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健康(その6)(糖質ゼロで 人間は生きていけるのか 究極の糖質制限をすると人体はどうなる?、何を食べれば健康によいか」根拠はここにある ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(1)、こんなサプリメントにご用心 ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(6)) [社会]

健康については、昨年10月10日に取上げた。今日は、(その6)(糖質ゼロで 人間は生きていけるのか 究極の糖質制限をすると人体はどうなる?、何を食べれば健康によいか」根拠はここにある ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(1)、こんなサプリメントにご用心 ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(6))である。

先ずは、医師兼マンガ家の近藤 慎太郎氏が昨年10月10日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「糖質ゼロで、人間は生きていけるのか 究極の糖質制限をすると人体はどうなる?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/091200163/100900045/
・『食事をとると、三大栄養素は体内でどのように代謝(分解・合成)されていくのでしょうか。 一般的に、次のように説明されることが多いと思います。 炭水化物→エネルギー 脂質→エネルギー、脂肪として貯留 たんぱく質→筋肉など肉体をつくる  もちろんこれが間違っているわけではなく、おおむねこのように理解してもらって構いません。ただし、何点か大切なことを追加します。 1つは、前回(「日本万歳!世界各地の『食事療法』に挑戦できる」)でも解説しましたが、脂質が人体を構成する細胞の膜や、ステロイドホルモンをはじめとした様々な生理活性物質の成分となるということです。 脂質というと、皮下脂肪や内臓脂肪を連想して敵視されがちですが、肉体に必要不可欠な役割を持っています。 次に炭水化物は、大きく分けて「糖質」と「食物繊維」に分けられます。 糖質は体の中で燃料として使うことができて、1g当たり約4kcalのエネルギーになります。 もう1つの食物繊維は、食物に含まれる消化の難しい成分のことで、穀物、海藻、豆、きのこ、野菜、果実などに豊富に含まれています。消化が難しいので、摂取できるエネルギーは微々たるもの。エネルギーよりも、今までは「便通を良くする」などの理由で積極的に摂取しましょうと言われてきました。 しかし、食物繊維にはそのほかにも大きなメリットがあることが分かってきました。 食物繊維の摂取量が多いほどメタボが少ない(1)、糖尿病のコントロールに有効(2)、LDL(悪玉コレステロール)を下げる(3)、などの報告があるのです。 食物繊維をどうやって取るかが、食事法における重要なカギになることは明らかです。これについては、稿を改めてしっかりと解説したいと思います。 最後に、三大栄養素の流れは完全に独立しているわけではなく、下の図の通り、一部は相互に乗り入れ可能になっています(本当はもっと複雑な回路をたどるのですが、ここでは大枠だけ変えずに省略しています)。 色が濃い上向きの矢印が2カ所あり、ここが今回もっとも重要なポイントです』、「脂質が人体を構成する細胞の膜や、ステロイドホルモンをはじめとした様々な生理活性物質の成分となる」、というのでは、敵視すべきではなく、「必要不可欠な役割」も果たしているようだ。
・『糖質は簡単に脂肪になるけれど……  炭水化物はブドウ糖に分解され、血中へと流れ込む。つまり、血糖が上昇します。それを感知した膵臓は、「インスリン」というホルモンを出します(インスリンも食事法において、最重要キーワードの1つです)。 インスリンによってブドウ糖は細胞の中に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。 余ったブドウ糖は「グリコーゲン」や「中性脂肪」に変えられます。グリコーゲンは肝臓や筋肉に、中性脂肪は脂肪組織に取り込まれて貯蔵されます。 つまり炭水化物からも脂肪ができてしまうのです(図の「アセチルCoA」→「脂肪酸」のルート)』、「炭水化物からも脂肪ができてしまう」、やはり炭水化物も過度に摂るべきではないようだ。
・『炭水化物の食べすぎもやっぱり注意!  これに関連して、もう一つ大事な注意点があります。 脂質異常症がある場合、「揚げ物や炒め物などの脂っぽい食事を控えましょう」と指導されることがよくあります。 ところが、LDLが高い場合にはおおむね妥当だと思いますが、中性脂肪が高い場合は、「炭水化物も原因だった」ということがあり得るのです。 脂っぽい食事を控えているのに中性脂肪がなかなか下がらないという人は、むしろ炭水化物の量に留意する必要があるのです。 医者でもこの点をはっきりと認識していない人が時々いて、中性脂肪が高い場合に、「本当に脂っぽい食事を控えているんですか~?」と不用意な発言をして、患者さんとの信頼関係にヒビが入ることがあります。 このように、糖質には一筋縄ではいかない面もあります。 では、そんな糖質を全く取らなかったらどうなるのでしょうか。 最近では、「糖質制限」を厳格に守って、炭水化物をほとんど取らない生活を送っている人もいます。そういった場合、人体にはどんな影響があり得るのでしょうか。 もともと人間の脳は、原則的にブドウ糖しか栄養素として利用できません。 ですから、もしそのほかの栄養素からブドウ糖が合成できないのだとすると、糖質制限をすることで、脳は飢餓状態になってしまいます。 ただ、これは一応、回避できます。ブドウ糖が枯渇した場合には、筋肉のたんぱく質などを分解して、ブドウ糖を作り出す「糖新生」というルートができるからです(図の「ピルビン酸」→「ブドウ糖」のルート)。 厳格な糖質制限を推進する人たちは、「糖新生があるから糖質はまったく取らなくても大丈夫」と主張します。 ただ、成り立ちからも分かる通り、糖新生は人体にとってあくまで非常手段。糖新生があるから糖質ゼロでも構わない、とするのは、やや乱暴な話のように感じます』、「糖質制限をすることで、脳は飢餓状態に」なるが、「筋肉のたんぱく質などを分解して、ブドウ糖を作り出す「糖新生」というルートができる」が、「糖新生は人体にとってあくまで非常手段」ということであれば、過度な糖質制限は避ける方がよさそうだ。
・『3大栄養素は、それぞれ独自の流れを持っていて、互いの交通はないというイメージがあるかもしれません。けれど実は様々な合流ルートがあるのです。これを「栄養素の相互変換」と言います。 つまり下のような単純な図式ではないということです。  炭水化物→エネルギー 脂質→エネルギー、脂肪として貯留 たんぱく質→筋肉など肉体をつくる これはいたずらに複雑になっているわけではありません。人類の歴史において、それぞれの栄養素を、バランスよく取れる時期は、ほとんどありませんでした。つまり栄養素の過不足があった場合に互いをカバーしあえるよう発達した、極めて精緻なセイフティーネットがこの複雑な仕組みなのです。 その特性を理解した上で適切にふるまうことが、取ろうと思えばいくらでも栄養素を取れる時代に生きる日本人にとって、必要不可欠なことなのです』、「栄養素の相互変換」は「極めて精緻なセイフティーネット」とは、確かによくできた仕組みだ。「飽食の時代」に「セイフティーネット」を乱用する愚は避けたいものだ。

次に、昨年11月3日付け日経ビジネスオンライン「「何を食べれば健康によいか」根拠はここにある ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(1)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/227278/102600136/
・『「健康によい食事」や「体に悪い食べ物」など、健康情報のなかでも人気の「食」の話。だがそれだけに、極端だったり矛盾したりする話も多く、何を信用していいのか分かりにくいのも確かだ。そこで、食と健康にまつわる根拠(エビデンス)を提供する栄養疫学の専門家として、世界的に活躍する今村文昭さんの研究室に行ってみた! 今の世の中には、いわゆる健康情報が満ち溢れている。 どうすれば、より健康になれるのか、誰もが知りたい。 特に食事にかかわる情報は人気だ。何を食べればよいのか。なにがヘルシーで、なにが危険な食べ物か。 栄養素レベルでは、最近では追いきれないほどたくさんの種類のサプリがドラッグストアの棚に並んでいる。そういえば、かつて悪者の代表のように扱われていた脂質も、不飽和脂肪酸という種類のものは体によいらしい。一方、炭水化物の評判はすこぶる悪い。毒だと言い切る人すらいる。脂質悪者論の時代から炭水化物ヘイトの時代へのうつりかわりが、たぶん平成の健康情報の一大イベントだったのではないだろうか。 食材レベルでは、野菜や果物は今も昔もヘルシーな食べ物だと思われており、タンパク質の供給源としては魚やチキンがよいというのもよく聞く。悪者にされがちなのはやはり炭水化物系で、砂糖はもちろん、白米を代表とする「精製された穀物」を食べることの是非が取りざたされる。その一方で、肉はどうだろう? 近所のステーキハウスは「肉は健康食!」と大きく書かれたパネルを掲げて客を呼び込んでいるが、それって本当にいいのだろうか。 食事パターン、いわば献立のレベルとしては、「地中海ダイエット」(地中海食)がすでに市民権を得ているかもしれない。野菜や果物、ナッツ、全粒粉のパン、魚介類、チキン、オリーブオイルや適量の赤ワインといった、地中海世界でよく食べられているものを真似た食事が健康的に優れているというもので、近所のイタリアンファミレスに行くと強力にプッシュされている。一方で専属コーチ付きのジムに通う知人は「低炭水化物食ダイエット」を信奉している。肉中心の食生活をよしとして、外食でステーキを頼んだ時にマッシュポテトがついてきても手を付けない。可能なところではブロッコリーなどにかえてもらうという。 こういったことは、それぞれどれだけ妥当なのだろう。極端に感じるものも多いし、お互い矛盾するものもある。 信頼できる判断の基準はありうるのだろうか。医療には、EBM(根拠(エビデンス)に基づいた医療)という概念があり、各学会がガイドラインを作って標準的な診断や治療を定めている。だから、ぼくたちは治療を受ける時にそれが妥当かどうかまずはガイドラインを参照することができるし、さらにそのもとになっているエビデンスを見ることもできる。 この時に言うエビデンスは「科学的根拠」と訳されることが多く、もともと疫学という学問に由来するものだ。日本では占いの「易学」と混同されることがあるほどマイナーな分野だが、実は様々な応用科学分野での実践に「根拠(エビデンス)」を与える重要な役割を担っている。医療におけるEBMは、まさにその具体例だ。 そして、食についても栄養疫学という分野があって、日々、まさにぼくたちが知りたい「よい食べ物」「悪い食べ物」について研究を深めている。食物に関する健康情報の多くは栄養学の範疇だと理解されていると思うけれど、その「根拠」の多くを提供するのが栄養疫学だ。ならば、直接、栄養疫学者に話を聞いてみたい。そんなふうにずっと思っていた。 機会が訪れたのは今年になってからで、たまたまぼくがロンドンに滞在中にケンブリッジ大学の栄養疫学者、今村文昭さんに会うことができた』、食物に関する健康情報が溢れるなかで、栄養疫学者の話というのは興味深い。
・『ロンドンからケンブリッジ駅までは直通列車で50分弱。駅前からバスに乗り、10分ほどで大学病院であるアッデンブルック病院に到着。そこでしばらく待っていると、グレイのベストを着た30代くらいの男性が、軽く手を挙げながら近づいてきた。 それが、今村さんだった。アメリカのボストンにあるタフツ大学で栄養疫学研究で博士号を取得、同じくボストンのハーバード大学公衆衛生大学院での博士研究員(ポスドク)期間を経て、2013年から英国のケンブリッジ大学MRC疫学ユニットの上級研究職に就いている。糖尿病や肥満に関する疫学を中心に活躍していると聞いている。 今村さんに導かれて病院の建物に入る。患者が行き来するエリアからエレベーターに乗り、MRC疫学ユニットのフロアに着くと、雰囲気が一変した。ぱっと見る限り、病院ではなく、ごく普通の会社のオフィスのような光景だった。たくさんデスクが並んでおり、着席している人たちはそれぞれのPCの画面を見ながら仕事をしている。ぼくたちはさらに奥まったところへと進み、こぢんまりした個室で対話を始めた。 まず今村さんの所属のMRC(Medical Research Council)について聞いておこう。字面通りに訳すなら「医療研究会議」だが、具体的なイメージがわかない。 「ちょっと特殊なんですが、私の立場は、ケンブリッジ大学の研究員であり、日本で言うところの厚生労働省の研究者でもあるんです。MRCは、医学研究の公的な資金をどう分配するかを決める機関で、研究拠点を英国各地に散らばせています。私たちのところは糖尿病と肥満にかかわる疫学のユニットです」 つまり、MRCはイギリス政府が医療関係の研究を委託する仕組みで、国立の研究所をドンと構えるのではなく、各地の大学や研究所にそれぞれのテーマに応じて予算を分配して研究を進める形を取っているのだそうだ。ケンブリッジには、「疫学」の他にも「分子生物学」や「がん」などのMRCユニットがある。 そんな中、疫学ユニットには、50人を超える研究者が所属している。ぼくが見た「オフィス」は、それらの研究者がプロジェクトごとに分かれた大部屋の一つだった』、今村文昭氏は経歴からみて栄養疫学者として一流のようだ。
・『では、栄養疫学者である今村さんのテーマが、なぜ糖尿病や肥満なのか。 「簡単に言いますと、糖尿病を予防するにはどんな食生活を送るといいのか、どんな生活習慣が望ましいかということを研究しています。今、日本でも1000万人くらい治療を要する患者さんがいると言われていますし、英国でも300万人と社会的な問題です。さらに、世界的に見ると数億人もいて、今も増えています。糖尿病って、それを入り口にしていろんな病気につながっていきます。心臓の病気だったり、腎不全だったり、血管系の疾患の危険因子です。公の立場からは医療費がかさんで社会的な負担になるということで、予防が重要です。そこで、どのような環境因子や遺伝子や代謝の因子が、どれだけ糖尿病に関与しているのか見つけて、それを介して予防をできればよいというわけです。食事というのは、そのひとつの大きな要素なんです」 つまり、今村さんの取り組みの視野と射程は、ぼくたちが素朴に知りたがる「健康情報」よりも広く長い。ぼくたちが健康情報を咀嚼する時に、こういった研究のあり方を知っておくことは大いに意味がありそうだ。今回のシリーズでは今村さんの研究の「風合い」を知ることをひとつの焦点にしていこう』、糖尿病の食事を通じた予防は、確かに極めて重要な課題だ。
・『一応、確認しておくと、糖尿病は、膵臓から出るホルモンであるインスリンが十分に分泌されず、あるいは働くことができず、血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度、つまり血糖値が高いままになってしまう病気だ。 ブドウ糖はぼくたちが生きていくための、いわば「燃料」になる必要不可欠なものだ。インスリンが働かずブドウ糖が血中に留まって細胞に入っていきにくくなるので、細胞が「飢餓状態」になってしまう。また、血中のブドウ糖濃度が高止まりし続けると、血管の細胞のタンパク質や脂質と結合するなどしてダメージを与えてしまう。「燃料」だけに、反応性が高いのだというふうにぼくは理解している。しかし、血糖値が高いだけでは自覚症状にとぼしいのが問題で、昔は合併症が出るまで気づかないこともあった。 合併症には重篤なものが多い。狭心症・心筋梗塞、脳梗塞など直接生命にかかわる疾患の他、腎症で透析が必要な状態になったり、認知症のリスクを上げたりもする。1964年生まれのぼくの子ども時代、近所で糖尿病由来の極端な血行障害から両足が壊死して切断を余儀なくされた人がいた。その後、別の知人が眼底出血を繰り返し失明したこともあった。それぞれ糖尿病足病変、糖尿病網膜症、といった病名があることを後で知った。子どもながらに非常に衝撃的な出来事だった。 いったいなにをすると糖尿病になるのだろう。食べ物が関係することは確かだが、それだけというわけではない。様々なことが絡まり合っている中、今村さんたちは、介入すると予防効果がありそうな因子を見出そうとしている。なお、糖尿病には1型と2型があり、1型は生活習慣と関係ない自己免疫系の疾患が原因だとされている。食事などの生活習慣の改善で予防が期待できるのは2型の方だ。今後、本稿の中で「糖尿病」と書いたら、基本的に2型のことだと読み替えてほしい』、「糖尿病」の「合併症には重篤なものが多い」というように、確かに怖い病気だ。
・『では、どうやって研究するのか? 一般に「糖尿病の原因を探る研究」と聞くと、白衣を着て実験室でなにかをしたり、やはり同じく白衣の医師が患者を診たりする光景を想像する人が多いかもしれない。けれど、ぼくが見た今村さんの職場は「オフィス」そのものだった。 「白衣を着てやるようなものではないですね。普段は、コンピュータを前にしてデータを扱っています。ケンブリッジ大学は、1990年代から、ヨーロッパ10カ国の50万人を追跡しているEPIC(エピック)という名前のコホート(研究の対象になる集団)の運営に参加していて、まずそのデータを使わせてもらえます。また、2005年からは、私たちのユニットで独自に、フェンランド研究という1万2000人ぐらいのコホートをイギリス東部のノーフォーク地方の近郊で走らせていて、こっちは運動習慣に力をいれている疫学研究です。食事習慣、遺伝子なども見ているのですが、特に運動習慣と健康、病気がどう関係しているか、体に加速度センサーをつけてもらって、運動やGPSのデータを取っているのが特徴です。あと、タフツ大学での博士研究や、ハーバード大学でのポスドクでの研究では、聞いたことがあるかもしれませんがフラミンガム研究のデータを解析していましたし、ほかの北米のコホートで論文を書いたこともあります。ポスドク時代の研究テーマは、糖尿病の研究もしましたが、心臓の病気などがメインでした」 コホート研究という言葉が出てきた。コホートの語源としては、古代ローマの歩兵隊の1単位のことだそうだが、ここでは観察対象となる集団のことを指している。数千人から数十万人という大きな集団(コホート)を長期間追跡することで、どんな生活習慣なり、環境要因なりが、病気や健康に関係しているのか見つける。大規模なコホート研究は疫学研究の華であり、1948年にマサチューセッツ州フラミンガムで始まったフラミンガム研究はどんな疫学の教科書にも出てくる古典的でなおかつ現役のコホート研究だ。 今村さんはフラミンガム研究など北米のデータから始め、今では欧州の50万人規模のEPIC研究や、1万2000人と比較的小さめではあるけれど「運動習慣」に特に力を入れたフェンランド研究を「自分のコホート」として研究することができる立場なのだった。つづく』、「大きな集団(コホート)を長期間追跡することで、どんな生活習慣なり、環境要因なりが、病気や健康に関係しているのか見つける」、コホート研究は確かに「疫学研究の華」なのだろう。ただ、この後の続きについては、やや専門的に過ぎる部分も多いの、(21)~(5)の紹介は省略。(6)だけを紹介しよう。

第三に、上記の続きとして12月8日付け日経ビジネスオンライン「こんなサプリメントにご用心 ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(6)」を紹介しよう。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/18/101700018/110900007/?P=1
・『ケンブリッジ大学MRC疫学ユニットの今村文昭さんとの対話は長時間に及んだ。 朝9時ころから話しはじめて、気がついたらもうお昼になっていて、本当に飛ぶように時間がすぎた。 ぼくは午後、ケンブリッジ大学のメインキャンパスで別のアポイントメントがあったので、いったんアデンブルック病院を離れざるを得なかった。 お互いにまだ話が半分くらいしか済んでいないことを確認し、夕方、今村さんが仕事を終えてから、今度はケンブリッジの大学のメインキャンパスの会議室で話を再開することになった。 ここから先は、午前中の対話を前提にした「応用編」だ。 ちまたに溢れる食品情報と、ぼくたちはどうつきあっていけばいいか。 理論や方法に詳しい栄養疫学者の目から見るとどう見えるのか、これまでのところでも折に触れて述べてきたけれど(加糖飲料やフルーツジュースの件など)、あらためて目立った食品情報について、今村さんの意見を聞いてみたい。栄養成分レベルから食事パターンまで様々な階層がある中で、まずは栄養成分レベルから。 つまり、サプリメントの類はどうだろう』、近年、サプリメントの広告が急増しているので、栄養疫学者の考え方は興味深い。
・『「まず、ご存知の方もいると思いますが、栄養疫学の歴史で注意すべきこととして、サプリメントの服用で死亡率が上がるという衝撃的な結果が出たことがあるんです。1980年代にニンジンやカボチャなど黄緑色野菜に含まれるβカロテンが、がんを抑制するという仮説が提唱されこれは期待が持てるのではないかと盛り上がりました。日本でもβカロテン入りの健康飲料やサプリメントが発売されましたよね。でも、その後、臨床試験が行われると、βカロテンのサプリメント服用によって喫煙者など特定のグループで死亡率が上がるということが分かりました。その一方で、重篤な疾患に対する有効性を示す研究はまったく出ていません。2000年以降に行われた複数のメタアナリシスでも、サプリメントの常用が死亡率を10%弱上げるだろうという結果になりました」 健康によいと期待されていたものの効果が確認できなかっただけでなく、喫煙者などには有害であることが分かってしまった。ぼくも発売された健康飲料を時々飲んでいたから、衝撃を受けたことを覚えている。もっともこの健康飲料には、そもそも健康への影響が出るような量のβカロテンは入っていなかったそうなのだが』、「βカロテン入りの健康飲料やサプリメント」については、「効果が確認できなかっただけでなく、喫煙者などには有害であることが分かってしまった」というのには驚かされた。マスコミも大スポンサーのサプリメント業界などを「忖度」してマイナス情報の報道は控えているようだ。
・『では、最近、ドラッグストアでよくみる様々なサプリメントはどうだろう。  サプリメント専門ショッピングサイトで見たところ、本当におびただしい種類がある。トップページに名前が出ている人気商品としては、各種ビタミン、カルシウム、鉄といった伝統的なものはもちろん、コラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタ(牛や豚の胎盤のエキス!)、コエンザイムQ10、ロイヤルゼリー、そして、オメガ3脂肪酸といったものまで。 ここでは、今村さんが自分の研究でも扱ったことがある脂肪の摂取について取り上げる。サプリの効果を見るための研究ではないが、脂肪酸の効用は今村さんにとって専門の一つと言える。 「脂肪酸の種類って、固い脂質の飽和脂肪酸と液体の脂質の不飽和脂肪酸に分けられるんです。飽和脂肪酸はラードやバターなどに多く入っていて、不飽和脂肪酸は、サラダオイル、オリーブオイルなどに多く入っています。不飽和脂肪酸は、さらに、一価と多価というふうに分かれて、最近よく話題になるオメガ3脂肪酸は、多価の不飽和脂肪酸のひとつです。私自身、こういった様々な脂質と、炭水化物の摂取が、血糖値だとか、インスリン濃度だとか、糖尿病の指標にどういう影響を与えているかメタアナリシスをしました。その結論の一つは、炭水化物が多い食事よりも不飽和脂肪酸が多い食事をしたほうが、指標が改善するだろうというものでした」 なお、「脂肪酸」つながりで、有害とされる「トランス脂肪酸」はどうなのかと思った人もいるだろう。実は、トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種だが、化学構造上の理由で例外的に固くなる。だから「固い脂肪」「液体の脂肪」という分け方をするなら、「固い脂肪」だ。もっとも、トランス脂肪酸は、ある種のマーガリンやショートニングなどの製造過程でできたり(最近はかなり改善されてきている)、スナック菓子などに多いということが問題になっているので、別立てで考えた方がよいテーマではある。 さて、ここで今村さんが言及しているメタアナリシスは、研究参加者に食事を提供して、その結果、血中の指標がどう変わるかを見た研究を102件も集めて分析したものだ(※1)。系統的レビューの際に設定した条件で抽出した研究は、ランダム化して食事を提供するものに限っていて、栄養疫学分野では貴重な介入研究だ。メタアナリシスのひとつの事例として紹介したかったのだが、先に紹介した「加糖飲料」についてのものよりも扱っている事例が多く、高度に専門的な解析がほどこされているので見送った。興味のある方は是非、これまた膨大な補遺も含めて論文を見てほしい。読み解く能力に応じて、凄みが分かるだろう。 この論文やその他のエビデンスでどんなことが示唆されるのか、今村さんに簡単に述べてもらうとこんなふうだ。 「食物繊維やカロリーの摂取量は別に考えるものとして、不飽和脂肪酸、あるいは液体の脂肪は比較的よくて、飽和脂肪酸、固体の脂肪はよくもなく悪くもない。そして、私たちの身体の燃料となる炭水化物はそんなによくないといったところです。糖尿病関係以外の話ももちろん網羅しなくてはなりませんが、個人的には炭水化物も飽和脂肪酸についても毛嫌いすることなく、ほどほどならと考えています」 というわけで、不飽和脂肪酸はかなりよさげである。少なくとも糖尿病の予防効果があるのではないか。しかし、食品の中、食事パターンの中で摂取するのと、サプリメントとして単独で摂取するのでは違う。不飽和脂肪酸のうちにオメガ3脂肪酸も含まれるわけだが、はたしてサプリメントを飲めば効果は期待できるのだろうか』、私もかねて疑問に思っていたことで、興味深い。
・『「私のメタアナリシスで検討している不飽和脂肪酸というのは、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸というものを足し合わせたものです。そのうち、オメガ6脂肪酸の摂取の方が高くて90パーセントにもなるので、オメガ3脂肪酸に関する知見を推察するには至りません。それに、糖尿病の患者に食事を与えた研究ですので、いずれにしてもサプリメントの効果はわからないんですよ」 つまり、オメガ3脂肪酸のサプリの効用を知りたければ、まさに「オメガ3脂肪酸のサプリ」そのものを対象とした研究を見ることが必要だ。当たり前といえば、当たり前なのだが、ぼくを含めて、世の人はすぐに「不飽和脂肪酸がよいなら、そのうちの一つであるオメガ3脂肪酸だけを補ったら健康によいのでは」と飛躍してしまいがちだ。 「オメガ3脂肪酸をサプリとしての効果を見た研究もありますが、糖尿病に関しては良好な結果は得られていませんね。日本の研究で、心疾患か脳卒中の既往歴のある人で二次予防効果が見られましたが、やはり健康な人が飲んで効果があるかは分からないので、この時点で推奨するのはちょっと無理があります」とのことだ』、「オメガ3脂肪酸をサプリとしての効果」については、「健康な人が飲んで効果があるかは分からない」、なるほど。
・『結局、サプリメントで安心して服用できるのは、長い歴史があるビタミンやカルシウム製剤くらいだというとても保守的な結論にならざるをえない。 「いえ、実は、それさえも言えなくて……」と今村さん。 「カルシウムやビタミンDは、『骨を強くするのに必要なもの』と言われますし、実際に生化学的な知見は確立されています。でも一般的な成人がサプリメントで摂取したとしても、ベネフィットは限られていると考えてよいでしょう。その一方で、眉唾ものかもしれませんが循環器系疾患や腎臓への副作用の疑いも指摘されています。鉄剤のように貧血に対する効果が示されているものでも他の疾患のリスクを上げる可能性があると指摘されていますし、発展途上国では夜盲症を予防するビタミンAでも、飲みすぎるとビタミンA過剰症で肝臓を傷めたりします。こういったことまで含めて考えないといけないんですが、一般の人にそこまで求めるのは酷ですよね」 議論が込み入ったところに入ってくると、結局は栄養疫学を始めとする専門家でないと判断が付きかねる領域に至る。その際にはぜひプロに解説してもらいたいものだと思う。それも、巨大なサプリメント業界と利益相反のない立場から。 ぼくたちアマチュアができることといえば、まず「すぐに飛びつかない」ことを強調したい。また、もう少しだけ踏み込むとしたら、「メカニズムとして合理的に思えても、実際に効くとは限らないし、思いもしない副作用の可能性は常にある」ことを肝に銘じることも大事だろう。 不思議に思われるかもしれないが、体内での働きのメカニズムがかなり分かっていると思われる栄養素についても、サプリメントの総合的な効果はよく分からないことが多い。ましてや、もっと新規な栄養素で、その働きについてメカニズムを中心に語っているものは要注意だ。 例えば── 物質●●には、強い抗酸化作用があり、血液中の活性酸素を一掃してくれる。活性酸素はLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を変性させて血管壁に付着、蓄積させることから循環器系の疾患につながる。よって、物質●●のサプリメントを飲むと健康に良い。というような言説だ。 こういうものは、部分部分は正しくても、全体としてはつぎはぎだらけで疑わしいことも多い。また、かりに十分に妥当な内容でも、サプリとして摂取したときの効果の証拠があるものは少ない。「エビデンスがないから、メカニズム論に傾倒するのだと考えるといいかもしれません」と今村さんも言っていた。 だから、現況では、「すごいメカニズム」が解説されていたら、それと同時に、サプリ摂取に関する疫学研究、臨床研究について言及があるかどうかは常に意識したほうがよい。 その上で──「もしも、貧血や疲労感を抱いてサプリの利用も考えたいのでしたら、ご自身の食生活などの生活習慣を見直すことも選択肢にいれつつ、臨床医や栄養士にお世話になるのが適当だと思いますよ」というのが、今村さんからの助言である』、「メカニズムとして合理的に思えても、実際に効くとは限らないし、思いもしない副作用の可能性は常にある」、というのであれば、広告に惑わされずに、「臨床医や栄養士にお世話になるのが適当」というのには、納得である。
タグ:炭水化物も飽和脂肪酸についても毛嫌いすることなく、ほどほどならと考えています オメガ3脂肪酸をサプリ 健康な人が飲んで効果があるかは分からないので、この時点で推奨するのはちょっと無理があります 様々なサプリメント 炭水化物が多い食事よりも不飽和脂肪酸が多い食事をしたほうが、指標が改善するだろうというものでした 一般的な成人がサプリメントで摂取したとしても、ベネフィットは限られていると考えてよいでしょう。その一方で、眉唾ものかもしれませんが循環器系疾患や腎臓への副作用の疑いも指摘されています メカニズムとして合理的に思えても、実際に効くとは限らないし、思いもしない副作用の可能性は常にある 臨床医や栄養士にお世話になるのが適当 サプリメントの総合的な効果はよく分からないことが多い。ましてや、もっと新規な栄養素で、その働きについてメカニズムを中心に語っているものは要注意だ エビデンスがないから、メカニズム論に傾倒するのだと考えるといいかもしれません 鉄剤のように貧血に対する効果が示されているものでも他の疾患のリスクを上げる可能性があると指摘されています 不飽和脂肪酸、あるいは液体の脂肪は比較的よくて、飽和脂肪酸、固体の脂肪はよくもなく悪くもない。そして、私たちの身体の燃料となる炭水化物はそんなによくないといったところ 血中のブドウ糖濃度が高止まりし続けると、血管の細胞のタンパク質や脂質と結合するなどしてダメージを与えてしまう コホート(研究の対象になる集団)の運営に参加 コホート研究 合併症には重篤なものが多い 大きな集団(コホート)を長期間追跡することで、どんな生活習慣なり、環境要因なりが、病気や健康に関係しているのか見つける 糖尿病を予防するにはどんな食生活を送るといいのか、どんな生活習慣が望ましいかということを研究 糖尿病って、それを入り口にしていろんな病気につながっていきます インスリンが働かずブドウ糖が血中に留まって細胞に入っていきにくくなるので、細胞が「飢餓状態」になってしまう 英国のケンブリッジ大学MRC疫学ユニットの上級研究職に就いている 栄養素の過不足があった場合に互いをカバーしあえるよう発達した、極めて精緻なセイフティーネットがこの複雑な仕組み 実は様々な合流ルートがあるのです。これを「栄養素の相互変換」 「「何を食べれば健康によいか」根拠はここにある ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(1)」 人類の歴史において、それぞれの栄養素を、バランスよく取れる時期は、ほとんどありませんでした 栄養疫学の専門家 ブドウ糖が枯渇した場合には、筋肉のたんぱく質などを分解して、ブドウ糖を作り出す「糖新生」というルートができる 3大栄養素は 糖新生は人体にとってあくまで非常手段 肉体に必要不可欠な役割を持っています 糖質制限をすることで、脳は飢餓状態になってしまいます 糖質は簡単に脂肪になるけれど…… 炭水化物からも脂肪ができてしまう 三大栄養素の流れは完全に独立しているわけではなく、下の図の通り、一部は相互に乗り入れ可能に 炭水化物の食べすぎもやっぱり注意! 日経ビジネスオンライン 「糖質ゼロで、人間は生きていけるのか 究極の糖質制限をすると人体はどうなる?」 脂質が人体を構成する細胞の膜や、ステロイドホルモンをはじめとした様々な生理活性物質の成分となる タフツ大学で栄養疫学研究で博士号を取得 ハーバード大学公衆衛生大学院での博士研究員(ポスドク)期間を経て 「こんなサプリメントにご用心 ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(6)」 重篤な疾患に対する有効性を示す研究はまったく出ていません サプリメントの常用が死亡率を10%弱上げるだろう 栄養疫学の歴史で注意すべきこととして、サプリメントの服用で死亡率が上がるという衝撃的な結果が出たことがある βカロテン βカロテンのサプリメント服用によって喫煙者など特定のグループで死亡率が上がる 今村文昭 食事パターンの中で摂取するのと、サプリメントとして単独で摂取するのでは違う 健康 (その6)(糖質ゼロで 人間は生きていけるのか 究極の糖質制限をすると人体はどうなる?、何を食べれば健康によいか」根拠はここにある ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(1)、こんなサプリメントにご用心 ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(6)) 近藤 慎太郎 医学研究の公的な資金をどう分配するかを決める機関 MRC(Medical Research Council) 私たちのところは糖尿病と肥満にかかわる疫学のユニット
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