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中国国内政治(その7)(すっぱ抜かれた悪行 新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ 徹底的な新疆弾圧を指示した習近平、中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出 衝撃の全貌) [世界情勢]

中国国内政治については、昨年8月27日に取上げた。1年以上経った今日は、(その7)(すっぱ抜かれた悪行 新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ 徹底的な新疆弾圧を指示した習近平、中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出 衝撃の全貌)である。

先ずは、元産経新聞北京特派員でフリージャナリストの福島 香織氏が本年11月21日付けJBPressに掲載した「すっぱ抜かれた悪行、新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ、徹底的な新疆弾圧を指示した習近平」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58326
・『ニューヨーク・タイムズが、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区に関する内部文書24件403ページをすっぱ抜いたスクープは、これが本物なら、天安門事件の真相に迫った張良が持ち出した天安門文書に匹敵するジャーナリズムの快挙と言えるかもしれない。 「これが本物なら」とあえて言うのは、今のところ新疆ウイグル自治区当局および中国サイドは、この文書が捏造文書であると主張しているからだ。その可能性はゼロではない。というのも、これだけの大量の文書を手に入れるには、共産党中央のハイレベル関係者によるリークが考えられるのだが、特ダネを連発する記者ないしはメディアの信用を落とすために、わざとニセ文書をつかませる罠である、ということも考えられるからだ。 こういう中国のニセリークには多くのメディアが苦い経験を持っている。産経新聞が2011年7月に報じた「江沢民死去」の誤報は、中国当局がメディアを陥れるための偽情報に騙された1つの典型例だろう。 だが、私はこの内部文書を全文読んだわけではないが、一部公開されているものを読む限りでは、本物ではないか、と見ている。 「ラジオ・フリー・アジア」(米国の政府系ラジオ放送局)などの在米ウイグル人記者たちが共産党関係筋に取材して報道した内容と符合するし、私自身が体制内学者たちに聞いた習近平の新疆政策の背景なども、こうした新疆文書の内容と一致している(詳しくは拙著『ウイグル人に何が起きているのか』をお読みいただきたい)。 北海道大学教授が中国の古本屋で買い求めた国民党に関する歴史史料のような、カビの生えた文書ですら機密文書扱いされてスパイ容疑で逮捕されるのだから、新疆における現在進行形の政策に関する秘密文書の入手は非常に危険を伴う仕事であったはずだ。まずは命がけのスクープをものにしたニューヨーク・タイムズを讃えたい。そして、このスクープの意義と影響を考えたいと思う』、「中国のニセリーク」で「産経新聞」が引っかかったのは軽微な誤報に過ぎないが、今回のは影響が深刻なだけに「ニセリーク」の可能性は小さいのではなかろうか。
・『「一切の情けをかけるな」と習近平  まずニューヨーク・タイムズのスクープの内容を簡単におさらいしたい。 入手した24の文書は一部内容が重複するが、およそ200ページ分が習近平や指導者の内部演説、150ページ分がウイグル人に対する管理コントロールに関する指示と報告。さらに地方のイスラム教制限に関する言及がある。 これらの文書がどのように集められたのかは不明ながら、中国政府のこうしたウイグル弾圧に対して、内部ではかなりの不満があることがうかがえる。 中国最高指導部の政策制定プロセスは秘密とされ、とくに新疆のような資源が豊富で、パキスタンやアフガニスタンなど中央アジアと隣接する敏感な地域に対する政策決定プロセスは厳密に秘匿されてきた。この地域はムスリムの最大集中居住地域であり、言語体系から文化、価値観に至るまで中国共産党や漢族の価値観とは異なり、そういったことから差別され、また制限も課せられていた地域だ。 中国当局は国際社会に向けて、ウイグル人の強制収容施設について「職業教育訓練センターである」といういかにも慈善や福祉目的の施設のように説明しているが、文書の中では、現場の鎮圧を示す言葉や命令形表現が使われており、強制的な弾圧命令として現場官僚に通達されている。 例えば、ウイグル人留学生が夏休みに新疆の実家に帰ってきたとき、家に父母がおらず親戚も失踪、隣人たちも姿がない。みんな強制収容されていて、学生が当局の官僚に「家族はどこにいますか」と問い合わせてきたとする。そのとき、どう答えるべきか? といった模範解答も指示されている。「彼らは政府が建てた研修学校にいる」と答えるのが模範解答例だ。もし学生がさらに説明を求めたら「彼らは罪を犯したのではないが、学校から離れることはできない」と答える。さらに「もしもあなたが彼らを支持するのならば、それは彼らのためにも、あなたのためにも良いことだ」という言い方で、学生の答え方次第で家族の拘禁時間が短くなったり延長したりすることを伝えるよう指示されている。つまり恫喝だ。 父母の強制連行を学生に見られた場合、父母の学費を誰に支払ってもらえるのか学生が知りたがった場合、労働力を奪われ畑を耕す人間がいなくなったといわれた場合の模範解答もある。そして官僚に恨みを抱きそうな人間に対しては、恫喝を交えて、共産党の助けに感謝し、沈黙するように求めよと指示している』、キメ細かい想定問答には驚かされた。習近平指導部は本気のようだ。
・『また、習近平が官僚たちに向けて行ったとされる内部演説では、鎮圧を基本とすることを訴えていた。 2014年4月の習近平の新疆視察前の3月1日に、雲南省昆明駅などで「ウイグル人テロリスト」による大襲撃事件があり、150人以上が負傷、30人以上が死亡した。これを受けて習近平は「反テロ、反浸透、反分裂の闘争」は、専制機関を使い「一切の情けをかけるな」と指示していた。 さらに、2016年8月に陳全国が新疆ウイグル自治区の新書記に就任した後は、新疆における収容施設が急速に拡大した。陳全国は習近平の演説を官僚たちに伝えながら、その内容を徹底的に遂行するよう指示していた。 こうした徹底鎮圧指示が現地の数千人に及ぶ官僚幹部らの懐疑と抵抗にあったことも、文書から判明した。現地幹部たちは民族間の緊張を過激化させ、経済成長が扼殺されることを懸念したという。 これに対し陳全国は、こうした抵抗感を示す幹部を粛正し、その中には県レベルの指導幹部も含まれていたという。莎車県の指導幹部の王勇知に関する報告書が11ページおよび15ページ分あるが、彼は民族間対立を解消するために経済発展に力を入れる政策をとっており、それまでの評価は高かった。だが、陳全国時代以降は、全県で強制収容された2万人のムスリムのうち7000人をひそかに釈放していたことがばれ、「党中央の新疆政策に対する深刻な違反」で拘留、起訴され、権力剥奪ほか懲罰を受けたという』、「徹底鎮圧指示が現地の数千人に及ぶ官僚幹部らの懐疑と抵抗にあった」、日々、ウイグル人と対峙している現地幹部にすれば、本心では出来るだけ穏便に済ませたいのが人情だろう。
・『けっして善意ではない新疆政策の根本  また今の習近平政権の極めて過激なウイグル弾圧が政策として打ち出された背景に、2009年7月5日の「7.5ウルムチ騒乱」や2014年5月22日のウルムチ市の朝市襲撃事件が指摘されている。 「新疆独立派によるテロ」とされる朝市襲撃事件では、襲撃者が車2台で朝市に突っ込み、爆発物を投げつけ、襲撃者4人を含めて39人の死者が出た。この事件の前の4月30日にはウルムチ駅で爆発事件が起き、自爆した2人を含む3人が死亡、79人が負傷する事件が起きている。これは習近平が新疆を視察したタイミングであり、習近平暗殺の噂も囁かれた事件だ。この新彊視察旅行前の3月1日には雲南省昆明駅で、警官5人を含む34人が死亡した「ウイグル族過激派による暴力テロ事件」が発生していた。 こうした新疆における暴力事件を受けて、習近平は新疆政策に関する4つの秘密演説を展開する。その中で習近平はウイグル人の大規模拘束を直接命令はしていないが、「専制」を手段として、新疆からイスラム過激派分子を徹底排除することを呼び掛けている。 また習近平は、経済発展を通じて新疆の不安定さを抑制していくという以前の中国指導者のやり方について、「それでは不十分だ」「イデオロギー上の問題を解決して、新疆地域のムスリム少数民族の思想を作り変える努力を展開せよ」と指示。これは2009年の7.5ウルムチ騒乱以降、胡錦濤政権が展開した経済優先の新疆融和政策を批判している内容といえる。 胡錦濤政権は、7.5ウルムチ騒乱の原因は当時の自治区書記の王楽泉の腐敗政治によるウイグル人搾取に対する不満と恨みがあると見た。そこで、ウルムチ騒乱を鎮圧したのち、経済発展によって民族間の格差と不満を解消する比較的融和的な政策を打ち出した。だが、習近平はこれを生ぬるいと批判したのである。 自分の前の指導者の政治が失敗だったことを証明することで自分の政策の正しさをアピールするやり方は、中国に限らず政治家の常套手段だが、習近平の場合、胡錦濤の新疆政策を否定するために必要以上に強硬政策に転じたともいえそうだ。 ニューヨーク・タイムズによると、2014年ごろから登場した再教育施設と称する強制収容施設は、当初は数十人から数百人のウイグル人を収容する小型施設が多かった。施設の目的は、イスラム教への忠誠を捨てさせ、共産党への感謝の情を植え付けることだった。だが、2016年8月に陳全国が書記になると、数週間後に地方官僚に召集をかけて、習近平の秘密講話を引用しながら、新たな安全コントロール措置と強制収容所の拡大を命じたのだという。 このスクープは、共産党が現在行っている新疆政策がけっして、国際社会に対し説明しているようなウイグル人の再就職支援といった「善意」の目的ではなく、また建前で謳う多民族国家や人類運命共同体といった理想とは程遠い、「専制」による民族・宗教・イデオロギー弾圧であり、支配管理強化であることの明確な証拠となるものと言えるだろう。今、新疆で起きている問題は、間違いなく人道の問題なのだということを証明する内部資料という意味で、このスクープの意義と影響は大きい』、「2014年4月の習近平の新疆視察前」や後にテロ事件がこれだけ頻発していたとは、改めて驚かされた。「習近平の場合、胡錦濤の新疆政策を否定するために必要以上に強硬政策に転じたともいえそうだ」、「建前で謳う多民族国家や人類運命共同体といった理想とは程遠い、「専制」による民族・宗教・イデオロギー弾圧であり、支配管理強化であることの明確な証拠となるもの」、いつまでこんな乱暴な強圧政策を続けるのだろう。アフガニスタンにロシアや米国が手を焼いた挙句、支配できなかったことを無視しているのだろうか。
・『つながっているウイグル問題と香港問題  このスクープ記事を書いたニューヨーク・タイムズの記者は香港駐在で、このニュースも「香港発」となっているのは、なんとも言えない気分だ。というのも、今、香港はまさに“新疆化”している状況だからだ。 若者の中国専制に対する命がけの抵抗を中国は「テロ」と表現し、その弾圧を正当化しようとし、さらには、数千人の若者を「暴動」に関与したとして手当たり次第に拘束し、どこに収容されているのか、ケガの手当てがされているのか、弁護士にも家族にもわからないという人が多々存在する。 香港の人権団体・本土研究社によれば、深圳に近い山間部に、「反テロ訓練センター」の建設予定があり、19億香港ドルの予算が計上されているという。この施設は新疆ウイグル自治区のテロ対策施設を参考にしており、実際に香港警察は2011年から毎年エリート警官を7人ずつ新疆ウイグル自治区のテロ対策施設での研修に派遣しているそうだ。訓練センターには新疆と同じく反テロ再教育施設のような洗脳施設も併設されるのではないかとの話も出ている。 ウイグル人の中にISのテロに参与する人間がおり、香港のデモ参加者の中にも破壊活動や血生臭い暴力を振るう人はいる、というのは事実だ。だが、それを理由に、ウイグル人全員、香港人全員が無差別に捕まえられ、拷問や虐待が行われていることを国際社会は座視してはいけないだろう。また、どのような犯罪者にも最低限の人権があり、公正な司法プロセスに従って裁かれるのが現代文明国家を名乗る最低の条件だ。中国がその最低限の条件・法治を備えない限り、中国のテロ対策、暴徒鎮圧という建前での暴力的権力の行使に、一分の説得力もない。 ウイグル問題、香港問題はつながっている。それが台湾や南シナ海周辺国家や、あるいは日本に波及する可能性が、絶対ないとは言い切れない。だからこそ、私はウイグルや香港の問題に関心を持ち続けてほしいと繰り返し訴えるのである』、説得力ある主張で、その通りだ。

次に、地政学・戦略学研究者の奥山 真司氏が11月22日付け現代ビジネスに掲載した「中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出、衝撃の全貌」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68571
・『NYT紙の超弩級スクープ  アメリカの有力紙であるニューヨーク・タイムズ紙から、世界を揺るがすような衝撃的なニュースが発表された。11月16日、中国政府の高官によるリークでもたらされた膨大な「内部文書」の存在をネット上で報じたのだ。 この文書によると、北京政府は新疆ウイグル自治区で「職業訓練を行っている」と主張する施設にウイグル人たちを強制的に収容し、外部と通信が遮断された環境の中で徹底した思想教育を行っているという。 また、2014年に習近平国家主席が非公開で行った演説の内容にも触れており、ウイグル人の取締りについて「容赦するな」という指示を出していたことや、ウイグル人の弾圧をめぐって共産党内からも反発する声が出ているといった事実を伝えている。 さらに衝撃的なのは、「強制収容所」と言われる施設にウイグル人を収容する際、残された家族にどう対応すべきかについても、北京政府が具体的なマニュアルを作成しているということだ。 まずここでお断りしておきたいのだが、筆者は中国を専門に研究している人間ではない。したがって、中国側の詳しい事情の解説や分析については、そちらを専門とするジャーナリストや研究者の方々におまかせするつもりだ。 本稿では、現在進行中の「米中冷戦」とも言えるグローバルな世界政治の戦略状況の文脈の中で、ニューヨーク・タイムズ紙の記事を分析しつつ、最終的には、日本が本件をどう理解し、どう行動すべきかについても簡潔に提言してみたい』、第一の記事でも紹介したが、これはより詳細なものらしい。「ウイグル人の弾圧をめぐって共産党内からも反発する声が出ている」、これを弾圧路線で押し切った習近平国家主席はかなり強引なようだ。
・『北京政府に不満を抱く幹部のリークで  この内部文書の分析記事は、2人の記者の共著となっている。ともに中国取材のベテランだ。 1人目はオーストラリア出身の元ロイター通信の記者で、中国に20年の滞在歴があるクリス・バックリー記者。もう1人は、同紙の香港担当のオースティン・ラムジー記者である。 当記事は香港発のものだが、ラムジー記者はこの記事をまとめるために、しばらくの間、香港のデモ活動に関する取材と報道を停止していたようだ。 記事そのものは印刷すると40ページ前後にもなる膨大なものであり、あまりに長いため、ラムジー記者による「5つのポイント」と題されたまとめ的な記事も同日に発表されている。 記事のもととなった内部文書は、北京政府のやり方に不満を抱いた中国共産党の幹部によって、当然ながら匿名でもたらされたものだという。文書は24本、全体では403ページにわたる膨大なものであり、同紙のネット記事では、原書の一部が画像化され公開されている』、「北京政府のやり方に不満を抱いた中国共産党の幹部によって、当然ながら匿名でもたらされたもの」、あり得そうな話だ。
・『家族が「強制収容」に気づいたら…  記事はまず、新疆ウイグル自治区から中国国内の別の地域の大学や、海外留学などに出ている学生が、休暇期間に自宅に帰り、家族の誰かが強制収容所に収容されていることに気づくというエピソードから始まる。 そして、そのような「残された家族」たちからの怒りの問いかけに、同地区政府がどのように対応すべきかについて、マニュアルが存在することが記される。 さらにはそのマニュアルが、北京政府が過去3年間に同地区に設けてきた「職業訓練所」と称する強制収容所や、北京政府が唱える「対テロ作戦」の実態を暴く、中国共産党の歴史でも外部に漏洩することが非常に稀な内部文書の一部であることが明らかにされるのだ。 記事では、内部文書が暴露した「衝撃の事実」として、4つの項目が挙げられている。 (1)習近平は、2014年に政情不安にあった新疆ウイグル自治区を訪問して以降、「容赦ない」統治方針に転換したこと。 (2)外国でのテロ事件の頻発や、米国のアフガニスタンからの兵力撤退によって、北京の指導層がイスラム教徒の脅威を懸念し、徹底弾圧に踏み切ったこと。 (3)国際的にもニュースになっている同地区の強制収容所の建設は、2016年8月に同地区のトップとなった陳全国(Chen Quanguo)が、習近平が内部向けに行った演説を背景として正当化することにより、急激に進められたこと。 (4)ところがこの弾圧は、ウイグル人と漢族の民族対立の激化や、同地区の経済成長の鈍化を恐れた現地の共産党幹部たちから抵抗に遭っており、中には収容所から「囚人」を7000人も逃したことが発覚して処罰された者もいたこと。 いずれも注目すべきことであるが、私は以下の5つの論点が国際的な戦略状況に大きな示唆や影響をもっていると感じる。それぞれ順に説明していこう』、「外国でのテロ事件の頻発や、米国のアフガニスタンからの兵力撤退によって、北京の指導層がイスラム教徒の脅威を懸念し、徹底弾圧に踏み切った」、融和ではなく、「徹底弾圧」とは最終的にはどうするつもりなのだろう。
・『「むしろ共産党に感謝せよ」  この文書においてまず注目すべきは、ウイグル人などイスラム系少数民族に対する弾圧の、あからさまかつ具体的な手段が紹介されていることだ。 収容されたあとに残された家族への対応マニュアルについては、すでに触れた通りだが、その理由を問いかけてくる家族に対しては、 「あなたの家族は収容されたが、いずれあなたも政府のこの措置に賛成し、支持するようになるはずだ」「その家族本人だけでなく、あなた自身にも良い結果をもたらすものだ」「あなたの家族は無料で高等教育を受けているのだ。むしろ共産党に感謝せよ」といった、自由主義社会の価値基準では信じられないような受け答えが、「模範解答」として示されている。 また、新疆ウイグル自治区の住民の中でも特に頭脳明晰で優秀な若者は、伝統的に共産党の指示によって中国国内の別の大学などに送られ、後に「ウイグル人のエリート」として同自治区の共産党に忠実な公務員や教員になることを期待されていることや、こうしたエリートたちが、近年はSNSなどを含めて厳しい監視対象下に置かれていることが文書から判明している。 たとえば、彼らエリートが「WeChatやWeiboをはじめとするSNSに間違った意見を書き込むこと」については、彼らの中国国内における社会的つながりの広さゆえに「その意見をつぶすことが難しくなる」と北京政府が危惧していることが記されている』、確かに「ウイグル人のエリート」の扱いには気を使わざるを得ないだろう。
・『家族を人質にとる  さらに、ウイグル人に対する想定問答の中には、 「あなたの行動が模範的なものであれば、(訓練施設に入っている)親族の評価も高まるが、その逆の場合には悪影響が出る」というあからさまな脅しと、背景にいわゆる「信用スコア」による評価システムがあることを匂わせるようなものも含まれているという。 このような「親族を人質にとる」という方法は、やや形は違うが、反北京的な民主化運動を展開したり、それを支持するような意見をSNS上に書きこんだ、海外留学中の漢族の学生たちに対しても(そしてもちろん、その他の少数民族出身の中国人にも)行われている。 これは俗に「タコ理論」(Kite Theory)と呼ばれるものである。オーストラリアにおける北京の浸透工作を暴き、同国でベストセラーとなった『サイレント・インベージョン』の著者であるチャールズスタート大学のクライブ・ハミルトン教授によれば、〈中国は収監したいと思う人間を強制送還するための独自の手段を持っている。そして「自発的」に帰国するよう促すための方策があるのだ……逃亡犯は凧のようなものであり、身体は海外にいても、その糸は中国国内とつながっている。[中国警察]は家族や友人を通じて常に彼らを発見することができる〉(p.51) というのだ。これは親族を拘束したり、その身の危険を匂わせることによる「自発的な引き戻し」の例に関する指摘だが、似たようなケースはカナダやアメリカでもニュースになっている。 より監視の厳しい国内で、北京が同じようなことをやっていないと考えるのは難しいだろう』、「家族を人質にとる」、汚い手だが、中国人のように家族を大切にする国では有効な手段だろう。
・『習近平が直接指示していた  2つ目の論点は、習近平が新疆ウイグル自治区の現状についてかなりの知識を持って語り、自ら弾圧政策を決定して指示を出していたことが、今回の報道で明白になった点だ。 報じられた文書の中身は、習近平が非公開の場で行った内部向けの「秘密演説」の内容がほぼ200ページと、全体のおよそ半分を占めている。しかも、公的には絶対に言えないような、かなり生々しい指示を現地政府の職員や官僚たちに対して伝えていたことが見てとれる。 たとえばここで興味深いのは、2014年に行われた、初めてにして唯一の習近平の「現地入り」の様子が示されていることだ。 文書によると、習近平は2014年の4月に3泊4日のスケジュールで新疆ウイグル自治区を訪れているのだが、その滞在の最終日である30日には、ウルムチ郊外の駅でウイグル人の武闘派2人が自爆テロを起こして80人の負傷者と1人の死者が出ている。 また、その約1ヵ月後にはウルムチの野菜市場で爆弾テロが起こっており、94人の負傷者と少なくとも39人の死者が出ているのだ。 習近平は、このような同地区で頻発するテロと治安状態の悪化を踏まえて、メディアには取り上げられなかった「非公開スピーチ」を数多く行っていたことが文書の中から見てとれる。 その中には、今回の記事で話題になった「徹底的に無慈悲に抑え込め」という言葉もあり、「独裁のツールを使って、新疆ウイグル自治区のイスラム教過激派を根絶せよ」と指示していたという記述もある。  スピーチの内容からは、習近平自身がウイグルの独立派の動きやその歴史について(北京政府の公式見解そのものであるが)かなり詳しい知識をもっていることがうかがえる。 ここから言えるのは、収容所を次々と建てた現地担当者こそ2016年8月にチベットから移ってきた陳全国(Chen Quanguo)ではあるが、方針転換を指示したのは、習近平本人であったということだ。 後世において、この恐ろしい人権侵害の実態が非難されることになるとすれば、その責任を負っているのはまさに習近平その人であることが、今回の報道によって証明されるだろう』、「独裁のツールを使って、新疆ウイグル自治区のイスラム教過激派を根絶せよ」、との習近平の指示は正気とは思えない。
・『「ソ連の統治は生ぬるかった」  3つ目の論点は、イスラム教過激主義を弾圧するための手段として、習近平が新疆ウイグル自治区の経済成長を諦めたという点だ。 たとえば、この文書に収録されている演説によると、習近平は「ソ連崩壊」を自らの統治の教訓としており、一言でいえば、「ソ連の統治はイデオロギー的に甘く、リーダーたちも生ぬるかった」と見ているという。 そのため、習近平は中国共産党の支配に対するあらゆる挑戦を排除することに集中しており、いわゆる「人権派」を積極的に逮捕し、新疆ウイグル自治区では民心掌握の基礎である「経済発展」さえも民族分離主義を助長するおそれがあるとして、経済発展よりも現地人の再教育・監視強化に動いたという。 文書からは、これに対して現地政府官僚たちから「経済発展を必要としている現地の実情を見ていない」と相当の不満が表明されたことがうかがえる。 反発した共産党幹部の中には、強制収容所から7000人もの囚人を逃す者も現れたことは、すでに述べた通りである。 ただ、こうした反対派の動機も日本の価値観からは微妙に離れており、強制収容所に若者が収容されてしまうと(実際は老人も多く収容されているらしいのだが)労働人口が減り、経済活動が制限される結果、自分たち幹部が賄賂を受け取ることができなくなり、党における出世が遅れてしまう、という懸念が大きいのだという。 つまり、ウイグル人を助けた動機は人道的なものではなく、あくまでも自分の出世のためであるという点は特筆すべきだろう』、「新疆ウイグル自治区では民心掌握の基礎である「経済発展」さえも民族分離主義を助長するおそれがあるとして、経済発展よりも現地人の再教育・監視強化に動いた」、驚くほどの徹底ぶりだ。
・『「経済発展させてもロクなことがない」  習近平の方針転換は、前任者の温家宝、さらには自身の父である習仲勲がとってきた、少数民族自治区に対する経済発展を通じた融和・発展政策から、大きな転換を図ったものとして注目すべきであろう。 このような「権力基盤を固めるためには経済発展を捨て、警察力を増強して監視体制を強化すればよい」という政策の歴史的先例として有名なのが、中南米のハイチで独裁体制を敷き、親子そろって30年以上統治してきたデュヴァリエ大統領(在任1957-71年)だ。 彼は政権につくと、すぐに開発政策をゼロにして国民の大半が貧困にとどまるようにしただけでなく、私設の警察組織である「トントン・マクート(現地語で「麻袋おじさん」の意)」を使って政敵を追い落とし、国民を強い監視下に置くことによって長期政権を実現した。 このような「経済発展よりも監視強化」という独裁者の技術については、習近平も実によく理解しているようで、文書の中には「冷戦で最初にソ連圏から離れた国々は、経済的に豊かであった」との記述もある。 その実例として、習近平はベルリンの壁を最初に崩壊させた東ドイツやバルト三国、そして比較的豊かだったが分裂して後に内戦に至った、ユーゴスラビアなどの例を挙げている。 つまりこの文書の内容が正しければ、習近平は「ウイグル人を経済的に発展させてもロクな結果にはつながらない。今後は経済的に締め付け、監視を強化すべきだ」と考えているということになる。 ただし、ニューヨーク・タイムズ紙の記事のコメント欄を見ると、「現実に、中国はいまだに新疆ウイグル自治区を含む西部への投資を続けている」とする意見があり、この点をもって「この記事はフェイクニュースだ!」という指摘も出ていることは念のため明記しておくべきかもしれない』、「ハイチで独裁体制を敷き、親子そろって30年以上統治」、最終的には軍部クーデターで終止符を打ったようだ。ハイチより民度が遥かに高い中国では独裁体制の命は短い筈だ。
・『イスラム教を「病気」扱い  4つ目に触れておくべき論点は、北京政府がイスラム教に触れ過激化した人間を「病気」として扱っており、それを「治療」できると考えている点である。 宗教や思想を「病気」(原文では「病毒」)として扱うことは(建前であっても)多文化主義を奉じる西洋諸国においては信じがたい、受け入れられない考え方であるが、習近平を筆頭とする中国共産党体制では、この考え方はマニュアルのレベルまで落とし込まれ徹底されている。 もちろん、このような強制収容所での「再教育」がどこまで効果のあるものなのかは誰にもわからない。だが少なくとも中国共産党には「信仰を教育(洗脳)によって是正できる」という考え方が実際にあり、かつそれは十分正当化できるものだと考えられているようだ』、恐ろしい思い込みだ。
・『「アメリカと同じことをしているだけ」  5つ目の論点は、新疆ウイグル自治区の統治に関して、習近平やその周辺がアメリカをモデルとしている点だ。 とりわけ注目すべきは、習近平が演説において、2001年に発生したいわゆる「9・11連続テロ事件」と、その後のアメリカ側の対応を参考にしたと言及していること、さらにはアメリカのアフガニスタン駐留や、シリアにおけるIS掃討作戦を非常に気にかけているということである。 日本人にとって中東は物理的・心理的な距離感があるが、国内に一定数のイスラム教徒を抱え、イスラム教国と国境を接している北京上層部にとっては、アフガニスタンやシリアの問題は、新疆ウイグル自治区の治安問題と直結した身近なものとして感じられることが、習近平の発言からもよくわかる。 しかも驚くのは、「アメリカがアフガニスタンで展開している兵力を撤退させると、その地域のイスラム過激派が勢力をつけ、そこに参加して過激主義に染まったウイグル人が出身地域に戻り、分離・独立運動を焚きつけるのではないか」という懸念を習近平自身が抱いていたという点である。 要するに、習近平やその周辺の指導部の中では「われわれのやっていることは、アメリカのやっていることと同じ」というロジックなのだ。 「自分たちは中国政府のような人権蹂躙はしていない」と考えたいアメリカ人にとって、このようなロジックが受け入れがたいことは、容易に想像がつく。 以上、今回の報道の「5つの特徴」を紹介してきたが、とくにこの第4・第5の論点は、西欧諸国、とりわけアメリカのリベラルな思想を持つ人々にとっては、身の毛のよだつほどの嫌悪感を引き起こすものであるということは重ねて指摘しておきたい。 それほどまでに、アメリカ社会と中国社会の「世界観」や「価値観」は異なるのだ』、こんなことでは、既にこじれた米中通商問題に、人権問題までが絡んで解決はますます遠のく懸念が強い。
・『「第二のホロコースト」という声も  ニューヨーク・タイムズ紙の記事については、日本ではまだ新聞各紙が簡潔に触れた程度で反応が薄いが、本国アメリカでは、当然ながら実に大きな反響を巻き起こしており、本稿を執筆している20日の時点で記事そのものに400件近いコメントが寄せられている。 また、ライバル紙でもあるワシントン・ポスト紙も、その2日後となる18日にはエリザベス・ウォーレン民主党大統領選候補や識者、さらには専門家たちが本件についてツイッター上に書き込んだものをまとめた記事を掲載している。 中にはこれを「第二のホロコーストだ」として、「世界の人権派よ立ち上がれ」と訴えるメッセージも見てとれる。 冒頭に述べたように、今回の記事は、対中政策ではそれまで中国に甘いと言われてきた米国のリベラル側メディアが、中国にかなり批判的になっていることを再び証明したものといえる。 ちなみに、ニューヨーク・タイムズ紙は2012年に胡錦濤の一族の蓄財ネットワークについての調査記事を書いて北京政府に嫌われており、同社の記者の入国ビザ発給を拒否されるなど、北京とは犬猿の仲であり、これが結果的に今回のリーク記事の発表につながったことは容易に想像がつく。 もちろんニューヨーク・タイムズ紙自身は、トランプ大統領からロシア疑惑の報道について「フェイク・ニュース」と何度も決めつけられているわけだが、とりわけ「対北京」という点においては、トランプ政権と歩調をあわせた動きを見せている点は留意しておくべきだ。 非難された側である北京の反応としては、日本の外務省にあたる外交部の報道官が、記者からこの記事に関する質問を受け日本はて「フェイク・ニュースだ」と断定し、その時の様子を国営メディアである「環球時報」(Global Times)が英語記事の中で引用している』、「それまで中国に甘いと言われてきた米国のリベラル側メディアが、中国にかなり批判的になっていることを再び証明したもの」、中国は米国情勢の変化をつぶさに観察している筈だが、こと人権や政治体制の問題では、絶対に妥協しないようだ。
・『日本は何をすべきか?  今後の展望についてであるが、文書の中にもあるとおり、習近平は2014年から始めた今回の弾圧について「海外の批判を無視せよ」と命じている。残念ながら、「ウイグル問題は国内問題である」として、引き続き厳しい締付けを行っていくと思われる。 さらに、北京政府は現在継続している香港の民主化デモに関しても、香港警察を使って厳しい締付けを行っている。北京においては、この2つの案件は「分離独立派の鎮圧」や「対テロ対策」という意味合いにおいてつながっているという認識が持たれている可能性もある。 その点において、香港のデモに参加している学生たちが今回のものを含むウイグルに関する一連の報道を受け、「ウイグルのように弾圧されて世界から忘れ去られたくない」と発言しているのは興味深いと言えよう。 では、これらを踏まえて日本はどうすべきか。 ウイグル人への弾圧は、世界的にみても歴史に残る人権弾圧・人権侵害であるとして、日本政府が声を上げるべきであることは間違いない。 ところが安倍総理率いる日本政府は、習近平の国賓待遇での訪日が来年に控えていることもあり、今回の記事から推測されるような中国の人権侵害については「中国の国内問題である」として、何か特別に発言をするとは思えない。 西側諸国の社会の一員である日本が、倫理的・道義的な観点からできることはただ一つ──日本のメディアがこの問題をさらに報じ、取り上げ続けることだ。 日本の世論の中で、この隣国の「恐るべき人権侵害」の実態が広く知られるようになれば、たとえば将来日本のトップが中国側と何らかの交渉をする時に、 「うちの国民(とメディア)が、あなたの国の人権問題で騒ぎますので」と一言述べることによって、相手に圧力をかけるための「外交カード」の一枚となり得るからだ』、「日本のメディア」には中国に忖度することなく、大いに頑張ってもらいたいものだ。
いずれにしろ、習近平の思い上がった姿勢は、米国だけでなく、近隣諸国に脅威を与え、長い目では中国の国益に反する結果を招くこととなり、中国共産党内の反習近平派が力を増す可能性もあるのではなかろうか。、
タグ:ニューヨーク・タイムズ JBPRESS 現代ビジネス 中国国内政治 奥山 真司 福島 香織 (その7)(すっぱ抜かれた悪行 新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ 徹底的な新疆弾圧を指示した習近平、中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出 衝撃の全貌) 「すっぱ抜かれた悪行、新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ、徹底的な新疆弾圧を指示した習近平」 新疆(しんきょう)ウイグル自治区に関する内部文書24件403ページをすっぱ抜いたスクープ 「一切の情けをかけるな」と習近平 鎮圧を基本とする 徹底鎮圧指示が現地の数千人に及ぶ官僚幹部らの懐疑と抵抗にあった けっして善意ではない新疆政策の根本 「7.5ウルムチ騒乱」 朝市襲撃事件 雲南省昆明駅 「ウイグル族過激派による暴力テロ事件」 新疆地域のムスリム少数民族の思想を作り変える努力を展開せよ」と指示 胡錦濤政権が展開した経済優先の新疆融和政策を批判 習近平の場合、胡錦濤の新疆政策を否定するために必要以上に強硬政策に転じたともいえそうだ つながっているウイグル問題と香港問題 「中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出、衝撃の全貌」 NYT紙の超弩級スクープ 中国政府の高官によるリーク ウイグル人の弾圧をめぐって共産党内からも反発する声が出ている 北京政府に不満を抱く幹部のリークで 家族が「強制収容」に気づいたら… 外国でのテロ事件の頻発や、米国のアフガニスタンからの兵力撤退によって、北京の指導層がイスラム教徒の脅威を懸念し、徹底弾圧に踏み切った 「むしろ共産党に感謝せよ」 ウイグル人のエリート 家族を人質にとる 習近平が直接指示していた 「ソ連の統治は生ぬるかった」 「経済発展させてもロクなことがない」 ハイチで独裁体制を敷き、親子そろって30年以上統治してきたデュヴァリエ大統領 イスラム教を「病気」扱い 中国共産党には「信仰を教育(洗脳)によって是正できる」という考え方が実際にあり、かつそれは十分正当化できるものだと考えられている 「アメリカと同じことをしているだけ」 「第二のホロコースト」という声も 日本は何をすべきか? 日本が、倫理的・道義的な観点からできることはただ一つ──日本のメディアがこの問題をさらに報じ、取り上げ続けること
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