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医療問題(その22)(「名医という言葉には抵抗を感じる」という医師が追求する 真の神業とは、国保料引き上げの真犯人 「ムダな医療費」を貪る人々の正体、徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”) [生活]

医療問題については、9月10日に取上げた。今日は、(その22)(「名医という言葉には抵抗を感じる」という医師が追求する 真の神業とは、国保料引き上げの真犯人 「ムダな医療費」を貪る人々の正体、徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”)である。

先ずは、医療ジャーナリストの木原洋美氏が9月29日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「名医という言葉には抵抗を感じる」という医師が追求する、真の神業とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215721
・『名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第17回。画期的な術式や医療機器、医療材料などの開発者として高く、現在も甲南病院(滋賀県)で消化器外科医として診療にあたっている谷徹医師(滋賀医科大学革新的医療機器・システム研究開発講座特任教授)を紹介する』、興味深そうだ。
・『内臓をじゃぶじゃぶ洗う手術も 敗血症を治療する血液浄化器も  「私、失敗しないので」の名セリフで人気を博した医療系ドラマ『ドクターX』(テレビ朝日)。主人公が毎度のように駆使する一見「ありえない」手術法も話題になったが、なかでも視聴者の度肝を抜いたのが、シーズン2で登場した、がん切除手術後に内蔵をお湯でじゃぶじゃぶと洗浄してしまう 「腹腔内温熱化学療法(HIPEC)」ではないだろうか。 驚くなかれ、この術式は、現滋賀医科大学 革新的医療機器・システム研究開発講座特任教授の谷徹先生が外科学講座現役の時に開発・実践したもので、実在している。 もちろん、内臓を洗うのには理由がある』、「がん切除手術後に内蔵をお湯でじゃぶじゃぶと洗浄してしまう」、家族が意味も分からずに見たら卒倒してしまいそうだ。
・『例えば進行性胃がんの場合、手術後の再発率は高く、ステージIIIBで患部を全部摘出したとしても、再発による5年生存率は31%。術前や術中に、がん細胞が腹膜内に散らばってしまうことが、再発の一番の原因と考えられている。 そこで先生たちは、手術でがんを取り去った後、生理食塩水に複数の抗がん剤を加えて加熱し、腹膜内を30分にわたり洗浄することにした。 「肉眼で確認できるがんを全部摘出した後、お湯の温度を抗がん剤の効果が最も高まる42~43度に保持しながら、お腹全体を洗います。そして、3種類の抗がん剤を入れてさらに洗います。この抗がん剤は、点滴などの濃度の70~80倍の濃さです。こうすることにより、腹膜内に拡散していた目に見えないがん細胞が死滅し、ステージIIIBの5年生存率は77.9%と生存率が飛躍的に高まりました。胃がん(IIIAまで)切除後の5年生存率は100%です」(谷先生) ちなみにその後、手術中にガン細胞が飛散する元凶としてリンパ管断端が特定され、飛散のある場合に再発率が高くなることも確認されたが、谷先生は、後で述べるマイクロ波手術器によってリンパ漏も抑制できるようにしてしまった』、「進行性胃がん」「ステージIIIB」の手術で、「再発による5年生存率は31%」から「77.9%」へ飛躍的に高まったとは驚くべき成果だ。
・『消化器外科医である谷先生は、現在も甲南病院(滋賀県)で診療にあたっているが、その名声はむしろ、画期的な術式や医療機器、医療材料などの開発者として高い。中でも、世界的に知られているのが東レ・メディカル株式会社との共同研究によって生み出した血液浄化器(製品名「トレミキシン」)だ。生産・販売開始は1994年で、なんと20年以上も前になる。 「当初は5年で競争相手があらわれると思っていましたが、意外なことに、未だ登場していません。欧米でも広く普及しており、本製品に関する論文は1000点を超えています」 敗血症は、大ケガや手術の後に起こりやすい病気で、医学が発達した今日でも死亡率は約30%と非常に高い。薬での治療が主だが特効薬はなく、発症は相変わらずの状況にある。感染症などで体に病原体(細菌など)が侵入することをきっかけに発症するのだが、その際、体内では菌の細胞壁の成分である「エンドトキシン」と呼ばれる毒素が発生し、悪さをする。トレミキシンは、このエンドトキシンなどの毒素を除去する血液浄化器で、これまでに、十数万人もの重症敗血症患者の治療に使われてきた。 また昨年には、血中エンドトキシン値に基づく対象患者において二重盲検法による臨床治験サブ解析にて有効性が確認され、今年から米国FDAの認可に向け、追加の臨床治験を実施中である』、「トレミキシン・・・十数万人もの重症敗血症患者の治療に使われてきた」、というのも画期的だ。
・『外科手術に革命を起こす 血の出ないメスを開発  谷先生の直近の功績は、独自に開発を重ね、医療機器メーカーの日機装と共に製品化した、電子レンジや携帯電話と同じマイクロ波を利用して切離と同時に止血もできる血の出ないメス「アクロサージ」だ。マイクロ波を用いる治療用製品は、1981年に針型で実用化されているが、ハサミ型と鑷子(ピンセット)型は世界初。 アクロサージがどれくらい役に立つのか、一般人には分かりにくいので、少し解説したい。 外科手術はある意味、出血との戦いだ。出血が少ないということは、即ち肉体に与えるダメージも小さいということにつながるし、大量に出血した場合には、いかに迅速かつ手際よく止血できるかが手術の成功、ひいては患者の生命を左右する。 電気メスは、そうした医療現場のニーズに応えて開発され、今やそれなしには外科手術が成り立たないほど、重要な医療機器になっている。 ただし従来の電気メスには、改良すべき点が多々あった。高周波や超音波を用いて、切離する箇所の組織表面を加熱することでその機能を果たすため、加温のON-OFF スピードは遅く、組織は焼け焦げ易く、周辺にも熱損傷を与えてしまう。電気メス使用中のオペ室には、肉の焦げる臭いと煙や湯気が漂い、切離部分にできた焦げは、剥がれる際に再出血の原因にもなる。煙やミストはしばしば視野を妨げ、手術の手を止めざるを得ない、などだ。 アクロサージは、電子レンジと同じ2.45GHz帯のマイクロ波を使い、生体組織を凝固することで切離と止血を同時に行う。生体組織の水分子にマイクロ波が直接作用し、水分子を励起して発熱するので、生体組織の外側だけでなく内側からも加熱される点で、高周波や超音波とは大きく異なる。加熱部分の温度は、高くても100℃を少し超える程度。生体を焦がす心配もなければ、煙も発生しないのだ。 谷先生は、こうしたマイクロ波の特性に独自の技術を掛け合わせることで、日本の消化器外科医が世界に誇るリンパ節廓清術をエネルギー器具にて実現するべく、刃の形をハサミ状とし、リンパ管の封止も完全にできる器具として、従来品が持つ数々の弱点解消に成功した。 「その昔、輸血の登場が外科手術に革命を起こしたように、アクロサージは、輸血不要の手術を可能にするでしょう。手術が身体に及ぼすダメージを最小限にすることで、身体の回復が早くなり、入院日数も短くなります。リンパ節廓清時には、リンパ網のシーリングができるため、術中がん細胞飛散を抑制し、予後改善に寄与できる可能性があります。ほかにもメリットは枚挙にいとまがありません。 電子レンジが台所に革命起こしたように、アクロサージは手術に革命を起こすでしょう」』、「手術に革命を起こす」「アクロサージ」は2017年に発売されたようだ。世界的な評価も知りたいところだ。
・『患者が元気で長生きすることが真に神業といえる手術の証  さて、これほど凄い功績をあげてきたにもかかわらず、谷先生は「アイデアマンと呼ばれるのは好きじゃない」と語る。 「アイデアって、何か天から、努力もなしに閃きが降ってくるような印象がありませんか。そうではないんです。常に、患者さんへの低侵襲と医療現場の労働環境を改善するには何が必要かを考え続けているからこそ、アイデアにもたどり着けるし、問題を解決するヒントに気づくこともできる。ぽっと思いつくわけじゃない、問題意識の継続性が重要なんです」 追求しているのは「患者さんのためになること」。加えて、大学で教鞭をとっていた頃には「できない理由を探すな、できることからやれ。」と教えていた。 「(滋賀医科大学)は新設医大ですから、従来の領域では、何十年も先行している大学に追いつくのは至難の業です。私たちが10年やったら、向こうも10年。だから、自分たちの特徴ある研究に取り組み、独自の武器を持たなければいけない」 谷先生は金沢大学医学部を76年に卒業し、東京の虎の門病院外科に4年間勤務したのち滋賀医科大学第一外科に入局。85年に同大学医学研究科外科学専攻博士課程を修了したのだが、まだ助手にもなっていなかった大学院生時代に着手し、10年近い歳月をかけて開発したのがトレミキシンだ。 一方アクロサージの開発にも10年余りの歳月をかけている。発端は放射線被曝のないMRI装置を術中モニターとして用いて、手術器具の位置をモニタリングしながら手術ができる「MR画像誘導下手術システム」の開発という壮大なプランだった。 「このシステムなら身体の深部を3次元で、リアルタイムで見ながら手術ができます。血管と神経の区別もできますし、温度も組織の代謝も画像化して表示される。同様の研究に取り組んでいる有名大学はたくさんありますが、リアルタイムに行えるシステムは我々が世界で唯一で、すでに動物を使った模擬手術実験に成功しています」 アクロサージは、この手術システムの開発過程での副産物だ。MR画像強磁場下では、高周波も超音波も使えないため、MRと干渉しないマイクロ波の手術器具がどうしても必要だった。 「しかしながら、『MR画像誘導下手術システム』を世に出すには、もう少し時間がかかります。でもアクロサージなら、マイクロ波を用いた一般の手術器具として世に出せば、多くの現場で早く使っていただけると考え、先に事業化しました」』、「常に、患者さんへの低侵襲と医療現場の労働環境を改善するには何が必要かを考え続けているからこそ、アイデアにもたどり着けるし、問題を解決するヒントに気づくこともできる。ぽっと思いつくわけじゃない、問題意識の継続性が重要なんです」、地に足がついた開発姿勢だ。「アクロサージ」は「MR画像誘導下手術システム」の「開発過程での副産物」、とはまだ開発中の「MR画像誘導下手術システム」もきっと凄いのだろう。
・『ところで、冒頭で紹介した「腹腔内温熱化学療法(HIPEC)」は、2016年に先進医療として認めてくれるよう国に申請したが、却下されてしまった。過去の治療成績に対するネガティブな意見があり、賛同が得られなかったからだが、「お湯の温度管理をしっかりやっていなかったのでは」と谷先生は悔しがっている。 MR画像誘導下手術システムにも、やるせないエピソードがある。 「十数年前に東京の新聞社が取材に来てくれましたが、『山の中の大学がこんな凄いことやるなんて腰が抜けた』と言ってくれました。でも掲載はしてもらえませんでした。『人口100万の滋賀県のニュースより、1000万の東京のニュースの方が読んでもらえるから』だそうです」 日本は狭い。どこの大学にいようが、谷先生が消化器外科医として常に患者のためを思い、手術法や医療機器を開発し、膨大な数の生命を救ってきた名医であることは間違いない。 「名医という言葉には抵抗があります。例えば、小説やドラマでは、早さと手際の良さが名医の条件のようになっていますが、少なくとも消化器外科の悪性腫瘍手術で一番大切なのは、なすべきことを丁寧に、正確に行うことです。なぜなら、手術の本当の結果が分るのは5年後、10年後で、手術直後ではありません。当然術後も患者さんが元気でいられ、さらに長く生きていただくことが、真の意味での神業であり、『失敗ではない手術』だからです」』、「HIPEC」が「先進医療として認め」られなかったのは残念だ。東大など医学会主流と距離があったことが影響したのかも知れない。「MR画像誘導下手術システム」も取材されながら、「掲載はしてもらえませんでした」のも残念だが、今回、ダイヤモンド・オンライン記事になったのは何よりだ。それにしても、凄い医師がいたものだ。

次に、フリーランス・ライターのみわよしこ氏が11月8日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「国保料引き上げの真犯人、「ムダな医療費」を貪る人々の正体」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/219866
・『国民健康保険料の引き上げは本当に「仕方ない」のか  2019年10月30日、厚労省の社保審・医療保険部会は、2020年、国民健康保険料の課税限度額を3万円引き上げる方針を示した。国民健康保険料は、ある程度は所得に比例する仕組みとなっているが、「年間所得2000万円の世帯は、年間所得400万円の世帯の5倍」となるわけではなく、課税限度額という“天井”がある。 この“天井”を引き上げ、「高額所得者には所得に見合う国民健康保険料を払っていただきましょう」というのが、現在検討されている改定の趣旨だ。同時に、中間所得層の負担を軽減する措置も検討されている。 しかし、10月1日に消費税率が8%から10%へと引き上げられてから、1ヵ月も経っていない。正直なところ、「また?」と言いたくなるが、高齢化が進行する日本で、増大する医療費が国家財政の大きな負担になり続けているのは事実である。国民健康保険が破綻すると、必要なときに医療を受けることはできなくなるかもしれない。日本の国民皆保険制度と良好な医療アクセスは、世界に誇るべき日本社会の宝物、社会の健康を底支えする重要な土台だ。 現在は「社保完」の会社員も、退職後はいつか、国民健康保険または後期高齢者医療のお世話になる。国民健康保険を維持するために必要な負担なら、「痛いけれど、仕方ない」と受け入れるしかないのかもしれない。 しかし医療費の内訳や削減の仕方には、数多くの疑問を感じている。それは、「医療費が無料だからといって、ムダな医療を欲しがる生活保護の人々」という都市伝説にも通じている』、「医療費の内訳や削減の仕方には、数多くの疑問を感じている」、同感だ。具体的に知りたいところだ。
・『多くの精神科入院患者は誰のために必要なのか  まず気になるのは、精神医療の医療費だ。 精神科病院の入院患者数は、世界において日本の「悪名が高い」点の1つだ。2017年度、日本には約28万人の精神科入院患者がいた。この人数は、全世界の精神科入院患者の約2割にあたる。しかも、平均入院日数は2014年に281日で、世界ダントツの長さであった。 日本に次いで平均入院日数が長いのは韓国だが、それでも同年に125日だった。他の先進国には50日を超える国はない。公費による医療が比較的充実している国々では、平均入院日数はやや長めになる傾向があるが、それでも30~45日程度にとどまる。 1970年代に法律で精神科入院を原則禁止して「どうしても」という場合に厳しく制限したイタリアや、米国のように高額化した入院医療費が退院を促進してきた国では、平均入院日数は10~20日前後となる。これらの国々では、家庭や地域から長期にわたって離れること自体が社会復帰の阻害要因になるということが、広く認識されている。 「日本人は精神疾患にかかりやすく重症化しやすい」という事実はない。長年にわたって、入院を短期化する努力が続けられており、精神医療そのものも進歩している。1990年ごろの平均入院日数が約500日だったことを考えると、2014年に281日まで短縮されていたことは、むしろ大きな進歩であろう。 しかし2014年、約18.5万人が1年以上にわたって入院していた。このうち約10万人は、5年以上の入院であった。長期にわたる入院は、それだけで大きな医療費負担となる。1年間の精神科入院に必要な医療費は、少なくとも500万円~600万円程度と見積もられる。すると、10万人分の入院医療費だけで、5000~6000億円となる。 この背景として、日本の精神科病院の約9割が私立精神科病院であるという事実は、どうしても考えざるを得ないだろう。厚労省は国内外からの長年の要請を受け、精神科入院患者の退院促進と地域移行に取り組んではいるのだが、「重度かつ慢性」ならば地域移行は考慮しなくても良いこととしている。 そして厚労省は、「重度かつ慢性」の入院患者数を見積もり、それに合わせた退院目標を設定し、各都道府県に実行を求めている。語弊を恐れずに言えば、これは「一定数の入院患者は確保し続ける」ということだ。認知症の高齢者を「重度かつ慢性」のカテゴリに含めれば、当面「重度かつ慢性」の入院患者数が減ることはない』、精神科の「平均入院日数」が短くなったとはいえ、「281日」と他の先進国の「30~45日程度」と比べ、飛躍的に長いのには改めて驚かされた。「家庭や地域から長期にわたって離れること自体が社会復帰の阻害要因になる」、のであれば、再考が必要だろう。「約18.5万人が1年以上にわたって入院」、入院医療費だけで、9250~11100億円、というのはベラボウな大きさだ。「精神科病院の約9割が私立精神科病院」で、「厚労省は、「重度かつ慢性」の入院患者数を見積もり、それに合わせた退院目標を設定し、各都道府県に実行を求めている。語弊を恐れずに言えば、これは「一定数の入院患者は確保し続ける」ということだ」、やる気のない厚労省に対し、財務省はもっと切り込むべきだろう。
・『交通が不便で偏見の強い地域に精神科病床が突出して多い現実  厚労省が毎年取りまとめている「医療費の地域差分析」の2016年版には、「地域差への寄与を疾病分類別に見ると、入院では『V 精神及び行動の障害』の寄与度が大」という記述がある。精神科入院患者数の多さは、公共の医療費を圧迫している。このことは、誰の目にも明らかだ。 精神科病棟が多い地域で、入院医療費が増大するのは当然だ。そして、人口あたり精神科病床数を県別に見ていくと、四国や九州などの交通が不便で偏見の強い地域が突出している。責任は、そのような地域に精神科病院を押し付けてきた他地域や政策にあるはずだが、たとえば「東京都が責任を持つから、栃木県や山梨県は精神科病床を減らしてください」という方向への動きは聞いたことがない。 そうこうする間にも、国民健康保険料の地域格差は拡大していく。地域の高齢化が進み、雇用が劣化し、納税者と納税額が減少すると、国民健康保険料は引き上げられる。そうしないと、医療ニーズに対応できないからだ。しかし、そのことが意味するのは、減少していく現役世代が、減少していく自らの所得から、さらに重い負担を強いられるということだ。公的健康保険の意義と必要性がわかっていても、「仕方ない」と納得できるとは限らない』、「責任は、そのような地域に精神科病院を押し付けてきた他地域や政策(正しくは:地域政策?)にあるはずだが」、意味不明だ。むしろ、国の精神医療政策の貧しさにあるのではなかろうか。
・『社会にコストを強いる人に「死んで」と望むことの是非  担い手や負担能力が増えない以上は、医療ニーズを減らす必要があるかもしれない。9月にも、花粉症薬が保険適用外になる可能性が関心を集めたばかりだ。精神科以外の入院医療に関しては、「極力、短期で」という方向での制度改革が進められてきている。 長年にわたって高額の医療費を必要とする疾患の患者に対しては、「治療しない」という方向性も検討されている。2018年、腎臓病で人工透析の開始を希望していた40代女性が、入院していた公立病院で希望に応じられず、死亡した。女性はいったん、透析治療を希望しないと述べたのだが、その後、やはり透析を受けて生き延びたいと望んだ。 しかし、病院は応じなかった。今年10月、遺族が病院を提訴したのだが、当事者らの主張も報道も、病院の判断を是とするか非とするかによって、二分された形となっている。日本透析医学会は、病院の判断を妥当としている。 筆者は、「社会コストが必要な状態で生き続け、メリットをもたらす見込みが薄いのなら、死んでください」という論理に賛成する気はない。その論理が言葉通りに実行されていたら、たとえば参議院議員の舩後靖彦氏と木村英子氏(れいわ新選組)は、とっくにこの世にいなくなっていたかもしれない。2人はALSや脳性麻痺の当事者として、日本社会が必要としている変革を実現することを期待され、立法府のプレーヤーとして活躍している。それが可能になったのは、2人が生き延びてきたからだ。 しかし、「命は大切」「かけがえのない人生」という言葉を、言葉通りに実行するのなら、実行するための医療経済の維持について考えることも、避けて通れないはずだ。そして日本の病院の経営は、財務省の方針に沿って、厚労省がベネフィットとコストの「アメとムチ」で統制している。統制が「医療費がかさみそうな場合、早く死なせれば評価して利益をバックする」という方向に向かうと、本人が「生きたい」「生きよう」と思っていても、生きられなくなってしまうかもしれない』、誠に難しい問題で、私も回答は持ち合わせない。
・『冷静に考えたい医療制度改革の「誰得」  今回の国民健康保険料の上限額引き上げは、仕方なく認めざるを得ないものかもしれない。しかし、高度成長期の恩恵を受けて長生きできた高齢者に怒りをぶつける前に、怒りのターゲットを考え直す必要はないだろうか。 2013年以後、水道や種子など日本の人々の生存にとっての重要な基盤を、日本と日本の人々のために保護するための規制が、次々に撤廃された。そして、必ずしも日本のために活動しているわけではない外国資本が参入している。地方行政や条例レベルでの抵抗は続いているが、国の政策に自治体が対抗することは容易ではない。 そして日本国内では、「いくつかの企業に日本の人々のお金を渡す」と見るのが妥当と言える動きが続く。2020年度から開始される予定の「大学入試共通新テスト」は、幸いにも英語民間試験の導入が見送られ、大手業者への文科省からの「天下り」などの背景が明らかにされつつある。少子化対策が必要な日本で、子育て世帯の教育資金が業者に移動させられることは、それだけで弊害となるはずだ。 2018年から今年にかけては、「“貧困ビジネス”に対する経済的保護ですか」と言いたくなるような無料定額宿泊所政策が検討され、現実になりつつある。そのことが意味するのは、「生活保護費が貧困ビジネス業者の利益になる」ということだ。 そしてもともと、精神医療の医療費の多くは、私立精神科病院の収入となってきた。そこには、国民健康保険料も生活保護費も含まれている。生活保護費のうち精神科入院費は、医療以外の日用品費などの費用を合わせ、国と自治体の負担分を合計すると、2500億円~3000億円程度の金額と見積もられる。1%の桁で四捨五入すれば、生活保護費総額の10%に達する。生活保護の医療費を本気で削減したいのなら、最初にすべきことは、「精神科病院からの、聖域なき退院促進」だろう。それは、国民健康保険料の負担にも、大いに関係している』、この部分はその通りだ。

第三に、10月16日付けNHKクローズアップ現代+「徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4342/
・『医療現場のスタッフ、患者の家族など関係者がスタジオで徹底討論!患者の体をベッドや車いすに縛る“身体拘束”。番組では先月、一般病院で広がる実態とその深刻な影響、そして、削減へ向けた現場の取り組みについて放送した。すると、放送直後から「現場の厳しさを分かっていない」「今後も拘束はなくせない」など、現場で働く医療関係者を中心に多くの批判が。拘束は本当に減らせないのか?声を寄せてくれた現場の人たち、患者の家族、専門家など総勢13名をスタジオに招いて議論、解決策の糸口を探る。 記事【身体拘束は減らせない?】① 医療の担い手は“孤立”している!? 出演者 宮田裕章さん (慶應義塾大学 教授) 小川朝生さん (国立がん研究センター東病院 医師) 田中志子さん (内田病院 理事長 医師) 小池京子さん (内田病院 看護師) 中西悦子さん (金沢大学附属病院 副看護部長) 小川聡子さん (調布東山病院 理事長 医師) 福地洋子さん (調布東山病院 看護部長) 番組に意見を寄せてくれた皆さん(看護師・介護福祉士など) 母親が身体拘束された息子さん 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー)』、見ごたえがある番組だったので紹介したい。
・『徹底討論 “身体拘束”  武田:一般病院での身体拘束は、今よりも減らすことができるのではないか。私たちの問題提起に対して多くの方から、現場を知らない、理想論だという批判の声がたくさん寄せられました。 高山:放送の直後からインターネット、SNSで本当に大きな反響を頂戴しまして、番組では改めて皆さんからご意見を募集しました。わずか3日間で200を超えるご意見が届いたんですが、その中の一部をご紹介していきたいと思います。 ある男性です。「1人で15~30人をみなければならない中、身体拘束を減らせというのは現実が見えていないとしか言いようがない」。 東京都にお住まいの40代の看護師の方です。「安静にさせるためには身体拘束をするしかないんです。暴力を振るわれても我慢。看護師も守らないといけません」。 そして、愛知県40代、公立病院に勤務されている方です。「誰もがインシデント、つまり事故につながるようなことは起こしたくないんです。拘束を解除して事故が起こったら後悔します。だから解除しない。できないんだよ!」。 武田:そこで私たちは、もう一度現場の声にしっかり耳を傾けてみることにしました。スタジオには、番組にこういった意見を寄せてくださった方にお越しいただいています。ありがとうございます。 長期入院の患者さんを主に担当しているという看護師のささきさん。やっぱり減らせないですか? ささきさん(仮名)(慢性期病院 看護師):そうですね。高齢の患者さんが増えてきてる中、事故を起こさないためにはやはり身体拘束はまぬがれないかなと思っています。 武田:いちばん減らせない理由はどういうことなんですか? ささきさん:看護師は患者さんを24時間みているのと、あと多重業務といいまして、ほかにも業務に追われていまして、ほかの業務をしながら、ほかの重症な患者さんをみながら、危険のある患者さんを集中してみるということは難しいので、やはり身体拘束という手段を使わざるを得ないことが多いです。 武田: そしてもうひと方、救急の患者も受け入れている病院の看護師のさとうさん。 さとうさん(仮名)(二次救急指定病院 看護師):認知症を持っている方もすごく多くて、現場でも「危ないから立っちゃだめだよ」と言った言葉が通じないことが大半なので、縛らざるを得ないというか、転倒・転落、また新しい傷を作らないために、安全のためにっていうことで、命を守るためにということで、やりたくはないですけどやらざるを得ない現状はあると思います。 武田:やりたくはないんですか? さとうさん:やりたくないですね、本当は。やりたくないっていう思いでやってますけど、だから「ごめんね」って言いながら、いつも「ごめんね」って言いながら(拘束具を)つけますね。 まみさん(仮名)(准看護師、学生):私は准看護師なんですけども、やっぱり身体拘束を選ばないと患者さんの命を守れないという状況が多くありました。 武田:命を守れないというのは、具体的にはどういうことなんでしょうか? まみさん:点滴を抜いてしまうとか。いろんなものが体についてるんですけど、胃ろうとかチューブとかついてるんですけど、それを自己抜去してしまうと生命に関わってしまったり、あと、骨折の恐れもありますし、点滴を見えないような位置に置いたりとか、看護師はみんな試行錯誤していろんな病院でやっているんですけども、やっぱりそれが防ぎようがないときがどうしてもあるので身体拘束を選ばざるをえない状況が多くありました。(※自己抜去(ばっきょ)=点滴やチューブなどを自分で抜き取ること)』、医療現場には「身体拘束」がやむを得ないという意見が予想通り多いようだ。
・『身体拘束 何が問題?  高山:すべての身体拘束が禁じられているというわけではありません。身体拘束は厚生労働省が作った手引きによると、こういったケースで認められています。 命が危険にさらされる可能性が著しく高い「切迫性」、ほかに替わる方法がない「非代替性」、そして、身体拘束が一時的なものである「一時性」。これらの3つの要件をすべて満たす「緊急やむをえない場合」は認められています。 武田:身体拘束が行われることで、さまざまな弊害も起きているということも私たちはお伝えしました。 <9月11日放送より>前回の番組に登場した、70代の女性と、その息子です。もともと自立していた母親が身体拘束され、心や体に大きな悪影響を受けたといいます。4年前、持病で入院した母親は、「治療と安全の確保のため」という理由で、両手両足を拘束されていたといいます。およそ2ヶ月にわたる拘束の後の母親の姿です。コミュニケーションはほとんどとれず、余命宣告されるほど衰弱していたといいます。足の筋肉が落ち、歩くこともできなくなっていました。転院した先の病院では、身体拘束せず、薬を減らしてリハビリに力を入れました。すると、普通に会話ができるほど回復しました。 (ディレクター「(100マス計算を)どうしてやられているんですか?」) 母親「どうして?頭がボケないように。」 武田:一時は、余命3か月と宣告もされたということですよね? 母親が身体拘束された息子さん:そのときには車いすにぐるぐる巻きの状態にされました。余命3か月ぐらいですねと言われたことはありました。 武田:拘束が患者さんの安全のためというお話もあったと思いますが、患者さんの状態を逆に悪化させてしまうという現実もあるということが浮かび上がってきてるんですけれども。 ささきさん:確かに身体拘束の期間とか時間が長くなると、歩けていた患者さんが筋力が落ちて歩けなくなったりですとか、動きが悪くなったりとか、そういうことはあるというのは実感としてはあります。 武田:状態が悪くなるかもしれない。だけど、いま目の前にある危険にも対処しなきゃいけない? まみさん:歩けなくなったりとかは、よく目にしていた光景なんですけども、やっぱり看護師とか現場にいる人たちはジレンマだと思うんです。それでも縛らなきゃいけないという現実を知っているので、それに替わるものがないというか、やっぱり、人手不足とか。人がずっとみていられない。 ささきさん:時間とか労力を考えたときに、効率というか、いちばんすぐに解決できる手段をみんな選んでしまうんではないかなと思います』、「2ヶ月にわたる拘束・・・余命宣告されるほど衰弱」、ここまでマイナス面があるというのに、改めて驚かされた。
・『現場の訴え① 深刻な人手不足  武田:皆さんから多く出ているご意見の1つに、人手の問題というのがあると思います。 高山:いただいた声の中にも「休憩なしで働かざるをえない」という現場からの声や、みている患者さんにもよると思うんですけど「計り知れない力で暴力を震われることもあります。こうなってくると、1人では夜とても対応できないんです。特に夜間は患者さんへの対応も手薄になってしまう」「看護師、患者さんを守るためなんだ」などがありました。 さとうさん:ひと晩で2人体制で、多いときは40~45人くらいを持ちますね。 武田:2人で? さとうさん:2人でです。1人が仮眠に入ってる時間はフロアに1人です。救急外来の対応もします。 武田:その間に入院患者さんに何かあったらどうなるんですか? さとうさん:ないように、縛ってるんですよね、結局は。お薬使って眠ってもらっているとか。そうじゃないと救急外来に対応ができないし。 ささきさん:患者さんが歩いて転んだりとかした場合、看護師の責任を問われることが多くて。みているのは看護師なので、直接的な事故報告書を書くのも看護師ですし、「もっとこうできなかったのか」とか、「こうすることができたんじゃないか」とか、後々責められたりするのも看護師ですし。 まみさん:私も夜間、顔を殴られることとかしょっちゅうありました。 武田:どうして殴られちゃうんですか。 まみさん:患者さんのご家族とか、ほかの職種の人は夜いないから分からないと思うんですけど、人って変わるんですよね。夜になったら、本当に。泣き叫んだり、すごく暴れたりとかして。そのときに、やっぱり身体拘束をしなければ転んでしまったりとか、看護師の責任がすぐ問われてしまう。下手をすれば訴訟問題になったりとか。 武田:人手もないし、責任の多くも現場の看護師に負わせられてしまうという現状があるわけですけども。 小川聡子さん(調布東山病院 理事長 医師):もう胸が詰まってくる。私たちも6年ぐらい前、取り組みを始めたときは、本当に同じ状況でした。働く看護師さんたちが本当にぼろぼろで、すばらしい仕事をしているのにやりがいを失っている。やりがいを失ってる看護師さんたちがいちばんそばで患者さんをみている。 田中志子さん(内田病院 理事長 医師):私たちの病院も、初めから身体拘束がなかったわけではなくて、かつてあった身体拘束を、いろんな工夫をしてみんなで減らしてきたというような歴史があります。49人に対して、夜間、看護師さんが2名と看護師さんをサポートするケアの方が1人でみています。だから、決して人数が多いわけではないんですけれども、患者さんが日中活動して、落ち着いて夜休むとか、BPSDが起こらないような、せん妄を起こさないような関わりを、医師も含めてすべての職種で作り上げていくということで、何とか穏やかな夜を積み重ねているという感じです。(※BPSD(行動心理症状)=暴言・暴行などの認知症の症状)(※せん妄=一時的な意識レベルの低下などを伴う症状) 高山:医療現場がいかに追いつめられているのかを物語るデータがあります。医療系の労働組合が全国3万人以上の看護師に聞いた調査の結果なんですが、7割以上が「仕事を辞めたいと思ったことがある」と回答してるんです。 高山:その理由についても尋ねています。およそ半数が「人手不足で仕事がきつい」。続いて「賃金が安い」「休暇が取れない」「夜勤がつらい」「思うような看護ができない」「医療事故が不安である」。労働環境も大きな負担になっていることがうかがえるんです。 宮田裕章さん(慶應義塾大学 教授):病棟が努力していないのかと言えば、そんなこと全くなくて、本当に医療現場はギリギリの中で、患者さんのために最善を尽くすという中でやっている。ただ、高齢者がどんどん増えていると。80年代は65歳以上の入院患者さんは3割。これが2000年代に6割になって、いま7割以上になっている。さらにそれだけではなくて、医療の進歩で、これはすばらしいことなんですが、体への負担が少ない手術や治療を行うことができるようになって、いま高齢で入院する患者さんが急速に増えている。そういった現状が大きく変わる中で、これは現場の1人1人、あるいは病院だけではなくて、状況が変わったということを国が認識した上で、対策を行っていくことも必要なのかなと』、高齢化の急速な進展で、対策は待ったなしだ。
・『現場の訴え② 難しい家族との関係  武田:もう1つ寄せられた意見で多かったのは、家族との関わりですよね。 高山:結構来ています。「けがをさせるな、転ばせるな」「うば捨て山のように施設や病院を利用する家族もいらっしゃる」ということです。 ささきさん:私がとても感じているのは、いま日本の病院とか医療現場とかそうなんですけど、ご家族の協力を得られていないというか。例えば、家に帰りたいといって寝ない患者さん、帰宅願望というんですけど。帰りたいという患者さんに、ご家族が付き添ってくれれば、まだ落ち着いたりとかするんですけれど。協力をお願いしても、仕事があるんでとか、家が忙しいとか。高齢社会なので老老介護で、息子さん、娘さんとかが高齢だったりもするわけで、そこの協力が得られないというのも看護師としては苦しいところです。 さとうさん:ご家族もいろんな意見を持っていると思うんですけど、社会的な風潮が、訴訟とか事故を起こしたスタッフとか、病院が敵みたいな、悪みたいなところがあるから、なかなか(拘束が)なくならないんじゃないかなっていうのはありますね。 稲葉玲奈さん(訪問介護事業所 介護士):うば捨て山じゃないけど、全く無関心な家族っていうのもいらっしゃいます。「転倒しないように生命を守ってくださればいい」というような考え方のご家族ということですね。 宮田裕章さん:司法の判断で、かつて、転倒で重いけがをさせた病院が訴訟を受けて罪に問われた。このケースが、特に一般病棟、急性期病院ではすごく重くのしかかってるということですよね。 小川朝生さん(国立がん研究センター東病院 医師):他の手段がもうない。そういう中でやむを得ず実施しているという、その判断を現場のスタッフだけに、本当に忙しい、そして緊急の場面で求めるというのは非常に厳しい状況だと思います。何らかのガイドラインであるとか手引きというような、社会を含めたコンセンサスを作るとか。 小川聡子さん(調布東山病院 理事長 医師):拘束されたときに、された人がどうなるかというのは、ご家族もわれわれも本当の意味でまだ知らないと思います。実際、自分が縛られたらどうなるかを経験すれば、誰もが「あっ!」って思うんですけど、私も教わったことがないです。当然、看護教育もそういう教育はされてないし、まだまだ今の高齢社会に対応するような教育が追いついていない。そこが今のいちばんのジレンマではないか。 福地洋子さん(調布東山病院 看護部長):さまざまなジレンマはあると思うんですけど、家族とふだんから関係性を築いておくと、意外と転倒しても全然うまくいくっていうのは、私も何例か経験しています。患者さんも、骨折してほかで手術して、また当院に戻りたいっていう方もいますので、そこは重要かなと思っております。 小川朝生さん:いちばん大事なのは、認知症のご本人がどんなふうなことを望んでいるのか。それを、医療者もそうですし、ご家族も一緒に考えていくという、そういう姿勢をどう作っていくか。そこへの医療者の試みであるとか社会への働きかけとかが大事になってくるんじゃないかと思いますね。 高山:番組では、実際に身体拘束の削減に成功した病院に、あなたも視察・見学に行ってみませんかという呼びかけをしてみました。今回スタジオにいらっしゃっているさとうさんが参加してくださったんです』、「かつて、転倒で重いけがをさせた病院が訴訟を受けて罪に問われた」、患者が高齢者だったのかは不明だが、高齢者については拘束しない代わりに、けがをしてもやむを得ないとの認識に変えてゆくべきだろう。それが心配なら、家族が付添うべきだ。
・『どう実現? 身体拘束の削減  番組の呼びかけに応じたさとうさんたち、医療関係者です。さとうさんがまず驚いたのは、拘束をしないこの病院のケアが、患者に与える変化でした。 この病院に入院した直後の、認知症の男性。暴力や大きな声を上げるなどせん妄の症状があらわれています。それが、拘束をしないケアを続けること、10日間・・・。(笑ったり、盆踊りを踊るようになった男性) 次に、ふだん病院スタッフ向けに行われている研修も受けることにしました。認知症のお年寄りの立場を体験するという研修です。その際、看護師の都合を優先させたケアをあえて行うことで、患者の側の気持ちに気づいてもらおうという狙いです。そして、両手両足をしばられます。 さとうさん「これは厳しいですね、これは。でも良い患者体験でした。これをやってるんだなって思うと、悲しくなりますね本当に・・・。悲しすぎて涙が出てくる・・・。」 内田病院では、患者に対するケアは職種を越えて連携していました。 病院のスタッフ「ここで離床してるのナースじゃないんですよ。歯科衛生士とリハビリ職。ナース1人じゃ大変でしょ。」 さとうさんは、日々、看護を行うなかで気になっていたことを、質問しました。 さとうさん「やっぱりアクシデント、インシデントは起きていますか?」 病院のスタッフ「起きています。起きます。」 さとうさん「起きているんですね。起きてても、やっぱり縛らない?」 病院のスタッフ「縛りません。起きてしまって、そこを責めませんね、本当に。」 さとうさん「普通だったら(批判)されますもんね。アクシデント、インシデントが起きたら、『何してんだよ』ってなりますよね。」 武田:さとうさんの中で身体拘束に関するイメージ、あるいは、いままで思っていたことは変わりましたか? さとうさん:180度変わりました。がらっと変わって、これはできるなって。内田病院さんのことを聞いて魔法でも使ってるのかなぐらいに思っていて、第1回目(の番組)は理想論だっていう意見派でした。でも、視察が終わってから、早く伝えたいなっていう思いがすごく強くなって、これは本当に知ってもらいたい。 武田:個人の意識が変わったとして、周りはどういうふうに変わるべきだと感じました? さとうさん:病院のトップだったり、看護部だったり、各職トップがそういう覚悟というか「取り組んでいくんだよ。これだったらなくせるんだよ、やっていこう」と声を出してくれないと。看護師が「こんな視察に行ってきて、身体拘束ゼロの病院あるんです、やってみませんか?」と言ったところで、そんなの無理でしょみたいに言われると思うんですよね。 武田:ささきさんいかがですか。何か聞きたいことがあれば? ささきさん:病院が取り組みますって決めたときと、下の温度差ですよね。私たちはギリギリのモチベーションを保って、仕事をしている中で、さらにそういう取り組みをしましょうというのも1つの精神的な負担であることと。看護師としての根性論というか、1人1人が頑張ればできるんだぞみたいなことを求められたところで、全員のスタッフが、じゃあやりましょうってなったのかって。全員が全員、そうやって納得してというか。全体的にできないと意味がないことじゃないですか。 まみさん:私も看護師のモチベーションとしていまギリギリの状態でやってるのに、自分たちの仕事を増やすわけではないですけど、(削減への取り組みを)やっていくというのが、まだ現状としては厳しいのかなって率直に思いました。 小池京子さん(内田病院 看護師):(身体拘束削減への取り組みを)なんでやってるかって言ったら、患者さんが教えてくれた。楽しかったんです。本当にそれが私たちの喜びだった。それでいまも続けてるんですけど。患者さんがありがとうと言ってくれたり、ほどいていって目が合うようになってきた。この人たちはただ縛られてる人じゃないんだなって、1人の人なんだっていう思いがあって、そこからが私たちのスタートだった。 田中志子さん:理想論と方法論はセットでなければ、身体拘束は減らすこともできなくて。この人だけでも外してみようっていうような、本当に初めの一歩ができるとすごい自信になっていくんですよね。 武田:(急性期病院で身体拘束ゼロを実現している)中西さん、どうですか? 中西悦子さん(金沢大学附属病院 副看護部長):個人ではなくみんなで行います。ケアもチームで考えて決定していきますので、できるだけ個人の責任にはしたくないと思っています。最初、抑制(身体拘束)をしていたころは、チューブ類の自己抜去を防ぎたいってことでやってたんですけれども。例えば自己抜去が起こったときに、個人だけの責任ではなくて、そこはチームとしてケアが足りなかったんじゃないかとか、患者さんがチューブを持つという意味があるはずですので、何かしたかったんじゃないかとか、そこをちゃんとアセスメント(評価)できなかったんじゃないか、そういうところで必ず振り返りをみんなで行います。 小川朝生さん:重要なのは、これを看護だけの責任にしてはならない。具体的にいえば、医師とか、リハビリとか、多職種での問題意識の共有と連携、いわゆる多職種チームだと思うんですけれども、そういう現場の活性というのができるのかどうか、目標がどれだけ共有できるのか。そこの力というのは非常に大きいかなと思います。 山賀献夫さん(特別養護老人ホーム ヘルパー):たぶんですけど、ふだんのそこの関係性が。いちばん末端の仕事を現場でしている管理職ではない人たちからすると、(管理職と)話す機会って正直なかなかなくて。いざ何かそういう場になったときに、配慮した聞き方をしてくれるのか、上から聞いちゃうのかみたいなのことも、現場として受ける印象が違う。 稲葉玲奈さん:多職種で連携していくことに光があるんじゃないかなってすごく思うんですね。制度の問題だったりは結構あると思うので、その辺を、大きな部分でカバーしていただけるような社会体制みたいなものができたら、ナースさんの負担も減ると思いますし、私たち介護士も、よりよいケアを共有していくことができるんじゃないかな。 ささきさん:私もやりがいを感じているので看護師を続けてますけれども、いちばんは患者さんに寄り添いたいですし、看護師の味方でもありたいというか、医療者の味方でもありたい。これ以上辞めていく人たちとか、やりがいを感じられなくなる人が増えるのは嫌ですし、病院とかだけではなくて、世の中がいま高齢者の時代で、日本がどういう状況に置かれているかっていうのを社会全体で理解してもらうことも大事だと思うので、私自身は看護師として努力していきたいと思いますけども、世間の方との距離も縮められるように、今後もコミュニケーションを取っていきたいと思います。 武田:ありがとうございました。きょうは番組にご意見を寄せてくださった医療現場で働く皆さんとともに、身体拘束にまつわる医療のあり方を考えました』、「重要なのは、これを看護だけの責任にしてはならない。具体的にいえば、医師とか、リハビリとか、多職種での問題意識の共有と連携、いわゆる多職種チームだと思うんですけれども、そういう現場の活性というのができるのかどうか、目標がどれだけ共有できるのか。そこの力というのは非常に大きいかなと思います」、その通りで、先進的な取り組みが広がってほしいものだ。厚労省も「身体拘束」しない病院には何らかのインセンティブを与えることで、積極的に広げるべきだろう。
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