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香港(その3)(香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人に伝えたい大事なこと、香香港情勢を甘く見た中国 巻き返しに出る可能性も 習近平は香港の中国離れを絶対に容認しない) [世界情勢]

香港については、10月8日に取上げた。今日は、(その3)(香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人に伝えたい大事なこと、香香港情勢を甘く見た中国 巻き返しに出る可能性も 習近平は香港の中国離れを絶対に容認しない)である。

先ずは、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が11月27日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人に伝えたい大事なこと」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/221574
・『香港の区議会選挙で民主派が初の過半数獲得  11月24日、香港区議会(地方議会)選挙が実施された。デモ隊と香港警察の対立が激化し、選挙が中止になることが危ぶまれたが、当日は大きな混乱は起きなかった。投票率は前回(2015年)の47%をはるかに上回り、中国返還後に行われた選挙で最高の71%に達した。 そして、民主派が452議席の約9割に達する390議席を獲得する歴史的な勝利を収めた。民主派が過半数を獲得したのは初めてで、改選前に7割の議席を占めていた親中派との立場は完全に逆転した。民主派は、あらためて「五大要求」の実現を要求し、抗議行動を継続すると表明した。しかし、香港政庁とその背後にいる中国共産党が容易に折れるとは考えられない。今後の問題は、民主派がどう要求を実現していくかだ』、興味深そうだ。
・『「デモに対する支持率が低下」と語る日本の“識者”のいいかげんさが露呈  日本では、テレビや新聞、雑誌、インターネット等のメディアで、「識者」と称する人たちが「デモによる暴力で、香港経済や市民の生活にダメージがあり、デモに対する支持率が低下している」というコメントをすることが少なくない。しかし、それはまったく現地のことを知らない人が、日本語でいいかげんなことを言っているだけということが、明らかになった。 香港で行われている世論調査では、民主主義を求める若者に対する支持はまったく下がっていなかった。だが、この事実は、なぜか日本のメディアで取り上げられることが非常に少なかった。 今回の選挙で、香港市民は民主派を圧倒的に支持していることが明らかになった。「デモによる暴力」を批判していた日本の識者の皆様には違和感がある結果だろう。筆者は、彼らに言いたいことがある。 筆者は、選挙の前に香港の「民主の女神」周庭(アグネス・チョウ)さんとSNSのメッセンジャーでやり取りをした。その際、強い印象が残ったのは、彼女が「私がこの運動が始まってからよく思うのは、民主主義と自由がある国の人たちが、自由のない生活を経験したことがないのに、『暴力はダメよ、支持しませんよ』というのは、ちょっと傲慢なのではないか」「私たちだって、暴力を使いたくないですよ」と言ったことだ。 この連載では、中国共産党が「香港の中国化」を目指し、圧力を強めることで、香港市民が自由を奪われ、暴力を使うことでしか民主主義を守る手段がないところまで追い詰められたことを、詳述してきた(本連載第213回)。 雨傘革命後、筆者がアグネスさんら民主派の若者たちに初めて会ったとき、彼らは「香港の選挙は『AKB48の総選挙』のようなもの。民主的に行われているように見えて、実は秋元さんが全部決めている。香港の選挙も中国共産党が全部決めている」と言い、この状況下では「暴力しかない」と訴えかけてきた(第116回)。 それでも彼らは、「デモで選挙制度は変えられなかったが、将来を自分たちで決めたいなら若者の政党をつくるべきだ」と訴えた。彼らは「活動家」から「政治家」に進化しようとした(第141回)。 そして、16年9月4日に行われた香港立法会選挙で、民主派の若者らが6議席を獲得した。彼らを含む「反中国派」全体で30議席を得て、法案の否決が可能になる立法会定数70議席の3分の1(24議席)以上を占める画期的な勝利となった。 しかしその後、彼らは中国を侮辱する言動を行ったとして、議員資格を取り消されてしまった。アグネスさんは18年4月の香港立法会議員の補欠選挙に、弱冠21歳の現役女子大生として立候補しようとしたが、当局によって立候補を差し止められた。 彼らの政治家になろうとする志は、香港政府とその背後にいた中国共産党によって、踏みにじられることになった。そして、この件に象徴される、中国共産党・香港政庁による民主派に対する一連の「弾圧」は、民主化運動の中心メンバーだけではなく、多くの若者を深い絶望に陥れ、「暴力」を肯定せざるを得ないところにまで追い込んだのだ。 この背景を理解することなしに、自由と民主主義を生まれながらに謳歌してきた人が、シンプルに「暴力はいけない」と言うのは、浅はかすぎると断ぜざるを得ない。もちろん、筆者も「暴力」は肯定しない。しかし、香港の「暴力」については、民主派の若者にまったく責任はない。彼らを徹底的に追い詰めた中国共産党・香港政庁にこそ、「暴力」の全責任があると、最大級の非難をしておきたい』、「私がこの運動が始まってからよく思うのは、民主主義と自由がある国の人たちが、自由のない生活を経験したことがないのに、『暴力はダメよ、支持しませんよ』というのは、ちょっと傲慢なのではないか」、との「香港の「民主の女神」の主張はその通りだ。
・『香港政庁・中国共産党が区議会選挙の実施を恐れた理由とは?  香港区議会については、地域の法律や予算を決める強い権限は持っておらず、公共サービスや福祉といった地域の問題について政府に提言する諮問機関のような役割しかない。従って、今回の選挙の結果は、香港の情勢に大きな影響を与えないという人がいる。しかし、その見方は、正しいとはいえない。 香港政庁・中国共産党は、今回の区議会選挙を延期できないか、ずっと模索していたとされる。デモ隊と警察の衝突の激化で、選挙の安全な実施が困難だからと報道されることが多かったが、そんな単純な理由ではない) 香港政庁・中国共産党は、選挙当日になれば市民は皆、デモを行わず選挙に行くことを当然、予測できたはずだからだ。実際、衝突などまったく起きることはなく、整然と選挙が実施された。 香港政庁・中国共産党が本当に恐れたのは、今回の選挙結果が「香港行政長官選挙」に与える影響だ。香港行政長官は、不動産や金融など35業界の代表と立法会議員、区議会議員ら1200人で構成される「選挙委員会」の投票で選出される。 行政長官選挙に立候補するには「選挙委員」のうち、150人以上の推薦が必要であり、当選するには過半数の得票を得る必要がある。これまで、選挙委員は親中派が多数を占めてきたため、事実上民主派の候補者は立候補すらできない仕組みとなってきた。 しかし、選挙委員のうち区議会枠(総数117)は、区議会議員の互選で選ばれる。今回の区議会選挙で民主派が9割を占めたので、区議会枠は親中派から民主派に変わることになる。互選がどういう形になるかは不明だが、仮に117人の9割だとすると、民主派は105人いうことになる。 また、20年9月には「立法会選挙」が実施される。これは区議会選に比べて、民主派が躍進するには高い壁がある。定数70のうち直接選挙で選ばれるのは35議席だ。残る35議席は職業別代表枠で、間接選挙によって選ばれるが、ほとんどが親中派である。 その上問題なのは、直接選挙が「比例代表制」であることだ。区議会選は、勝者となる党派が実際の得票数よりも多くの議席を獲得する傾向にある「小選挙区制」だった。実際、今回の区議会選は、民主派が9割の議席を獲得したが、得票数は6割程度だったのだ。 「比例代表制」の場合は、シンプルにいえば6割の得票数だと、6割の議席を獲得することになる。仮に、民主派が今回と同程度の支持を集めたとすると、立法会選挙の直接選挙35議席中21議席の獲得にとどまる。定数70のうちの21議席なので、区議会の過半数には遠く及ばないことになる。 ただ、立法会議員はそのまま行政長官選挙の選挙委員となる。21人の民主派が立法会枠から加わることになると、選挙委員会1200人中、区議会枠と合わせて民主派は126人程度となる。すると、立候補者を出すために必要な選挙委員150人の推薦を実現するハードルが、かなり下がることになる そして、ここまでハードルが下がってしまうと、中国共産党にとっての「不測の事態」が起こりかねなくなる。現在、親中派とみられる人たちも、民主化支持の世論を気にして、中国共産党と距離を置いているといわれる。 仮に22年の次期行政長官選挙の際にそのような状況になったら、選挙委員会の中から、親中派・民主派双方の幅広い支持を得られるような、開明的なリーダーが立候補して行政長官に当選し、中国共産党が香港の行政をコントロールできないという事態も起きかねない。だから、中国共産党は、そのきっかけとなる懸念がある今回の区議会選の実施を嫌がったのだといえる』、「香港政庁・中国共産党が本当に恐れたのは、今回の選挙結果が「香港行政長官選挙」に与える影響だ」、その後の説明と合わせて、よく理解できた。「区議会選は・・・「小選挙区制」だった。実際、今回の区議会選は、民主派が9割の議席を獲得したが、得票数は6割程度だったのだ」、初めて知ったが、香港政庁・中国共産党も改めてその恐ろしさを認識したのだろう。
・『香港の状況を劇的に変えられるのは「財界」である  しかし、それはあくまで中国共産党にとっての「不測の事態」であり、民主派にとっては「希望的観測」にすぎないだろう。リアリスティックに考えれば、香港の状況を劇的に変えることができるのは、「財界」である(第223回・P6)。 財界が民主派に寝返れば、行政長官選挙の「選挙委員」は民主派が圧倒的多数派になる。つまり、民主派の候補者しか当選できない制度に代わってしまうことになるのだ。 だが、アグネスさんに聞いてみたが、財界の動きは「分からない」という。財界について話題を振っても、反応が鈍い。おそらく、現在のところ民主派と財界の間に接点はないのだろう。財界は完全に親中派とみなされているので、民主派が安易に接触すると、動きが筒抜けになってしまう恐れがある。信用できないのだろう。 日本的な感覚で考えれば、民主派の若者の中に財界と交渉できるような「寝業師」はいないのかと言いたくなる。おそらく、いないのだろう。リーダー不在の「水の革命」(*)の難しさが露呈しているといえるのかもしれない(第214回)。 *香港出身のアクション映画スターであるブルース・リーが語った格言「Be Water(水のようになれ)」にちなんだ、今回の香港の民主化デモの通称。リーダー不在で臨機応変にデモ活動のかたちを変えることに由来する。 一方、財界側は民主派の抗議行動に対して、静観を貫いている。ただ、今回の抗議行動が始まって以降、中国共産党は、香港の民間企業に対する圧力を徹底的に強化している。例えば、中国政府はキャセイパシフィック航空に対して、デモにかかわった従業員を職務に就かせないように強く要求し、実際にデモに参加した操縦士2名が解雇された。また、同社のルパート・ホッグ前最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれ。キャセイパシフィックの元操縦士で立法会議員のジェレミー・タム氏も、同社を退社した。 英公共放送「BBC」のカリシュマ・ヴァスワニ・アジア経済担当編委員は、「キャセイの話は、香港でビジネスをする企業が、中国が何を欲するかを勘案しないとどうなるかを示す教訓といえる」と指摘する(BBC NEWS JAPAN「香港デモ、苦しむキャセイ航空 『会社が恐怖に包まれている』」)。だが、静観を貫く財界は内心、中国共産党に対する強い不満を募らせているという。なにか、起爆剤となることが起きれば、財界は動くかもしれない』、楽観的に過ぎる印象を受ける。やはり香港の存在意義は、中国の出先であって、それを抜きにした存在意義は考え難いからだ、
・『香港財界を動かす可能性を感じさせる米議会の「香港人権・民主主義法案」  そして、財界を動かす可能性を感じさせるのが、米議会が可決した「香港人権・民主主義法案」だ。現在、米中貿易交渉が佳境を迎えている(第211回)。ドナルド・トランプ米大統領は法案に署名するかどうか、態度を明らかにしていない。 だが、仮にトランプ大統領が拒否権を発動しても、上下両院の3分の2が賛成すればこれを覆すことができる。この法案はすでに、ほぼ全会一致で可決されており、大統領が署名しなかった場合でも、問題なく成立するとみられる。 香港人権・民主主義法は、米国務省が年1回、香港の「一国二制度」が保証され、香港の「非常に高度な自治」が維持されているかを確認し、米国が香港に通商上の優遇措置という「特別な地位」を付与するのが妥当かどうかを判断するものだ。 もし、香港で人権侵害などが起きた場合、その責任者には米国の入国禁止や資産凍結などの制裁が科せられる。そして、通商上の優遇措置が撤廃されれば、香港は中国本土の都市と同じ扱いを受けることになる。 これは、ただでさえ不調に陥っている中国経済に大打撃を与えることになると指摘されている。中国では、資本取引が全面的には自由化されていない。中国の対内・対外直接投資の6〜7割は香港経由である。また、08年から19年7月まで、中国企業が香港市場で株式新規上場し資金調達した金額は1538億ドルで、中国市場全体の3148億ドルの約半分である。さらに、中国企業が18年に海外市場で行ったドル建て起債1659億ドルの33%を、香港の債券市場が占めている(岡田充「米中代理戦争と化した香港デモ。アメリカの『香港人権法』は諸刃の刃になるか」Business Insider Japan )。 中国経済における香港の重要度は以前と比べると下がっているといわれるが、いまだに多くの部分を依存しているといえる。もちろん、香港への優遇措置見直しは、米国経済にもダメージを与えるものだ。 だが、貿易戦争は双方が不利益を受けるものであり、問題はどちらにより大きな損害があるかだ。米中貿易戦争でより大きなダメージを中国が受けたように、香港が中国本土と同じ扱いとなれば、中国がより深刻な損害を受けることになると考えられる。 区議会選が終われば、中国共産党は再び全国人民代表大会常務委員会が前面に出て香港への関与の姿勢を強めるとみられていた。デモの鎮圧には、より強硬な手段が講じられるとの懸念も出ていた。だが、米国が香港人権・民主主義法を発動するかどうかは、中国共産党に対する極めて強いけん制となるだろう。 そして、香港人権・民主主義法が施行されれば、香港の財界は中国共産党に従属する「親中派」のスタンスを変えざるを得なくなるかもしれない。 香港に対する優遇措置が維持されなければ、民間企業はビジネスを続けることができない。しかし、前述のキャセイパシフィック航空のように、中国共産党からの圧力に屈する姿を米国に見せてしまうと、一国二制度は維持されていないとみなされて、米国が法律を発動する懸念が出てしまう。財界もまた、従来通り「親中派」のままでいいのか、難しい判断を迫られることになる可能性がある。 要するに、香港政庁・中国共産党と民主派の間で膠着状態が続く香港の抗議活動を動かせるとすれば、それは香港財界と米国ということになる。この連載では、次のように論じたことがある(第223回・P6)。14年の「雨傘運動」は、行政長官選挙の選挙委員会を親中派が占めて、民主派は立候補すらできない制度の理不尽さに反発して起きた。だが、香港財界が民主派を支持すると決断すれば、雨傘運動の若者たちが目指したものの大部分が、長い戦いの末に実現することになる。このことをあらためて強く主張したい。香港財界には、一国二制度を守るために、歴史的な決断を下してもらいたい』、トランプ大統領は『香港人権法』に一応署名はしたようだが、中国政府にもかなり気を使っており、対決は避けたいようだ。ただ、『香港人権法』が財界の考え方に多少の変化をもたらす可能性はありそうだ。

次に、政治学者の舛添 要一氏が11月30日付けJBPressに掲載した「香香港情勢を甘く見た中国、巻き返しに出る可能性も 習近平は香港の中国離れを絶対に容認しない」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58432
・『11月24日に投票が行われた香港の区議会議員選挙は、民主派の圧勝という予想外の結果となり、世界中に大きな衝撃を与えた。とくに、親中派の勝利を信じていた習近平政権には、大きな誤算となった。 さらに、19日に米議会を通過していた「香港人権・民主主義法案」にトランプ大統領が署名し、米中間に新たな火種が生まれた』、あの舛添 要一氏が何を主張するのだろう。
・『次の焦点は行政長官選挙と立法会選挙  香港政府が、4月に、容疑者を中国に引き渡すことを可能にする逃亡犯条例改正案を立法会に提案し、これに抗議する市民が街頭に出たのが6月である。デモに参加する人々の数は増えていき、6月16日には200万人にも達した。民主派は、①条例改正案の撤回に加え、②デモの「暴動」認定の取り消し、③警察の暴力に対する独立調査委員会の設置、④抗議活動で拘束された者の釈放、⑤行政長官選挙の民主化の5項目要求を掲げている。 その後もデモは続き、遂に9月4日、林鄭月娥行政長官は条例改正案を正式に撤回した。しかし、民主化を求める市民の抗議活動は続いていった。10月5日には、「覆面禁止規則」が施行され、それがまたデモを過激化させるという悪循環になり、11月8日には、現場で負傷した男子大学生が死亡した。その3日後の11日には、警官の発砲で男子学生が重態になり、抗議活動が毎日続くようになり、17日には香港理工大学を学生が占拠して警官隊と攻防を繰り返す事態に発展した。 このような中で、区議会議員選挙のキャンペーンが10月18日から始まり、11月24日に投票が行われたわけだ。選挙期間中には、民主派、親中派双方の候補者や選挙事務所が襲撃されるなど混乱が続いた。このため、選挙が予定通り行えるかどうか不安視されたほどであった。 区議会議員選挙は、親中派の特権階級による間接選挙である行政長官選挙と違って、市民が直接投票する普通選挙であり、民意が反映される。18区議会の452議席を選ぶが、それ以外に、親中派に27議席を割り当てる仕組みとなっている。 今回は、過去最多の約1100人が立候補し、投票率も71.2%と過去最高であった。そして結果は、民主派が388議席で約85%の議席を獲得する圧勝であった。親中派は改選前には7割を占めていたが、59議席と惨敗した。その他は5議席である。2015年の前回の選挙(総議席数は431)では、民主派が120議席、親中派が293議席、その他が18議席だったので、地滑り的な大変動が起こったと言ってよい。まさに民主化を求める市民の声が反映されたのである。 行政権のトップと国会(立法会)を選ぶ選挙は普通選挙ではないために、今回の区議会議員選挙の結果がなおさら重要になる』、「地滑り的な大変動」には前述の通り小選挙区制が影響している。
・『惨敗で浮上する立法会選挙の仕組み変更の可能性  行政長官の選挙は、1200人の選挙委員による間接選挙で、内訳は、業界団体別の選挙で選ばれた926人、立法会枠70人、区議枠117人、中国全人代・人民政治協商会議枠が87人となっている。今回の区議選の結果で、117人枠の大半を民主派が占めることになるが、これは選挙委員全体のわずか1割程度であり、業界団体の中の民主派を合わせても、過半数にはほど遠い。しかし、何の影響もないわけではない。 また、立法会の選挙は、定数70議席のうち、比例代表による直接選挙が35議席、業界団体別の選挙が29議席、区議枠が6議席である。民主派は現在25議席であるが、次回選挙でどれくらい上積みできるかが重要である。 区議会議員選挙は小選挙区であり、死票が多くなる。民主派は議席で8割を超えたが、得票率で見ると57%であり、親中派が41%である。立法会の直接選挙は比例代表制であるので、区議選と同じ得票率ならば、民主派が20議席、親中派が14議席となる。区議枠の5議席を確保すると、民主派議席は25議席。そこで、過半数にはあと10議席以上必要で、親中派が占める業界枠29議席の中から10議席をもぎ取るのは困難である。 しかし、万が一、そのような事態になれば、習近平政権としては取り返しのつかないことになる。香港で制定される全ての法律が反中国的なものになってしまう危険性があるからである。 だからこそ中国は、今回の結果を驚愕の念をもって受け止めた。中国では、区議会議員選挙の結果に関する報道は一切ない。北京政府は、これまで通り親中派が勝つと確信していたようである。それは、デモ隊の暴力行為で経済活動を阻害され、不満がたまっている「サイレント・マジョリティ」は民主派に投票しないだろうという安心感があったからである。この楽観主義は、事態を正確に分析することに失敗したことを意味し、読みは完全に間違っていた。 そこで、習近平政権は、今後、立法会選挙の仕組みを変える可能性すらあり、香港の自治権を制限する方向に動く可能性がある。「一国二制度」は認めても、香港はあくまでも中国の一部であり、北京に刃向かうことは許さないという立場である』、「行政長官の選挙は、1200人の選挙委員・・・中国全人代・人民政治協商会議枠が87人」、中国本土側が「87人」も確保されているとは初めて知った。「北京政府は、これまで通り親中派が勝つと確信」、香港には中国側の情報工作員が多数いる筈だが、彼らは「北京政府」を忖度して、不都合な事実を伝えるのをためらったのかも知れない。
・『ポピュリズム横行する民主主義と「幸福な監視社会」中国の相克  そのような北京政府の前に立ち塞がっているのが、国際社会、とりわけアメリカである。中国の監視社会の酷さは、ウイグルへの弾圧が典型であるが、習近平による非公開演説や収容者の家族との想定問答集などの内部文書を11月16日にニューヨークタイムズが入手して公開した。その中で、習近平が「容赦するな」と喝破したことが暴露されている。これは「幸福な監視社会」が牙を剝くと、どのような弾圧社会になるかを示しており、世界に衝撃を与えた。 そして、アメリカ議会では、10月15日に下院で可決された「香港人権・民主主義法案」が、上院でも11月19日に全会一致で可決された。この法律は、香港で「一国二制度」、つまり「高度な自治」が機能しているかどうかを毎年検証し、議会に報告することをアメリカ政府に義務づけるものである。もし人権侵害などが確認されれば、香港への優遇措置を見直すことが可能となり、民主派を支援する内容となっている。 この米議会の決定に対して、中国は内政干渉だとして猛反発し、対抗措置をとることを明らかにした。そこで焦点になっていたのが、法案に必要な署名にトランプ大統領が応じるか否かであった。一般的に、大統領の選択肢としては、①拒否権を発動する、②10日間何もせずに自然成立を待つ、③署名するという三つがあるが、①の場合は、両院で3分の2の多数で再可決されることは確実なので、結果的には意味がない。ただ、中国に対しては恩を売ったことになる。しかし、米国内で人権を無視する大統領という悪評が立つことになる。 今のトランプは再選されるために役立つことは何でもやる、再選にマイナスになることは何もやらないという一貫した姿勢である。結局、27日には、「香港人権・民主主義法案」に署名し、その結果、法案は成立した。これに対して、中国は、「重大な内政干渉だ」として、報復措置をとることを示唆した。 署名後に、トランプは、「中国や香港の指導者が見解の違いを友好的に乗り越え、長期的な平和と繁栄につなげるよう願う」という声明を出し、「この法律には大統領の外交政策における憲法上の権限行使を妨げる条項がある、私の政権は外交関係において、この法律の条項が大統領権限と矛盾しないようにする」と述べて、中国への一定の配慮をのぞかせている。 しかし、交渉が進む米中貿易協議への悪影響も懸念される。中国が態度を硬化させ、アメリカとの合意に達しなければ、12月15日には、アメリカは中国からの輸入品に新たに関税を上乗せすることになる。対象にはスマートフォンやパソコンが含まれており、米中双方に大きな影響が出る。そうなれば、「交渉上手」だと自負するトランプの人気にも陰りが見えてこよう。 習近平政権にとっては、香港や台湾を中国の不可分の領土として中国共産党の支配下に置くことが政策目標であり、その基礎が崩れるような事態は何としても避けたいのである。しかし、米中貿易摩擦をこれ以上に悪化させたくないので、アメリカを刺激しないように慎重に行動してきた。香港に直接介入しなかったのも、そのためである。 しかし、アメリカが法律まで制定して香港の行方について「内政干渉」するに及んで、北京政府としても何らかの対抗措置を考えざるをえなくなっている。それがどのようなものになるか、これから2週間の中国の動きを注目しなければならない。 世界の覇権をめぐる米中の争いで、軍事や経済については、中国が猛烈な勢いでアメリカに追いついている。問題は、民主主義という価値観について、どのような立場をとるかということである。世界中でポピュリズムの嵐が吹き荒れ、民主主義の統治能力が問われるなかで、「幸福な監視社会」を実現させた中国である。共産党の支配のほうが安定性を含め、統治が上手く機能しているのではないかという意見が世界中で力を持ち始めている。そのような状況で、香港で民主派が勢力を伸ばしていることは、政治制度が覇権争いの重要な柱であることを再認識させている』、「幸福な監視社会」という表現にはいささか違和感を感じる。監視社会であっても経済的成果を国民が享受しているという意味なのだろうが、「統治が上手く機能している」、もウィグルだけでなく、その他の地方でも頻発していると言われる抗議行動への弾圧などを見ると、大いに疑わしいのではなかろうか。いずれにしろ、今後の香港情勢も要注目のようだ。
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