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トランプ大統領のロシア疑惑(ロシア疑惑捜査 トランプ氏と弁護団「勝利」の裏側、ロシア疑惑報告書 トランプ氏はなぜ「訴追」を免れたか、ムラー報告書公表から1週間 米政治の混迷はむしろ深まっている、トランプ「護衛官」 バー司法長官のロシア疑惑) [世界情勢]

今日は、トランプ大統領のロシア疑惑(ロシア疑惑捜査 トランプ氏と弁護団「勝利」の裏側、ロシア疑惑報告書 トランプ氏はなぜ「訴追」を免れたか、ムラー報告書公表から1週間 米政治の混迷はむしろ深まっている、トランプ「護衛官」 バー司法長官のロシア疑惑)を取上げよう。

先ずは、3月30日付けロイター「焦点:ロシア疑惑捜査、トランプ氏と弁護団「勝利」の裏側」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/trump-mueller-russia-idJPKCN1RA0I0
・『バー米司法長官がモラー特別検察官によるロシア疑惑捜査報告書の概要を連邦議会に通知したとき、トランプ大統領の弁護団は、議事堂に近いオフィスに顔をそろえていた。 彼らはこの日まもなく、祝杯を挙げるべき理由を手にすることになる。これには恐らく、重要な戦略的判断が寄与していた。モラー特別検察官は、2016年の米大統領選挙でトランプ氏またはその側近がロシアと共謀したか否かについて、22カ月に及ぶ捜査を行い、証人500人に事情聴取した。トランプ氏の弁護士たちは、大統領本人への事情聴取が行われないよう手を尽くした。 この戦略は功を奏し、特別検察官の捜査チームから本格的な事情聴取を受けるという司法上の危機からトランプ氏を守った。もっともトランプ氏自身は、喜んで事情聴取に応じると公言しており、今年1月27日に聴取を行うという仮の日程まで組まれていたほどだ。 しかしトランプ氏の弁護士の1人はロイターに対し、モラー氏による大統領への聴取を認めるつもりは全くなかったと語った。モラー氏も、証言を求める召喚状を発行することはなかった。 トランプ氏の主要弁護士たち、ジェイ・セクロー氏、ルディ・ジュリアーニ氏、ジェーン・ラスキンおよびマーチン・ラスキン夫妻は24日、会議用円卓を囲んでコンピューターの画面を開き、バー司法長官による報告書概要の発表を待った。ついにその概要がネット上に公開されたとき、彼らは歓喜に沸いた。 モラー氏はロシアとの共謀の証拠を見いだせなかった、とバー司法長官は言った。また、トランプ氏が捜査を邪魔しようと試みて司法妨害を行ったという証拠も不十分だったと結論した。モラー特別検察官は、この点はまだ未解明の問題だとしている。 この結果は、捜査がトランプ政権に大きな影を落としていただけに、大統領にとって大きな政治的勝利となった。 セクロー氏は26日、ロイターに対し、ジュリアーニ氏が抱きついてきたと明かした。セクロー氏によれば、彼は他のメンバーに「この上なく素晴らしい」と言ったという。ジュリアーニ氏はバー司法長官が捜査結果を発表した数分後、「予想していたよりも良い結果だ」とロイターに話した』、「バー司法長官による報告書概要の発表」の時点では、「トランプ氏の主要弁護士たち」は大喜びだったようだ。
・『トランプ氏の弁護団は、同氏に対する本格的な事情聴取を求めるモラー氏の度重なる要請を巧みに拒否し、大統領が大陪審で証言するよう召喚されることを回避した。その代わりに、トランプ氏が文書による回答を提示することで合意し、これは昨年11月に実現している。 この違いは大きかった。何人かの弁護士は、トランプ氏が事情聴取に応じたら、彼が連邦捜査局(FBI)に対してうそをついていた、法律用語で言えば「虚偽の陳述」をしていたと主張される可能性があった。ジュリアーニ氏は、モラー特別検察官がトランプ氏に対し、ロシアとの共謀について尋ねるだけにとどまらず、それ以外の事項にも脱線するようなことがあれば、事情聴取は「偽証のわな」になると公言していた。 トランプ氏は、事実のわい曲やあからさまなうそを指摘されることが頻繁にある。 弁護団の戦略に詳しい2人の情報提供者が匿名で語ったところでは、この1年間、トランプ氏の弁護士たちは両面作戦を推進してきたという。つまり、ジュリアーニ氏が、ケーブルテレビの報道番組でモラー特別検察官による「魔女狩り」を公然と攻撃する一方、ラスキン夫妻が水面下でモラー氏のチームと交渉する、というアプローチだ。 モラー氏の報道官は、コメントの求めに応じなかった』、弁護団が、「本格的な事情聴取を求めるモラー氏の度重なる要請を巧みに拒否し・・・文書による回答」に止めたのは、さらに「両面作戦を推進してきた」というのは、さすが超一流弁護団だ。
・『「二の舞はごめんだ」  2017年5月にモラー氏が捜査を開始したとき、弁護団は当初、捜査に協力する方が最短距離で幕引きに至ると判断していたと、当時、大統領に関する捜査への対応を担当していたホワイトハウスの法律顧問タイ・コブ氏は言う。ホワイトハウス職員20人以上が特別検察官による事情聴取に応じ、政権側は2万点以上の文書を提出した。 トランプ氏自身が事情聴取に応じるかどうかも切迫した問題となっていた。聴取の日程が暫定的に決められたにもかかわらず、トランプ氏の法律顧問たちの意見は分かれていた。当時、トランプ氏の個人弁護団のトップを務めていたジョン・ダウド氏は、事情聴取はあまりにもリスクが高いと懸念していた。 海兵隊出身で好戦的なダウド氏は、トランプ大統領自身が意欲を見せているにもかかわらず、事情聴取に応じることに反対した状況を回想して、「ノコノコ出ていって下手を打つわけにはいかない」と語った。 ダウド氏によれば、彼はモラー氏のチームに「彼らがフリン氏やパパドプロス氏に対してやったことについて」話をしたという。国家安全保障担当大統領補佐官だったマイケル・フリン氏と、選挙の際にトランプ氏の側近だったジョージ・パパドプロス氏は、特別検察官による事情聴取に応じた末に、結局FBIに対する偽証について有罪を認めた。 ダウド氏は「彼らの二の舞を演じるつもりはなかった」と、あるインタビューで話している。 ダウド氏によれば、モラー特別検察官から、事情聴取で16の分野について協議したいと言われ、あまりにも話が広がりすぎていると考えたという。トランプ氏の弁護団は、暫定的な聴取日程に合意しつつ、捜査陣がすでに把握している内容を知ろうと同氏に探りを入れていたという。 「彼らが実際に何を考えているかを知りたかった。彼らはそれを胸の内に隠していた。われわれの狙いは、協議を重ねるうちに、彼らの考えがだんだん分かってくるだろうということだった。それが、協議を続けていた狙いだ」とダウド氏。トランプ氏を事情聴取に応じさせるつもりはまったくなかったと同氏は付け加えた』、特別検察官のチームと「協議を重ねるうちに、彼らの考えがだんだん分かってくるだろう」とは、特別検察官のチームの脇が相当甘かったのか、弁護団の嗅覚が優れていたのだろう。
・『大統領を守る  コブ氏によれば、事情聴取が中止になった後は、捜査プロセスが長引くことは明らかだったという。 「大統領の弁護団が、事情聴取に応じないがその可能性は残しておくと2018年1月に決めた以上、捜査がかなり長引くことは明らかだった」と同氏は言う。 また弁護団は、モラー氏がトランプ氏に証言を義務付ける召喚状を発行するのではないかと日々心配しなければならなかった。もし召喚状が発行されたら、裁判官に召喚状の無効化を求めるというのが彼らの計画だった。そうなれば最高裁にまで至る司法の場での争いが予想される。だが、召喚状は結局来なかった。 「われわれは最初から、召喚状が来たらその無効を申し立てるつもりだった」とセクロー氏は言う。「法律上はこちらが有利だと自信を持っていた」 専門家が皆これに同意するわけではないが、トランプ氏の弁護団の見解では、他の情報源から情報を得ることが不可能な場合、あるいは極めて例外的な事態を除けば、大統領に証言を強制することはできない、というものだった。 2018年春の時点では、トランプ氏には2つの選択肢があるように思われた。事情聴取に応じるか、召喚状を受けるか、である。 この時点までに、すでに弁護団は再編されていた。ダウド氏は3月に辞任。ラスキン夫妻とジュリアーニ氏が4月に加わった。ホワイトハウスでは、5月にコブ氏に代わりエメット・フラッド氏が就任した。一貫して主要メンバーであったのはセクロー氏だけだ。 捜査当局との交渉に詳しい情報提供者によれば、新たな弁護団はモラー氏に対し、大統領の事情聴取を正当化するような段階まで捜査が達していることを示すように求めたという。 この情報筋によれば、弁護団は「犯罪の証拠をつかんだと言えるような立場にあるのか」と尋ねたという。 2018年秋を通じて、弁護団はこの立場を固守する一方で、トランプ氏の事業や財務その他の事項に波及するような聴取ではなく、2016年の選挙以前におけるロシアとの共謀の可能性についてという限定的なテーマに関してのみトランプ氏が文書による質問に回答する、という落とし所に向けて交渉を続けた』、「限定的なテーマに関してのみトランプ氏が文書による質問に回答する」との交渉も巧みだ。
・『重大な岐路  モラー氏が、質問リストの提示に同意したことが重大な岐路となった。情報筋によれば、同氏が事情聴取の要請をやめたわけではなかったが、文書による回答を渋々認めたことは、大きな転機となった。 「『彼らは召喚状の発行を決意するだろうか』と絶えず悩む状況から、『文書での質問に答えている』という状況になった」と情報筋は語る。 当時ロシア疑惑の捜査を指揮していたコミーFBI長官を解任し、セッションズ司法長官が捜査を終結させないことについて頻繁に公然たる批判を浴びせたことで、トランプ氏が司法妨害を試みたかどうかという点については、トランプ氏の弁護団は質問を受け入れなかった。 弁護団は、大統領が自身の政権で働くよう任命した人物を自ら解雇したからといって、司法妨害で有罪とされることはあり得ないと考えていた。 事情に詳しい情報筋によれば、「それは質問項目から外され」、選挙におけるロシアの干渉を巡る質問に対する回答についてモラー氏との交渉が続いたという。 「最終的に、戦略はうまくいった。事情聴取なし、大陪審召喚状もなし、だ」 トランプ氏は昨年11月20日、モラー特別検察官への回答書に署名し、フロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」で感謝祭の祝日を過ごすため、ワシントンを離れた。 当時ジュリアーニ氏はロイターに対し、「われわれは提示された質問にすべて回答した。当然ながら選挙前の時期に関する、ロシアに的を絞った質問だった」と語っている。「選挙後については何もなかった」 ジュリアーニ氏によれば、モラー氏のチームは交渉の間、トランプ氏本人に対して、できれば直接追加の質問を行う機会を求めてきたという。だが最終的にモラー氏は、何の条件も追加質問の機会もなしに、単に文書による回答のみを受け入れることに同意した、とジュリアーニ氏は言う。 昨年末の時点では、トランプ氏の弁護団はモラー氏の捜査陣とほとんど接触を持たなくなっていた。 弁護団の戦略についてセクロー氏は、「うまくいったのではないか。飛行機は無事に着陸した」と語った』、トランプ氏は「「マール・ア・ラーゴ」で感謝祭の祝日」でさぞかに「枕を高くして寝られた」ことだろう。

次に、4月21日付けロイター「焦点:ロシア疑惑報告書、トランプ氏はなぜ「訴追」を免れたか」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-russia-obstruction-idJPKCN1RV0DW
・『米司法長官は18日、2016年大統領選のロシア介入疑惑を巡る捜査報告書の公開を前に記者会見し、トランプ陣営とロシア側との共謀は認められなかったと強調した。 その一方で、一部の法律専門家からは、モラー特別検察官の捜査報告書にはそれとは正反対の証拠が多数盛り込まれており、判断は議会に任されるべきだとする声が出ている。 18日に公表されたモラー特別検察官の報告書は、トランプ氏による捜査妨害の試みについて新たな詳細を明らかにした。トランプ氏がモラー氏を解任したり捜査を制限しようと試みたり、2016年6月に選対幹部がロシア人と面会した際の詳細を秘匿し、さらに元顧問に恩赦をちらつかせたことなどが、新たに明かにされた。 民主党側は18日、捜査報告書にはトランプ氏の不適切な行動を示す不穏な証拠が含まれており、議会による調査が加速する可能性があるとの見方を示した。 一部の法律専門家も、こうした見方に同調する。検察側にはトランプ氏を司法妨害容疑で追及するだけの十分な証拠があったものの、現職大統領は訴追しないという司法省の長年の方針を踏まえ、モラー氏が訴追に難色を示した、と分析する。 コーネル大学のジェンス・オーリン教授(法学)は、モラー報告書は、「(司法妨害の)事案の数とその深刻度について、非常に徹底的に調べたものだ」と指摘する。 モラー氏の報告書は、司法当局者や証人に対するトランプ氏の振る舞いも含めた一連の行動について詳述。その中で、モラー氏は議会には大統領を監督する権限があると指摘している。 少なくとも6人の法律専門家が、モラー氏は議会がこの件を取り上げることを意図していると分析している。 「(報告書は)議会に対して、ウインクし、うなずき、再びウインクして、証拠は十分にあり、次は議会が動く番だと訴えている」と、ロサンゼルスのロヨラ法科大学院のジェシカ・レビンソン教授は分析する。 議会上院の民主党議員も、同じ見方を示した。下院各委員会の委員長は共同声明を出し、議会が証拠を吟味することを「特別検察官は疑いなく期待している」と表明した。 だが、共和党のダグ・コリンズ下院議員は、これに異議を唱えた。 「報告書は、議会が今司法妨害を調べるべきだとは言っていない。司法妨害に関する立法はできると言っているのだ」と、同議員はツイートした。 モラー氏の広報担当者は、コメントの求めに応じなかった』、モラー特別検察官は、「現職大統領は訴追しないという司法省の長年の方針」のもと、訴追する代わりに議会に判断を委ねたというのは、なかなか巧みな逃げ方だ。
・『トランプ氏の法律チームは、報告書は大統領にとって「完全な勝利だ」としている。 「もし司法妨害があったと思ったなら、彼らは(訴追)していただろう。だがそうしなかった」と、トランプ氏の弁護士を務めるジェイ・セクロー氏はインタビューに答えて言った。 民主党側が議会での追及に向けて動くかは現段階でははっきりしない。もし仮に下院が弾劾手続きの開始を決めても、共和党が過半数を占める上院がトランプ氏を弾劾する可能性は極めて低い。 トランプ氏が指名したバー司法長官は18日の記者会見で、トランプ氏を司法妨害容疑で追及するには十分は証拠がなかったと述べ、大統領を擁護した。 バー氏は、議員に宛てた過去の書簡で、大統領選への介入について、トランプ陣営はロシア側と共謀していないとしたモラー氏の捜査の結果によっても、この問題は根拠がなくなっていると述べていた』、バー氏については、第四の記事では利益相反の疑いが浮上したようだ。。
・『ウォーターゲート時代の司法省見解  米国の法律では、「司法行政のあるべき執行に影響を与えたり、邪魔したり、妨げたりすること」は犯罪にあたる。 司法妨害を立証するには、検察側は、容疑者が「不正な」または不適切な動機から行動したこと、つまり捜査を妨害する明確な意思があったことを証明しなければならない。 また、司法妨害事件は、他の不適切な行為の秘匿と重なる場合が多いと、法律専門家は指摘する。 現職大統領が焦点となる場合、問題はより複雑になる。 ニクソン大統領の辞任につながった1970年代のウォーターゲート事件の当時に出された司法省の見解は、現職大統領は訴追できない、というものだった。 米国憲法は、この問題について沈黙している。 モラー特別検察官は捜査報告書で、同省のこの見解を「受け入れた」とし、トランプ氏を司法妨害容疑で訴追するのに十分な証拠があるかどうかについて、結論を出せなかったとしている』、「現職大統領は訴追できない」というのは、「ウォーターゲート事件の当時に出された司法省の見解」だったとは。ただ、憲法上の規定ではないので、必ずしもこの見解に縛られる必要はない筈で、モラー氏自身の判断でもあるのだろう。
・『動機は何か  大統領の行動と意図は「犯罪行為は全くなかったと断定的に結論することを妨げる難しい問題を提示している」と、モラー報告書は記している。 だがモラー氏は、報告書は大統領の「潔白を証明するものではない」とも述べている。 バー司法長官は、大統領が、捜査によって自分の政権が脅かされると考え「不満と怒りを募らせていた」と述べた。 それにもかかわらず、トランプ氏は捜査の完了に必要な書類や証人をモラー氏から奪ったりしなかったと、バー氏は指摘した。 「行動が妨害的だったかどうかは別にして、動機が不正ではなかったことを示すこの証拠は、大統領に捜査を妨害する不正な意図があったとする主張に強く対抗するものだ」と、バー氏は述べた』、司法長官を大統領の完全なイエスマンであるバー氏に交代させたことも、立派な「司法妨害」であるような気もするが・・・。

第三に、在米作家の冷泉彰彦氏が4月25日付けNEWSWEEK日本版に寄稿した「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代:ムラー報告書公表から1週間、米政治の混迷はむしろ深まっている」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2019/04/1-1_1.php
・『トランプ支持派、反トランプの民主党左派、中間層の世論......それぞれのグループの対応がいまだに定まらない  4月18日に「ムラー特別検察官報告書」が公表されて1週間が経過しました。1週間も経てば、賛成と反対のリアクションもハッキリして、政治的な勝敗も明らかになっていても良さそうな時期です。ところが、今回の報告書については、そうではありません。トランプ大統領とその支持派、アンチ・トランプの民主党、中間層の世論、と仮に3つのグループに分けたとして、それぞれのリアクションが固まりません。 まず大統領自身がそうです。3月末に報告書に関してバー司法長官による4ページの「要約」が出て大統領の訴追はされないことが固まった時点では、大統領は喜んでいました。「(ロシアとの)共謀はない」「司法妨害もない」のだとして、それまでの民主党やメディアの攻撃は全て「フェイク」だと決めつけ、勝利宣言をしていたのです。 今回の報告書全文の発表でも、直後はそうだったのですが、400ページにわたる内容が徐々に明らかになるとリアクションは変わりました。「ロシアとの関係の詳細」「限りなく司法妨害に近い司法省への圧力の詳細」「陣営メンバーのウィキリークスへの接近」などのエピソードが書かれていたことを知ると、大統領は一転して「ひどい内容」だと言って怒りのモードに入っています』、やはりバー司法長官が都合よくまとめた「要約」と、全文ではインパクトが違うのは当然だろう。
・『民主党内の対立は激化  一方の民主党ですが、報告書の公表前の時点では、とりあえず党の「顔」であるナンシー・ペロシ下院議長などが「弾劾は求めず、選挙で決着をつける」という党の方針を確認していました。 ですが、レポートの全文が発表になると黙っていられなくなるグループが出て来ました。従来から弾劾強硬派であるオカシオコルテス議員など党内左派からは、「こんなに倫理的に問題のある大統領を弾劾できないのはおかしい」という声が上がっています。その結果として、政策面だけでも極端な左派と中道の対立がますます激化しています。 その背景には中道層の動揺という問題があります。各メディアは「灰色だが訴追はなし」「訴追はないが容疑に関係するエピソードは公開」、という今回の報告書について、元来のトランプ支持者は「勝利」と思うだろうし、反対派は「倫理的に批判」という攻勢を強めるだろう、しかし所詮は左右対立の中で何も変わらないのではないかという計算をしていました。 ですが、世論調査が示すものは少し違いました。調査機関にもよりますが、今回の「レポート公表」を受けて、大統領の支持率は明らかに低下しています。就任以来最低とは言えないものの、例えば保守系のFOXニュースでも不支持が支持を6%も上回っています。ちなみに、政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」調べの主要世論調査の全国平均では、支持率43.9%まで下がっています。ということは、支持派は勝利、反対派は怒りという対立の固定化ではなく、少なくとも中間層の一部が「不支持に回った」と考えねばなりません。 だからこそ、大統領は全文公開後に怒ったわけですし、民主党の左派は「弾劾できないのはおかしい」と言い始めたのです。つまり、報告書の内容が玉虫色の灰色決着であっただけでなく、世論の受け止め方も玉虫色というか灰色ということになります。一週間を経過した中で、浮かび上がってきたのはそのような構図です。 こうした状況について、民主党左派のバーニー・サンダース議員(大統領候補)は、「弾劾を進めれば時間がかかる。そうなれば大統領選の議論も、ムラー報告書がどうとか、トランプの倫理がどうという話題に集約されてしまう。そうなれば、環境や医療保険や、あるいは性差別や移民差別など、必要な論争が全部、吹っ飛んでしまう」として、若手の「即時弾劾論」を戒めています。 この発言については、珍しくサンダース氏が原則論からマキャベリズムにシフトしたなどと話題になっているのは事実です。ですが、こうなると政策の左派と中道、即時弾劾論と戦略的な先送り論という2つの軸において、民主党はバラバラ。そう言われても仕方がありません。では、そのような「敵失」に乗じて大統領の勢いが浮上しているのかというと、必ずしもそうでもないところに、現在の米政治の不透明感があります』、「珍しくサンダース氏が原則論からマキャベリズムにシフトした」とは驚きだが、言っていることはまもとだ。ただ、「若手の「即時弾劾論」」は直ぐには収まらないとすれば、民主党もバラバラで、肝心の選挙に向けたエネルギーは分散しているようだ。

第四に、4月26日付けNEWSWEEK日本版「トランプ「護衛官」、バー司法長官のロシア疑惑」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/04/post-12045.php
・『ムラー特別検察官の捜査報告を過小評価したがるバー司法長官だが、実は彼自身にも疑惑の人物や業界との関係がある  まあ見慣れた光景だが......。 ウィリアム・バー司法長官が米議会で集中砲火を浴びている。ロバート・ムラー特別検察官の提出したロシア疑惑に関する捜査報告書について、連邦議会宛ての書簡で露骨にドナルド・トランプ大統領を利する解釈を示したからだ。その後も議会証言で口を滑らせ、16年大統領選でFBIがトランプ陣営を「スパイ」していた可能性があると発言。これも民主党議員にかみつかれた。 それだけではない。そもそもバーがロシア疑惑の捜査に監督者として関わるのは不適切だと指摘する専門家もいる。 なぜか。以前にバーが働いていた事務所や会社の雇用主が、ロシア疑惑における複数の重要人物とつながっているからだ。そうであれば、バーも前任者のジェフ・セッションズ同様、この事案から身を引くべきだと論じる向きもある。 「重要なのは実際に利益の相反があったかどうかではない。利益の相反があるように見えるという事実だ」と言うのは、フォーダム大学法科大学院教授で司法の倫理に詳しいジェッド・シュガーマンだ。 バーは公表した自身の資産報告で、過去にロシアとつながりのある(またはその疑いがある)法律事務所や企業のために働いていたと認めている。ロシアと深いつながりのある持ち株会社から配当も受け取っていた。 これらの事実は、司法長官の指名承認公聴会ではさほど注目されなかった。当時は、バーが前年にロシア疑惑の捜査を批判する内容の法的意見を作成していたことや、ムラーの報告書を(恣意的に要約せず)そっくり議会に提供するかどうかが最大の争点だったからだ。 疑惑の会社の名は既に知られているが、そうした会社とバーの関係はまだ解明されていない。それでも利益相反の疑いがある限り、議会民主党は追及の手を緩めないだろう。 そうであれば「司法省ではなく、独立機関による調査が必要だ」と本誌に語ったのはジョージタウン大学法科大学院のマイケル・フリシュ。独立系の監視団体「政府監視計画」のスコット・エイミーも、「彼は何も違法なことはしていないが、過去にこれらの組織と関与していたのなら、(ロシア疑惑の捜査から)身を引かないのは不適切ではないか」と言う』、「議会証言で口を滑らせ、16年大統領選でFBIがトランプ陣営を「スパイ」していた可能性があると発言」、司法長官の発言とは思えない軽率な発言だ。利益相反の疑いがあるのであれば、「バーも前任者のジェフ・セッションズ同様、この事案から身を引くべきだ」というのは正論だ。
・『トランプJr.の電話の相手  本誌は司法省に再三コメントを求めたが、回答はなかった。仕方ないので、現時点で分かっている事実を整理しておく。 まず、バーはロシアと深いつながりのある会社ベクター・グループから配当金を受け取っていた。同社のハワード・ローバー社長は90年代にロシアを訪れた際、トランプを同伴させている(この訪問がモスクワのトランプ・タワー建設計画の発端になったとされる)。 シュガーマンによれば、ドナルド・トランプJr.はトランプ・タワーで(大統領選中の16年6月に)行われたトランプ陣営とロシア人弁護士との会談を準備するに当たり、ローバーに電話をしていたとされる。 「ローバーとロシアの縁は深い。モスクワにトランプ・タワーを建てる計画を支援していたともされる。もともとバーの判断力には問題があるが、これほどトランプに近く、ロシア疑惑とも近い会社と金銭的な関係を持っていたのはまずい」 次はモスクワのアルファ銀行との関係だ。17年3月から司法長官に就任するまでの間、バーが弁護士として所属していた法律事務所カークランド&エリスはアルファ銀行の代理人だった。また同事務所の共同経営者で、やはりアルファ銀行とつながっているブライアン・ベンチョースキーは17年6月、トランプから司法省犯罪対策部門のトップに指名されている(昨年7月にようやく承認された)。 ベンチョースキーは同法律事務所でアルファ銀行の代理人を務め、同銀行とトランプのファミリー企業トランプ・オーガニゼーションがオンライン上で怪しげなやりとりをしていたとの疑惑にも対応していた。 また同銀行の株主にはロシアの富豪ゲルマン・ハンがいる。そしてこの男の娘婿で弁護士のアレックス・バンデルズワンは、ロシア疑惑の捜査で虚偽の供述をしたとして訴追されている。 「弁護士の職業規範に照らすと、バーが同銀行の法律顧問だったかどうかはとても重要だ」と前出のフリシュは言う。「もしも法律顧問の立場であれば、直接的な関わりはないとしても、利益相反の疑いが生じ得る」 次は米オクジフ・キャピタル・マネジメントという名のヘッジファンド。バーは16年から18年まで役員会に名を連ねていた。そしてこの会社も怪しい』、利益相反もさることながら、ロシア疑惑そのものにどっぷり嵌っている印象も受ける。
・『共謀疑惑の発生地点  このファンドは米大富豪ジフ兄弟の出資金を元手に、資金運用のプロであるアメリカ人のダン・オクが立ち上げたもの。07年の上場後もジフ兄弟は同社の株式を保有しているが、彼らはロシア政府から目を付けられてもいる。ロシア政府と対立する米資産家ビル・ブラウダーと仕事上のつながりがあるからだ。 16年6月のトランプ陣営幹部とロシア人弁護士の秘密会談で、ジフ兄弟の名前が出たことも分かっている。問題の弁護士ナタリア・ベセルニツカヤが、ヒラリー・クリントンによる「違法行為」の証拠をちらつかせたときのことだという。 バーがオクジフに在籍していいた事実だけで、利益相反の可能性があると考える専門家もいる。ロシア政府がジフ兄弟に関心を抱いていた事実も、今回の捜査の対象だったからだ。 「あの秘密会議にベセルニツカヤが出席していて、ブラウダーとその交友関係について話したという事実。それを踏まえると、あの会合の目的は何で、ブラウダーやジフ兄弟の役割は何かという疑問が生じる。そこで何らかの共謀があったのだろうか」とシュガーマンは問う。 そして最後に、ドイツ銀行の問題がある。ドイツ銀行は大統領の座を目指すトランプに融資を提供していた唯一の銀行として知られるが、バーはここに相当な資産を預けていた。この銀行はロシアの資金洗浄疑惑でも名前が挙がっており、議会が今もトランプと同銀行のつながりを調べている。 いかがだろう。これだけの事実がそろえば、バーはロシア疑惑の捜査の監督から身を引くべきではないだろうか。 「個人的に関与し、何らかの利益を得ていたのなら問題だ」と言うのは、かつて連邦選挙管理委員会の法律顧問を務めたラリー・ノーブル。「それはトランプ政権全体の問題でもある。この政権に関わる人間は誰もが、何らかの形でロシアとつながっているように見える」 そのとおり。見飽きた光景だけれど、目を離してはいけない』、「ドイツ銀行は大統領の座を目指すトランプに融資を提供していた唯一の銀行として知られる」、「ロシアの資金洗浄疑惑でも名前が挙がっており、議会が今もトランプと同銀行のつながりを調べている」、とこんなところでドイツ銀行の名前が出てきたことにも驚かされた。バー氏はどうみても、ロシア疑惑の渦中にあるようで、よくぞ恥ずかしげもなく司法長官の職に就いているものだ。
タグ:証拠は十分にあり、次は議会が動く番だと訴えている ウォーターゲート時代の司法省見解 動機は何か 冷泉彰彦 ロシアの資金洗浄疑惑でも名前が挙がっており、議会が今もトランプと同銀行のつながりを調べている 米オクジフ・キャピタル・マネジメントという名のヘッジファンド モスクワのアルファ銀行との関係 ローバーとロシアの縁は深い。モスクワにトランプ・タワーを建てる計画を支援していたともされる。もともとバーの判断力には問題があるが、これほどトランプに近く、ロシア疑惑とも近い会社と金銭的な関係を持っていたのはまずい バーはロシアと深いつながりのある会社ベクター・グループから配当金を受け取っていた トランプJr.の電話の相手 議会証言で口を滑らせ、16年大統領選でFBIがトランプ陣営を「スパイ」していた可能性があると発言 以前にバーが働いていた事務所や会社の雇用主が、ロシア疑惑における複数の重要人物とつながっている 彼自身にも疑惑の人物や業界との関係がある バー司法長官 「トランプ「護衛官」、バー司法長官のロシア疑惑」 珍しくサンダース氏が原則論からマキャベリズムにシフトしたなどと話題 「弾劾を進めれば時間がかかる。そうなれば大統領選の議論も、ムラー報告書がどうとか、トランプの倫理がどうという話題に集約されてしまう。そうなれば、環境や医療保険や、あるいは性差別や移民差別など、必要な論争が全部、吹っ飛んでしまう サンダース議員 報告書の内容が玉虫色の灰色決着であっただけでなく、世論の受け止め方も玉虫色というか灰色 今回の「レポート公表」を受けて、大統領の支持率は明らかに低下しています 弾劾強硬派であるオカシオコルテス議員など党内左派からは、「こんなに倫理的に問題のある大統領を弾劾できないのはおかしい」という声が上がっています プリンストン発 日本/アメリカ 新時代:ムラー報告書公表から1週間、米政治の混迷はむしろ深まっている」 ナンシー・ペロシ下院議長などが「弾劾は求めず、選挙で決着をつける」という党の方針を確認 民主党内の対立は激化 トランプ支持派、反トランプの民主党左派、中間層の世論......それぞれのグループの対応がいまだに定まらない 重要なのは実際に利益の相反があったかどうかではない。利益の相反があるように見えるという事実だ 議会による調査が加速する可能性 トランプ氏による捜査妨害の試みについて新たな詳細を明らかにした。トランプ氏がモラー氏を解任したり捜査を制限しようと試みたり、2016年6月に選対幹部がロシア人と面会した際の詳細を秘匿し、さらに元顧問に恩赦をちらつかせたことなどが、新たに明かにされた 捜査報告書にはそれとは正反対の証拠が多数盛り込まれており、判断は議会に任されるべきだとする声 最終的に、戦略はうまくいった。事情聴取なし、大陪審召喚状もなし、だ 重大な岐路 トランプ氏の事業や財務その他の事項に波及するような聴取ではなく、2016年の選挙以前におけるロシアとの共謀の可能性についてという限定的なテーマに関してのみトランプ氏が文書による質問に回答する、という落とし所に向けて交渉を続けた 大統領を守る トランプ氏の側近だったジョージ・パパドプロス氏は、特別検察官による事情聴取に応じた末に、結局FBIに対する偽証について有罪を認めた 「二の舞はごめんだ」 ジュリアーニ氏が、ケーブルテレビの報道番組でモラー特別検察官による「魔女狩り」を公然と攻撃する一方、ラスキン夫妻が水面下でモラー氏のチームと交渉する トランプ氏の弁護士たちは両面作戦を推進してきた 事情聴取は「偽証のわな」になる トランプ氏が事情聴取に応じたら、彼が連邦捜査局(FBI)に対してうそをついていた、法律用語で言えば「虚偽の陳述」をしていたと主張される可能性があった その代わりに、トランプ氏が文書による回答を提示することで合意し、これは昨年11月に実現 (ロシア疑惑捜査 トランプ氏と弁護団「勝利」の裏側、ロシア疑惑報告書 トランプ氏はなぜ「訴追」を免れたか、ムラー報告書公表から1週間 米政治の混迷はむしろ深まっている、トランプ「護衛官」 バー司法長官のロシア疑惑) トランプ大統領 Newsweek日本版 ウォーターゲート事件の当時に出された司法省の見解は、現職大統領は訴追できない、というもの モラー氏が、質問リストの提示に同意したことが重大な岐路となった 「焦点:ロシア疑惑報告書、トランプ氏はなぜ「訴追」を免れたか」 本格的な事情聴取を求めるモラー氏の度重なる要請を巧みに拒否し、大統領が大陪審で証言するよう召喚されることを回避 ロシア疑惑 「司法省ではなく、独立機関による調査が必要だ」 共謀疑惑の発生地点 トランプ氏の弁護士たちは、大統領本人への事情聴取が行われないよう手を尽くした。 この戦略は功を奏し、特別検察官の捜査チームから本格的な事情聴取を受けるという司法上の危機からトランプ氏を守った モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査報告書の概要を連邦議会に通知 バー米司法長官 ドイツ銀行は大統領の座を目指すトランプに融資を提供していた唯一の銀行として知られる 「焦点:ロシア疑惑捜査、トランプ氏と弁護団「勝利」の裏側」 バーも前任者のジェフ・セッションズ同様、この事案から身を引くべきだ ロイター モラー氏は議会には大統領を監督する権限があると指摘 われわれの狙いは、協議を重ねるうちに、彼らの考えがだんだん分かってくるだろうということだった
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