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資本市場(その3)(リート初の「敵対的買収」意外な結末の一部始終、0.001秒短縮に命を賭けた男たちの儲ける執念、証券の「手数料ゼロ」は要注意!投資家が理解すべき構造変化とは?、東証の「市場区分変更」 見えぬ議論の終着点) [金融]

資本市場については、2017年10月7日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(リート初の「敵対的買収」意外な結末の一部始終、0.001秒短縮に命を賭けた男たちの儲ける執念、証券の「手数料ゼロ」は要注意!投資家が理解すべき構造変化とは?、東証の「市場区分変更」 見えぬ議論の終着点)である。

先ずは、本年9月4日付け東洋経済オンライン「リート初の「敵対的買収」意外な結末の一部始終 1号上場から18年、制度的不備があらわに」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/300897
・『Jリート(上場不動産投資信託)史上初の敵対的買収劇は、制度の間隙を突いた形での決着となった。 8月30日、都内の貸会議室には張り詰めた空気が流れていた。この日、さくら総合リート投資法人との合併を求める2つのリートが綱引きを繰り広げた。結果は、三井物産などをスポンサーとする投資法人みらいとの合併案は定足数が満たされずに上程されず、独立系のスターアジア不動産投資法人との合併案が可決された』、新聞報道だけでは、よく理解できない複雑な案件だっただけに、こうした解説は有用だ。
・『1日に投資主総会が2回開催される異常事態  これで一件落着かと思いきや、関係者からは合併手続きの疑義や制度上の不備を指摘する声が上がっている。 まずは経緯を簡単に振り返ろう。事の発端は今年5月10日、スターアジアの運用会社がさくらとの合併を提案したことに始まる。物件運用の不手際や運用コスト高などを理由に、さくらに代わってスターアジアが運用を担う方が投資家の利益になるというのが言い分だ。 寝耳に水の合併提案に対してさくらは猛反発。スターアジアの提案を受け入れないよう投資家に訴えるリリースを発表した。その後、両方の運用会社は、運用会社としてどちらが適任かを争う展開が続いた。 事態が動いたのは6月28日。スターアジアが関東財務局に対して申し立てていた、合併の可否を決する投資主総会の招集が認められたのだ。スターアジアは当時、さくらの投資口の約3.6%しか保有しておらず、少数投資主による総会の招集請求が認められるかどうかが注目されていた。 招集請求を認めないよう働きかけていたさくらは、反撃に転じた。同じ6月28日、さくら側も自ら投資主総会を開催することを発表した。その結果、スターアジアとさくらがそれぞれ主催する総会が、同じ8月30日に開催されるという異例の事態となった。 さくらが投資主総会を開催した背景には、「ホワイトナイト」の存在があった。 さくらは水面下で20社以上のリートと話し合いを進めていた。そして、7月19日に三井物産などをスポンサーとする投資法人みらいと合併に関する基本合意書を締結したと発表した。 ホワイトナイトが出現したかに見えるが、合併によってさくらは消滅し、実態はみらいによるさくらの完全な吸収合併だ。さくらにとってみれば、「(みらいが存続法人となることが)投資主の価値の最大化につながる」という苦渋の決断だった』、「スターアジアとさくらがそれぞれ主催する総会が、同じ8月30日に開催されるという異例の事態」、確かに「異例」だ。
・『みらいがさくらとの合併に応じたわけ  では、みらいはさくらとの合併になぜ応じたのか。8月中旬に開催された投資家説明会で、みらいの運用会社である三井物産・イデラパートナーズの菅沼通夫代表はこう語った。 「みらいとさくらが合併すれば資産規模が合計2000億円となるが、この数字は極めて重要だ。世界的なリート指数であるグローバルインデックスに組み入れられる可能性が高まり、投資家に買われるようになる」 国内の金融環境も無視できない。現在、みらいの信用格付けはシングルAだ。仮にさくらと合併を果たせば、ダブルAに格付けが上がる可能性が高まる。「日本銀行はリートの買い入れ対象をダブルA相当以上としており、日銀や(日銀の買い入れ状況を指標とする)地銀からの買い入れが期待できる」(三井物産金融事業部アセットマネジメント事業室の上野貴司プロジェクトマネージャー)。 一方、スターアジアは現在信用格付けを取得していないが、「さくらと合併することで、格付け取得の可能性が高まる」(スターアジアグループの杉原亨氏)と期待する。 資産規模がわずか約500億円の小規模リートが、合併相手としてひっぱりだこになった背景には、少しでも規模を拡大させて高い格付けを取得し、投資家の目に留まりたいという思惑が透ける。 「格付けの低いリートは、機関投資家へのIR説明のアポイントさえ取れない」(上場リート運用会社の関係者)。買われるリートは買われ続け、買われないリートはいつまでも買われないという格差が横たわる』、リートの格付けは確かに重要な要素だ。
・『リート特有の「みなし賛成」が事態を複雑にした  さらに、今回の合併で争点となったのが、「みなし賛成」というリート特有の制度だ。通常の株主総会と異なり、リートの投資主総会では議決権や委任状を行使せずに無投票となった票は、自動的に「賛成」として数えられる。 みなし賛成制が導入された背景について、投信法見直しに関する金融庁の会議ではこう述べられている。「リートの投資主は議決権の行使よりリターンに関心があるため、投資主総会への出席も期待できない。投資法人の円滑な運営を進める上で(みなし賛成制度は)必要だ」。元々は定足数が満たされずに、総会で何も決められなくなってしまうことを避けるための特例だった。 ところが、今回はこの「配慮」が事態を複雑にした。合併提案には投資主の3分の2の賛成が必要だが、みなし賛成制度を利用すれば反対票が賛成票を上回ったとしても、それ以上に無投票が多ければスターアジアとの合併が承認されてしまうからだ。 そこでさくらは奇策に出た。スターアジアが主催する投資主総会に修正動議を提案したのだ。この結果、スターアジア側の執行役員を就任させ、スターアジアと資産運用委託契約を結ぶ議案と、みらい側の執行役員を就任させ、みらいと資産運用委託契約を結ぶ議案が並存することになった。 さくらの狙いは、スターアジアによるみなし賛成制度の活用を封じることにあった。実は、みなし賛成制度を規定している投信法93条1項には、「複数の議案が提出された場合において、これらのうちに相反する趣旨の議案があるときは、当該議案のいずれをも除く」とただし書きがある。) さくらが修正動議を提出したことで、みなし賛成制度を適用すると矛盾が生じるため、適用されなくなるのだ。スターアジアも総会2日前の8月28日、修正動議の存在を理由にみなし賛成制度を適用しないことを表明した。 スターアジアも、さくらが主催する総会でのみなし賛成制度を活用できないように策を講じた。「スターアジアの合併提案が否決されるまで、さくらはみらいとの合併提案を決議できない」という趣旨を投資法人規約に盛り込む議案をさくら主催の投資主総会に提出した。午前中のスターアジア主催の総会で合併提案が可決された後、午後に行われるさくら主催の総会でみらいとの合併提案が可決され、スターアジアの提案が骨抜きにされることを防ぐ狙いだ』、「みなし賛成制度」はここまでの事態を想定せずに設けられたのだろうが、立法上の手落ちではある。
・『個人投資主はさくら、みらいに厳しい声  こうした水面下の暗闘の結果は、冒頭の通りだ。スターアジア主催の総会では合併提案が可決され、さくら主催の総会は定足数を満たさず議案は上程されなかった。 投資主総会で議決を行うには、一定割合以上の投資主の出席(定足数)が必要だが、これは議案によって過半数の場合と3分の2の場合がある。スターアジア主催の総会は過半数、さくら主催の総会は3分の2が定足数だった。 さくらとみらいは「みなし賛成が適用されていれば、われわれの合併提案が可決されていた」と悔しさをにじませる。だが、みなし賛成がなくてもスターアジアとの合併提案が可決された事実は、さくらとみらいに重くのしかかる。 午前、午後ともにスターアジア側に票を投じたという60代の男性は、「提案内容はスターアジアの方が有利だ。さくらは、みらいとの合併が投資主の利益になると言うが、スターアジアからの合併提案を受けて慌てて対応した印象を受ける」と手厳しい。同じくスターアジアの提案に賛同した50代の男性も「みらいは自身の格付けを上げることだけを考えている印象を受ける」と話す。 他方で、合併が承認されたスターアジア側も、前途洋々というわけではない。今回承認されたのは完全な合併ではなく、スターアジアの運用会社の下にスターアジア不動産投資法人とさくら総合リート投資法人という2つのリートをぶらさげる形をとる。2つの投資法人を合併するには、さくらが諮ったような合併提案をスターアジア自身も行う必要がある。 ただし、合併内容について事前に合意したみらいと異なり、スターアジアは合併比率などの条件を非公式に提示したのみで、さくらとの正式な合意には至っていない。同社は今年末にも合併の承認を求める投資主総会を改めて開く予定だが、提示した合併条件が投資主の意向に沿わなければ、スターアジア自身が合併を阻まれるリスクがくすぶる。 約4カ月にもわたった買収劇は、Jリートをめぐるさまざまな制度的不備を浮き彫りにした。東証に初のリートが上場してから、今月でちょうど18年。これを機に、リートのあり方を今一度点検する必要がありそうだ』、その通りだが、スターアジアによる「合併の承認を求める投資主総会」は成立するのだろうが、一応の注目点ではある。

次に、経済ジャーナリストの岩崎 博充氏が9月29日付け東洋経済オンラインに掲載した「0.001秒短縮に命を賭けた男たちの儲ける執念 高頻度取引に支配される金融市場のリスク」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/305020
・『株や為替などの金融取引に関わるテクノロジーの進化が止まらない。 とりわけ、現在は運用プログラムである「アルゴリズム取引」、あるいは数ミリ秒単位の「高頻度取引」「高速取引」が市場を支配しており、金融マーケットは人類の手の届かないところで制御不能な領域に達しつつある』、最先端の金融テクノロジーとは興味深そうだ。
・『高頻度取引が織りなす金融市場のロマン?  そんな中で、先ごろ封切られた映画『ハミングバード・プロジェクト0.001秒の男たち』が、注目を集めている。 2011年にスタートしたニューヨーク証券取引所(以下、NYSE)とカンザス州のデータセンター間1600キロメートルを、光回線でつなぐ専用回線敷設プロジェクトの物語を映画化したものだ。ハミングバード(ハチドリ)が1回羽ばたく際の時間「0.001秒」を短縮するためのプロジェクトである。 この物語の舞台となっている2011年当時は、株式取引が「高頻度取引」に大きくシフトしていた頃で、ほかの投資家よりわずかでも高速売買を可能にしたものが、利益をすべて独占できる夢を追いかけたストーリーだ。実在する通信プロバイダー「スプレッド・ネットワーク社」が、NYSEからシカゴのデータセンターを一直線の光回線で結ぶことで、0.001秒の短縮を狙った顛末を描いた。 同社の無謀とも言える光ファイバー敷設計画は、作家のマイケル・ルイスが『フラッシュ・ボーイズ10億分の1秒の男たち』(文藝春秋刊)として描き、世の中に幅広く高頻度取引が知られることとなった。その結果、アメリカや欧州、日本でもこの高頻度取引業者を規制する動きが広まった。 今や、金融商品の中でも大きなシェアを持つ「ETF(Exchange Traded Funds:上場投資信託)」も高頻度取引の産物と言われ、金融マーケットは人間同士の売買取引よりも、コンピューターによるアルゴリズム取引と高頻度取引が圧倒的に高いシェアを持っている。 にもかかわらず、ほとんどその実態は知られていない。映画『ハミングバード・プロジェクト』が公開されたのを機に、現在の金融マーケットが抱えるリスクを考えてみたい。) 高頻度取引とは、英語で「High Frequency Trading」のことで、略してHFTとも言われる。高頻度取引(以下、HFT)は、証券会社や投資運用会社、ヘッジファンドなどがやっているわけではなく、いわゆる「HFT業者」と呼ばれる業界があると考えればいい。 HFTは、よくアルゴリズム取引と混同されがちだが、アルゴリズム取引全体の中の1つがHFTという位置づけだ。もともとアルゴリズム取引は、コンピューターのプログラムがあらかじめ設定された内容に基づいて、売りや買い注文を「自動的に発注するプログラム」のこと。したがって、HFTではないアルゴリズム取引も数多く存在する。 例えば、ある銘柄を大量に買ったり売ったりしたいとき、金融機関はアルゴリズム取引を使って、1度に取引が成立しないように工夫する。時間を分けて、あるいは日数を分けて売買注文を行い、大量注文によって市場が大きく動かないように配慮し、また当局から目を付けられないようにする。 一方、アルゴリズム取引の一種であるHFTは、大きく2つに分けて「マーケットメイク戦略」と「裁定取引」を使って利益を出す。マーケットメイク戦略とは、買い注文とそれよりわずかに高い売り注文を同時に出して、両社の価格差の分だけ利益を獲得するという仕組みだ。 一方の裁定取引は、例えば現物と先物、ETFなどを使って、売りと買いを同時に出し、やはりその価格差を利益にするもの。周知のようにETFは、日経平均株価やTOPIXなどの指数と連動する株式市場に上場している投資信託の一種だが、これから日経平均株価が上がると思ったときには、先にETFを購入して、その後日経平均を構成している株価が上昇した銘柄を売れば、その差額が利益になる。 マーケットメイク戦略にせよ、裁定取引にせよ、大切なことは誰よりも速く取引した業者がほぼ独り勝ちする構造になっていることだ。映画『ハミングバード・プロジェクト』も、少しでも速く取引できる環境作りを狙った物語になっている。 このマーケットメイク戦略と裁定取引の主戦場は、今やETFと言っても過言ではない。それだけ一般的に使われているストラテジー(戦略)の1つだ。例えばETFの売買高が少なくても、マーケット戦略を使えば指数の構成銘柄を売買することで「流動性」を作ることもできる。売買が活発となって、アルゴリズム取引やHFT以外の顧客も市場参入してくる。 少なくともマーケットメイク戦略は、売りと買いの指値注文を出してその注文に対応する顧客を待つ戦略と言ってよい』、「誰よりも速く取引した業者がほぼ独り勝ちする構造になっている」、しかし、「「流動性」を作ることもできる」、と功罪半ばするようだ。
・『通信回線の高速化だけじゃない?  HFT最大の特徴は、たとえ0.001秒でも速い業者が独り勝ちする取引であるということだ。そのためにカンザスからニューヨーク間1600キロメートルを直線でつなぐなどという途方もないプロジェクトが現実のものになる。 いったいどのくらいの予算がかかるのかわからないが、それでもほかの業者よりも速い取引ができるのであれば、コストはあっという間に回収できる。それがHFTの魅力と言っていい。 ちなみに、2000年代に入ってから始まったHFTの高速化競争は、さまざまな形で試みられてきた。高速化競争の方法は大きく分けて3つある。簡単に紹介しよう。 1.ネットワーク回線の高速化 2.取引プログラムの高速化 3.取引所マッチングエンジンの高速化 ハミングバード・プロジェクトは、言うまでもなく「ネットワーク回線の高速化」になるわけだが、この物語が実話であることでもわかるように、当時は大まじめに取り組んでいた話だ。実際、アジアとアメリカをHFT専用の海底ケーブルを引くという構想まで出たと言われている。 通信回線を地下に埋める方法だけではなく、光ファイバーよりも速い直線距離通信が可能となる「無線」の利用を考えて電波塔建設も試みられたようだ』、高速化をめぐる競争は止まるところを知らないようだ。
・『過熱する高性能なコンピューターの開発競争  2016年8月8日付のウォールストリートジャーナルは、「進化する超高速取引、光速の領域に踏み込む」と題する記事の中で、オーストラリアのシドニーに本拠を置く「メタマコ(Metamako)」と「エクスブレイズ(Exablaze)」、シカゴに拠点を置く「エクセロア(xCelor)」は、 取引所から顧客である電子トレーナーに送るデータのスピードが約4ナノ秒(1ナノ秒=10億分の1秒)しかかからない「スイッチ」を製造している、と報道している。 スイッチというのは、膨大な量の株式市場のデータを同時に数多くの取引サーバーに送ることができるものだが、このスイッチの能力を高めた業者もやはり独り勝ちできる可能性が高かった。スイッチもまた通信ネットワークの高速化の1つのツールだ。 アルゴリズム取引も、むろん投資対象によっては高速化が勝負を決める。イギリスのEU離脱が決まった瞬間のイギリス・ポンド取引も、人間が瞬きをしている間に勝負が決まった。ロンドンのFX会社はメタマコ社製のスイッチでプレグジットを乗り切ったと同記事は報道している。 日本銀行の金融政策決定会合の結果は英語と日本語で発表されるが、アルゴリズムは英文を使って分析するそうだ。英文は、先に結論から入るため分析のスピードが速い。その結果でどこよりも早く発注した業者が利益を得られる。まさにスピード競争が勝敗を分けるわけだ。 一方、取引プログラムや取引所マッチングの高速化というのは、一言でいえば「より高性能なコンピューターの開発競争」と言ってよい。取引所マッチングエンジンの高速化は、今や株式取引だけでなくFXや仮想通貨などで幅広く使われている技術で、売買取引の高速化には欠かせないテクノロジーだ。 当時、話題になった技術としては「FPGA」がある。詳細は省くが、簡単に言えばCPUのオフロード化のことで、コンピュータ処理の時間短縮による高速化だ』、「イギリスのEU離脱が決まった瞬間のイギリス・ポンド取引も、人間が瞬きをしている間に勝負が決まった」、「日本銀行の金融政策決定会合の結果・・・英文は、先に結論から入るため分析のスピードが速い。その結果でどこよりも早く発注した業者が利益を得られる」、いずれも初めて知って、驚かされた。
・『投資判断不要、速く注文すれば独り勝ち?  さて、こうしたHFTは証券会社や投資運用会社、ヘッジファンドといった既存の金融機関ではなく、あくまでもHFT会社が単独でやっているケースが多い。莫大な自己資金がかかるわけだが、そのスポンサーはさまざまだろう。既存の金融機関も多いはずだ。 そもそもマーケットメイク戦略にしても、裁定取引にしても、投資に必要な将来の値動きを予想する必要がない。長年培った企業を見抜くスキルとか相場の動きを判断するキャリアも不要だ。ただただ、ほかの業者よりも早く注文ができれば大きな利益を確保できる。 そうした背景からHFTは急速に発達し、莫大な量の取引を行ってきた。例えば、シンガポールを拠点とするHFT業者の「グラスホッパー社」は、日本市場をメインとしており、金融庁に高速取引を行う「高速取引行為者(HST)」としても登録している。 同社は、東証でETFの気配値提示義務を負うマーケットメーカーも務める。同社のジェームズ・リヨンCFOは、QUICKのインタビュー記事(2019年6月21日付)で、日本の月間取引額は3000億ドル(約32兆円)と答えている。 途方もない数字だが、同社の取引の大半は、買いと売りのわずかな指値の価格差によって稼ぐマーケットメイク戦略を中心にしており、相場の方向性を占って投資する戦略はほとんど実施していないため、金融マーケットの動きには何ら影響を与えていない、と断言している。 ちなみに競争は非常に激しく、6年前にはシンガポールで日本市場の取引をするプロの投資家は500~600社あったものの、現在では50社しか残っていない、とも語っている。当時、日本市場がこうしたHFT業者にとってはパラダイスであったことは事実で、アジア最大のHFTマーケットであったと言っていい。 それが一変したのは、金融庁が2018年にHSTの登録制度を導入するなど、日本での高速取引の規制が進んだことだ。これは日本だけではなく、映画『ハミングバード・プロジェクト』の原作となった『フラッシュ・ボーイズ10億分の1秒の男たち』が注目を集めたため、アメリカや欧州でも規制の動きが広まったためと言っていい。 現在、株式投資をしている個人投資家も、そして日々パソコンに向かって売買しているデイトレーダーもまったく関係のないところで、HFT業者が日々すさまじい金額の売買を繰り広げてきたわけだが、実はHFTの現場は大きく様変わりしている』、「グラスホッパー社」、初耳だが、ありそうな話だ。
・『執行アルゴリズム対HFTの戦い、ETF大崩壊のリスク?  HFT業者は厳しい競争にさらされており、業者の中には取引所へのアクセスに時間がかかるなら、自分たちで取引所を作ってしまおうという動きも見られた。現実に「私設取引市場(PTS)」を設立して、取引所よりも細かいスプレッド(売買の価格差)を設定して、より薄い利幅を獲得する競争になりつつある。 そもそも通信回線のスピード競争も、2014年あたりには決着がついてしまっている。2014年7月8日付のロイターの記事「焦点超高速取引の厳しい『台所事情』、利幅少なく競争も激化」によると、すでに東証はこの時点で高速取引にとって欠かせない「コロケーションエリア」を、取引所近くに設置している。 コロケーションとは、東証の売買システムのすぐ隣に投資家向けのレンタルサーバーを設置し、直接ケーブルでつなぐサービスのこと。自己資金を使って売買を行うHFT業者の多くが、そのサービスを使っているとロイターは伝えている。 もともとHFTにはさまざまな批判があった。「見せ玉」を使って売買しているのではないか、スピードを制した業者が莫大な儲けを独占しているのではないかなどなど……。超高速で、超短期のHFTは東証など取引所の監視システムさえもくぐり抜けているのではないか……。そんな指摘が多いのも事実だ。 とはいえ、HFT業者側は株式市場に膨大な流動性を供給している、と反論している。実際にETFなどの設定や取引にはHFTが不可欠になっている。とりわけ、ETFは登場して以降、 アルゴリズムなどと連携して、今やほとんどコンピューター同士で取引されていると言っても過言ではない。 実際、 アメリカ市場の30%をETFの売買が占めており、「JPモルガン」の推計によると、人間同士でかわされるファンダメンタルズ分析に基づいた売買取引は今や10%程度にすぎない。残りの大半はアルゴリズム取引とHFTによって支配されているわけだ。 とりわけ、自動的に売買注文を出すアルゴリズム(執行アルゴリズム)とHFT=高頻度・高速取引との戦いが、日々繰り広げられていると言われている。その舞台となっているのがETFであり、そこに絡んでデリバティブ(派生商品)や先物、指数と逆に動くインバースなどが複雑に絡み合ってくる。 最近の株式市場は瞬間的に暴落するものの、またすぐに回復してくるという傾向を見せている。これはアルゴリズムとHFTによる特徴だと言われている。今のところ、まだ AI(人工知能)は与えられた使命を忠実に実行している人間の下僕だが、いずれは自分で判断して自立し、金融市場を支配しようとするかもしれない。 プログラム同士が取引する日も近づいており、取引所のサーキットブレーカー(一定の値幅で市場取引がストップする)が役に立たない日がやってくるのではないか……。大暴落と大急騰を毎日繰り返すようなマーケットになるのかもしれない。『ハミングバード・プロジェクト』は、そんな人類の抱えるリスクを垣間見せてくれる映画と言っていい』、「実際にETFなどの設定や取引にはHFTが不可欠になっている。とりわけ、ETFは登場して以降、 アルゴリズムなどと連携して、今やほとんどコンピューター同士で取引されていると言っても過言ではない」、すごい時代になったものだ。これからの取引はどうなるのだろう。人間が関与する余地が残されているのだろうか。

第三に、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が11月20日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「証券の「手数料ゼロ」は要注意!投資家が理解すべき構造変化とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/221052
・『「ゼロ」は手数料競争の終着点か? 個人投資家にとって良いことか?  証券業界の各種手数料が「ゼロ」に向かっている。 米国では、既にネット証券最大手のチャールズ・シュワブが株式売買の「手数料ゼロ」を打ち出したことに対して、他のネット証券も追随して、取引手数料ゼロが広がっている。 日本でも、ネット証券最大手のSBI証券が、株式の取引手数料を今後3年以内に原則ゼロとする方針を打ち出している。 個人投資家にとっては、良いことのように見える。しかし、証券会社にも証券取引所にも社員がいるしシステムもある。手数料ゼロで取引ができるという状況は、「これで大丈夫なのか?」「何かおかしいのではないか?」「自分はどうしたらいいのか?」と順々に考えてみるべき問題だ。 これらの疑問の一部に答える記事が「日本経済新聞」(11月18日)に載っていた話題だ。例えば、「覗かれる株注文データ 高速取引、個人に先回り」(川崎健編集委員執筆)だ。 詳しくはぜひ記事を読んでみていただきたいが、信用取引の金利や、貸株の品貸し料といった証券取引に少々詳しい方ならご存じの収益源の他に、高頻度取引(HFT)業者が投資家の注文に先回りして収益を上げ、ネット証券がHFT業者から報酬をもらうような「注文の収益化」の仕組みがあることが説明されている。 二昔前くらいの証券会社では通称「フロント・ランニング」と呼ばれる行為が存在することがあった。大口の顧客から営業部門が受けた株式の売買注文の情報を、自己勘定の株式トレーディング部門が何らかの形で得て、顧客の注文に先回りする形で自社が収益を上げる行為で、監督官庁の検査などで発覚すると処分の対象になる不正行為だ。もちろん、現在も禁止されている。 ネット証券から私設取引所に注文が出て、この注文を見たHFT業者が投資家に先回りして東京証券取引所等に注文を出して、HFT業者が収益を上げることが可能になる。この一連の流れは、証券会社1社でやると不正になるフロントランニングが、証券会社・HFT業者が協力し、舞台装置として私設取引所等を使うと不正にならない(らしい)仕組みであることが分かる。マイクロセコンド(100万分の1秒)の時間単位で、言わば「分業フロントランニング」が行われているということだ。 記事にあるように、投資家は、東証にあったはずの売買注文指し値を見て売り買いを行ったはずなのに、何者かに先回りされたように感じる。しかし、私設取引所で注文の一部は有利に(買い注文なら安く)約定されている部分もあるので、「私設取引所と東証のより有利な方で約定する注文システムだ」との建前に渋々納得する場合もあるだろう。 すっきりしない印象を持つ投資家が多かろうが、こうした状況をどう考えて、どう付き合ったらいいのだろうか』、「「ゼロ」は手数料競争の終着点か? 個人投資家にとって良いことか?」、と本質的な問題を提起するところは、さすが山崎氏だ。
・『投資家にとって重要なのは市場の維持コストの変化を正しく理解すること  HFT業者が市場でどのような役割を果たしているのかについては諸説ある。筆者は、(1)出来高の見かけほど実質的な「流動性」の役には立っていないのだろうが、(2)利益があるからマーケットメイクに参加しており、市場の成り立ちに一定のプラスの役割「も」果たしている、というくらいに考えている。 一般投資家の注文に対する「分業フロントランニング」にあっては、HFTは先回りした買い(売り)と反対売買を「割り込ませる」だけなので、取引コストを下げるという意味での「流動性の改善」に対してはむしろ逆行していて取引の出来高の数字ばかりがかさ上げされている。 他方、上場投資信託(ETF)のマーケットメイクなどにあって、HFT業者が一定の役割を果たしていることも事実だろう。 これまで売買手数料に支えられた証券会社が維持してきた市場取引が、「分業フロント・ランニング」の利益で一部賄われるようになる、という流れだと理解できよう。一般投資家が何らかの意味で市場の維持コストを払うことに変わりはない。ただし、コストを払う主体は変化している。 トータルで改善しているのかどうかに関しては評価が難しい。HFT業者が参加する市場は「不気味だし、嫌いだけれども、トータルのコストは改善している」ということかもしれないし、帳尻は改善していないかもしれない。 ただ、個々の投資家が状況を変えられるわけではない。投資家にできることは、変化を与件として正しく理解することと、コスト負担構造の変化にうまく対応することだろう』、「これまで売買手数料に支えられた証券会社が維持してきた市場取引が、「分業フロント・ランニング」の利益で一部賄われるようになる、という流れだ」、「投資家にできることは、変化を与件として正しく理解することと、コスト負担構造の変化にうまく対応することだろう」、分かり易い解説だ。
・『デイトレーダーは稼ぎづらくなる サイコロは「ゆっくり」「シンプルに」転がせ  ネット証券はかつても今も「デイトレーダー」と呼ばれるような投資家も含めて、頻繁に取引を行う投資家に大いに支えられてきた。これは動かしがたい事実だ。そして、筆者はネット証券(楽天証券)に勤めている。なので、少々申し上げにくいのだが、現在起きているような市場のコスト負担構造の変化は、デイトレーダー的な頻繁な取引による収益獲得をかつてよりも不利で難しいものにしているように思われる。 投資家の平均像としては、取引頻度を落とすゲームプランにシフトすることを考えることがより「得」だろう。 投資家自身が、何を自分の「エッジ」(相対的有利性のポイント)だと考えているのかにもよるが、秒・分・時単位で有効なエッジから、日・週・月・年・長期…といった単位で有効なエッジにシフトしていくことができると有効だろう。 また、そもそも株式投資の本質は「株式のリスクプレミアム(リスク負担を補償する追加的利回り)のコレクション」なので、長期で保有するアプローチが有効にできていると期待できる。 長期で保有できる銘柄に投資するといいし、たぶん、それ以上に分散投資が有効だ。 ゼロ手数料下の株式の売買は「ミクロのいかさま」があるサイコロを振るようなものなので、なるべくサイコロを振る回数を減らすことと、「いかさま」がやりにくいときにサイコロを振ることを心掛けたい。 具体的には、長期のバイ・アンド・ホールド(持ち切り)を中心に投資戦略を考える。どうしても個別銘柄を売買したいときは、例えば、最も出来高が多く注文が集中するのは一般に東証の寄り付きなので、売買注文は「寄り付き・成り行き」に決めておくような、「ゆっくり」かつ「シンプル」なスタイルでいいのではないだろうか。売買テクニック以外のポイントで勝負するのだと考えよう。 「寄り付き」の株価が思ったよりも有利な場合も不利な場合もあるだろうが、長い目で見ると有利・不利は半々だろうし、仮に不利でも長い投資期間で「期間当たりのコスト負担」で考えると損害は軽微だと割り切るのだ』、「長期のバイ・アンド・ホールド(持ち切り)を中心に投資戦略を考える。どうしても個別銘柄を売買したいときは、例えば、最も出来高が多く注文が集中するのは一般に東証の寄り付きなので、売買注文は「寄り付き・成り行き」に決めておくような、「ゆっくり」かつ「シンプル」なスタイルでいいのではないだろうか。売買テクニック以外のポイントで勝負するのだと考えよう」、私はもう積極的な投資は止めたが、多くの人には役立ちそうな投資戦略だ。
・『自分はちゃっかり収益を稼ぎながらHFT業者と「喰われた投資家」に感謝する方法  最後に、ご存じない投資家には「耳より」であるかもしれない情報をお伝えしよう。長期に保有する株式、あるいはETFは、保有ポートフォリオを貸株に回すと、例えば年率0.1%といった利息のかたちで品貸し料が得られる。 特にETFの投資家は、例えば東証株価指数(TOPIX)連動のETFを持っていると、運用管理費用(信託報酬)が年率約0.1%前後掛かるが、品貸し料で年率0.1%の収益があると、実質ほとんどゼロコストでインデックスファンドを持ち続けることができる。外国株式のETFなどでも、品貸し料を得ることができるので、調べてみて、納得できたら利用してみてほしい。 ネット証券をお使いの方は、ホームページで「国内株式」のカテゴリーを見て、「貸株」、さらに「貸株利息」といった分岐に進んでETF等の銘柄コードで検索すると、お持ちの銘柄の品貸し料が分かるはずだ。 ところで、現在、株式を売って現金を手に入れても、ゼロないしマイナス金利なので、プラスの利息(品貸し料)が得られるのは、一昔前の常識からすると、少々不思議に思えないだろうか。これは、ETF等を利用することによってメリットを得ている業者(おそらくはHFT業者)がいるからで、彼らが利益を得られるのは、一般投資家の注文が利用されているからだと考えられよう。 長期投資家は、ETF等をじっくり保有しつつ、品貸し料を得てもいい。そして、HFT業者とHFT業者に「喰われている」一般投資家に静かに感謝するのだ』、「品貸し料」を言葉では知っていても、投資に活用すべきというのは貴重なアドバイスだ。

第四に、金融ジャーナリストの伊藤 歩氏が12月3日付け東洋経済オンラインに掲載した「東証の「市場区分変更」、見えぬ議論の終着点 1部上場企業の「降格案」はなぜ消えたのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/317210
・『あの騒動はいったい何だったのか――。 東京証券取引所の上場区分の変更を検討している、金融庁の金融審議会市場構造専門グループの5回目会合が11月20日に開催された。 関係者からのヒアリングは4回目までの会合で終了している。事務局である金融庁は年内の提言提出を予定しており、審議会のいつものパターンであれば、20日に提言のたたき台に近いものが提示されてもおかしくなかった。 ところが、この日に事務局側から提示されたのは、議論すべきポイントが列挙された論点整理次元のものだった』、「上場区分の変更」がどうなっているのだろうと思っていたら、竜頭蛇尾に終わりそうだ。
・『250億円で東証1部から降格  市場区分見直し議論の発端となったのは、東証に「市場構造の在り方等に関する懇談会」が2018年10月29日に設置されたことだった。日本取引所グループの清田瞭CEOが定例会見で公表し、近年その役割があいまいになっていた4市場(東証1、2部、ジャスダック、マザーズ)の役割を議論し直すという触れ込みだった。 しかし、東証が懇談会について詳細な情報を開示をしないまま、「東証1部2000社の半分もしくは3分の2が強制的に降格」「(東証1部から降格する)足切りラインは250億円の案も」「早ければ2019年5月に東証規則改正」といった報道が相次ぎ、上場会社だけでなく、TOPIX(東証株価指数)をベンチマークに投資をしている投資家にも動揺が走った。 現在のTOPIXは東証1部の全銘柄を対象にしており、対象銘柄が突如入れ替わると、投資家は多額の損失を被る可能性がある。 3月27日に東証が公表した論点整理では、降格イメージをやわらげるためか、上下関係にあった各市場の位置づけを並列に扱い、時価総額での足切りの可能性についても大幅にトーンダウンさせた。しかし、足切りラインと報じられた「250億円」という金額は1人歩きを続けたままで、投資家の疑心暗鬼は消えていない。 審議会はこれまで5回開催され、機関投資家や発行体企業、有識者などからヒアリングを行った。 投資家からは「TOPIXに流動性が乏しい銘柄が含まれていて問題」「TOPIXが問題だから市場区分を変えるという議論は本末転倒で、市場区分問題とインデックスの問題は切り離して考えるべき」などの声があがった。 上場会社4社などは「強制降格が実施されると、失う社会的信用は甚大」「赤字企業でもプライム市場に上場ができるように」などと訴え、大学教授からは「市場コンセプトがあいまいだから改革せよでは、改革で不利益を被る者は納得しない」、弁護士からは「一部の機関投資家の意見に依拠すべきでない」「コーポレートガバナンスコードの適用状況を降格基準に使うべきではない」などという指摘が出た』、東証1部には到底上場企業とは思えないような企業も多く、理想論としては、「市場区分見直し」には意義はあったが、現実論としては、既に深く社会に定着した区分の見直しはやはり抵抗が強いのだろう。
・『事務局案は単なる看板のつけ替え  11月20日に事務局が出した論点整理案は、これらの意見をすべて盛り込んだかのような折衷案だ。 まず市場区分については、現在4ある市場を3に減らす。成長途上の企業を対象とする「グロース」、すでに実績がある企業のうち、高度なガバナンスを備えている企業を対象とする「プライム」、そうでない企業を対象とする「スタンダード」に分ける。 つまり、現在の東証1部はプライムに、2部とジャスダックのスタンダードを合体させてスタンダードに、マザーズとジャスダックグロースを合体させてグロースに、それぞれ看板をつけ替える案にすぎない。 しかもプライム市場への上場基準は、時価総額だけでなく流動性やガバナンスを組み合わせた基準としながら、具体的な数値には一切言及していない。すでに1部に上場している企業については、基準に満たなくても希望すればプライム市場への上場を認め、強制排除もしないという。 つまり、当初の「上場企業が多すぎるから減らす」という議論は跡形もなく葬られ、東証1部上場企業の降格問題は事実上なくなったのだ。) 強制的な降格がないのであれば、東証1部は実質的に現状維持され、わざわざプライム市場を設ける必要性がどこにあるのか、よくわからなくなってくる。 誰もが知っている大企業でもない限り、東証1部というステータスは採用や商取引の場面ではかなり有効だ。正規の手続きを経て1部に昇格したのに、降格となれば失う信用は計りしれない。多くの中小型銘柄企業が混乱したのはこのためだ。中身が変わらないのであれば、呼称も変えてほしくないというのが、これらの企業の本音だろう』、もともと抵抗が大きいことは予想された筈で、東証や金融庁の事務局はどうさばくつもりだったのだろう。
・『時価総額で機械的に振り分けることはない  東証の懇談会と金融審議会の委員の両方を務める立正大学の池尾和人教授は、金融審の第2回会合で「東証の懇談会で議論していたときから、時価総額で機械的に振り分けるなどという乱暴な話はしていなかったのに、そういう印象を世の中に持たれる結果になった」と発言。報道を否定している。 さらに、第5回会合では「ガバナンスの高低でプライムとスタンダードに分けるというのなら、両社に上下関係が生まれるのは明らか。並列だと言うのは理屈として難しい」と突っ込んだ。 そして、同じ会合で「上場会社、つまりパブリックカンパニーとして、最低限備えていなければならないガバナンスの水準を越え、どこまでエクスプレイン(説明)するのかは、個別の企業の問題。市場区分で議論する話ではない。並列だというのなら、市場区分は3つではなくグロースとそれ以外の2つとすべき」と言い切った。予定調和とはおよそかけ離れた、極めて真っ当な議論が展開されたのだ。 もっとも、ある機関投資家は「2部市場というのはある意味懐の深い市場。小粒ながら隠れた優良企業が多数上場している一方で、降格になった東芝の受け皿になっていたり、地方市場が消滅したために2部に移行した企業など、さまざまな企業が混在している。水清ければ魚住まずで、こういった市場の存在も必要」と言う。 問題は、市場区分と分けて考えるべきと整理されたインデックスである。金融庁の論点ペーパーは、機関投資家にとって使い勝手のいい、新たなTOPIXの創設を前提にした書きぶりだ。 論点ペーパーは、インデックスの選定対象はプライム市場だけでなくスタンダード市場からも選定できるようにしてはどうかと提言している。金融審の議論では、グロース市場からの選定を求める発言が出ている。 現在のTOPIXは東証1部の全銘柄を対象にしているが、新しいTOPIXは一定の基準に基づいて数を絞り、対象に選ばれたり、対象から外れるケースを前提としている。しかし、それは既存のJPX日経インデックス400とどう違うのか。JPX日経インデックス400が活用されていない実態も含め、議論は一切なされていない』、そもそも「インデックス」が公的性格を持つこと自体が、おかしなことだ。欧米では、民間が知恵を絞って作成したものが、市場に定着していったことを、考慮すれば、民間に委ねるべきだろう。ただ、日本的なインデックスが既に定着してしまったという現実を踏まえると、悩ましい問題ではある。
・『日銀やGPIFへの影響は?  何よりも、現在のTOPIXの最大顧客といっていいGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と日本銀行への影響を分析した形跡すらない。 日銀は年間6兆円ものETF買いを続け、2019年9月末の残高は27兆円に達している。GPIFも159兆円の運用資産のうち、日本株は38兆円強。その9割はパッシブ運用である(2019年3月末時点)。TOPIXの設計を変えることで、もっとも甚大な影響を受けるのはGPIFと日銀。つまり国民である。 「インデックスはさまざまな作り方があるが、東証1部上場会社を網羅するTOPIXは極めてシンプルな設計。今進めている議論はその設計を変更するという話。GPIFや日銀が使っている以上、そもそも設計自体、変更していいのかどうかから議論すべき」(前出の機関投資家) 結局、この1年の騒動は何だったのか。甚大な被害を被る市場参加者が出るような議論を唐突に始めたうえ、情報も出さずに報道を放置した東証の責任は重いことを、言い出しっぺの東証はそろそろ認めるべきだろう』、着地点も考えずに突っ走った「東証や金融庁の責任は重い」ことは確かだ。どうやって幕を引くのか見物だ。
タグ:事務局案は単なる看板のつけ替え 時価総額で機械的に振り分けることはない 日銀やGPIFへの影響は? 250億円で東証1部から降格 (その3)(リート初の「敵対的買収」意外な結末の一部始終、0.001秒短縮に命を賭けた男たちの儲ける執念、証券の「手数料ゼロ」は要注意!投資家が理解すべき構造変化とは?、東証の「市場区分変更」 見えぬ議論の終着点) 東洋経済オンライン 個人投資主はさくら、みらいに厳しい声 山崎 元 ダイヤモンド・オンライン 個人投資家にとって良いことか? リート特有の「みなし賛成」が事態を複雑にした HFT業者 1日に投資主総会が2回開催される異常事態 資本市場 通信回線の高速化だけじゃない? みらいがさくらとの合併に応じたわけ アルゴリズム取引全体の中の1つがHFT 投資家にとって重要なのは市場の維持コストの変化を正しく理解すること 「証券の「手数料ゼロ」は要注意!投資家が理解すべき構造変化とは?」 デイトレーダーは稼ぎづらくなる サイコロは「ゆっくり」「シンプルに」転がせ スイッチ 伊藤 歩 過熱する高性能なコンピューターの開発競争 HFTは、大きく2つに分けて「マーケットメイク戦略」と「裁定取引」を使って利益を出す 執行アルゴリズム対HFTの戦い、ETF大崩壊のリスク? 「ゼロ」は手数料競争の終着点か? あの騒動はいったい何だったのか―― 岩崎 博充 「0.001秒短縮に命を賭けた男たちの儲ける執念 高頻度取引に支配される金融市場のリスク」 高頻度取引が織りなす金融市場のロマン? イギリスのEU離脱が決まった瞬間のイギリス・ポンド取引も、人間が瞬きをしている間に勝負が決まった 投資判断不要、速く注文すれば独り勝ち? 「東証の「市場区分変更」、見えぬ議論の終着点 1部上場企業の「降格案」はなぜ消えたのか」 「リート初の「敵対的買収」意外な結末の一部始終 1号上場から18年、制度的不備があらわに」 ETF(Exchange Traded Funds:上場投資信託)」も高頻度取引の産物
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