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ポピュリズムの台頭(その5)(Brexit実現へ 右派ポピュリスト革命の「最初の勝利」、ヨーロッパでポピュリズムへの反省が始まった?A New Hope for Democracy) [世界情勢]

ポピュリズムの台頭については、1月18日に取上げた。今日は、(その5)(Brexit実現へ 右派ポピュリスト革命の「最初の勝利」、ヨーロッパでポピュリズムへの反省が始まった?A New Hope for Democracy)である。

先ずは、在独ジャーナリストの熊谷 徹氏が12月17日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「Brexit実現へ、右派ポピュリスト革命の「最初の勝利」」を紹介しよう。これは、昨日のこのブログで取上げた英国のEU離脱を、欧州大陸側から見たものでもある。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/121600123/?P=1
:12月12日の英下院総選挙で、ジョンソン首相の率いる保守党が365議席を獲得。EU離脱が進むことになった。英国の離脱はEUに甚大な影響を及ぼす。英国の人口は約6600万人、GDPは約2兆3000億ユーロ。EUのGDPは一挙に約18%、人口は約13%減る。この離脱は、欧州で右派ポピュリズム勢力が収める最初の具体的な勝利だ。 「ブレグジットを終わらせよう(Get Brexit done)」というボリス・ジョンソン首相のスローガンが、英国の有権者を突き動かした。保守党の大勝で、英国が来年1月末までにEU(欧州連合)との合意に基づいて離脱することはほぼ確実となった』、「この離脱は、欧州で右派ポピュリズム勢力が収める最初の具体的な勝利だ」、東欧を除いた西欧では確かにその通りだ。
・『保守党、32年ぶりの歴史的圧勝  12月12日の下院総選挙で、ジョンソン首相の率いる保守党が365議席を得て、過半数を確保することが確実となった。英国下院の議席数は650なので、ジョンソン首相は安定過半数を確保する。これは1987年にマーガレット・サッチャー首相(当時)の率いる保守党が下院総選挙で圧勝して375議席を確保したのに次ぐ、地滑り的勝利だ。これに対しジェレミー・コービン氏の率いる労働党の議席数は203にとどまった。これは1935年以来最も少ない議席数だ。 わずか1年前には下院で何の権限も持たない「ヒラ議員」だったジョンソン首相に、有権者は絶大な権力というクリスマス・プレゼントを与えた。彼はブレグジット(英国によるEU離脱)を跳躍台に使って、権力拡大という政治的目標を着々と実現しつつある。保守党は、不運続きだったテリーザ・メイ前首相の時に比べて、下院での勢力を広げることに成功した。保守党にとっても、メディアから「ピエロ」と揶揄(やゆ)されたジョンソン氏を首相に担ぎ上げたことは、「勝利」だった。 ジョンソン圧勝は、英国のメディアや世論調査機関にとっても、想定外の事態だ。投票前の世論調査では、保守党への支持率(40%台)が労働党への支持率(30%台)を約10ポイント上回っていたが、実際の開票結果がこれほどの大差になるとは誰も予想していなかった。 ジョンソン首相は公約通り来年1月末までにブレグジットを実現するために、EU離脱に関する協定案を早急に下院で可決させるだろう。プリティ・パテル内務大臣は、「政府はクリスマス前に下院で協定案の承認を受け、ブレグジットを実現する」と述べている』、「ジョンソン首相」はかつてロンドン市長だったが、「1年前には下院で何の権限も持たない「ヒラ議員」だった」。「「ピエロ」と揶揄」されながらも、ここまで大処理したとは、幸運の星にでも恵まれたのだろう。
・『「ブレグジットを片付けて、前へ進もう」  この選挙は、ブレグジットに関する事実上の2度目の国民投票だった。有権者たちは今回、ブレグジットを断行するよう、首相に明確な負託を与えた。EU残留派の希望を打ち砕き、ジョンソン首相に追い風となったのは、「ブレグジットを早く終えたい」という国民の願望だ。 英国にはブレグジット疲れ(Brexithaustion)という言葉がある。2016年の国民投票で離脱派が勝利したものの、ブレグジットは政府と議会下院の対立のために、3年以上袋小路に陥っていた。英国、EUの政界、産業界では「ブレグジットをめぐる交渉のために、経済のデジタル化やロシア・中国からの脅威への対応、移民問題など、重要な議題がおろそかにされている」という不満が高まっていた。特にブレグジットに関する政府の提案が、ことごとく議会でブロックされ、堂々めぐりの状態が続いたことに多くの英国民がうんざりしていた。 保守党は今回の選挙戦で映画「ラブ・アクチュアリー」(2003年公開・ヒュー・グラント主演)を基にしたテレビ広告を放映した。クリスマスを前にした英国の住宅街。玄関のベルが鳴ったので住人の女性が扉を開けると、ジョンソン首相が立っている。彼はテープレコーダーでクリスマス・キャロルの音楽を流しながら、メッセージを書いた紙を女性に次々に見せる。そこには「もしも議会が妨害しなければ、我々はブレグジットを実現して、前に進むことができます」と書かれている。首相は次々に紙を取りかえて、「しかしひょっとすると労働党が勝つかもしれません。保守党が安定過半数を確保できるか、それともどの党も過半数を取れない状態になるか、それを決めるのはあなたの1票です」と訴える。 多くの有権者は、「前に進むことができる(We can move on)」というメッセージに引きつけられたのだろう。保守党も労働党も過半数を取れないハングパーラメント(宙づりの議会)が生まれた場合、これまでの堂々めぐりが来年も続く。多くの英国人たちは新しい年には、この国をブレグジットの泥沼から引っ張り上げて、けじめをつけたいと考えたのだ』、「保守党」の「テレビ広告」は、心憎いほど巧みだ。
・『ジョンソン首相の強硬な態度が奏功  ジョンソン氏に勝利をもたらしたのは、彼が首相就任直後から「EUと合意できなくても離脱する」という強硬姿勢を示し続けたことだ。彼の側近は「政府はEUと合意できないという前提で準備作業を進めている」というメッセージをメディアに流した。ジョンソン首相は、EU側に「英国は、合意なしのハード・ブレグジットに本当に踏み切るかもしれない」という不安を抱かせることに成功した。 この不安が、今年10月17日に奇跡を生んだ。EUは、それまで「メイ前首相との間で合意した離脱協定案を修正しない」という態度を貫いていた。ところがEUは突然180度方向転換して交渉に応じ、アイルランド共和国と英領北アイルランド地方との間の国境に関するジョンソン首相の修正案に合意したのだ。 この背景には、ハード・ブレグジットに対する恐れとともに、EU側の「ブレグジット疲れ」もあった。ブレグジットをめぐる先行きの不透明感は、ドイツをはじめとする欧州大陸各国の景気にも悪影響を与え始めていた。「離脱できないならば、溝の中で死んだ方がましだ」というジョンソン首相の脅しに、EUは屈したことになる。 ジョンソン首相は、1月31日までに離脱するという当面の目標は達成するだろう。だが英国政府の前には、難題が山積している。英国政府は、2月1日から始まる11カ月の移行期間中に、離脱後のEUとの貿易に関する条件や、英国民・EU圏の市民の滞在権の問題、防衛協力など、ブレグジット後の対EU関係についての様々な条件について、EUと本格的な協議を始めなくてはならない。ブレグジットが英国に与える不利益を最小限にするための作業が始まるのは、まさにこれからである。 ジョンソン首相は、「2020年末までにEUとの自由貿易などに関する交渉を終える」という目標を打ち出しているが、EU側では「少なくとも交渉に3年はかかるだろう」という見方が有力だ。EUとカナダの間の自由貿易協定の調印には、実に7年もの歳月がかかっている』、「EU側の「ブレグジット疲れ」もあった」、言われてみればその通りなのかも知れない。
・『ブレグジットはEUにとっても大損失  欧州大陸の政府や企業は、英国がEUとの合意なしに離脱する「ハード・ブレグジット」への懸念を強めていた。EUと英国の間に関税が突然導入されると、物流などを混乱させるからだ。だがジョンソン首相の圧勝によって、彼がEUとの間で合意した協定に基づき離脱が行われることがほぼ確実となり、ハード・ブレグジットの危険は回避された。 EU側では、安堵の声が聞かれる。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は「英国がEUを離れるのは残念だが、無秩序なハード・ブレグジットではなく、合意に基づいたブレグジットとなることを歓迎する。さらに保守党が安定過半数を確保したことで、これまで我々がしばしば目撃したような、議会と政府が立ち往生する状況が避けられるのは、よいことだ」と述べている。 ブレグジットをめぐる五里霧中の状態が終わり、EU離脱への道筋がはっきりしたこと、特に無秩序な離脱の回避は、民間企業からも高く評価されるに違いない。 しかし英国の離脱が、EUにとって大きな痛手であることに変わりはない。1952年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)として産声を上げたEUは67年間の歴史の中で、初めて加盟国を失う。欧州の拡大・統合プロセスに初めてブレーキがかけられる。 しかも英国は、EUで最も重要な国の1つだ。ブレグジットによってEUの人口は約6624万人減り、GDPも約2兆3320億ユーロ(約280兆円)減る。英国のGDPは、28の加盟国の中で、ドイツに次いで2番目に大きい。EUのGDPは一挙に約18%、人口は約13%減る。 ドイツの経済学者ハンス・ベルナー・ジン教授は、「英国のGDP規模は、GDPが最も小さい方から20の加盟国を合わせた経済規模に相当する。つまりブレグジットはEUの小国20カ国が一度にEUを離脱するのと同じインパクト(衝撃)を持つ」と述べている。 欧州で株式市場に上場している企業の約20%が、英国に本社を置いている。さらに英国は欧州の「知の源泉」としても重要な役割を果たしている。世界のトップ大学と言われる高水準の大学のランキングによると、欧州で最も水準が高い大学10校のうち、8校が英国にある。別のランキングを見ても、10校中7校が英国の大学だ。 外交に与える影響も大きい。伝統的に英国は米国政府と「特別な関係」を維持してきた。例えば米国の諜報(ちょうほう)機関は、同じアングロサクソンの国である英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの諜報機関と密接に協力してきた。これら5カ国の諜報機関のサークルは「ファイブ・アイズ(5つの目)」と呼ばれる。英国はこれらの国々と特に親しい関係を保ち、イスラム系テロ組織などに関する重要な情報を、日本やドイツなどの非アングロサクソンの国よりも多く共有してきた。このように米国政府と独自の情報チャネルを持っている英国を失うことは、EUにとって大きな損失である』、「ブレグジットはEUの小国20カ国が一度にEUを離脱するのと同じインパクトを持つ」、「高水準の大学のランキングによると、欧州で最も水準が高い大学10校のうち、8校が英国にある」、「ファイブ・アイズ」の英国を失う、などいずれもEU諸国にとっても、影響は大きそうだ。
・『EU財政にも深い傷  英国離脱は、EU財政にも大きな影響を与える。EUの2017年度予算は約1579億ユーロ(約19兆円)。EUはこの資金によって、域内の経済格差を縮める努力をしている。例えばギリシャやイタリア南部を旅行すると、高速道路などの工事現場の立て札に、しばしば青地に黄色の星を並べたEUのマークが付けられているのを目にする。その工事にEUの資金が投じられていることを示す。 EUはこのように欧州の至る所で、道路や橋梁、鉄道網などの交通インフラを整備したり、各国の農家に補助金を出したり、企業の研究開発を支援したりしている。EUから主に資金援助を受けるのは、市民1人当たりのGDPがEU平均よりも低い国々だ。EU予算は、加盟国が納める拠出金によって支えられている。この「会費」の額は、GDPの大きさなどに基づいて決められている。2017年に拠出金額が最も多かったのはドイツで、約196億ユーロ(約2兆4000億円)だった。英国の支払額は約106億ユーロ(約1兆3000億円)で、フランス、イタリアに次いで第4位である。 加盟国はEUに「会費」を支払うだけではなく、EUから様々な資金援助、つまり「見返り」も受ける。したがってEUへの貢献度を比べる上で最も重要なのは純拠出金、つまり加盟国がEUに支払う拠出金と、各国がEUから受け取る補助金などとの差額である。 交通インフラの整備が遅れており、農業への依存度が高い国ほど、EUから多額の補助金を受け取る。このためEU内のいわば「発展途上国」は拠出金よりも受け取る額が多いので差引額が黒字(入超)となる。他方、交通インフラの整備が比較的進んでおり、農業依存度が低い「先進工業国」は赤字(出超)となる。 英国の2017年の純拠出金(つまり赤字額)は約53億ユーロ(約6400億円)で、ドイツ(107億ユーロ=約1兆3000億円)に次いで2番目に多かった。純拠出金(赤字額)の対GDP比率を比べると、ドイツはGDPの0.32%で第1位。英国は同0.23%で第4位である。 逆に農業など第1次産業への依存度が大きいポーランドやギリシャは、EUから供与される額の方が、EUに支払う額を上回っているので黒字となっている。ギリシャはGDPの2.1%に相当する額、ポーランドはGDPの1.9%に当たる額をEUから受け取っている。 つまり英国の離脱によって、EUが使える資金の規模は一挙に6400億円減る。中長期的には、補助金やインフラ整備資金などを受け取っている東欧諸国、南欧諸国にとっても痛手だ』、確かに「中長期的には、補助金やインフラ整備資金などを受け取っている東欧諸国、南欧諸国にとっても痛手だ」、こんなところにも影響せざるを得ないようだ。
・『英国は欧州ポピュリスト革命の最初の犠牲者  21世紀に入ってから、米国でのトランプ政権の誕生など、世界各地で右派ポピュリスト勢力が拡大しつつある。私はこれを、世界で「右派ポピュリズム革命」が進んでいる兆候と考えている。この革命は運動の中心を持たず、所得格差や政治エスタブリッシュメント(特権階級)に対する市民の不満を「栄養」として、各地で分散的に増殖しつつある。近く実現する英国のEU離脱は、欧州で右派ポピュリズム勢力が収める最初の具体的な勝利だ。 フランスやイタリアの右派ポピュリズム勢力は、2016年以降の英国の混乱を見て恐れをなしたのか、最近ではEU離脱を要求しなくなっている。ドイツの右翼政党も、最近ではユーロ圏離脱について、言及するのを避けている。だが来年英国が離脱を実現した場合、これらの国々のポピュリストたちがどのような反応を見せるかは、依然として1つの心配の種だ。EUがジョンソン首相の脅しの前に妥協したことが、他国の右派ポピュリスト勢力に「新たな勇気」を与えるとしたら、欧州にとっての大きな悲劇である』、「「右派ポピュリズム革命」・・・所得格差や政治エスタブリッシュメント(特権階級)に対する市民の不満を「栄養」として、各地で分散的に増殖しつつある」、憂慮すべき現象だ。「英国のEU離脱は、欧州で右派ポピュリズム勢力が収める最初の具体的な勝利だ」、ハンガリーやポーランドなど旧東欧諸国では「右派ポピュリズム政権」になっているので、正しくは「欧州で」というより「西欧で」だろう。「EUがジョンソン首相の脅しの前に妥協したことが、他国の右派ポピュリスト勢力に「新たな勇気」を与えるとしたら、欧州にとっての大きな悲劇である」、その通りで、思わぬ余波になる懸念がありそうだ。

次に、ジョージタウン大学教授のチャールズ・カプチャン氏が10月5日付けNewsweek日本版に掲載した「ヨーロッパでポピュリズムへの反省が始まった?A New Hope for Democracy」を紹介しよう。ただ、これは英総選挙前に書かれたことを留意する必要がある。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13115_1.php
・『<イギリスとイタリアの変化に見る民主主義の「自己修正」はアメリカに到達するか> ヨーロッパの政治の振り子が、移民排斥やナショナリズムの熱狂とは反対の方向に振れつつあるのかもしれない。 もちろん、イギリスのEU離脱(ブレグジット)をめぐる迷走は、相変わらずどこに行き着くのか分からない。イタリアで新たに誕生した連立内閣も、いつまで続くのか、あるいは、まともに機能するか分からない。 それでも、イギリスで与党・保守党の一部がボリス・ジョンソン首相に対して反旗を翻したこと、そしてイタリアで右派政党「同盟」(旧「北部同盟」)が権力の座から転落したことは、民主主義社会には過激なポピュリズムから回帰する力があるという希望をもたらしている。 確かに、自由民主主義と多元主義の危機はまだ続いている。 イギリスのジョンソンや、イタリアのマッテオ・サルビニ同盟党首、ドナルド・トランプ米大統領、そしてハンガリーのオルバン・ビクトル首相らポピュリスト政治家は、北米とヨーロッパがいかに衝動的な政治に流されやすいかを明らかにした。イギリスの首相が、EUからの合意なき離脱という破壊的行為を固く決意しているらしいことは、いまだにショッキングな現実だ。 アメリカの大統領が連日のように移民を侮辱し、ハイチとアフリカ諸国を「肥だめ」と呼び、ネオナチのデモに好意的な発言をすることも、これまでなら考えられなかった。イタリアで最大の人気を誇る政治家であるサルビニが、国内における民族浄化ならぬ「移民浄化」を訴えたことも衝撃的だった。 だが、イギリスとイタリアの政治で最近起きていることは、大衆扇動と人種差別をあおる行為にも限度がある(かもしれない)ことを示唆した。 英議会は、合意なき離脱を延期する法案を可決した。さらに保守党から大量の議員が離党した(造反を理由に追放された議員を含む)ため、ジョンソンは議会で多数派の地位を失った。長い目で見れば、こうした反乱は手遅れだったのかもしれない。 しかし選挙で選ばれた議員たちが、自らの政治生命や忠義を危険にさらしてでも国家のために立ち上がったことは、民主主義の自己修正メカニズムが機能しつつあり、リーダーによる民主的手続き無視に待ったをかける動きとして注目に値する。 相変わらずイギリス国内の分断は激しく、政治的な機能不全は続いている。しかし少なくとも現時点では、政治の適正化と常識が、ポピュリストの暴走に勝利を収めつつある』、総選挙結果は、イギリスでは真逆のことが起きたことを示している。「保守党から大量の議員が離党」、彼らはどうなったのだろう。
・『「サルビニ排除」で一致  イタリアでも、中道主義と歩み寄りの精神が復活しつつあるようだ。8月に同盟と左派政党「五つ星運動」の連立政権が崩壊して以来、混乱が続いていたが、五つ星と民主党の間で連立合意が成立したのだ。) だからといって両党がイデオロギー的な一致点を見いだせるとは思えないし、有効な統治を実現できる保証もない。しかしサルビニを退場させるという最優先課題に対処するために、イタリアの政治システムは適切に機能したと言えるだろう。 同盟の反移民的な言動と無責任なEU批判は、依然として大衆の間で受けがいい。それでもイタリア全体は、もっときちんとした形を持つ、まともな政治に回帰しつつある。ヨーロッパにはまだ、ポピュリストの政治指導者が権力を握っている国があることを考えると、イギリスとイタリアのこうした変化は歓迎すべきものだ。 例えばハンガリーでは、オルバンの権力は強くなる一方だ。ポーランドでも、右派政党「法と正義」が5月の欧州議会選挙で相変わらずの強さを示し、10月に予定されている総選挙でも善戦するとみられている。 しかし何より懸念すべきなのは、アメリカでトランプの人気に陰りが見えないことだろう。トランプは国内外で移民排斥的でナショナリスト的な主張を繰り返してきた。しかも2020年大統領選に向けて、支持基盤を勢いづけるとともに、民主党を突き放すために一段と過激な言動を取る可能性は高い。 民主党は18年の中間選挙の結果、下院で多数派の座を取り戻し、大統領の暴走を抑制しようとしてきた。だが、トランプは依然として民主主義の理念と手続きを踏みにじり、国内外に甚大な影響を与えている。 それなのになお、約40%の有権者から支持を集めており、再選の可能性は十分ある』、「何より懸念すべきなのは、アメリカでトランプの人気に陰りが見えないことだろう」、強く同意する。
・『政治的駆け引きの結果  トランプ自身と同じくらい苦々しい問題は、共和党がトランプの気まぐれを黙認していることだろう。分別があるはずの議員たちが、一貫性のない気分屋のデマゴーグ(扇動政治家)にそろって追従しているのだ。 それはトランプが、共和党の支持基盤の心をがっちりつかんでいるからだ。減税と保守派判事の指名という、共和党が最も重視するアジェンダの一部を実現してきたことも大きい。 しかしトランプへの追従は、大きな代償ももたらしている。トランプは歳出削減や貿易重視、移民受け入れなど、共和党の伝統的な立場を捨てた。 また、白人ナショナリズムを支持し、移民を排斥する発言は、人種的・民族的・宗教的な多様性を維持しつつ社会のまとまりを確保してきたアメリカの民主主義と多元主義を脅かしている。 それでもイギリスとイタリアの出来事を見ると、欧米の政治をむしばむ右派ポピュリズムに歯止めをかけることは可能なのだという希望が湧いてくる。 イギリスでは、ひと握りの勇気ある保守党議員がジョンソンの暴走にストップをかけた。イタリアでは、政治的現実主義がサルビニの野心をくじき、国家を危機の寸前から救った。 とはいえ、そのどちらも選挙の結果ではなく、政治的駆け引きの結果、生じた。このため、この現象が社会全体におけるポピュリズムの一時的後退を意味するのか、それとも、長期にわたる政治的軌道修正なのかは、まだ判断することはできない。 この疑問への答えは、イギリスの理性と、イタリアの現実主義が、大衆の不満にきちんと対処する政策を生み出せるかどうかに懸かっている。 それは歴史的に重大な意味を持つであろう20年アメリカ大統領選の行方にも、少なからぬ影響を与えるに違いない』、「イギリス」では、選挙結果からみるに、「理性」ではなく、「議会の混迷続きによる投げやりな態度」と言い換えた方が適切だろう。「20年アメリカ大統領選の行方にも、少なからぬ影響を与える」ことがないよう祈るしかなさそうだ。
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