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日本型経営・組織の問題点(その6)(日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される、日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」、武田薬品 ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化) [企業経営]

日本型経営・組織の問題点については、昨年8月21日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される、日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」、武田薬品 ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化)である。

先ずは、経済ジャーナリストの岩崎 博充氏が昨年11月16日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/248969
・『今年もあと残すところ1カ月半ほどになった。この1年も、相変わらずさまざまな不祥事が目立った。最近も、油圧機器大手の「KYB」とその子会社による免震制振オイルダンパーの検査データ改ざん、そして自動車メーカー「SUBARU(スバル)」の出荷前検査不正行為。大手出版会社「新潮社」による「『新潮45』休刊騒動」などなどだ。 さらに、日本大学や東京医科大学といった教育機関関係のトラブルも多かった。ボクシング協会やレスリング協会のパワハラ、セクハラといった問題も浮上した。 こうしたトラブルの背景には、市井の人々がTwitterやブログなどで、広く世に情報発信できるようになったことと関係があるのかもしれないが、それにしても日本全体のタガが緩んでいるような印象を持った人も少なくないのではないか。 トラブルの原因はさまざまだが、問題なのはその対応に時間がかかりすぎたり、あるいは対応法が間違っていたりすることが多かったということだろう。 たとえば、KYBの免震ダンパー問題も、15年以上もの間、データ偽装の事実がわかっていながら放置して発表してこなかった。組織ぐるみの確信犯と言われても、反論の余地がない問題だ。スバルの出荷前検査問題に至っては、偽装が明るみに出てリコールを連発した以降も偽装を続けていたことが明らかになっている』、確かに日本組織の「不祥事続発」は海外の日本企業に対する信頼を揺るがす由々しい問題だ。
・『目の前のトラブル対応に終始する日本の悪い癖  もともと日本企業は、昨年あたりから不祥事が次々に明らかになって、その対応ぶりがコロコロ変わるなど大きな批判を受けてきた。印象に残っているケースでは神戸製鋼所や三菱マテリアルといった歴史のある古い企業が、記者会見で返答をくるくる変えるなど不適切な対応が目立った。 とりわけ批判されたのが、問題発生から解決に向かう際に初動ミスがあり、情報開示の姿勢が疑問視されたことだ。経営トップの不適切な発言や不透明な発言も数多く出てきて、日本企業全体の信用度、信頼度に疑問を持たれたケースも少なくない。 たとえば、三菱マテリアルの製品品質データ改ざん問題では、当初本社による記者会見では「偶発・軽微なミス」と主張していたのが、東京地検特捜部の強制捜査などが始まってからは、一転して子会社がデータ改ざん表面化以降も改ざんを続けており、資料隠蔽の指示が本社からあったことまで明るみに出ている。 日立化成や東レ、宇部興産といった伝統ある企業でも、検査データの改ざんなどが発覚。さらに、人事の不透明さといった面でもさまざまな批判が集中した。社長が責任を取って辞任するとしながらも会長職に就くなど人事面でも疑問が持たれる対応が目立った。 こうした企業風土は、現在もほとんど変わっていないような気がしてならない。KYBのデータ偽装事件にしても、スバルにしても日本企業の本質は変わっていないのだ。自ら不祥事を発表した企業も今年は多かったが、まさに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」といった集団心理を連想させる。 日本大学の危険タックル問題は記者会見が油に火を注ぐこととなり、東京医科大学の不正入試問題も大学が当初意図した反響とは大きく違う方向に行ってしまったのではないか。 それだけ状況分析を各大学とも見誤ってしまった結果かもしれない。 ここ数年の日本企業や政府のトラブル対応を見ていると、その大半がとりあえず目の前の問題を何とかしよう、という場当たり的な解決策に終始している、という印象を受けてしまう。『新潮45』の休刊問題でも、当初は社長のコメント発表で、何とか目の前の状況を収拾しようとしたものの、結局は最悪の結果になってしまった』、不祥事対応のお粗末さも目を覆いたくなるような酷さだ。影で指導している筈の危機対応のコンサルタントらも、一体、何をしているのだろう。
・『誠心誠意謝罪するのが問題解決の基本  問題が表面化した段階で、最初から非を認めて、その解決策を示したほうがよかったのかもしれない。 そもそも企業や政府の説明責任というのは、もし誤りがあればそれを正して人々に理解を求めることが大切になる。しかし、報道されていることが真実であった場合、あるいは言い逃れようがなく明白な事実であれば、ごまかすのではなく誠心誠意謝罪するのが問題解決の基本といわれる。問題解決のコンサルタントや専門家の間では、説明責任や謝罪で最も大切なのは「誠意」と言われている。こちら側にミスがあった場合には、誠意をもって謝罪する以外に方法はない、ということだ。 ところが日本ではその基本がないがしろにされることが多い。パワハラがあったのに「パワハラはない」と言い逃れをする、いじめが存在しているのが明白なのに、「調査中」という言葉で誤魔化そうとする。要するに、部分的には認めつつも大筋では認めないなど、誰もがうそだとわかる稚拙な言い訳が繰り返されている。テレビや新聞で忖度されて報道されている、近年の国会を舞台とした議論や言い訳と同じ光景だ。日本中がうそや矛盾に満ちた言い訳に対してマヒしつつあるのかもしれない。 一方、日大アメフト部で反則を犯した学生が記者会見をしたが、彼の誠実で誠意ある対応が日本中の人々に支持されたのも、誠意ある謝罪とその解決策の提示が問題解決への正しい方法であることを示している。 誠意ある謝罪をしたところで、犯してしまった間違いや失敗はそれだけでは許されるものではない。謝罪と同時に、トラブルへの対応や賠償への補償といったものをきちんと示す必要がある。加えて、二度とこうしたことが起こらないようにするための将来的なビジョンを示す必要がある。 こうした一連の問題解決のプロセスが日本の企業や大学、公共団体など、幅広い層に不足しているとみていいのかもしれない。こうした謝罪や説明責任は、個人に対しても同じことが言える。 昨年同様に今年ほど、トラブルの問題処理が問われた年はなかったのではないか。数多くの日本企業や教育機関の広報部門の質の劣化だけではなく、そうした問題解決に優秀な人材や資金を投じていないことも明らかになった。 しかし、それ以上に問われるのは「トップ」の資質だ。不祥事に対して組織のトップが最後まで公に顔を出さずに幕引きを図ろうとしたり、会見を開いたとしても誠意のない対応を見せたりするようなケースが目立つ。 背景にはあるのは、日本企業の多くが終身雇用制を取り、新卒一括採用で採用された社員が、派閥争いを生き抜いてトップに上り詰めたような人が多いからだと、個人的には考えている。イエスマンであることがトップになる条件であり、彼らには謝罪や反論は苦手なのかもしれない』、「広報部門の質の劣化」、「それ以上に問われるのは「トップ」の資質だ」というのはその通りだ。
・『結局はガバナンスの欠如とコンプライアンスの概念失墜  日本企業のトラブルが相次いでいる直接的な原因のひとつは、「コーポレートガバナンス(企業統治)」の欠如が原因と言っていいだろう。とりわけ、グローバル化が遅れている日本企業の中ではコーポレートガバナンスが欠けている企業や団体が目立つ。 最近になって教育機関のガバナンスも問題視されているが、これも海外との接触があまりない機関独特の問題と言っていいかもしれない。 コーポレートガバナンスというのは、東証などを傘下に持つ日本取引所グループの定義によると「会社が株主をはじめ、顧客や従業員、地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する」となっている。 そのためには、「適切な情報開示と透明性の確保」という項目が基本原則として設けられている。適切な説明責任が、きちんとした情報開示とともに実施されることが、ガバナンスを維持する最大の要件の1つと言ってもいい。 コーポレート・ガバナンスは、企業が存続可能な成長を維持するために必要不可欠なものであり、そのためにどんなことをすればいいのかを企業は常に考えていかなくてはいけない。ちなみに、これは政府や自治体などにも言えることであり、ガバナンスができていない団体は今後もさまざまな問題を連発し続けることになるはずだ。 そしてもう1つのトラブルの原因の1つが、「コンプライアンス=法令遵守」という概念の確立だ。当たり前のことかもしれないが、最近の日本企業の不祥事を見ていると、明らかに法律に反していることを平気でやっているケースが目立ってきている。企業利益を追求するあまり法令遵守を怠るといったことは、ありえない話だ。個人よりも企業、といった歪んだ価値観が日本社会には根強く残っている。 内部告発制度が国際的に求められているのも、 こうしたコンプライアンスとの関係が大きい。サウジアラビアのジャーナリストがトルコ国内で殺害された事件も、以前なら絶対に表にできないことが、現在では簡単に表ざたになる。 最近のさまざまなトラブルの原因と問題解決を急がなければ、日本企業はますます世界から取り残されていくことになるかもしれない』、筆者は「コンプライアンス=法令遵守」と狭く捉えているようだが、こうした問題に詳しい弁護士の郷原信郎氏は、「コンプライアンス=社会的要請に応えていくこと」と広義に捉えており、私にはその方が適切なように思われる。ただ、「日本企業はますます世界から取り残されていく」との危機感には同感である。なお、現在、レオパレス21の工事不正が問題化している。この問題は後日取上げる予定だが、これだけ対象戸数が多いと、同社の存続の可能性も問われることになるだろう。そこまでして、工事不正した背景を知りたいものだ。

次に、11月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した健康社会学者の河合薫氏へのインタビュー「日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/186440
・『働き方改革が叫ばれて久しいが、日本人の労働環境が劇的に改善される兆しは見えず、相変わらずブラック企業に関する報道も絶えない。日本人の「社畜化」が改善されないのは、一体なぜなのか。『残念な職場』(PHP新書)著者の河合薫氏に話を聞いてみた』、このブログでも河合薫氏の主張は頻繁に取上げているように、同氏は私が最も注目している論者の1人である。
・『外国人が驚愕する日本人の「居眠り」  日本人の社畜ぶりは海外でも話題です。 実際の業績よりも「疲れ果てるまで働くこと」が評価され、夜は「マラソン・ドリンキング(ダラダラ飲み会)」――日本人が社畜化する背景には、家事などの「ケア労働」への不当に低い評価がありそうだ  「日本と海外の働き方の違いを象徴する例として、海外の人は、通勤電車で平然と居眠りする日本人を見て驚愕すると言います。もちろん治安の差などもありますが、『公衆の面前で昼寝?日本ではそれは勤勉の証しである』というタイトルで、居眠りとサラリーマンの生態を紹介する記事がニューヨーク・タイムズに書かれたこともあります」 そう話すのは、『残念な職場』(PHP新書)の著者で、働き方に関する研究をしている河合薫氏だ。 河合氏によると、日本人の睡眠時間は、世界最短という調査結果が出ているという。米ミシガン大学の調査でわかった国別の平均睡眠時間の比較では、日本人の平均睡眠時間は7時間24分。欧米は軒並み8時間前後を記録しているのに対し、7時間半以下を記録したのは、日本とシンガポールだけだった。 さらにその内訳をひもとくと、最も眠っていないのは働き盛りの中年男性だったという。日本の中年男性は諸外国と比較して、圧倒的に睡眠不足であり、その睡眠不足を補うように「居眠り」をするのだ。 『日本人は眠らない、昼寝もしない、居眠りをするのだ!』というタイトルで書かれたケンブリッジ大学のステガー博士によるコラムでは、日本人の「inemuri」について以下のような文章がつづられている。(河合氏による一部要約)「彼らには到底理解できない日常がある。それは居眠りだ。通勤電車の中で椅子に埋もれるように居眠りしたり、立ったまま居眠りしたり、簡単に公衆の面前で寝る。しかも驚くべきことに周囲もそれを受け入れている。彼らは睡眠時間を削って働いているので、だらしない居眠りが許される。(中略)職場での居眠りは無気力と怠慢の証しではなく、疲れ果てるまで仕事をがんばった結果と評価され、実際の業績より疲れをおして会議に出席するほうが価値が高い。日本人の精神はオリンピックに通じている。つまり『参加することに意義がある』のだ」』、「日本人の平均睡眠時間が7時間24分。欧米は軒並み8時間前後」との比較は、私には差がこれだけしかないのかと逆に驚きだった。「日本人の精神はオリンピックに通じている。つまり『参加することに意義がある』のだ」」は痛烈な批判だ。
・『さらに河合氏によると、日本人は睡眠時間が短いだけでなく、「仕事以外の時間の使い方」が世界基準と異なるという。 「2009年のOECDの調査によると、日本人は家族で過ごす時間は欧米の半分以下という独特のライフスタイルを送っていることがわかりました。その一方で日本人は、コース料理が一般的なフランスやイタリア並みに食事時間が長いことも判明しました」』、「日本人は家族で過ごす時間は欧米の半分以下」というのは、顕著な差で、確かに深刻な問題だ。
・『家族の時間を奪う“マラソンドリンキング“  家族と過ごす時間が少ないのに食事時間が長い傾向にある理由の一つには、「仕事終わりの一杯」が関係しているのではないか、と河合氏は指摘する。前述のコラムのように、「参加することに意義がある」というサラリーマンの姿勢は、就業時間だけに限らない。仕事終わりに男同士で連れ立って飲み歩く文化も日本人特有のものだ。 「海外、特にヨーロッパでは仕事後に飲みにいくような文化はありません。既婚者であれば、退社後は真っ先に家族のもとへ帰っていくのが普通。米国では職場の飲み会があったとしても18時には終わります。『接待』と称し、夜中まで飲み歩くなんて考えられません」 河合氏によると、海外では飲みにいく場合、子どもをベビーシッターに預け、妻も同伴させるなど家族ぐるみでの付き合いが多いという。サラリーマンだけで連れ立っているようなことは、独身者でも珍しいのだ。 日本のサラリーマンの飲み方に関しては、CNNが以下のように論じている。『Salarymanは日本経済を支える役目を果たすために、会社を最優先させる生活を営んでいる。彼らは死ぬほど働いたあとには、顧客や同僚たちと長々と酒を飲む』。「長々と酒を飲む」の原文は『marathon drinking』と表現されている。 「このmarathon drinkingこそが、サラリーマンの食事時間をダラダラと延長させ、家族と過ごす時間を奪い、睡眠時間を削っているわけです」』、marathon drinkingとは言い得て妙だ。これが、「食事時間をダラダラと延長させ、家族と過ごす時間を奪い、睡眠時間を削っている」とは、なるほどと納得した。
・『社畜でいたがる日本人 背景には家事軽視の社会通念  ただでさえ長い労働時間の上、仕事が終わった後は同僚や取引先とダラダラと飲み続け、結果的に家族との時間や睡眠時間が短くなる。まさに「社畜」という表現がピッタリだ。 「だったら仕事が終われば、さっさと帰ればいいじゃん」という声も聞こえてきそうだが、日本人が「社畜化」を余儀なくされている理由には、「社畜でいるほうがラク…という心理が隠されている場合もある」と河合氏は分析する。 「男女関係なく、生きていくためには労働力として売買される『市場労働』と、『ケア労働』のどちらの労働も不可欠です。しかし、北欧諸国と比較して日本では家事、育児、介護などの無償の労働である『ケア労働』が評価されにくく、そのことが家にいることのストレスにつながっている可能性があります」 「育休」がなかなか浸透しないことからもわかるように、軽視されがちな家事育児などのケア労働。日本と同様にケア労働が軽視されがちな社会であるアメリカでは、家庭より職場にいるほうがストレスを感じていない、という研究結果が判明している。 「米ペンシルベニア州立大学の研究チームが、客観的なストレス指標によって検証した結果、男女、既婚未婚、子どもの有無に関係なく、家庭より職場にいるときの方がストレスを感じたときに分泌されるコルチゾール値が低いことが判明しました。つまり、母親だけでなく父親も独身者も皆一様に、家にいるより仕事をしているほうがラクだと感じているのです。早く退社してもフラフラと外で時間をつぶしてすぐに帰宅しないフラリーマンが、いい例ですね」 この研究グループのリーダーである教授は、この結果について「有償である職場の仕事に対し、家庭の仕事は退屈でそれほど報いのあるものではない。それが家庭のストレス度を高めているのではないか」と論じている。 「家庭の仕事を退屈で報いがない…と表現してしまうことは、多くの主婦層に反感を持たれるでしょう。しかし、結局のところいまだに多くの男性(そして女性も)がケア労働をそのように評価している現実が、ケア労働のストレス性をより高めているのではないでしょうか。改めて家事や育児、介護に対する評価を見つめ直さないことには、社畜化の改善は見込めないと思います」 「社会を支えるのは市場労働」という価値観が根底にある限り、ケア労働が本当の意味で評価されることはない。日本のサラリーマンの社畜化は、ケア労働への低評価と表裏一体のようである』、「社畜でいたがる」のが日本人だけでなく、アメリカ人にもそうした傾向があるというのは、初めて知ったが、興味深い指摘だ。

第三に、三井住友アセットマネジメント 調査部が12月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「武田薬品、ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/188584
・『大型買収、国境や系列を超えた提携、主力事業からの撤退などが活発化・・・海外企業では、携帯電話市場で圧倒的なトップシェアを誇っていたノキアがスマートフォンへの対応に遅れると、主力事業である携帯電話端末事業を売却するなど、事業再編が経営戦略の根幹の一つとなっています。 一方、国内企業は中長期的な視点から、各種事業を抱え続け、再編の対象になるのは主に赤字事業にとどまっていました。ただ今年は、社運を賭けた大型買収、国境や系列を超えた提携、かつての主力事業からの撤退などが増加しています。こうしたことから日本企業にとって今年は特筆すべき年となり、株式市場の関心も高まっています。 背景には従来ほど経済の高成長が期待できないことや海外企業との競争が激化したこと、技術革新により商品のライフサイクルが短期化したこと、物言う株主など投資家からの企業価値向上に対する要求が強まったことなどがあります。政府は昨年4月から事業を切り離した場合には税金がかからない「スピンオフ税制」を導入して事業再編を後押ししています。 そこで今回は、特に市場へ強いインパクトを与えた事業再編の事例を振り返ると同時に、来年の展開について見ていきたいと思います』、確かに、日本企業のM&A戦略は変化しつつあるようだ。
・『武田薬品工業、ルネサスエレクトロニクスなどが社運を賭けた大型買収を実施  今年は日本企業でも、規模の拡大、海外開拓、新技術などを狙い、社運を賭けた大型買収に踏み切る事例がみられました。過去の企業買収を見ると必ずしも成功確率が高いとは言えませんが、海外企業が合併や企業買収などを通じて企業規模を拡大していく中、対抗手段として買収に踏み切る企業は今後も増加すると考えられます。 株式市場の関心は高く、本業との補完効果はあるか、買収後は投資に見合う利益を長期的に生み出せるか、買収価格は適正かなどに注目が集まっています。今年、こうした動きをした企業には武田薬品工業、ルネサスエレクトロニクス、カルソニックカンセイなどがあります』、「過去の企業買収を見ると必ずしも成功確率が高いとは言えません」と軽く指摘されているが、これはやはり大きな問題だろう。
・『武田薬品工業が約6.8兆円と国内最大規模の企業買収を実施  今年、特に注目を集めたのは医薬品業界で、超大型買収とノーベル賞受賞により自社開発品が脚光をあびました。 武田薬品工業は5月に、アイルランドの製薬大手シャイアーを買収することで合意しました。買収額は460億ポンド、その時点で約6.8兆円の大型買収となります。 時価総額が3.3兆円前後の武田薬品工業にとって、買収に伴うつなぎ資金の借り入れが、3兆円程度、増資4兆円による大幅な株式の希薄化を伴う今回の決定は、文字通り社運を賭けた買収となります。 12月5日、この買収の是非を問う臨時株主総会を開かれ、買収に使う武田株を新たに発行する議案が3分の2以上の賛成を受けて可決されました。創業家やOBら一部株主はリスクが大きいと反対を表明していましたが、機関投資家などが成長戦略として支持しました。また、年間180円の配当を強調して一般株主の支持を得ました。 買収案はシャイアーでも承認され、買収額は460億ポンド、日本円換算で約6.6兆円(株主総会開催時点)と、国内企業としては最大規模となるM&A(合併・買収)が成立しました。単純合算で連結売上高3兆5000億円と世界8位の製薬会社となる見込みです。 この買収により、シャイアーが持つ高収益の希少疾患治療薬と薬価が高額で高収益な米国事業を取り込み、グローバル化を進めます。買収合意後の株価は軟調に推移しましたが、巨額投資に見合う利益を長期にわたり生み出せるかが今後のポイントとなります』、武田薬品のシャイアー買収は、「文字通り社運を賭けた買収」だが、こんな決断が出来たのも、外国人社長がいたからこそなのだろう。
・『ノーベル賞受賞の研究を活用し、小野薬品工業は自社開発新薬を開発  一方で国内企業の自社開発品も注目を集めました。10月1日、ノーベル生理学・医学賞が発表され、京都大学の本庶佑特別教授と米国のジェームズ・アリソン教授が受賞しました。人の免疫を抑制する効果を持つ「PD-1」という分子を発見し、新たながん治療法開発へと道を開いた功績によるもので、これを応用したのが小野薬品工業の「オプジーボ」です。 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブが共同開発した「オプジーボ」は、20年以上の時間と資金を費やし、京都大学と共同研究により2014年に発売へと至りました。発売当初の極めて高い薬価はその後引き下げられ、患者数の多い肺がんや胃がんなどへの保険適用が拡大したことで、大型新薬となりました。今後も医薬品業界では、買収による薬品ポートフォリオの拡充か自社開発かのどちらの方向をめざすか、戦略は分かれるとみられます』、「オプジーボ」への小野薬品工業の貢献については、ここでは評価しているが、本庶佑特別教授は厳しい見方をしているようだ。
・『ルネサスエレクトロニクスは買収で車載用&通信用半導体の強化へ  半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、自動運転やEVなど市場の拡大が期待される自動車向け半導体と、市場拡大中のIoT 分野 などを成長戦略の柱として経営資源を集中する戦略を進めています。 その一環として9月11日にインテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を約67億ドル(約7330億円)で全株式を取得し、完全子会社とすると正式に発表しました。 IDTはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」の中核技術である通信用半導体の設計・開発に強みがあり、工場を持たず設計開発に特化したファブレス企業です。ルネサスエレクトロニクスは自動車や家電を制御するマイコンで世界トップの市場シェアを握りますが、IDTの技術を活用しIoT時代に必要な通信用などの競争力を強化します。実現すれば日本の半導体メーカーの買収額として過去最大級となります。 10月22日、自動車部品大手のカルソニックカンセイは、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の自動車部品部門のマニエッティ・マレリの買収を発表しました。買収金額は約8000億円の大型買収となります。 この背景には、次世代技術の研究開発に多額の資金や多様な技術を要することに加えて、電気自動車では不要となるエンジンや排気関連の自動車部品企業の生き残りへの強い危機感があります。同社は日産自動車の系列解消に伴い、米投資ファンドの傘下に入りました。エンジン回りの部品が中心でしたが、今回の統合により、自動車部品の総合企業として生き残りを目指します』、私は、電気自動車化が進むなかで、旧来型の部品企業を合併する意味が果たしてあるのか、と疑問も感じるが、もう少しこうした点にも触れてほしかった。
・『中核事業も聖域なく事業再編へ 収益力の底上げに臨む  海運業界は日用品、工業製品などを運ぶコンテナ船と鉄鉱石、石炭などを運搬する不定期船などが主力事業ですが、過剰投資による船腹過剰からコンテナ、不定期船ともに運賃が大幅に下落。不定期船の運賃指数であるバルチック海運指数は、2007~8年の高値から一時90%以上下落しました。 これを受けて今年4月、日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手3社がコンテナ船事業を本体から切り離して、世界第6位のシェアを持つ「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」を設立しました。新会社の立ち上がりは苦戦していますが、中長期的に収益力の底上げに繋がることが期待されます。 総合重工各社は、かつての主力事業ながら厳しい環境が続いた造船事業について、分社化や他社との提携などによる存続を模索してきましたが、ようやく抜本的な対応に踏み切りました。8月10日、IHIが造船の拠点である愛知工場を完全閉鎖したのです。30万トン級の大型造船所での完全閉鎖は日本で初めてとなります。旧三井造船の造船事業を引き継いだ三井E&S造船は、千葉工場での商船建造を停止、事実上商船建造から撤退します。同様に三菱重工業が長崎工場での建造を半減し、橋梁など土木構造物などにシフトしました』、後ろ向きの再編にも意味があるとはいえ、評価が甘過ぎる印象だ。アセットマネジメントとして、当該株式も保有しているので、余り厳しいことは指摘できないのだろうか。
・『系列、国境を越えた提携が加速 グーグルなどに対抗可能な日本企業連合が誕生  自動車業界に変化をもたらしているのはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の動きです。これらを巡って技術開発競争や提携の動きなが加速しています。 10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクグループで新しい「モビリティサービス」の構築に向けて戦略的提携に合意し、両社で「モネ・テクノロジーズ」を設立することを発表しました。これにより、グーグルなどの陣営に対抗できる日本企業連合が誕生します。 今回の提携で注目なのは、トヨタ自動車がKDDIの母体の一つである日本移動通信の設立にかかわり、今もKDDIの大株主である中で、ソフトバンクと提携したことです。これは開発競争が従来の関係を超えた総力戦の段階にきたことを意味します。移動中に料理を作って宅配するサービスや、移動中に診察を行う病院送迎サービス、移動型オフィスなどを届けることなどを目指す方向で、将来はグローバル市場への提供も視野に入れているとしています。 ソフトバンクグループは既に ライドシェア大手のウーバー、シンガポールのGrabや車載用に期待される半導体企業などに対し大規模に出資しています。今回の提携で両社の協調姿勢が強まれば、トヨタ自動車が自動車の開発、生産、販売、メンテナンスにおける強みや自動運転技術のソフト、ハード両面での技術力を実際の開発や商業化により活用しやすくなると考えられます。ソフトバンクグループと協業する事で、グローバルに付加価値を生み出せる可能性が高まったとみられます』、この評価もやや甘い印象だ。
・『事業再編の加速が利益率の向上や株式市場の活性化につながることを期待  来年も株式市場では、加速が予想される大型買収、提携、撤退などに注目が集まるとみられます。特に買収される側の企業にはプレミアム(時価以上の株価)がつくことが多く、注目が高いと思われます。 注目される業界としては、例えば自動車関連、小売り関連などがあげられます。自動車業界に変化をもたらすCASEを巡って完成車、及び自動車部品業界の再編の動きは更に加速するとみられます。 小売業は、今後少子高齢化などから国内市場の拡大があまり期待できない中、深刻な人手不足やネット販売へのシフトなどへの対応を迫られます。10月にユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は、傘下のユニーをドンキホーテホールディングスに売却すると発表するなど、再編の機運は高まっています。競争の厳しいGMS(総合スーパー)、食品スーパー、アパレルなどが注目されます。 こうした取り組みにより、欧米に比べて低いと言われる日本の生産性が向上し、経済、株式市場が活性化することが期待されます。 ※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません』、上記のように総じてやや甘い評価が目立つが、敢えて紹介したのは、最近のM&Aブームを総括的に見るためである。紹介した意味は、それなりにあったと思うが、読者の皆さんはどうだろうか。
タグ:(その6)(日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される、日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」、武田薬品 ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化) 日本と同様にケア労働が軽視されがちな社会であるアメリカでは、家庭より職場にいるほうがストレスを感じていない、という研究結果が判明 ノーベル賞受賞の研究を活用し、小野薬品工業は自社開発新薬を開発 約6.8兆円の大型買収 文字通り社運を賭けた買収 過去の企業買収を見ると必ずしも成功確率が高いとは言えません シャイアー 大型買収、国境や系列を超えた提携、主力事業からの撤退などが活発化 武田薬品工業、ルネサスエレクトロニクスなどが社運を賭けた大型買収を実施 「武田薬品、ルネサス…巨額買収の増加が示す日本型経営の変化」 社畜でいたがる日本人 背景には家事軽視の社会通念 調査部 コンプライアンス=社会的要請に応えていくこと 郷原信郎 食事時間をダラダラと延長させ、家族と過ごす時間を奪い、睡眠時間を削っている ルネサスエレクトロニクスは買収で車載用&通信用半導体の強化へ 中核事業も聖域なく事業再編へ 収益力の底上げに臨む 系列、国境を越えた提携が加速 グーグルなどに対抗可能な日本企業連合が誕生 三井住友アセットマネジメント オプジーボ 京都大学の本庶佑特別教授 『残念な職場』 外国人が驚愕する日本人の「居眠り」 7時間半以下を記録したのは、日本とシンガポールだけ 日本人は家族で過ごす時間は欧米の半分以下 日本人の精神はオリンピックに通じている。つまり『参加することに意義がある』のだ」 家族と過ごす時間が少ないのに食事時間が長い傾向にある理由の一つには、「仕事終わりの一杯」が関係 家族の時間を奪う“マラソンドリンキング“ 日本人は、コース料理が一般的なフランスやイタリア並みに食事時間が長いことも判明 「日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」」 日本人の平均睡眠時間は7時間24分。欧米は軒並み8時間前後を記録 河合薫 ダイヤモンド・オンライン コンプライアンス=法令遵守 結局はガバナンスの欠如とコンプライアンスの概念失墜 誠心誠意謝罪するのが問題解決の基本 目の前のトラブル対応に終始する日本の悪い癖 ボクシング協会やレスリング協会のパワハラ、セクハラといった問題も浮上 問題なのはその対応に時間がかかりすぎたり、あるいは対応法が間違っていたりすることが多かったということだろう 「新潮社」による「『新潮45』休刊騒動」 日本大学や東京医科大学といった教育機関関係のトラブル 岩崎 博充 「日本組織の「不祥事続発」を招くあきれた体質 抜本的に解決せねば世界から取り残される」 東洋経済オンライン 油圧機器大手の「KYB」とその子会社による免震制振オイルダンパーの検査データ改ざん 「SUBARU(スバル)」の出荷前検査不正行為 日本型経営・組織の問題点 武田薬品工業が約6.8兆円と国内最大規模の企業買収を実施 marathon drinking
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