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2020年展望(その2)(働きがい問われる年 シニアのリストラが若者にも悪影響、2020年も続く「反グローバル化のうねり」 英総選挙で「赤い壁」崩壊 米大統領選はトランプ優位)

2020年展望については、1月1日に取上げた。今日は、(2)(働きがい問われる年 シニアのリストラが若者にも悪影響、2020年も続く「反グローバル化のうねり」 英総選挙で「赤い壁」崩壊 米大統領選はトランプ優位)である。

先ずは、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が1月6日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「働きがい問われる年、シニアのリストラが若者にも悪影響」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00057/?P=1
・『2020年が到来してしまった。 新年早々「しまったとは何事だ!」と怒られそうだが、2013年にIOC(国際オリンピック委員会)のジャック・ロゲ氏が「TOKYO 2020」と書かれたフリップを掲げたのが、ついこの間のようで。「まだまだ先」が「今」となり、少々戸惑っている。 しかも、2020年はこれまで何度も書いてきた通り、あちこちが「50代以上だらけ」になる未曽有の中高年があふれる時代の到来だ。 大人(20歳以上)の「10人に6人」が50代以上で、40代以上に広げると「10人に8人」というリアルがどんなものなのか? 私には皆目見当がつかないのだが、色々な意味でかなり深刻な問題が生じることは間違いないだろう(参考コラム「現実、企業は50歳以上を“使う”しかないのだ」)。 もっとも一番の心配は、社会や企業がこの超少子高齢化社会にリアリティーを持てていないのではないか?ということ。本気で中高年が社会の大半を占める時代の対策をやっているとは思えない。 2019年末、日本人の国内出生数は86万4千人に急減し(前年比5.92%減)、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回ったことが分かった時にも、「驚異的な数字が出てしまった。相当思い切った手を打つことがどうしても必要だ」(衛藤晟一少子化担当相)などと、コメントするほどの認識の緩さだ。 一体、何を今さらのたまっているのか。2020年には、私を含めた半数以上の女性が50歳以上の「出産不可能女性(←国の見解)になる」ということも以前から分かっていたのに、政府は1人で5人も6人も産まないと到底到達しない「希望出生率1.8」という不可解な目標を掲げてきた。 少子化タスクフォースしかり、女性手帳しかり、婚活イベントしかり、トイレ大臣(注)しかり。どれもこれも「あの~、それで子供産みたいって人マジで増えると思ってるんですか?」と突っ込みどころ満載の“キャンペーン”が繰り返され、どこをどう切り取っても、来る超少子高齢化社会に正面から向き合ってきたとは言い難い』、安倍政権の「やった振り」の姿勢は目に余るが、マスコミが忖度して批判しないのをいいことに、増長しているようだ。
(注)トイレ大臣:「私をトイレ大臣と呼んで」 有村女性担当相が公共トイレの快適アップにやる気満々(産経新聞2015/8/24)
・『シニア社員の相次ぐリストラは企業のゆるやかな自殺  一方、企業に至っては臭いものにはフタとでも言わんばかりの施策を繰り返している。 昨年10月に第一報を伝えた通り(参考コラム「再来した大リストラ時代と『雇用流動化』礼賛の幻想」)、2019年1~11月の上場企業の早期・希望退職者の募集(または応募)が、1万人を突破。さらに、今年は味の素(100人程度)やファミリーマート(800人程度)など7社、計1500人が、バブル世代をターゲットに希望・早期退職を実施する方針を決定した。 2019年12月に朝日新聞が45歳以上の大量リストラを発表し、退職金は上限6000万円という驚愕(きょうがく)の数字が報じられ話題になったが、6000万円払ってでもコスパの悪いシニア社員をたたき出したい。追い出し部屋は世間から叩かれ、低賃金で定年後雇用延長することへの裁判が増え、政府は定年を70歳まで引き上げる方針を出しているので、「今のうちに何とかしなきゃ!」「そうだよ!AIやITにもっと投資して、若い人の賃金を上げていい人材集めようぜ!」と、シニア切りに躍起になっている。実に残念なことだ。 この先、切っても切っても増え続けるシニア社員を、企業はどうするつもりなのか? 人員削減のような分かりやすいコストカットは、“目に見えない力”を育む土壌を自らの手で壊しているようなもの。短期的に救われても長い目で見ればアウト!いわば「企業のゆるやかな自殺」だ。 労働力人口が減少している中で成長力を維持していくためには、シニア社員も含めたすべての社員がエイジレスに働くための多様な就業機会を提供し、彼らのやる気を引き出す経営を進める必要がある。にもかかわらず業績の良い企業が将来を見込んで続々と「お引き取りください!」攻勢に出ている現実を私は全くもって理解できない』、「シニア切り」を「企業のゆるやかな自殺」とはまさに言い得て妙だ。
・『そもそも長期雇用を9割超の若者が望む時代に、40代後半以上を追い出す会社を若い世代が信用するだろうか?組織というものは、下から上を見ると実によく見えるものだ。上の人たちは「若い人が辞めてしまう」と嘆き、私の講演会や経営者との座談会でも「若い人を辞めさせないためにはどうしたらいいのか?」という相談は年々増え続けているというのに……。 ふむ。元日早々、暗い話題で申し訳ない。だが、人口構成が変わり、仕事の質が変わり、人生で働く時間が延びた今、今まで「当たり前」と思っていたことが当たり前じゃなくなり、「へー、そんな時代があったんだー」と笑われてしまうくらい大きな変化が起こると個人的には感じている。 そう。時代が動く。それが2020年ではないか、と。「2020は大きな節目」になる。 というわけで、前置きが長くなった。2020年最初のコラムのテーマは「働きがい」。SDGsの17の目標の8番目に掲げられている「ディーセント・ワーク(Decent Work)=働きがいのある人間らしい仕事」をベースに、働きがいのある職場について、あれこれ考えてみようと思う』、「ディーセント・ワーク」とは初耳だが、響のいい言葉ではある。
・『働きがいのある「ディーセント・ワーク」  まずは、みなさん、特に企業にお勤めの方はご存じだと思いますが、念のためSDGsについて簡単に説明しておきます。 SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連加盟193カ国が2016年から2030年までの15年間で達成するために掲げた国際社会共通の目標である(2015年9月の国連総会で採択)。 SDGsは、2000年に国連のサミットで採択された「MDGs(ミレニアム開発目標)」が2015年に達成期限を迎えたことを受けて、MDGsに代わる新たな世界の目標として定められた。MDGsは先進国による途上国の支援を中心とする内容だったが、SDGsでは「誰一人取り残さない」ことをスローガンに、すべての国が一丸になって達成すべき目標としている。 SDGs では「言いっ放し」を阻止するために、定期的に達成度合いをモニタリングしていくことが定められていて、進捗をモニタリングしていく枠組みとして、国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF:High Level Political Forum)というものが設置されている』、「「言いっ放し」を阻止するために、定期的に達成度合いをモニタリングしていくことが定められて」いる、とは国際機関は、「言いっ放し」の安倍政権よりも遥かに進んでいるようだ。
・『具体的には、SDGs達成に向けての進捗状況を各国が「自分たちで報告」を行い、そのレビューが毎年7月頃に行われる。 例えば、2018年7月に発表されたSDGs達成ランキングでは、日本は156カ国中15位(前年と同じ)。1位はスウェーデン、2位デンマーク、3位フィンランドと北欧勢が占め、4位ドイツ、5位フランスと続き、韓国は19位、米国は35位だった。(参考) 「なんだ、日本やるじゃん!」と喜ぶのは、まだ早い。 17の目標のうち、日本が達成されていると評価したのは、「4.質の高い教育をみんなに」のみ。その他は未達成で、「5.ジェンダー平等を実現しよう」「12. つくる責任つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「14. 海の豊かさを守ろう」「17. パートナーシップで目標を達成しよう」の5つは、4段階の評価で最も低い達成度だ。 今回取り上げる「8.働きがいも経済成長も(ディーセント・ワーク)」は、4段階の2番目。 日本では、経団連がSDGsの達成を企業行動憲章に盛り込み、SDGsの達成を目指すよう大号令をかけ、日本の企業がSDGsの掲げる課題領域において技術革新を進めていることが評価されたと報じられている。 いずれにせよ「ディーセント・ワーク」は、私たちの働き方を考える上で、極めて重要かつ価値ある概念なので、時代の変わり目である2020年の年初に取り上げようと思った次第だ』、日本の「ディーセント・ワーク」は「4段階の2番目」、とは自己評価で、「経団連」の「大号令」があったとはいえ、高過ぎる印象だ。
・『「ディーセント・ワーク」は、1999年のILO(国際労働機関)総会で初めて用いられた概念で、ILOは「すべての人にディーセント・ワークを(Decent Work for All)」の実現を目指して活動を展開している。日本では「働きがい」と訳される場合が多いが、正確には「権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事」を意味している。 その仕事は、権利、社会保障、社会対話が確保されていて、自由と平等が保障され、働く人々の生活が安定する、すなわち、人間としての尊厳を保ち(あるいは誇りを持って働ける)労働・職場と解釈できる。 つまり、ディーセント・ワークを展開するには、「働きがいのある人間らしい仕事」があることが基本なのだ。 加えて、SDGsでは「働きがいも経済成長も」としている通り、働きがいのある人間らしい仕事ができる環境を整えると、個人のパフォーマンスが向上することが分かっている。 働きがいとは、自分のやっていることに意義や誇りを感じ、自分がそこにいる意味、すなわち自分の存在価値を感じられることなので、困難やストレスに立ち向かうエネルギーが沸き立つ。高い報酬を得ることだけを働く目的にするのではなく、自分がその仕事をやりたい、自分はその仕事をやることに価値があるというポジティブな感情が心に宿ることで、困難やストレスを脅威ではなく「自分への挑戦だ!」捉えることが可能になる』、「働きがいのある人間らしい仕事ができる環境を整えると、個人のパフォーマンスが向上する」、というのはその通りだろう。
・『働きがいの正体は何だろう  健康社会学ではこのような感覚を「有意味感」を呼ぶが、有意味感が高まることで、ストレスに対処する力、生きる力が高まっていくのである。 ただ、ここでの働きがいは「個人」の中だけで完結するのではなく、周りとの人間関係など自分を取り巻く半径3メートルとの関わり方が鍵を握る。 具体的には、「自分には信頼できる人がいる」「自分は他者の役に立っている」「自分を認めてくれる人がいる」「自分はここで能力を発揮できている」という気持ちを持てることが肝心となる。つまり、何をするか? だけではなく、誰と、何をするか?が働きがいにつながるのだ。 では、いったいどんな職場環境を作れば、働きがいは高まるのか? 世界中で働きがいに関する研究が広がっているが、まずは「実態」を知ることが不可欠なので、「「令和元年版 労働経済の分析 ─人手不足の下での『働き方』をめぐる課題について─」(労働経済白書)で取り上げている、日本で行われた大規模調査の結果を紹介する。 この調査では「働きがい」について、「ワーク・エンゲイジメント・スコア」を用いて数値化。そこで得られた数値と雇用環境との関連を分析することで、「働きがい」というポエム的な言葉の実態を明かした。) 「ワーク・エンゲイジメント」とは、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」を表す概念で、具体的には「活力=仕事から活力を得ていきいきとしている」「熱意=仕事に誇りとやりがいを感じている」「没頭=仕事に熱心に取り組んでいる」の3つが揃った状態と定義される。 平たく言うと、「働くことでエネルギーが高まります! 自分の仕事に誇りを持っています! 仕事に燃えてます!」ってこと。少々前のめり的に感じるかもしれないが、ワーク・エンゲイジメントは特定の出来事や個人に向けられたものではなく、「個人とその人の半径3メートルの環境との関わり方」を持続的に捉えている。 また、ワーク・エンゲイジメントが高い人ほど、パフォーマンスが高く、心身の健康度が高く、離職傾向が低いことが報告されている』、厚労省も時にはいい分析をすることもあるようだ。
・『「働きがい」を数値化して調べると  では、日本ではどんな結果が出たのか?(以下、ワーク・エンゲイジメント・スコア=働きがい) +正社員では29歳以下の若手ほど働きがいを感じていない +役職が上がるほど働きがいが高まる +働きがいが高い企業ほど入社3年後の定着率が高まり、企業の労働生産性も上がる また、具体的にワーク・エンゲイジメント・スコアで比較すると……、 +正社員全体が3.42だったのに対し、限定正社員は3.51と高い +60歳以上は3.70だったのに対し、29歳以下は3.29と全体平均を下回った +「部長相当職以上」が3.76だったのに対し、「役職なし」が3.33と最も低い という結果に。) さらに、職場環境との関係性では以下のことが分かった。 +職場の人間関係やコミュニケーションが円滑なほど、働きがいは高い +労働時間の短縮が進み、柔軟性の高い職場ほど、働きがいは高い +裁量権が高い職場ほど、働きがいは高い +将来のキャリア展望が明確なほど、働きがいが高い +非正規社員が差別的な扱いを受けていると感じている人ほど、働きがいが低い +「心理的距離=仕事から物理的、心理的に離れている経験」「リラックス=くつろぐ経験」「コントロール=余暇時間に何をどのように行うのかを自分で決められる経験」「熟達=余暇時間を使って自己啓発に励む経験」といった休暇時間が確保できている人ほど、働きがいが高い 上記の結果からわかるとおり、働きがいには「積極的な休息」も必要不可欠。有休消化はもちろんのこと、知的好奇心を高める「自己啓発休暇」などで、働く人たちの心に「栄養」を与える重要性も示唆されたのだ。 企業が厳しい状況で生き勝つには、社員に投資し、一人一人のパフォーマンスを向上させること。「働きがいがある企業」を作ることだ。それが「1+1=3、4、5」というチーム力を高め、生産性の高い価値ある企業となる。 働きがいを持っているシニア層をどんどん切り、いったい何が生まれるのか?生産性はあくまでも、「働きがいを社員が感じた結果」高まるものなのに、社員を単なるコストとしか考えない企業の未来に何が待ち受けているというのだろうか? AIが勢力を広げる社会で、「人の可能性」を信じないでどうする? 元日そうそう、渋い内容になってしまったけど、2020年という時代の節目が少しでもいい方向に向かうように願いつつ、発信を続けますので、本年もよろしくお願いいたします!』、「働きがいを持っているシニア層をどんどん切り、いったい何が生まれるのか?生産性はあくまでも、「働きがいを社員が感じた結果」高まるものなのに、社員を単なるコストとしか考えない企業の未来に何が待ち受けているというのだろうか?」、短期的な視野で「シニア切り」に走る企業への鋭い批判で、説得力がある。今年もこうした河合氏のコラムを読むのが楽しみだ。

次に、みずほ証券チーフMエコノミストの上野 泰也氏が1月7日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「2020年も続く「反グローバル化のうねり」 英総選挙で「赤い壁」崩壊、米大統領選はトランプ優位」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00051/?P=1
・『2019年12月12日の英国の総選挙で保守党が大勝し、半数を大きく上回る議席を得た。これにより今年1月末のEU(欧州連合)からの離脱実現に向けてジョンソン首相は「数の力」をもて、大きく前進している。 英国は離脱後にEUとの間でFTA(自由貿易協定)を締結する必要がある。だが、移行期間は20年末までであり、時間的余裕が乏しい。もっとも、選挙での大勝により政治的な求心力を高めたジョンソン首相には、今後の対応で裁量の余地がある。 一方、イングランドなどとともに連合王国を構成しているスコットランドでは、スコットランド民族党(SNP)が議席を大幅に伸ばした。EU残留派が多数であるスコットランドの連合王国からの独立論がこの先さらに強まることが避けられない情勢である』、ただ、「スコットランドの連合王国からの独立」しようとしても、EUが加盟を認める可能性は、スペインやベルギーでの地域独立の動きもあって、低いのではなかろうか。
・『連合王国解体があり得る  政治思想に詳しい専門家からは、連合王国解体があり得るという予想が出てきている。英ケンブリッジ大学のリチャード・バーク教授は今回の総選挙より前に行われたインタビューで、「大胆に予測すれば、ジョンソン氏は選挙に勝ち、離脱を手に入れ、スコットランドを失う」「ジョンソン氏は来年1月の離脱後はスコットランドの英国残留派の抱き込みに全力を注ぐはずです。ただ、彼はスコットランドでは不人気。英国、つまり連合王国の解体はあり得る」と明言。北アイルランドでは英国残留派が98年時点で52%に減り、今はもっと少ないはずで、そこにも解体の気配はあるとした(19年11月30日付読売新聞)。 歴史的に労働党(シンボルカラーは赤)の地盤であるイングランドの中・北部の議席を保守党(シンボルカラーは青)が大量に奪ったことが注目されており、英国のマスコミはこれを「赤い壁(Red Wall)の崩壊」と呼んでいる。 「炭鉱閉鎖や製造業の衰退で大きな影響を受けた地域が多く、『労働者階級の政党』である労働党が根強い支持を得てきた」が、「繁栄から取り残された形のこれらの地域では、EUのエリート主義や移民流入への反発が強く、故に離脱派の割合も高い。いつまでも離脱が実現しないことに業を煮やす人々が『(離脱か残留か)方針を決められない』(ワーキントンの男性有権者)労働党に愛想を尽かし、一斉に保守党支持へと乗り換えた」(19年12月14日付時事通信)。 今回の英総選挙における「赤い壁の崩壊」は、16年の英EU離脱国民投票や米大統領選の結果から浮き彫りになった「反グローバル化のうねり」が現在でもしっかり続いているという事実を極めて明確に示したものだと、筆者は受け止めている。 そうした「うねり」における「主演男優」とも言えるトランプ米大統領は2019年12月13日、英総選挙での保守党勝利について、「わが国で起きることの前兆かもしれない」と述べ、今年11月に行われる米大統領選での再選に自信を示した。 英国の「赤い壁」は米国の「ラストベルト」と、コンセプトが重なり合う。米国では、グローバル化の中で厳しい立場に追い込まれた多くの人々が、伝統的に支持してきた民主党から離れ、16年の選挙で共和党のトランプ氏に票を入れた。 また、完全小選挙区で行われた英総選挙における労働党の惨敗には、党の方針の明確化や選挙協力を通じてEU残留派を結集することができなかった、同党のコービン党首による戦い方の拙さが寄与した面も、少なからずある。米国でも、民主党はこれまでのところ、戦い方が上手とは言えない。大統領候補の指名争いでは候補者がいまだに乱立。下院民主党は「ウクライナ疑惑」を受けた大統領の弾劾にこだわりすぎている感がぬぐえない』、英労働党の「コービン党首」は総選挙実施の賛成しながら、大敗した責任を取って辞任するようだが、かつてのブレア元首相のようなスーパースターが登場しない限り、立て直しは困難だろう。
・『そうした中、金融市場では結論が見えているとして全く材料になっていないものの、市場の外では大いに注目されているのが、「トランプ弾劾裁判」の行方である。この弾劾裁判は、トランプ大統領の有罪・無罪よりも、米国の分断状況を一層深刻化させかねないということの方が、歴史的にはおそらく重要な意味を持つのだろう。 米下院本会議は2019年12月19日、「権力乱用」および「議会妨害」の2つの条項についてトランプ大統領を弾劾訴追する決議案を審議し、いずれも賛成多数で可決した。上院に舞台を移して史上3例目となる大統領の弾劾裁判が行われることになる。過去に弾劾訴追されたのは、第17代アンドリュー・ジョンソン(1868年)と第42代ビル・クリントン(1998年)。A(アンドリュー)、B(ビル)と続いたが、Cは飛ばして、D(ドナルド)が弾劾訴追された。 だが、上院における弾劾裁判でトランプ大統領が有罪と認定されて失職するためには、出席議員の3分の2以上の賛成票という高いハードルがある。上院共和党がすっかり「トランプ色」に染まってしまったことからも、弾劾成立の可能性は皆無に近い。このため、すでに述べた通り、金融市場はこの裁判をほとんど材料視していない。 短期的には、弾劾裁判をいつまでどのように行うのかによって、大統領選挙を含む米国の今後の政治情勢に及ぶ影響が変わってくるため、日本のマスコミもその点を取り上げている。 たとえばNHKは、「来年(2020年)2月からは大統領選挙に向けた民主党の候補者選びが本格化することから、共和党側が弾劾裁判を長引かせて有権者の関心を弾劾裁判に引き付けることを検討しているのではないかという見方も出ています」「一方で共和党の指導部からは手続きを簡略化させて一刻も早く大統領の無罪の評決を勝ち取り、弾劾の一連の動きに終止符を打つべきだという声も出ていて、弾劾裁判の進め方にも注目が集まっています」と報じた。 また、19年12月20日の東京新聞などは、民主党の大統領候補者指名争いの主要候補には上院議員が多いため、上院で行われる弾劾裁判に出席する必要からワシントンに足止めされると選挙戦を事実上中断せざるを得なくなるなど、選挙戦に影響が出かねないとした』、「共和党側」が上院での「弾劾裁判」で意見が分かれているとは、ありそうなことだ。
・『上向くトランプ支持率  民主党のペロシ下院議長は19年12月19日の記者会見で、共和党が過半数の議席を占める上院での弾劾裁判が「公正に行われそうにない」と批判し、トランプ大統領の弾劾訴追決議の上院への送付を保留する考えを示した。弾劾裁判で検察官役を務める下院議員らを任命する決議も下院は可決する必要があるが、過半数を握る民主党はこれも延期している。このままの状態では、上院は弾劾裁判を開始することができない。 この間、トランプ大統領の支持率は上向いてきている(図1)。昨年12月18日にギャラップが発表した最新の世論調査で、トランプ大統領の支持率は45%に上昇。就任直後に記録した数字と同じであり、この調査での過去最高(46%)まであと一歩である。米中貿易交渉の第1段階で一定の成果を得たことが評価されていると考えられる。 トランプ大統領の支持率は農家でも高くなっている。米国の農業情報誌ファーム・ジャーナルが19年12月17日に公表した調査結果によると、トランプ大統領の仕事ぶりを支持する農家は過去最高の82%に達した(前月比+4ポイント)。回答した1225人の農家・牧場主からの回答のより詳しい内訳は、「強く支持」(61%)、「やや支持」(21%)、「強く反対」(13%)、「やや反対」(4%)、「分からない」(1%)である。 米中貿易交渉「第1段階」の部分合意で、中国に米国の農産物をたくさん買わせることによって農家の歓心を得ようというトランプ大統領の思惑通りに、世論が動いている。 また、トランプ氏が大統領選に勝利することが確実になった16年11月8日のダウ工業株30種平均の終値は1万8332.74ドルだった。そして19年は12月20日に一時2万8600ドル台をつける場面があった。ダウの上昇幅は1万ドルを超えたわけで、これもトランプ大統領に有利な材料である。 とはいえ、株価の上昇で喜んでいる場合ではない。「真っ二つに分断された」米国社会、共和・民主両党による先鋭的な対立は、トランプ大統領弾劾裁判や大統領選挙を経て、この先も長く続いていくことになりそうである。 米国の政治専門サイトであるリアル・クリア・ポリティクスが19年12月12日に発表した世論調査の平均値によると、トランプ大統領弾劾への「支持」と「不支持」は46.5%で並んだ。 下院で行われたトランプ大統領弾劾の表決を見ると、共和党では出席者の中に離反者はおらず(欠席者は2人)、民主党でもごく少数だった。「権力乱用」条項は、賛成230・反対197・棄権1。共和党は全員が反対票を投じ、民主党で賛成に回らなかったのは3人だけ。また、「議会妨害」条項は、賛成229・反対198・棄権1。ここでも共和党は全員が反対票を投じ、民主党で賛成に回らなかったのは4人にとどまった』、「トランプ支持率」は僅かに上向いたとはいえ、総じてみれば「「支持」と「不支持」」は固定化してきているようだ。
・『バーチャルな分断が招くリアルな分断  米国政治に詳しい米ジョージ・ワシントン大学のマット・ダレク教授が発したコメントを、19年12月6日に時事通信が配信していた。米国社会の分断現象を強める方向に作用しているのが、人々の情報入手ルートの大きな変容である。マスコミやSNS(交流サイト)を通じた情報入手の現状に関して最も重要な点を指摘したものである。強い納得感がある。内容は以下のようなものだ。 「(ニクソン大統領が辞任に追い込まれた)ウォーターゲート事件の当時は(トランプ氏寄りの)FOXニュースのような強い保守系メディアもなかった。今は共和党と民主党の支持者がそれぞれ違うストーリーを現実として受け止めている」 両党の支持者の間で、手にしている情報、描いている米国の経済社会のストーリーが全く異なるとすれば、妥協の余地は生じにくく、対立はむしろ激しくなりやすい。 これは米国だけの問題というわけではけっしてないだろう。米国ほどではないにせよ、日本においてもメディアには色分けがある。さらに、伝統的なメディアの影響力は低下しつつあり、時に強いバイアスを帯びることがあるSNS経由の情報発信の影響力が着実に強まっているように思われる。 10年後や20年後の日本は、情報入手ルートの変容や世代間の価値観の違いなどを通じて、今の米国のような分断した姿に、どこまで近づいているだろうか』、安倍政権にあれだけスキャンダルが相次いでも、内閣支持率が底堅いのは、既に日本でも「分断」が起こっているのかも知れない。
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