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日本のスポーツ界(その25)(大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!、日本大学元副総長決死の告白「私たちは日本大学を訴えます」OBとして言わねばならないことがある、“日本版NCAA”とはほど遠い大学スポーツ統括新組織「ユニバス」の実態) [社会]

日本のスポーツ界については、3月14日に取上げた。今日は、(その25)(大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!、日本大学元副総長決死の告白「私たちは日本大学を訴えます」OBとして言わねばならないことがある、“日本版NCAA”とはほど遠い大学スポーツ統括新組織「ユニバス」の実態)である。

先ずは、パックン(パトリック・ハーラン)が4月10日付けNewsweek日本版に寄稿した「パックンのちょっとマジメな話:大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/pakkun/2019/04/post-46_1.php
<大坂なおみ選手は日本とアメリカの両方の国籍を持つことができる! 日本代表にもなれるし、アメリカでの経済活動もできる>  昨年9月にこのコラム欄で、全米オープンで優勝を果たしたばかりの大坂なおみ選手の二重国籍を認めるように呼び掛けた(「日本は大坂なおみの二重国籍を認めるべき!」)。そしてなんと、早いものでその希望が叶った!もちろん、僕のコラムがきっかけで制度が改正された......という風に受け止めてもらっても構わないよ?!  でも実は、その希望は前から叶っていたのだ。つまり、前から日本の法律は二重国籍を容認している。恥ずかしいことに、前回のコラムの根拠にしていた「日本は二重国籍を認めない」という認識が間違っていたのだ。その事実に気づかせてくれたのは、国籍法にまつわる裁判に取り組んでいる近藤博徳弁護士と、日本の国籍法改正に向けて運動中のトルン紀美子さん。いろいろ教えてくださったこの2人には心から感謝している。お礼に、ここで2人の話をたっぷりとパクらせていただこう』、二重国籍の問題は、蓮舫氏が2006年に民主党代表になりながら、問題が浮上、これに嘘の言い逃れをしたことや、原発問題への対応の混乱で代表辞任に追い込まれたのは記憶に新しいところだ。
・『では、今回こそ正しい解説を! まず二重国籍を考えるときは、4つのパターンに分けると分かりやすい。 ▼1つ目は、日本人が意図的に外国籍を取得したケース。 ▼2つ目は、日本人が国際結婚などで自動的に相手の国の国籍を得た場合。 ▼3つ目は、外国人が日本国籍に帰化したとき。 ▼4つ目は、国際結婚の子供など、未成年のうちに複数の国籍を持つケース。 一番関心のある大坂選手が入るタイプを、最後に持ってきたのには理由がある。コラムを最後まで読んでほしいからだ! それと、多くの人はこれらを全部ひとまとめにして考えているけど、この4つは法律上の扱いが微妙に異なることをきちんと理解してもらいたいからでもある。 一番分かりやすいのは、1つ目の日本人が外国籍を意図的に取得したケース。もとい! 正確にいうと、「元日本人」だ。なぜなら法律上、外国籍を取得したとたんに、日本国籍は自動的に解消されるからだ。つまりこの場合、「二重国籍」になり得ない。決まりとして、外国籍を取得した人は日本政府に「国籍喪失届」を出さなくてはいけない。しかし、届を出さなくても二重国籍にはならない。その人は、日本の旅券を持ち続けるかもしれないし、戸籍が資料上に残るかもしれないが、それらは実体のないものになる。近藤弁護士によると、その状態の人は重国籍者ではなく、日本人のように振舞っている外国籍の人に当たる。 僕も、電話で予約を取ったりするときに「パトリック」を聞き取ってもらえなくて、「服部くん」と日本人を名乗ったりすることもあるけど、それよりかなりシビアな状態だ。国籍解消後の「元日本人」は在留資格なしで日本に滞在している場合、退去強制手続きの対象になり得るという(母国から追放されることになり、かわいそうだと思うが、この制度の感想は後にしよう)。 2つ目の場合は、これとまったく異なる。日本人が外国人と結婚したり、養子縁組をしたり、両親がどこかの国に帰化したり、外国人の父に認知されたりすると、国によっては、自動的にその国の国籍が与えられることもある。国際結婚おめでとう! ウェディングプレゼントは国籍! そうなると、本人の志望による外国籍取得ではないし、当然この場合、日本は二重国籍を認める。 3つ目のケースはまた少し違うが、日本に帰化する外国人も二重国籍になり得る。国によっては、自国籍を先に解消しないと外国への帰化をさせてくれない国もあれば、(日本と同じように)外国籍を取得した時点で、母国の国籍が自動的に解消される国もある。そんな国の人は日本国籍を取得しても当然、二重国籍にならない。しかし、それと逆に、他国に帰化しても、母国の国籍放棄を認めない国もある。そんな国の国民が日本国籍を取得した場合、日本は二重国籍を認める。 また、上記のように国籍の放棄を「絶対させる国」と「絶対させない国」のほかに、どちらでもない国もある。その国の人は日本国籍を取得したらどうなるのかというと......本人次第だ! 母国の国籍を離脱してもいいし、しなくても日本国籍を持つことができる。この場合、日本は二重国籍を認める(段落の締めがだんだんパターン化してきたね)。 では、お待たせしました。4つ目は大坂選手のように、外国人と日本人の間に生まれたり、または日本人の親の下に出生地主義の国で生まれたりするなど、ほぼ生まれつきで二重国籍になる人。その場合、日本は二重国籍を(はい、ご一緒に......)認める! つまり、日本国籍が自動的に解消される、1つ目の「意図的に外国籍を取得した人」以外は、どのケースでも二重国籍は認められる。一般的な「常識」に反する驚きの事実だ。複数国籍は合法だ!』、私も初めて知って、自分の知識のいい加減さにあきれた。
・『「合法じゃない」は誤報だ!・・・そもそも、なんで勘違いしている人が多いのか。それは、法律が分かりづらいからだと思う。国籍法によれば、国際結婚をした人も、日本に帰化した人も、「生まれつき」外国籍を持つ人も、つまり2つ目から4つ目のどのケースでも日本国籍をキープしたいなら、それを選ぶ「選択宣言」をしないといけない。そして、その後「外国籍の離脱に努める」ことが規定となっている。しかし、それに伴うチェック機能もなければ、離脱に努めていないときの罰則もなにもない。 これが勘違いの元。「努めなければならない」はこの場合、どうやら「努めなくても大丈夫」に近い意味だ。長年日本にいる僕は「飲みに行こうね。今度ラインする!」と言っても、まったくしない人の社交辞令には慣れているけど、法律にもそんな「暗黙の了解」が含まれていることに驚いた。 もちろん僕の職業病で、少し大げさに表現している。でも実際、「選択宣言」で日本の国籍を選んだ時点で法的な義務は果たされることになり、他国籍を持ったままでも問題はないという。現に、法務省によると二重国籍の可能性のある人は全国に約89万人もいる。そして、その数は今後も増えていくだろう。 その中の1人は大坂選手かもしれない。22歳の誕生日までに選択宣言をしておけば、そのまま日本とアメリカの両方の国籍を持つことができる。アメリカが課する「国籍離脱税」を納めなくて大丈夫。日本代表にもなれる。アメリカへの出入国やアメリカでの経済活動もできる。好きなタイミングでコーチをクビにしても大丈夫。 おっと、最後は関係ないか。というか、どれも僕ら部外者には関係ないともいえる。国籍はとてもプライベートな問題であり、他人に口出す権利は誰にもない。そう思いながら、他人の国籍問題をきっかけにコラムを2つも書いてしまった。すみません。 ということで、大坂なおみ選手の二重国籍は認められる。うれしい限りだ!』、「法務省によると二重国籍の可能性のある人は全国に約89万人もいる」、と決して例外的存在ではないようだ。「大坂なおみ選手の二重国籍は認められる。うれしい限りだ!」、同感だ。
・『でも、だからと言って、制度を改善しなくてもいいとは思わない。まず、1つ目のケースである「意図的に外国籍を取得した日本人」にも日本国籍の保有を認めるべきではないかと思う。世界各国に移住して活躍している日本人はたくさんいる。他国で国籍取得に値する活動をしても、それが日本国籍を解消されるほど日本に実害を与えているとは思えない。 そもそも、先進国の間で優秀な人材の取り合いが続いている昨今、二重国籍を認めようとする国が増えているのだ。2つの国や文化、言語などを知る国際的な人材は貴重な資源でもある。「日本の法律で裁かれる」などと条件を付けてもいいし、同盟国に限定したり、何らかの制限を付けてもいいから、海外で活躍する日本人にも、日本と世界をつないでくれる外国人にも二重国籍を認めるべきではないだろうか。 少なくとも4つの中の3つのケースに関しては、既に二重国籍が認められているならば、こんな長いコラムを読まなくても、それがすぐ分かるように法律で明文化してもいいのではないかと思う。今のように紛らわしいままだと、外国籍を持つ日本人が、本当は認められているのに、「ズル」をしている「隠れ二重国籍」だと思われてしまう恐れがある。僕も前回のコラムで、そんな心のない言葉で多くの人を傷付けてしまったかもしれない。心から反省しているし、責任をもって正しい知識を広めるように「努めないといけない」と思っている。社交辞令ではなくてね』、蓮舫氏も問題化した段階で、いい加減な言い訳をせず、弁護士とよく相談していたら、炎上騒ぎを起こさずに済んだのかも知れない。惜しいことをしたものだ。

次に、日大出身のジャーナリスト 田中 圭太郎氏が4月26日付け現代ビジネスに寄稿した「日本大学元副総長決死の告白「私たちは日本大学を訴えます」OBとして言わねばならないことがある」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64322
・『刑事、民事、両方で  「日本大学は、昨年起こったアメリカンフットボール部の反則タックルの問題で、学生を守らない大学というイメージがついてしまいました。そのために、私学助成金は35%カットされ、今年の入試では志願者が大幅に減っています。 にもかかわらず、執行部はなぜそうなったのかを未だに総括していません。田中(英壽)理事長は、トップとして説明もせず、最悪の事態を招いた責任を明らかにしていないのです。 私も日大の出身で、母校愛は人並み以上にあります。それだけに残念で、このままの状態を許すわけにはいきません。大学を正常化させ、新しい日本大学像を提起するためにも、法の判断を仰ぐしかないという結論に至りました」 そう話すのは、日本大学の元副総長の牧野富夫氏。牧野氏は教員OBらが中心となって立ち上げた「新しい日本大学をつくる会(以後、つくる会)」の会長を務めている。 つくる会は「田中理事長の責任を明確にしなければ日大の改革はない」として、近く田中理事長を刑事告発する方針を固めた。さらに、日大の関係者を精神的に傷つけたとして、理事全員を相手取り損害賠償を求める民事訴訟を起こすことも検討している』、刑事告発、民事訴訟とも頑張ってほしい。
・『助成金カット、志願者大幅減のダブルパンチ  繰り返しになるが、きっかけはもちろんアメフト部の危険タックル問題だ。去年5月6日、日大アメフト部の選手が悪質なタックルで、関西学院大学の選手に大けがを負わせた。タックルをした選手は内田正人前監督や井上奨前コーチから指示があったと記者会見で証言したが、内田氏は指示を否定。井上氏も「潰せ」と指示したことは認めたものの、けがをさせる意図はなかったと述べた。 タックルをした選手は傷害容疑で書類送検されたが、刑事告訴された内田氏と井上氏は捜査の結果「容疑なし」と判断されたことは、これまで報道されている通りだ。内田氏と井上氏は大学を懲戒解雇されたが、内田氏は懲戒解雇処分の無効を求めて日大を提訴している。 しかしこの間、法人トップの田中理事長は、会見にも姿を見せず、一度も公の場で説明をしていない。トップとしての責任を明確にしないままいまに至っており、ここに、つくる会は激しく憤っているわけだ。 反則タックル事件からまもなく1年。日大をめぐる問題の現状をみていきたい。 日本私立学校振興・共済事業団は今年1月、日大に対して、2018年度の私学助成金を35%カットすることを決めた。金額にして約32億円の減額で、大学経営にとって大きな痛手となることは間違いない。 減額の直接の原因は2つある。1つは、医学部の不正入試問題。東京医科大の贈収賄事件をきっかけに、医学部の不正入試が明らかになったが、日大でも過去3年間に追加合格者を決める際、医学部卒業生の子どもを優先的に合格させていたことが明らかになった。 もう1つの原因となったのが、昨年5月のアメフト部の反則タックル問題。タックルした選手が元監督やコーチからの指示を主張したのに対して、「指示はなかった」と結論づけたことが、助成金大幅減額の一因となったのだ。 しかし、タックル問題への不適切な対応による影響は、助成金減額だけにとどまらなかった。 最も大きな影響を受けたのは、今年の入試だ。国内最大の学生数を誇る日大には夜間部と短期大学部を除くと16の学部がある。この16学部を合計した一般入試の入学志願者は、昨年が11万4316人だったのに対し、今年は9万9972人。1万4344人のマイナスだ。私立大学全体の志願者は前年よりも約4%増加している中で、日大は12.5%も減少したことになる。 日本大学の入学検定料は、学部によっても受験方式によっても違うが、一般入試では3万5000円の学部が多い。異なる方式を併願する場合は2学科目から安くなる。減少した志願者数から考えると、数億円の減収になっているのは間違いない。 志願者の激減は、危険タックル問題以降、大学のブランドイメージが大きく低下していることを物語っている』、「田中理事長は、会見にも姿を見せず、一度も公の場で説明をしていない」、というのは驚くべきことだ。これを許している日大の理事会も全くガバナンス機能を果たしていない。
・『来月にも告発へ  揺れる日大に危機感を持った元教職員らによって、「つくる会」が結成されたのは昨年9月。その一カ月前、元副総長の牧野富夫氏ら5人が、田中理事長以下32人の理事会メンバーに辞任を求める要求書を内容証明郵便で送付。それに対して27人が「応じることはできない」と回答したことから、牧野氏ら元副総長経験者と教員OBらが世話人となってつくる会を立ち上げた。 つくる会の関係者によると、設立目的は「権力闘争ではなく、日大を改革すること」だという。具体的には、一連の問題について田中理事長の責任を追及し、公正で透明性の高い大学運営を実現することや、各学部の自主性を尊重した研究と教育の体制づくりを掲げている。 その趣旨に、教職員OBや学生OBなどから多くの賛同が寄せられている。今年3月21日に渋谷区で開催したシンポジウムには90人が参加し、用意した会場が満員になった。さらに、300人以上から寄付が寄せられ、その金額はこれまでに350万円を超えたという』、「300人以上から寄付が寄せられ」、という割には金額は大したことはないようだ。
・『「新しい日大をつくるしかない」  つくる会には、副総長や法学部長を歴任した沼野輝彦氏など、法学部出身の教職員OBも少なくない。田中理事長の責任を法的に追求する方法を検討し、弁護士とも協議して、早ければ来月にも刑事告発する方針を固めた。 告発の容疑は「背任」。田中理事長は反則タックル問題が起きている中で、自己の利益を優先させて責任ある対応をせず、その結果、大学に助成金の減額などの大きな損害を与えた疑いがある、というものだ。 さらに、民事訴訟も検討している。田中理事長のほか、日大の理事全員を相手取る可能性もあるという。反則タックル問題への対応で大学のイメージや評価がダウンしたことにより、学生や教職員など関係者が精神的に傷つけられたとして、慰謝料などの損害賠償を求める予定だ。裁判費用はクラウドファンディングによって支援を呼びかけることも検討しているという。 5月6日には、反則タックル問題から1年を迎える。その翌日の5月7日、つくる会は記者会見を開いて、田中理事長に対する刑事告発と、損害賠償を求める民事訴訟について詳細を明らかにする予定だ。あわせて、文部科学省に対して、日大を指導するように求める監督請求も行う考えだ。 つくる会の会長の牧野氏は、田中理事長体制の1期目では常務理事の職にあった。田中氏と同じ経済学部で、田中氏の先輩にあたる。つくる会を立ち上げる直前にも、理事長として説明責任を果たすように促したが、全く受け付けなかったという。 「田中理事長には直接面会して、記者会見で説明して責任を取るべきだと話しましたが、耳を傾けることはありませんでした。彼は理事長1期目のときはまだわれわれの意見に耳を傾けていたのですが、2期目から明らかに変貌した。 日大は私立大学の中で、最も大きな大学でもあります。経営側が教学をコントロールするいまの日大のスタイルを許してしまうと、日本の私立大学全体に影響を及ぼしてしまうのです。 私も日大のOBとして、いまの現状は残念でなりません。問題の責任をはっきりさせて、新しい日大をつくっていくしかないと考えています」 私学助成金のカットや志願者の大幅減といった事態を引き起こしているにもかかわらず、田中理事長が一向に説明責任を果たさなかったことで、告発と民事訴訟という異例の事態に発展することになった。日大をめぐる問題は、反則タックルから1年を経て、新たな局面を迎えることになる』、「つくる会」には「膿」を出し切るべく頑張ってもらいたい。

第三に、池田 純氏が6月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「“日本版NCAA”とはほど遠い大学スポーツ統括新組織「ユニバス」の実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/204470
・『大学スポーツの統括組織である「大学スポーツ協会(UNIVAS=ユニバス)」が発足したのは今年の3月1日のことである。197大学、31競技団体が加盟してスタートしたこの組織は、全米の1200以上の大学が加盟する「全米大学体育協会(NCAA)」を目指したものとされる。しかし、それから3ヵ月がたった現在、ユニバスの具体的な活動内容はほとんど明らかになっていない。ユニバスが日本版NCAAとなることは果たして可能なのか。横浜DeNAベイスターズの初代社長であり、ユニバスの設立準備委員会で主査を務めた池田純氏が、ユニバスの問題点と大学スポーツに懸ける思いをつづった』、どういうことなのだろう。
・『生かされなかった本場米国からの助言  「ユニバスを日本版NCAAにしたいのなら、組織の主要メンバーはこれまでの大学スポーツ界としがらみを持たず、戦略的に戦える顔ぶれにすること。そしてそのリーダーには実績ある経済人を据えるべきだ」──。 私がユニバスの設立準備委員会に籍を置いていた頃、スポーツ庁長官の鈴木大地氏が大学スポーツを統括する組織の設立に向けて本場NCAAの関係者からそう助言されたそうです。 確かに日本版NCAA設立という壮大なプロジェクトを進めるには、古いしがらみを絶ち、新たな血を注がなければならないのは当然のことだと思います。しかし、発足したユニバスの組織構成を見ると、しがらみに配慮し、調整することが重要視されているかのようで、本場のNCAAをよく知る人材、大学スポーツの最先端にいる実践家も入っていません。冒頭に紹介したような大学スポーツの本質を理解する方からのアドバイスはまったく生かされていないことが分かります。このままでは、ユニバスが日本版NCAAのような発展を見せることはない。そんな強い危惧を私は抱いています』、鈴木大地氏の当初の意気込みは、どうして躓いたのだろう。
・『米国で体感した大学スポーツの可能性  私が大学スポーツの可能性に着目したのは、米国のプロスポーツ視察の一環でカリフォルニア州パサデナのローズボウル・スタジアムを訪れたときです。ローズボウルは米国カレッジ・フットボールのリーグ戦で、同スタジアムはその聖地として知られていますが、大勢の観客を集め、放映権料などで莫大なお金を稼ぐこのリーグの試合を見て、大学スポーツの可能性をまざまざと見せつけられました。 そこで私の頭に浮かんだのは東京六大学野球のことでした。東京六大学野球は箱根駅伝と並んで日本で最も知名度が高い大学スポーツのイベントですが、ローズボウルの盛り上がりとは比べものになりませんし、ビジネスとして成功しているという話も聞いたことがありません。東京六大学野球のような人気コンテンツを事業化し、たくさんの人が集まるような仕組みをつくれば、日本でも大学スポーツの価値はもっと高まるのではないか、 そのように考えたことを覚えています』、さすが「横浜DeNAベイスターズの初代社長」らしい見方だ。
・『産業界から人材を多数招聘すべきだった  「スポーツ庁の参与になってほしい」──。鈴木長官から連絡があったのは、2017年の終わり頃でした。そのオファーを受諾して私が参与に就任したのは翌18年の1月ですが、実はその時点でユニバスの設立期日は19年3月1日に決まっていました。間に合わせるには、18年内に事業計画から資金計画、組織の見取り図といったものを完成させなければなりません。民間企業における新規事業の時間軸で考えても、まったく時間がないことが分かりましたが、その段階では私はユニバスに直接関わる立場にはありませんでしたので、「急がないと間に合わないのでは」と担当者にアラートを発するのみでした。 そうしたユニバスの準備状況を知っていたので、スポーツ庁から「ユニバスの設立に力を貸してほしい」という依頼があったとき、最初は断ろうと思っていました。しかし、官僚の方からの度重なる要請もさることながら、ユニバスの準備状況を理解していることに加え、せめてローズボウル・スタジアム視察時に思い描いた将来の大きな絵を実現できるようなアイデアと組織案を提供すべき参与という立場にあるという義務感から、主査という立場で関わることにしました。 私は予定通りにユニバスを設立しようとするなら、産業界から優秀な人材を招聘して、柔軟かつスピーディーに話を進めていく必要があると関係者に何度も話をしました。しかし、その話はほとんど聞き入れられず、18年5月にスタートした作業部会での議論も遅々として進展しませんでした。 その後9月になって、「ユニバスのトップを務めてほしい」という話が鈴木長官からありました。ポジションに対する意欲はありませんでしたが、トップという立場ならベイスターズや野球界の改革で得た知見や経験を、ユニバスの設立準備の遅れを取り戻すことに生かせるのではないかと考え、鈴木長官からの要請に応えようと思いました。しかし、それ以降、次第に鈴木長官のトーンが変わっていきました』、どういうことなのだろう。
・『鈴木スポーツ庁長官の変化  少しさかのぼりますが、ユニバス設立の動きがスタートしたのは、「大学スポーツのビジネス化」というビジョンを政府が掲げたことが発端でした。16年6月の日本再興戦略において、政府は15年に5.5兆円だった国内スポーツ市場の規模を25年までに3倍超の15兆円に拡大するという目標を掲げたのです。そこで自民党の議員連盟であるスポーツ立国調査会が、これまでまったく手が付けられてこなかった大学スポーツのビジネス化に着目したのです。そこで手本とされたのが年間約1000億円もの収益を稼ぎ出すNCAAでした。 大学スポーツのビジネス化というテーマは、私の考えとも一致していました。だからこそ鈴木長官の求めに応じたのですが、長官は徐々に私のような新参者を疎んじる、大学スポーツ業界関係者間の協調性を重視するようになりました。対談した際から鈴木長官がしきりに強調していた「曖昧がこの国では好まれる、協調性が大切だ」という言葉の裏には、それぞれの既得権者の立場を尊重して、あつれきのないように物事を進めなくてはならない──そういうメッセージが込められているように思えました。) 私をユニバスのトップにという要請には、ベイスターズをはじめとするさまざまな改革の実績が評価されてのことだと思います。変革に必要と考えれば既得権者や古い体制側とも戦いますし、対立しても結果で本質的な協調性を成し遂げてきたことも周知の事実です。鈴木長官の発言や態度の変化は、大学スポーツ界における一部の声の大きな人たちからのあつれきを恐れ、そういった方々の内輪の協調性を優先されてしまったとしか捉えることができませんでした』、「東京六大学野球」を始めとする各種スポーツ団体は、「既得権者」として、自分たちの上にユニバスが君臨することに、徹底的に抵抗したのだろう。
・『ユニバスのトップ就任を断った理由  改革は誰のためのものでしょうか? 誰のための新しい組織、システムづくりなのでしょうか? それは、学生アスリートのために他なりません。高度経済成長期から時代や環境は大きく変わり、大学スポーツのあらゆる現場で問題が噴出しています。悪質タックル問題で注目された日本大学のガバナンスなどは氷山の一角にすぎません。改革が必要なのは一目瞭然です。どうしたらユニバスが改革のできる組織になるか、腹を据えるべきなのはまず誰なのか? 疑念にさいなまれるようになりました。 ユニバスのトップは私がやるべき仕事ではない、そう思うようになりました。実績ではなく立場で、未来ではなく過去でしか語ることができない関係者を相手に、調整のみを繰り返すことになるのは明白でした。 私は球団の改革を成し遂げ、歴史ある野球界での改革を仕事としてきた人間です。「摩擦を避けながら、うまくやっていきましょう」では、改革は絶対に成功しないことを肌で感じてきました。改革では最初から関係者の意見が一致するはずはなく、一つの方向に歩みだそうとすれば必ずあつれきが生じます。調整と毀誉褒貶で物事が進む世界の改革で、リーダーが摩擦を恐れ、協調に流されるようでは、改革を成し遂げることなど不可能です。 私は、鈴木長官からのオファーを断ることにしました』、「鈴木長官」が改革への意気込みを失った以上、「オファーを断る」のは当然だろう。
・『ユニバスの理念から消えたもの  19年3月に立ち上がったユニバスですが、その中心に掲げられているのは、大学の部活動におけるパワーハラスメント・モラルハラスメントを排除し、大学スポーツの安全・安心を守っていくという理念です。確かにこれは大事なことです。しかしそれだけでは、ユニバスは中体連や高体連と同様に、「統括」するための団体となるのではないかと思います。強いて加えるならば、学生アスリートなどを大々的に表彰するといった機能でしょうか(私が主査として担当していた領域ですが、私が思い描いていた以上のものは最低限実現していただきたいものです)。これは大学スポーツが発展していくための役割としては、かなり限定的なものとなるでしょう。 ユニバスの設立準備段階で掲げられていた「大学スポーツのビジネス化」というビジョンは、どこへ行ったのでしょうか。 近々公表されるはずの20億円にも及ぶスポンサーマネーも、あくまで一時的な資金にすぎません。ユニバスは本来、ノウハウやアイデアによって持続的に稼ぐ仕組みをつくり、そこで創出した資金を自分たちでコントロールしながら、大学スポーツの発展に活用しようという組織のはずです。そのビジョンを外してスポンサーマネーをつないでいくだけで、その目的は果たせるのでしょうか。 さらに、この20億円で何を実現すべきか。退路を絶つ覚悟で真剣に考えている人は、現在のメンバーでどれほどいるのでしょうか。さらには誰が成果に対してコミットしているのか。普通なら“顔”が見えてくるものですが、まったく見えません。 私は経営者としての経験から、このお金はコストとしてではなく投資に回されなければならないと考えていました。例えば、学業とスポーツの両方で素晴らしい成績を残した選手の学費は全て免除する(制度によってできるものできないものがあるなどの揚げ足取りのような指摘はさておき)。あるいは海外のスポーツチームや大学に留学する費用を援助する。これは人に対する投資です。さらに、チームに対する投資、施設に対する投資、PR活動に対する投資などもあり得るでしょう。普通の組織であれば、すでにそういった計画が公になってなければならないはずです』、「スポンサーマネー」について、「このお金はコストとしてではなく投資に回されなければならない」というのは当然のことだが、殆どの関係者は補助金のように考えているのだろう。
・『日本を変える大学スポーツの可能性  コストではなく投資という視点によって価値を生み出していくには、経営的視点が必要です。それはリスクを背負う人であり、説明責任を果たせる人であり、ビジョンを示すことができる人です。つまり、ユニバスが日本版NCAAとしての役割を果たそうとするなら、経営的視点を持った人物を集め、決断力のあるリーダーを据え、社会に新しい意義を生み出すために、自由に躍進しようとするベンチャー企業のような経営体にする必要があるということです。 新しい事業の立ち上げ段階からその業界内の影響力の大きな人々への網羅的配慮があけすけに見えるような組織では、改革は本当に難しいと私は思います。 大学スポーツをビジネス化し、学生アスリートを育成し、コンテンツとしての質を高め、規模を拡大し、持続性を確保していく──。そのビジョンを失ったユニバスを、日本版NCAAと呼ぶことはもはやできません。しかしながら、私は大学スポーツには日本を変える大きな可能性があると考えます。その一つとして読者の皆さんと共有したいアイデアは「大学のスポーツチームは地方創生を実現するドライバーになり得る」ということです。なぜなら、大学とはまさしく日本全国の地方に根を下ろしている教育機関であり、スポーツは老若男女誰もが楽しめるオブジェクトだからです。 では、大学スポーツと地方創生の関係とはどうあるべきなのでしょうか。それを次回、詳しく説明したいと思います』、ずいぶん「熱い思い」を持っておられるようだが、日本の大学スポーツ界には、それを受け入れる素地がなさそうなのは、残念なことだ。
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