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ゴーン逃亡問題(その1)(ゴーンに惨敗した日本 森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」、ゴーン逃亡劇の背景にある 司法と水際危機管理の「構造欠陥」、「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る、ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する) [司法]

これまでは日産ゴーン不正問題として取上げてきた。ゴーン逃亡を受けて、タイトルもゴーン逃亡問題に変更する。今日は、(その1)(ゴーンに惨敗した日本 森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」、ゴーン逃亡劇の背景にある 司法と水際危機管理の「構造欠陥」、「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る、ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する)である。特に4番目の記事は必読である。なお、このブログで日産ゴーン不正問題を最近取上げたのは、昨年6月15日である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が本年1月16日付けダイヤモンド・オンライン に掲載した「ゴーンに惨敗した日本、森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/225890
・『日本から逃亡してレバノンで記者会見を開いたゴーン氏に対して、森雅子法務大臣が放った一言が、国際社会で「日本の司法制度の欠点を表している」と物議を醸している。この一言で、日本vsゴーンの第1ラウンドは、「日本の惨敗」が決定的となった』、お粗末極まる発言だ。
・『森法相の「失言」に日本の司法の本質が出ている  世界が注目した日本vsカルロス・ゴーン。その第1ラウンドは完全にこちらの「惨敗」のようだ。 メディアの注目がマネロン疑惑へ向かわぬよう、日本の司法制度をこれでもかとディスった“ゴーン劇場”。それを受けて、珍しく迅速にカウンターを打った日本政府だったが、森雅子法務大臣がドヤ顔で「ゴーン被告は司法の場で無罪を証明すべきだ」と口走ったことが、国際社会をドン引きさせてしまったのである。 逃亡を許した途端、大慌てでキャロル夫人を国際手配したことで、全世界に「へえ、やっぱ日本の捜査機関は好きな時に好きな罪状をつくれるんだ」と印象付けたことに続いて、ゴーン氏のジャパンバッシングにも一理あると思わせてしまう「大失言」といえよう。 実際、森法相が「無罪の主張と言うところを証明と間違えた」と訂正をしたことに対して、ゴーン氏の代理人がこんな皮肉たっぷりな声明を出している。 「有罪を証明するのは検察であり、無罪を証明するのは被告ではない。ただ、あなたの国の司法制度はこうした原則を無視しているのだから、あなたが間違えたのは理解できる」(毎日新聞1月11日) つまり、ゴーン陣営が国際世論に対して仕掛けた「日本の司法制度はうさんくさい=ゴーン氏にかけられた疑いもうさんくさい」という印象操作に、まんまと日本側が放った「反論」も一役買ってしまっているのだ。 と聞くと、「ちょっとした言い間違いで日本を貶めやがって!」と怒りで我を忘れそうな方も多いかもしれないが、ゴーン氏の代理人の指摘はかなり本質をついている。 ほとんどの日本人は口に出さないが、捜査機関に逮捕された時点で「罪人」とみなす。そして、そのような人が無罪を主張しても、「だったら納得できる証拠を出してみろよ」くらい否定的に受け取る傾向があるのだ。 森法相も同様で、あの発言は言い間違えではない。もともと弁護士として立派な経歴をお持ちなので当然、「推定無罪の原則」も頭ではわかっている。しかし、世論を伺う政治家という職業を長く続けてきたせいで、大衆が抱くゴーン氏への怒りを忖度し、それをうっかり代弁してしまったのだ。 なぜそんなことが断言できるのかというと、我々が骨の髄まで「推定有罪の原則」が叩き込まれている証は、日本社会の中に山ほど転がっているからだ』、「森法相も・・・もともと弁護士として立派な経歴をお持ちなので当然、「推定無罪の原則」も頭ではわかっている。しかし、世論を伺う政治家という職業を長く続けてきたせいで、大衆が抱くゴーン氏への怒りを忖度し、それをうっかり代弁してしまったのだ」、納得できる説明だ。「ゴーン氏の代理人」の声明は、確かに最大限の皮肉だ。
・『「被疑者が無罪を証明すべき」 ズレている日本の感覚  例えば、森法相が生きる政治の世界では2010年、小沢一郎氏にゴーン氏のような「疑惑」がかけられた。マスコミは、起訴もされていない小沢氏周辺のカネの流れを取り上げ、逮捕は秒読みだとか、特捜部の本丸はなんちゃらだとお祭り騒ぎになった。いわゆる陸山会事件だ。 では当時、日本社会は「疑惑の人」となった小沢氏にどんな言葉をかけていたのか。民主党のさる県連幹事長はこう述べている。 「起訴されれば無罪を証明すべきだ」(朝日新聞2010年4月28日) ワイドショーのコメンテーターたちも、渋い顔をして似たようことを述べていた。新橋のガード下のサラリーマンも、井戸端会議の奥様たちも同様で、日本中で「小沢氏は裁判で無罪を証明すべき」のシュプレヒコールをあげていた。 日本人としては認めたくないだろうが、この件に関して国際社会の感覚からズレているのは、ゴーン氏の代理人ではなく、我々の方なのだ。 「図星」であることを指摘されてムキになって正当化することほど見苦しいものはない、というのは世界共通の感覚だ。つまり、「被告人は無罪を証明すべき」という言葉をあれやこれやと取り繕ったり、誤魔化したりすればするほど、「うわっ、必死すぎて引くわ」と国際社会に冷ややかな目で見られ、ゴーン陣営の思うツボになってしまうのである。 「テキトーなことを言うな!世界中から尊敬される日本がそんな嘲笑されるわけないだろ!」という声が聞こえてきそうだが、「愛国」のバイアスがかかった日本のマスコミがあまり報じないだけで、この分野に関してはすでに日本はかなりヤバイ国扱いされているのだ。 2013年5月、スイス・ジュネーブで、国連の拷問禁止委員会の審査会が開かれた。これは残酷で非人道的な刑罰を禁じる「拷問等禁止条約」が、きちんと守られているかどうかを調べる国際人権機関なのだが、その席上でアフリカのモーリシャスのドマー委員がこんな苦言を呈した。 「日本は自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残だ」 アフリカの人間に、日本の何がわかると不愉快になる人も多いだろうが、この指摘は非常に的を射ている。足利事件、袴田事件、布川事件などなど、ほとんどの冤罪は、捜査機関の自白強要によって引き起こされている』、「アフリカのモーリシャスのドマー委員」の「苦言」はその通りで、日本の司法関係者は深く反省し、考え直すべきだった。日本のマスコミもこれを余り取上げなかったのは問題だ。
・『痛いところを突かれて逆ギレする  それは遠い昔のことで今はそんな酷いことはない、とか言い訳をする人もいるが、2012年のPC遠隔操作事件で、無実の罪で逮捕され、後に警察から謝罪された19歳の大学生も、取調室で捜査官から「無罪を証明してみろ」(朝日新聞2012年12月15日)と迫られたと証言している。 この自白偏重文化が中世の名残であるということは、そこからやや進んだ江戸時代の司法を見れば明らかだ。死罪に値するような重罪の場合、証拠がいかに明白だろうと自白を必要とした、と記録にある。さらに、自白をしない被疑者に対しては「申しあげろ。申しあげろ」とむち打ち、えび責めなどの拷問で強要した、という感じで、罪を告白するまで100日でも自由を奪う「人質司法」のルーツを見ることもできる。 罪を吐くまで追い込むので当然、現代日本のような冤罪も量産される。名奉行で知られる大岡越前は、徳川吉宗にこれまで何人殺したかと聞かれ、冤罪で2人を死刑にしたと告白している。 話を戻そう。ゴーン氏の代理人同様に、鋭い指摘をするドマー委員に対して、日本の代表として参加した外務省の上田秀明・人権人道大使は「この分野では、最も先進的な国のひとつだ」と返したが、日本の悪名高い人質司法などは、参加者たちの間では常識となっているので、思わず失笑が漏れた。すると、上田大使はこのようにキレたという。 「Don't Laugh! Why you are laughing? Shut up! Shut up!」(笑うな。なぜ笑っているんだ。黙れ!黙れ!) 昔から日本は、海外から痛いところを突かれると逆ギレして、とにかく日本は海外とは事情は違うという結論に持っていって、変わることを頑なに拒んできた。 このままやったら戦争に負けて多くの国民が死にますよ、という指摘があっても、この国は世界の中でも特別な「神の国」だと、頑なに耳を塞いだ結果、凄まじい悲劇を招いた。 先進国で唯一、20年間も経済成長をしていないのは日本だけなので、異様に低い賃金を引き上げて生産性を向上させていくしかない、と指摘をされても、日本の生産性が低いのは、日本人がよその国よりもサービスや品質にこだわるからだ、ちっとも悪いことではない、などというウルトラC的な自己正当化をしている。 筆者が生業とするリスクコミュニケーションの世界では、「図星」の指摘に対して、逆ギレ気味に自己正当化に走るというのは、事態を悪化させて新たな「敵」をつくるだけなので、絶対にやってはいけない「悪手」とされる』、「自白偏重文化」、「「人質司法」のルーツ」、が江戸時代にもあるとの指摘はさすがだ。「リスクコミュニケーションの世界では、「図星」の指摘に対して、逆ギレ気味に自己正当化に走るというのは、事態を悪化させて新たな「敵」をつくるだけなので、絶対にやってはいけない「悪手」とされる」、その通りなのだろう。
・『国際人権団体も日本の司法を批判  しかし、今回も日本はやってしまった。国内的には、森法相や東京地検の反論で溜飲の下がった日本人も少なくないかもしれないが、国際社会ではかなりヘタを打ってしまったと言わざるを得ない。 それを如実に示すのが、ニューヨークの国連本部で14日に催された、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの記者会見だ。ケネス・ロス代表はゴーン氏が「取り調べに弁護士が立ち会えなかった」と批判していることに対して、以下のように述べた。 「日本の刑事司法制度が容疑者から自白を得るために課した巨大な圧力を物語っている」「司法制度ではなく、自白(強要)制度だ」(時事通信1月15日) 慰安婦問題や徴用工問題なども然りだが、日本政府は「人権問題」の対応がうまくない。人権という多様な価値観が衝突するテーマであるにも関わらず、「日本は正しい」というところからしか物事を考えることができないので、傲慢かつ独善的な主張や対応になることが多い。そのゴリ押しが裏目に出て、揚げ足を取られ、オウンゴールになってしまっているのだ。 これは一般社会などでもそうだが、「オレ様は絶対に間違っていない」と自己主張するだけの者は、次第に誰からも相手にされなくなる。その逆に、厳しい指摘や批判にもしっかりと耳を傾けるような真摯な姿勢の人は、周囲から信頼される。 日本の司法制度や懲罰主義は、国際社会から見るとかなりヤバい。――。ゴーン氏側のジャパンバッシングを迎え撃つためにも、まずはこの厳しい現実を受け入れることから始めるべきではないか』、非常に説得力溢れる指摘で、全面的に同意する。

次に、司法ジャーナリストの村山 治氏が1月21日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ゴーン逃亡劇の背景にある、司法と水際危機管理の「構造欠陥」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/226345
・『世界中を驚かせた日産前会長、カルロス・ゴーン被告=会社法違反(特別背任)などの罪で起訴=のレバノン逃亡には、米軍特殊部隊の元隊員やプロの「運び屋」らが関わったとされる。 検察は、ゴーン氏の身柄確保にやっきだが、国家主権などの壁があり、すぐ連れ戻すのは難しそうだ。 一方、逃亡劇は、日本の刑事司法と水際危機管理の構造的な欠陥を露呈した』、興味深そうだ。
・『空疎な内容の会見だったが  「世論という法廷では無罪」?「非人道的な扱いを受け、私自身と家族を守るためには、(逃亡する以外の)選択肢がなかった」 1月8日午後10時(日本時間)に始まったレバノン・ベイルートでの記者会見。黒っぽいスーツに赤いネクタイのゴーン氏は、身ぶり手ぶりを交え、雄弁に語った。しかし、1時間余りの独演会の中身は拍子抜けするほど、空疎だった。 メディアが注目した逃亡方法などは語らず、「日本の政府高官と日産の国ぐるみの陰謀」と主張しておきながら、「レバノン政府に迷惑がかかる」として高官の名も挙げなかった。 無罪主張の根拠や日本の刑事司法批判も、これまで弁護人が発表した範囲を出なかった。 会見をテレビで見た検察幹部は、「中身がなくてがっかり。裁判で白黒つける法の支配の基本から逃げた男に正義を語る資格なし」と皮肉まじりに切り捨てた。 ゴーン氏の主張を額面通りに受け取る日本メディアの報道は皆無だったが、海外メディアの中には、「日産や検察から説得力のある新しい証拠がなければ、ゴーンは世論という法廷で無罪になるはずだ」(2020年1月9日付ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)などゴーン氏の「潔白」主張に理解を示す報道もあった。 これには森雅子法相が「制度を正確に踏まえていない」と反論を同紙に寄稿する一幕もあった』、森法相のお粗末な発言に触れなかったのは、忖度著しい「司法ジャーナリスト」らしい。
・『逃亡にはプロの「運び屋」と「サポート組織」を利用した可能性  内外メディアが伝えるゴーン氏の逃亡劇はアクション映画のようだ。 帽子とマスクで顔を隠したゴーン氏が、保釈中の住居と定められた東京都港区の住宅を1人で出たのは昨年12月29日午後2時半ごろ。六本木のホテルで米国籍の男2人と合流し、その後、新幹線で大阪に移動。関西空港近くのホテルに入った。 ゴーン氏は男たちが用意した楽器の収納箱の中に隠れて空港まで移動した可能性がある。同空港第2ターミナルのプライベートジェット専用ゲートの出国検査をかいくぐり、用意したプライベートジェット機(PJ)で午後11時すぎ、同空港を飛び立った。 トルコ・イスタンブールで男たちと別れ、別の小型のビジネスジェット機に乗り換え翌30日にレバノンに到着した、とされている。 その直後に「キャロル夫人から、夫との再会は『私の人生にとって最高の贈り物』とのテキストメッセージを受け取った」というウォール・ストリート・ジャーナルによると、戦闘地域で拘束された人質の救出経験を持つ元米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の隊員を含む十数人のチームがゴーン氏逃亡に関わったという。 チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見。関空のプライベートジェット専用ゲートのX線検査機械が大きな荷物には対応していないことから、関空を脱出ルートに選んだという。逃亡計画には数百万ドルがかけられたとしている。 検察関係者は「脱出支援チームのほか、中東などのサポートする組織も介在したとみられる国際的組織犯罪だった」という。 ゴーン氏が、逃亡の詳細を語るのを避けたのは、チームやサポート組織から口止めされている可能性もある』、「チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見」、これでは抜け穴は容易に把握できたのだろう。
・『裁判の開始は当面無理 最悪の場合は「棚ざらし」に  ゴーン氏が金商法違反(有価証券報告書虚偽記載)、会社法違反(特別背任)の4事件で起訴され、4月下旬に東京地裁で金商法違反事件から公判が始まる予定だった。 「(最高裁で決着するまで)10年ほども耐えろというのか」(朝日新聞1月12日付朝刊)と、違法承知で逃亡したゴーン氏が自らの意思で日本の裁判所に出頭する可能性はまずない。 金商法違反などは被告人不在では裁判は開けない。最悪の場合、起訴した事件は棚ざらしになり、真相はうやむやになる恐れがある。 菅義偉官房長官は1月6日、テレビ番組に出演。ゴーン氏の身柄の引き渡しについて「さまざまな外交的手段を行使しながら、総力を挙げる」と宣言。国際刑事警察機構(ICPO)にゴーン前会長を起訴済みの罪について国際手配する手続きを取り、駐レバノン日本大使がアウン大統領に面会し、身柄の引き渡しを求めた。 しかし、日本はレバノンとは容疑者の身柄の引き渡しに関する条約を結んでおらず、さらに、レバノン国内法が自国民を他国に引き渡さないと規定していることから、引き渡しが実現する可能性は高くない。 それでも政府は経済支援などをてこにして粘り強く交渉する方針だ。 ゴーン氏は、「公正な裁きが受けられるなら、どこの国でも裁判を受ける用意がある」と会見で述べた。 刑事裁判を他国に依頼する「代理処罰」という国際ルールがあり、日本政府が、レバノン政府に要請すれば、それは可能だ。しかし、刑事裁判の規定は国ごとに異なり、証拠の翻訳も必要で、専門家は技術的に難しく、実現の可能性は小さいとみている。 何よりメンツを失う日本の検察が認めるはずがない』、「代理処罰」は、「刑事裁判の規定」だけでなく、法体系そのものが大きく異なっている以上、「メンツ」を抜きに考えても無理だろう。
・『検察の追っ手 米当局が摘発する可能性も  検察は、「国家の威信」をかけて逃亡の事実解明に乗り出している。 レバノンでゴーン氏と合流したキャロル夫人が昨年4月の東京地裁での証人尋問で偽証した疑いがあるとして、逮捕状を取り、警察庁を通じて国際刑事警察機構(ICPO)に国際手配を要請した。 キャロル夫人がゴーン氏の不正の証拠隠滅を主導し、逃亡にも関与したとみているためだ。夫婦ともにレバノン国外への移動を制限する狙いもあるとみられる。 検察は昨年12月、ゴーン氏側に還流したとされる日産資金の一部が米国在住の息子が経営に関わっていた米国の投資会社に流れた疑いがあるとして米司法当局に要請してゴーン氏の息子や娘から事情を聴いた。 息子は、投資会社の資産には前会長からの送金も含まれていたことを認めたとされる。 これは、不正資金の洗浄(マネー・ロンダリング)に当たる可能性がある。米国では、不正資金洗浄を厳しく取り締まり、資金の移動や保管の形態に「出所」を隠す意図がうかがわれるだけで処罰されることもある。 今後、米国がゴーン氏の摘発に乗り出す可能性もあり、そうなれば、事態は一変するだろう』、確かに米国の出方は1つの鍵だろう。
・『保釈認めた裁判所はひたすら沈黙 弁護団も裏切られた形に  ゴーン氏逃亡で、ゴーン氏の保釈を認めた裁判所の責任を問う声も噴出した。 刑事訴訟法では、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合を除き、保釈を許さなければならないと定め、裁判官の裁量による保釈も認めている。 「無罪請負人」の異名をとる弘中惇一郎氏や米国流の刑事手続きに詳しい高野隆氏ら著名刑事弁護士らで構成するゴーン弁護団は、制限住居への監視カメラの設置など15項目にわたる保釈条件を提示。裁判官は弁護団を信用し、逃亡や証拠隠滅の恐れはないと判断し、15億円の保釈保証金を納付させてゴーン氏を保釈した。 弘中弁護士は当時、「知恵を絞って逃亡や証拠隠滅がありえないシステムを考えて裁判所に評価された」と語った。弁護団もゴーン氏に裏切られた形だ。 弘中、高野氏らは16日に弁護人を辞任、ゴーン氏の公判手続きは止まった。 共犯に問われた日産元代表取締役のグレッグ・ケリー被告と法人としての日産の裁判は、分離して行われる見通しだ。 2000年代初めの司法制度改革以来、保釈のハードルを低くする流れがあり、また、海外メディアなどからの「長期勾留」「人質司法」批判も考慮したとみられるが、いずれにしろ「被告は逃げるはずがない」という性善説の上に立った判断だった。 検察幹部は「ゴーン氏ほどの金と人脈があれば逃げる、と我々は主張した。裁判所は本来なら、保釈できない事件と認識しながら、実効性のない条件をつけて出した。結果的に間違った判断で、膨大な血税を無駄にし、国の威信を失墜させた」と批判し、これには一部のマスコミも同調した。 東京の司法記者クラブは裁判所に説明を求めたが、黙殺し、コメントを拒否している』、保釈を認めた裁判所を批判するのは筋違いだろう。問題は保釈後のフォロー体制にある。
・『保釈中の逃亡に「逃走罪」にならず 「逃げるはずはない」の“共同幻想”  一方、ゴーン氏の逃亡は、日本の刑事司法の制度的欠陥を露呈した。 保釈された被告人に対する管理の「空白」である。 裁判所も、検察も、弁護人も、誰にも管理責任がなかったのだ。 拘置所や刑務所などで身体を拘束されている容疑者や被告、受刑者らが逃走した場合、刑法の逃走罪が適用されるが、保釈中の逃走については同罪の対象になっていなかった。 被告人が逃亡や証拠隠滅をしないよう責任を持って監視する存在がない。逃亡を実質的に担保するのは保釈保証金だけだった。 「15億円もの大金を捨てるはずがない」という共同幻想があった。ゴーン氏にとってはその程度は、はした金だった。 実は、国内でも逃亡事件は後を絶たない。ゴーン氏のような大金持ちは別にして、現在は、保証金も立て替える業者もいて、保釈保証金の重みは減った。 古来の日本人の「お上に対する畏敬」「公序を尊重するマインド」に期待するしかなかったのが実態だ。 お上意識も日本の公序良俗にも関心がなく、逃げる意思と能力(脱出のプロを雇えるカネ)があるゴーン氏が、逃げないと損という気になってもおかしくない。 今回の逃亡劇を受け、森雅子法相は1月7日の閣議後会見で「できる限り速やかに法制審に諮問できるよう検討を進めたい」と述べた。 ようやく、保釈被告人に逃走罪を適用する法改正や、衛星利用測位システム(GPS)装着による常時行動監視の議論が始まるとみられる』、「保釈中の逃走については同罪(逃走罪)の対象になっていなかった」、とは驚きだ。「法制審」でしっかり議論してほしいものだ。
・『プライベートジェットは盲点に 保安検査は機長の判断次第  ゴーン氏が脱出に使った関空のPJ専用ゲートには、あってはならない「穴」があった。 乗客が「身内」に限られるPJでは一般の民間航空会社が行うX線を使った手荷物や身体の保安検査を乗客が受ける必要はなく、検査するかどうかは機長の判断に任される。 保安検査の後にはPJの乗客もCIQ(税関・出入国管理・検疫)の検査を受ける必要があるが、税関のチェックは甘く、大きな荷物の中身を透視するX線装置も設置されていなかった。 検察幹部は「ゴーン氏の逃亡を支援した組織は、中東などのテロ組織ともつながり、テロリストの密入出国をサポートしているとの情報もある」という。 ゴーン氏の脱出を支援したチームは日本への出入りにPJを使っていたとされる。その全てがゴーン氏の案件だったとは限らない。テロリストや武器、禁止薬物などを運んでいた可能性はないのか。 赤羽一嘉国土交通相は7日の閣議後記者会見で、羽田、成田、中部、関西の4空港にあるPJ専用ゲートで全ての大型荷物の保安検査をするよう6日から義務付けた。 こちらも泥縄の対応だ。数カ月後には東京五輪が始まる。大会の安全管理は大丈夫なのか』、PJで「武器、禁止薬物などを運んでいた可能性は」、大いにあり得ると考えるべきだろう。こんな「あってはならない「穴」」があったというのは、国際的にも恥ずかしいことだ。
・『ゴーン氏の復権はあるのか 大金使ったがレバノン出国は困難  ブルームバーグ通信によると、ゴーン氏の資産は、この1年間で約1億2000万ドル(約131億8000万円)から約7000万ドル(約76億9000万円)に減ったという。 逃亡で保釈保証金15億円を裁判所に没取され、さらに逃亡費用として1500万ドル(約16億円)以上かかったためだ。 それでも、ゴーン氏が億万長者であることに変わりはない。レバノンでは「ビジネスの成功者」として遇されるだろう。 しかし、国際的な経済シーンで「名経営者」として復権できるかは疑問だ。 逃げたこと自体を疑問視する見方が広がっている中で復権を果たすには、裁判で無罪を証明する必要がある。だが、日本以外で裁判を受けるのは困難だ。 検察が開示した捜査記録を自分で雇った法律家に分析させ「無実だ」と主張したところで、PRと受け取られるだけだ。 行動の自由も制約される。ゴーン夫妻は、不正出国や証拠隠滅容疑で国際手配され、お尋ね者状態にある。 米国など日本の友好国に行けば、身柄を引き渡される恐れがある。国籍のあるフランスでは、捜査当局が2016年にベルサイユ宮殿でゴーン氏が結婚披露宴を開いた際にルノーの会社資金を不正使用した疑惑や、中東オマーンの販売代理店への不審な支出についてルノー本社を捜索した。 渡仏すれば身柄拘束され、訴追される恐れがあり、もうひとつ国籍のあるブラジルは、レバノンからの直行の航空便がなく、中継地で身柄拘束され日本に引き渡される恐れがある。 ゴーン氏はレバノンでじっとしているしかない。 しかし、レバノンは経済が疲弊し、昨年秋から反腐敗を訴える大規模な反政府デモが頻発し、首相が辞意を表明した。 ゴーン氏はその政府に近い「特権階級」とみられている。政権が転覆するようなことになれば、「腐敗」の象徴としてやり玉に挙げられかねない。 「そうなると生きた心地はしないだろう」と検察関係者は指摘する』、政情不安な「レバノンでじっとしているしかない」、これも覚悟の上での逃亡だったのだろう。

第三に、1月22日付けNewsweek日本版がロイター記事を転載した「「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/01/post-92202.php
・『日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の事件で検察側に批判的な元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は22日、ゴーン被告と側近だった日産前代表取締役グレッグ・ケリー被告の金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)について、両被告とも「無罪の可能性が高い」と述べ、ゴーン被告の会社法違反(特別背任)に関しては「絶望的に長期間の刑事裁判になっていただろう」との見方を示した』、郷原氏はかねてから「無罪の可能性が高い」と主張していた(このブログの昨年6月15日)。
・『金商法違反、刑事事件としての立件は「異常」  郷原氏は同日、日本外国特派員協会で会見。金商法違反が無罪になる可能性が高いとみる理由について、刑事処罰の対象は「重要な事項についての虚偽記載」であり、まだ受け取っていない役員報酬の記載の有無は「重要事項に該当しない」と指摘。逮捕が必要なほど「明白で重大な犯罪ではないことは明らか」で、刑事事件として立件されたのは「異常だ」と批判した。その上で「ケリー氏の無罪判決が出れば、ゴーン氏も無罪であっただろうという結論になる」と語った。 金商法違反と会社法違反の罪で逮捕・起訴され、保釈中だったゴーン被告は昨年12月29日夜に保釈条件に違反して日本を不法出国したとみられ、国籍を持つレバノンに逃亡。日本はレバノンと容疑者の身柄引き渡しに関する条約を結んでおらず、レバノンも国内法で自国民を他国に引き渡さないことを定めている。このため、身柄引き渡しが実現する見通しはなく、ゴーン被告の裁判は開かれない可能性が極めて高い。 一方、ゴーン被告のみ起訴されている会社法違反については「証拠が十分にないまま検察が逮捕・起訴したことに問題がある」と指摘。「証拠がないので有罪か無罪かはっきりしないまま、公判が長期化する可能性が高い」と述べた。 ゴーン被告は8日にレバノンで開いた会見で「2つの罪状の公判が同時に進行できない」ことや、当初は今年9月に特別背任の公判開始と聞いていたのに検察の意向で「2021年以降と言われた」こと、妻や子供に会えないことが出国を決意した理由と説明していた』、「金商法違反」については、確かに「ケリー氏の無罪判決が出れば、ゴーン氏も無罪であっただろうという結論になる」ので、今後も注目したい。
・『問題の背景に前近代的な日本の刑事司法制度  郷原氏は、ゴーン被告の不法出国は「犯罪行為」だが、今回の事件は検察が加担・日本政府も関与したクーデターの可能性が高いこと、ゴーン氏の犯罪事実の根拠が薄弱なこと、関与者への措置・処罰の不公平感があること、無実を訴える被告人は身柄拘束が続くという「人質司法」など日本の刑事司法制度の前近代性が問題の背景にある、との認識を示した。 郷原氏はゴーン事件に関する書籍を今年4月に出版する予定で、昨年11月から12月27日までに計10時間以上、ゴーン氏のインタビューを実施。しかしその後、ゴーン氏は不正出国し、レバノンへ逃亡したことから、出版計画は白紙となった』、「出版計画は白紙となった」のは残念だ。

第四に、1月26日付け現代ビジネスが掲載した作家の佐藤 優氏と野村邦丸氏の対談「ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する」を紹介しよう。
※本記事は『佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」』に収録している文化放送「くにまるジャパン極」の放送内容(2020年1月17日)の一部抜粋です。野村邦丸氏は番組パーソナリティです。
・『「獄中死」を避けるための逃亡  佐藤:私は去年から「ゴーンさんは逃亡する」と指摘していたんです。理由は簡単です。逮捕されていた時、ゴーンさんには次のような可能性がありました。最初の罪状は金融商品取引法違反。これは罰金か、あるいは2件あっても確実に執行猶予がつくんです。ところがゴーンさんが頑なに罪を認めないから、たぶん検察はカッとなったんですね。それで会社法を使って特別背任にした。これは最高刑が10年なんです。 そうなると、2つの罪状が複合するので、最高刑がいちばん長い刑の5割増しまでいけるんです。だから最高で懲役15年になる。 さらに、ゴーンさんの保釈が検察の意思に反して認められちゃったので、検察はまたカッとなって、もう一本の背任で再逮捕した。これは「絶対に実刑にしてくれ、できるだけ長く刑務所に入れてやる」という検察の強い意思表示なんですね。この場合、求刑の相場感は懲役12年だと思います。 検察官が求刑した7割以下の量刑になると、検察が控訴する可能性がある。そうすると、ゴーンさんの刑はだいたい相場感として8年なんです。それで、裁判自体に10年はかかります。そうしたら、10年裁判やって、それから刑務所に8年行く。 今、ゴーンさんは65歳なので、出てくるときは83歳です。刑務所の中の医療はベストとはいえないですから、たぶん獄中死するでしょう。つまり、ゴーンさんにとって最もありそうなシナリオは「獄中死」だったんです。 密出国の場合の刑期は1年。ということは、もし国外脱出しようとして、バレて捕まっても1年刑期が増えるだけで、成功すれば自由の身になれる可能性がある。どっちを取るかって話ですよ。 邦丸:獄中死は嫌ですよね。 佐藤:だから賭けたということで、脱出はごく合理的な判断なんです』、「金融商品取引法違反」だけでなく、「会社法を使って特別背任」を付け加えた理由が理解できた。「10年裁判やって、それから刑務所に8年行く。 今、ゴーンさんは65歳なので、出てくるときは83歳です。刑務所の中の医療はベストとはいえないですから、たぶん獄中死するでしょう・・・脱出はごく合理的な判断なんです」、説得力ある説明だ。
・『「IR汚職」との関連性  佐藤:それと、なんで12月末のあのタイミングでやったか。これは、私はIRの汚職で逮捕された秋元司議員の件と関係していると思う。 邦丸:一見、関係ないように見えますけど。 佐藤:実は深い関係があるんです。 警察というのは、人がたくさんいます。警察官は全国に30万人いる。しかし、検察には特捜部の事務官しかいないんです、尾行とかする人材は。報道によると、検察は12月29日にゴーンさんの尾行を外した。 邦丸:これは日産側が依頼した警備会社とは違うんですか。 佐藤:違います。検察本体です。日産とは別に、検察も事務官がゴーンさんの行動をウォッチしているわけです。これを業界用語で「行確」といいます。行動確認。これがどうして12月に外れたのか。クリスマスに秋元司議員を捕まえたでしょ。それで人手が足りなくなったからなんです。 邦丸:え、物理的にですか? 佐藤:そう。東京地検はこういうとき、警察に応援をお願いしないんです。 邦丸:はあ~。 佐藤:警察も「お手並み拝見」で、協力しない。その辺のことを、ちゃんとゴーンさんの背後にある組織は見ているんですよね。 さらに、ゴーンさんには日産も尾行をつけていたでしょ、これ、尾行のプロなんです。だいたい警察の公安部とかを中途退職している人たちで、こういうプロが10人ぐらいチームを組んで尾行すると、まずわからないです。 じゃあ、なぜゴーンさんは気づいたのか。彼らを上回る能力を持つ尾行の専門家が、ゴーンさんのチームにいたからです』、「検察は12月29日にゴーンさんの尾行を外した」のは、「IR汚職」で「人手が足りなくなった」、「東京地検はこういうとき、警察に応援をお願いしないんです」、とは検察のメンツが招いたオウンゴールのようなものだ。
・『元グリーンベレーは「見せ玉」  邦丸:これは報道されているように、アメリカ陸軍の特殊部隊にいた、元グリーンベレーのマイケル・テイラーさんという人が首謀したんじゃないかと言われていますけど……。 佐藤:違うでしょうね。テイラーさんは前科がありますから。前科がある人は顔も名前も知られてしまっているわけです。 邦丸:アメリカで禁固刑を受けている。 佐藤:だから、前科のある人はこういうオペレーションの中心には入りません。 私も以前、そういった国際的な警備保障会社から「就職しないか」と誘われることがあったんですよ。 邦丸:へえ~。 佐藤:でも、それは使い捨てにされちゃうの。どうしてかというと、いったん捕まって表に出た人は、裏の世界で動けなくなるから。このテイラーさんも同じで、陽動作戦、すなわち見せるために使われている人です。計画の全体像は知らされていない。 邦丸:じゃ、誰なんですか? 佐藤:誰がゴーンさんを連れて行ったか。それは、地面師みたいなネットワークなんですよ。 邦丸:というと。 佐藤:何かあるとその都度、ガーッと湧いてくる人たちです。ゴーンさん救出プロジェクトがある、じゃあやろうか、と何人か集まってくる、お互いに横の連絡はない。ですから、トルコの航空会社で捕まった人たちは、何も知らない。 邦丸:パイロットの人たちですね。 佐藤:オレオレ詐欺の入れ子や出し子と一緒ですから。 邦丸:要するに、パーツでしかない』、「元グリーンベレーは「見せ玉」」、この世界の闇の深さを改めて知らされた。
・『弘中弁護士も「パーツ」  佐藤:そうです。これを「クオーター化」というんです、業界用語で。区分に分けるという意味です。 そういう組み立てだから、「おい、ブツの運びがある。いい金になるぞ」「ヤバいものじゃないですよね?」「麻薬や兵器ではない。中身は知らなくていい」「わかりました」──こういう世界ですよ。 邦丸:なるほど。 佐藤:それで、尾行されていることを知っていて、「こんな尾行は人権侵害だから解除してくれ」とゴーンさんが弘中弁護士たちに頼むわけでしょ。そういう意味では、弘中さんたちも知らず知らず、パーツとして利用されているわけですよ。 それで解除を要求したら、その日に脱出した。すでに救出のネットワークはでき上がっていて、関空に穴が開いているといったことも調べあげて、車も飛行機も全部手配してと、こういうやり方ですよ。 しかもゴーンさんは、逃亡時の経緯については、ウォール・ストリート・ジャーナルに独占的に流すということに決めていますね。今回、報道ではここが全部早いですから。 邦丸:早かったですよね。 佐藤:なんでだと思います? 私は、ゴーンさんはウォール・ストリート・ジャーナルをあえて選んでいるんだと思う。なぜかというと、日本語版があるから。 ちなみに、毎日新聞の電子版とか琉球新報などの毎日系の新聞をとっていると、ウォール・ストリート・ジャーナルが無料で読めるんですけど、日本語版があるから、日本の検察とかマスメディアにメッセージをすぐに出せるでしょ。実際、ゴーンさん関連の日本の報道は、よく見るとすべてウォール・ストリート・ジャーナルの後追いになっているんですよ。 邦丸:そうですね。 佐藤:こういうつくりにすることも全部、このチームは計算していますね』、どこまで真実かはともかく、なかなかよく練られた救出劇だったようだ。
・『日本政府も「深入りしたくない」  邦丸:そのゴーンさんのチームですが、ゴーンさんはインタビューで「日本人が今回の逃亡にかかわっているという話があるけど、どうなんだ?」と聞かれて、「日本人がかかわっていないなんて考えること自体が幻想だ」と言っているわけですね。 佐藤:もちろん、かかわっていますよ。しかし、それが誰なのか、どういうネットワークかというのは、ゴーンさんも知らないと思う。 邦丸:え、それじゃあどんな窓口に助けを求めたんですか。 佐藤:これはあくまで私の推定ですが、こうした種類のことになると、彼がいつも頼む「仕事師」がいるんでしょう。イメージでいうと、ゴルゴ13みたいな感じ。殺しは今回はやらないですけどね。 邦丸:グレート東郷ですか……グレートじゃないか。 佐藤:デューク東郷。彼に頼んで、あとは何も知らなくていい。こういう世界ですよ。 それで、今回の最大の争点は、レバノン政府が噛んでいるかどうか。 邦丸:はい。 佐藤:レバノン政府が噛んでいなければ、1人の容疑者とそれをサポートしている犯罪組織の話で、単なる刑事事件なんです。しかし、もしレバノン政府が噛んでいると日本国家の主権侵害になって、北朝鮮の拉致問題とか金大中事件とかと同じ話になっちゃいます。 そうすると日本政府として、レバノン政府と全面的に構えないといけないんです。ただし、今は中東情勢のなかでレバノンはカギを握る国なので、ケンカしたくない。だから、本来ならレバノン政府に引き渡しを強く要求するとか、レバノンにいる日本の大使を一時日本に戻すとかするんですけど、しないでしょ。 邦丸:しないですね) 佐藤:これは、真相が明らかにならないほうが日本政府も都合がいい。レバノン政府も都合がいい。ゴーンさんも都合がいい。みんな都合がいいので、迷宮入りになろうとしていますね。 ですから、すごく変な感じの事件になっている。国家を超えるようなネットワークがあって、機能しているということですね』、「真相が明らかにならないほうが日本政府も都合がいい。レバノン政府も都合がいい。ゴーンさんも都合がいい。みんな都合がいいので、迷宮入りになろうとしていますね」、なるほど、さすが深い読みだ。
・『宗教という重要ファクター  佐藤:ゴーンさんは15億円の保釈金が没収されたでしょ。新聞報道だと、脱出計画に22億円かかった──私はそれだとちょっと安いという気がしますが──けれど、でも十分取り返せる。 まず、手記を書くでしょ。その後、ハリウッド映画にする。そうすると数百億儲かりますから、逃亡劇までちゃんとマネーになる。映画ができたら、検察官役とか、とんでもない大物役者をつけてくると思いますよ。 邦丸:えーと、ちょっと戻っていいですか。ゴルゴ13のような人が日本にいるんですか。それともアメリカですか。 佐藤:中東だと思う。 邦丸:中東! 佐藤:中東で、今までいろんなヤバい仕事をするときの相棒がいたんだと思う。その人に「助けてくれ、ここから出たい」とひと言だけメッセージを送ると、あとは組み立ててくれる。今までもいろんな仕事をしているんだと思う。 邦丸:へえ~~。 佐藤:そういうふうに私は見ています。それからもうひとつ、これはぜんぜん報道に出てこないけれど、重要なのはゴーンさんの宗教なんですよ。彼はキリスト教徒です。キリスト教のマロン派、これはカトリック教会に属しているんです。 もし、ゴーンさんがレバノンのイスラム教徒だったら、国際的にこれだけの支援は受けられなかったと思う。要するに「東洋のなんかおっかない国で、キリスト教徒が弾圧されている」と、こういうイメージですよね。このイメージをつくることに成功している。 レバノンのキリスト教徒というのは、ヨーロッパのいわば利益代表みたいな意味があるんですね。それだから、レバノンはヨーロッパ諸国と非常に関係がいいんですよ。実は、宗教の要素が今回は非常に大きいんです。そういうところは、日本の報道ではぜんぜんわからない』、「宗教という重要ファクター」、読み過ぎの気もしないではないが、ありそうな面白い見方だ。
・『日本がいくら正当性を主張しても…  佐藤:日本の報道では、「ゴーンの会見は見苦しい言い訳だ」「世界でも非難囂々だ」というトーンでしょ。ところが、ちょっとウォール・ストリート・ジャーナル日本語版を見てみると、社説を立てて、「ゴーンの説明には説得力がある」とか「マクロン大統領は、安倍総理に何度も処遇を改善してくれと話をしている」とか出てきているでしょ。 日本だけ情報空間がズレている。実際は、ゴーンさんはかなり有利です。 邦丸:はあ~~。 佐藤:でも、今回は分けて考えなければいけない。私は、この件のあと国内外のメディアから「日本の刑事司法手続きをどう思いますか?」とか「拘置所の処遇をどう思いますか?」と聞かれて、言いたいことはたくさんあるんだけれど、ほとんど言っていないんです。 どうしてかというと、私はやはり元外交官、つまり日本の公務員だったわけで、この事件は日本国家の主権が侵されていると私は思っている。国際的なネットワークとレバノン政府に。 そのときに、私が「検察の対応に問題がある」とか「日本の拘置所はおかしい」と言ったら、それはゲームのなかで利用されてしまうわけです。深刻なのは、日本の法手続きが無視されて、国家主権が無視されて、コケにされているんだから、それを助長する方向には加わりたくないんです。 ただ、日本はメディアにしても、法務省にしても、事態が見えていない。森法務大臣が一生懸命、日本の手続きには問題ありません、人権を尊重していますと言ったって、拘置所へ入所するときの検査では、「お前、指詰め、入れ墨、玉入れ(性器にシリコンの玉を入れること)はあるか」というような質問をしている。 邦丸:それはそういうスジの人ではなくてもやるんですか。 佐藤:全員です。私もやらされましたから。 拘置所の中では小さな机の前で、畳のところで一日じゅう座っている。お風呂は週に2回で、お風呂に行くときはパンツ1枚、希望すればシャツを着ることができる。支給されるサンダルには水虫菌がたっぷり付いていて、水虫に苦しめられる。こういうことは事実です。ですから、日本がいくら「手続きに則しています」と言っても、国際的には「やっぱりひどい」という感じになるじゃないですか』、日本の「拘置所」の人権無視の扱いなどについては、これを熟知している「佐藤」氏が、「ゲームのなかで利用されてしまう」ので、こに点には敢えて触れないというのはさすが大人の対応だ。
・『『大岡越前』は国際的には「気持ち悪い」  邦丸:逆に諸外国、欧米各国っていうのは、拘置所に入所した、要するに罪になるかどうか決まっていない人たちに対する接し方は、日本とは違うんですか。 佐藤:違いますね。電話もできるし、家族とも会えるし、ましてや裸にするなんて最低限しかしない。ぜんぜん違うんですよね。 しかも、日本の場合は懲役刑があるでしょ。囚人労働というのは今、欧米ではないですから。 邦丸:欧米は懲役刑がないんですか。 佐藤:禁固です、みんな。ですから、確かに日本には日本の手続き、制度の伝統があるんだけれど、その話をすればするほど、国際的には調子が悪くなるわけ。 邦丸:墓穴を掘ってしまう。 佐藤:そう。日本人は今でも『忠臣蔵』が好きでしょ。浅野内匠頭の家臣たちは解散が決まったのに、何十人がかりで1年も待って、七十いくつのおじいさんを襲ってなぶり殺しにして、首を槍の先に付けて凱旋して、最後に腹を切る。これを感動のドラマだといって観ているのが日本人だ、という話になったら、やっぱり普通のヨーロッパ人とかアメリカ人はびっくりしますよ。それで、戦時中の日本のイメージと重なってくる。 『遠山の金さん』とか『大岡越前』にしても、基本は弁護人がいなくて裁判官と検察が一緒で、一審制で、拷問を使った自白が証拠になって、判決理由は物証ではなくて心象。「不届き至極」とか「この桜吹雪を覚えているか」というのは、心象主義ですよ。 邦丸:はははは。 佐藤:日本ではこういう考え方が今でも生きている、というのは、その雰囲気自体がすごく変なんですよ。 邦丸:要するに、異文化というふうに見られちゃうんでしょうな。司法制度云々というより、ちょっと気持ち悪いという。 佐藤:死刑制度も残っていますしね。そういうことをトータルすると、日本はあまり調子よくないので、もう少し情報戦をうまくやって、都合が悪いことは黙っていたほうがいいと思う』、確かにその通りだろう。
・『事件は迷宮入り、ゴーンは生き残る  邦丸:レバノン政府はその辺が上手いですよね。 佐藤:「日本から資料を送ってください、ウチで裁判しますから」と、こういうことでしょ。無罪になるに決まってます。 邦丸:ちゃんと裁判したよ、ということですね。 佐藤:ゴーンさんの言い分を聞いて、日本政府の言い分も聞いて、「これはレバノンの法律では無罪ですね」──これで終わりですよ。 ですから日本としては、主権放棄みたいなレバノンへの裁判委譲はしない。こういうモヤモヤのまま時間が経って、迷宮に入っていくという、これがゴーン事件の今後ですね。しかもその間も、ゴーンさんは日本を攻撃し続ける。めんどくさいです。 邦丸:ところで中東のデューク東郷って、普段は何をやっているんですかね。 佐藤:収入は非常にいいですから、普段はぶらーっとして、ネットワークだけ維持しているんでしょうね』、どこまで真実かはともかく、「佐藤」氏の深い読みには感服するほかない。
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