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医療問題(その19)(一介の外科医 是絶筆 がん外科医の本音シリーズ:「医者はがんを切りたがる」は本当か? 第45回 がん外科医の本音①、「抗がん剤の副作用」はなぜあるの? 第46回 がん外科医の本音②、セカンドオピニオンで医者は気分を害すのか? 第47回 がん外科医の本音③) [生活]

医療問題については、昨年11月20日に取上げた。久しぶりの今日は、(その19)(一介の外科医 是絶筆 がん外科医の本音シリーズ:「医者はがんを切りたがる」は本当か? 第45回 がん外科医の本音①、「抗がん剤の副作用」はなぜあるの? 第46回 がん外科医の本音②、セカンドオピニオンで医者は気分を害すのか? 第47回 がん外科医の本音③)である。

先ずは、外科医の中山 祐次郎氏が6月6日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「医者はがんを切りたがる」は本当か? 第45回 がん外科医の本音①」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00135/00006/?P=1
・『こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。福島に戻りはや2カ月が過ぎ、日々是緊急手術の毎日を送っています。ほぼ週に2~3件は緊急手術をやっていると、だんだん「あれ? 今日は来ないのかな?」とさえ思うようになりました。ないに越したことはないのに、慣れって怖いですねえ。 さて、今回から当連載「一介の外科医 日々是絶筆」では、がんにまつわる私の本音シリーズをお伝えしたいと思います。2019年6月6日、『がん外科医の本音』という書籍を刊行することになりまして、その中からとっておきの内容を厳選して転載いたします。 これは、昨年夏に出版した13万部超えの『医者の本音』の続編として書いたものです。続編とはいえ、内容はずばり「がん」に絞っています。私は大腸癌の専門家ですので、その立場から広くがんにまつわる誤解、本音を記しました。 昨年1年間、住んでいた京都で、3月にこの本を著しました。学生だったので時間があるつもりでしたが、それでもかなりの時間を割いての執筆となりました。そして出版社の編集者の方も前作のときより心なしか厳しくなり、章によっては半分削られて書き直しをすることも。 さらにはがんの研究者お二人による全体監修と、京都大学の教授で医師でもある先生の部分監修で、私の思い込みや偏りを排除しました。 テーマ設定は編集者さんと私でやりましたが、非常に書きづらいものばかり。それでも、できる限りギリギリまで誠実に、真正面からテーマに取り組みました。 それでは第1回、どうぞ御覧ください』、「がんの研究者お二人による全体監修と、京都大学の教授で医師でもある先生の部分監修で、私の思い込みや偏りを排除しました」、とは素晴らしいことだ。自分に自信があるからこそ出来ることなのだろう。
・『ズバリ、外科医は「切りたがる」  世の中では、がんについて数多くのうわさがまことしやかにささやかれています。その一つに「医者はがんを切りたがる」というものがあります。まるで医者が、個人の趣味のように治療に当たっている印象を与えます。医者はがんを切りたがるか。答えとしては、「切りたがる」と答えましょう。なぜでしょうか。外科医として、理由をお話しします。 まず、がんが切れるかどうかは、外科医の技術ではなく、「がんの種類」と「そのがんがどれだけ進行しているか」によるのです。「がんが切れる」という言葉をもう少していねいに言うと、「がんを残すことなく取り切れる」とイコールになるのです。 昔は違うこともありましたが、現在は、どこの病院のどの医者にかかっても、「切るかどうか」はほとんど同じです。言い換えれば、がんの治療方針はどこでも同じなのです』、安心できる材料ではある。
・『「切らない」というより「切れない」  「ルールブックでもあるのだろうか?」と質問されそうですが、実はその通りで、ルールブックのようなものがあります。名前は「ガイドライン」といいます。日本語では「指針」という意味です。指針ですから、これに絶対に従わなければいけないものではありません。違う治療をしても法律違反というわけではありません。が、現状ではがんに携わるほぼすべての医者は、このガイドラインに従って治療しています。 そもそも「医者はがんを切りたがる」は本当か?という問いは、あまり意味がないのです。切りたがろうが嫌がろうが、どうしたって切るときは切るし、切らないときは切らないのです。 「切らない」は「切れない」とも言えます。これは、「切っても(=手術をしても)生存期間が延びるわけではない」ということを意味します。 ですから「医者はがんを切りたがる」は本当です。まだ切れる段階の進行度であるがん患者さんであれば、治る可能性があるので、医者としてはうれしいのですから。逆に、切れないがんは、非常に厳しいその後が予想されるということにもなります』、切りましょうと診断されることは、治る可能性があることと裏腹のようだ。
・『キレイごと抜きで明かすと……  もちろん、こういうキレイごとのような返答を期待しているわけではないことを私は理解しています。この俗説の本当の意味は、こういうことでしょう。 「医者は、切れる段階かどうかを無視して、自分の興味や趣味、練習のために患者さんの体にメスを入れているのではないか」 この質問については、はっきりとNOと申し上げられます。切っても切らなくても全く同じ結果なのであれば、外科医は「切る」を選択しません。 そう言い切りましたが、もちろん外科医によって考え方は少しずつ異なり、若干の幅というものは存在します。しかし、がんの治療については、かなり厳密に先ほどのガイドラインで「こういう人は切る、こういう人は切らずに他の治療」と決められています。しかもその根拠は、大規模な研究の結果や、どう考えたって疑いなくこちらのほうがよい、というような確かなものばかり。これに従わない医者はいないと言ってよいでしょう(ただし〇歳までは切るなど年齢についての記載はないガイドラインが多く、個々の患者さんごとに医者は議論して決めています)。 なぜなら、医者のもっとも重要な目標は、「患者さんが治ること。そして治らなかったとしても生存が少しでも延びたり、痛みや苦しみが取れること」だからです。これがブレる医者は、少なくともがんの領域ではまずいないのではないかと私は実感しています』、本当にそうであれば、安心できるのだが・・・。
・『黒男先生(仮名)の場合  まだ「ホントかよ?」と聞こえてきます。ですので、もっと踏み込んでみましょう。たまたま手術が大好きで、「今度はあんな手術をしてみよう」といつも思っている外科医がいるとします。仮に、黒男先生(40歳・仮名)としましょう。 その外科医・黒男先生のもとへ、「切れない」段階のがん患者さんが受診したとします。黒男先生は考えます。 「しめしめ、これは難しそうだ。オレでなければ取れないだろう。ふふふ、さっそく再来週に手術申し込みだ!」 なんという極悪……そして、翌週になります。外科医のみならず、医者には毎週担当患者さんの病状や治療方針を話し合うための会議があります。病院用語では「カンファ(カンファレンス)」といいます。 カンファで、黒男先生は「再来週、この方の手術を行います」と発表をします。 すると、外科部長の先生が「おい黒男、こりゃオペだめだろ」と一蹴。他の外科医も「手術適応外ですが、どういった理由で手術を考えているのですか?」と突っ込みます。黒男先生はタジタジで「いや、その、つまり……」。高速で頭を回転させ、「患者さんが希望しているものですから!」とウソをつきます。どうしても手術がしたいので、苦肉の策です。 「患者の希望があったらお前、なんでもやるのか」 部長はあきれ顔。若い医師も失笑しています。結果、この手術はキャンセルになりました。 このように、医者には多数の会議があり、医者同士で相互チェックのようなこともしています。医者は一人で治療をすると、ときに独善的になったり自分の利益へ誘導的になったりすることがあります。ですから、こうして風通しを良くして、コソコソ勝手に治療方針を決めないようにしているのです。もちろん業界の常識に反するような治療をして、明るみに出た場合、大きな問題になります』、手術前には「カンファレンス」で厳しい組織的なチェックを受けるのであれば、安心だ。
・『なぜ「切る」が有効なのか?  では、なぜ「切る」が有効なのでしょうか。ここでは、切ることができない白血病などのがんは除き、胃がんや大腸がん、肺がんや乳がんなどの固形のがんのお話をします。 がんの治療で、いまのところもっとも力を発揮するのは「切る」、つまり手術で切り取るという方法です。がんの治療法としては抗がん剤や放射線などもありますが、現在がん患者さんをもっとも根治に導けるのは手術です。そして、前述したように切れる早期のタイミングと、進行して切れないタイミングがあります。 なぜでしょうか。切って取るという、一見、原始的でとても単純な治療が、なぜこの21世紀にも有効なのでしょうか。 その理由として、がんは「切って、取り去れば治る」という性質がある点が挙げられます。がんの手術の原則は、「少しも残さずがんを取り去ること」です。9割がた取って1割は残ったけどまあいいか、では無意味なのです。これはあまり知られていないことです。 私は駆け出し外科医のころ、不思議でなりませんでした。カンファの際に、熟練の外科医が「取り切れないからオペはやめとこう」という発言をしていたのです。減らすだけだって効果はあるのではないか。そう思っていました。 しかし、残念ながら手術中に取り切ることができず、少しがんが残ってしまった患者さんを何人も見ていくと、残ったがんがあっという間に大きくなり、手術前の状態と同じくらいまでになってしまっていました。ああ、やっぱりちょっとでも残してはいけないんだな、と思ったのです。 私の経験だけでなく、このような全部取り切れない手術(専門的にはVolume reduction:腫瘍=しゅよう=の容量を減らす手術)は、患者さんのいのちを延ばさないことがほぼわかっています(一部、有効ながんもあります)。 ですから、なぜ「切る」が有効なのかは、「がんを完全に取り切れれば有効である」ということができます』、「少しがんが残ってしまった患者さん・・・残ったがんがあっという間に大きくなり」、空気に触れたことでがん細胞が活性化してしまうという理由を聞いたことがある。

次に、この続き、6月27日付け「「抗がん剤の副作用」はなぜあるの? 第46回 がん外科医の本音②」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00135/00007/
・『こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。今回は前回に続き、先日、出版した私の本『がん外科医の本音』から、抗がん剤についての解説をお送りしたいと思います。ありがたいことに出版後、多くの反響をいただいており、全国の本屋さんでもかなり大きく扱っていただいています。前作『医者の本音』がベストセラーだったからでしょうが、気が引き締まる思いです。 私はといえば、1年間の京都大学での学生生活を経て4月に福島の病院に戻り、再び一介の外科医として働いております。私の得意とする大腸がん患者さんの腹腔鏡手術を中心にしておりますが、それ以外にも鼠径(そけい)ヘルニア(昔は脱腸と呼んでいました)、虫垂炎(昔は盲腸と呼んでいました)なども腹腔(ふくくう)鏡の小さい傷だけの手術でやっています。手術室でも後輩医師への指導というシーンが増えてきましたが、夜も休日もガンガン緊急手術を担当しています。 さて近況はこの程度にして、本題に参りましょう』、「1年間の京都大学での学生生活」でリフレッシュして、「夜も休日もガンガン緊急手術を担当」というのは頼もしい存在だ。
・『確実に効果が上がった抗がん剤  抗がん剤は、非常に有効な治療法である一方で、その副作用からネガティブなイメージを持たれていることも事実です。「はきけがつらい」「髪が抜けて精神的ダメージを受ける」などがつらさの代表的なものでしょう。ではなぜ抗がん剤を飲むと髪が抜けるのでしょうか。なぜ副作用があるのでしょうか。 大ざっぱに言うと、抗がん剤は「がんも、自分の体もどちらも攻撃してしまう」という性質があるからです。ところが最近はそうともいえない面も出てきました。 抗がん剤は、歴史的に毒ガスから開発されたという経緯があります。この事実をもとに「抗がん剤は危険である」と主張する人がいますが、それは正確ではありません。たとえば、ビンブラスチンやビンクリスチンといった抗がん剤は、観賞用植物であるニチニチソウから作られています。 抗がん剤が開発されてからの歴史は浅く、まだ50年くらいしかたっていませんが、実に多くの種類が作られてきました。また驚くべきことに、2020年になろうとしている今でも、抗がん剤は30年前と同じ薬をよく使っています。 一方で、めざましい進歩を遂げているのもまた事実です。よく効くようになり、患者さんが長生きできるようになったのです。私の専門である大腸がんでは、ステージⅣの患者さんは30年前には平均6カ月ほどしか生きられませんでした。しかし最新の研究結果では、平均して約2年半に延びています。これは抗がん剤の進歩と研究のたまものです。この数字は今後も伸びていくでしょう』、「抗がん剤は、歴史的に毒ガスから開発された」、「ビンブラスチンやビンクリスチンといった抗がん剤は、観賞用植物であるニチニチソウから作られています」、などは初めて知った。
・『副作用として知られる「はきけ」はある?  さらにあまり知られていないことですが、副作用はだいぶマシなものになってきました。抗がん剤の副作用と言われるとどんなものを思いつくでしょうか? はきけ・嘔吐(おうと) 下痢 だるさ 毛が抜ける 手足のしびれ この中でもっとも「抗がん剤副作用」のイメージとして定着しているのが「はきけ」と「毛が抜ける」でしょう。 私は外科医ですが、大腸がんの患者さんの抗がん剤治療も専門的に行っています。その経験からまず申し上げたいのは、「はきけ」はかなりの人がほとんどゼロか、その日だけ少し感じる程度に緩和されてきたということ。かなり驚かれるのですが、はきけ止めの薬が非常に進歩したことによります。看護師さんにも確認をとるようにしていますが、ひどいはきけを訴える人はほとんどいなくなりました』、「はきけ止めの薬が非常に進歩した」、とは福音だ。
・『現代の医学で克服できていない副作用も……  では「毛が抜ける」についてはどうでしょうか。 よく知られているのは、乳がんの患者さんが多く使う抗がん剤の副作用です。乳がんは若い女性がかかることもあって、髪の毛が抜けることは精神的苦痛を伴い、非常に重大な副作用といえるでしょう。 いまのところ医学は毛が抜けるという副作用を克服できていません。いくら抗がん剤が終わってから3カ月程度で再び生えてくるとはいえ、治療から1~2年はウィッグ(かつら)や帽子をつけている人が多いのです。 アイドルグループSKE48に以前所属していた、矢方美紀(やかた・みき)さんという方がいます。彼女は18年、25歳で乳がんにかかり、その後手術、抗がん剤治療、ホルモン療法を受けています。彼女は抗がん剤治療でやはり髪の毛が抜けてしまい、ウィッグをつけながら芸能活動を続けていました。がんの啓発イベントで一度ご一緒したことがありましたが、そのときもウィッグをつけておられました。とてもキュートな方で、「ウィッグはかゆいし、暑い」とおっしゃっていました。 なお、彼女はNHKのウェブサイトで「乳がんダイアリー」というページを持っており、とても細かく治療や副作用のことを動画でお話しされています。2~3日に1度のペースで更新し、とてもリアルなお話をされています。その勇気に感服するとともに、皆さんも見てくださるようおすすめします』、「乳がんダイアリー」は確かになかなか充実した内容のようだ。
https://www.nhk.or.jp/nagoya/nyugan/diary/
・『オプジーボ──最新の薬はどうか  最後に抗がん剤自体の進歩についても述べておきます。「30年前と同じ薬をよく使っています」と前述しましたが、昔からの薬に加えて新しいメカニズムで効く薬がどんどん出てきています。 その一つが、「分子標的薬」と呼ばれるもの。簡単に言えば、がん細胞にだけ攻撃をしてがんではない正常な細胞には攻撃をしない薬です。この種類の薬はたしかに副作用が少なく、効果が高いものが増えてきました。さらに、最近になって「オプジーボ」に代表されるような新しい薬も出てきました。効果があり、副作用が少ない薬です。 ただ問題は「非常に高額である」という点です。患者さんは「高額療養費制度」という制度を使えば、「1カ月に自腹を切るのは◯円まで」となります。患者さんの出費は月7万~10万円くらいと、決して少額ではありませんが、50万円以上する薬の金額からすると支払いは軽くなるでしょう。一方で、その差額は国民みんなのお金でまかなわれています。 イギリスは、医療の費用対効果(=コスパと考えてください)を世界一研究し、先進国の中ではもっとも厳しく政策に取り入れている国です。そんな国が、日本では当然のように使われている抗がん剤を「効果のわりに、値段が高すぎる」という理由で使ってはいけないという勧告を出しました。しかし、これに怒った市民団体からの反発を受け、現在は別の抗がん剤基金を作ってそちらからお金を出すという迷走をしています。高い薬について、国全体の支出という意味で考えることは、決して私たち一人ひとりにとって人ごとではないのです』、高額の「抗がん剤」をどう扱うかは、確かに難しい問題で、今後、利用が広がれば、医療保険財政への影響も真剣に見直す必要が出てくるのかも知れない。

第三に、この続き、7月25日付け日経ビジネスオンライン「セカンドオピニオンで医者は気分を害すのか? 第47回 がん外科医の本音③」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00135/00008/?P=1
・『こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。梅雨が明け、全国が夏めいてきたようですが、こちら福島県郡山市は比較的過ごしやすい日々が続いています。暑くないわけではないのですが、時々出張で東京や大阪などへ赴くと、まるで違うなと感じるものです。 昨年1年間を大学院生として京都で過ごし、4月から臨床医に戻りました。私は外科医のなかでも極めて良い勤務時間設定をしていただいていますが、それでも体力的に厳しい日々が続いています。帰れない日もありますし、真夜中に呼び出されて疲れ切った研修医と一緒に緊急手術をすることもあります。病院の当番日などは、この30万人都市の街じゅうの重症ハライタ患者さんはすべて自分が診ているのです。重い責任を感じます。 そんな生活ですが、たまの休日には郡山の小さな図書館にこもり小説「泣くな研修医」(2019年2月に幻冬舎より出版)の続編を書いています。ありがたいことに3万部を超える部数となり、続編を書く許可を出版社からいただいたのです。売れなければすぐに執筆依頼は来なくなり食いっぱぐれるのが小説家稼業だそうで、そういうプレッシャーにおいて資格職の医者は気楽なものですね。1年目の研修医が今度は3年目の後期研修医という立場になり、後輩もできて病院で外科医の修行を本格化するという話になるのですが、いかんせんタイトルに悩んでいます。「泣くな研修医2」でも良いですけど、せっかくだから新しいタイトルをつけたいなあ。しかし「頑張れ後期研修医」とか、ちょっともっさりしてダサいですよね。そんなことを考える日々です』、「たまの休日には郡山の小さな図書館にこもり小説「泣くな研修医」・・・の続編を書いています」、というのは大したものだ。
・『2人目の医師の意見を聞くタイミングとは?  さて、今回は「セカンドオピニオン」について説明したいと思います。セカンドオピニオンとは、「自分のがんの診断や治療方針について、他の医師にも意見を聞いてみる」こと。セカンドは2人目、オピニオンは意見という意味で、一人の医者の判断だけだと間違っている可能性があるから、もう一人の医者の意見を聞いてみることを指します。引っ越しのときに業者3社から見積もりを出してもらって、比較をするようなものですね。 セカンドオピニオンに聞きに行くタイミングはいつでしょうか。決まりはないのですが、一番いいのはこういうタイミングです。医師からがんが疑われ、CTや採血検査などいろいろな検査をし終えた後、「あなたは○○がんのステージ○でした。治療方針はまず抗がん剤をやり、その後手術を考えています」と言われたタイミング。言い換えれば、診断が確定し、治療方針が決まった時になります。 ここで、「治療開始をちょっと待ってください。セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状を書いてください」と言うのがよいでしょう。この時、どこにセカンドオピニオンを聞きに行きたいかを決めておく必要があります。地元で信頼している病院でもいいですし、「がん相談支援センター」に聞いてもよいでしょう。 ただ、例外的に、がんの種類や病状によっては時間的な余裕がなく、セカンドオピニオンが不可能なこともあり得ます。例えば急性白血病で大急ぎで治療を開始しなければばならない場合や、胃がんや大腸がんで出血が止まらず緊急手術が必要な場合などです』、「セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状を書いてください」、と正々堂々と依頼する方がいいようだ。
・『費用は病院によって大きく異なる  セカンドオピニオンを受けたい病院が決まったら、病院の代表に電話し、セカンドオピニオンを受けるために何が必要かを尋ねてください。ほとんどの場合で予約が必要ですし、費用も病院によって異なります。 金額は、保険が適用されないため病院によってはかなり高額になります。あるサイトによると、東京都内の大病院、例えば、日本赤十字社医療センターなら4万6440円(1時間)、慶応義塾大学病院・東京大学医学部付属病院・癌研究会 有明病院なら4万3200円(1時間)でした。 都内では大学病院が高く、公立病院が安い設定になっているようです。私が以前、勤めていた都立駒込病院では1万2000円と、前出の病院に比べて3分の1以下という料金設定でした。不思議なものですね。また、地方を見ると、私の出身大学である鹿児島大学の大学病院では1万6200円でした。 東京都内の状況を見ただけでも、おそらくこの金額とセカンドオピニオンの質はほぼ無関係だと私は感じます。費用の問題はありますが、がんと診断された方全員がセカンドオピニオンを聞きに行ってもいいと個人的には思っています』、「金額は、保険が適用されないため病院によってはかなり高額になります』、というのは安心料だと割り切るべきだろう。
・『複数の医師に聞くことで得られる安心感  がんの治療は、患者さんの一生を左右するもの。どの病院のどんな医者がどのクオリティーの治療をやっているのか、完全に把握する方法はありません。もし万が一、変わった医者に当たってしまうリスクを考えたら、治療前に一度、他の医師の意見を聞く価値はあると私は考えます。珍しいがんでなければ、専門家の間で意見はほとんど変わりません。もし変わるとしたら、手術の方法が開腹手術か腹腔(ふくくう)鏡手術になるかというくらいです。 しかし意見が同じであったとしても、2人目の意見を聞く価値は高いと思います。なぜならセカンドオピニオンにより、「2人の医者の意見が一致している」という安心感を得られるからです。 また、がんが再発してしまったり、転移をしてしまったりしたときなども、セカンドオピニオンを聞くタイミングだと思います。病状が複雑になると、治療の作戦は医師によって少しずつ変わります。その理由は、高い医学的根拠の研究結果がないためです。この場合、医師は自身の経験と得意な方法の中で、患者さんの希望に沿って治療をしていくことになります。 ただ、このタイミングでのセカンドオピニオンは、患者さん側も非常に難しい選択を迫られることになるでしょう。正解はない中で、「AとB、どちらにするか」を決めねばならないのですから。こういうときは、どちらの医師、あるいは病院が信頼できるかで選んでもよいかもしれませんね』、なるほど。
・『激怒する医者もいる  このセカンドオピニオンについて、悲しい話があります。本当に信じられないのですが、セカンドオピニオンを患者さんが申し出たところ、激怒する医者がいるという話です。が、そういう小者の医者からはぜひ離れるべきです。ダメな医者ということが分かってラッキーだった、くらいにとらえていただければよいでしょう。 はっきり申し上げておきますが、私の知る、その腕や知識が一流だと思うがん専門医の中で、「セカンドオピニオンを」と言われて嫌な顔をする医者は一人もいません。怒る医者に限って、治療方針に自信がなく、自分の能力が足りないことを他の医者に露呈することが我慢ならない人です。もしくは、医者の権威にすがることで自らを高めたい哀れな人たちです。 ためらわず、セカンドオピニオンの意思を主治医に伝えてください。もし医者が怒ったら、このコラムを印刷してその医者に渡してあげてください。後に彼/彼女は自分の小さな器を恥じることでしょう。また、怒った医者の名前と病院を私にお教えください。それくらい私は、「セカンドオピニオンの申し出に怒る医者」に怒っています』、この場合は、「セカンドオピニオン」というより、転院した方がよさそうだ。
・『医者の「この言葉」が出たら転院を考える  「医者のこの言葉が出たら、転院を考える」。このテーマについて書いてほしいと書籍の編集者さんに依頼され、私は戸惑いました。いや、一言では決められないし、そもそもそんなひどいことを言う医者などいないのでは……と思ったからです。 よし、ここは書くのをよそう。そう思っていたある日のことです。私は東京で行われたあるイベントで司会の方のむちゃ振りにより「会場にいる方々からの質問になんでもお答えする」ことになりました。すると、「医師にこんなひどいことを言われたのだが、どう思いますか?」という質問が相次いだのです。聞けば、確かにかなりひどいことを言われている。驚きました。その中には前述の「セカンドオピニオンを申し出たら、怒られた」話もありました。 そのイベントの後から、この「医者のこの言葉が出たら、転院を考える」を再検討せざるを得なくなりました。ここでは、正確には転院というより、主治医の変更を考えるということです。 ずばり、この言葉があったら主治医を替えましょう。それは、「失礼だ!」という言葉です。 これは致命傷です。医者はなぜこんな言葉を使うのでしょうか? それは「私は医者なので、敬意を払うべきだ」という気持ちの現れであり、その裏には「治療してやってるんだから、敬いなさい」という考えが透けて見えます。このような医者は、すぐに替えた方がいい。間違いありません。このコラムを医師のみなさんも読んでいただいているかもしれませんが、お伝えしておきます。あの時代は終わったのです。医師は聖職で、白衣を着ているだけで敬意を集めるという時代は』、「「失礼だ!」という言葉」を吐く医師が例外的に少なければいいのだが、結構多いのではとの危惧も残る。
・『ドクハラを受けたらどうする?  ただ、医者をやっていると患者さんやご家族から「それはさすがに失礼なのでは」と思わざるを得ないレベルの「暴言」を逆にぶつけられることはあります。私も「このヤブ医者、とっとと辞めてしまえ!」「先生は人殺しですね」などと過去に言われたことがあります。 これは深くダメージを負います。こんな言葉を発するのは、多くは経過が悪く、亡くなってしまった患者さんのご家族などですが、そういう場合は私も八方手を尽くした場合が多いのでなおさらつらいです。が、やむなしと思うしかありません。自分の努力が足りなかった、配慮が足りなかったと思うしかないのです。 医師からのひどい態度のことを「ドクハラ」などと言うことがあります。和製英語ですが、ドクターズ・ハラスメント、略してドクハラです。ひどいドクハラの言葉を投げかけられたときは、どうすればよいのでしょうか。法的責任を問う、という方法はそれほど簡単ではありませんが、まずは「医師に謝罪を求める」とよいでしょう。直接その医師には言いづらいでしょうから、書面での謝罪の要求でもよいと思います』、「患者さんのご家族など」からの暴言も、確かに困ったことだ。
・『病院にある「ご意見箱」を活用しよう  また、病院にはほぼ必ず「ご意見箱」という名前の投書箱が目立つところに置いてあります。ここに、医師に言われたことを書いて入れるのも一つの手段です。内容によっては院長や事務長など病院幹部にまで届きます。もちろん事実関係の確認はあるでしょうが、本当にひどいことを言う医師に対しては病院側としても雇っているリスクがあります。病院というところは評判が命なので、そういう医師がいるだけで病院経営に関わります。ですから、高い可能性で本人のところへ事実確認と、本当にあった場合には注意がいくでしょう。 いや、そんなことしづらい……とお思いのあなた。インターネットで「ご意見箱 病院」と検索していただくと、とても多くの病院が、ご意見箱に入った投書の内容と、そのお返事を公開しています。「会計が遅すぎる。もっと迅速にしてほしい」「医師に『そのくらい大丈夫ですよ』と笑われた」「医師の説明がなさすぎるし、聞ける雰囲気ではない」「入院中、看護師に友達のような口の利き方をされ不快だった」などのご意見が見られます。こんなふうに書いていただいてかまいませんので、ぜひご活用ください』、「ドクハラ」には「病院にある「ご意見箱」を活用しよう」、というのは使いやすそうだ。それにしても、「医師に『そのくらい大丈夫ですよ』と笑われた」、のまで問題にするのは、患者にも問題がありそうだ。
タグ:ドクハラを受けたらどうする? 複数の医師に聞くことで得られる安心感 金額は、保険が適用されないため病院によってはかなり高額になります がんにまつわる私の本音シリーズ (その19)(一介の外科医 是絶筆 がん外科医の本音シリーズ:「医者はがんを切りたがる」は本当か? 第45回 がん外科医の本音①、「抗がん剤の副作用」はなぜあるの? 第46回 がん外科医の本音②、セカンドオピニオンで医者は気分を害すのか? 第47回 がん外科医の本音③) 怒る医者に限って、治療方針に自信がなく、自分の能力が足りないことを他の医者に露呈することが我慢ならない人です 激怒する医者もいる 医者の「この言葉」が出たら転院を考える 病院にある「ご意見箱」を活用しよう 「失礼だ!」という言葉です 費用は病院によって大きく異なる セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状を書いてください 地元で信頼している病院でもいいですし、「がん相談支援センター」に聞いてもよい 医師からがんが疑われ、CTや採血検査などいろいろな検査をし終えた後、「あなたは○○がんのステージ○でした。治療方針はまず抗がん剤をやり、その後手術を考えています」と言われたタイミング セカンドオピニオン たまの休日には郡山の小さな図書館にこもり小説「泣くな研修医」(2019年2月に幻冬舎より出版)の続編を書いています 「セカンドオピニオンで医者は気分を害すのか? 第47回 がん外科医の本音③」 その差額は国民みんなのお金でまかなわれています 「高額療養費制度」 オプジーボ──最新の薬はどうか 医者のもっとも重要な目標は、「患者さんが治ること。そして治らなかったとしても生存が少しでも延びたり、痛みや苦しみが取れること」 なぜ「切る」が有効なのか? がんは「切って、取り去れば治る」という性質がある 「乳がんダイアリー」 抗がん剤は、歴史的に毒ガスから開発された 確実に効果が上がった抗がん剤 「「抗がん剤の副作用」はなぜあるの? 第46回 がん外科医の本音②」 キレイごと抜きで明かすと…… 逆に、切れないがんは、非常に厳しいその後が予想されるということにもなります 「医者はがんを切りたがる」は本当です。まだ切れる段階の進行度であるがん患者さんであれば、治る可能性があるので、医者としてはうれしいのですから 切りたがろうが嫌がろうが、どうしたって切るときは切るし、切らないときは切らないのです 「切らない」というより「切れない」 がんの治療方針はどこでも同じなのです 「がんが切れる」という言葉をもう少していねいに言うと、「がんを残すことなく取り切れる」とイコールになる ズバリ、外科医は「切りたがる」 がんの研究者お二人による全体監修と、京都大学の教授で医師でもある先生の部分監修で、私の思い込みや偏りを排除しました 『医者の本音』の続編 一介の外科医 日々是絶筆 『がん外科医の本音』 「ガイドライン」 「「医者はがんを切りたがる」は本当か? 第45回 がん外科医の本音①」 医者には多数の会議があり、医者同士で相互チェックのようなこともしています。医者は一人で治療をすると、ときに独善的になったり自分の利益へ誘導的になったりすることがあります。ですから、こうして風通しを良くして、コソコソ勝手に治療方針を決めないようにしているのです 日経ビジネスオンライン カンファレンス 中山 祐次郎 黒男先生(仮名)の場合 現代の医学で克服できていない副作用も…… はきけ止めの薬が非常に進歩 副作用として知られる「はきけ」はある? ビンブラスチンやビンクリスチンといった抗がん剤は、観賞用植物であるニチニチソウから作られています このタイミングでのセカンドオピニオンは、患者さん側も非常に難しい選択を迫られることになるでしょう。正解はない中で、「AとB、どちらにするか」を決めねばならないのですから がんが再発してしまったり、転移をしてしまったりしたときなども、セカンドオピニオンを聞くタイミング 2人目の医師の意見を聞くタイミングとは? 少しがんが残ってしまった患者さんを何人も見ていくと、残ったがんがあっという間に大きくなり、手術前の状態と同じくらいまでになってしまっていました 医療問題
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