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女性活躍(その14)(東大卒・女性キャリア官僚の私が 霞が関を去った理由 この国の中枢で起きていること、私が見た 企業トップの女性活躍への"及び腰" 「30%クラブジャパン」発足で痛感した現実、「仕事人」する50代女性に「組織人」オジサンが学ぶもの) [社会]

女性活躍については、6月20日に取上げた。今日は、(その14)(東大卒・女性キャリア官僚の私が 霞が関を去った理由 この国の中枢で起きていること、私が見た 企業トップの女性活躍への"及び腰" 「30%クラブジャパン」発足で痛感した現実、「仕事人」する50代女性に「組織人」オジサンが学ぶもの)である。

先ずは、エッセイスト・編集者の奥村 まほ氏が6月4日付け現代ビジネスに掲載した「東大卒・女性キャリア官僚の私が、霞が関を去った理由 この国の中枢で起きていること」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64958
・『辞めていく女性官僚たち  私は数年前に官僚を辞め、それまで勤めていた霞が関の官庁を去りました。 東京大学を卒業後、就職してから3年以内の早期退職でした。辞めた理由はいくつかありますが、霞が関の組織のあり方や職員の働き方についてさまざまな疑問や不安を感じていたことが、大きな決め手のひとつになりました。 この春、霞が関を去る若手キャリア官僚のニュースが話題になりました。最初は高い志を持って就職した官僚でも、労働時間や業務内容などを理由にキャリアを再考し、就職から数年で転職してしまう。この実態は霞が関にとって大きな痛手だと報道されていました。 たしかに近年、同じように就職から数年で退職した若手職員の話を耳に入れることが多くなりました。実際に辞めていなくても転職を検討している人、検討したことがある人、「仕事は続けたいけれど、ここでずっと働くつもりはない」と言っている人の話もよく聞きます。 その中でとくに気になっているのが、もともと母数が少ない割には、女性の職員が辞めたという話を耳に入れる機会が多いことです。もちろん私が女性であるがゆえに女性の話が伝わってきやすいのかもしれませんし、統計をとったわけでもありません。しかし、個人的な印象で言えば、女性のほうが早い段階から転職の可能性を視野に入れている人が多いように感じます。 これは一体、なぜなのでしょうか。本来は女性活躍を推進する立場にあるはずの霞が関の現場で、なぜ多くの女性官僚がキャリアに悩み、転職を検討するのでしょうか。 すべての女性官僚に当てはまるわけではありませんが、そこには単に「長時間労働で辛いから」という言葉だけでは割り切れない、女性ならではの事情もあるのではないかと考えています。 私自身、「ここは女性として安心して働き続けられる職場ではない」と判断した経験があるからです。若手官僚、とりわけ若手の女性官僚が転職を考える理由について、私自身も経験した女性としての悩みにスポットライトを当てながら考えていきます』、自らの体験とは、ことの外、興味深そうだ。
・『モチベーションを奪われる職員  私が官僚として働きながら日々感じていたのは、「就職前の私は何を勘違いしていたのだろう」ということでした。 官僚の仕事は過酷です。夕方からが本番といっても過言ではありません。国会の会期中には、夕方に通告された質問に対する回答をその日の夜から翌朝にかけて作成することもしょっちゅう。法改正に携わるチームに配属されれば、数ヶ月のあいだ毎日のように終電帰りや深夜残業が続きます。 多忙な時期には土日祝日や年末年始を返上して職場に泊まりこみ、月200?300時間の残業をこなしている職員もいました。ここまではいかなくとも、月100時間前後の残業を数ヶ月以上に渡って続けている職員は決して珍しくありません。 しかも、長時間の残業をしながらこなす業務は、有意義なものばかりではないのが現実です。国会対応における「待機」など、時間を費やす意味を感じづらい業務もあります。また長時間労働の割に給料が高いわけでもなく、残業代が出る保証もありません。 同学歴・同年代で同じくらいの激務をこなしている人と比べれば、恵まれているとは言いがたい待遇です。こうした状況に疲弊してモチベーションを奪われる職員は男女問わず少なくありません』、この程度の要因は、入省前から分かっていた筈だ。
・『深夜にベビーシッター  こうした光景を目にして、私の中で不安としてわだかまったのは、やはり結婚・妊娠・出産・子育てと仕事の両立の難しさでした。 「長時間労働の霞が関にいる限り、家庭とキャリアの両方を充実させるのは不可能なのではないか」という不安は女性官僚に重くのしかかります。当たり前ですが妊娠・出産は女性にしかできませんし、男性の家事・育児参加が叫ばれる昨今でも、負担は女性に偏っているのが日本の現状ですから。 実際、知り合いの女性職員には、睡眠不足とストレスで生理がこなくなった人がいました。夫婦ともに官僚で、繁忙期には深夜にベビーシッターを呼んでいる家庭の話も聞いたことがあります。霞が関で働きながら結婚~子育てにおけるあらゆるハードルをクリアするには、高いモチベーションと体力・精神力、パートナーの理解と協力体制、周囲の手厚い支援は最低限必要でしょう。 もちろん国家公務員は、制度面だけを見れば支援策が整っているほうかもしれません。産休・育休はもちろん取得できますし、子どもが小さいうちは時短勤務、超過勤務の免除・制限、深夜残業の制限といった制度を利用できます。フレックス制度もあります。しかし期間が限られているものが多く、決して十分とはいえないと感じます。また人員不足のため、制度があっても実際には活用しづらいケースもあると耳にしました。 時短勤務ができたのはいいものの、出産前に担っていたような政策に中心的に関わる仕事が回ってこなくなり、国家公務員として働く意味を感じられなくなった人もいます。 もちろん、すべての女性が結婚や子育てを希望しているとは限りませんし、「結婚して子どもを産み、母親になることこそが女性としての幸せだ」というのは今では数多ある価値観のうちのひとつでしかありません。 しかしながら、実際にどのような選択をするかは別として、さまざまな可能性を考えている女性からすれば、霞が関で働き続けることはリスクに見えてもおかしくありません。少なくとも私には、リスクに見えました』、「夫婦ともに官僚で、繁忙期には深夜にベビーシッターを呼んでいる家庭」、ここまでくると、やはり涙ぐましい苦労話もあるようだ。
・『心身を消耗させるだけで20代が終わってしまう…  いずれ結婚し子どもが生まれた場合、家事や育児と両立できるのか。それ以前に結婚のことを考えたり結婚に向けて行動したりする時間的・精神的余裕やエネルギーがあるのか。多忙な仕事に理解があり、サポートしてくれるパートナーを得られるのか。過酷な勤務を続けているのに、子どもを産める健康な体でいられるのか。不妊治療が必要になったら仕事をしながら取り組めるのか……。 「長時間労働で辛い」ことは、単純に心身がもたないという問題にとどまらず、自分の人生の選択を狭めるリスクを孕んでいるように思えたのです。自分の大切な20代が、心身を消耗させるだけで終わってしまうような気がしました。就職前は、ここまで深くは考えていませんでした。 「就職前の私は、何を勘違いしていたのだろう」――これは自分の経験、そして周囲の様子からしても、女性官僚が就職後、数年してから抱きがちな思いであるように感じます。 就職前、私はキャリアのことで頭がいっぱいでした。働くことへの期待、公務員として、そして働く女性として活躍することへの希望。プライベートについては漠然と「なんとかなるだろう」と思っていました。 仕事も家庭も子育ても私ならどうにでもなる。大学までは、学業をこなしてきたように、きっとうまくやれるはずだ、と。しかし現実は違いました。実際に働き始めてみるとどうにもなりそうにない気配に気づきます。 思った以上に官僚の働く環境は厳しいし、人生を捧げたいと思えるほどのやりがいも見出せない。普通に働くだけでもギリギリの状態という人が大勢いるのに、子育てが加わるなんて想像もつかない。なんとかなると思っていたけど自分には無理そうだ。こんなはずじゃなかったのに……。 友人の結婚・出産の報告を耳にすることが増え、ようやく自分ごととして考えるようになった段階で、これからどうしようかと悩む人もいることでしょう。このままこの仕事を続けていていいのか、気持ちは揺らぎます』、「思った以上に官僚の働く環境は厳しいし、人生を捧げたいと思えるほどのやりがいも見出せない。普通に働くだけでもギリギリの状態という人が大勢いるのに、子育てが加わるなんて想像もつかない。なんとかなると思っていたけど自分には無理そうだ。こんなはずじゃなかったのに……」、辞めざるを得なくなった事情が理解できた。
・『ロールモデルがいない  ここで、「それでも家庭と両立しながら働いている女性官僚がいるではないか。気持ちと頑張りでどうにでもなるだろう」と考える方もいるかもしれません。 しかしながら、その「気持ち」や「頑張り」はすべての女性官僚に当てはめて考えてもいいものでしょうか。また「気持ち」と「頑張り」でどうにか両立しているように見える人は、本当にそれだけで上手く回せているのでしょうか。霞が関には現実的にめざせそうなロールモデルが少ないという点も、若い女性職員が将来像を見出しにくい要因のひとつになっていると考えます。 政府は「女性活躍」を進めてはいますが、それはここ数年の取り組みであり、以前は女性の登用人数そのものが少なかったことを踏まえれば、組織に残っている女性が少ないのは仕方がないことかもしれません。 しかしながら、私見では、現在の霞が関に管理職相当で残っている女性こそがイレギュラーなケースであり、ロールモデルにはなり得ないのではないかと思っています。「私にもできそう」という希望や安心感を与えてくれるロールモデルが滅多に存在しないのです。 たとえば結婚していない、または結婚していても子どもがいないケースなら、結婚・子育てを視野に入れている女性職員のロールモデルにはなりづらいでしょう。また結婚・子育てを経験している職員でも、「実家や夫の支援が手厚い」「仕事に強いやりがいを感じており、割り切ってベビーシッターや深夜保育にお金をかけている」といったケースの場合は、これらの条件をクリアするのが難しい女性にとっては現実的に感じられず、良いロールモデルにはなりません。 若い女性職員が安心して働き続けるためには、強靭なスーパーウーマンや恵まれた環境にいる女性の事例ではなく、だれでもそこそこ頑張ればたどり着ける「普通」のケースが必要です。 私自身、当時も今も子どもはいませんが、子どもができても実家が遠いため親の支援を受けるのは困難であり、また子どもを預けて夜遅くまで残業をする気にはならないだろうと考えていました。そして少なくとも在職中には自分にもめざせそうなロールモデルには出会えませんでした。 組織が変わらない限り、自分がだれかのロールモデルになれるとも思いませんでした。いろいろなものを犠牲にしてまで熱意を持って仕事に向かえる自信もなく、「10年後、20年後にもこの職場で働く未来は見えないな」と就職当初に思ったのを覚えています。 いずれ退職するならキャリアアップにこだわる必要もないし、むしろ若いうちに転職して別の場所で経験を積み、将来のキャリアやプライベートの選択肢を広げよう。そう考えるのは、女性にとってひとつの合理的な判断ではないでしょうか』、「現在の霞が関に管理職相当で残っている女性こそがイレギュラーなケースであり、ロールモデルにはなり得ないのではないかと思っています」、確かに深刻な問題のようだ。
・『空転する「女性活躍」  前述の通り、政府は女性活躍推進を進めていますが、それも十分とは言えません。 私が官僚として働き始めた時期は、ちょうど女性活躍推進が謳われ始めた時期と重なります。政府が先頭に立って女性登用を推進するため、霞が関においても女性の採用人数が大幅に増加しました。 内閣官房が公表したデータによれば、国家公務員試験を経て採用された職員のうち、女性の占める割合は平成26年度から27年度にかけて26.7%から31.5%に上昇し、総合職にいたっては23.9%から34.3%と4割以上も増加しています。私が所属していた官庁にも同様の傾向があり、30人弱の同期のうち女性は10名を上回っていました。 しかしいざ就職してみてわかったのは、少なくとも私の目から見た限りでは、政府は「女性登用」を推進しているだけで、本当の意味での「女性活躍」を推進できているわけではないということでした。 その中身はこれまで見てきた通りです。採用した女性の将来をしっかりと考えないまま、受け入れる人数だけ増やした形です』、「政府は「女性登用」を推進しているだけで、本当の意味での「女性活躍」を推進できているわけではない」、これでは「空転する「女性活躍」」というのも当然だ。
・『スーパーウーマンじゃなくても続けられる職場に  このように女性官僚を取り巻く状況には厳しいものがあります。今回挙げたもの以外にも、月経にまつわる問題など、過酷な環境への適応を難しくする女性特有の事情を抱えている職員は少なくないでしょう。男性ばかりの職場ではこうした悩みは相談しづらく、「相談しても心から理解してくれるはずがないし、弱いと思われて評価が下がるだけだ」と考えてひとりで苦しんでいる人もいると思います。 しかし大学時代まで男性と渡り合って成功を収めてきた女性の中には、私がそうであったように「自分になら何でも乗り越えられる」と思いこみ、仕事内容だけを見て就職先を選ぶ人も少なくありません。説明会で相手がスーパーウーマンとは知らずに話を聞き、「私もきっと大丈夫」と考える学生もいるかもしれません。その中には、本当に「大丈夫」な未来のスーパーウーマンもいることでしょう。 でも、だからといって、すべての女性が同じようになれるわけではないのです。だれもが強いわけではないし、仕事へのモチベーションを高く保てるわけではない。強いだけではどうにもならない問題もあるし、人生における仕事の立ち位置だって価値観だって、刻一刻と変わっていく。 身も心も強靭でなければ、あるいは大きな犠牲を払ったり、手厚い支援を受けたりしなければ残れないような組織では、今後もロールモデルになりそうでならない女性が残っていくだけでしょう。 就職当初、男性職員に「きみたちが女性職員のロールモデルになればいいんだ」と言われたことがありますが、これほど無責任な言葉はないと感じます。環境を改善することなく、耐えて耐えて耐え忍んだ女性や恵まれた環境にある女性をロールモデルとして崇めても、女性職員へのプレッシャーがますます強まるだけです。 政府はやみくもに採用人数を増やすのではなく、採用した女性が安心して働き続けられる環境とは本来どのようなものなのか、本当のロールモデルを作るためには組織がどう変わるべきなのか、真剣に考えていく必要があるのではないでしょうか。 本来、国の政策を考えて実行していくのはやりがいがあり、面白い仕事のはずです。それが就職後、あらゆるマイナス面によってかき消されて見えてしまうのは、男女に関係なく本当にもったいないことだと感じています。 「日本をもっと良い国にしたい」「利益にとらわれない仕事がしたい」そんな強い思いを抱いて就職するすべての若者の熱意が生かされ、また自分自身の心と体も大切にしながら働ける組織に変わっていくことを強く願っています』、「本来、国の政策を考えて実行していくのはやりがいがあり、面白い仕事のはずです。それが就職後、あらゆるマイナス面によってかき消されて見えてしまうのは、男女に関係なく本当にもったいないことだ」、その通りだろう。このままでは、「女性活躍」は看板倒れに終わってしまいそうだ。

次に、 元総理府男女共同参画局長で昭和女子大学理事長の坂東 眞理子氏が8月13日付け東洋経済オンラインに掲載した「私が見た、企業トップの女性活躍への"及び腰" 「30%クラブジャパン」発足で痛感した現実」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/295477
・『ベストセラー『女性の品格』から12年。坂東眞理子・昭和女子大学理事長がいま考える、人生100年時代を納得して生きるために必要な「女性の美学」とは? 大人の女性の3大場面、「職場」「家庭」「社会」それぞれの場で女性が直面する問題にどう対応するか。この連載でつづっていただきます』、興味深そうだ。
・『「30%」の重み  7月17日、30%クラブジャパンのお披露目会があった。 30%クラブとは何か。これは2010年にイギリスで始まった、女性の取締役を30%に増やす努力をすると宣言する民間企業の集まりである。現在までに世界14カ国・地域に活動が広がっている。 正会員はそれぞれの企業のトップだけがなれる。その国におけるトップ100社のうち5社以上が加入して発足が認められるので、日本版もTOPIX100社から参画企業を募るなど、1年がかりで準備し、37社が加盟した。私もアドバイザリーボードの一員として加わっている。 現在、日本の上場企業の取締役に占める女性の割合は4.1%なので、30%はかなり遠い実現不可能の目標のように見える。しかし、世界のほかの国々、とくにヨーロッパの国々を見れば決して驚くような数字ではない。実際、イギリスでは発足当時に12.6%だった女性役員比率は、2018年に30%に達した。 だいぶ前になるが2003年、政府はあらゆる分野の政策決定に参画する地位の30%を女性にという計画を男女共同参画推進本部で決定している。そのときも「何で30%か」「能力もない女性を、女性だからというだけで登用するわけにはいかない」と反対意見が多かった。 当時その活動を推していた私は、「2020年まで17年、十分女性が経験を積み育つ期間はあります」「30%というのは少数者が一応その存在が知られるための塊として必要な数字です」といって、反対の方々を説得した。 その後しばらくこの数字は顧みられず、ほこりをかぶっていたのだが、2012年第2次安倍内閣では「女性が輝く社会」が目標として掲げられ、2020年までに女性管理職を30%にすると打ち出した。しかし現在も日本の女性管理職は30%ならぬ13%にとどまっており、政府も2020年に30%とはあまり声高に言わなくなってきた。 なぜ、なかなか女性管理職が増えないか。長時間労働、性別役割分担の根深さなど、できない理由はたくさんあげられるが、必要なのは変えるための意志である。30%クラブはそう意思表明した企業の集まりである。 取締役に女性がいるか、いないか、複数いるかどうかで企業業績が変わるという数字も内閣府や、産業経済研究所などいろいろなところから出ている。 それでも発足準備の中で目立ったのは、日本企業の及び腰である。多くの企業が、「とても達成する自信がないから加入するのは気が引ける」「なぜ女性を登用するのか、関係者に説得する明確なエビデンスがない」「自分のところだけ突出するのはいかがなものか」などなどの理由で、30%クラブジャパンへの参加を見送った』、「現在、日本の上場企業の取締役に占める女性の割合は4.1%なので、30%はかなり遠い実現不可能の目標のように見える」、4.1%といっても、社外取締役の公認会計士や弁護士が多いのではなかろうか。
・『日本企業トップの参加は3社という事実  7月17日のお披露目会も、加入する日本企業のうちトップご自身が参加されたのは3社だけ、あとは代理出席である。それに引き換え外資系の企業の多くはトップ自らが出席し、女性登用に向けての熱い意気込みを述べた。もちろん代理出席でも参加を見送った企業に比べれば、参加した企業はずっと先進的である。 改めて日本は特別であり、いくら世界で女性が活躍していてもそれは別世界の話、という常識がまだ通用しているのだと痛感させられた。 同様なことを地方議員の集まりでも感じた。2018年に「政治分野における男女共同参画推進法」が成立し、候補者をできるだけ男女均等にと努力することが求められているが、参議院選挙でも女性候補者は28%、当選者に占める割合は22%、いずれも史上最高というものの均等には程遠い。私が出席した集まりでも男性議員が圧倒的に多く、自分たちのライバルになるかもしれない女性議員増大に対する冷ややかさをそこはかとなく感じた。 それでも『日はまた沈む』で有名な英『エコノミスト』誌元編集長のビル・エモットさんは近著『日本の未来は女性が決める!』の中で、「経済も政治も変わる必要がある、その起爆剤となるのが女性だ」と強調されている(その提案の中には女子大の廃止というのがあって、それには私は反論しなければならないのだが)。 人口減、高齢化の進む中で女性が社会の支え手にならなければならないという方向には誰も反対しない。筋肉を使う仕事より、人を支え頭を使う仕事が増えることにも誰も異論はない。しかし意欲と能力のある女性が責任のある地位に就くのが当然と考える人はまだまだ少ないことを痛感することもまた多い』、最後の部分はクールな本音だろう。

第三に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が11月12日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「「仕事人」する50代女性に「組織人」オジサンが学ぶもの」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00048/?P=1
・『「自分はもっとやりたいし、まだまだできる。というか経験を積んできた今の自分だからこそ、やるべき仕事だと思ってる。なのに若手にやらせたいからサポートに回ってくれみたいな。50代になると会社って、もはやキャリアアップする場所じゃなくて、後始末とかゴミ拾いとかをさせられる場所なんだなあってつくづく思います」 一年半前にインタビューでこう話した女性(当時53歳)は、その後異動願を出し続けた。理由は実にシンプル。「何かアクションを起こしてないとモチベーションが保てなかった」からだそうだ。希望先は、海外出張の多い花形の部署で社外との交渉がメインだった。 そんな彼女から、先週届いた一通のメールが実に切なく、面白く、それでいて女性ならではのたくましさを痛感させられるものだったので取り上げてみようと思う。 おいおい! 女性ならでは? いつも男も女も関係ない、違いはないって言ってるじゃないかって? はい、その通りです。正確に言うと、性差ではなく経験による違いです。 というわけで、まずメール内容を抜粋したものからお読みください(本人から許諾済み)』、どんな内容なのだろう。
・『長年のあこがれの部署へ“玉突き”で異動  「今年の春、辞令が出たときには、本当に驚きました。だって、ダメ元で出し続けた異動願です。仕事はきちんとやりたいし、続けたい。でも、自分のやりたいことができないジレンマを抱え、不機嫌に仕事をするのは嫌でした。なので自分の意見を言い続けないといけないと思い、入社当時から行きたかった部署に異動願を出し続けていたんです。 ところが突然の辞令です。え? 私? 私でいいの?って感じでした。といっても、私が選ばれたというわけではなく、いわゆる玉突き人事です。人事って本当に適当だなあってつくづく思います。 上司と前任者は同期だったので、異動させたかったけどできないという状況が続いていました。 そんな折も折、前任者が飲み屋でトラブルに巻き込まれて、会社にも報告が入るなど結構な大ごとになった。異動させる口実ができたので、上司は即異動させたんですが、引っ張ってこようと思っていた社員が希望退職してしまったんです。 それで巡り巡って、私に白羽の矢が立った。異動先は私が入社したときに行きたかったけど行かせてもらえなかった部署です。それが55歳で行くことになった。これまでのキャリアが生かせるとは到底思えない部署の責任あるポジションに、突然行くことになってしまったんです。 なのでものすごいプレッシャーでした。自分で希望していただけに責任も感じました。 でも、実際やってみると自分が経験したことが生かされた。無駄なことって一つもないんですよね。だんだんと自信もついて来たし、まだまだできる、もっとやりたいことがある、と気分は最高潮。自分がこの会社でやりたいと思っていたことができるポジションにこの年で配属されたことに喜びを感じていました。 ところが実は私、がんが見つかってしまったんです」』、「玉突き人事」で念願の部署に転勤するとは、ラッキーな女性だ。
・『「幸い初期だったので二週間ほどの入院で完治できるみたいなんですけど、医師から告げられたときは涙が止まりませんでした。 今は落ち着き、仕事も頑張ってます。でも、50代という年齢はこういうものなのかなぁと思っています。 河合さんが、人は仕事と家庭と健康という3つのボールを持っているというお話をしていましたよね? 私、今、そのことをとても実感しています」 最後のくだりを補足しておく。これは私が「境界」の概念を分かりやすく講演会などでお話している内容の一部だ。「境界」とは「人生においてその人が主観的に重要と考える領域」のこと。 境界に何が入るかは人それぞれだが、境界内に、身近な人間関係(=家庭)、社会的活動(=仕事)、生存に関わる問題(=健康)という、人が生きていくうえで極めて重要な要因を含めない限り、人は困難を乗り越えることができない。人とのつながり、社会との関わり、生命の尊さ。それらを大切だと思う気持ちなくして、幸せを感じることはできないといったことを、3つのボールに例えているのである。 くだんの女性は50代になった今、それを痛感している、と。 若い頃は「仕事」と「家庭」のボールを落とさないように必死で踏ん張ってきて、子育てを終えて「仕事」に集中した。ところが50歳を過ぎた途端に戦力外扱いされ、それでも「仕事」を諦めたくなくて声を出し続けた』、「3つのボール」の比喩は確かに参考になりそうだ。
・『人生は予想外の連続  その夢がかない「よし! 仕事のボールを高く、高く回し続けるぞ!」と意気込んだのもつかの間。今度は「健康」のボールを高く上げなくてはいけない状況に直面してしまったのだ。 「涙が止まらなかった」──この言葉の裏で、一体どれほどの戸惑いと憂いを抱えながら寝床に着いた日々が繰り返されたのだろうか。「50代という年齢はこういうものなのかなぁ」──こんな風に受け入れられるまで、どれだけの覚悟が要っただろうか。 人事もたまさかなら、人生も想定外の連続である。 当たり前だと思っていたものが当たり前じゃなくなったとき、誰だってビビる。それでも彼女は、自分なりに辻褄(つじつま)合わせをし、私にメールをくれた。きっと人に話すことで、どうやっても消えないやりきれない気持ちを吐き出したかったのではないか。しかも、仕事への熱はちっとも衰えていない。 そんな人生の理不尽と、それでも前に進もうとする人が秘める強さの存在を、彼女が教えてくれた なぜ、彼女はこのように人生の辻褄を合わせ、困難にうまく対処できているのか? 私は彼女の経験がそうさせたと確信している』、どういうことなのだろう。
・『その「経験」をお話しする前に、興味深いデータを紹介する。 「50代の男性会社員と女性会社員」の意識の違いについて分析した調査研究で、先週、私自身のメルマガでその一部を取り上げたのだが反響がとても大きく、今回の話にも通じるものなので紹介しようと思う。 調査を行ったのは「公益財団法人21世紀職業財団」のメンバーで、調査対象は50歳時に300人以上の企業に正社員として勤務している(あるいはしていた)50~64歳の男女の2820名だ。 「50代問題」や「働くシニア問題」はこれまで当然のように「男性の問題」として考えられてきたが、男女雇用均等法施行から30年以上がたち、50代の正社員の女性が増加。そこで50代、60代の働く女性の実態を把握し、女性の活躍につながる施策を模索しようと調査を実施したという。 かくいう私もインタビューの協力者は男性が圧倒的多数。特にこの1年間は40代後半~60代を集中的にインタビューしているため、必然的に男性の事情や立場を踏まえて50代問題に言及してきた』、データにはどんな特徴が出たのだろう。
・『働く女性の向上心は50代で再び強くなる  だが、そんな中でも、少数派の女性協力者(インタビュー対象者)にあって、男性にはないものを肌で感じてきた。その感覚が数値で示されていたのが、330ページにわたるこの報告書だ。と同時に、男性の切なさがデータからにじみ出ていて実に面白かった。そこで男女差が鮮明に出ていた箇所を抜粋し、以下に掲載する。
 +「各年代で重視していたことは?」という問いについて、男性では「成長」「仕事の面白さ」「信頼」が20代をピークに年々低下していく。これに対して、女性では「成長」「仕事の面白さ」については、40代までは低下するものの50代でV字型に上昇。「信頼」については、30代で一旦低下するものの、その後は50代にかけて上昇していた。
 +「昇進・昇格」を重視した年齢は、男性では30代がピークだったのに対し、女性では40代がピーク。男性の50代で「昇進・昇給」を重視した人が10.3%だったのに対し、女性の50代では17.5%だった。
 +「会社を辞めなかった理由」を聞いたところ、男性の7割が「家族を養わなければならなかったから」と答えたのに対し、女性では「経済的に自立したかった」が5割でトップ、「社会とつながっていたかった」と続いた。
 +モチベーションが最も高かった時期と比べ、「現在の方が低い」と答えた人の割合は、男性では45.8%だったのに対し、女性は21.6%。
 +「今後もスキルを深めたり発展させたりしたい」とした割合は、男性が5割だったのに対し、女性は7割。
 +定年後のキャリアの希望について、「現在の会社で再雇用」は男性は43.6%、女性34.4%。「転職」は男性19.5%、女性13.9%。「わからない」は男性は19.9%、女性は30.1%だった』、なるほど。
・『あれこれ数字を一気に並べ立てたが、結果を大ざっぱにまとめると……、 「50代の女性会社員はまだまだ元気です! 向上心も成長欲も50歳になっても女性は衰えません!」という元気な女性たちの姿が、男性と比較することで浮かび上がってきたのである。 調査対象の50~60代の女性たちが若かった頃は、子育てと仕事を両立するには相当の覚悟と努力が必要だった。マタハラ(マタニティーハラスメント)は当たり前だし、育児休暇を取らずに復帰した女性も少なくなかった。 10年間同期のトップを走って来た女性が、たまたま出産と昇進の時期が重なり、閑職に回されるなんてことも珍しくなかった。 実は冒頭の女性もそういった経験をした一人だ。 育休から戻ってきた彼女を受け入れる部署はなく、「総務だったら空いてます」と言われ、愕然(がくぜん)としたと一年半前のインタビューで話してくれた』、現在も働き続けている「50~60代の女性たち」は、きっと、試練を乗り越えただけあって、男性よりたくましいのだろう。
・『若い不遇時代にたくましさをはぐくんだ女性たち  「子供を産む」という人生で幸せな経験をした女性たちを待ち受けた「大きな壁」。それが彼女たちを強くしたのではないか。立ちはだかった壁は、私が想像する以上に果てしなく険しく高い壁だったに違いない。でも、その壁があったからこそ「今」がある。 30代で「自分は会社のコマでしかない」と気づき、その屈辱を晴らすために誠実に目の前の仕事に没頭し、一つひとつ自分のキャリアにして来た経験が、女性の受容する力と生き延びるたくましさを高めたと私は考えている。 実際、ものごとがスムーズに進んでると気づかないようなことも、壁があることで気づくことはよくあること。そんな時、つい私たちは他人のせいにしたり、会社のせいにしがちだ。だが、そこで一歩踏みとどまり、それはそれとしてありのままを受け入れることに成功すると、自己受容(=自分を客観的に見てありのままを受け入れること)という、ストレスに対処するリソースを獲得できる。 冒頭の女性や件の対象者の女性たちは、自己受容した人たち。彼女たちは行く手を阻む壁を乗り越えるも屈するも自分次第だと割り切り、会社員として、母として、マイノリティーの女性として、目の前の仕事に没頭した。その経験が、キャリア(=人生)は自分次第だという当たり前の価値観につながったように思う。 一方、男性は40代でだいたい自分の会社での立ち位置が見えてしまい、やる気を失ったり、自分で限界を定めてしまったり。その反面「このままで終わっていいのか?」と自問し、それでも家族のために稼ぎ続けなければならない現実に苦悩する。 日本がいまだに男社会であるがゆえの男性の生きづらさ。医学の急速な進歩で寿命が爆発的に延びたところで、ビジネスの論理から言えば50代は嫌われてしまうという厳しい現実……。 そういった社会環境が男性会社員の心を弱らせているのでないか。 つまるところ、女性は会社で「仕事人」になるが、男性は会社で「組織人」になる。仕事への向き合い方の違いが、50代という実に微妙な年齢の就業意識に影響を与えたのだ。 もちろん同じ男性でも「壁」を経験してる人は「仕事人」になることが多い』、「女性は会社で「仕事人」になるが、男性は会社で「組織人」になる。仕事への向き合い方の違いが、50代という実に微妙な年齢の就業意識に影響を与えたのだ」、なかなか面白い解釈だ。
・『壁の向こうに新しい働き方が見える  私がインタビューした人の中でも、病気をしたり、左遷などで苦い経験をしたりして、早い段階でイス取りゲームから撤退した人は、自己受容し、「“おばちゃん”的働き方」に舵(かじ)を切っていたように思う。 そして、女性であれ男性であれ「仕事人」になった人は決まって、半径3メートルの人間関係を大切にし、自分から若い人たちに仕事を教えてもらったり、若い人たちの相談に乗ったりしていた。家庭での生活も大切にし、仕事だけではない人生を送っていた。 先の調査では、インタビューも行っているのだが、そこには……。 「評価とか、給料を上げていこうとか、そういうのを一回忘れないと、行き詰まって苦しくなる」「子供が生まれて時間的制約がある中で何ができるかを考えると、自分ができる仕事をとにかく頑張るしかなくて、そこで頑張っていきたいと思えるようになった」「上の立場に立たなかったからこそ、上だったり、一緒のメンバーだったりのサポートができる。それが今の自分の立場の面白さ」「年収は下がっていく一方なので、誰かのために働き、ありがとうと言ってもらえれば十分かなと」 人それぞれ言葉に違うはあるけど、自分を取り囲む半径3メートルの世界の中で自分の役割だったり、アイデンティーを確立してきたと推察できるコメントが散見されたのだ。 少々ややこしい話ではあるが、「私」は「私」だけじゃない他者からの外的な影響を受けて作られている。50代は外的にも内的にも小さな変化が起こる時期で、まさに「私」というアイデンティティの危機に遭遇する。この海図なき航海の始まりで、どう仕事に、家族に、健康に向き合うか。私も3つのボールを落とさない生き方を、もう一度考えてみようと思う』、「50代は外的にも内的にも小さな変化が起こる時期で、まさに「私」というアイデンティティの危機に遭遇する」、そうしたなかで「自己受容」の役割は重要なようだ。
タグ:長年のあこがれの部署へ“玉突き”で異動 スーパーウーマンじゃなくても続けられる職場に 女性活躍 「「仕事人」する50代女性に「組織人」オジサンが学ぶもの」 自己受容 「公益財団法人21世紀職業財団」のメンバーで、調査対象は50歳時に300人以上の企業に正社員として勤務している(あるいはしていた)50~64歳の男女の2820名だ 奥村 まほ 東京大学を卒業後、就職してから3年以内の早期退職 心身を消耗させるだけで20代が終わってしまう 夫婦ともに官僚で、繁忙期には深夜にベビーシッターを呼んでいる家庭 モチベーションを奪われる職員 現在の霞が関に管理職相当で残っている女性こそがイレギュラーなケースであり、ロールモデルにはなり得ないのではないかと思っています (その14)(東大卒・女性キャリア官僚の私が 霞が関を去った理由 この国の中枢で起きていること、私が見た 企業トップの女性活躍への"及び腰" 「30%クラブジャパン」発足で痛感した現実、「仕事人」する50代女性に「組織人」オジサンが学ぶもの) 若い不遇時代にたくましさをはぐくんだ女性たち 10年間同期のトップを走って来た女性が、たまたま出産と昇進の時期が重なり、閑職に回されるなんてことも珍しくなかった 調査対象の50~60代の女性たちが若かった頃は、子育てと仕事を両立するには相当の覚悟と努力が必要だった。マタハラ(マタニティーハラスメント)は当たり前だし、育児休暇を取らずに復帰した女性も少なくなかった 50代は外的にも内的にも小さな変化が起こる時期で、まさに「私」というアイデンティティの危機に遭遇する 壁の向こうに新しい働き方が見える 空転する「女性活躍」 ロールモデルがいない 日経ビジネスオンライン 河合 薫 日本企業トップの参加は3社という事実 2010年にイギリスで始まった、女性の取締役を30%に増やす努力をすると宣言する民間企業の集まりである。現在までに世界14カ国・地域に活動が広がっている 「50代の女性会社員はまだまだ元気です! 向上心も成長欲も50歳になっても女性は衰えません!」という元気な女性たちの姿が、男性と比較することで浮かび上がってきた 30%クラブジャパン 『女性の品格』 辞めていく女性官僚たち 「私が見た、企業トップの女性活躍への"及び腰" 「30%クラブジャパン」発足で痛感した現実」 人生は予想外の連続 「東大卒・女性キャリア官僚の私が、霞が関を去った理由 この国の中枢で起きていること」 東洋経済オンライン 霞が関の組織のあり方や職員の働き方についてさまざまな疑問や不安を感じていたことが、大きな決め手のひとつに 坂東 眞理子 現代ビジネス 働く女性の向上心は50代で再び強くなる
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