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ソフトバンクの経営(その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、10月2日に取上げた。今日は、(その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか)である。なお、ヤフーとLINEの統合については、明日取上げる予定だ。

先ずは、ジャーナリストの大西 康之氏が11月1日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか 一日でも早く「携帯電話の次」が必要」のうち、無料部分の2頁目までを紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30535
・『狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」  孫正義氏率いるソフトバンクグループ(SBG)の先行きに不透明感が強まっている。海外では米シェアオフィス「WeWork(ウィーワーク)」を運営するウィーカンパニーに約1兆円の追加支援を余儀なくされ、国内では子会社のヤフーがショッピング・サイト「LOHACO(ロハコ)」を運営するアスクルの社長と社外取締役を解任、ほぼ同時に前澤友作氏の持ち株を買い取ってファッション・サイトのZOZO(ゾゾ)を傘下に収めた。 ここ半年の出来事は一言で説明できる。「成長神話の限界」だ。 SBGの成長神話の源泉は、何と言っても孫正義氏の「眼力」である。1994年にソフトバンクの株式上場でキャピタル・ゲインを得た孫氏は、その金で米国のコンピューター展示会会社、コムデックスとコンピューター雑誌を得意とする出版社のジフデービスを買収する。2社の買収総額は3100億円で当時のソフトバンクの株式時価総額2700億円を超えていた。 金額的に狂気の投資であり、そもそもなぜ展示会会社と出版社なのか。インタビューで尋ねると、孫氏は不敵に笑ってこう言った。 「コムデックスとジフデービスはアメリカにおける僕の目であり耳なんですよ」 私がこの言葉の意味を理解したのは10年近く後だった』、「狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」」に陰りが出てきたとすれば、大変だ。
・『社員5、6人の会社にポンっと100億円を出資  孫氏はスタンフォード大学の学生だったジェリー・ヤン氏とデビッド・ファイロ氏が設立した米Yahoo!が上場した1996年、社員5、6人のこの会社にポンっと100億円を出資している。ヤン氏は「今資金は潤沢だから金はいらない」と孫氏の出資を断ったが「あって困るものではない」と金を置いて帰ったという。 2000年には中国の名も無い英語教師が立ち上げた会社に20億円を出資した。その会社「アリババ」は中国のインターネット・ショッピング市場を席巻し、SBGは8兆円の含み益を手に入れた。 孫氏は業界通の間に情報網を持つコムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた。それらの会社が大化けすることで、SBGは10兆円を超える含み益を手に入れ、その信用力で米携帯大手のスプリントや英半導体のARMを買収した。 投資家の脳裏には今もこの神話が焼き付いている。この1年半のSBGの株価を見れば、投資家の迷いがよく分かる。 SBGが2018年3月期決算を発表した同年5月から9月にかけて、同社の株価は3800円から5700円に上昇した。だがその後、同社が計上した巨額利益の多くが、国際会計基準に基づく未公開企業の評価益であることが嫌気され、再び3500円まで下降する』、今日の株価は4250円と多少戻したようだ。米Yahoo!に「「あって困るものではない」と金(100億円相当)を置いて帰った」、とは剛毅なものだ。「コムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた」、彼らが探す窓口だったとは初めて知ったが、上手いやり方だ。
・『UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう  ところが投資先の配車アプリ大手、ウーバー・テクノロジーズがニューヨーク証券取引所の上場が目前に迫り、ウィーワークの上場日程も決まった2018年12月から19年4月にかけて再び6000円まで上昇する。ウーバーやウィーが第2、第3のYahoo!、アリババになる可能性が出てきたからだ。 しかし公開価格が45ドルだったウーバー株は20ドル台まで下落、ウィーは自分が所有する不動産をウィーにリースしていた自己取引などの疑惑で創業者のアダム・ニューマン氏が辞任。2019年9月としていた新規株式公開(IPO)も延期となり、その後IPOの目論見書に誤りや抜けがあったことも明らかになった。ウーバーとウィーの変調でSBG株は10月末時点で4000円近辺まで落ち込んでいる。 分かってきたのは、ウーバーやウィーが「Yahoo!やアリババのように大化けすることはなさそうだ」ということだ。 ウーバーの創業者、トラヴィス・カラニック氏は2017年、社内でのパワハラ、セクハラや会社がグーグルの自動運転技術を盗用していた問題など、さまざまなトラブルを起こして辞任した。ウィーのニューマン氏は自己取引のほか、自社株の売却や自社株を担保にした借入で7億ドルを調達し、その金でプライベート・ジェットを乗り回していたことなどが投資家の不興を買った。(3頁目以降は有料なので紹介できず)』、「UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう」、というのは確かだろう。これからが、正念場だ。

次に、Liam Proud and Karen Kwok両氏が11月11日付けロイターに掲載した「コラム:巨額債務のソフトバンク、資産下落時に逆回転リスク」を紹介しよう(記事中の会社コードは省略)。
https://jp.reuters.com/article/sofbank-breakingviews-idJPKBN1XG0EM
・『孫正義氏が会長兼社長として率いるソフトバンクグループは、ハイテク分野の巨大投資マシーンであり、気前よく重ねた借金が潤滑油の役割を果たしている。同社が抱える資産の価値が高まっていた局面では、借り入れによる経営がうまく機能した。しかし、今後は資産価値が下がって、借金が問題になりかねない。 孫氏が好んで用いる指標に基づくと、ソフトバンクグループの債務負担は、やり繰りが可能に思われる。同氏は、借入金を総資産価値の25%未満にとどめたい考えだ。この総資産には、中国電子商取引最大手アリババの株式や、携帯電話2社、半導体メーカーのArm(アーム)、1000億ドル規模の巨額ファンド「ビジョン・ファンド」が含まれる。 これらの資産価値は、上場株の時価やソフトバンクによる未上場資産の評価を踏まえると2600億ドルに上る。6月末の純債務は450億ドルで、この17%に収まる。手元の現金は少なくとも2年間の社債返済資金をカバーしており、キャッシュフローは6月までの1年間の利払い額の2倍を超える』、表面上は問題なさそうに見えるが・・・。
・『だが、こうした指標で全ての状況が説明されたわけではない。まず初めに、傘下の携帯電話会社である米スプリントと日本のソフトバンクは、合計で約900億ドルを借り入れている。 法的に考えると、両社の債務は返済原資が限定されるノンリコース型なので、ソフトバンクグループは万が一の場合、債権者の追及を免れることができる。とはいえ、孫氏がスプリントとすっぱり手を切るとは想像しがたい。そんなことをすれば、ソフトバンクグループの資産価値の10%強が一気に消滅し、他の子会社による将来の借り入れがより難しくなる。 実際に孫氏は最近、ソフトバンクグループの資産価値を利用して、経営難に陥っている共有オフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーの支援策を打ち出した。債権者は、資金繰りに窮している出資先企業への救済措置は、いわゆる「偶発債務(将来何らかの形で返済義務が生じる債務)」ではないかとみなす傾向にある。 ビジョン・ファンドは、配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズなど赤字企業の株式を保有しているという面で、別の重荷も背負っている。 同ファンドの資本のうち約400億ドルは優先株の形になっており、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドといった出資者に年間7%の配当を支払っている。優先株は厳密には債務ではないが、孫氏はソフトバンクグループの株主への利益還元よりも、優先株の配当をきっちりと行わなければならない。 また、ビジョン・ファンドは、一部投資案件について最大41億ドルを銀行から借り入れることができる契約に調印し、優先株の配当にも活用されている。その点でも資産価値が急落すれば、事態悪化に拍車が掛かる』、「サウジアラビア」の出資「のうち約400億ドルは優先株の形」、これは債務に近い性格だ。こうしてみると、実態的には債務負担は重そうだ。
・『最後に、孫氏自身の問題がある。ブルームバーグの報道によると、同氏は個人的な借り入れの担保として、保有しているソフトバンク株180億ドル相当の38%を差し入れている。ビジョン・ファンドへの投資資金としてソフトバンクの幹部・社員に提供された総額50億ドルの融資のほとんども、孫氏向けだ。つまり孫氏とソフトバンクグループはともに、ビジョン・ファンドのパフォーマンスに命運が左右される側面が強まっている。 孫氏が定義する狭義の純債務で判断しても、ソフトバンクグループの借り入れ負担は、見た目よりも重い。公式に発表している総資産有利子負債比率(LTV)は、かさ上げされた資産が前提になっているのだ。 例えば、アリババの持ち分26%について、処分すれば最大で30%の税率が課せられてもおかしくないにもかかわらず、時価の1200億ドルのままで評価している、とバーンスタインのアナリストチームはみている。 株式市場の投資家は適切に、より懐疑的な見方をしており、ソフトバンクグループの時価総額は、債務を差し引いた後の総資産価値の38%程度に過ぎない。 ソフトバンクグループの今後の利払い能力も、見かけほど堅固ではない。6月までの1年間に傘下企業から受け取った現金は45億ドル前後で、約21億ドルの債務返済費用を十分に賄えた。 ただ、現金の出所は2つだけだ。1つ目はビジョン・ファンドからの資産管理手数料と半導体企業・エヌビディアなどの株式売却益の20億ドル。2つ目は携帯電話子会社・ソフトバンクが配当金として支払った25億ドルだ。 ウィーワークの上場中止でハイテク企業の新規株式公開(IPO)に対する需要が冷え込んだことから、ビジョン・ファンドからの現金納付はもはやほとんど当てにできない。 そこで孫氏が携帯電話子会社からの配当金だけに依存するようになれば、余裕は乏しくなる。6月までの1年間のソフトバンクグループの利払い費は、携帯電話子会社から受け取った配当金の82%に達するからだ。リフィニティブのデータに基づくと、ソフトバンクグループは、向こう3年間で債務返済予定額が140億ドルに急増するという逆風にも見舞われる。 では、孫氏は現金が必要になった場合、何ができるのか。良いニュースは、流動性のある資産に不自由はしないことだ。保有するアリババ株の4%を現在の価格で売れば、税率30%と仮定しても、来年から2022年までに満期が到来するソフトバンクグループの全社債の返済資金が確保できる。2016年に320億ドルで買ったアームなどの未上場資産を手放す方法もある。 悪いニュースは、やむを得ない形の資産売却が、売り手にとって満足のいく価格になるケースがほとんどないことだろう。ソフトバンクグループはアリババの圧倒的な大株主なので、売却に動けばアリババ株の需給自体を崩してしまう。 一方、資産価値が下落するのに伴って、借り入れによって投資を拡大するという孫氏の戦略が裏目に出てくるだろう。ソフトバンクグループの純債務は、企業価値のほぼ5分の2に上る。したがって保有資産の価値が20%目減りすれば、株価は33%程度下がるはずだ。その時点で、孫氏の巨大な投資マシーンは逆回転し始める』、「逆回転」すれば大変なことになるので、要注意のようだ。

第三に、11月14日付けダイヤモンド・オンライン「「孫正義流」目利き力に不信感、ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220491
・『ソフトバンクグループが、10兆円規模の投資ファンド事業で損失を出し、7000億円規模の四半期赤字を計上した。世界中のユニコーン企業を買いあさるという巨大ファンドの投資手法は岐路に立たされている。 「私自身の投資の判断がまずかった」。6日にソフトバンクグループ(SBG)の決算説明会に登壇した孫正義会長兼社長の「反省」の弁で示されたのは、武器としてきた自身の「目利き」への懸念だ。 10兆円の投資枠を持つ「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の損失で、SBGの2019年4~9月期決算の営業損益は156億円の赤字となった。前年同期から1兆4000億円を超える記録的な落ち込みだ。 この要因は、シェアオフィス「ウィーワーク」の運営会社である米ウィー・カンパニーへの巨額投資にある。 10年に創業したウィーは、ビルのワンフロアや1棟を丸ごと借りて、それを不特定多数の利用者に転貸する不動産業が基本的なビジネスモデルだ。世界29ヵ国に528拠点を構え、会員数は52万人以上だ。事業は年々拡大を続けてきたが、創業から9年の間に利益は出していない。 ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業で、会員同士の交流を深める仕掛けを施して、一種のコミュニティーをつくり出すのが売り。そうした交流が新しい価値を生み出すといううたい文句で普通の不動産会社とは異なるビジネスモデルとされ、高い企業価値が付けられてきた。 この企業価値を演出したのがSBGとビジョン・ファンドの巨額資金に他ならない。赤字のベンチャー企業にすぎないウィーに資金を注ぎ続け、9月末時点の累計投資額は103億ドル(約1.1兆円)に上っている。今年1月にはウィーの企業価値は470億ドル(約5兆円)に達したが、その後の上場準備で転機を迎える』、「ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業」、であれば、ブームが去れば一気に業績が悪化するリスクがあり、通常の不動産賃貸業よりはるかにリスクが大きいようだ。
・『目論見書などでビジネスモデルの将来性に疑念が深まったほか、ウィー創業者のアダム・ニューマン氏の公私混同の経営や薬物疑惑などの問題が明るみに出た。さらに、ニューマン氏に普通株の20倍の議決権を割り当てるという計画も明らかとなり、9月末に予定していた上場が撤回に追い込まれた。 ウィーの9月末の企業価値は78億ドル(約8400億円)まで急落。SBGは9月末までにニューマン氏を退任に追い込んだが、巨額の評価損を計上することになった。 結果、7~9月期(19年度第2四半期)の投資ファンド事業の営業損失は9703億円に達し、SBGの営業損失は7044億円、純損失は7002億円に上った。いずれも1981年の創業以来、最大の四半期赤字だ。 孫社長は、今回の損失計上の最大の反省として「ウィーの価値を高く見過ぎた」と振り返ると同時に、ニューマン氏の暴走を食い止めることができなかったガバナンスの問題を指摘した。 だが、そのニューマン氏の奇抜さに入れ込み、持ち上げてきたのは孫社長自身に他ならない。 もともとソフトバンクは、孫社長自身の目利きによるベンチャー投資で成長してきた。96年には、米ヤフー創業者のジェリー・ヤン氏とデビット・ファイロ氏の2人に惚れ込み、社員が5~6人だった同社に100億円を出資する決断を下した。また、2000年には、創業間もない中国のアリババのジャック・マー氏と面談し、会って10分もたたずして20億円の出資を即断即決したことが、現在の13兆円に上るアリババの保有価値につながっている。 だが、ウィーについてはニューマン氏が経営に失敗したのは明らかだ。この経営者に賭けた孫社長の投資判断には疑問符が付く。今後のビジョン・ファンドの投資については、フリーキャッシュフローを重視して、創業経営者のガバナンスを評価する基準を設ける方針だ。孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する狙いがある。 一方でSBGは、これだけの損失を計上したウィーについて損切りすることなく、全面支援に乗り出す』、「孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する」、とはいうものの、そんなに簡単に出来る訳はなさそうだ。
・『「第2のウィー」も? ユニコーン買いあさる投資手法の曲がり角  その理由として、かつてウィーと締結した株式買い増しの契約の存在がある。来年4月に15億ドルのワラント(株式買取権)を購入する契約で、ウィーが経営危機に陥った後もこの義務を解消する交渉は受け入れられず、株式転換価格の交渉に切り替えざるを得なかったのが実態だ。 こうしてSBGはワラントの購入義務を前倒しで履行する代わりに株式の転換価格を引き下げ、保有する株数を増やして経営の関与を高める判断にかじを切った。 金融支援のパッケージは、15億ドルのワラントの購入に加え、最大30億ドルの発行済み株式の公開買い付けとともに、新規に債券や信用保証で50億ドルの資金供給も実施する予定で、最大95億ドル(約1兆円)となる。 ベンチャー企業の支援に巨額の資金を投じる異例の判断について孫社長は「今回は例外」と弁明したが、今後も「第2、第3のウィー」が出てくる懸念は拭えない。 7~9月期は、未上場のウィーだけでなく、ライドシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズ、ビジネスチャットアプリの米スラック・テクノロジーズなど上場企業の株価下落により、計25銘柄で1兆1276億円の評価損を計上した。今後、他の投資先の企業価値も急落するリスクはくすぶるが、孫社長自身も「投資に10勝0敗はあり得ない。同じような懸念はある」と認める。 9月末時点で、ビジョン・ファンドの投資先は88社で、累計投資額は8.2兆円。すでに1号ファンドは投資枠10億円に達して新規投資は終了。予定通りに2号ファンドを立ち上げる計画で、SBGは自己資金で一部の運用を開始した。だが、他の資金の出し手は慎重にならざるを得ない。すでに複数の投資家が資金拠出の見直しに踏み切ったもようだ。 ウィーは、ウーバー(5月10日に上場)や同じくライドシェア大手の中国・滴滴出行(DiDi)、民泊大手のエアービーアンドビーと並ぶユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)の代表だった。今回の損失計上により、世界中のユニコーン企業に巨額の資金をつぎ込んで企業価値を引き上げるというビジョン・ファンドの投資手法は曲がり角を迎えている』、ソフトバンクGはもともとベンチャーファンド的な性格があったのが、ビジョン・ファンド創設でますますその性格を大きく強めた。「曲がり角を迎えている」のは「ビジョン・ファンドの投資手法」だけでなく、ソフトバンクGの基本戦略そのものの筈だ。

第四に、元銀行系エコノミストで、法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏が11月18日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30809
・『大赤字で本当に反省しているのか  11月6日、ソフトバンクグループ(ソフトバンク)が2019年7~9月期の連結決算を発表した。それによると、最終損益は約7002億円の赤字だった。これは、四半期ベースで過去最大の赤字だ。グループを率いる孫氏は「大赤字で反省している」と述べた。 巨額の損失が発生した背景の一つには、ソフトバンクがかなり急いで成長を追求してきたことがある。同社は、世界有数のIT先端企業を糾合することを目指している。ただ、成長にこだわるあまり、やや高値での株式取得が重なったことに加えて管理体制が甘くなってしまった。そうした事態は、いってみれば“急成長に対するコスト”といえなくもない。 また、ここへきて世界経済に関する不確定要素が増えていることもマイナスの要因として働いた。世界全体で非製造業は安定を保っているものの、米国の保護主義的な政策の影響もあり、サプライチェーンの分断などで製造業の景況感が不安定化している。 米中貿易摩擦の影響などを考えると、当面、短期間で投資家のリスク許容度が大きく高まる展開は期待しづらい。そうした状況下、ソフトバンクが成長エンジンのパワーを維持できるか注目される』、政治経済面も踏まえて分析するとはさすがだ。
・『経営は「ボロボロ」  足許、ソフトバンクの経営は厳しい状況に直面している。7~9月期の業績は、孫氏自ら『ボロボロ』と評するほどだ。とくに、ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない。 ソフトバンクは、未上場のスタートアップ企業に積極的に投資を行い、新規の株式公開(IPO)を実現して株を売却し、利得を手に入れることで成長(企業価値の増大)を目指してきた。具体的に、ソフトバンクは、創業者である孫正義氏の企業家(創業者)の「資質を見極める力=眼力」によって買収や新興企業への出資を重ね、業績拡大を実現した。 さらなる成長を目指し、ソフトバンクは10兆円規模の“ビジョン・ファンド”を設定し、IT先端企業やスタートアップ企業への出資などを積極的に進めてきた』、「ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない」、その通りだ。
・『積極的な投資より大切なこと  やや気になることは、ソフトバンクが成長を追求するあまり、企業家の資質や新興企業の体制を冷静に見極めることを軽視してしまった部分があると考えられることだ。ソフトバンクは米オフィスシェア大手ウィーワークを運営するウィーカンパニーのコーポレート・ガバナンス上の問題点を十分に把握できなかった。 ウィーカンパニーのIPOが延期され、資金繰り懸念が高まり、企業価値が毀損された。この結果、7~9月期、ソフトバンクはウィーカンパニーへの投資から約82億ドル(約8900億円)の損失(評価引き下げ)を被った。 ソフトバンクの投資戦略は、利害関係者の不安も高めている。当初、ソフトバンクはサウジアラビア政府などから出資を募り、第2号のビジョン・ファンドの運営を開始しようとしたが、ウィーカンパニーのIPO延期などを受け、サウジアラビアは第2号ファンドへの出資を決められていないとみられる。 第2号ファンドはソフトバンクの資金を用いて投資を進めている。足許、ウィーカンパニーがリストラを進めていることなどを考えると、ソフトバンクの積極的な投資スタンスは冷静に見直されるべき時を迎えているといえるだろう』、「第2号ファンドへの出資」がソフトバンクG以外には期待できなくなれば、「積極的な投資スタンス」は自ずから見直さざるを得なくなるだろう。。
・『ソフトバンクと世界経済の相関関係  ソフトバンクの業績悪化につながった背景の一つとして、「世界経済の基礎的な条件=ファンダメンタルズ」が大きく変化してきたことは見逃せない。 2017年5月にソフトバンクが第1号のビジョン・ファンドを設定した時、世界経済は比較的堅調に推移していた。とくに、米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)をはじめ、世界のIT先端企業の成長期待は高かった。 半導体業界の一部では、人工知能(AI)の開発と実用化に向けて、高性能のICチップやDRAMなどのメモリー需要が飛躍的に高まるという強い期待もあったほど、先行きへの楽観が多かった。 その中で、ソフトバンクはAIが人間の知性を超越する時代を見据え、先端テクノロジーなどに強みを持つ企業への投資を急速に拡大した。その考えは、ITを駆使して石油依存度を低下させようとしたサウジアラビア政府などの共感を得ることもできた。 同年12月に米トランプ政権が1.5兆ドル規模の減税を実施し、世界経済への楽観が追加的に高まったことも、ソフトバンクへの期待を高めただろう』、孫社長がトランプ大統領と面談したのも記憶に新しいところだ。
・『熱気に巻き込まれ、冷静さを欠いた  しかし、2018年に入ると、中国経済の減速が鮮明化した。共産党政権による景気刺激策にもかかわらず中国経済が持ち直す兆しは見られない。中国経済は成長の限界を迎えたと見られる。 また、米国は中国に制裁関税を賦課し、米中貿易摩擦が世界経済を下押ししはじめた。世界的にサプライチェーンが寸断され、製造業の景況感が急速に悪化した。世界的なデータセンター向けの投資減少なども重なり、世界の半導体市況も悪化した。 7~9月期の業績を見る限り、ソフトバンクには、一時の“熱気”に巻きこまれ、変化を冷静に見極めることが難しかった部分があったとみられる。そのため、冷静に投資先企業のビジネスモデルや創業者の資質を冷静に見極めるよりも、積極的な投資拡大を優先してしまったようだ。 それは、決算会見にて孫氏がウィーカンパニーへの出資が「高すぎた」と反省の弁を述べたことから確認できる』、「一時の“熱気”に巻きこまれ、変化を冷静に見極めることが難しかった部分があったとみられる」、孫社長を「忖度」して多少遠慮気味な表現だが、その通りだ。
・『景気が一段と減速する可能性も  当面、ソフトバンクの業績がどうなるかは不透明の部分が残る。現在、個人消費を中心とする米国経済の落ち着きが、世界経済を支えている。今すぐに世界経済が大きく落ち込む可能性は低い。世界的に株価も高値圏を維持している。アリババをはじめとするソフトバンク保有株式の評価額は約28兆円にまで上昇している。 ただ、世界経済の先行きは楽観できない。米中の貿易摩擦にはIT先端分野での覇権争いや中国の産業補助金など、短期間での解決が難しい分野も含まれる。米国政府内には、米国企業などによる対中投資を制限すべきとの意見もあるようだ。米中間の制裁・報復関税がどうなるかも見通しづらい。 景気循環の観点から見ても、米国では企業の設備投資が鈍化している。景気が一段と減速する可能性は軽視すべきではない。中国では生産・投資・消費が低迷し、さらに景気が落ち込む恐れもある。当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい。 一方、長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう。世界全体でAIが活用される分野は増えるだろう。企業や家庭など様々な経済活動の場において、スマートスピーカーやAIを搭載した機器が使われ、“IoT(モノのインターネット化)”に関する取り組みも加速すると期待されている』、「長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう」、確かにその可能性は否定できないが、「当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい」、この当面の嵐を乗り切れるかが、最大の注目点の筈だ。
・『不透明要素が残る今後の業績見通し  このように考えると、ソフトバンクが傘下および投資先企業の成長を取り込むには相応の時間がかかるだろう。それまで、ソフトバンクは安定的に収益を獲得し、事業や経済環境の変化といったリスクへの抵抗力をつけなければならない。 そのために、ソフトバンクは収益基盤の整った企業との経営統合を重視しはじめたようだ。ヤフーを運営する傘下のZホールディングスが、無料通信アプリ大手のLINEと経営統合に関して協議しているのはその表れといえる。 現時点で、そうした取り組みの実現を含め、ソフトバンクの収益にどのような変化があるかを予想することは容易ではない。同時に、ソフトバンクはスタートアップ企業などへの投資を重視する姿勢を崩していない。ソフトバンクの業績がどうなるか、不透明な部分は多いと考えられる』、「ヤフーを運営する傘下のZホールディングスが、無料通信アプリ大手のLINEと経営統合」、については明日取上げる予定である。ご期待を!
タグ:不透明要素が残る今後の業績見通し (その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか) 当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい 長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう 景気が一段と減速する可能性も 熱気に巻き込まれ、冷静さを欠いた ソフトバンクと世界経済の相関関係 ソフトバンクが成長を追求するあまり、企業家の資質や新興企業の体制を冷静に見極めることを軽視してしまった部分がある 積極的な投資より大切なこと ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない 経営は「ボロボロ」 大赤字で本当に反省しているのか 「ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか」 真壁 昭夫 「第2のウィー」も? ユニコーン買いあさる投資手法の曲がり角 孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する狙い ニューマン氏を退任に追い込んだが、巨額の評価損を計上 上場が撤回に追い込まれた。 ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業 シェアオフィス「ウィーワーク」の運営会社である米ウィー・カンパニーへの巨額投資 7000億円規模の四半期赤字を計上 「「孫正義流」目利き力に不信感、ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字」 ダイヤモンド・オンライン ソフトバンクグループの純債務は、企業価値のほぼ5分の2に上る。したがって保有資産の価値が20%目減りすれば、株価は33%程度下がるはずだ。その時点で、孫氏の巨大な投資マシーンは逆回転し始める 個人的な借り入れの担保として、保有しているソフトバンク株180億ドル相当の38%を差し入れている 孫氏自身 実態的には債務負担は重そうだ 資本のうち約400億ドルは優先株の形 ビジョン・ファンド ノンリコース型 傘下の携帯電話会社である米スプリントと日本のソフトバンクは、合計で約900億ドルを借り入れている 後は資産価値が下がって、借金が問題になりかねない 同社が抱える資産の価値が高まっていた局面では、借り入れによる経営がうまく機能した 「コラム:巨額債務のソフトバンク、資産下落時に逆回転リスク」 ロイター Liam Proud and Karen Kwok UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう スプリントや英半導体のARMを買収 コムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた 中国の名も無い英語教師が立ち上げた会社に20億円を出資した。その会社「アリババ」 米Yahoo!が上場した1996年、社員5、6人のこの会社にポンっと100億円を出資 社員5、6人の会社にポンっと100億円を出資 米国のコンピューター展示会会社、コムデックスとコンピューター雑誌を得意とする出版社のジフデービスを買収 ソフトバンクの経営 「成長神話の限界」 ウィーカンパニーに約1兆円の追加支援 ソフトバンクグループ 狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」 「なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか 一日でも早く「携帯電話の次」が必要」 PRESIDENT ONLINE 大西 康之
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