フェイスブック問題(その2)(フェイスブックが「偽情報拡散」のツケを払う日 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 前編、米中間選でも偽情報拡散の脅威 新規制が必要に 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 後編、フェイスブック「情報流出」で崩れる成長神話 稼ぎ頭の欧米で減速 データ保護規制が逆風) [産業動向]
フェイスブック問題については、昨年5月16日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(フェイスブックが「偽情報拡散」のツケを払う日 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 前編、米中間選でも偽情報拡散の脅威 新規制が必要に 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 後編、フェイスブック「情報流出」で崩れる成長神話 稼ぎ頭の欧米で減速 データ保護規制が逆風)である。なお、タイトルから「データ流出」はカットした。
先ずは、在ロンドンのフリーテレビディレクター、伏見 香名子氏が昨年11月2日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「フェイスブックが「偽情報拡散」のツケを払う日 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 前編」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/100500021/102900026/?P=1
・『デジタル広告が、政治や社会の行方を歪めるー国民投票でEU(欧州連合)離脱を決めた英国で、こんな論争が巻き起こっている。2年前の、英国の国民投票と、米大統領選挙におけるロシアの介入疑惑はしばしば報じられているが、具体的に何が起きたのか、未だ日本ではあまり知られていないのではないか。 これは、国民投票の際、離脱派公式団体「Vote Leave」が、SNS(交流サイト)などで使用したCMだ。 https://www.youtube.com/watch?v=AFqmeptq0AU 労働者階級の白人男性2人がパブで、当時開催されていた、サッカー欧州選手権を観戦している。試合結果を全て正確に当てれば、5000万ポンドもの賞金を得られる、と言うキャンペーンCMだ。 一見、スポーツくじのCMにも見える動画の内容をよく聞くと、労働者の2人はサッカーの話をしていると装いつつ「5000万ポンド?それは毎日英国がEUに渡している金額と同じだ」「トルコやアルバニアもEUに入るんだろう?」「欧州議員は年間、7万5000ポンドも稼ぎ、4万5000ポンドも経費が使えるんだ」と、さりげなくEU批判を展開している。 この中の「トルコのEU加盟」は明白な誤情報だが、繰り返しこのCMを流された有権者のどれだけが、真偽のほどを確認しただろうか。 デマの拡散だけでも大問題だが、実はこのCMにはもう一つ隠された目的が存在した。それは、このキャンペーンに参加した「白人・労働者階級の男性有権者」を特定し、離脱派に投票させることだった。 5000万ポンドもの賞金を獲得するには、キャンペーンサイトで、まず欧州選手権の試合結果予測を記入する。そして、氏名、住所、メールアドレスなどと共に、国民投票でどちらの陣営に投票するかも答える。 離脱派はこの個人情報満載のデータを基に、通常は政治に関心を示さず、投票させることが難しい層に食い込んだのだという。その目的は、当然ながら「標的」に明らかにされてはいない。 こうしたデータを基に、テレビや広告板など、公の場では見えないSNS上で、人々が個人的に大切に思う事象について、なんら審査も規制も受けず、投票を左右するようなデジタル広告が「標的」に流された、というのが疑惑の概要だ。 一国の行方を占う選挙や国民投票で、このようなデジタル戦略が許されるのか。英国でこの倫理性を問い、問題の全容解明に動いたのは、英下院・超党派議員11人で作られた、デジタル・文化・メディア・スポーツ(DCMS)特別委員会だ。 この問題に関連し、フェイスブック(以下FB)から不正に個人情報を取得していたケンブリッジ・アナリティカ社(以下CA社、のちに破産)の内部告発者を招いたヒアリングは、議会史上最多の視聴者を記録したという。 一方で、問題の渦中にあるFBのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、度重なる委員会の招致にも関わらず、本人が出席し、証言することを拒み続けた。委員会は10月31日、11月27日にカナダ議会と合同で行われるヒアリングに、再度ザッカーバーグ氏の出席を要請した。要請文にはザッカーバーグ氏に対し、「あなたの証言は遅すぎ、急を要する」「この歴史的な機会に両議会に対し、FBがどのようにして偽情報の拡散を止め、ユーザーのデータ保護に挑むのか、説明すべきだ」と強い文言が並んだ。 文書を作成したのは、特別委員会のデーミアン・コリンズ委員長だ。政治家、そして英与党議員としてこの問題に一石を投じ、一躍時の人となったコリンズ委員長に先月、この問題の危険性と、今後の取り組みを聞いた』、英国の議員が難しい問題に積極的に取り組んでいることに、さすがとうらやましく感じた。強い出席要請を断ったザッカーバーグ氏も恐れをなしたのだろう。
・『人々には本物と偽物のニュースの違いが分からない Q:インターネットと民主主義をめぐる問題に取り組み始めたきっかけを教えてください。 コリンズ委員長:私が委員長を務める特別委員会がフェイクニュースについて最初の調査を始めたのは2017年のことです。当初、私たちは主に、(2016年の)米大統領選に関する研究に非常に興味を持っていました。大統領選に関連したフェイクニュースの規模は、膨大でした。 FB上では偽ニュースの方が、本物のニュースの上位20位の記事よりも読まれており、後者の読者はかなり少数でした。また、英国の放送局などが行なった研究では、多くの人たちが、本物と偽ニュースの区別をつけることが困難だということがわかりました。 偽ニュースは、あたかも本物であるかのように装っていたのです。私たちが懸念したのは、SNSとテクノロジーの躍進によって、報道には大きな視聴者・読者層ができましたが、反面、人々には本物と偽物の違いがわからないということ。そして、このことが選挙において及ぼす、民主主義への影響です。その時点で、多岐にわたる問題を調査し始めました。 Q:そして、この過程でCA社のスキャンダル・・・が明るみになったのですね。 コリンズ委員長:そうです。調査開始時には、これはコンテンツの問題だと捉えていました。フェイクニュースや「悪いコンテンツ」を含む、偽情報です。こうしたコンテンツをどう見極めるか、そして、IT企業はこうした悪いコンテンツにどう対抗すべきなのか、ということでした。 調査が進むに連れて明白になったのは、問題の一部はコンテンツだが、データを利用した「ターゲティング」(顧客層の標的設定)も問題だ、ということです。有権者の投票活動に影響を及ぼそうとする偽情報の拡散は、有機的に行われたものではありませんでした。有権者のデータ・プロファイリングを用い、具体的な情報をもとに標的を定め、拡散されたのです。 標的となったほとんどの有権者は、自らが標的にされたことを知りません。誰が自分を標的にしているのかも、わかりません。コンテンツを目の当たりにしても、それが一体どこから流れてきたのかも知り得ません。 CA社に類似する企業の問題に取り組み始めた頃は、こうしたデータ・セットはどう構築されたのか、データはどう利用されたのかをまず理解する必要がありました。そして、英国などの国で、データ保護法が順守されているのか、という点にも着目しました。 Q:今年3月、この問題が明るになった頃は大騒動となりましたが、ご自身はまずどのように感じましたか? コリンズ委員長:人々は2つのことにショックを受けたと思います。まず、人々はオンライン上、自分の「データの足跡」が残っていることを知っていたとしても、実際どれ程自分に関する情報が集められていたか、知らなかったと思います。 また、FBを見ていない時でも、人々の行動に関する情報がFBによって集められていたことや、アンドロイド(グーグルの基本ソフト)を使った携帯を持っている人は、FBのアプリがその人の通話やメッセージ履歴を全て記録しているなどとは知らなかったでしょう。 その上、FBが匿名のデータを研究者、開発者に共有し、ツール開発に役立てていたなどとは知らなかったと思います。CA社のような会社がサード・パーティの開発者を通じてユーザー・データを得て、それを自分たちのターゲット・広告に使ったこと。そして、そのデータを保存し続けたこと。入手したデータから構築された情報を使って、(政治的な)キャンペーンに役立てていたことなどです。 人々はそんなことが起きているとは、理解していませんでした。CA社の事件が公になり、社の倫理性が問われました。特に、幹部がおとり取材(チャンネル4ニュース)で話したような内容です。 IT企業が無断で人々の情報を得ていたのみならず、人々が、個人情報を絶対に共有したくない(CAのような)会社に流していた、などと言うことです。CA社をめぐるこうした騒動により、世界的にこの問題が注目されたと思います』、「FBを見ていない時でも、人々の行動に関する情報がFBによって集められていたことや、アンドロイド(グーグルの基本ソフト)を使った携帯を持っている人は、FBのアプリがその人の通話やメッセージ履歴を全て記録している」というのは初耳で、ここまでやっているのかと驚かされた。
・『データによって「支援者は誰か」を予測できる Q:具体的にはどんなことが起きたのですか? コリンズ委員長:CA社はデータ・アナリティクスとデータ・ターゲティング・ツールを使います。選挙において、人々を標的にするために使うのです。世界中のビジネスが常にこの手法を使いますし、FBなどのサイト上でFBのために情報を集め、それを広告業者に売る広告ツールが使用されています。こうしたものは、標準的なツールです。 CA社の活動が問題になったのは、FBの規約に違反していたからです。ユーザーのデータを収集し、ユーザーだけではなく、ユーザーの友人のデータも収集していました。 このデータは、オンライン上のアンケートを利用してデータを収集していた、ケンブリッジ大学の研究者から取得したものです。当時のFBの規約では、学者がこうした研究を行うことは適正でした。しかし、やってはいけなかったのは、そのデータを第三者に売却することでした。 CAはこうした第三者の学者、開発者らと共にデータ収集を行い、このデータをターゲット・広告に使用したのです。当時、なぜ(このデータに)価値が置かれたかといえば、オンライン上の人々の心理プロファイリングを研究していた学者や研究者は、人々の考えや「何が人々を動かすか」ということを思案していたからです。 彼らは、ある人のFBの「いいね!」を分析することで、その人の非常に精密なプロファイルを構築することができると考えていました。その人の行動を友人よりも正確に、予測することができたのです。 このことが、なぜ特に選挙キャンペーンにおいて重要かといえば、(ある特定の陣営を)支援すると予測される層を探すことがしばしば、そして迅速に必要になるからです。データによって正確に「支援者が誰か」を予測することができれば、キャンペーンをより効率的に、標的を絞って行えるようになります。 また、プロファイルをもとに、受け取る人によって、さりげなく適応させたメッセージを送ることもできます。例えば、ある有権者層を知り、そのうち1万人のプロファイルを構築したとしましょう。ある特定の方法で、彼らを標的にするのです。そのデータセットを持ってFBに行き「ここに1万人分のプロファイルがある。これを元に、この1万人に最も近い、FB上の100万人を見つけてほしい」と依頼します。 FBはこれをはじき出します。つまり、FB上の全ての人のプロフィールは、必要ないのです。FBユーザーに関する非常に良質なサンプルさえ手に入れば、効果的に人々を標的にすることが叶います。 ここに、重大な問題が2つ存在します。1つは、CA社がこのデータ、つまり8700万人分のユーザー・プロフィールを不当にFBから入手したこと。これだけのデータがあれば、米国全体の有権者のプロファイリグが可能なほどの、巨大なデータベースを構築できます。 FBは、この事実を2015年の年末に知りながら、このことを明らかにせず、その上、データを取り戻し、確実に破壊する手段すら講じませんでした。 もう一つ、FBユーザーに対する倫理的な問題が存在すると思います。ユーザーにはプロフィールで、自分の支持政党を明らかにしない選択肢があります。しかし、FBが、人々がどう投票するかを予測し、その予測を政党の戦略担当に売却し、それをもとに、政党が有権者を標的にすることは、正しいことなのでしょうか。 私は、政治キャンペーンにおいて、データが有権者を標的にするために使われていることに、非常な不安を感じます』、FBがこうした悪質な世論操作に関与していたとは、許されないことだ。
・『Q:調査を進める中でこの3月、CA社の内部告発者、クリストファー・ワイリー氏らの証言を聞かれました。そこでは何が明らかになったのですか? コリンズ委員長:ワイリー氏はCA社に勤務していた頃の、自身の経験に基づく証言を行いました。彼は、(EU離脱派公式団体だった)Vote Leaveが行ったキャンペーンと、資金の使い方に懸念を抱いていました。そして、複数の団体が連携してキャンペーン用の資金を使うことを禁じる、英国の選挙法違反の可能性を、白日の下に晒しました。 この違反行為について、現在、ワイリー氏の主張を認めた選挙管理委員会が、調査を行っています。ワイリー氏はまた、CA社がどのようにデータ収集を行い、それがどうキャンペーンに使われたのか、その驚くべき内容を話してくれました。この事実があって、データマイニング、ターゲティング、そして有権者のプロファイリングについて、理解を深めることができました。 もう一つ、ワイリー氏の証言で重要だったことは、彼が特別委員会に証拠文書を提供し、これを我々が公開できたことです。これは、CA社やCA社のために働いていたケンブリッジ大学の学者ら、そして、FBの相互関係を証明するものでした。 (これまでの様々な指摘が)単なる個人の意見や、推測であるという領域を越え、この3者の関係や、彼らが集めたデータがどう使用されたのか、証拠となるものだったのです。内部告発者としてのワイリー氏の証言は、実際に何が起きていたのかを明らかにした、非常に重要なものでした』、「CA社のために働いていたケンブリッジ大学の学者ら」は、学問的興味で参加したのかも知れないが、利用目的まで思いが至らなかったとすれば、単なる「学者バカ」だ。
・『ザッカーバーグ氏は質問に答える義務がある Q:その一方で、FB社のザッカーバーグ氏は委員会での証言を拒否したのですね? コリンズ委員長:ザッカーバーグ氏が証言を行わないことは、非常に残念です。彼には、世界中で毎日FBを使用する20億人のユーザーに対する責任があります。FBが行ったことは誤りです。外部にデータを漏洩したこと、データが収集され、FBユーザーの有権者が広告によって標的にされたこと。こうしたことを通じて、FBは利益を得たのです。経営判断を行うのはザッカーバーグ氏ですから、彼はより多く、そして自ら進んで公的な場で質問に答える義務があると思います。 Q:FBのようなプラットフォームは、現状こうした疑問に対し、どのような姿勢でいるのですか? コリンズ委員長:彼らに責任を負わせるのは多くの場合難しく、またこちらの質問に彼らから明確な答えを得るのは困難です。はっきり質問しても、彼らは決まって情報を開示しません。調査の際、全体的な問題や古い案件を何度も繰り返させられ、とても苦痛でした。 特に、FBとの当初のヒアリングでは、(CA社が)FBからデータを集めた話は一切引き出せませんでした。ワイリー氏の証言によって、やっとその事実がわかりました。その後になって「証言を行った者は、その事実を知らなかった」と言い出す始末です。 こうしたIT企業が信頼に値しない現実が浮き彫りになってきます。信頼を回復するために、彼らはより努力すべきでしょう。「過去には過ちを犯し、なぜ人々がこの問題に懸念を抱くのか理解する」と彼ら自身が表明すべきです。将来的にはもっとオープンでいるべきですが、現在、彼らはそれを怠っています。ザッカーバーグ氏によるリーダーシップを人々は待っているでしょう。 Q:つまり、こうしたIT企業をめぐる現状は「無法地帯」に等しく、今こそ規制されるべき時なのでしょうか。 コリンズ委員長:その通りです。ITセクターは急速に成長し、これまでは無法地帯でした。常に新しいツールが開発されるため、しばしば新セクターだと考えられがちですが、これらの企業は実際巨大で、裕福です。その他のほとんどの分野では、ITセクターがやっているような、これだけの膨大な消費者データや情報を利用する場合、規制を受けています。 サーチ・エンジンとしてのグーグル、ユーザー生成動画コンテンツを有するユーチューブ、そしてSNSとしてのFB。これらのプラットフォームの運営の仕方は、現在独占状態です。そのため、何らかの規制組織が彼らの行いについて監督し、問題があれば介入する必要があります。 Q:ドイツでの例について講演されたことがありました。 コリンズ委員長:ドイツは世界で最も早く、有害なコンテンツに関し、IT企業に法的な責任を課すことを決めた国の一つです。これは、ドイツのヘイト・スピーチ法を犯す、違法なコンテンツについて適応されます。 FBは現在、この法に違反するコンテンツを削除するまでに、24時間の猶予しか与えられません。削除しない場合、FBが責任を負うことになります。FBは結果として、法に従うために莫大な資金を投じて対応する羽目に陥りました。他国もこのことを注視しています。 ドイツは歴史的に他国とは法的に異なる立場を取っていますが、そのことに関わりなく、法的枠組みを作れば、企業がそれに反応することを示したものです。ドイツでは、違法コンテンツは必ず削除されます』、FBの酷い隠蔽体質には改めて驚かされた。ドイツの姿勢には大いに学ぶべきだろう。
・『「プラットフォームの中立性」は終えるべき Q:英国でも同様のことが起きるのですか? コリンズ委員長:私たちは特別委員会の報告書において、IT企業による「プラットフォームの中立性」は終えるべきだと勧告しました。プラットフォームは限定的に、違法、そして有害なコンテンツに関して法的責任を負い、これらを削除しなければならず、削除されない場合は、法的責任が生じるというものです。 また、有害なコンテンツがどのようなものか、明確にする必要もあります。私たちはこれを特別委員会の報告書に明示し、政府もこの問題に対してコンサルティングを行っています。年明けには、「インターネットの安全性に関する戦略」に関する白書が発表されます。まず成されるべき事は法的枠組みを作り、IT企業の責任は何であるか、また、有害コンテンツについて対応を怠った場合の処罰について、明確にすることです。 Q:こうした規制が進むと、言論の自由との関係はどうなるのでしょうか。 コリンズ委員長:英国には言論の自由が存在しますが、混雑した劇場で「火事だ!」と叫ぶ権利は誰にもありません。言論の自由は、危険でも有害であってもなりません。私たちが目指しているのは、オンライン上、人々がコミュニケーションの形として他者を傷つけるような情報共有に関し、調停を行うことです。 そして、IT企業に対し「有害コンテンツの拡散を可能にするようなインフラを提供し、そうした行為を知り得ているならば、対処する責任がある」と通告することです。 銀行の例で言えば、もし銀行がマネーロンダリングを疑ったとしたら、当局にそれを報告するのは銀行の義務です。なぜ、IT企業にはこのことが課されていないのでしょうか』、確かに、「プラットフォームの中立性」を隠れ蓑に、プラットフォーマーが責任を回避するのは、許すべきではない。
・『Q:2018年は、「シリコン・バレーのエリート」たちにとってどんな年になると思われますか? コリンズ委員長:2018年は、彼らにとって重大な分岐点となるでしょう。彼ら以外の社会が、IT企業は何を行い、どう利益を得ているか、そして、彼らが有しているデータと情報の危険性について学んだ年です。 私たちは、彼らが今後、より大きな責任を課されるよう追求していきます。社会、そして、ユーザーである顧客に対する彼らの責任を、より追求します。コンテンツを審査するためにより多くの資金を投じ、有害コンテンツに対処し、また、ユーザーからのコンテンツに関する通報に対応します。 過去にこうしたプラットフォームが享受してきた中立の立場については、新たな責任を課せられることにより、失われることになるでしょう。将来、この年を振り返った時、その他の産業や物質的経済においてなされるように、今年がインターネット上、コンテンツとデータの規制が必要であると、検討し始めた年と位置付けられるでしょう。その基盤となる原則は「実社会で容認されないものは、オンライン上も認められない」ということです。 Q:英国は、こうした規制に関し、先駆的な役割を担うことになるのでしょうか。 コリンズ委員長:英国に正しいことをしてほしいと願いますし、この議論においてのリーダーとなり得ると考えています。既に、良い環境は整っています。機関としては欧州で最大規模である、情報コミッショナー事務局(ICO)が重要な調査を行っており、権限も拡大されています。欧州一般データ保護規則(GDPR)という法律もあり、これによって、欧州の消費者は世界でも最も高いレベルの権利を得ています。 ICOは英国での事態を監督しています。そのため、英国はこの議論においてリーダーになることができると思います。しかし、それよりもテクノロジーとインターネットに関する、現代社会に即した規制のシステムを確実に設置することの方が大切です。(後編に続く)』、英国が先進的な法規制で模範を示してくれることを期待したい。
なお、FBの悪辣ぶりについては、1月13日のこのブログ「トランプ大統領(その38)」でも取上げているので、参考にされたい。
次に、上記の続きの11月5日付け日経ビジネスオンライン「米中間選でも偽情報拡散の脅威、新規制が必要に 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 後編」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/100500021/103100027/?P=1
・『米大統領選挙と英国のEU離脱国民投票をきっかけに、デジタル広告事業者と民主主義の熾烈な戦いが繰り広げられている。11月6日に迫った米国の中間選挙でも既にSNS(交流サイト)上で、偽情報の拡散が懸念されている。 この戦いを制すのは、シリコンバレーか民主主義か。英下院・特別委員会のデーミアン・コリンズ委員長に引き続き聞く。 Q:EU離脱に関する国民投票は「乗っ取られた」と感じますか? コリンズ委員長:乗っ取られたとは言えませんが、ロシアの機関が国民投票の際、英国の有権者に接触する意思があった、とは言えるでしょう。サンクトペテルブルクの複数の機関を発信元とした、幾万もの偽ツイッターアカウントが、EU離脱支持のプロパガンダを流していたという、多くの研究がなされています。 フェイスブック(以下FB)に関しては、まだデータに関する研究が出ておらず、この事実を証明する証拠が少ないのですが、さらなる事実が浮き彫りになるかもしれません。ですから、介入の意思はあったと思いますが、どの程度の影響力があったかは不明です。 これに関連したもう一つの問題は、離脱派の公式団体の資金の使い方です。そこでも違法行為があったのか、現在選挙管理委員会が調査を続けています』、どんな調査結果になるか楽しみだ。
・『Q:コリンズ委員長は米FBIとも密接に連携しています。米国の中間選挙ではどんなことが起きていますか? コリンズ委員長:米中間選挙では、(2016年の)大統領選と同様の、ロシアの介入が起きないよう、注力されています。未だに、大統領選における介入の度合いは全て明らかになっていません。 公的な情報では、ごく少数のFBアカウントが基盤となっており、これらが大量の広告を流す役割を担っていました。実際は、これよりもはるかに多いのかもしれません。 米国では選挙を守るため、ロシアの介入ネットワークを特定し、これを正しいタイミングで破壊する目的があります。選挙戦に際し、有権者が見るもの、聞くものに影響を及ぼそうとする外的組織がいるのであれば、損害を最小限に留め、影響させないようにしています。 FBは政治的メッセージや広告に関し、新しい規制を発表しました。そして、政治的な広告を流す組織に対し、その存在を明らかにさせ、さらには過去の実績をユーザーが見られるようにするという、新たな責任を課すことを決めました。中間選挙までに何か起きるか、選挙介入はあるのか。非常に注目され、関心は高いと思います』、FBの「新しい規制」は単なるポーズとの見方もある。実際の行動を注視する必要があろう。
・『世界のどこからでも、SNSを通じて有権者を標的にできる 日本では改憲に向けた国民投票が予想されますが、広告に使える資金の上限が定まっておらず、またデジタルキャンペーンに対する規制も十分とは言えません。このことは、危険であるとお考えになりますか。 コリンズ委員長:日本は他の国の選挙などで起きたことを検証する必要があるでしょう。また、現存の制度を検証し、強化すべきです。世界のどこからでも、ある国の有権者について選挙人名簿を入手できれば、人々が利用するSNSを通じて有権者を標的にすることができます。 世界の誰もが、自分の存在を隠してこれを実行できます。有権者がどう投票するか説得するのではなく、人々がSNSを利用する傾向を形作ることができるのです。長い時間をかけ、有権者のニュースフィードにどんなコンテンツを流すか、操作できます。有権者が以前は気にも留めていなかった問題に、懸念を示すよう誘導できるのです。 このことは、何らかの方法で監督されなければなりません。英国で行ったように、日本の有権者に対しても、コミュニケーションの透明性を構築することを薦めます。それは、選挙や国民投票の結果を操作しようという「悪意を持った何者か」、あるいは外国政府から身を守る最良の手段です。 誰がこのメッセージを流しているのか。その者はどの国にいるのか。以前はどんなメッセージを流してきたのか。有権者が分かるようにするのです。そうすることで、有権者は、見ているメッセージについて、独自の判断を下すことができます』、「日本では改憲に向けた国民投票が予想されますが、広告に使える資金の上限が定まっておらず、またデジタルキャンペーンに対する規制も十分とは言えません」というのは大問題だろう。悪質なデジタルキャンペーンの「草刈り場」となる事態だけは回避すべきだ。
・『SNSを通じた選挙戦は、今や世界の常識です。多くの国では、人々のニュース情報源はFBです。英国では半数程度の人々がFBからニュースを得ていますし、その他の国ではその比率はもっと高いでしょう。FBはウェブへの入り口なのです。 FBのようなサイトで、人々が政治的なニュースコンテンツの中で、見せられるものを操作できるのであれば、それは強力なツールだと言えるでしょう。人々が情報の出所を知り、装備することが必要です。偽情報を流すソースがわかっているなら特定し、対応しなければなりません。 Q:政府と広告企業が手を携えてしまえば、人々を守る術はないのではないでしょうか。 コリンズ委員長:英国には(選挙や国民投票のキャンペーンにおいて)資金の上限が定められています。資金の多い陣営の意思が、より多く反映されてはならないからです。英国の選挙は、この原則に従っています。 今やどんな選挙でも、あるだけの資金を投じてSNSサイトを使い、有権者を標的にしていると思います。最も影響力が見込めるからでしょう。 3つのことが可能です。まず特定の候補者に投票させること。有権者を抑圧し、ある候補に投票するのをやめさせ、対立陣営に取り込むこと。そして、区分別投票率を用い、一定の年齢層だけを狙って投票を働きかけることもできます。 選挙や国民投票が公正に実施されるためには、全ての陣営が公平に、SNSを通じて有権者につながる機会が与えられるべきだと思います』、その通りだ。
・『データ保護法や選挙法を最新の状態に保つべき Q:他の政治家などが「データ問題」と聞いて尻込みするなか、コリンズ委員長はこの問題に取り組むため、一からテクノロジーの勉強をされたと聞きました。学ぶプロセスは困難でしたか? コリンズ委員長:困難というよりも、非常に面白いと感じました。この調査は私たちにとって、発見の旅でもありました。IT企業がどう動いているのか、そして、データ・ターゲティングの分析がどう行われているのかを理解する機会でした。 以前は、こうした詳細を検証する必要はありませんでしたが、これによって、IT企業の機能の仕方や、人々がこうしたツールを使ってどう目的を果たすか、検証する道を開いたと思います。この「目的」は悪い目的である場合もあります。私だけが学んだというよりは、他の人々にも学ぶ機会であったと思います。今年は発見と教育の年であり、将来的に、この問題に対する見方が変わっていくと思います。 Q:コリンズ委員長の様にこの問題を重く見て、改善しようという政治家もいれば、このテクノロジーを自分のために利用しようとする政治家も存在すると思います。これに対抗する方策は何でしょうか。さらなる規制や法律でしょうか。 コリンズ委員長:まず、選挙法において、こうしたテクノロジー利用の存在を前提とすることが必要です。例えば英国では、有権者の郵便受けにビラを配ったり、ビラを郵送する際には、そのビラに、誰がビラ作成の資金を提供したのか、そして「これは売り込みを目的としたものだ」と明記しなければなりません。 しかし、ネットやSNS上では同じルールが適応されません。ですから法改正し、適応しなければなりません。そうすることで、有権者はメッセージの出所と、彼らがどう標的になっているのかを知ることができます。 また、有権者の政治的意見について、データ収集と保持に関する規制も存在し、欧州のデータ規制によって、保護されています。政党なども含む、ごくわずかな特定組織だけが、人々の政治的意見に関する情報を保持することが認められています。 コンサルティング会社やキャンペーン・グループが、人々の政治的意見に関するデータを保持し、それを有権者に無断で選挙広告に使用するならば、その倫理性や違法性を問うべきでしょう。こうしたデータ保護法や選挙法を最新の状態に保たなくてはなりません。特定の政策で、このような新技術への対応を行うべきです』、コリンズ委員長の積極的な取り組み姿勢には頭が下がる。日本の国会議員もその「爪の垢」でも飲んでほしいものだ。
・『Q:この問題を追ってきた著者のジェイミー・バートレット氏(参考:狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖)は、インターネットと人々の間に「戦争」が起きていると語りました。インターネットは民主主義の味方でしょうか、敵でしょうか。 コリンズ委員長:インターネットは民主主義にとって、味方でも敵でもないと思います。インターネットが人々をつなぐツールであったことから「民主主義を助けるもの」との暗黙の前提がありましたが、偽情報を流し、人々を誤った方向に導く使い方をすれば、民主主義を壊すものでもあることがわかります。 人々は、現状流れてくる情報に対抗し、またそれを分析するツールを未だ手にしていません。テクノロジーの革新とメッセージを流す技術に、まだ追いついていないのです。インターネットが独裁政権を支援することも、全く可能だと思います。こうしたツールを「民主主義を支援するもの」として維持する責任は私たち市民にあり、私たちが守らねばなりません。 Q:この「戦争」をどう戦おうと思われますか。また、勝算はあるのですか? コリンズ委員長:もちろんです。経済のどのセクターでも、世界のどんな組織でも、究極的にルールや規制で監督できないものはありません。私が化学薬品会社を運営していたとして、水源を汚染していたら、政府は対策を講じるでしょう。新法を作り、水源汚染を止めるのです。 現在のIT企業がこの巨大なネットワークを構築し、ネットワークが悪用され、社会が汚染されているのなら、政府が介入し、こうした企業が構築したビジネスによって生じた有害なものから、人々を守る規制を設けなければなりません。これは、経済のほとんどの分野において普通のことですし、消費者を守るための規制が進むでしょう』、コリンズ委員長の基本的な考え方がしっかりしているのに改めて驚かされた。
・『調査では、EU離脱派の資産家が顧客情報を利用したのか明らかに Q:データと政治キャンペーンをめぐる事象を捜査してきた情報コミッショナー事務局(ICO)の最終報告が11月初めに発表される予定ですが、どんな結果になると思いますか。 コリンズ委員長:ICOは、これまで誰もアクセスできなかったデータと情報を有しています。政治におけるデータ利用に関する調査は、非常に重要なものになるでしょう。この調査によって、EU離脱派を支持した資産家が所有する保険会社の顧客情報が、国民投票で利用されたのか、明らかになるでしょう。この資産家は否定していますが、利用されたのであれば、これは深刻な事態です。 また、ICOによるケンブリッジ・アナリティカ社(前編参照:以下CA社)に関する調査では、CA社が取得したデータが最終的にどうなったのか、アクセスしたのは誰なのか。このことを解明できたのかが焦点でしょう。ロシアがデータにアクセスしたと言われていますが、では、アクセスしたのは具体的に誰で、誰がこれを利用したのか。ICOの調査から、こうした重大な事実が明らかになるでしょう。 Q:今の時代、データをめぐる事象について、教育は必須だと以前話しておられました。どのように人々を教育できるとお考えですか? コリンズ委員長:オンラインコンテンツに関するメディアリテラシーの教育は、より必須になるでしょう。SNSは今や、人々がインターネットに通じる入り口です。私たちは有害コンテンツを特定するツールを作る手助けはできますが、特に教育現場と連携したキャンペーンが必要になると思います。 実施には巨額が伴うため、IT企業がユーザーが使えるツールをデザインし、作る役割を果たすだけでなく、教育にかかる資金も投じるべきです。学校の支援もしなければならないでしょう。 調査委員会では、IT企業から学校でのユーザー教育にかかる費用を徴収する提言を行いました。また、ICOにも資金を提供させる事です。銀行セクターでは消費者を守るため、金融行為監督機構の資金の一部を銀行が払っています。ICOの仕事も同様ですから、IT企業が資金面で今より大きく貢献するべきです』、「(ICO)の最終報告が11月初めに発表」、日本では最終報告の記事はまだないようだが、報道してほしいところだ。
・『Q:学校教育というと、何才くらいを想定していますか? コリンズ委員長:小学校くらい、そして中学校の早い時期、8-12才くらいが最も効果的だと思います。しかし、全ての市民がこのことから教訓を得るべきです。大人でも気づかないことはあると思います。 特に、若いユーザーが流れてくるコンテンツに対し、より多くの疑問を持つようにするべきでしょう。今後こうした問題は、悪化の一途をたどります。 現在のテクノロジーでは、嘘まみれの映画を作ることも可能です。例えば、ある人がしたこともないことを行ったかのように、語ったこともない言葉を語ったかのように、そして、全く行ったことのない場所に行ったかのように見せる、「完全にリアルなフィクション」も作り出せます。将来的に、現在よりもフェイクコンテンツの特定はより困難になり、(教育の)必然性も高まるでしょう』、その通りだ。
・『政府によるデータ利用には人々の承諾が必要 Q:前述のバートレット氏が言っていたことですが、将来的に人々は、管理された社会をより好ましく思うのかもしれないと指摘していました。管理しやすい社会は、政治家の視点から、好ましいことなのではないでしょうか。 コリンズ委員長:政府の権力行使は、人々の承認を得て行わなければなりません。例えば、医療システム改善において、AIや機械学習の役割はどんなものでしょうか。がん検診をより早く行うために、AIをどう使うか。個人データを深く理解することにより、疾病の超早期発見やリスクを特定することなどです。 これは非常に有益かもしれませんが、人々はこうしたデータ利用を承諾しなければなりません。民主主義国家において、こうした権力の行使には、人々の許諾が必要です。このことについて、真剣な議論がなされるべきでしょう。 素晴らしい恩恵を得られる反面、これまでにないほどの、個々の市民のデータが収集され、保持されることも意味するからです。ここまでデータ保持の許諾が政府や医療機関に与えられるのなら、その情報を渡してはならない相手に流れないよう、どう保護するのか、ということも大切です。 Q:私たちの知る形の民主主義は、分岐点にあるとお考えですか? コリンズ委員長:インターネットが政治的な議論をどう変えたのか、検証しなければならないでしょう。これまでに使用されてきたコミュニケーションの方法、つまり、これまでの情報の共有の仕方は今後、失敗するでしょう。このことを直視しなければなりません。 インターネットは政治的な議論を変え、ある部分では有効的に変わりました。小さなコミュニティが彼らにとってとても大切な、ある問題についての認知度を高めたいのなら、これまでにないくらい、インターネットはその問題意識を共有する人たちに広めることを容易にします。それは大きな恩恵です。 しかし一方で、ある人々が巨費を投じ、透明性のないところで人々の考えに影響を及ぼすことも可能です。人々を守り、それを止める術は現在ありません。ですから、恩恵と弊害の両方を見なければなりません。 私たち立法を預かる者は、政治的なキャンペーン方法、情報共有のあり方、そして、ユーザーに対する情報源の開示に関する法や規制を常に検証すべきです。 市民がきちんと情報を得られる状況を確保する。単に情報を得られるだけではなく、どの情報に重きを置けるか、判断できるようにすることです。ニュース番組やウェブサイトの編集者のみならず、アルゴリズムが影響力を行使できる時代です。市民自身がこの価値判断をできる状況を作らねばなりません。 Q:希望は持てますか。 コリンズ委員長:希望はいつでも持てますが、問題を認識していなければなりません。今年起きたことは具体的な問題が何だったのか、理解し始めた年です。 1年ほど前に調査を始めた際、あるベテラン議員が「面白い題材だし、検証するのは正しいことだが、何ができるというのか見当もつかない」と話していました。しかし、調査によって、実はできることが多いことがわかりました。民主主義を守るために何をしなければならないかがわかり前進した、重要な一歩だったと思います』、「民主主義を守るため」の先駆的な動きに期待したい。
第三に、11月12日付け東洋経済オンライン「フェイスブック「情報流出」で崩れる成長神話 稼ぎ頭の欧米で減速、データ保護規制が逆風」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/248562
・『15億人のユーザーを抱える巨大ソーシャルネットワークが揺れている。 米フェイスブックが10月30日に発表した2018年7〜9月期決算では、欧州の1日当たり利用者数が2億7800万人と、2四半期連続で減少した。今年1〜3月に過去最高を記録してから、400万人の落ち込み。アメリカとカナダの利用者数も、1億8500万人と横ばいが続く。「今年はつらい1年になっている」。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは決算電話会見でそう漏らした』、これだけ問題を起こした割には、「ユーザー離れ」がまだそれほどでもないのに、若干驚かされた。
・『相次ぐデータ流出でユーザー離れ 3月に明らかになったのが、約8700万人分の情報流出だ。イギリスの研究者が学術目的でフェイスブックから収集したユーザーデータが、英政治コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカに不正に流され、2016年の米大統領選挙の工作活動などに使われた。 9月末には一部機能の脆弱性を突かれ、約2900万人の情報への不正アクセスを許した。電話番号やメールアドレスのほか、直近の位置情報や検索履歴が含まれるケースもあった。 こうした個人情報は「ダークウェブ」と呼ばれる闇サイトで取引される。偽サイトに誘導するフィッシングメールなどが送られ、クレジットカードや銀行口座の番号など、より重要な情報を盗み取ろうとするのだ。「情報流出を避けたければ、そのサービスを使わないということくらいしか選択肢はない」(米セキュリティ大手シマンテック・ノートン事業統括本部の古谷尋部長)。 一連の情報流出を受けて盛り上がったのが、「デリート・フェイスブック(フェイスブックを消そう)」というネット上の運動だ。ユーザー離れは止まりそうもない。 「フェイスブックが“安全”だったことは一度もない」。米ノースイースタン大学でサイバーセキュリティプログラムディレクターを務めるクリスト・ウィルソン准教授はそう指摘する。 「プラットフォーム上のあらゆる機能が進化し、複雑に絡み合うようになると、バグを迅速に見つけ出すのはより難しくなる。そもそも個人情報を集めて収益化するモデルは、ユーザーのプライバシー保護と相反する。ハッカーの標的になり続けるからだ。データを保護したければ、個人情報の収集をやめるべき」(ウィルソン氏)』、「デリート・フェイスブック」運動が起きたとは当然だろう。
・『GDPRの強い逆風が吹き付ける フェイスブックには大きな壁が立ちはだかる。今年5月にEU(欧州連合)が施行した「一般データ保護規則(GDPR)」だ。実際、デイブ・ウェーナーCFO(最高財務責任者)は決算会見で、「過去2四半期はGDPRの影響をいくらか受けた」と、欧州でのユーザー減の一要因になったことを認めている。 フェイスブックはGDPRの下で、欧州当局からどのような処分を受けるのか。大規模データ流出の責任は重い。 GDPRは欧州で活動する企業に対し、個人情報を安全に保護することなどを義務づけるもの。違反と見なされれば、制裁金として、最大で全世界の売上高の4%、あるいは2000万ユーロのどちらか大きい金額が科される。9月の情報流出は、制裁対象になる可能性がある。現在フェイスブックが欧州本社を置くアイルランドのデータ保護当局を中心に、EU側による調査が進められている。 英ロンドンの法律事務所ウェッドレイク・ベルでデータ保護部門を率いるジェームズ・カストロ・エドワーズ弁護士は、「組織の規模が大きくなるほど、GDPRが求めるセキュリティの基準は上がる。(これまでに大きな違反例がないため)当局がフェイスブックの件をどう判断するかは、今後の規制運用にも影響を与えるだろう」と分析する。 「EU当局は今回のセキュリティ侵害について、影響を受けたユーザーがどれくらいいたか、どのような監視体制に不備があったか、といった点を基に制裁金の額を決めると考えられる」。そう指摘するのは、国際法律事務所DLAパイパーのアンドリュー・ダイソン弁護士だ。「制裁金だけでなく、集団訴訟のリスクもある。多くの活動団体が(今回の件を)裁判沙汰にすると言っている」(同)。 英国のデータ保護当局は10月中旬、ケンブリッジ・アナリティカの事案に関し、個人情報の保全を怠ったとして50万ポンドの罰金を科すと発表。当局側は「GDPRが施行されていれば、罰金は極めて高額になっていただろう」と断じた。同月下旬には日本の個人情報保護委員会も、フェイスブックの一連の情報流出に対し、行政指導を行うことを発表している』、現行法での罰金50万ポンドは34百万円相当と僅かだが、「集団訴訟」はどうなるのだろう。
・『欧米の成長は鈍化、費用も増加傾向 欧米のユーザー基盤は、同社の成長に不可欠。売上高のうち7割超はアメリカ・カナダと欧州の広告収入だ。ユーザー数の伸びが見込めなければ、広告主も離れかねない。 セキュリティや法務対策で費用は増加傾向だ。セキュリティ関連人員は年内に1.5万人から2万人に増やす方針。「セキュリティに関しては、今後1年でテクノロジーと人の両面で必要なレベルに上げる」(ザッカーバーグ氏)。 この7〜9月期の営業利益率は42%といまだ高水準だが、4四半期連続で後退。会社側は来年にかけてさらに投資がかさむとする。 米ウォール街でフェイスブック批判の急先鋒として知られるピボタル・リサーチ・グループのアナリスト、ブライアン・ウィーザー氏は、「さまざまな問題が持ち上がるたび、フェイスブックが自らのビジネスを制御できていないことを認識させられる」と指摘する。 確かにフェイスブックは、年間5割超の収益成長を続けている。ただその視界は決して開けてはいない』、見るからに「傲慢」そうなザッカーバーグCEOが「しょげる」姿を見てみたいものだ。
先ずは、在ロンドンのフリーテレビディレクター、伏見 香名子氏が昨年11月2日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「フェイスブックが「偽情報拡散」のツケを払う日 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 前編」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/100500021/102900026/?P=1
・『デジタル広告が、政治や社会の行方を歪めるー国民投票でEU(欧州連合)離脱を決めた英国で、こんな論争が巻き起こっている。2年前の、英国の国民投票と、米大統領選挙におけるロシアの介入疑惑はしばしば報じられているが、具体的に何が起きたのか、未だ日本ではあまり知られていないのではないか。 これは、国民投票の際、離脱派公式団体「Vote Leave」が、SNS(交流サイト)などで使用したCMだ。 https://www.youtube.com/watch?v=AFqmeptq0AU 労働者階級の白人男性2人がパブで、当時開催されていた、サッカー欧州選手権を観戦している。試合結果を全て正確に当てれば、5000万ポンドもの賞金を得られる、と言うキャンペーンCMだ。 一見、スポーツくじのCMにも見える動画の内容をよく聞くと、労働者の2人はサッカーの話をしていると装いつつ「5000万ポンド?それは毎日英国がEUに渡している金額と同じだ」「トルコやアルバニアもEUに入るんだろう?」「欧州議員は年間、7万5000ポンドも稼ぎ、4万5000ポンドも経費が使えるんだ」と、さりげなくEU批判を展開している。 この中の「トルコのEU加盟」は明白な誤情報だが、繰り返しこのCMを流された有権者のどれだけが、真偽のほどを確認しただろうか。 デマの拡散だけでも大問題だが、実はこのCMにはもう一つ隠された目的が存在した。それは、このキャンペーンに参加した「白人・労働者階級の男性有権者」を特定し、離脱派に投票させることだった。 5000万ポンドもの賞金を獲得するには、キャンペーンサイトで、まず欧州選手権の試合結果予測を記入する。そして、氏名、住所、メールアドレスなどと共に、国民投票でどちらの陣営に投票するかも答える。 離脱派はこの個人情報満載のデータを基に、通常は政治に関心を示さず、投票させることが難しい層に食い込んだのだという。その目的は、当然ながら「標的」に明らかにされてはいない。 こうしたデータを基に、テレビや広告板など、公の場では見えないSNS上で、人々が個人的に大切に思う事象について、なんら審査も規制も受けず、投票を左右するようなデジタル広告が「標的」に流された、というのが疑惑の概要だ。 一国の行方を占う選挙や国民投票で、このようなデジタル戦略が許されるのか。英国でこの倫理性を問い、問題の全容解明に動いたのは、英下院・超党派議員11人で作られた、デジタル・文化・メディア・スポーツ(DCMS)特別委員会だ。 この問題に関連し、フェイスブック(以下FB)から不正に個人情報を取得していたケンブリッジ・アナリティカ社(以下CA社、のちに破産)の内部告発者を招いたヒアリングは、議会史上最多の視聴者を記録したという。 一方で、問題の渦中にあるFBのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、度重なる委員会の招致にも関わらず、本人が出席し、証言することを拒み続けた。委員会は10月31日、11月27日にカナダ議会と合同で行われるヒアリングに、再度ザッカーバーグ氏の出席を要請した。要請文にはザッカーバーグ氏に対し、「あなたの証言は遅すぎ、急を要する」「この歴史的な機会に両議会に対し、FBがどのようにして偽情報の拡散を止め、ユーザーのデータ保護に挑むのか、説明すべきだ」と強い文言が並んだ。 文書を作成したのは、特別委員会のデーミアン・コリンズ委員長だ。政治家、そして英与党議員としてこの問題に一石を投じ、一躍時の人となったコリンズ委員長に先月、この問題の危険性と、今後の取り組みを聞いた』、英国の議員が難しい問題に積極的に取り組んでいることに、さすがとうらやましく感じた。強い出席要請を断ったザッカーバーグ氏も恐れをなしたのだろう。
・『人々には本物と偽物のニュースの違いが分からない Q:インターネットと民主主義をめぐる問題に取り組み始めたきっかけを教えてください。 コリンズ委員長:私が委員長を務める特別委員会がフェイクニュースについて最初の調査を始めたのは2017年のことです。当初、私たちは主に、(2016年の)米大統領選に関する研究に非常に興味を持っていました。大統領選に関連したフェイクニュースの規模は、膨大でした。 FB上では偽ニュースの方が、本物のニュースの上位20位の記事よりも読まれており、後者の読者はかなり少数でした。また、英国の放送局などが行なった研究では、多くの人たちが、本物と偽ニュースの区別をつけることが困難だということがわかりました。 偽ニュースは、あたかも本物であるかのように装っていたのです。私たちが懸念したのは、SNSとテクノロジーの躍進によって、報道には大きな視聴者・読者層ができましたが、反面、人々には本物と偽物の違いがわからないということ。そして、このことが選挙において及ぼす、民主主義への影響です。その時点で、多岐にわたる問題を調査し始めました。 Q:そして、この過程でCA社のスキャンダル・・・が明るみになったのですね。 コリンズ委員長:そうです。調査開始時には、これはコンテンツの問題だと捉えていました。フェイクニュースや「悪いコンテンツ」を含む、偽情報です。こうしたコンテンツをどう見極めるか、そして、IT企業はこうした悪いコンテンツにどう対抗すべきなのか、ということでした。 調査が進むに連れて明白になったのは、問題の一部はコンテンツだが、データを利用した「ターゲティング」(顧客層の標的設定)も問題だ、ということです。有権者の投票活動に影響を及ぼそうとする偽情報の拡散は、有機的に行われたものではありませんでした。有権者のデータ・プロファイリングを用い、具体的な情報をもとに標的を定め、拡散されたのです。 標的となったほとんどの有権者は、自らが標的にされたことを知りません。誰が自分を標的にしているのかも、わかりません。コンテンツを目の当たりにしても、それが一体どこから流れてきたのかも知り得ません。 CA社に類似する企業の問題に取り組み始めた頃は、こうしたデータ・セットはどう構築されたのか、データはどう利用されたのかをまず理解する必要がありました。そして、英国などの国で、データ保護法が順守されているのか、という点にも着目しました。 Q:今年3月、この問題が明るになった頃は大騒動となりましたが、ご自身はまずどのように感じましたか? コリンズ委員長:人々は2つのことにショックを受けたと思います。まず、人々はオンライン上、自分の「データの足跡」が残っていることを知っていたとしても、実際どれ程自分に関する情報が集められていたか、知らなかったと思います。 また、FBを見ていない時でも、人々の行動に関する情報がFBによって集められていたことや、アンドロイド(グーグルの基本ソフト)を使った携帯を持っている人は、FBのアプリがその人の通話やメッセージ履歴を全て記録しているなどとは知らなかったでしょう。 その上、FBが匿名のデータを研究者、開発者に共有し、ツール開発に役立てていたなどとは知らなかったと思います。CA社のような会社がサード・パーティの開発者を通じてユーザー・データを得て、それを自分たちのターゲット・広告に使ったこと。そして、そのデータを保存し続けたこと。入手したデータから構築された情報を使って、(政治的な)キャンペーンに役立てていたことなどです。 人々はそんなことが起きているとは、理解していませんでした。CA社の事件が公になり、社の倫理性が問われました。特に、幹部がおとり取材(チャンネル4ニュース)で話したような内容です。 IT企業が無断で人々の情報を得ていたのみならず、人々が、個人情報を絶対に共有したくない(CAのような)会社に流していた、などと言うことです。CA社をめぐるこうした騒動により、世界的にこの問題が注目されたと思います』、「FBを見ていない時でも、人々の行動に関する情報がFBによって集められていたことや、アンドロイド(グーグルの基本ソフト)を使った携帯を持っている人は、FBのアプリがその人の通話やメッセージ履歴を全て記録している」というのは初耳で、ここまでやっているのかと驚かされた。
・『データによって「支援者は誰か」を予測できる Q:具体的にはどんなことが起きたのですか? コリンズ委員長:CA社はデータ・アナリティクスとデータ・ターゲティング・ツールを使います。選挙において、人々を標的にするために使うのです。世界中のビジネスが常にこの手法を使いますし、FBなどのサイト上でFBのために情報を集め、それを広告業者に売る広告ツールが使用されています。こうしたものは、標準的なツールです。 CA社の活動が問題になったのは、FBの規約に違反していたからです。ユーザーのデータを収集し、ユーザーだけではなく、ユーザーの友人のデータも収集していました。 このデータは、オンライン上のアンケートを利用してデータを収集していた、ケンブリッジ大学の研究者から取得したものです。当時のFBの規約では、学者がこうした研究を行うことは適正でした。しかし、やってはいけなかったのは、そのデータを第三者に売却することでした。 CAはこうした第三者の学者、開発者らと共にデータ収集を行い、このデータをターゲット・広告に使用したのです。当時、なぜ(このデータに)価値が置かれたかといえば、オンライン上の人々の心理プロファイリングを研究していた学者や研究者は、人々の考えや「何が人々を動かすか」ということを思案していたからです。 彼らは、ある人のFBの「いいね!」を分析することで、その人の非常に精密なプロファイルを構築することができると考えていました。その人の行動を友人よりも正確に、予測することができたのです。 このことが、なぜ特に選挙キャンペーンにおいて重要かといえば、(ある特定の陣営を)支援すると予測される層を探すことがしばしば、そして迅速に必要になるからです。データによって正確に「支援者が誰か」を予測することができれば、キャンペーンをより効率的に、標的を絞って行えるようになります。 また、プロファイルをもとに、受け取る人によって、さりげなく適応させたメッセージを送ることもできます。例えば、ある有権者層を知り、そのうち1万人のプロファイルを構築したとしましょう。ある特定の方法で、彼らを標的にするのです。そのデータセットを持ってFBに行き「ここに1万人分のプロファイルがある。これを元に、この1万人に最も近い、FB上の100万人を見つけてほしい」と依頼します。 FBはこれをはじき出します。つまり、FB上の全ての人のプロフィールは、必要ないのです。FBユーザーに関する非常に良質なサンプルさえ手に入れば、効果的に人々を標的にすることが叶います。 ここに、重大な問題が2つ存在します。1つは、CA社がこのデータ、つまり8700万人分のユーザー・プロフィールを不当にFBから入手したこと。これだけのデータがあれば、米国全体の有権者のプロファイリグが可能なほどの、巨大なデータベースを構築できます。 FBは、この事実を2015年の年末に知りながら、このことを明らかにせず、その上、データを取り戻し、確実に破壊する手段すら講じませんでした。 もう一つ、FBユーザーに対する倫理的な問題が存在すると思います。ユーザーにはプロフィールで、自分の支持政党を明らかにしない選択肢があります。しかし、FBが、人々がどう投票するかを予測し、その予測を政党の戦略担当に売却し、それをもとに、政党が有権者を標的にすることは、正しいことなのでしょうか。 私は、政治キャンペーンにおいて、データが有権者を標的にするために使われていることに、非常な不安を感じます』、FBがこうした悪質な世論操作に関与していたとは、許されないことだ。
・『Q:調査を進める中でこの3月、CA社の内部告発者、クリストファー・ワイリー氏らの証言を聞かれました。そこでは何が明らかになったのですか? コリンズ委員長:ワイリー氏はCA社に勤務していた頃の、自身の経験に基づく証言を行いました。彼は、(EU離脱派公式団体だった)Vote Leaveが行ったキャンペーンと、資金の使い方に懸念を抱いていました。そして、複数の団体が連携してキャンペーン用の資金を使うことを禁じる、英国の選挙法違反の可能性を、白日の下に晒しました。 この違反行為について、現在、ワイリー氏の主張を認めた選挙管理委員会が、調査を行っています。ワイリー氏はまた、CA社がどのようにデータ収集を行い、それがどうキャンペーンに使われたのか、その驚くべき内容を話してくれました。この事実があって、データマイニング、ターゲティング、そして有権者のプロファイリングについて、理解を深めることができました。 もう一つ、ワイリー氏の証言で重要だったことは、彼が特別委員会に証拠文書を提供し、これを我々が公開できたことです。これは、CA社やCA社のために働いていたケンブリッジ大学の学者ら、そして、FBの相互関係を証明するものでした。 (これまでの様々な指摘が)単なる個人の意見や、推測であるという領域を越え、この3者の関係や、彼らが集めたデータがどう使用されたのか、証拠となるものだったのです。内部告発者としてのワイリー氏の証言は、実際に何が起きていたのかを明らかにした、非常に重要なものでした』、「CA社のために働いていたケンブリッジ大学の学者ら」は、学問的興味で参加したのかも知れないが、利用目的まで思いが至らなかったとすれば、単なる「学者バカ」だ。
・『ザッカーバーグ氏は質問に答える義務がある Q:その一方で、FB社のザッカーバーグ氏は委員会での証言を拒否したのですね? コリンズ委員長:ザッカーバーグ氏が証言を行わないことは、非常に残念です。彼には、世界中で毎日FBを使用する20億人のユーザーに対する責任があります。FBが行ったことは誤りです。外部にデータを漏洩したこと、データが収集され、FBユーザーの有権者が広告によって標的にされたこと。こうしたことを通じて、FBは利益を得たのです。経営判断を行うのはザッカーバーグ氏ですから、彼はより多く、そして自ら進んで公的な場で質問に答える義務があると思います。 Q:FBのようなプラットフォームは、現状こうした疑問に対し、どのような姿勢でいるのですか? コリンズ委員長:彼らに責任を負わせるのは多くの場合難しく、またこちらの質問に彼らから明確な答えを得るのは困難です。はっきり質問しても、彼らは決まって情報を開示しません。調査の際、全体的な問題や古い案件を何度も繰り返させられ、とても苦痛でした。 特に、FBとの当初のヒアリングでは、(CA社が)FBからデータを集めた話は一切引き出せませんでした。ワイリー氏の証言によって、やっとその事実がわかりました。その後になって「証言を行った者は、その事実を知らなかった」と言い出す始末です。 こうしたIT企業が信頼に値しない現実が浮き彫りになってきます。信頼を回復するために、彼らはより努力すべきでしょう。「過去には過ちを犯し、なぜ人々がこの問題に懸念を抱くのか理解する」と彼ら自身が表明すべきです。将来的にはもっとオープンでいるべきですが、現在、彼らはそれを怠っています。ザッカーバーグ氏によるリーダーシップを人々は待っているでしょう。 Q:つまり、こうしたIT企業をめぐる現状は「無法地帯」に等しく、今こそ規制されるべき時なのでしょうか。 コリンズ委員長:その通りです。ITセクターは急速に成長し、これまでは無法地帯でした。常に新しいツールが開発されるため、しばしば新セクターだと考えられがちですが、これらの企業は実際巨大で、裕福です。その他のほとんどの分野では、ITセクターがやっているような、これだけの膨大な消費者データや情報を利用する場合、規制を受けています。 サーチ・エンジンとしてのグーグル、ユーザー生成動画コンテンツを有するユーチューブ、そしてSNSとしてのFB。これらのプラットフォームの運営の仕方は、現在独占状態です。そのため、何らかの規制組織が彼らの行いについて監督し、問題があれば介入する必要があります。 Q:ドイツでの例について講演されたことがありました。 コリンズ委員長:ドイツは世界で最も早く、有害なコンテンツに関し、IT企業に法的な責任を課すことを決めた国の一つです。これは、ドイツのヘイト・スピーチ法を犯す、違法なコンテンツについて適応されます。 FBは現在、この法に違反するコンテンツを削除するまでに、24時間の猶予しか与えられません。削除しない場合、FBが責任を負うことになります。FBは結果として、法に従うために莫大な資金を投じて対応する羽目に陥りました。他国もこのことを注視しています。 ドイツは歴史的に他国とは法的に異なる立場を取っていますが、そのことに関わりなく、法的枠組みを作れば、企業がそれに反応することを示したものです。ドイツでは、違法コンテンツは必ず削除されます』、FBの酷い隠蔽体質には改めて驚かされた。ドイツの姿勢には大いに学ぶべきだろう。
・『「プラットフォームの中立性」は終えるべき Q:英国でも同様のことが起きるのですか? コリンズ委員長:私たちは特別委員会の報告書において、IT企業による「プラットフォームの中立性」は終えるべきだと勧告しました。プラットフォームは限定的に、違法、そして有害なコンテンツに関して法的責任を負い、これらを削除しなければならず、削除されない場合は、法的責任が生じるというものです。 また、有害なコンテンツがどのようなものか、明確にする必要もあります。私たちはこれを特別委員会の報告書に明示し、政府もこの問題に対してコンサルティングを行っています。年明けには、「インターネットの安全性に関する戦略」に関する白書が発表されます。まず成されるべき事は法的枠組みを作り、IT企業の責任は何であるか、また、有害コンテンツについて対応を怠った場合の処罰について、明確にすることです。 Q:こうした規制が進むと、言論の自由との関係はどうなるのでしょうか。 コリンズ委員長:英国には言論の自由が存在しますが、混雑した劇場で「火事だ!」と叫ぶ権利は誰にもありません。言論の自由は、危険でも有害であってもなりません。私たちが目指しているのは、オンライン上、人々がコミュニケーションの形として他者を傷つけるような情報共有に関し、調停を行うことです。 そして、IT企業に対し「有害コンテンツの拡散を可能にするようなインフラを提供し、そうした行為を知り得ているならば、対処する責任がある」と通告することです。 銀行の例で言えば、もし銀行がマネーロンダリングを疑ったとしたら、当局にそれを報告するのは銀行の義務です。なぜ、IT企業にはこのことが課されていないのでしょうか』、確かに、「プラットフォームの中立性」を隠れ蓑に、プラットフォーマーが責任を回避するのは、許すべきではない。
・『Q:2018年は、「シリコン・バレーのエリート」たちにとってどんな年になると思われますか? コリンズ委員長:2018年は、彼らにとって重大な分岐点となるでしょう。彼ら以外の社会が、IT企業は何を行い、どう利益を得ているか、そして、彼らが有しているデータと情報の危険性について学んだ年です。 私たちは、彼らが今後、より大きな責任を課されるよう追求していきます。社会、そして、ユーザーである顧客に対する彼らの責任を、より追求します。コンテンツを審査するためにより多くの資金を投じ、有害コンテンツに対処し、また、ユーザーからのコンテンツに関する通報に対応します。 過去にこうしたプラットフォームが享受してきた中立の立場については、新たな責任を課せられることにより、失われることになるでしょう。将来、この年を振り返った時、その他の産業や物質的経済においてなされるように、今年がインターネット上、コンテンツとデータの規制が必要であると、検討し始めた年と位置付けられるでしょう。その基盤となる原則は「実社会で容認されないものは、オンライン上も認められない」ということです。 Q:英国は、こうした規制に関し、先駆的な役割を担うことになるのでしょうか。 コリンズ委員長:英国に正しいことをしてほしいと願いますし、この議論においてのリーダーとなり得ると考えています。既に、良い環境は整っています。機関としては欧州で最大規模である、情報コミッショナー事務局(ICO)が重要な調査を行っており、権限も拡大されています。欧州一般データ保護規則(GDPR)という法律もあり、これによって、欧州の消費者は世界でも最も高いレベルの権利を得ています。 ICOは英国での事態を監督しています。そのため、英国はこの議論においてリーダーになることができると思います。しかし、それよりもテクノロジーとインターネットに関する、現代社会に即した規制のシステムを確実に設置することの方が大切です。(後編に続く)』、英国が先進的な法規制で模範を示してくれることを期待したい。
なお、FBの悪辣ぶりについては、1月13日のこのブログ「トランプ大統領(その38)」でも取上げているので、参考にされたい。
次に、上記の続きの11月5日付け日経ビジネスオンライン「米中間選でも偽情報拡散の脅威、新規制が必要に 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 後編」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/100500021/103100027/?P=1
・『米大統領選挙と英国のEU離脱国民投票をきっかけに、デジタル広告事業者と民主主義の熾烈な戦いが繰り広げられている。11月6日に迫った米国の中間選挙でも既にSNS(交流サイト)上で、偽情報の拡散が懸念されている。 この戦いを制すのは、シリコンバレーか民主主義か。英下院・特別委員会のデーミアン・コリンズ委員長に引き続き聞く。 Q:EU離脱に関する国民投票は「乗っ取られた」と感じますか? コリンズ委員長:乗っ取られたとは言えませんが、ロシアの機関が国民投票の際、英国の有権者に接触する意思があった、とは言えるでしょう。サンクトペテルブルクの複数の機関を発信元とした、幾万もの偽ツイッターアカウントが、EU離脱支持のプロパガンダを流していたという、多くの研究がなされています。 フェイスブック(以下FB)に関しては、まだデータに関する研究が出ておらず、この事実を証明する証拠が少ないのですが、さらなる事実が浮き彫りになるかもしれません。ですから、介入の意思はあったと思いますが、どの程度の影響力があったかは不明です。 これに関連したもう一つの問題は、離脱派の公式団体の資金の使い方です。そこでも違法行為があったのか、現在選挙管理委員会が調査を続けています』、どんな調査結果になるか楽しみだ。
・『Q:コリンズ委員長は米FBIとも密接に連携しています。米国の中間選挙ではどんなことが起きていますか? コリンズ委員長:米中間選挙では、(2016年の)大統領選と同様の、ロシアの介入が起きないよう、注力されています。未だに、大統領選における介入の度合いは全て明らかになっていません。 公的な情報では、ごく少数のFBアカウントが基盤となっており、これらが大量の広告を流す役割を担っていました。実際は、これよりもはるかに多いのかもしれません。 米国では選挙を守るため、ロシアの介入ネットワークを特定し、これを正しいタイミングで破壊する目的があります。選挙戦に際し、有権者が見るもの、聞くものに影響を及ぼそうとする外的組織がいるのであれば、損害を最小限に留め、影響させないようにしています。 FBは政治的メッセージや広告に関し、新しい規制を発表しました。そして、政治的な広告を流す組織に対し、その存在を明らかにさせ、さらには過去の実績をユーザーが見られるようにするという、新たな責任を課すことを決めました。中間選挙までに何か起きるか、選挙介入はあるのか。非常に注目され、関心は高いと思います』、FBの「新しい規制」は単なるポーズとの見方もある。実際の行動を注視する必要があろう。
・『世界のどこからでも、SNSを通じて有権者を標的にできる 日本では改憲に向けた国民投票が予想されますが、広告に使える資金の上限が定まっておらず、またデジタルキャンペーンに対する規制も十分とは言えません。このことは、危険であるとお考えになりますか。 コリンズ委員長:日本は他の国の選挙などで起きたことを検証する必要があるでしょう。また、現存の制度を検証し、強化すべきです。世界のどこからでも、ある国の有権者について選挙人名簿を入手できれば、人々が利用するSNSを通じて有権者を標的にすることができます。 世界の誰もが、自分の存在を隠してこれを実行できます。有権者がどう投票するか説得するのではなく、人々がSNSを利用する傾向を形作ることができるのです。長い時間をかけ、有権者のニュースフィードにどんなコンテンツを流すか、操作できます。有権者が以前は気にも留めていなかった問題に、懸念を示すよう誘導できるのです。 このことは、何らかの方法で監督されなければなりません。英国で行ったように、日本の有権者に対しても、コミュニケーションの透明性を構築することを薦めます。それは、選挙や国民投票の結果を操作しようという「悪意を持った何者か」、あるいは外国政府から身を守る最良の手段です。 誰がこのメッセージを流しているのか。その者はどの国にいるのか。以前はどんなメッセージを流してきたのか。有権者が分かるようにするのです。そうすることで、有権者は、見ているメッセージについて、独自の判断を下すことができます』、「日本では改憲に向けた国民投票が予想されますが、広告に使える資金の上限が定まっておらず、またデジタルキャンペーンに対する規制も十分とは言えません」というのは大問題だろう。悪質なデジタルキャンペーンの「草刈り場」となる事態だけは回避すべきだ。
・『SNSを通じた選挙戦は、今や世界の常識です。多くの国では、人々のニュース情報源はFBです。英国では半数程度の人々がFBからニュースを得ていますし、その他の国ではその比率はもっと高いでしょう。FBはウェブへの入り口なのです。 FBのようなサイトで、人々が政治的なニュースコンテンツの中で、見せられるものを操作できるのであれば、それは強力なツールだと言えるでしょう。人々が情報の出所を知り、装備することが必要です。偽情報を流すソースがわかっているなら特定し、対応しなければなりません。 Q:政府と広告企業が手を携えてしまえば、人々を守る術はないのではないでしょうか。 コリンズ委員長:英国には(選挙や国民投票のキャンペーンにおいて)資金の上限が定められています。資金の多い陣営の意思が、より多く反映されてはならないからです。英国の選挙は、この原則に従っています。 今やどんな選挙でも、あるだけの資金を投じてSNSサイトを使い、有権者を標的にしていると思います。最も影響力が見込めるからでしょう。 3つのことが可能です。まず特定の候補者に投票させること。有権者を抑圧し、ある候補に投票するのをやめさせ、対立陣営に取り込むこと。そして、区分別投票率を用い、一定の年齢層だけを狙って投票を働きかけることもできます。 選挙や国民投票が公正に実施されるためには、全ての陣営が公平に、SNSを通じて有権者につながる機会が与えられるべきだと思います』、その通りだ。
・『データ保護法や選挙法を最新の状態に保つべき Q:他の政治家などが「データ問題」と聞いて尻込みするなか、コリンズ委員長はこの問題に取り組むため、一からテクノロジーの勉強をされたと聞きました。学ぶプロセスは困難でしたか? コリンズ委員長:困難というよりも、非常に面白いと感じました。この調査は私たちにとって、発見の旅でもありました。IT企業がどう動いているのか、そして、データ・ターゲティングの分析がどう行われているのかを理解する機会でした。 以前は、こうした詳細を検証する必要はありませんでしたが、これによって、IT企業の機能の仕方や、人々がこうしたツールを使ってどう目的を果たすか、検証する道を開いたと思います。この「目的」は悪い目的である場合もあります。私だけが学んだというよりは、他の人々にも学ぶ機会であったと思います。今年は発見と教育の年であり、将来的に、この問題に対する見方が変わっていくと思います。 Q:コリンズ委員長の様にこの問題を重く見て、改善しようという政治家もいれば、このテクノロジーを自分のために利用しようとする政治家も存在すると思います。これに対抗する方策は何でしょうか。さらなる規制や法律でしょうか。 コリンズ委員長:まず、選挙法において、こうしたテクノロジー利用の存在を前提とすることが必要です。例えば英国では、有権者の郵便受けにビラを配ったり、ビラを郵送する際には、そのビラに、誰がビラ作成の資金を提供したのか、そして「これは売り込みを目的としたものだ」と明記しなければなりません。 しかし、ネットやSNS上では同じルールが適応されません。ですから法改正し、適応しなければなりません。そうすることで、有権者はメッセージの出所と、彼らがどう標的になっているのかを知ることができます。 また、有権者の政治的意見について、データ収集と保持に関する規制も存在し、欧州のデータ規制によって、保護されています。政党なども含む、ごくわずかな特定組織だけが、人々の政治的意見に関する情報を保持することが認められています。 コンサルティング会社やキャンペーン・グループが、人々の政治的意見に関するデータを保持し、それを有権者に無断で選挙広告に使用するならば、その倫理性や違法性を問うべきでしょう。こうしたデータ保護法や選挙法を最新の状態に保たなくてはなりません。特定の政策で、このような新技術への対応を行うべきです』、コリンズ委員長の積極的な取り組み姿勢には頭が下がる。日本の国会議員もその「爪の垢」でも飲んでほしいものだ。
・『Q:この問題を追ってきた著者のジェイミー・バートレット氏(参考:狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖)は、インターネットと人々の間に「戦争」が起きていると語りました。インターネットは民主主義の味方でしょうか、敵でしょうか。 コリンズ委員長:インターネットは民主主義にとって、味方でも敵でもないと思います。インターネットが人々をつなぐツールであったことから「民主主義を助けるもの」との暗黙の前提がありましたが、偽情報を流し、人々を誤った方向に導く使い方をすれば、民主主義を壊すものでもあることがわかります。 人々は、現状流れてくる情報に対抗し、またそれを分析するツールを未だ手にしていません。テクノロジーの革新とメッセージを流す技術に、まだ追いついていないのです。インターネットが独裁政権を支援することも、全く可能だと思います。こうしたツールを「民主主義を支援するもの」として維持する責任は私たち市民にあり、私たちが守らねばなりません。 Q:この「戦争」をどう戦おうと思われますか。また、勝算はあるのですか? コリンズ委員長:もちろんです。経済のどのセクターでも、世界のどんな組織でも、究極的にルールや規制で監督できないものはありません。私が化学薬品会社を運営していたとして、水源を汚染していたら、政府は対策を講じるでしょう。新法を作り、水源汚染を止めるのです。 現在のIT企業がこの巨大なネットワークを構築し、ネットワークが悪用され、社会が汚染されているのなら、政府が介入し、こうした企業が構築したビジネスによって生じた有害なものから、人々を守る規制を設けなければなりません。これは、経済のほとんどの分野において普通のことですし、消費者を守るための規制が進むでしょう』、コリンズ委員長の基本的な考え方がしっかりしているのに改めて驚かされた。
・『調査では、EU離脱派の資産家が顧客情報を利用したのか明らかに Q:データと政治キャンペーンをめぐる事象を捜査してきた情報コミッショナー事務局(ICO)の最終報告が11月初めに発表される予定ですが、どんな結果になると思いますか。 コリンズ委員長:ICOは、これまで誰もアクセスできなかったデータと情報を有しています。政治におけるデータ利用に関する調査は、非常に重要なものになるでしょう。この調査によって、EU離脱派を支持した資産家が所有する保険会社の顧客情報が、国民投票で利用されたのか、明らかになるでしょう。この資産家は否定していますが、利用されたのであれば、これは深刻な事態です。 また、ICOによるケンブリッジ・アナリティカ社(前編参照:以下CA社)に関する調査では、CA社が取得したデータが最終的にどうなったのか、アクセスしたのは誰なのか。このことを解明できたのかが焦点でしょう。ロシアがデータにアクセスしたと言われていますが、では、アクセスしたのは具体的に誰で、誰がこれを利用したのか。ICOの調査から、こうした重大な事実が明らかになるでしょう。 Q:今の時代、データをめぐる事象について、教育は必須だと以前話しておられました。どのように人々を教育できるとお考えですか? コリンズ委員長:オンラインコンテンツに関するメディアリテラシーの教育は、より必須になるでしょう。SNSは今や、人々がインターネットに通じる入り口です。私たちは有害コンテンツを特定するツールを作る手助けはできますが、特に教育現場と連携したキャンペーンが必要になると思います。 実施には巨額が伴うため、IT企業がユーザーが使えるツールをデザインし、作る役割を果たすだけでなく、教育にかかる資金も投じるべきです。学校の支援もしなければならないでしょう。 調査委員会では、IT企業から学校でのユーザー教育にかかる費用を徴収する提言を行いました。また、ICOにも資金を提供させる事です。銀行セクターでは消費者を守るため、金融行為監督機構の資金の一部を銀行が払っています。ICOの仕事も同様ですから、IT企業が資金面で今より大きく貢献するべきです』、「(ICO)の最終報告が11月初めに発表」、日本では最終報告の記事はまだないようだが、報道してほしいところだ。
・『Q:学校教育というと、何才くらいを想定していますか? コリンズ委員長:小学校くらい、そして中学校の早い時期、8-12才くらいが最も効果的だと思います。しかし、全ての市民がこのことから教訓を得るべきです。大人でも気づかないことはあると思います。 特に、若いユーザーが流れてくるコンテンツに対し、より多くの疑問を持つようにするべきでしょう。今後こうした問題は、悪化の一途をたどります。 現在のテクノロジーでは、嘘まみれの映画を作ることも可能です。例えば、ある人がしたこともないことを行ったかのように、語ったこともない言葉を語ったかのように、そして、全く行ったことのない場所に行ったかのように見せる、「完全にリアルなフィクション」も作り出せます。将来的に、現在よりもフェイクコンテンツの特定はより困難になり、(教育の)必然性も高まるでしょう』、その通りだ。
・『政府によるデータ利用には人々の承諾が必要 Q:前述のバートレット氏が言っていたことですが、将来的に人々は、管理された社会をより好ましく思うのかもしれないと指摘していました。管理しやすい社会は、政治家の視点から、好ましいことなのではないでしょうか。 コリンズ委員長:政府の権力行使は、人々の承認を得て行わなければなりません。例えば、医療システム改善において、AIや機械学習の役割はどんなものでしょうか。がん検診をより早く行うために、AIをどう使うか。個人データを深く理解することにより、疾病の超早期発見やリスクを特定することなどです。 これは非常に有益かもしれませんが、人々はこうしたデータ利用を承諾しなければなりません。民主主義国家において、こうした権力の行使には、人々の許諾が必要です。このことについて、真剣な議論がなされるべきでしょう。 素晴らしい恩恵を得られる反面、これまでにないほどの、個々の市民のデータが収集され、保持されることも意味するからです。ここまでデータ保持の許諾が政府や医療機関に与えられるのなら、その情報を渡してはならない相手に流れないよう、どう保護するのか、ということも大切です。 Q:私たちの知る形の民主主義は、分岐点にあるとお考えですか? コリンズ委員長:インターネットが政治的な議論をどう変えたのか、検証しなければならないでしょう。これまでに使用されてきたコミュニケーションの方法、つまり、これまでの情報の共有の仕方は今後、失敗するでしょう。このことを直視しなければなりません。 インターネットは政治的な議論を変え、ある部分では有効的に変わりました。小さなコミュニティが彼らにとってとても大切な、ある問題についての認知度を高めたいのなら、これまでにないくらい、インターネットはその問題意識を共有する人たちに広めることを容易にします。それは大きな恩恵です。 しかし一方で、ある人々が巨費を投じ、透明性のないところで人々の考えに影響を及ぼすことも可能です。人々を守り、それを止める術は現在ありません。ですから、恩恵と弊害の両方を見なければなりません。 私たち立法を預かる者は、政治的なキャンペーン方法、情報共有のあり方、そして、ユーザーに対する情報源の開示に関する法や規制を常に検証すべきです。 市民がきちんと情報を得られる状況を確保する。単に情報を得られるだけではなく、どの情報に重きを置けるか、判断できるようにすることです。ニュース番組やウェブサイトの編集者のみならず、アルゴリズムが影響力を行使できる時代です。市民自身がこの価値判断をできる状況を作らねばなりません。 Q:希望は持てますか。 コリンズ委員長:希望はいつでも持てますが、問題を認識していなければなりません。今年起きたことは具体的な問題が何だったのか、理解し始めた年です。 1年ほど前に調査を始めた際、あるベテラン議員が「面白い題材だし、検証するのは正しいことだが、何ができるというのか見当もつかない」と話していました。しかし、調査によって、実はできることが多いことがわかりました。民主主義を守るために何をしなければならないかがわかり前進した、重要な一歩だったと思います』、「民主主義を守るため」の先駆的な動きに期待したい。
第三に、11月12日付け東洋経済オンライン「フェイスブック「情報流出」で崩れる成長神話 稼ぎ頭の欧米で減速、データ保護規制が逆風」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/248562
・『15億人のユーザーを抱える巨大ソーシャルネットワークが揺れている。 米フェイスブックが10月30日に発表した2018年7〜9月期決算では、欧州の1日当たり利用者数が2億7800万人と、2四半期連続で減少した。今年1〜3月に過去最高を記録してから、400万人の落ち込み。アメリカとカナダの利用者数も、1億8500万人と横ばいが続く。「今年はつらい1年になっている」。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは決算電話会見でそう漏らした』、これだけ問題を起こした割には、「ユーザー離れ」がまだそれほどでもないのに、若干驚かされた。
・『相次ぐデータ流出でユーザー離れ 3月に明らかになったのが、約8700万人分の情報流出だ。イギリスの研究者が学術目的でフェイスブックから収集したユーザーデータが、英政治コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカに不正に流され、2016年の米大統領選挙の工作活動などに使われた。 9月末には一部機能の脆弱性を突かれ、約2900万人の情報への不正アクセスを許した。電話番号やメールアドレスのほか、直近の位置情報や検索履歴が含まれるケースもあった。 こうした個人情報は「ダークウェブ」と呼ばれる闇サイトで取引される。偽サイトに誘導するフィッシングメールなどが送られ、クレジットカードや銀行口座の番号など、より重要な情報を盗み取ろうとするのだ。「情報流出を避けたければ、そのサービスを使わないということくらいしか選択肢はない」(米セキュリティ大手シマンテック・ノートン事業統括本部の古谷尋部長)。 一連の情報流出を受けて盛り上がったのが、「デリート・フェイスブック(フェイスブックを消そう)」というネット上の運動だ。ユーザー離れは止まりそうもない。 「フェイスブックが“安全”だったことは一度もない」。米ノースイースタン大学でサイバーセキュリティプログラムディレクターを務めるクリスト・ウィルソン准教授はそう指摘する。 「プラットフォーム上のあらゆる機能が進化し、複雑に絡み合うようになると、バグを迅速に見つけ出すのはより難しくなる。そもそも個人情報を集めて収益化するモデルは、ユーザーのプライバシー保護と相反する。ハッカーの標的になり続けるからだ。データを保護したければ、個人情報の収集をやめるべき」(ウィルソン氏)』、「デリート・フェイスブック」運動が起きたとは当然だろう。
・『GDPRの強い逆風が吹き付ける フェイスブックには大きな壁が立ちはだかる。今年5月にEU(欧州連合)が施行した「一般データ保護規則(GDPR)」だ。実際、デイブ・ウェーナーCFO(最高財務責任者)は決算会見で、「過去2四半期はGDPRの影響をいくらか受けた」と、欧州でのユーザー減の一要因になったことを認めている。 フェイスブックはGDPRの下で、欧州当局からどのような処分を受けるのか。大規模データ流出の責任は重い。 GDPRは欧州で活動する企業に対し、個人情報を安全に保護することなどを義務づけるもの。違反と見なされれば、制裁金として、最大で全世界の売上高の4%、あるいは2000万ユーロのどちらか大きい金額が科される。9月の情報流出は、制裁対象になる可能性がある。現在フェイスブックが欧州本社を置くアイルランドのデータ保護当局を中心に、EU側による調査が進められている。 英ロンドンの法律事務所ウェッドレイク・ベルでデータ保護部門を率いるジェームズ・カストロ・エドワーズ弁護士は、「組織の規模が大きくなるほど、GDPRが求めるセキュリティの基準は上がる。(これまでに大きな違反例がないため)当局がフェイスブックの件をどう判断するかは、今後の規制運用にも影響を与えるだろう」と分析する。 「EU当局は今回のセキュリティ侵害について、影響を受けたユーザーがどれくらいいたか、どのような監視体制に不備があったか、といった点を基に制裁金の額を決めると考えられる」。そう指摘するのは、国際法律事務所DLAパイパーのアンドリュー・ダイソン弁護士だ。「制裁金だけでなく、集団訴訟のリスクもある。多くの活動団体が(今回の件を)裁判沙汰にすると言っている」(同)。 英国のデータ保護当局は10月中旬、ケンブリッジ・アナリティカの事案に関し、個人情報の保全を怠ったとして50万ポンドの罰金を科すと発表。当局側は「GDPRが施行されていれば、罰金は極めて高額になっていただろう」と断じた。同月下旬には日本の個人情報保護委員会も、フェイスブックの一連の情報流出に対し、行政指導を行うことを発表している』、現行法での罰金50万ポンドは34百万円相当と僅かだが、「集団訴訟」はどうなるのだろう。
・『欧米の成長は鈍化、費用も増加傾向 欧米のユーザー基盤は、同社の成長に不可欠。売上高のうち7割超はアメリカ・カナダと欧州の広告収入だ。ユーザー数の伸びが見込めなければ、広告主も離れかねない。 セキュリティや法務対策で費用は増加傾向だ。セキュリティ関連人員は年内に1.5万人から2万人に増やす方針。「セキュリティに関しては、今後1年でテクノロジーと人の両面で必要なレベルに上げる」(ザッカーバーグ氏)。 この7〜9月期の営業利益率は42%といまだ高水準だが、4四半期連続で後退。会社側は来年にかけてさらに投資がかさむとする。 米ウォール街でフェイスブック批判の急先鋒として知られるピボタル・リサーチ・グループのアナリスト、ブライアン・ウィーザー氏は、「さまざまな問題が持ち上がるたび、フェイスブックが自らのビジネスを制御できていないことを認識させられる」と指摘する。 確かにフェイスブックは、年間5割超の収益成長を続けている。ただその視界は決して開けてはいない』、見るからに「傲慢」そうなザッカーバーグCEOが「しょげる」姿を見てみたいものだ。
タグ:情報コミッショナー事務局(ICO)の最終報告が11月初めに発表 デリート・フェイスブック 9月末には一部機能の脆弱性を突かれ、約2900万人の情報への不正アクセスを許した 調査では、EU離脱派の資産家が顧客情報を利用したのか明らかに データ保護法や選挙法を最新の状態に保つべき SNSを通じた選挙戦は、今や世界の常識 世界のどこからでも、SNSを通じて有権者を標的にできる 約8700万人分の情報流出だ。イギリスの研究者が学術目的でフェイスブックから収集したユーザーデータが、英政治コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカに不正に流され、2016年の米大統領選挙の工作活動などに使われた。 「米中間選でも偽情報拡散の脅威、新規制が必要に 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 後編」 「プラットフォームの中立性」は終えるべき ザッカーバーグ氏は質問に答える義務がある クリストファー・ワイリー氏らの証言 相次ぐデータ流出でユーザー離れ CA社の内部告発者 プロファイルをもとに、受け取る人によって、さりげなく適応させたメッセージを送ることもできます データによって正確に「支援者が誰か」を予測することができれば、キャンペーンをより効率的に、標的を絞って行えるようになります CA社 データによって「支援者は誰か」を予測できる 人々には本物と偽物のニュースの違いが分からない デーミアン・コリンズ委員長 欧米の成長は鈍化、費用も増加傾向 ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、度重なる委員会の招致にも関わらず、本人が出席し、証言することを拒み続けた 英下院・超党派議員11人で作られた、デジタル・文化・メディア・スポーツ(DCMS)特別委員会 米大統領選挙におけるロシアの介入疑惑 英国の国民投票 「フェイスブックが「偽情報拡散」のツケを払う日 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 前編」 「フェイスブック「情報流出」で崩れる成長神話 稼ぎ頭の欧米で減速、データ保護規制が逆風」 日経ビジネスオンライン 伏見 香名子 (その2)(フェイスブックが「偽情報拡散」のツケを払う日 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 前編、米中間選でも偽情報拡散の脅威 新規制が必要に 歪められた民主主義 議員たちの逆襲 後編、フェイスブック「情報流出」で崩れる成長神話 稼ぎ頭の欧米で減速 データ保護規制が逆風) 問題 東洋経済オンライン フェイスブック 政府によるデータ利用には人々の承諾が必要 GDPRの強い逆風が吹き付ける
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