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原発問題(その12)(原発事故から変われない日本人、日本の原発はこのまま「消滅」へ、東電裁判 “見えた新事実”) [国内政治]

原発問題については、3月27日に取上げた。今日は、(その12)(原発事故から変われない日本人、日本の原発はこのまま「消滅」へ、東電裁判 “見えた新事実”)である。

先ずは、選択2019年3月号が掲載した東大名誉教授で失敗学の提唱者である畑村洋太郎氏への巻頭インタビュー「原発事故から変われない日本人」のポイントを紹介しよう。
・『事故後も、「原発にどんな危険があるか」という本質的なことを何も議論しないし、考えてもいない。日本では想像力を働かせて、皆と違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ。「誰の責任か」ということばかりに目を向ける。 そもそも、福島原発事故の本当のコストを誰も議論しない。一番大きな数字で「22兆円」というのを見たが、国がひっくり返るような大事故だったのだから、100-500兆円ぐらいはかかるだろう。これは国民みんなが負担することだ。 企業の不正会計、政府の統計不正は、タガが緩んでいるためではなく、その検査や基準は本当に意味があるのか、必要なのかを考えず、「基準を守れば大丈夫」と安心し切っていることが問題。日本では事故が起きると、その時から基準を作る。だが、その時に、過去に起きた経験値を参考にするが、経験したことのないことは考えない。重要なのは、形の上で基準を守るか否かではなく、本当に安心か否かなのだ』、「日本では想像力を働かせて、皆と違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ」、日本の弱味を鋭く指摘している。「「誰の責任か」ということばかりに目を向ける」というが、企業が絡む大事故になると、福知山線脱線事故でのJR西日本、原発事故での東京電力、いずれも責任追及はうやむやになってしまうようだ。「福島原発事故の本当のコスト・・・100-500兆円ぐらいはかかるだろう」、その通りなのかも知れない。
・『政府統計の問題も、どうしたら最善の統計が得られるのかという本質的なことをもっと議論すべき。 チャレンジや創造をすれば、殆どいつも結果は失敗になる。失敗を織り込んで戦略を考えるものだ。今日は失敗を恐れてチャレンジしないことが問題。日本がほどほど豊かになったからだろう。しかし、それが許されない大きな壁がやってくる。財政赤字がGDPの2倍を超えた。さらに気候変動がすごく大きな変化を描いている。石炭火力発電が全く使えない時代がくる。再生エネルギーをどうするのか。国の債務も、エネルギー問題も真剣に考えているようには思えない。 イノベーションが停滞、前に上手くいったやり方に安住していたら、GAFAに全て持っていかれた。そうすると、その尻馬に乗って、AIだ、自動運転だと騒いでいる。誰かが考えて上手くいったことについていくのが一番得だ、というのが日本のやり方だ。それでは、どんどん競争力が失われる。日本社会は根本的に考え方を変える必要。まず小学校から「自分で考える」訓練をしていかないと』、二番手戦略が通用できない時代になったとすれば、やはり「「日本では想像力を働かせて、皆と違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ」、を変えていくしかなさそうだ。

次に、選択2019年11月号が掲載した原子力規制委員会前委員長の田中俊一氏への巻頭インタビュー「日本の原発はこのまま「消滅」へ」のポイントを紹介しよう。
・『福島第一原発事故を踏まえると、原子力業界が姿勢を徹底的に正さなければ、日本の原子力に先はない。残念ながら原子力政策も見直しされないままなので、この国の原発はフェードアウトする道を歩んでいると眺めている。日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきた。結果論も含め本当に嘘が多い。最大の問題はいまだに核燃料サイクルに拘泥していること。使用済み燃料を再処理して高速増殖炉でプルトニウムを増やして千年、二千年の資源を確保するという罠に囚われたまま。千年後の世界がどうなっているかなんて誰にも分からない。技術的にもサイクルが商用レベルで実用化できる可能性はなく、現に米国、英国、フランスが断念。 いままで「数千年のエネルギー資源が確保できる」という嘘を言い続けてきた。日本の原発はそうした嘘で世論を誤魔化しながらやるという風土があった。そこにつけ込まれて、今回のように、原発マネーを狙う汚い人間が集まってくる原因にもなった。今のままでは、今後もまた似たようなことが起こる可能性』、原子力規制委員会委員長を退いたから思い切ったことが言えるのかも知れないが、それにしても衝撃的な発言だ。
・『使用済み燃料処分のための再処理をやろうとしているのは、日本だけ。米国をはじめ多くの国は当面、使用済み燃料を乾式容器に入れて原発敷地内に蓄積し、いずれ直接処分する道を目指している。放射性物質の半減期を短縮してから、地下に処分するなどという実現不可能な技術の開発に無駄なコストと時間をかけている国はない。乾式容器で200年程度は安全に保管できるのだから、その間に国民の理解が得られるような丁寧な議論をして処分方法を決めるべき。そのための前提として、原子力利用が国民から信頼を得なければならない。今回の不祥事は、福島事故後から取り組んできた信頼回復のための努力の積み重ねを無に帰するもの。 政治・行政は本質的な議論から背を背け、センセーショナルな部分ばかりを取上げるマスコミの責任も重い。今回の関電の問題は犯罪にも近い行為だとは思うが、これを表面的に批判しても意味がない。 先ずは、再稼働した原発の安全運転に専念することが基本。その上で、実用化できない核燃料サイクル政策を転換し、無駄なコストを削減し、原発を継続して利用するために欠かせない人材の育成や安全性向上のための技術基盤の開発に投資すべき。これまでの嘘を認めたくないため、問題をうやむやにしたままで何も変わらないかもしれない。そうしたことを考えると、残念ながら日本の原発は1回なくなるんじゃないかとみている』、「これまでの嘘」を清算するのは、原子力ムラにとっては耐え難いことだろうが、そこにしか再出発の足がかりはないだろう。

第三に、9月20日付けNHK NEWS WEB「東電裁判 “見えた新事実”」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190920/k10012091781000.html
・『9月19日。未曾有の被害をもたらした福島第一原発の事故について東京電力の旧経営陣の責任を問う刑事裁判の判決の日。被告は勝俣恒久 元会長(79)、武黒一郎 元副社長(73)、武藤栄 元副社長(69)の3人。 東京地方裁判所は「巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」などとして全員に無罪を言い渡した。一般の市民で構成する検察審査会が2度、「起訴すべき」と議決し強制的に起訴されて始まった注目の裁判も、個人の刑事責任までは問えないとして無罪判決で幕を閉じた。 しかし、37回におよんだ公判からは、これまで知られていなかった“新事実”が次々に明らかになった。例えば、その1つ。首都圏唯一の原発、茨城県にある東海第二原発では、運営する日本原子力発電が東日本大震災が起きる3年前からすでに巨大津波への対策を進めていたことが初めてわかったのだ。さらには東京電力の現場の担当者たちは、巨大津波への対策を進める考えだったことも明らかになった。「本当に津波による原発事故を防ぐ手立てはなかったのだろうか」。 公判を見続けてきたNHK取材班は、この疑問を胸に、公判の証言と資料を分析、関係者への接触も試み真実に迫るため、取材を展開した。(東京電力刑事裁判 取材班)』、「東海第二原発」で「巨大津波への対策を進めていた」のに、放置した「福島第一原発」の責任を裁判所はどう判断したのか、或はスルーしたのだろうか。
・『第23回の公判  2011年3月11日に起きた東日本大震災。およそ15メートルの津波に襲われた福島第一原発は、原子炉を冷やすための非常用電源などが水没し、3つの原子炉がメルトダウンをおこした。事故の深刻さを示す国際的な基準による評価では、チェルノブイリ原発事故と並びもっとも深刻な「レベル7」とされ、文字どおり史上最悪レベルの原発事故となった。 今回の裁判。原発事故の原因だけでなく、背景につながる証言や資料が明らかにされた。中でも2018年7月27日の第23回公判で示された、ある事実に衝撃が走った。法廷に立ったのは日本原子力発電の元社員。会社として震災前に巨大な津波に備えた対策に着手していたことを初めて明らかにしたのだ。「津波対策工の検討については、推本津波(長期評価)を考慮した対策工事について引き続き検討を進めると」』、なるほど。
・『“長期評価”分かれる見解  日本原電が巨大津波への対策を始めたきっかけは2006年、当時の国の原子力安全・保安院が指示をした安全性の再評価、通称「バックチェック」だった。大きな地震に加えて「極めてまれではあるが発生する可能性がある」「適切な津波」への対策を電力事業者に義務づけたのだ。この「適切な津波」とはどんな津波なのか。これを巡って電力各社の間で対応が違っていくことになる。 津波の高さの予測をする際に焦点となった評価がある。2002年に政府の地震調査研究推進本部が示した、いわゆる「長期評価」だった。岩手県沖で発生した「明治三陸地震」と同程度の津波地震が、三陸沖から房総沖の日本海溝沿いのどこでも発生しうると初めて指摘。この評価に基づくと多くの原発で従来の想定を上回る津波が襲来することになる。電力会社にとっては追加の対策が必要になる厳しい評価だ。 ただし、この「長期評価」、過去に地震の発生が確認されていないエリアも対象にしたことから、一部の専門家からは異論も出されていた。この「長期評価」を取り入れるか、入れないか。2007年12月、太平洋岸に原子力施設をもつ東京電力と日本原電、東北電力と日本原子力研究開発機構の4社が集まった。 われわれはそのときの資料を入手した。そこには、「考慮しないと言えれば助かる」「否定する材料がない」などと意見が分かれたことが記されていた。なんとこの時、東京電力の担当者の発言は、「取り込まざるをえない」と前向きなものだったのだ。現場の土木グループは積極的に対策を進めようとしていた事実が明らかになったのだ』、「4社」の会合では、「東京電力の担当者の発言は、「取り込まざるをえない」と前向きなものだった」、というのは初めて知った。
・『“御前会議”  では、なぜ東京電力は東日本大震災の際に福島第一原発で巨大津波に対応する対策を施していなかったのだろうか。 この疑問も公判の証言と取材から徐々に明らかになってきた。現場の担当者たちは長期評価に基づいた対策の検討を開始。上の写真は2008年2月の東京電力の資料だ。長期評価にもとづいた津波を想定したポンプの対策案などのほか、福島第一原発に押し寄せる津波の高さが従来の想定を上回ることが示されていた。 さらに詳細に評価をすると、より大きな津波がくるおそれがあることもわかったのだ。現場の担当者は、この内容をある重要な会議に報告し、会社全体として話を進めていこうと考えていた。 「御前会議」。2007年の新潟県中越沖地震で被害を受けた柏崎刈羽原発への対応のために設置された会議だ。その後、地震や津波など他の原発の対策に関わることもこの会議にはかられていた。 当時経営トップだった勝俣社長が参加するため「御前会議」と呼ばれ、原子力部門をまとめる武黒本部長、武藤副本部長といった幹部など約40人が一堂に会していた。 津波対策の担当者たちは、この場で長期評価を取り入れるかどうか、経営幹部の意向を確認したいと考えていたのだ。 御前会議が会社の意思形成の場、大きな方向性を確認する場だと認識していたからだ。かつてこの会議に出ていた元社員が会議について取材に答えた。 「正式な決定の場は、もちろん取締役会。御前会議はその意思形成を担う場だった」「御前会議で諮られれば、その後、上司に反故(ほご)にされることはなかった」 そして2008年2月の御前会議。いよいよ津波の予測と対策案をまとめた資料が提出された。現場の担当者は会議後、出席していた上司から特に異論はなかったとの報告をうけたと振り返る。現場はこれで御前会議の幹部と方向性を共有できたと思ったのだ。ところが経営幹部の認識はそうではなかった』、「御前会議」に「出席していた上司」は一体、具体的にどのような報告をしたのかも知りたいところだ。
・『御前会議 認識のズレ  裁判の中で、この資料について経営幹部はこう証言した。 弁護人:「書かれている内容が報告されたのでしょうか?」 武藤:「いや報告されていません」。「そもそもこの会議は何かを決めるというような会議ではありません。情報共有する場でした」 経営幹部は、現場の担当者が提出した資料について報告されたとの記憶はなかった。 いったいどうしてなのか。私たちは、この会議のメンバーだった元幹部を取材した。するとこんな答えが返ってきた。 「大きな会議で資料も大量に提出されます。一つ一つの案件を覚えているかと言われると覚えていない。しっかりと何かを議論をするような感じの場ではなかった」 対策は進める方向で認められたと認識していた現場の担当者。そうではなかった経営幹部。双方の間で認識のずれが起きていたのだ』、当日の「御前会議」には、他にどのような議題がかかったのだろう。多くの案件がかかったのであれば、「認識のズレ」はあり得るが、少なくとも現場側の発表者は最後に確認すべきだったろう。
・『「予想外で力が抜けた」  このあと、認識のずれはさらに広がる。 方向性が認められたと思っていた現場は、分析を進め、最大で15.7メートルの巨大な津波が襲うとの想定も計算していた。被害を防ぐための防潮堤も検討。建設に数百億円、およそ4年の期間かかるとする試算もはじき出した。現場の担当者たちはこの結果を、原子力本部のトップに伝える。 ところが当時、武黒原子力・立地本部長は新潟県の柏崎刈羽原発の地震対応で忙しく不在が多かった。留守を預かっていたのが武藤副本部長だった。 武藤副本部長への説明がされたのは、資料を提出した御前会議から数か月あとの2008年6月と7月。 15メートルをこえる津波の予測も示された中、現場の担当者たちは対策を進めなければ国のバックチェックの審査を通過することは難しいと考えていた。 ところが、武藤副本部長の返答は意外なものだったと担当者は証言する。 「検討のそれまでの状況からするとちょっと予想していなかったような結論だったので。分かりやすいことばで言えば、力がぬけたというか。残りの数分の部分のやり取りは覚えておりません」 専門家の間から異論も出ていた長期評価。武藤副本部長は、信頼性に疑いがあるとして、土木学会に改めて検討を依頼する考えを示したのだった。 武藤氏の証言はこうだ。
「これまでは土木学会の規格でもって(津波に対する)安全性を確認してきた。ところが、政府の地震本部は、それとは違う評価をいったと。土木学会にいま一度検討をお願いして、その扱いについて答えを出してもらう」 これが一定の結論だと受け取った現場の担当者たち。会議の直後、社内や他の電力会社の担当者に送ったメールを入手した。「長期評価の即採用は時期尚早」「経営層を交えた現時点での一定の当社の結論」と伝えていたのだ。 ところが、ここでも認識のずれが明らかになる。裁判で武藤元副本部長は次のように証言し反論したのだ。 「私は決定権限がない副本部長だったわけでありまして、それが大きなことを決められるわけもない」 だれがどの場で意志決定をするのか、社内で現場と幹部の間の認識がずれたまま、東京電力の津波対策は具体的には進まなかったのだ』、「武藤元副本部長」の発言は責任回避の典型だ。本部長が都合が悪いので、代りに報告を受けた以上は、本部長になり替わって意思決定するのが筋の筈だ。
・『「まずはできる対策を」  福島第一原発から南に約110キロ、茨城県にある東海第二原発。日本で初の100万キロワットを超える発電量をもつ原発だ。運営するのは日本原子力発電、通称日本原電。日本原電は、電力各社が出資してつくられた会社で新しい原子力技術の導入や開発などを期待されていた。 裁判から日本原電が「長期評価」に基づいた巨大津波への対策を震災前から進めてきたことが明らかになったのだ。 去年7月の第23回公判。日本原電の元社員が証言した。 「津波対策工事の検討については、地震推進本部(長期評価)を考慮した対策工事について引き続き検討を進める」 私たちが取材で入手した日本原電の資料には、長期評価に基づいた対策を「平成22年度完了目途に実施」と記されていた。東京電力が信頼性に疑いがあると考え、土木学会に検討を依頼した長期評価を日本原電は、取り入れ対策を進めていたことが初めて公になったのだ。 なぜ、費用も手間もかかることになる長期評価を取り入れる判断ができたのか。私たちは日本原電の関係者に取材を試みた。すると日本原電の社風ともいうべき背景があることがわかってきた。 「日本原電は、保有する原発は福井と茨城に4つと少なく、東電に比べれば全然小さな会社。それだけに収入源となる原発の運転をできるだけ止めないようにしたいという意識が強い。だから、もし津波のリスクがあるなら、事前に対応しておいて万一津波が来ても、大丈夫なようにしておきたいと」「長期評価などをもとに、津波がいつかくるというリスクは社内で共有されていたと思う。まずはできる対策をとっていき、大規模な工事は今後順次やっていけばいいという考えだった」 長期評価に基づく対策を進めることに大きな反対はなかった日本原電社内。対策の検討は「耐震タスク」という組織横断的なチームで行われたことが分かった。 長期評価に基づく東海第二原発の津波の予想は最大12.2メートル。建屋まで遡上(そじょう)する高さだ。横断的に土木、機械、建築などのさまざまなグループが参加した耐震タスクは、それぞれが専門的な知見から津波が襲ったときの影響やあるべき対策について議論を重ねたと言う。 そしてまとめた対策は、比較的時間をかけずに費用も抑えられる方法を複合的に実施する対策だった。海に沿って大規模な防潮堤をつくる代わりに津波の威力を弱める盛り土を実施。また、建屋の扉に防水を施し、建物の中に水が入らないようにもした。このほか、非常用の発電機も水没を防ぐため高い場所に設置しなおす対策も』、福島第一でも「非常用の発電機も水没を防ぐため高い場所に設置しなおす対策」が採られていれば、メルトダウンは避けられた筈だ。
・『動き出した東電、しかし…  一方、土木学会に検討を依頼した東京電力。あれから2年後の2010年8月。土木学会の結論がでる前に、なぜか動き始めることになる。日本原電で長期評価に基づく対策が進んでいることを知ったのがきっかけだった。関係者が振り返る。 「上司がかなり危機感を持ったというか、東電の検討がだいぶん、遅れているなという風に感じて、対策の検討を進めなきゃと」 ここで東電も各部が参加した横断的なワーキンググループを立ち上げる。そして巨大津波の対策を検討、建屋の防水対策など具体的な検討が進み始めたのだ。 ところがその途中。あの日を迎えることになる。3月11日。福島第一原発をおよそ15メートルの津波が襲い、原子炉が次々とメルトダウンしていったのだ。 事故が起きたときの心境について対策を進めようとしてきた現場の担当者は裁判で次のように証言した。 「とても残念な気持ちだったといいますか、ショックを受けたということを覚えています」「何かできたんじゃないかなというのは、当然思いましたかね。個人か、集団か、何か、規制か、東電か、一体どこで間違ったのかなということは、一生、気にはなるという点です」 ワーキンググループが予定していた4月の打ち合わせは開催されなかった』、東電でも「巨大津波の対策を検討、建屋の防水対策など具体的な検討が進み始めた」、初めて知ったが、時すでの遅しだったようだ。
・『対策を進めた日本原電。しかし、新事実が  一方で、この裁判では、電力業界全体が抱える構造的な課題も浮かび上がってきた。 「長期評価」に基づいて先進的に対策を進めていた日本原電。しかしなぜか、こうした取り組みを一切、社外には公表をしていなかったのだ。理由を探ろうと取材をすると、業界の「横並びの意識」が妨げになっていることがわかってきた。 NHKが入手した2008年に4社が集まった会合での資料。土木学会に検討を依頼した東京電力の方針に問題はないと、日本原電も含めた4社が合意した旨の内容が記されていたのだ。 さらに日本原電は、国に対して、「長期評価」に基づいた対策を取っていることを気づかれないようにしていたことも裁判の中で判明した。 公判で示された社外秘の想定問答集の資料。建屋まで津波が遡上する試算が出ていたにもかかわらず、資料には「遡上しない」と記されていた。 さらに対策工事については「万が一」のための「自主的」なものにすぎないと答えるようにしていたのだった。 いったい、どうしてここまでして隠さないといけなかったのか。私たちの取材に匿名を条件に日本原電の元幹部がインタビューに答えてくれた。 「他の電力のことも考えながら対策をやるというのが原則でして。東京電力とかに配慮をしながら、物事をすすめるという習慣が身についている。対策をやってしまえば、他の電力会社も住民や自治体の手前、安全性を高めるため対策をとらないといけなくなる、波及するわけです。だから気をつけている」 生活や経済活動を支える重要なインフラである電気。電気は全国一律で同じサービスを提供することが求められ、電力会社は電気事業連合会という組織のもと、さまざまな対策や対応で足並みをそろえてきた。 そして業界の中でも最も規模が大きく、リーダー的な存在である東京電力。各社、その意向は無視できないという。 しかし、こうした体制や考え方が先進的な取り組みを公にすることを阻んでしまったのではないか。 公表されていれば、国や自治体も知るところとなり、原発で津波の追加対策を行う機運が高まり、環境がもっと整ったかもしれない。いつ起こるかわからない自然災害に向き合うには業界の構造的な問題も解決していく必要があると強く感じる取材となった』、「日本原電」がここまで東電に遠慮しているとは、改めて驚かされた。
・『安全性を高めるには文化、習慣を変える  37回におよんだ公判から見えてきた、これまで知られていなかった事実の数々。 シンクタンクの代表も務め内閣官房参与として福島での原発事故の対応にも関わった多摩大学大学院・名誉教授の田坂広志さんに日本の原発の安全性を高めるには何が必要か聞いた。 「原発が事故を起こすとその影響は甚大です。それだけに電力会社にはほかの業界以上の安全への意識と取り組みが求められています。そのうえで安全を技術的な安全と文化的な安全の2つで見てみると、世界で起きている原発事故のほとんどはヒューマンエラーや組織の判断の失敗など文化的な安全の欠如です。例えば東京電力は民間会社です。利益を出さないといけない。そうなると起きるかわからない不確実なリスクに対して巨額な出費ができるかというと株主などに説明できない、それは難しい訳です。また東京電力はトップ企業で、業界全体のスタンダードをつくる役回りがあり、どうしても全社が納得、または準備ができるまで待つ姿勢があります。本当に民間企業が原発の安全を守れるのか、ということを検討する必要が出てきます。そこには国や規制機関がしっかりと電力会社の安全を監視することも必要になります。一方、その規制も日本では電力業界と近いことが原子力安全・保安院の時は課題になりました。規制と電力会社は完全に切り離す、アメリカでは当然のことを日本でも徹底する必要があります。さらに業界の横並び。合理的な面もありますが、原発の安全という点では最高水準のものにあわさず、低い水準のものにあわす形になってしまいます。こうしたことを国民が見たとき果たして安心と思えるか、信頼できるかということです。日本の技術的な安全はかなり上がってきています。しかし構造的、文化的な安全はまだまだだと思います。再稼働が進む中、この点を真剣に考えないと再び大きな原発事故が起きると私は心配しています」 東京地裁での刑事裁判は終わった。しかし、公判で示された新たな証言や資料は膨大にある。安心・安全に一歩でも近づくために必要なことは何か。私たちは今後も取材を続けていく覚悟だ』、「起きるかわからない不確実なリスクに対して巨額な出費ができるか」、いわゆるテールリスクへの考え方は確かに難しい問題ではあるが、「原子力安全・保安院が・・・大きな地震に加えて「極めてまれではあるが発生する可能性がある」「適切な津波」への対策を電力事業者に義務づけた」のも事実で、やはり東電はケチり過ぎたのだろう。原発を国営にしろとの主張もあるが、いいかげんな官僚に出来る筈もない。原子力規制委員会も「電力会社」と「完全に切り離」せたのかも心もとないところだ。「業界の横並び・・・低い水準のものにあわす形になってしまいます」、先の日本原電と東電の対応もその典型だろう。NHKの「私たちは今後も取材を続けていく覚悟だ」に期待したい。
タグ:畑村洋太郎 原発問題 田中俊一 NHK News web (その12)(原発事故から変われない日本人、日本の原発はこのまま「消滅」へ、東電裁判 “見えた新事実”) 選択2019年3月号 巻頭インタビュー「原発事故から変われない日本人」 日本では想像力を働かせて、皆と違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ 福島原発事故の本当のコストを誰も議論しない 「誰の責任か」ということばかりに目を向ける 福島原発事故の本当のコスト 100-500兆円ぐらいはかかるだろう 誰かが考えて上手くいったことについていくのが一番得だ、というのが日本のやり方だ。それでは、どんどん競争力が失われる。日本社会は根本的に考え方を変える必要。まず小学校から「自分で考える」訓練をしていかないと 選択2019年11月号 巻頭インタビュー「日本の原発はこのまま「消滅」へ」 原子力業界が姿勢を徹底的に正さなければ、日本の原子力に先はない 残念ながら原子力政策も見直しされないままなので、この国の原発はフェードアウトする道を歩んでいると眺めている 日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきた 最大の問題はいまだに核燃料サイクルに拘泥していること 日本の原発はそうした嘘で世論を誤魔化しながらやるという風土があった そこにつけ込まれて、今回のように、原発マネーを狙う汚い人間が集まってくる原因にもなった 使用済み燃料処分のための再処理をやろうとしているのは、日本だけ 今回の不祥事は、福島事故後から取り組んできた信頼回復のための努力の積み重ねを無に帰するもの 今回の関電の問題は犯罪にも近い行為だとは思うが、これを表面的に批判しても意味がない 「東電裁判 “見えた新事実”」 東京地方裁判所は「巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」などとして全員に無罪を言い渡した 東海第二原発では、運営する日本原子力発電が東日本大震災が起きる3年前からすでに巨大津波への対策を進めていた 東京電力の現場の担当者たちは、巨大津波への対策を進める考えだった チェルノブイリ原発事故と並びもっとも深刻な「レベル7」とされ、文字どおり史上最悪レベルの原発事故 “長期評価”分かれる見解 原子力安全・保安院が指示をした安全性の再評価 大きな地震に加えて「極めてまれではあるが発生する可能性がある」「適切な津波」への対策を電力事業者に義務づけた 政府の地震調査研究推進本部が示した、いわゆる「長期評価」 「明治三陸地震」と同程度の津波地震が、三陸沖から房総沖の日本海溝沿いのどこでも発生しうると初めて指摘 東京電力と日本原電、東北電力と日本原子力研究開発機構の4社が集まった 東京電力の担当者の発言は、「取り込まざるをえない」と前向きなものだった “御前会議” 御前会議が会社の意思形成の場、大きな方向性を確認する場だと認識 津波の予測と対策案をまとめた資料が提出された。現場の担当者は会議後、出席していた上司から特に異論はなかったとの報告をうけた 御前会議 認識のズレ 経営幹部は、現場の担当者が提出した資料について報告されたとの記憶はなかった 予想外で力が抜けた 被害を防ぐための防潮堤も検討。建設に数百億円、およそ4年の期間かかるとする試算も 武藤副本部長への説明 長期評価。武藤副本部長は、信頼性に疑いがあるとして、土木学会に改めて検討を依頼する考えを示した 武藤元副本部長 「私は決定権限がない副本部長だったわけでありまして、それが大きなことを決められるわけもない」 まずはできる対策を 日本原電の資料には、長期評価に基づいた対策を「平成22年度完了目途に実施」と記されていた 大規模な防潮堤をつくる代わりに津波の威力を弱める盛り土を実施 建屋の扉に防水を施し、建物の中に水が入らないようにもした。このほか、非常用の発電機も水没を防ぐため高い場所に設置しなおす対策も 動き出した東電、しかし… 横断的なワーキンググループを立ち上げる。そして巨大津波の対策を検討、建屋の防水対策など具体的な検討が進み始めたのだ その途中。あの日を迎える 対策を進めた日本原電。しかし、新事実が 日本原電は、国に対して、「長期評価」に基づいた対策を取っていることを気づかれないようにしていたことも裁判の中で判明 「他の電力のことも考えながら対策をやるというのが原則でして。東京電力とかに配慮をしながら、物事をすすめるという習慣が身についている 安全性を高めるには文化、習慣を変える 世界で起きている原発事故のほとんどはヒューマンエラーや組織の判断の失敗など文化的な安全の欠如です
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