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トランプ大統領(その43)(トランプ 突然の「グリーンランド買収」表明の本気度と隠された真意 景気問題が噴出した瞬間に…、トランプ大統領と闘う正体不明の内部告発者 ウクライナ疑惑はアメリカ民主主義の試金石、トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている) [世界情勢]

トランプ大統領については、9月1日に取上げた。今日は、(その43)(トランプ 突然の「グリーンランド買収」表明の本気度と隠された真意 景気問題が噴出した瞬間に…、トランプ大統領と闘う正体不明の内部告発者 ウクライナ疑惑はアメリカ民主主義の試金石、トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている)である。

先ずは、明治大学教授の海野 素央氏が9月5日付け現代ビジネスに掲載した「トランプ、突然の「グリーンランド買収」表明の本気度と隠された真意 景気問題が噴出した瞬間に…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66968
・『なぜ突然……?  ドナルド・トランプ米大統領がこの数週間に、異例中の異例といえる2つの行動に出ました。1つはグリーンランド買収を巡るデンマーク訪問中止、もう1つは野党民主党の女性新人下院議員2人のイスラエル訪問阻止です。 いったいトランプ大統領は何を狙っているのでしょうか。これらふたつの行動の背景には、共通のある「隠された意図」がありました。 デンマーク領であるグリーンランドの人口は5万6000人で、島には先住民族も生活しています。9月上旬に予定されていたデンマーク訪問を前に、トランプ大統領はグリーンランド買収を「最重要課題ではない」としながらも、「大型の不動産取引になる」と自ら宣伝していました。 米メディアによれば、トランプ大統領がグリーンランド買収に乗り出した理由は、主として3つあります。 第1に、グリーンランドは石炭やアルミニウムといった鉱物資源が豊富だから。第2に、グリーンランドは欧州と北米をつなぐ戦略的に極めて重要な位置にあるから。NATO(北大西洋条約機構)の一環として、米国はすでにグリーンランドに空軍基地及びレーダー基地を置いています。そして第3に、中国がグリーンランドへの投資に意欲を示しているからです。 しかし、トランプ大統領のグリーンランド買収に関する自身のツイッター投稿、そしてホワイトハウスの記者団からの質問に対する回答、買収に乗り出したタイミングを分析すると、本当の狙いは上記の3つ以外にあることが分かります』、突如の表明には驚かされたが、「本当の狙いは」どこにあるのだろう。
・『トルーマン大統領も検討していた  まずトランプ大統領は8月19日、自身のツイッターにグリーンランドの小さな村に金色のトランプタワーが建っている合成写真を掲載し、「グリーンランドはこんなふうにはならないと約束する」と投稿しました(写真はリンク先参照)。不動産業出身のトランプ大統領は、グリーンランドに観光立国としての潜在能力をみて、それを利用しようとしていると疑われたことを意識していたのでしょう。 Donald J. Trump @realDonaldTrump I promise not to do this to Greenland! View image on Twitter 308K 9:07 AM - Aug 20, 2019 Twitter Ads info and privacy 109K people are talking about this 余談ですが、トランプ大統領は北朝鮮に対しても「不動産業の視点から見ると、経済的潜在性が高い」との評価を下し、同国における観光産業の可能性に言及しています。グリーンランドに対しても、同様の観点から見ていておかしくはありません。 次に、トランプ大統領はホワイトハウスの記者団からの質問に、かつて1946年にハリー・トルーマン元米大統領がグリーンランド買収を試みたことに触れました。当時、トルーマン元大統領は1億ドルで島の買収を図ろうとしましたが、デンマークから拒否されています。 デンマークとの「大型の不動産取引」に成功すれば、トランプ大統領はトルーマン元大統領が達成できなかったグリーンランド買収を実現し、「レガシー(政治的遺産)」を作ることができる、というわけです。 さらに、トランプ大統領がグリーンランド買収への関心を認めたタイミングにも注意を払う必要があります。米メディア、経済学者や民主党大統領候補指名争いを戦っている候補が、米国における景気後退の兆候についての議論を盛んに始めたときだったのです。 この議論では、米景気の後退をもたらす主要因として、トランプ大統領による中国からの輸入品に対する追加関税がやり玉に上がり、大統領は守勢に回っていました。 言うまでもなく、トランプ大統領の支持率を支えているのは好調な経済と高い株価です。大統領の支持率は40%から45%の間を推移していますが、経済政策に関してはそれを上回る50%の支持率があります。つまり、再選を目指すトランプ大統領にとって景気後退が最大の懸念材料になるというわけです。 今のところトランプ大統領は「景気後退からほど遠い」と繰り返し言い張っています。しかしその反面、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に責任を押しつけ、しかも「フェイク(偽)メディアと民主党候補が米国経済を潰そうとしている」とも主張しています。 このような状況の中で、トランプ大統領は米国民の関心を景気後退からそらすために、グリーンランド買収を公表したとみてよいでしょう。 結局、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相がグリーンランド買収を「馬鹿げた議論」と一蹴したので、トランプ大統領は同国訪問を中止しました。この突然のキャンセルも話題になり、トランプ大統領は一時的にせよ、米国民の関心を景気後退からグリーンランド買収へとそらすことができました』、「米国民の関心を景気後退からそらすために、グリーンランド買収を公表」、とはさすがにメディアの使い方を知り尽くしたトランプ大統領ならではだ。しかし、大統領の訪問を突然キャンセルされたデンマークにとっては、腹の虫がおさまらないだろう。
・『イスラム教徒の議員にレッテル貼り  もう1つの異例中の異例の行動、民主党議員のイスラエル訪問阻止についても説明しましょう。 トランプ大統領は、自らに非常に批判的な、イスラム教徒でソマリア出身のイルハン・オマル下院議員(ミネソタ州)と、同教徒でパレスチナ系のラシダ・タリーブ下院議員(ミシガン州)に「反イスラエル・反ユダヤ人」とレッテルを貼り、「彼女たちは民主党の新しい顔だ」と語気を強めて語りました。 2020年米大統領選挙を強く意識しているトランプ大統領は、彼女たち2人の下院議員を利用して「民主党は極左の政党である」とアピールし、民主党に対する有権者の警戒心を高めようとしています。 しかも、トランプ大統領は「オマルとタリーブが民主党の顔になったので、(同じ極左のアレクサンドリア・オカシオ=)コルテスが(彼女たちに注目を奪われて)いきり立っている」と自身のツイッターに投稿しました。民主党の極左グループにくさびを打ち込み、弱体化を図ろうと試みているのが明らかです。 タリーブ下院議員とオマル下院議員に対する攻撃は続きます。大統領は「イスラエルがタリーブとオマルの(イスラエル)訪問を許可すれば、弱みを見せることになる」「タリーブはイスラエルとすべてのユダヤ人を憎んでいる」「タリーブはイスラエルへの支援金額を減らす」などと自身のツイッターに投稿し、同国のネタニエフ政権に圧力をかけました。 そもそも米政府は、イスラエルに対して年間30億ドル(約3162億円)もの軍事支援を行っており、これまでにも米上下両院の議員が超党派でイスラエルを訪問しています。にもかかわらず、トランプ大統領はタリーブ下院議員とオマル下院議員のイスラエル入国の差し止めをネタニエフ政権に要求したのです。その結果、同政権は2人の入国禁止を発表しました』、「民主党の極左グループにくさびを打ち込み、弱体化を図ろうと試みている」、汚い手だが、効果的なのだろう。イスラム教徒が下院議員になるというのは、トランプは別として、米国はやはり開かれた国のようだ。イスラエルにしたら「入国禁止」の口実が出来てホッとしたのではなかろうか。
・『さすがにこれに関しては、大統領の身内である与党共和党の議員からも批判が出ました。しかしトランプ大統領にとっては、支持基盤を強化することが目的であり、その目的はこの一件で果たされたはずです。つまり、今回の「騒動」は、トランプ大統領にとって政治的得点になったのです。 加えて、トランプ大統領が「トランプ対タリーブ+オマル」の対立構図を作り、米国民、殊に支持者の関心をやはり景気後退からそらした点も看過できません。米メディアは、トランプ大統領のアドバイザーが「民主党の極左の女性新人下院議員4人(コルテス、アヤンナ・プレスリー、タリーブ、オマル)」の中で、「タリーブとオマルを集中して攻撃するべきである」と助言した、とも報じています。おそらく、トランプ大統領の支持層がこのふたりを特に嫌っているという点で、逆に利用価値が高いからでしょう。 トランプ大統領は自身にとって都合が悪い話題から米国民の関心をそらすために、「異例の行動」をとることが有効である、と考えています。一見すると無関係な「グリーンランド買収」の試みと「タリーブ・オマル両議員のイスラエル訪問阻止」に隠された共通の意図は、主要メディアが争点にしている「景気後退」をカモフラージュすることだった、といえるでしょう』、トランプ大統領の手法は汚いが、実に効果的なようだ。民主党も早く一本化しないと、トランプ劇場を閉鎖に追い込めないだろう。

次に、 米州住友商事会社ワシントン事務所 シニアアナリストの渡辺 亮司氏が10月15日付け東洋経済オンラインに掲載した「トランプ大統領と闘う正体不明の内部告発者 ウクライナ疑惑はアメリカ民主主義の試金石」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/307851
・『9月末からアメリカの首都ワシントンで吹き荒れているトランプ大統領とウクライナをめぐる弾劾調査の嵐はいっこうに勢いが弱まらない。トランプ大統領は「政権転覆を狙ったクーデターだ」として、10月8日、下院民主党が求める文書提出や証言などを拒否、全面対決に出た。対決が続く限り、民主党が多数派を占める下院での大統領弾劾は不可避だ。 トランプ政権は弾劾調査を、民主党が始めた「党派対立」、あるいは国家に従わない官僚軍団「闇の国家(ディープステート)」によるものだ、と訴えて、共和党の支持を固めると同時に、他の話題で国民の気を散らすことで、この苦境を乗り越えようとしている。今のところ、この戦略は効果を発揮し、議会共和党の多くはトランプ政権と歩調を合わせているため、上院の雰囲気は罷免には程遠く、大統領の座は揺るぎない。 現在、大統領と共和党の攻撃の矛先は、事の発端であり、いまだ正体不明のCIA(中央情報局)職員とされる内部告発者に向けられている』、「トランプ政権は弾劾調査を、民主党が始めた「党派対立」、あるいは国家に従わない官僚軍団「闇の国家」によるものだ、と訴え」、とは巧みな防戦だ。
・『トランプ氏の攻撃の的となる内部告発者  前回、現職大統領の行為について内部告発があり、弾劾手続きが行われたのは、1998年のビル・クリントン元大統領(民主党)の不倫スキャンダルであった。大統領の不倫相手モニカ・ルインスキー元ホワイトハウスインターンとの電話を密かに録音していた元ホワイトハウス職員のリンダ・トリップ氏が、録音テープをケネス・スター独立検察官(当時)に提出した。スター独立検察官はその録音テープを大統領弾劾条項の1つとなる偽証罪の証拠として利用するに至った。 クリントン元大統領が、下院で弾劾されるも、上院で罷免を逃れた背景には、自らの弾劾手続きは「党派対立」によるものだと、民主党支持者、国民に訴えたことが大きい。当時は共和党が上下両院で過半数を握っていたものの、上院では3分の2に達していなかった。下院で弾劾されることは目に見えていたが、上院で民主党が団結しているかぎり、罷免を回避できるのは確実であった。党派対立との訴えは功を奏し、クリントン元大統領は政権を存続することができた。 しかし、党派対立が強調される過程で犠牲となったのが、アメリカの民主国家を支えてきた内部告発制度への国民の信頼だ。内部告発者のトリップ氏は無所属として登録し、共和党にも民主党にも献金したことがなかった。クリントン政権や民主党は党派対立と位置付け、共和党が民主党大統領を追い出す陰謀に加担したとして内部告発者のトリップ氏に「右翼」の烙印を押した。 トランプ政権もウクライナ疑惑を党派対立の一環と位置づけている。その結果、政権や共和党の内部告発者に対する強い批判が目立つ。なお、1人目の内部告発者については、情報当局の監察官に内部告発する前に民主党のアダム・シフ下院情報特別委員長の側近に接触していたことが判明した。そのため、「ウクライナ疑惑」は民主党が当初から内部告発者と共謀して党派的に動いたものだと、共和党は批判している。 10月6日のフォックスニュースにおいて、ホワイトハウスのスティーブン・ミラー上級顧問は、内部告発者を「ディープステートの工作員」と呼び、トランプ政権発足以降に選挙で選ばれていない政府職員がトランプ大統領を失脚させようと企んでいることの一環である、と主張した』、「内部告発者」の正体は、トランプの息子が名前入りで暴露したとの報道もある。
・『世界最強のアメリカ大統領を内部告発することは容易ではない。特にCIAのような情報当局に勤務する政府職員の内部告発は、現行法では完全に守られていない。他の政府機関の職員よりもさらに難易度が高いのだ。 今回、内部告発者のCIA職員は2つのルートで大統領の行為について告発している。1つがCIA法律顧問局を通じた告発だ。 匿名を望むCIA職員は、同僚を通じてコートニー・エルウッドCIA首席弁護士に報告。その後、規則に基づきエルウッド首席弁護士が、ホワイトハウスと司法省安全保障部門の首席弁護士と、大統領の違法行為の疑いについて電話で協議。数日後にはウィリアム・バー司法長官にも共有された。だが、司法省はその告発を実質握り潰した。 本来、司法省は法律に基づき党派を意識せずに判断を下すべきである。だが、大統領に指名された司法長官は党派的となりがちであり、大統領あるいは政権と自らに不都合なことをしないことは想像できる。リチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件当時の司法長官も同様に党派的であった。 1つ目の告発ルートが機能しないことを察知した内部告発者は、直接、情報当局の監察官に告発した。告発を受けた情報当局のマイケル・アトキンソン監察官は国家情報長官(DNI)室に報告。報告を受けたジョセフ・マグワイア国家情報長官代行は、大統領に関わる話であることから、司法省と協議した。司法省はまたしても、何も問題がないとDNIに返答した。 しかし、法律では監察官とDNIの間で合意に至らなかった案件について、監察官は議会にその存在を通知する義務がある。そのため、監察官は下院情報特別委員会に内部告発の存在について通知し、それによってシフ下院情報特別委員長が内部告発書の提出を求め召喚状を出すに至った。 民主党が多数派の議会下院が関与することで、大統領府を牽制する3権分立の抑制と均衡が機能して、内部告発は世に知れ渡ることとなった。アトキンソン監察官はトランプ大統領によって指名された人物だ。もしアトキンソン監察官がトランプ大統領への忠誠心から党派的に内部告発を自らの手で握り潰し議会に通知していなければ、内部告発は今頃、闇に葬られていたであろう』、「司法省はその告発を実質握り潰した」が、「アトキンソン監察官」がルール通りに、「下院情報特別委員会に内部告発の存在について通知」、とは勇気ある行動だ。
・『内部告発制度はアメリカ建国以来の伝統  内部告発者を守る法律を世界で初めて制定したのはアメリカだ。内部告発制度は民主国家のアメリカを象徴するものであり、その成り立ちはアメリカ建国の頃までさかのぼる。 独立戦争の最中、1777年にエセック・ホプキンズ大陸海軍司令官がイギリス人捕虜に対して行った虐待行為について部下が告発し、司令官解任に至った。その後、ホプキンズ元司令官は同氏と同じロードアイランド州出身の部下で内部告発を行った海軍将校サミュエル・ショー氏とリチャード・マーベン氏の2人を解任に追いやり告訴するなど報復。 だが、現在の議会の前身である「大陸会議」が介入して内部告発者を守った。この事件を契機に1778年、大陸会議は内部告発者を保護する法律を全会一致で制定するに至った。ホプキンズ司令官は、兄がロードアイランド州知事を務め、1776年の独立宣言にも署名したスティーブン・ホプキンズであり、政治的影響力のある一族の出身だった。だが、国民を代表する大陸会議は弱者を守ったのだ。) アメリカには建国当初から、このように、職権を乱用し秘密裏に不法行為などを働く権力者を、弱者の内部告発者が暴くという伝統があり、これが民主国家の土台となってきた。アメリカの内部告発制度に詳しいミドルベリー大学のアリソン・スタンガー国際政治経済学教授は内部告発をアメリカ人の「DNAに刻まれている」ものと称している。 だが、内部告発は必ずしもアメリカ政府によって歓迎されてきたわけではない。特に国家安全保障に重要となる情報をどこまで国民に公開すべきかは民主主義を唱える政府にとっては悩みどころである。 エドワード・スノーデン元国家安全保障局(NSA)契約職員は国家機密をメディアに暴露したことで、1917年諜報活動取締法(スパイ活動法)違反などの罪で起訴されている。もし、スノーデン氏が正規ルートで当時のNSA監察官に内部告発していたら、握り潰されていた可能性が高いとみられている。スノーデン氏はいまだにアメリカに戻っていない。内部告発者が英雄とされるか、あるいは反逆者と評されるかは紙一重だ。 しかし、ウクライナ疑惑がスノーデン事件と異なるのはアメリカの安全保障への脅威には関係がなく、2020年の大統領再選を狙ったトランプ大統領の政治的思惑に関わる疑惑である点だ。また、同疑惑では内部告発者は正規ルートで報告している。とはいえ、トランプ大統領はウクライナ疑惑が世に知れ渡った直後、内部告発者について「スパイのようなもの」と非公開会合で主張した』、「ウクライナ疑惑・・・2020年の大統領再選を狙ったトランプ大統領の政治的思惑に関わる疑惑」、どうみても悪質だ。
・『内部告発制度が危機に瀕するおそれも  内部告発者は欧州に知見があり、ホワイトハウスでの勤務経験のあるCIAの男性職員と報道されている。ネット上などではすでに有力候補の名前も浮上しているありさまで、いずれ正体が暴かれるリスクがある。正体が判明すれば、保守系メディアは内部告発者を反トランプの民主党支持者、または「ディープステート」の一味だとして集中攻撃するであろう。内部告発者の過去にまでさかのぼってさまざまな個人情報が明かされる危険性も高い。 10月6日、2人目の内部告発者がいることを1人目の内部告発者を弁護するマーク・ザイード弁護士などが明らかにした。10月10日にはトランプ大統領の顧問弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長の協力者2人が選挙資金法違反の容疑で逮捕された。翌11日、今年5月に解任されたマリー・ヨバノビッチ前駐ウクライナ大使が議会で証言。今週以降も元政府職員を含め議会での証言者が続き、ウクライナ疑惑に関する事実関係が徐々に解明されていくであろう。 内部告発者の情報ついての信憑性は高まっており、トランプ大統領は下院で弾劾されるとの見方が支配的だ。だが、共和党が団結してトランプ大統領が上院で有罪となることはないだろう。 アメリカ人のDNAに刻まれているはずの内部告発制度が今回の大統領弾劾をめぐる議論で「党派対立」、「ディープステート」と位置付けられて、国民の信頼が失われてしまうと、アメリカの民主主義は深い傷を負いかねない。約半世紀前のウォーターゲート事件は、内部告発制度などアメリカの民主国家の仕組みが大幅に見直される契機となった。 アメリカ憲法は「We the People of the United States (われわれ、アメリカ国民は)」から始まり、3権分立でお互いをけん制し合うが、憲法上は国民を代表する議会が大統領や最高裁を上回る権力を保持している。世界最強の大統領に立ち向かう内部告発がどのように扱われるのか、ウクライナ疑惑は再びアメリカの民主主義の将来を占う試金石となるだろう』、当面、今夜から始まる下院での公聴会の審議を見守りたい。

第三に、ジャーナリストのジェームズ・シムズ氏が10月24日付け東洋経済オンラインに掲載した「トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/309911
・『2020年の大統領選はドナルド・トランプ敗退の様相――。 少し前まではトランプの勝算は高かった。今のところは経済指標も好調で、アメリカ国民の不評を買うような海外における戦争もない。ジョージ・W・ブッシュ元大統領は不景気によって、リンドン・ジョンソン元大統領が泥沼化したベトナム戦争によって支持を失ったように、こうした要素は現職のアメリカ大統領の支持率に大きく影響する。 スキャンダルは通常、政権に悪影響を及ぼすが、現時点ではトランプ支持者や無党派層にはあまり影響を及ぼしていない。 ところが、ウクライナをめぐる新たなスキャンダルで状況は一変している。下院議会で弾劾調査が開始され、トランプの周辺人物たちを巻き込み始めた。すでに微妙な支持率に加えて、景気の先行きも不透明感を増しているほか、民主党が格差問題を取り上げ始めていることもトランプにとってはバッドニュースだ。 かつてのリアリティーテレビ番組のスターだったトランプが敗退すれば、同氏はえり抜きの一群に仲間入りする。1952年以降、1期しか務められなかった大統領はジミー・カーターとブッシュの2人だけだ。ロナルド・レーガン元大統領や、バラク・オバマ前大統領などほか6人は、2期務めている』、「ドナルド・トランプ敗退の様相」、とは面白くなってきた。
・『ウクライナ・スキャンダルという痛手  最近で最も大きいスキャンダルはウクライナ絡みで、これこそがトランプ政権最大のスキャンダルとなりそうだ。内部告発者による申し立てが調査の発端となり、トランプ政権が軍事援助を逆手にとって、ウクライナ政府にトランプ氏最大の民主党ライバルである前ジョー・バイデン前副大統領と、その息子による汚職の可能性について調べさせようとしたとして、民主党が非難している。 その申し立てによると、トランプ政権はトランプの電話内容が発覚すれば問題となりうる性質のものであることに気づき、文字起こしを隠蔽させようとした疑いが持たれている。 弾劾に向けて下院は訴追者として告発を行い、決定されれば上院が裁判を行う。2大政党間におけるトランプへの見解はほぼ固まっており、共和党優位の上院が3分の2以上の票でトランプ追放を宣告することは考えにくい。だが、予定される公聴会で証人たちに召喚され、公開されていない詳細事項や関係書類などが公にされれば、大統領選を大きく左右する要素になるだろう。 すでに9月25日に電話の内容が公開された後、何人かの現役および元国務省高官が不利な証言を下院にしたり、問題になった政策を議論するメッセージなど公開。ミック・マルバニー主席補佐官代行がいったんウクライナの軍事支援をする代わりにトランプがウクライナに政治的な調査を依頼したと会見で認めた後、翌日これを撤回するという事態が起きている。 「今回の件は、トランプにとって重大な脅威になるだろう。真摯に対応しないとまずい」と、トランプの側近であり、保守系メディア、ニュースマックスのCEOであるクリス・ラディは話す。「トランプを弾劾すべきという人の数は急激にとは言えないが増え続けており、これは大統領にとってはいい話ではない」 注目すべきは、この1件によってトランプ氏が無所属有権者ならびに、中道共和党有権者の支持を失うかどうかだ。ほかの世論調査同様、モンマス大学の調査でも、弾劾及び解任を支持するアメリカ国民の割合は8月から9月にかけて35%から44%に上昇している。無党派有権者間では30%から41%に増えている』、「ウクライナ・スキャンダル」は確かに驚くほど悪質だ。
・『支持層に広がるトランプへの「不信感」  前回選挙の2016年、トランプ氏はその人気度を上回る得票率を獲得することができた。支持率は38%だったのに対し、一般投票では46%を得票して当選したのだ。 ところが、今年10月に行われたフォックスニュースの有権者調査では、43%がトランプ氏を支持しているものの、民主党のバイデン前副大統領、バーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員らと比較した想定票数ではトランプ氏が下回った。 元軍人のジェラルド・エブセンと彼の妻デビーにとっては、健康保険と気候変動問題が重要な問題だ。「健康保険については、(アメリカの65歳以上向け健康保険)メディケアよりは、オバマケア的な観点のバイデンを支持している。2人にとっては、医療保険が誰に投票するか決める材料になる」と、夫妻で、アイオワ州で8月に開かれたウォーレンのキャンペーンイベントに参加していたデビーは話す。 とはいえ、2人の最終ゴールは「トランプを落とすこと」であり、最終的には民主党候補に票を投じる考えだ。 大統領に就任してからほぼ3年、トランプ氏の支持率が50%を超えたことはまだない。これは近年の大統領としては前代未聞だ。 一方で、同氏の不支持率はつねに50%を上回っている。2018年にはそれを示唆するかのように、共和党が下院議席過半数を失った。トランプ氏の行動と敵対意識を高めるような物言いによって、郊外の有権者、とくに大卒の共和党女性有権者、そして無党派有権者投票者たちに愛想を尽かされたからだ。 景気が後退し、中国との貿易戦争が農業や工業の主要地帯に大きな悪影響を及ぼすようになれば、トランプ支持はさらに弱まるものと思われる。こうした地域からの支持がトランプ氏の最大の強みの1つだからだ。9月のワシントン・ポスト/ABCニュースによる世論調査によると、対象となった有権者の59%が2020年は不景気に陥ると考えており、43%がトランプ氏の経済貿易政策によってその可能性が高まると考えている。 実際、トランプ支持層である農家でもトランプ氏に対する「不信感」は広がっている。筆者が8月に生産金額において全米最大の農業地区であるネブラスカ州の第3下院選挙区を訪れた際にも、農業団体幹部が農民たちは中国との貿易戦争や、トウモロコシと大豆を原料とするエタノールのための再生可能燃料令を緩和するといったトランプ氏の政策の一部に憤っていると話していた。) 「農民たちはとても不満に思っている。先の選挙では農業コミュニティーがトランプ支持に大きく貢献したと彼らは思っているのだから」とこの幹部は言う。「トランプに見捨てられた気分だ、という声も聞かれる」。 カンザス州の元州議会議員(共和党)のウィント・ウィンターも、「トランプが中国との貿易協議で大きな成果を上げるとは最初から思っていなかったが、一連の関税引き上げやツイートなどは茶番でしかない」と話す。「トランプはおそらく大統領選直前に何らかの手打ちをし、それを自分の成果として喧伝するだろう」。 ウィンターは、2018年のカンザス州知事選の際には、トランプが支持した右派候補ではなく、民主党候補を応援にまわっており、次期大統領選でも民主党候補に投票するとしている。ただしウォーレンやサンダースといった急進派を応援するのは心情的に難しい、ともしている』、「民主党候補」が急進派のままでは、共和党支持者の票は確かに期待できないだろう。
・『勢いを増す「格差是正」を訴える声  対して、ネブラスカ州第3下院選挙区の共和党エイドリアン・スミス議員は、農民たちがトランプ大統領を「裏切る」とは見ていない。「トランプ以外の人で、少しでもマシになるとはどうしても考えにくいんでね」と、同議員は笑いながら語る。 一方、「大企業や一握りの世界的エリートがブルーカラーの仕事をたたき潰してしまったのであり、中産階級がトランプを当選に導いた」というトランプによる大衆受けするメッセージはすでに浸透しており、これに伴って民主党ではウォーレン人気が高まってきている。同氏のメッセージは、労働者の経済的困窮を改善するには構造変革が必要だというもの。一部の世論調査では、ウォーレンがバイデン及びサンダースを抜いている。 「富の99%を上位1%の人間が握っているこの現状には大きな問題がある。アメリカはそのような国として成り立っているのではない」と、特殊教育の教師であるジェシカ・マッケナ氏は言う。同氏は8月、幼い娘とともにアイオワ州でのウォーレン氏の選挙運動に参加していた。 こうした中、トランプ氏が大衆受けする経済不満を再び振りかざすかどうかは定かではない。前回同氏に投票した国民は、トランプ氏の見え透いた口先の約束を見透かしているかもしれない。例えば、同氏のPRポイントであった1.5兆ドルの減税は、結局主として企業や上位1%の富裕層をさらに優遇するものだったからだ。) 6月には、右派のアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所が「共和党員たちは、この世の中における自分たちの立ち位置をよく考える必要がある。ますます多くのアメリカ国民が、格差を是正することに関して、国がもっと大きな役割を担う必要があると考えるようになっている」と、書いている。 同研究所が1月に行った世論調査では、回答者の55%が、貧困は各個人の努力というよりも構造的問題によって形成されていると考えており、この数字は2001年における44%から上昇している』、右派の研究所でも「格差を是正」への国民の要望が強まっているとの世論調査結果は重い。
・『共和党内での支持率は依然高い  とはいえ、トランプは共和党内ではいまだに常時90%に上る支持率を維持しており、2016年がまさにそうだったように、一般投票では負けても、選挙人団のほうは同氏に優勢に動く可能性がある。共和党の政治家たちはトランプ氏を裏切ることを恐れており、一生懸命声援を送っている。 例えば、トランプが、ソマリアから帰化してアメリカ国民となった議員をはじめとする4人の少数派民族出身の女性議員について、「『国へ帰って』自分の破綻した国をどうにかしろ」と発言し、彼女たちがトランプを非難したときも、ほとんどの共和党員がそうした人種差別的発言に対してトランプを非難することはなかった。 この件の数週間後、カンザス州代表の第2下院選挙区のスティーブ・ワトキンス議員は、トランプのこれまでの発言の数々について意見を求められ、20人強の選挙人の出席したタウンホール後にこう答えている。「彼が人種差別をする人だとは思わない」。 選挙まで余すところあと1年強となったが、多くのことが起こり、民主党が2016年同様にあとひと息のところで負ける可能性もある。しかし今明らかなのは、トランプの権力掌握が日に日に弱まっている様相だということだ』、いずれにしろ、景気後退はこれから明確になり、株式相場も下落するとすれば、トランプ再選は遠のくだろう。ただし、民主党が穏健派で一本化できなければ、泥沼化する可能性も残されているようだ。
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