を向上させなければなりません。 国が何もしなくても自然と生産性が上がるのならいいのですが、人口増加による経済成長と違い、生産性にはそのような都合のいいことは起きません。ですので、国が主導し、生産性を高めるための政策を打つ必要があります。 最低賃金と生産性の相関関係の強さに注目が集まるようになったのは、生産性向上に有効な方法を探した結果なのです』、今後は生産性向上がカギを握るが、最低賃金の引上げがこれにつながるというのは、トンデモ経済学のように思えるが・・・。
・『「誰」が「なぜ」、生産性を高めるのか  先ほども書いたように、人口増加要因と違い、生産性は自然に上がるものではありません。誰かが意図的に何かをしないと、向上するものではないのです。生産性向上には設備投資や企業内の働き方の変化が必要ですので、意思決定と実行能力を要します。 研究者たちの研究で、生産性を上げる具体的な方法については解明されていますが、どういう動機を持って、誰が生産性の向上を決め、実行するかについては、まだ解明されていません。 生産性向上は競争の結果だという研究者もいますが、同じ国(経済)の中や、同じ業種の中でも、企業間で生産性の激しいばらつきが存在することも確認されていますので、競争だけでは説明できません。 唯一言えるのは、同じ国の同じ業種で、企業間で生産性の大きな違いが生じているということは、明らかに経営者の質の善しあしが、生産性の高低を左右しているということです。生産性向上は経営者の質にかかっていることは、研究によって明らかにされています。 なので、国全体の生産性を高め、経済を成長させるためには、生産性の低い企業の経営者をどう動かし、生産性の向上にあたらせるかが、1つの重要なポイントとして浮かび上がるのです。 国が政策として、企業経営者に生産性を上げるよう誘導する、その手段として最低賃金の引き上げが重要なポイントになります。なぜなら最低賃金の変動は、全企業がその影響を免れないからです。 最低賃金が上がることによって人件費が増えると、経営者は対応せざるをえなくなります。会社のビジネスモデルを変えて、生産性を高めなければなりません。インフレと同じ原理です。最低賃金で働く人を多く抱える生産性の低い企業ほど大きな影響を受けますので、経済の「底上げ政策」と言えます。 この政策はいくつかの国で実施され、期待通り、生産性は向上しました。最低賃金の変動がその国の経済にどのような影響を与えるか、その事例として最も研究が進んでいるのが、イギリスの例です』、「最低賃金が上がることによって人件費が増えると、経営者は対応せざるをえなくなります。会社のビジネスモデルを変えて、生産性を高めなければなりません」というのでメカニズムがなんとなく理解できた。
・『最低賃金引き上げの成功例、イギリス  イギリスは1999年に最低賃金を導入しました。実は1993年からの6年間は、イギリスには最低賃金が存在していませんでした。つまり、1999年の導入は「新規」導入ということになるので、最低賃金導入による経済効果を研究するためには格好の、雑音のないデータが手に入るという好条件がそろっていました。そのため、多くの研究者がイギリスの事例をこぞって研究テーマに選んだので、数多くの分析がされたのです。 また、この事例の研究が進んだのには、当時のイギリスの政治事情というもう1つ別の理由がありました。イギリスの最低賃金の導入は、労働党のブレア政権のもとで実現しました。もともとブレア首相は最低賃金の導入と引き上げを公約に掲げて選挙を戦い、政権を奪取したという経緯がありました。 最低賃金導入に反対だった保守党は、ブレア政権を攻撃する材料として、最低賃金導入のアラを探すべく、多くの研究者に分析を依頼しました。その結果、イギリスの事例は徹底的に研究されることになったのです。反対派の期待もむなしく、イギリスでは最低賃金の導入により、予想以上に大きな成果が生まれました。 イギリスでは1999年から2018年まで、毎年平均4.17%も最低賃金が引き上げられ続けました。この間、最低賃金は実に2.2倍になったにもかかわらず、インフレには大きな悪影響もなく、生産性も上昇しています。2018年6月の失業率は4.0%で、1975年以降の最低水準です。1971年から2018年までの平均である7.04%を大きく下回っています。 次回以降の記事では、最低賃金引き上げのメリットを説明する予定ですが、今回は最低賃金の引き上げに対して、日本で必ず沸き上がる反対意見を紹介し、それらの間違いを指摘しておきたいと思います』、イギリスの成功例は、反対派の保守党がアラを探しを「多くの研究者に分析を依頼」しても、かれらの望んだ結論は出なかったことであれば、確かなのだろう。
・『最低賃金を引き上げても失業者が増えるとは限らない  最も典型的かつ、たくさん上がる反対意見は「最低賃金を引き上げると失業者が増える」というものです。この意見は新古典派経済学の説に基づいています。 新古典派経済学では、市場経済の下、労働市場は価格形成が効率的に行われているという前提が置かれています。そのため、最低賃金を引き上げると、失業者が増えるという理屈が成立します。確かに昔の教科書には、そのように載っていました。 しかし、この仮説はすでにいくつかの国での実験によって否定されています。イギリスを含めて、各国のデータを分析すると、最低賃金をうまく引き上げれば、失業率は下がる事例が多く、上がる例は比較的少数派です。 つまり、実験によって新古典派経済学のこの仮説は完全に否定されたのです。では新古典派経済学の仮説は、何が間違っていたのでしょうか。 答えは、実際の労働市場における労働価格が、教科書のように効率的には形成されていないことにあります。仕事や雇用に関する情報は完全ではありませんし、転職には障壁もあります。また労働者層によって労使間の交渉力が違うので、完全に効率的な価格形成はされないのです。 日本での最低賃金引上げに反対の声を上げる人たちの中には、2018年の韓国の失敗例を持ち出す人もいます。この人たちの意見を否定するのは簡単です。 先ほども説明したように、最低賃金を引き上げると必ず失業者が増えるという単純な事実は存在しません。最低賃金は引き上げ方次第で効果が変わるのです。 最近よく言われるようになったのは、最低賃金を賢く引き上げ、経営者がパニックにはならず、ショックを与える程度に引き上げるのが効果的だという説です。アメリカのある分析によると、12%以上の引き上げは危険な水準であるとされています。韓国政府も事前にこの分析を読んでいれば、2018年のように最低賃金を一気に16.4%も引き上げるという、混乱を招く政策を実施することもなかったのではないでしょうか。 韓国の失敗は、いっきに引き上げすぎたという、引き上げ方の問題でした。経営者がパニックに陥り、経済に悪影響が出たと解釈するべきです。 2018年、安倍政権は最低賃金を3%引き上げました。正しい判断です。しかし、このとき、経営者から悲鳴のような抗議の声は上がりませんでした。ということは、この程度の最低賃金の引き上げは、彼らにとってショックですらなかったと判断できます。この程度の引き上げ幅では、まだまだ不十分だったのでしょう。 2019年は消費税の引き上げも予定されているので、最低賃金は少なくとも5%の引き上げが必要なのではないでしょうか』、「最低賃金を賢く引き上げ、経営者がパニックにはならず、ショックを与える程度に引き上げるのが効果的だという説」は、素人でもなるほどと納得できる。韓国のように、「一気に16.4%も引き上げる」と、経営努力の範囲を大きく超え、失敗してしまうのだろう。
・『人件費削減は愚かな「自殺行為」だ  本連載の第1回「『永遠の賃上げ』が最強の経済政策である理由」では、日本経済を成長させるためには、賃上げによって個人所得を増加させるしかないと提言しました。永遠の賃上げを実現し、国民の所得を増加させるためには、最低賃金の継続的な引き上げが極めて重要です。 今の日本の経営者の多くは、人件費をコストと捉えて、下げることばかり考えています。人口が増加しているのであれば、その考え方に強く反対はしませんが、人口が減少しているときに人件費を下げるのはご法度です。人口が減る中で人件費が下がれば、個人消費総額が減り、回り回って結局は経営者自身の首を絞めることにもなるのです。まさに自殺行為です。 私が常々強調しているように、日本経済は人口増加のパラダイムから、すでに人口減少パラダイムへとシフトしました。そのパラダイムシフトに合わせて、企業の経営も変える必要があるのは言うまでもありません。しかし、嘆かわしいことに、日本の経営者の多くはまだ対応できていません。 しかし、経営者がこのことを理解せず、従業員の給料を増やす気にならなくても、政府は彼らを変えることができるのです。経営者が自主的に賃金を上げないのなら、最低賃金を引き上げて、無理やり賃金を上げさせればいいのです。 継続的に、かつ、上手に最低賃金を上げていけば、経営者は人の配置と資本金の使途、商品自体や商品の単価を工夫しなくてはならなくなります。人口減少で働き手が減るので、失業率が上がることを恐れる理由も必要もありません。 計算の上では、人口減少による悪影響がもっとも大きい2040年まで、毎年約5%ずつ最低賃金を上げていけば、経済は1%ずつ成長することになります。 「最低賃金を引き上げて、生産性を高めても、それはただのお金至上主義ではないか。生産性が上がれば、国民生活が豊かになるのか。そうではないはず」というようなことも時々言われますが、完全に間違っています。 経済が成長しても、必ずしも国民の生活水準の向上にはつながりません。なぜならば、単純に人口が増加すれば、経済は成長するからです。しかし、生産性は国民の生活水準そのものです。 私が主張したいのは、人口が減少する日本では、なかなか総生産額は伸びない。しかし、生産性を高め、個人所得を増やしていけば、個々人の生活水準が上がって、今後ますます厳しくなる高齢化による負担増も乗り越えられるということです』、説得力ある主張で、その通りだ。初めの方で「トンデモ経済学」などと疑ったことを恥じる。
・『社会保障を維持するには生産性向上しかない  「生産性を上げても税金で取られるだけですよ」と言う人もいます。たしかに生産性を上げても、すべての恩恵が労働者に還元されるわけではありません。税負担は増えます。 しかし、社会保障の負担は生産性を上げても上げなくても、いずれにせよ重くなります。生産性を上げていかないと、労働者の可処分所得は減る一方です。もはや生産性を上げるしか、選択肢はないのです。もちろん、税負担の増加以上に生産性が向上することが望ましいのは言うまでもありません。 次回は、最低賃金引き上げのメリットを考えます』、「生産性を上げても税金で取られるだけ」との批判は、敢えて取上げる価値がないほどお粗末な暴論だ。

第三に、同氏による上記の続き、2月8日付け東洋経済オンライン「最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由 「地域別」に設定している国はわずか4カ国」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/264773
・『地域別の最低賃金があるのは世界の「少数派」  前回の記事(最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由)では、日本経済を維持・成長させていくためには、永遠の賃上げを実現し、国民の所得を増加させることが不可欠で、それを実現させるためには、最低賃金の継続的な引き上げが極めて重要だという話をしました。 ただし、日本の場合、最低賃金制度には大きな問題点があります。それは、現在、日本では都道府県別に最低賃金が設定されていることです。この制度を是正し、最低賃金を全国一律にすることは、地方創生に欠かせない制度変更です。 実は全国一律の最低賃金の実現に向けた動きは、すでにスタートしています。 2019年2月7日、自民党内に「最低賃金一元化推進議員連盟」が発足しました。連盟の会長には衛藤征士郎衆院議員、幹事長に山本幸三衆院議員が就任されました。この連盟の発足式では、私が基調講演をさせていただきました。 全国一律の最低賃金導入は、衰退する一方の地方経済の悪循環を断ち切り、地方創生を推進する挑戦的な試みです。 2013年時点で、地域別の最低賃金を導入している国は、カナダ、中国、インドネシア、日本の4カ国のみです。4カ国というのは、全体のわずか3%にすぎません。つまり、全国一律ではない最低賃金を導入しているのは、世界的に見るとかなりまれなことで、日本はそのまれな制度を導入している珍しい国の1つなのです。 「業種別・全国一律」という国はありますが、最低賃金の数が増えすぎて複雑になるので、今はできるだけシンプルにするのが主流です。特に、最低賃金政策に積極的に取り組んで研究と検証が進んでいるヨーロッパでは、業種別でない純粋な全国一律としている国が全体の65%となっていることに注目しています。 国が決めた全国一律の最低賃金を上回る水準で、各地方に独自の最低賃金を決めることを認めている国もあります。アメリカがその1つです。ニューヨークやカリフォルニアなどで、独自の最低賃金を設定しています。ほかにも、ロシアとブラジルが同じ制度を導入しています。 この制度を導入している国と、地域別最低賃金を設定している日本以外の3つの国には、1つ、決して無視してはいけない特徴があります。それは、国土が非常に広いということです。面積で見ると、ロシアが世界第1位、カナダが第2位、アメリカが第3位、中国が第4位、ブラジルが第5位、インドネシアが第15位です。それに対して、日本は世界第61位です。 国土が広いと、自分の住んでいるところより最低賃金が高い地域があっても、移動するには多くの障害をクリアしなくてはいけないので、労働者はそう簡単には移動しません』、地域別最低賃金には何の疑問も持っていなかったが、世界の主流は全国一律というのは初めて知った。自民党内に「最低賃金一元化推進議員連盟」が発足したというのは驚いた。
・『「全国一律」にしたイギリスでは、失業は増えなかった  実は、この点が日本での最低賃金のあり方を考えるうえで、大変重要なのです。 地域別に最低賃金を設定した場合、交通の便がよく、移動が容易なほど、労働者は最低賃金の低い地域から高い地域に移動してしまう可能性が高くなります。最低賃金の低い地域からは、段々と人が減り、経済には大きな悪影響が生じ、衰退していくことになります。 前回の記事で、イギリスが1999年に最低賃金を導入したことはお伝えしました。このときのイギリスでも、最低賃金は地域別にするべきだという議論があったようですが、結局は「世界の常識」である全国一律最低賃金にしました。 イギリスで最低賃金を設定する際には、慎重のうえにも慎重に検討を重ねました。その結果、地方によって物価の違いがあるという事実はあえて無視しました。もちろん、最も賃金水準が低い地方に合わせて、最低賃金を低く設定することもしませんでした。物価と最低賃金導入以前の平均賃金が地域によって異なっていたにもかかわらず、全国一律の最低賃金を導入したのです。 その結果、最低賃金に合わせるための低所得者の所得の引き上げ率は、地方によって異なっていました。賃金水準の低いところでは、引き上げ率はかなり高い水準になりました。 前回も説明しましたように、「労働市場は完全に効率的に価格形成がされているので、最低賃金を上げると失業者が増える」という新古典派経済学の説は、実際の社会での実験の結果、否定されました。実際の事例に基づいて、「労働市場の価格形成はもっと複雑で、単純ではない」ということが海外の論文でも証明されています。 最低賃金は、引き上げ方次第で雇用にはほとんど影響しないことが注目されていますので、イギリスも全国一律最低賃金制度を導入したのです。 確かに、最低賃金の導入によって賃金の水準を大きく引き上げる必要があった地域に関しては、しばらくの間、起業のペースや新規雇用の増加率が相対的に低下しました。しかし、失業率が高まるなどの、既存の雇用者への影響は見られませんでした。 この事実も日本にとって大変重要です。日本ではこれから生産年齢人口が減り、企業数も減ります。ですので、既存雇用への影響は最も大事な確認事項になるからです。 一方で、最低賃金を上げると、それが刺激になって、生産性が上げられることが確認されています』、イギリスは日本以上に地域差が大きいのに、全国一律を導入したというのは大したものだ。日本でも全国一律なら東京一極集中を是正する一因になることも確かだ。
・『「最低賃金の格差」と「地方衰退」の悪循環  今までのように最低賃金の水準を都道府県別のままにしておくと、日本の地方はさらに衰退を続けることになるでしょう。日本は国土がそれほど広くないうえ、全国の交通インフラが整っているので、移動が簡単です。 このまま東京と地方の最低賃金のギャップが拡大し続けると、労働者は地方を離れ、ますます東京に移動してしまうでしょう。以下のプロセスで、地方の衰退が引き起こされるのです。 地方の最低賃金が相対的に低いから、若い人がその地方を出る →人がいなくなるから、経済基盤が弱まる →経済が弱いから最低賃金が上げられない →東京などとのギャップが広がる →さらに人がいなくなる →東京などとのギャップがさらに広がる このような「悪循環」としか呼べないループが、都道府県別の最低賃金により引き起こされているのです。 地方衰退の悪循環は、かなり前から始まっています。事実、地方の最低賃金水準と県民の数を比較すると、0.88という大変強い相関係数が認められます。2040年の人口予想では、その相関はさらに強くなります。地域別最低賃金が地方の衰退を引き起こしている可能性は極めて高いと思います。 前出の議員連盟の議論の中では、外国人労働者の受け入れも、全国一律最低賃金を導入するために考慮するべきポイントとされています。 外国人の受け入れを最も希望しているのは地方の事業者です。しかし、外国人労働者の訪日目的はお金を稼ぐことなので、とりあえず地方から日本での生活を始めたとしても、東京など賃金の高い都会に移りたいと考えても何の不思議もありません。 ですので、今までのように東京と地方の最低賃金のギャップを放置したままにすると、東京への集中は外国人まで巻き込んで、今まで以上に進むこととなるのです。 地方創生を掲げながら、地域別最低賃金制度のもと、東京などとの最低賃金のギャップによる地方の衰退を誘導している政策は、明らかに矛盾しています』、「「最低賃金の格差」と「地方衰退」の悪循環」は、確かに放置できない重大な問題だ。自民党が「全国一律」に目をつけた背景に、この点もあるのかも知れない。。
・『「現状維持志向」と「想像力の欠如」が問題  最低賃金を都道府県別にすると、先ほど説明したような悪循環が生まれることは、ちょっと頭を使えばすぐに想像がつきます。しかし、なぜ今のような制度が長年放置されてきたのでしょうか。 私は、日本独特の「現実に則した物事の決め方」に問題があるうえ、「想像力が乏しい」からだと思います。この問題の根源を理解するためには、そもそも最低賃金がどう設定されているかを理解する必要があります。 厚生労働省のホームページには、最低賃金は次のように決まっていると書いてあります。 「最低賃金は、最低賃金審議会(公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成)において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分に参考にしながら審議を行い決定します」「地域別最低賃金は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており(以下略)」 要するに、最低賃金は福祉政策の一環で、生産性が低い場合には最低賃金も低くて当然と考えられているようです。 しかし、この最低賃金の決め方は大きな問題をはらんでいます。人口が減少し、その影響でデフレになった場合、この最低賃金の決め方では、最低賃金そのものがデフレスパイラルの悪循環を引き起こすことになりかねません。それと同時に、生産性向上という国策を骨抜きにする可能性もあるのです。 現実に則して最低賃金を決めようとすると、現状の支払能力を勘案し、事業者の今現在の予算を事後的にどう配分するかだけに終始してしまいます。この決め方をしていては、現状維持がせいぜいでしょう。 これでは経営者に刺激を与えることはなく、今まで通りに経営すればいいというインセンティブを与えることになります。生産性を高めるインセンティブが働かなければ、所得が増えることもなく、その地域の経済が次第に衰退していくことになります。 私が、今の最低賃金の決め方が想像力に乏しいと感じるのは、今の決め方が、「支払能力が固定であること」を前提としているからです。あたかも事業者の支払能力は変えられないと想定されているのです。 しかし、事業者の支払能力というのは、当然のことですが、可変です。変えようと思えば変えられるものです。生産性を向上させれば、事業者の支払能力も上がります。特に多くの地方にはインバウンドの観光需要が増加しているので、新しいビジネスモデルに挑戦する絶好のチャンスでもあります。 何度も繰り返していますが、人口が減少する以上、日本では生産性を向上させることが国家の死活問題となっています。しかし、現状の事業者の支払能力を前提に最低賃金を設定すれば、経営者を刺激することはできず、またしても彼らを「現状さえ維持できればいい」と勘違いさせることになりかねません。 それでは彼らの中に、生産性を向上させる意欲を生み出すことも、新しい技術を導入する動機を作り出すこともできません。結果、日本の最先端技術の普及を妨げることにもなるでしょう。特に、年齢の高い経営者を挑戦に駆り立てることは困難になるでしょう。 別の切り口からも、地方創生と都道府県別最低賃金の矛盾を指摘できます。 国全体で最低賃金の引き上げに挑戦することが決まって、全国の経営者がそれに向けて生産性を上げることに努力することとなったとします。 地方によっては、経営者たちが「私たちは参加しない、努力しない」と、自分の地域だけ最低賃金が上がらないようにゴネることも考えられます。そうなれば、努力した地方の生活水準が上がって、努力しない地域は衰退したままになります。 そのとき、努力しなかった経営者たちは、必ず「補助金を出してほしい」と言ってくるでしょう。これは、典型的な制度上のモラルハザードです。要するに、この制度のままでは、国策を無視することができて、生産性向上政策が全国津々浦々まで及ばない可能性が高くなるのです』、「今の決め方が、「支払能力が固定であること」を前提としている」が、「事業者の支払能力というのは、当然のことですが、可変です。変えようと思えば変えられるものです。生産性を向上させれば、事業者の支払能力も上がります」というのは確かだ。言い換えれば、静態的に捉えるか、動態的に捉えるかの違いだろう。
・『「低いほうに合わせる」は、やってはいけない愚策  今の日本の最低賃金の制度は、昭和の時代のままです。昭和のままの最低賃金の制度を放置すると、地方経済も昭和のまま置き去りになってしまい、若い世代はますます東京に集中してしまいます。 最低賃金を全国一律にし、さらに水準を引き上げて、全国津々浦々で生産性を向上させる挑戦は、日本にとっては初めての試みなので、期待通りの成果が上がらない可能性もないことはないでしょう。しかし、今までの制度のもとでは 、地方経済は確実に、そして深刻に衰退します。 繰り返しますが、地域別最低賃金制度は世界的に見ると稀な制度です。これを世界標準である全国一律に変えるのは、日本にとって非常に価値ある試みです。もちろん、今度とも地方創生のための支援は引き続き不可欠ですが、全国一律最低賃金によって地方に夢を与えるのは、大変重要で、かつ有効だと私は確信しています。 最後に、私は地方にこそ最低賃金の引き上げが必要と考えています。ですから、全国一律にする際、最低賃金が低い地域に合わせて帳尻を合わせることは許されません。東京の最低賃金を引き上げつつ、地方の引き上げ率をより大きくして、現状1.3倍にも拡大されてきた東京と地方のギャップを縮小させることに、大きな意味と価値があるのです』、「「低いほうに合わせる」は、やってはいけない愚策」というのは言い得て妙だ。全国一律最低賃金について、筆者の腰が最後でやや引けた印象を受けたが、「日本にとって非常に価値ある試み」で、是非実現の機運がもっと高まってもらいたいものだ。
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