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アスクルVSヤフー(窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?) [企業経営]

今日は、アスクルVSヤフー(窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?)を取上げよう。

先ずは、ジャーナリストの大西 康之氏が7月24日付けJBPressに掲載した「窮地のアスクル、ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57106
・『8月2日の株主総会直前にIFRS(国際財務報告基準)で連結子会社アスクルの岩田彰一郎社長に退任要求を突きつけたヤフーに対し、ガバナンスの権威が一斉に異論を唱え始めた』、総会はヤフー勝利となったが、問題を改めてみてみよう。
・『「大株主なら何をやってもいいわけじゃない」  7月23日には元パナソニック副社長の戸田一雄氏らアスクルの独立取締役が、独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士とともに記者会見し「大株主なら何をやってもいいということではないはず」(戸田)と訴えた。同日には日本の商法の大家、上村達男早稲田大学名誉教授も「退任要求は提携違反」とする法律意見書を出した。 23日、都内で開いたアスクル独立委員会の記者会見には戸田氏のほか、アスクルの社外監査役の安本隆晴氏、弁護士の松山遥氏も参加した。 戸田氏は記者会見の冒頭で「(アスクルの個人向けネットショッピング事業)『ロハコを売れないか』と言ってきて『売れない』と答えたら『社長を辞めろ』。これでは支配株主の立場で圧力をかけているとしか思えない。1週間後には(株主総会で大株主のヤフーが岩田社長の取締役選任案に反対して)そうなってしまう。本当に悩んでいる」と苦しい胸の内を明かした。 7月18日に岩田氏が記者会見で「ロハコ事業の譲渡を要求された」と語ったことに対し、ヤフーが「事業を譲渡する意向があるかどうか打診しただけ」とのコメントを発表したことについては、「実際には、事細かな条件を提示して譲渡を求めてきている」と反論した。 その上で独立役員会の意見として、 (1)岩田社長退任の是非については、指名報酬委員会で議論・決議した後の交代は現場を混乱させ、企業価値にマイナスになる (2)ロハコ事業の譲渡については、2018年12月にロハコ事業の再構築プランを発表したばかりであり、その効果を検証してから検討すべき (3)(ヤフーが今後もアスクルにロハコ事業譲渡を求めるなら)支配株主であるヤフーとの利益相反取引であることを十分に理解し、対等な立場で交渉することが求められる の3つを公表した。 コーポレートガバナンスの権威として知られる久保利弁護士は、「株式の過半を握っていれば何でもできる、というわけではない。世界でも稀な日本の親子上場(親会社と子会社がともに上場企業であるケース)は非常に大きな問題を抱えている」と語った』、「上村達男早稲田大学名誉教授」や「独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士」の主張は説得力がある。
・『「ヤフーに最低限のモラルがあると過信していた」  記者会見での質疑応答は以下の通り(Qは聞き手の質問)。 Q:今回のアスクルとヤフーの一件で一番の問題は何か。 戸田氏 「自分は一体、何をやってきたのか」ということだ。アスクルの独立取締役、指名委員会の委員長として一生懸命ガバナンスをやってきたのに、土壇場でゴロッと変わってしまう。 久保利氏 ガバナンスは日本の資本市場を機能させる上で大変重要だが、世界でも稀な日本の親子上場、多層上場は果たして合理的なのか。1つの会社の資産を二重三重に勘定する仕組みでもあり、非常に多くの問題を抱えたスタイルだと思う。私はJPX(日本証券取引所)の社外取締役でもあるので、この問題を座視する訳にはいかない。 松山氏 支配株主の義務とは何かという問題だ。(業績不振などの場合)株主には取締役を交代させる権利がある。だが今回のように、事前には一声も上げず、株主総会の招集通知案内が印刷の校了を迎える1週間前になって、突然「トップには辞めてもらう。後任は好きに選べ」という姿勢には問題がある。 Q:今回、ヤフーから社長の退任要求があったことで親子上場が問題視されたが、その前に「親子上場には問題がある」とは考えなかったのか。 戸田氏 正直に言うと(支配株主としての権利を乱用しない)最低限のモラルが(ヤフーには)あるものだと過信していた。(取締役会や独立委員会などで)親子上場の問題点については何度か議論をしたこともあるが、性善説にぶら下がりすぎたと反省している。 Q:株主総会でヤフーから派遣されているアスクル取締役2名を候補者から外す考えはないか。 戸田氏 一昨年まで、ヤフーとアスクルは非常にうまくいっていた。イコール・パートナーシップの一番いい例ではないかと思えたほどだ。ヤフーから派遣されている二人の取締役も非常によくやってくれていて、感謝の気持ちがあった。それがこんなことになるとは、という思いだ。 安本氏 アスクルの生みの親であるプラスの今泉公二社長が、岩田氏の取締役選任を否決すると聞いた時には、非常にがっかりした。もう少し長い目で見て欲しかった』、「親子上場」の問題点が、改めてクローズアップされたことは確かなようだ。「生みの親であるプラス」がヤフー側についた理由を知りたいところだ。

次に、8月24日付けダイヤモンド・オンライン「アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは吉岡氏の回答)。
https://diamond.jp/articles/-/212710
・『筆頭株主であるヤフーと対立しているオフィス用品大手のアスクル。8月2日の株主総会では、創業社長だった岩田彰一郎氏の再任にヤフーが反対し、吉岡晃COO(最高執行責任者)が社長に昇格した。新社長はヤフーとどう対峙するのか、直撃した。 Q:前社長を解任した筆頭株主のヤフーに、後継社長としてどう向き合っていきますか。 A:ヤフーとの資本提携は解消したい。その考えは、社長が代わっても全く変わることはありません。 こんな形で社長を代えられて、いつまた同じことが起こるか分からないし、経営陣や社員のしこりは消えない。それにヤフーは独立社外取締役まで3人全員解任したので、会社が壊れてしまった。社長が新しくなったからといって次の日から仲良くしましょうということになるはずがない。 Q:ソフトバンクの宮内謙社長は、記者会見で「アスクルは本当に資本提携の解消を求めているのでしょうか」と述べましたが。 A:われわれは本当に解消したい。そのスタンスで間違いありません。ただ、ヤフーとすぐに資本提携を解消しようとすれば、ヤフーが保有するアスクル株の売り渡しを求める権利(売り渡し請求権)を行使することになります。今の段階でそれに踏み切れば、先方は拒否すると思うので、間違いなく法廷闘争になるでしょう。それを望んでいるわけではないので、慎重に事を進めていきます。 Q:ヤフーと話し合いはできそうですか。 A:早速、アスクルの社外取締役でもある小澤隆生・ヤフー専務執行役から協議の提案をいただいたので、話し合いを始めます。最初のテーマは独立社外取締役の選任。資本提携を解消するにも、独立した役員からガバナンスの意見を求めて進めるのが最良の方法ですから。) Q:独立社外取締役はヤフーが決めることになる? A:いいえ。独立社外取締役を全員解任したのはヤフーですが、もともと独立社外取締役には支配的株主をけん制する機能があるので、それをヤフーが選ぶのは絶対に間違っています。すでにわれわれで新たな社外役員のリストアップに入っています。実際に誰にお願いするかは、独立した指名報酬委員会で議論して決めるプロセスを踏みたいと思っています。 Q:ヤフーが解任したので、今のアスクルに指名報酬委員会はありませんが。 A:ですから、臨時にでも指名報酬委員会を設置したい。独立社外取締役は全員解任されましたが、独立した社外の監査役が2人残っているので、その2人を中心に第三者の弁護士を入れて組成することを考えています。 それはアスクル内部の機関なので、そこが新しい独立社外取締役を選定し取締役会に提案する。そして臨時株主総会を早期に開催し、独立役員の承認を受けることになります。ヤフーには、こうしたプロセスで進めることをお話しするつもりです。 Q:本当に資本提携を解消することはできるのでしょうか。 A:ヤフーのプレスリリースによると「ヤフーよりよい相手がいるなら話を聞く意向はある」ということですから、話し合いの糸口はあると思います。これも独立役員の意向を聞きながら進めていくので、臨時株主総会の後に本格化することになるでしょう。 Q:ヤフーが保有する45%のアスクル株の譲り渡し先として、ヤフーよりよい相手がいますか。 A:現在、事業会社や国内外のファンド4社から提案を受けています。そこから複数社を選んでいきます。1社だけを選ぶとまた同じように独立性を脅かされかねないので。 Q:そこは、ヤフーよりも企業価値を高める相手になりますか。 A:まさにそうした視点で、4社の提案を精査しています。ヤフーとの提携は、BtoCのロハコ事業の集客で大きな効果を発揮しましたが、BtoBも含めて考えると、ヤフー以外の方が有効かもしれない。どんな相手とどんなシナジーを生み出せるのか。それを精査して、最終的には、これから選ぶ独立役員の意見を聞いて決めます。) Q:ヤフーの傘下で、ロハコ事業を成長させた方がよいとの見方もあるのではないでしょうか。 A:いいえ。もはやヤフーと一緒にいることがアスクルの企業価値にとってよいという結論にはなりません。ヤフーの連結子会社でいることの最大の問題点は、ヤフーもアスクルもeコマース(電子商取引、EC)をやっていることです。結果、ヤフーのECにとってはよいことでも、それがアスクルにとってはそうではないという利益相反が生まれることがはっきりした。 例えば、ECでアマゾンや楽天を追い抜くという目標を立てているヤフーは、赤字を拡大してでも流通総額をどんどん増やしたいが、われわれは赤字を拡大して規模を大きくしていく戦略を取り得ない。 仮にECを巨大グループの中の一つのコストセンターとして位置付けるなら、赤字を出して流通総額を拡大する戦略は有効かもしれませんが、上場企業であるわれわれが、赤字を出して規模を大きくするなんてあり得ないわけです。 Q:ヤフーがアスクルのロハコ事業の流通総額を一気に増やそうとするなら、アスクルを完全子会社化するしかないと。 A:契約では、ヤフーがアスクルの株を買い増すには両社の合意が必要ですから、そんなことは想定もしていません。先方がどう考えるかは計り知れないが、われわれとしてはそんなことはできない話だと思っています。 Q:ヤフーはロハコ事業の92億円の赤字を「由々しきこと」としているが、その移管は「考えていない」としている。彼らのそもそもの狙いは何ですか。 ヤフーのEC事業の成長の定義は流通総額の増加です。そのためにロハコ事業をコントロールしたいという狙いは明白です。私は、これまでヤフーとロハコ事業について何度も協議しましたが、「こんな赤字なんて大したことない」「むしろ流通総額を上げろ」という意向の方が強かった。だから、この期に及んで急にロハコが赤字じゃないかと問題視するのは非常に違和感がありますね。 Q:ヤフーの川邊健太郎社長は、ソフトバンクグループの孫正義社長から、アマゾンと楽天を追い抜くようにプレッシャーをかけられていたのでしょうか。吉岡さんは、そうした話を聞いたことはありますか。 A:ああ、1月11日に川邊さんが来社されたとき、「孫さんから、楽天とアマゾンをいつ超えるんだという質問ばかりされる」という話をしていましたよ。岩田の隣で私も聞きました。まあ、孫さんのプレッシャーって私は直接見たことがないので断定的なことは言えませんが、お立場としてそういうものもあるのかもしれませんね。でも、だからといって、アスクルが赤字を出してロハコの流通総額を拡大させるという話には全くならないです』、誕生した新社長もヤフーに対する反感が強く、このままではヤフーの思い通りにはなりそうもなさそうだ。ヤフーもソフトバンクグループから「楽天とアマゾン」超えの圧力を受けていたようだ。今後の展開が大いに注目される。

第三に、早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授の鈴木一功氏が9月4日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「アスクル社長と独立社外取締役の不再任は、本当に問題だったのか?」を紹介しよう。なお、注は省略。
https://diamond.jp/articles/-/213626
・『アスクルの年次株主総会において、大株主のヤフーとプラスの反対により、同社の岩田彰一郎社長と独立社外取締役の再任が否決されたことは大きく報道された。川邊健太郎社長をはじめとするヤフー経営陣の決定はあまりに一方的であるとして、業界団体や個人投資家などから批判の声が上がっている。だが、ヤフーによる決断は本当に問題だったのだろうか。M&Aの専門家でファイナンス理論の第一人者である、早稲田大学ビジネススクールの鈴木一功教授は、コーポレートガバナンスや法律の原則論を軽視した感情的な議論が展開される現状に警鐘を鳴らす。 2019年8月2日、アスクルは年次株主総会を開催し、大株主であるヤフーとプラスの反対により、社長である岩田彰一郎氏、および独立社外取締役の位置づけにある戸田一雄氏、宮田秀明氏、斉藤惇氏の会社側提案の取締役候補4名について、再任を否決した。 本件については、ヤフー側とアスクルの現経営陣側で激論が闘わされ、特に独立社外取締役を実質的に大株主が解任した形となったことから、「少数株主の利益を護る立場にある独立社外取締役」を大株主の一存で交替させることは、コーポレートガバナンスの観点から問題であり、大株主の株主権の濫用ではないか、という批判が各種団体や証券取引所の関係者から相次いだ。 筆者は、こうしたヤフー批判の論調に違和感を覚えるとともに、今回のヤフーへの批判が、2006年のライブドアによるニッポン放送の株式公開買付(TOB)によらない株式取得を巡る、ライブドアへの批判と酷似している、という意味で既視感を覚えた。 本稿では、本件の簡単な経緯と双方の主張の中で問題視された点を整理し、今回の不再任の是非、および少数株主保護と親子会社間の利益相反問題について考察する』、珍しくヤフーの立場をファイナンス理論の立場から擁護する記事なので、参考までにみてみよう。
・『アスクルとヤフーによる提携から現在に至るまでの事実関係  まず、アスクルとヤフーとの資本業務提携の経緯を確認しておこう。 両社が提携を発表したのは、2012年4月27日である。ヤフーは第三者割当増資によって、1株1433円で、2302万8600株のアスクル株を取得した。その投資金額は330億円、議決権比率で42.6%を握る大株主となった。アスクルの親会社であったプラスも株主として留まったことから、2社合算での持株比率は過半数を超えることとなり、その状況は現在も続いている。 当時の新聞記事によると、アスクルは、2009年に自社で始めた個人向けの通販サイトが営業赤字になり、また全社でも最終赤字となったので、ヤフーのポータルから顧客を自社サイトに誘導することで、個人向け通販を立て直そうという意図があった。他方ヤフーも、自社の個人向けショッピングサイトが楽天やアマゾンに取扱高で水をあけられていて、アスクルの持つ配送網を活用して利便性を高める必要があった。 そして資本業務提携により、アスクルは、ロハコ(Lohaco)という個人向けショッピングサイトを立ち上げ、ヤフーのトップページからリンクされるようになった。 資本業務提携後のアスクルの業績は、図表1のように推移した。なお、2018年5月期、2019年5月期のロハコ部門の数字には、2017年7月に買収したペット用品通販のチャーム社のデータを含む(図表中∗を参照)。 提携から7年間で、ロハコ部門の年間売上は21億円から652億円(チャーム社分を除けば513億円)と大きく増えているものの、他の大手ネット通販が1兆円規模の売上であることと比べれば、到底及ばない。また、2019年5月期においても、アスクルのロハコ部門は営業赤字であり、2020年5月期予想でも営業赤字が続く予想(赤字幅は縮小)である。 株価については、どうだろうか。図表2は、両社が提携を発表した直後の2012年5月における株価を100として、アスクル、ヤフー、楽天の株価の推移を示したものである。 株価については、2019年6月末時点で、アスクルの株価は業務資本提携発表直後の約1.9倍となっており、同期間にヤフーや楽天の株価が1.3~1.4倍程度にしかなっていないことに比べれば、パフォーマンスがよい。ただし、同期間に東証株価指数(TOPIX)も約1.9倍になっているので、アスクルの株価のパフォーマンスが格段によかったとはいえない。なお、2019年6月末時点で、ヤフーが保有するアスクル株は約200億円の含み益を抱えていた計算になる』、なるほど。
・『以上を踏まえたうえで、今回の案件について考えてみよう。 本件には、いくつかの異なる次元の問題点があり、それが議論を複雑にしている。そこで、以下のように論点を整理する。なお本稿では、主に(1)と(2)について議論し、(3)については(1)との関連で簡単に触れたい。 (1)過半数を超える議決権を持つ株式による、現社長および現在の指名委員会委員長を兼ねる独立社外取締役の再任に反対することに正当性はあるか。また、その結果として、一時的にとはいえ独立社外取締役が存在しない企業となることに対する、コーポレートガバナンス・コード上の問題はないか。 (2)上場子会社において、大株主である親会社と、子会社の少数株主の利益相反に問題はないか。独立社外取締役が果たすべき役割は何か。本件における、大株主と少数株主間の利益相反問題の本質はどこにあるのか。 (3)子会社上場について、どのような規制が必要か。また、親子上場を認める場合、望ましいガバナンス上のあり方とは何か』、論点整理は問題なさそうだ。
・『論点(1)社長と独立社外取締役の不再任は不当で、コーポレートガバナンス・コード上の問題があったのか  まず、過半数を超える議決権を持つ株式による、現社長、および指名委員会委員長を兼ねる独立社外取締役の再任への反対。これが、今回の最大の論点であることは間違いない。 特に、独立社外取締役を大株主が再任しないことについては、「親子上場企業のガバナンス上、重大な問題」(日本取締役協会)、「上場子会社のガバナンスの根幹を崩すもの」(日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)、「議決権行使を行い、それによって子会社の安全装置とも言われる独立社外取締役の解任にまで至ったことを懸念」(日本取引所グループ清田CEO)と、数多くの反対意見や懸念が表明されている。 しかしながら、そもそも取締役の選任は、会社法によって株主総会の普通決議事項として認められているものである。少なくとも現行の法律上は、上場子会社に関する特別の定めはなく、取締役に社内、独立社外の区別もない。今回の手続きに格段の問題はないように思える。 また不再任の背景についても、図表1に示したように、ロハコ事業の業績が提携から7年を経ても必ずしも芳しくないことを考えれば、株主権の濫用というほどまでに、説得力のない理由による不再任とはいえないように思える。 さらに言えば、コーポレートガバナンス・コードでは、“comply or explain”(遵守せよ、さもなければ説明せよ)の原則に基づき、遵守が望ましいものの、遵守せずにその理由を説明する、という選択肢が認められている。不再任によって、一時的に独立社外取締役が不在になるとしても、その理由がきちんと説明できれば、違法状態とはいえない。加えて言えば、経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」も、あくまでも「指針」である。 むしろ、こうしたいわゆるソフトローにおける、社外取締役やグループ・ガバナンスに関する考え方を理由に、会社法に基づく株主総会での株主の取締役選任が制約されるとは考えがたい。もしそのようなことが許されるのであれば、少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう。すなわち、経営陣の保身(エントレンチメント)の口実として、少数株主保護が使われかねないことを意味する。 筆者は、今回の不再任騒ぎに既視感を覚えている。それは、2005年に株式公開買付(TOB)規制の裏を掻いて、ニッポン放送の議決権の過半数を握るに至ったライブドアのケースである』、mply or explain”の原則に基づき、遵守が望ましいものの、遵守せずにその理由を説明する、という選択肢が認められている」、のは確かだが、今回は「その理由」の説明はどうもないようだ。「少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう」、というのはもっともらしいが、議論を単純化した極論のようにも思える。
・『これはライブドアが、本来であればTOBにより取得することが強制されているニッポン放送の過半数の議決権を、市場内取引(株式市場の立会外取引ToSTNeT-1と通常取引の組み合わせ)によって取得してしまった事例である。このときにも、ライブドアの行為が、少数株主も平等に支配権プレミアムを享受するために存在するTOB規制の趣旨がないがしろにされた、という批判がなされた。 しかしながら、TOB規制にこのような抜け道があることは、当時筆者を含めたM&Aの専門家の間では広く知られていた。だが、たとえば大崎貞和によれば、公開買付制度による厳しい規制を、子会社化等による企業グループ再編や他の企業との戦略的提携の妨げとなるとして嫌ってきたのは、むしろ経済界であったとされる。なお、ニッポン放送の件を契機に、2006年証券取引法が改正され、この抜け道は塞がれた。 今回の独立社外取締役問題も構図が似ているように思える。田中亘によれば、平成26年改正会社法の検討過程において、一定の株式会社に対し、社外取締役の選任を義務づけるべきかが、法制審議会会社法制部会で議論された。しかし、「各会社がその特性に適した企業統治を採用する自由を妨げるべきではないことなどを理由とする反対論」により義務づけは見送られた。 田中によると「こうした反対論は、主として産業界出身者から寄せられた」、とされる。すなわち、経済界の経営の自由度を重視する姿勢が、社外取締役の選任を努力義務的位置づけにし、社外取締役が不在となっても、違法ではない状況への道を開く遠因となったと考えられる。 ニッポン放送とアスクルの件に共通しているのは、経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまったということである。 実際にそのような事例が出てくると、「このような抜け道の利用は、規制の趣旨から認められない」といった批判の嵐になる。しかしながら、抜け道を残すということには、それが自分たちの都合の良いようにも悪いようにも利用される可能性を残すことでもある。それが嫌なのであれば、ある程度みずからの手足を縛ることになるとしても、曖昧さを残さず、可能な限り規制や制度の趣旨が達成できるような形で当初から文言を設計すべきである。 なお、秋に開かれる臨時国会で、上場企業や非上場の大会社に社外取締役の設置を義務づける方向で、会社法を改正することが審議される予定という。今回の件は、法律改正が後手に回るという意味でも、ニッポン放送の件と酷似している』、「経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまった」、というのはその通りだろう。しかし、「コンプライアンスとは単なる法令順守ではなく、社会的要請に応えていくこと」という元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏の考え方に従えば、ヤフーの行為はやはり問題がある。筆者は「法令順守」という狭義の考え方に束縛されているようだ。
・『論点(3)で掲げた親子上場問題についても、類似の問題がある。 経済界は従来から、親子上場の規制には消極的であり、今回ヤフーに批判的意見を開示した団体においても、「上場子会社は、独自の資金調達手段による成長の加速や社員のモチベーションの維持・向上という利点を有する。」(日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)、「親子上場は子会社の事業成長を加速するインキュベーション支援機能もあり」(日本取締役協会)と、親子上場制度自体には肯定的な見解をわざわざ述べている。 親子上場については、学識経験者の中でも、その賛否は分かれる。たとえば、宮島英昭らは、上場子会社にとっては、親会社という大株主によるモニタリング機能により、業績が独立企業よりも良いと報告している。 しかしながら、アスクルは、ソフトバンクグループから見ると曾孫会社(アスクルは、ヤフー〔親〕、ソフトバンク〔祖父〕、ソフトバンクグループ〔曾祖父〕という支配構造を持つ)である。アスクルに対して、親、祖父、曾祖父の誰がモニタリングを提供するかとなると、責任の所在は曖昧といわざるを得ない。むしろ、積み重なった4つの親子関係といういびつな支配構造の中で、より複雑な少数株主問題が内在しているように思える。 かつて、ニッポン放送・ライブドアの件を契機に、TOB規制が見直されたように、今回のアスクルの件は、親子上場に関する規制や制度設計、そして上場子会社のガバナンスに関して議論する格好の機会を与えてくれたといえる。経営の自由度を理由に、こうした議論を封じるのでなく、親子上場のメリットとデメリットを検証し、どのような形態や条件の下で上場子会社が許容、もしくは規制されるべきかという議論を進めるべきであろう』、これはその通りだ。
・『論点(2)少数株主利益の保護に背き、支配株主との利益相反を招いたのか  ここからは2つ目の論点である、少数株主保護についても考察しておこう。 たしかに、コーポレートガバナンス・コードにおいては、独立社外取締役に少数株主の利益の代弁することを期待していると思われる。しかしながら、今回のアスクルの件に関して、ことさらに少数株主利益の保護が持ち出されていることに対して、筆者は違和感を覚える。 そもそも、ロハコ事業はもちろんのこと、BtoB事業を含めても、アスクルの業績は芳しくない。2017年2月の倉庫火事や、近時の配送料高騰という事情はあるにせよ、売上高営業利益率は、2012年5月期の3%台から、直近2決算期には1.2%弱にまで低下している。 このような状況において、現社長の再任を決定した指名委員会や独立社外取締役は、はたして少数株主利益のために行動したと言い切れるのだろうか。 独立社外取締役といえども、経営陣によって、株主総会に候補として提案され、選任される。そのような独立社外取締役が、自身を候補として推薦してくれた経営陣に、どこまで厳しい意見を言えるのだろうか(あまり厳しいことを言っていると、次の株主総会では取締役候補から外されてしまうかもしれない)。独立社外取締役は、社内取締役よりは、しがらみに囚われない意見を述べられるであろうことは認めるが、経営陣に対する監視役という意味では絶対の存在ではない。 さて、少数株主の利益という観点から、ヤフーが取締役の不再任を発表した前日の7月16日から、株主総会の開催された8月2日までのアスクルの株価の推移を見ておこう。この間、アスクルの株価の上昇率は17%、同期間のTOPIXの上昇率は-2%である。もし今回の不再任のニュースが、少数株主利益を害するものであると市場が判断したのであれば、株価は下落したはずである。少なくとも、株価の反応を見る限り、不再任の発表によって少数株主利益が棄損されたとはいえない。 大株主であるヤフーとアスクルの利益相反と、少数株主利益の保護が問題になるとすれば、ロハコ事業を安値でヤフーに譲渡することであろう。この点については、アスクルの独立役員会が7月10日付の意見書で、ロハコ事業の譲渡への現経営陣の反対が、今回の不再任の背景にある可能性を主張している。これに対して、ヤフー側は7月29日付の開示資料で、不再任の理由はアスクルの業績低迷であるとし、こうした可能性を全面否定している。 今後、ロハコ事業を巡って、利益相反が生じる可能性は否定できない。だが現時点では仮定の話であり、どちらか一方の見解に与することは難しいというのが、筆者の意見である』、これもその通りだろう。
・『以上、アスクルの取締役不再任問題について、3つの論点を整理し、筆者の見解を述べた。 2019年を振り返ると、本件を含めて、上場企業の経営権を巡る問題が多い。 伊藤忠によるデサントへの敵対的TOB成立、廣済堂のMBOに対する旧村上ファンドの対抗TOBによる阻止、LIXILの会社側取締役候補の否認と株主提案取締役の選任という、3つの従来にはない形の経営権争いが行われ、いずれもその後、経営陣が交代している。また、HISによるユニゾホールディングスへの敵対的TOBは失敗には終わったものの、議決権の過半数を取得せず、比較的少ない資金で企業の経営権を掌握しようとするTOBが可能であるという、現状の制度の問題点を明らかにしたように思える。 こうした事案は、2014年以降、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの導入により目指してきた、株主によるコーポレートガバナンスが、本格的に機能し始めている証左とも考えられる。それは経営者に対して、株主に説明責任が果たせる、より理論的な企業経営への転換を迫っているように思える。今回のアスクルのケースも、株主を主体とするガバナンスの新しい形を模索する過程で起こった事案と考えられるかもしれない。 少数株主利益は軽んじられてはならないが、その一方で、支配株主が経営陣を選任し、企業の経営の方向性を決められるというのが、株式会社の経営の原則でもある。「一所懸命に経営してきた現社長を、冷徹に解任する大株主」という構図に感情的に惑わされるのではなく、経営陣の保身(エントレンチメント)に悪用されないための独立社外取締役を含めた社外取締役の選解任方法や、ガバナンス上、社外取締役にどこまでの責任を期待するのかを考え直す機会として、本件が受け止められることを期待したい』、総論的で特に違和感はない。いずれにしても、アスクル新社長が今後、ヤフーとどのように提携関係を深めてゆくのか、注目したい。
タグ:郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 大西 康之 アスクルVSヤフー (窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?) 「窮地のアスクル、ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」」 「大株主なら何をやってもいいわけじゃない」 独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士 上村達男早稲田大学名誉教授も「退任要求は提携違反」とする法律意見書 『ロハコを売れないか』と言ってきて『売れない』と答えたら『社長を辞めろ』。これでは支配株主の立場で圧力をかけているとしか思えない 独立役員会の意見 (1)岩田社長退任の是非については、指名報酬委員会で議論・決議した後の交代は現場を混乱させ、企業価値にマイナスになる (2)ロハコ事業の譲渡については、2018年12月にロハコ事業の再構築プランを発表したばかりであり、その効果を検証してから検討すべき (3)(ヤフーが今後もアスクルにロハコ事業譲渡を求めるなら)支配株主であるヤフーとの利益相反取引であることを十分に理解し、対等な立場で交渉することが求められる ヤフーに最低限のモラルがあると過信していた 「アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー」 ヤフーとの資本提携は解消したい。その考えは、社長が代わっても全く変わることはありません。 こんな形で社長を代えられて、いつまた同じことが起こるか分からないし、経営陣や社員のしこりは消えない。それにヤフーは独立社外取締役まで3人全員解任したので、会社が壊れてしまった。社長が新しくなったからといって次の日から仲良くしましょうということになるはずがない 慎重に事を進めていきます ヤフーの連結子会社でいることの最大の問題点は、ヤフーもアスクルもeコマース(電子商取引、EC)をやっていることです 「孫さんから、楽天とアマゾンをいつ超えるんだという質問ばかりされる」 鈴木一功 「アスクル社長と独立社外取締役の不再任は、本当に問題だったのか?」 今回のヤフーへの批判が、2006年のライブドアによるニッポン放送の株式公開買付(TOB)によらない株式取得を巡る、ライブドアへの批判と酷似している、という意味で既視感を覚えた アスクルとヤフーによる提携から現在に至るまでの事実関係 論点(1)社長と独立社外取締役の不再任は不当で、コーポレートガバナンス・コード上の問題があったのか そもそも取締役の選任は、会社法によって株主総会の普通決議事項として認められているものである コーポレートガバナンス・コードでは、“comply or explain” ソフトローにおける、社外取締役やグループ・ガバナンスに関する考え方を理由に、会社法に基づく株主総会での株主の取締役選任が制約されるとは考えがたい。もしそのようなことが許されるのであれば、少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう 経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまったということ 「コンプライアンスとは単なる法令順守ではなく、社会的要請に応えていくこと」 論点(3)で掲げた親子上場問題についても、類似の問題 親子上場のメリットとデメリットを検証し、どのような形態や条件の下で上場子会社が許容、もしくは規制されるべきかという議論を進めるべき 論点(2)少数株主利益の保護に背き、支配株主との利益相反を招いたのか 伊藤忠によるデサントへの敵対的TOB成立 廣済堂のMBOに対する旧村上ファンドの対抗TOBによる阻止 LIXILの会社側取締役候補の否認と株主提案取締役の選任 従来にはない形の経営権争い いずれもその後、経営陣が交代している 株主によるコーポレートガバナンスが、本格的に機能し始めている証左
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