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GAFA(その2)(「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強、「GAFA」に吸い上げられる日本のマネーは何兆円くらいか 「デジタル経済の嘘とホント」(6)、「努力義務違反の可能性」 グーグルの対応 国が指摘) [産業動向]

GAFAについては、昨年11月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強、「GAFA」に吸い上げられる日本のマネーは何兆円くらいか 「デジタル経済の嘘とホント」(6)、「努力義務違反の可能性」 グーグルの対応 国が指摘)である。なお、タイトルから「プラットフォーマー」はカットした。

先ずは、ニューヨーク大学スターン経営大学院教授のスコット・ギャロウェイ氏が1月3日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/254834
・『1月3日夜9時より放送されるNHK-BS1スペシャル「欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を越えて~」。資本主義の行きつく先はどこなのか?2017年から続く、大反響の異色経済ドキュメントの第3弾だ(当日は午前10時から2017年版、正午から2018年版も放送される予定)。 今回は、国民国家、すべてを超越して巨大化するGAFA、従来の市場原理を超えて席巻する仮想通貨などを題材に、歴史を彩った思想家ハイエクらの言葉を拠りどころにして、「自由」の形と資本主義社会の行く末を真正面から問う。 22カ国で刊行し日本で12万部のベストセラーとなった『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者で、番組内でも取材されているニューヨーク大学スターン経営大学院教授、スコット・ギャロウェイ氏へのインタビューをお届けする』、「欲望の資本主義2019」はみごたえのある番組だったが、「ギャロウェイ氏へのインタビュー」とは興味深そうだ(Qは聞き手の質問)。
・『GAFAは「神、愛、消費、セックス」  『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社刊)を著したスコット・ギャロウェイ教授は、絶好調なパフォーマンスを見せるGAFAの株を持ち、ニューヨーク・マンハッタンの高級住宅エリアに住み、いちばん稼ぎがいい企業に就職したい野心的な学生を名門校で教え導く。 学生の多くは、アマゾン、フェイスブック、グーグルといった誰もが夢見るテクノロジーの「巨人」に就職する。『GAFA』は、そんな教授が、4強の知られざる本質について分析し、世界に対して警告を発した書だ。 教授は、同著で4強のGAFAをこう例えた。 ヨハネの黙示録の四騎士。地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権威」を与えられている。 Q:4強は恐ろしい「権威」だとするが、現代の人々の目にはどう映っているのか。 ギャロウェイ:グーグルは、私たちの神です。あなたが結婚しようとしているのか、離婚しようとしているのか、何を悩んでいるのかを、グーグルは知っています。 フェイスブックは、愛です。人間は種として、愛されることを必要としているばかりでなく、フェイスブックは、最も大切な、あるいは2番目に大切な人間関係の触媒となり、人間関係を強化するのです。心であり、愛です。 人間はつねに「もっと」と求めるものです。ウォルマートもユニクロもそこそこその欲求を満たしてくれますが、最も満たしてくれるのに長けているのは、アマゾンです。 最後にアップルです。人間は、交尾の相手にとって魅力的に見えなくてはなりません。自分が交尾に値すると見せると同時に、「私は都会に住んでいて、お金もあるし、話もうまいし、才能もある」というのを伝える最も簡単な方法は、iOSを搭載したものを持っているということです。 グーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルはすなわち、神、愛、消費、そしてセックスです』、なかなかユニークな比喩だ。
・『資本主義の大原則「独占企業は分割せよ」  Q:しかし、これら4強には、別の顔もある。グーグルは、検索の93%のシェアを独占し、フェイスブックは民主主義を危うくするほどの影響力があり、『the four GAFA』によれば、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が率いるアマゾンは、州の売上税を免れてきたと指摘している。 ギャロウェイ:4強が、何の抑制と均衡(チェック&バランス)も利かないままに、影響力を強め、巨大になってきたというのは事実で、それは、深刻な病です。 私は、4強を分割する必要があると考えます。資本主義のカギは競争であり、競争のカギは、いかなる企業も過剰なパワーを持たないということです。現在は、検索、ソーシャルメディア、eコマースの分野で1社しかない、つまり基本的に寡占の状況にあります。それを改善するのは、規制でも処罰でもなく、独禁法違反で分割することだと思います。 アメリカには、企業分割の歴史があります。1980年代には、Ma Bellと呼ばれ、長距離電話市場の80%を独占していたAT&Tを8つに分割し、それによって光ファイバー、携帯電話、データサービスといったイノベーションを開放しました。これらのイノベーションはそれまで、電話という独占ビジネスを食わないように(AT&T傘下の)ベル研究所に眠っていたのです。 フェイスブックは、広告やコンテンツを監視することを怠っていますが、もしフェイスブック、WhatsApp、メッセンジャー、インスタグラムの4社に分割されれば、そのうち1社が他社に差をつけるために、「好ましくないコンテンツが一切ないように努力しよう。悪役が、私たちのプラットフォームを武器として使うことがないようにしよう」と思うはずです。同様に、グーグルとYouTubeは分離できます。究極の解決策は、競争であり、資本主義なのです。 Q:資本主義とそのカギである競争が、4強を肥大化することを止め、現在の寡占状態を改善するというギャロウェイ教授。それでは、資本主義は、私たちに何をもたらしてきたのだろう。そして、資本主義経済の中に生きる私たちにとって、何が大切なことなのだろうか。 ギャロウェイ:資本主義経済においては、裕福であるほど、よいヘルスケアが受けられ、ストレスも軽減され、寿命が延びます。選ぶパートナーの幅も広がりますし、よりよい教育を受けられれば、子どもが成功する確率も上がります。より裕福になろうというプレッシャーはつねにありますが、そうした努力は、すばらしいことです。 要は、長期的な将来に対する投資をしているか、いい学校があるか、不幸な人々へのセーフティネットはあるか、ということです。 アップルは宗教のようであり、創業者のスティーブ・ジョブズはイエス・キリストのように思われていますが、私は、人となりではなく、富で判断するのは、大きな間違いだと思います。私には2人の息子がいますが、自分たちが学んできた価値を子どもに教えていくのが、両親の責任だと思っています。 Q:一方で、GAFAという4強の寡占状態が形成された中、資本主義の性質が変貌してしまったことも指摘する。 ギャロウェイ:資本主義にはネガティブな面もありますが、私たちが今向かっているのは独裁主義のようなものです。一握りの人々と企業が強大な権威を持った場合、それは真の資本主義とは言えません。寛容な精神、市民としての責任が伴って実現され、政府も企業が信頼できる、平等な条件で競争していることを確実なものにしたときこそ、資本主義はベストのシステムだと言えるのです。 Q:資本主義を変貌させてしまった4強に囲まれた生活に慣れ親しんでいる若者が、今後幸せを手に入れることは、とても困難なことのように捉えられる。しかし、ギャロウェイ教授は、本質的なものは変わらないと訴える。「幸福とは愛だ」と。 ギャロウェイ:若い人が一生懸命働き、自分と家族のためにある程度の経済的安定を築くこと、そして、夫婦が安全で経済的に安定した家族を築くのは、もちろん大切です。 でも、お金は手段であり、これで十分だということはないのです。それを理解したとき、満足と幸福を得られるのは結局、深く、意味がある人間関係が果たす役割なのです。両親、子ども、友人、同僚といかに親しく意味がある関係を築いているかが肝心です。ハーバード大の「成人発達研究」は、75年にわたり700人を追跡調査した大規模なものですが、その結果は、「幸福というのは、愛だ」、それ以外にはない、というものでした』、「独占企業は分割せよ」との主張には諸手を上げて賛成だ。
・『ギャロウェイ教授から日本へのメッセージ  Qこのような中、日本は、国としてどんなことに気を配ったらいいのだろうか。4強が肥大化する中、その富が、アメリカのように大学や医療機関などに還元されていることもない。 ギャロウェイ:日本の選挙で選ばれた政治家など公職にある人たちは、この問いかけをしなくてはなりません。つまり、大手のテクノロジー企業は、日本社会にいい影響をもたらしているか?という問いです。日本の企業が適正な競争をするチャンスがあるか、ということを確認しなくてはなりません。 自由社会であるアメリカや日本で選挙をする際、選ばれた人物は、有権者の意思を代表しています。企業というのは、わずかな数の株主の意思だけを反映しています。企業が独占を享受し、経済を左右しすぎると、つねに危険な状態となります。なぜなら、彼らは政府をも左右するようになり、政府も健全な国家について長期的視点で考えることをやめてしまうからです。「権力の腐敗」はこうして起きます。経済の多くの部分が、つねに少ない役者の手に落ちた場合にこうしたよくない状況に陥ります。 悪いことに、収入格差というのは、3つの方法で修正されていきます。飢饉、戦争、そして革命です。それらは避けなければなりません。ただ、アメリカでは、緩慢なスピードで革命が起きていると思います。一握りの人に富が集中し、そこに入ることができない人々が、怒りのあまり初めて声を上げて、独裁者のような人物を指導者に選出しました。私は、アメリカは革命を始めてしまったと考えています』、「アメリカは革命を始めてしまった」というのは、トランプ現象の面白い解釈だ。

次に、経済産業研究所/日本生産性本部 上席研究員の岩本晃一氏が5月7日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「GAFA」に吸い上げられる日本のマネーは何兆円くらいか 「デジタル経済の嘘とホント」(6)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/200925
・『日本では、Uberなどのライドシェアは「白タク」だとして許可されていないため、欧米のように低賃金・不安定労働を強いられている運転手や、Uberに仕事を奪われたタクシー運転手の抗議デモを見ることはない。 だが、多くの人々は意識していないかもしれないが、日本でも膨大なマネーとデータがGAFAなどプラットフォーマーに吸い取られている』、興味深い試算だ。
・『家計消費で急増した「通信費」 GAFAに流れる  日本では、1995年が「インターネット元年」とされる。 それ以前の93年から2017年までの24年間の家計の支出(名目)の推移を、総務省家計調査でみると、この一端が見える(図1)。 24年の間に、総支出は14.87%縮小しており、食料、被服履物、教養娯楽などの支出は減って切り詰められているが、保険医療費と通信費(機器を含む)は増加している。 中でも増え方が突出しているのが、「通信費」だ。この通信費の一部は米国のGAFAなどに流れていると考えられる。 日本の消費者がパソコンを購入すると、そのパソコンの外国製の部分(CPU、液晶、半導体など)の代金が海外に流れていく。 スマートフォンを購入した場合でも、その一部代金を通信費に上乗せしている場合も含めて、支払いの一部が海外に流れていく。 グーグルの最大の収入源は、Gmailだろう。 最近の若者が使用するフリーメールのほとんどはGmailといっても過言ではない。若者の間では、「ググる」という言葉がはやるほど、ネット検索はグーグルが使われる。 そのため、グーグルの検索画面から入力できるGmailは、若者にとって最も使いやすいフリーメールである。Gmailのなかに、企業からの広告が届く。これがグーグルの大きな収入源となっている。 また、ツイッターは、他人のツイートをフォローして見ていると、企業からの広告が届く。これもまたツイッター社にとって大きな収入源である。 アマゾンは、書籍、洋服など物資の購入、ネット映画、クラウドサービスなど、多種多様な商品サービスを提供している。そこには必ずといっていいほど企業広告が入っている。 同社の収入源は、販売している商品・サービスの料金の一部と、企業からの広告費だろう。 またパソコンやスマートフォンで使用されているソフト、すなわちウィンドウズ、ワード、パワーポイント、エクセル、そしてウイルス対策ソフトなどがインストールされれば、その使用料が海外に流れている。 またiPhoneの部品を、数多くの日本メーカーが供給しており、その代金は日本に入るが、iPhoneのもうけの過半はこうしたソフトが占めており、日本から吸い上げられるお金の方が多いと考えられる。 吸いあげられるのはマネーだけではない。ネットを使うたびに、その個人の嗜好がわかる「個人情報」が米国本社に流れている。 フェイスブックやツイッターでは、個人が書き込みをするたびに、その人の嗜好に関する情報が米国本社に流れ、またフェイスブックやツイッターの社内では、書き込まれた言葉を収集し分析することで、社会の将来動向を予測し、ビジネスにつなげる研究も行われていると聞く』、確かに、流出ルートは様々のようだ。
・『個人で年間に2.1兆円 日本全体で3.3兆円が流出?  日本からどれぐらいのマネーが「GAFA」などに流れているのか。 全体像をつかむのは難しいが、1世帯当たり年平均1ヵ月間の通信費1万3271円(2017年)のうち控えめに見て、一体、どのくらいが海外に流出しているとみればいいだろうか。 1ヵ月平均の通信費(含む、情報機器購入代を含む)のうち、平均的な家庭では、約4分の3が、国内通信事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)への支払いであり、残り約4分の1が海外に流出していると大雑把な「仮定」をしてもいいのではないだろうか。 すると、 総流出金額=13,271円×12月×1/4×5245万世帯=1年間当たり2.1兆円、となる。 以上は個人が払う金額だけだが、これに各企業・機関が支払う通信費のうち海外に流出する金額を大まかに試算すると以下のようになる。 電子情報技術産業協会の統計によれば、2018年度のパソコンの出荷金額合計は7031億円である。このうち、企業購入分は、少なくとも個人購入分より多いと思われる。 その支払い代金のうち半分以上は海外に流れていると考えられるが、少なく見積もって約3分の1の2000億円が海外流出と考える。 また最近、企業の広告宣伝は、インターネットの普及により、リスティング広告やバナー広告、楽天やアマゾンなどのオンラインマーケットへの出店、検索エンジン上位表示対策、などが有効な手法になっている。 リスティング広告とは、ユーザーが検索するキーワードに連動して表示される広告のことで、ユーザーの関心が高いタイミングで広告を表示させることができる。 リスティング広告の代表的なものとしてはグーグル広告がある。 近年では、旧来媒体よりもインターネットの広告媒体に広告宣伝費をかける割合が高くなっていて、売り上げへの貢献度も高まっているため、ますますインターネットへの広告宣伝費が増えている。 電通によれば、2018年の企業が支出した日本の総広告費は6兆5300億円であり、うちインターネット広告費が1兆7589億円である。 この中には楽天など国内ネット事業者への広告もあるが、いまやネットは外国事業者のほうが優勢だから、このうちの半分以上の約1兆円以上が海外に流れていると考えられる。 こうして考えると、企業からの海外への流出分は、約1兆2000億円となる。 個人と企業分の双方を合計して約3.3兆円程度、おおざっぱにみて約3兆円程度が海外流出分と考えられる。 日本からだけでも、これだけの巨額のマネーを吸い取っているのだから、GAFAが世界中の市場からいかに多くのマネーを吸い取っているか、想像されよう』、「海外流出分」が「個人と企業分の双方を合計して約3.3兆円程度」とは意外に少ない印象を受けた。
・『国内の消費が弱い一因 マクロ経済にも影を落とす  エコノミストの間では、日本の景気がかつてのように盛り上がらない大きな要因として、GDPの約6割を占める個人消費の停滞が長引いていることをあげる人が多い。 「戦後最長」とされる現在の景気拡大も、高成長時代の拡大局面と比べてGDPの伸び率ははるかに低く、好景気といってもとても「弱い好景気」だ。 毎月勤労統計の賃金の伸びがほんの少し下振れしたくらいで、アベノミクスは失敗という声が出てくるくらい、「弱い好景気」なのだ。 筆者は、日本の個人消費が盛り上がらない要因の1つには、家計消費支出で唯一といってもいい高い伸びを示す通信費の一部が、海外に吸いあげられていることがあると考えている。 通信費として使われたお金が、国内の企業の所得になり、さらにそれが投資や消費として国内で使われることが少ないからだ。 日銀がゼロ金利でマネーを市中に大量に供給して、国内の投資や消費を盛り上げようとしているが、企業が国内よりは海外での投資をするように、通信費の一部が米国のGAFAに吸い取られ、日本の経済成長に寄与していないのだ。 GAFAなどのプラットフォーマーと呼ばれる企業に対しては、独占禁止法で規制しようという取り組みが始まっている。 不当にデータを囲い込んだり収集したりする行為や、国内で支配的地位を乱用し、取引相手に自らに有利な条件を押し付けたり、反競争的な行為をしたりしているのでは、という問題意識だ。 またプラットフォーマーの寡占が進む中で、反競争的な行為が技術革新を阻害していたり、日本の企業がGAFAなどの「下請け」化したりして、このままでは日本のイノベーションが衰退するという危機感も強まっている』、「GAFAなどのプラットフォーマーと呼ばれる企業に対しては、独占禁止法で規制しようという取り組みが始まっている」、というのは遅きに失した感があるが、どこまで踏み込んでやるのか、お手並み拝見だ。
・『デジタル革命が生む新たな格差構造  確かにこうした問題への取り組みは重要だと思うが、筆者が考えるプラットフォーマーが生み出す最も深刻な社会問題は、プラットフォーマーが不安定な低賃金労働力を生み出し、またプラットフォーマーに多額のマネーが吸い上げられて、マクロ経済にも影響を及ぼし始めていることだ。 あたかも、産業革命の時代にマルクスが見た「資本家(ブルジョアジー)が労働者(プロレタリアート)を搾取する」格差構造が、デジタル革命の時代に生まれようとしているのだ』、その通りで、放置すれば、資本主義の危機をもたらす懸念もあるだろう。

第三に、7月12日付け日経ビジネスオンライン「「努力義務違反の可能性」、グーグルの対応、国が指摘」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00052/061900004/?P=1
・『個人情報開示請求の対象とした7社の中で、ダントツのデータ量を開示したのがグーグルだ。ネット動画300時間分を優に超える87ギガバイトもの記者の個人データを保有していた。この分量を開示できることは、同社が優れたデータ管理システムを構築していることを意味する。 しかし、データの中身はネットテレビの起動時刻など利用目的が想像しにくいものも多く、グーグル側に正式に問い合わせる窓口もない。個人情報保護委員会は日経ビジネスの取材に対し、グーグルの対応を「法の努力義務に反している可能性がある」と指摘。しかし、グーグルが改善に動く様子は確認できない。 その姿勢は、今回対象になった7社全てに見られた様々な問題の背景に共通するものではないだろうか。「Android TV Launcher」  この英語が何を意味するか想像がつくだろうか。2018年4月、グーグルから開示された個人データの中に含まれていた項目の1つだ。 第3回で説明した通り、筆者はアップルのハードユーザーである。通信端末は同社のものばかりだ。グーグルのOSであるAndroidを利用したことが果たしてあったか、すぐには思い至らなかった』、グーグルが「87ギガバイトもの記者の個人データを保有」、とは膨大さに驚かされた。
・『ネットテレビの起動時刻と一致  思い悩んでいると、「Android TV Launcher」に並んで、「Hulu」という項目があったのを見てはたと気付く。記者はネット動画サービスの「Hulu」に加入し、自宅のネットテレビで利用している。「Android TV Launcher」が意味するのは、テレビに組み込まれているネットワーク機能の起動時刻ではないか。思い起こしてみれば、テレビでグーグルアカウントを同期させた記憶がある。 そこで、ネットテレビの起動を何度か繰り返し、その時刻をメモした上で、再度グーグルから個人データをダウンロードすると、時間が確かに一致した。 テレビのプライバシーポリシーには、グーグルに関する記載は見当たらない。一方、グーグルのプライバシーポリシーには、同社のサービスを利用した際に「リクエストの日時」を収集すると書いてある。 なぜこのようなデータまで収集するのか。データ収集の目的について、グーグルはプライバシーポリシーにサービスの提供・維持・向上・開発、広告の提供、利用状況の測定、ユーザー保護などと列挙しているが、テレビの起動時刻がこの内のどれに当たるのかは結局のところ分からない』、仕事とはいえ、読んでも分かり難い「プライバシーポリシー」を、よくぞ読んだものだ。
・『写真データでわかるアップルとの違い  グーグルが開示したデータは、テレビの起動時刻を含め、87ギガバイトにも及んだ。今回調査した対象の中でもダントツのデータ量だ。 その大半を占めるのが、グーグルのクラウドサービス上に保存していた写真だ。一方、連載3回目で解説したように、アップルはクラウドサービス上の写真データを個人情報とひも付けていない。両社の個人データへの姿勢の違いがここに大きく出ている。 グーグルのウェブブラウザー「クローム」での閲覧履歴、傘下のユーチューブでの閲覧履歴、カレンダーサービスの記述内容、クラウドサービス内の保存ファイル。挙げてもキリがないぐらい様々な項目が含まれていた。 ただし、データ量が多いことで、同社が悪質だというわけではもちろんない。むしろ、ここまでのデータ量を統一的に管理できているその体制は、これまで解説してきたほかの対象企業に比べ優れているといえる』、グーグルのクラウドサービスにはセンシティブな個人情報が多く、万が一、流出した場合のリスクも大きそうだ。
・『質問窓口がない  問題は、開示された個人データに関して疑問を抱いた時、解決の手法が限られていることだ。プライバシーポリシーには、「Android TV Launcher」が何を意味するのかという個別具体的な記載はなかった。この項目がテレビの起動時刻であることを記者が解明した後も「テレビの起動時刻を何に使っているのか」という疑問を解決できなかった。この情報をグーグルに提供しないよう選択する機能は用意されているが、その機能を使うかを判断するために、まずは用途の詳細を知りたい。 こうした疑問が生じた時に質問を投げかける窓口がグーグルにはなかった。あるのはグーグルがユーザーの意見を集めるための「フィードバック送信」の機能、そして、ユーザー同士が疑問に答え合う「フォーラム」だ。 データの詳細や利用方法についてどう疑問を解決すればいいか、フィードバックに送っても返答はない。フォーラムで尋ねると「グーグル本社に聞くしかないのではないか」。しかし、グーグルの拠点紹介ページには本社の電話番号が記載されていなかった。 今度は取材として広報担当者に尋ねてみた。問い合わせ窓口がなぜないのか。回答は「ユーザーはグーグルとシェアしている情報を『アカウント情報』という機能で管理できます」だった。 そもそもダウンロードできるデータは、グーグルが保有している個人情報の全てなのかも同時に尋ねたが、上記の機能で「どんなデータがグーグルアカウントに保存されるか設定、変更ができます」という回答だった。いずれも質問をはぐらかされているとしか思えなかった。 問い合わせ窓口がないことについて、昨秋、個人情報保護委員会の其田真理事務局長へのインタビューで見解を求めると、厳しい指摘が返ってきた。「個人情報保護法第35条の努力義務に反している可能性がある」。同法35条は、企業に対し、個人情報に関する「苦情の適切かつ迅速な処理」、そのために「必要な体制の整備」を努力義務としている。 グーグルの広報担当者に再度尋ねてみた。「個人情報保護委員会からも問題視するコメントが寄せられたが、今のままの回答で問題はないか」と。 答えは変わらなかった。「すでに何度もご返信差し上げている通り、ユーザーが情報を管理する『アカウント情報』を提供しております」 記者が尋ねているのは管理の方法ではない。管理をするために必要な知識を得るための質問の方法だ。実質的な回答拒否ではないかと尋ねると、「回答拒否もしていませんし、すべて誠実にお答えしています。回答があった事実については間違いのないようにお願い致します」と返ってきた』、「質問窓口がない」のはグーグルだけではなく、多くに共通する。「個人情報保護法第35条の努力義務に反している可能性」を指摘されても、努力義務違反程度では、動じない高圧的姿勢には改めて驚かされた。
・『グーグルのプライバシーポリシーは「よくできている」  広報の言葉に従って、グーグルアカウントの機能を色々と試してみたが、質問の答えを見つけることはできなかった。記者の理解力不足が原因かもしれない。結局、グーグルの対応に誠実さがあるかは読者の判断に委ねるほかない。ただ、記者から1つ疑問を呈したい。グーグルの体制は「ユーザー保護」を志していたとしても、少なくとも「ユーザー起点」ではないのではないか。 プラットフォーマー各社はユーザー重視を掲げてはいる。しかし、その施策は「ユーザー起点」ではなく「コンプライアンス起点」のように思えるのだ。つまり、「ユーザーがプライバシー保護体制を充実していると感じるか」を基準としておらず、「プライバシー上の違法行為を犯しているとみなされないか」という考え方に基づいて、施策が組み立てられているのではないだろうか。 分かりやすい例を1つあげよう。グーグルからダウンロードした個人データのファイルをダブルクリックすると、下の写真のように文字化けして表示されてしまった。 これはアップルが提供するウェブブラウザー「サファリ」でファイルを開いたことが一因のようだ。グーグルのブラウザ「クローム」で開くと正常に表示された。 文字化けの解決方法を記者はたまたま思いつくことができた。思いつかない人に対して、質問窓口がなければグーグルはどう対応するのだろうか。 ユーザーにとって不親切な仕組みだ。 「グーグルはプライバシー専門の技術開発者も抱えていて、プライバシーポリシーもよく作り込まれている」(個人情報に詳しいあるコンサルタント)と評価する声もある。しかし、記者にはこのコンサルを含め、プラットフォーマーを巡る業界全体がユーザー起点を見失っているとしか思えない。複雑な個人情報の保護法制に対応することだけにリソースを割いているのではないか』、「複雑な個人情報の保護法制に対応することだけにリソースを割いている」、というのには違和感がある。
・『家族にも「ポリシーを読みなさい」と言える?  グーグルだけが問題なわけではない。フェイスブックとアップルは英語で質問に回答した。アマゾンは記者のパソコンで開けないファイル形式でデータを送ってきた。楽天、LINE、ヤフーは開示を拒んだ。いずれもユーザー側に一定の知識がなければ、解決しない問題ばかりだ。 プラットフォーマーのユーザーは年齢も国籍も職業も関係なく、遍く広がっている。そのユーザー達に何らかの知識を前提としてサービスを提供することは、「ユーザー起点」とはとても言えないだろう。 ユーザー起点を追求するのはコストがかかる。ユーザー起点の保護体制の整備よりも、ユーザーがより利便性を感じる新サービスの開発を追求するのも1つの企業判断かもしれない。 しかし、各国の公的機関も明確に法律だけ守っていればいいという各社の態度を問題視するようになっている。個人情報保護委員会の其田事務局長がインタビューで踏み込んだ発言をしたのはその象徴と言える。個人情報保護の法制度がとりわけ厳しいEUでは、フランスの個人情報保護機関が1月、プライバシーポリシーがわかりにくいというあやふやな理由でグーグルに制裁金の命令を下している。 プラットフォーマーの従業員全てに問いたい。あなたの父母に、祖父母に、あるいは子供に、ITの知識を満足に待たないまま、あなたの会社のサービスを使っている人はいるはずだ。もし彼らから個人情報について質問を受けた時、「プライバシーポリシーを読め」と答えるだろうか。今、あなたの会社はそんな不親切な対応を顧客にしているかもしれない』、日本もフランスに習って厳しい対応をしてほしいものだ。
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