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日本郵政(その14)(かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた、クローズアップ現代+:検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?、② 郵政グループ 再生への課題は?) [国内政治]

昨日に続いて、日本郵政(その14)(かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた、クローズアップ現代+:検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?、② 郵政グループ 再生への課題は?)を取上げよう。

先ずは、1月26日付け現代ビジネス「かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69924
・『「民間」とは遠い人物  2019年末、日本郵政の長門正貢氏ら3社長辞任のニュースが世間を騒がせた。事の発端は、日本郵政傘下のかんぽ生命での不適切な商品販売である。 また、この問題が明るみに出たのと同時期に総務省幹部による行政処分情報の漏洩問題が起こっていた。これにより鈴木茂樹前総務事務次官は辞任。その後を追うかたちで、長門氏らも引責辞任となった。 新たに日本郵政のトップに就いたのは、元総務大臣の増田寛也氏である。増田氏は「消滅可能性都市」への言及など、メディア露出も多い人物だが、官僚から政治家に転身した経歴の、「民間」とは遠い人物である。 1月9日の就任後初会見で、増田氏は行政処分情報の漏洩問題に関して「調査を行うべく準備を進めている」と述べた。情報漏洩とは具体的に、総務省(旧郵政省)キャリアの先輩・後輩の関係である鈴木康雄・日本郵政上級副社長と鈴木茂樹前事務次官とのあいだで行われた。茂樹事務次官から康雄副社長に対し、行政処分内容を伝えたとされている。 昨年の記者会見長門前社長は「鈴木康雄氏が退職しているので、情報の漏洩問題での調査は行わない」としていた。新体制になり、これを翻したことはいいことだ。 「辞めた人間を調べられない」というのは、民間でありがちな回答で、民間出身の長門氏らしい対応とも言える。一方で、元建設省キャリアで政治家出身の増田新社長は「説明責任」のようなことを考えたのだろう』、「辞めた」といってもまだ退職金を払っておらず、退職金に査定部分があるのであれば、強制力はないにしても調べることは可能だ。まして、半官半民の中途半端な状態にあるので、調べるのは当然だろう。
・『増田氏のようなキャリア官僚であれば、各省の官僚の序列などは周知のはずだ。しかも増田氏は'07年8月から'08年9月まで総務大臣を務めている。そのとき、鈴木前事務次官も鈴木前副社長もともに部下であったはずだ。情報漏洩に関わった二人について多少なりとも知っているだろう。 増田氏のほか、かんぽ生命には千田哲也氏、日本郵便は衣川和秀氏が新社長に任命された。千田氏と衣川氏はともに総務省(旧郵政省)キャリアである。9日の3社長が一堂に並んだ会見は、役人の会見を見ているかのような雰囲気だった。 新体制の下、情報漏洩問題はある程度解明されるだろう。ただ、その原因は、結局のところ現役事務次官も先輩に逆らえない霞が関の強固な上下関係だ、と指摘されるにとどまるはずだ。官庁を離れた後も、退職時のポストと先輩後輩とがあるから、平然と天下りが行われる。キャリア官僚の常であり、新3トップも官僚時代は身の回りで当たり前のように起こっていた出来事だから、深い問題意識は持っていないかもしれない。 それ以上に問題なのは、今後の郵政の経営である。小泉政権の時に「民営化」された郵政は、民主党時代に民間出身の幹部が追い出され、「再国有化」が進んだ。安倍政権では経営陣は民間出身に戻したが、今回の人事では元官僚が3トップとなり、まさに国営企業のようだ。 今の郵政に必要なのは、民間の経営者による事業の徹底的な見直しである。民間の物流・金融業界は生き残りをかけた激動の時代を迎えているというのに、なぜ逆行するような人事を行うのか。官僚のせいで郵政が潰れる日が来ても、まったくおかしくない』、「今の郵政に必要なのは、民間の経営者による事業の徹底的な見直しである」、もっともらしいが、昨日、郷原氏が指摘した「ユニバーサルサービスの確保義務」を外す法律改正がまず先だろう。

次に、1月15日付けNHKクローズアップ現代+「シリーズ 検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4372/index.html
・『2年前からの郵便局の不適正な保険契約の問題を指摘してきたクローズアップ現代+。当時、番組の中で郵政グループの幹部が問題を認識し再発防止を約束したにも関わらず、その後、事態は社会問題化。郵政トップの3社長が辞任する事態にまで発展した。番組では2夜にわたって、再発防止のために何が必要か、多角的に検証する。 第1夜は、問題の全容解明と顧客への救済はどこまで進んだのか、検証する。郵政トップが「1人残らず、最後の1円まで不利益を解消する」と語った、18万3000件におよぶ「特定事案」への調査では、社内ルールや法令に違法する契約が670件に上るとしたが、調査からこぼれ落ちながら、顧客に不利益を生じさせる疑いがある契約が数多く残されている。我々の取材からは、郵政グループによる対応は未だ十分進んでいない実態が浮かび上がってきた。番組では、2年前に再発防止を約束した郵政グループの幹部に直撃。なぜ問題はここまで広がったのか。また本当に顧客本位の救済は進むのか。これまでの経緯を踏まえ、徹底的に聞いていく。 出演者 郷原信郎さん (弁護士、元日本郵政ガバナンス検証委員長) 宮田裕章さん (慶応義塾大学教授) 武田真一 (キャスター)』、この番組は、日本郵政の鈴木前副社長がNHKにねじ込んで、公表が遅れていたいわくつきのものである。
・『検証2年 かんぽ問題 あなたの保険は大丈夫?  武田:信頼していた郵便局に裏切られたという高齢者の声。ノルマに追い詰められて、顧客のためにならない契約を勧めてしまったという現場の局員の告白。私たちは、寄せられたこうした多くの声を埋もれさせてはならないと、2年前から取材を続けてきました。 そして、去年この問題が社会を揺るがし、郵政グループは大規模な調査に踏み切りました。およそ3000万件のすべての契約を対象とした全件調査。さらに、顧客に不利益を生じさせた疑いがある特定事案の調査。これは「二重払い」や「無保険」と呼ばれる状態のものなどで、対象は18万3000件に上ります。 この調査はどこまで進んでいるのか? 先月までに、特定事案の中で法令や社内ルールに違反した契約が670件確認され、契約の解除や生じた損失の返金など、救済が始まっています。しかし、弁護士で作る特別調査委員会の報告書には、不適正な契約はこうした特定事案だけではないことが記されています。 どんな実態があるのでしょうか』、「特定事案だけではない」とすれば、「不適正な契約」の件数はもっと膨らむようだ。
・『検証・かんぽ問題 埋もれた不適正契約とは?  埋もれた不適正な契約の実態とは? 関西在住の80代の母親と、その息子です。 母親の保険が特定事案に該当し、調査の対象となりました。 ところが、その調査の過程で思わぬ事実が発覚したといいます。 母親「1、2、3、4、5、6、7件、保険証券。」特定事案以外にも、見過ごされていた不適正な疑いのある契約が次々と見つかったのです。 息子「毎月60万円あまりの保険を、それを10年もかけるって。そんな金どないすんのやって。」 去年10月、かんぽ生命の社員が特定事案の調査のため自宅を訪ねてきました。母親が加入していた2件の保険が「無保険」に該当するため、その時の状況を調べに来たのです。 「無保険」とは、加入していた保険から新たな保険の契約に切り替える際に、保険のない期間が生じるもの。これによって、郵便局員は新規契約を獲得したと見なされ、手当が満額得られます。そのため、新契約の加入時期を意図的に遅らせた疑いがあります。 ところが、調査に同席した息子が「母親が加入している保険すべての詳しい状況を知りたい」と社員に申し出たところ、調査対象以外にも不審な契約が相次いで見つかったというのです。 息子「『これは大丈夫なんですか』っていうふうな感じでね。そうしたら、2件の事案どころじゃなしに、えらい(大変な)保険。ぞっとしてね。」 特定事案のほかに、母親が最近2年間で加入した保険契約は全部で7件。支払い額は月60万円で、90歳までの支払い総額は7000万円以上に上っていました。 顧客の支払い能力を超える多額の契約を多数取り交わすことは「多額契約」と呼ばれ、不適正の疑いがあります。 しかも、母親は最近、認知機能が低下。 会社のルールでは、顧客が70歳以上の場合は家族の同席を求める必要がありますが、息子が同席を求められたことは一度もありませんでした。 母親「郵便局から来はる人も、ほんまにええ人が来てはったなあと思うねんけど、こんなことしてはるとは思わへんだわ。」 息子「同席していなかったら、しまいですね。こんなん全然出てこなかったんです。末端まで、それ(調査)が行き届いているのか。今のところは届いていないでしょうね。」 息子は7件の保険すべてを解約。契約の無効と、解約で生じたおよそ200万円の損失の返金を求めています。 かんぽ生命は取材に対し、個別のケースについては答えられないとしたうえで、「特定事案以外でも、お時間をいただく場合もございますが、1件1件丁寧にお客様の声をお聞きし、不利益解消のための対応を進めております」としています。 なぜ、不適正な契約が見過ごされていたのか。これまで、みずからも不適正な契約を行ってきたという現役の郵便局員が取材に応じました。会社は、特定事案以外にも不適正な疑いのある契約があることを把握しているはずなのに、手がつけられていないと言います。 現役郵便局員 Aさん「今(特定事案が)調査されているんですが、一番取っかかりやすいようなところを見ているのかなと。(他にも)会社が把握していた、あくどい話法があります。こちらの方が(特定事案より)圧倒的に多い。」 さらに局員は、そうした不適正な疑いのある契約は仕組みが複雑で、顧客が問題を認識していないケースが少なくないと言います。 現役郵便局員 Aさん「(契約が)継続するような形なので、お客さまも自分が損をしたって気づきづらいんですよね。ほとんどのお客さまは(問題に)気づいていない。」 これは、かんぽ生命が不適正な契約をなくそうと、疑いのある契約を分類・集計した内部資料。今回の問題が大きく報じられる以前から作成されていました。 特定事案にあたる「無保険」や「二重払い」以外にも、さまざまな契約が集計されています。この数年、増加傾向にあったのが「料済(りょうずみ)」と呼ばれるケースです。 「料済」とは本来、保険を契約した顧客の利益を守るための仕組みです。例えば、契約した保険の支払いが難しくなった場合。最低2年以上支払っていれば、保険料支払い済み、つまり「料済」として、加入時にかかった手数料を差し引いた額を残りの期間の支払いにあてます。もらえる保険金や保障の額は下がりますが、保険を継続することができるのです。 この仕組みが悪用されたケースがありました。例えば、顧客が年間12万円で10年、総額120万円の保険を一括で支払おうとする場合。郵便局員は顧客に十分説明せずに、年間60万円を10年間支払う保険契約に切り替えるのです。そして3年目に、顧客に新たに60万円の支払いが発生したところで「料済」という方法を提示し、残りの期間の保険を継続させます。 こうすることで、郵便局員は本来の5倍の年間60万円の契約をしたという実績が残ります。しかし、顧客は意図していない契約で予定外に高い手数料を差し引かれるため、保険金や保障額が下がります。それでも、保険契約は継続するため、実態に気づきにくいのだといいます。 去年、作成された内部文書でも、「料済」や、同じく支払額を減額して契約を継続する「減額」などの手法について、顧客の意図に反して行うことを“絶対に行ってはいけない募集行為”として厳しく禁じています。 しかし、かんぽ生命の内部資料によれば「料済」と「減額」は、2018年度だけで6万5000件以上。 この中に、どれだけ不適正なケースが含まれているのか明らかになっていません。 弁護士でつくる特別調査委員会も、報告書の中で特定事案に含まれない不適正な契約について言及。「料済」を前提とした契約についても「2年話法」と呼ばれ、広く認知されていたと指摘しています。 さらに、郵便局員に行われたアンケート調査から、他にもさまざまな不適正な契約があるという声があがっています。 顧客の支払い能力を超えて、多数の契約を結ばせる「多額契約」をしたことがあると答えたのが、およそ1200人。契約者は変えずに、保険の対象となる被保険者の名義を変え、多数の契約をする「ヒホガエ」を行ったことがあると答えたのが、およそ4000人に上っていました。 現役郵便局員 Aさん「営業マンのスキルなんかも、さらに巧妙に悪質になったんじゃないか。これから先、5年後、10年後(問題が発覚したときに)お客さまにご迷惑をおかけするんじゃないかなと。今の私の一番感じていることですね。」 さらに、調査に消極的な会社の姿勢に問題があるとする声もあがっています。 実際に調査を行ってきた、かんぽ生命の現役社員は、調査が行き届いていない実情を明かしました。 現役かんぽ生命社員 Bさん「言い方は悪いですが、(調査の)数をこなす。完了率を求められている。簡単な仕組みになっているって、おかしいなって思いを抱えている社員も少なからずはいますけれども、そういう声を聞いてもらえるような会社にまだなっていないなというのは、現状として認識はあります。」 顧客の救済、本当に進むのでしょうか? 武田:この問題を2年にわたって取材してきた、ディレクターの望月さん。まだまだ調査、そして救済までは到達できていないというのが現実ですけど、いわゆる「二重払い」や「無保険」といった特定事案以外にも、どんなケースが埋もれている可能性があるのでしょうか。 望月ディレクター:例えば、VTRで紹介しました「料済」「減額」「ヒホガエ」「多額契約」のほかに、「相続話法」という手法もあります。「相続話法」は、実際には節税効果が見込めないような場合でも、保険に入れば相続税対策になりますなどと言って勧誘をする手法です。このような不適正な契約を結んでしまっている高齢者の方の場合ですと、郵便局に対して大きな信頼を持っている場合が多いので、詳しい保険の内容を分からないまま契約をしているというケースも本当に少なくないのです。 このようなケースに思い当たることがあれば、番組のホームページにも参考の情報を載せていますので、ご覧になっていただければと思います。 https://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/153/index.html 武田:ご家族の方はぜひ、ご覧いただきたいです。 この郵政グループ、どのような会社か。持ち株会社の日本郵政のもとに、全国に郵便局網を持つ「日本郵便」という会社があります。さらには、保険を扱う「かんぽ生命」。貯金や投資信託を扱う「ゆうちょ銀行」というのがあります。この問題は、保険の販売をかんぽ生命から委託され、手数料を受け取る形で募集をしてきた日本郵便のもとにある郵便局で起きました。その実態調査は、かんぽ生命が担っています。 弁護士の郷原さん。かつて、かんぽの宿の売却問題で検証委員会の委員長も務められましたが、これだけ大規模な問題に発展していながら、いまだに不適正契約の全容が見えてこない。どう受け止めていらっしゃいますか。 ゲスト 郷原信郎さん(弁護士、元日本郵政ガバナンス検証委員長)郷原さん:日本郵政グループの保険事業で全体として、顧客の利益を損なうような契約が行われていたことが、ある程度は推測できるのですが、それに関して必要なことは、そういった問題の背景や構造を明らかにしていくこと。そして、個別の不適正事案について何が行われたのか、その原因はどういうところにあるのか、という両面から事案の全体像を明らかにする必要があるのですが、なかなかその背景や構造の解明が進まない。それによって、共通項となる原因が見えてこない。一方で、特定事案が中心となって調査の対象になっているんですが、それ以外に、どのような顧客の利益を損なうものがあるのかということがなかなか見えてこないので、調査の対象が具体的に定まらない。この両面から、事案の全体像が明らかになってこないのではないかと思います。 武田:経済部の安藤記者にも聞きたいと思います。 特定事案以外の契約について、郵政グループは全件調査として3000万件を調査して、一人も取りこぼさないとしていますが、こちらの実態はどんな調査なのでしょうか。 安藤記者:契約者の数にしてみますと1900万人という膨大な調査ですが、こちらの書類が契約者に届くようなことになっています。「ご加入いただいている保険契約は、お客さまのご意向に沿ったものでしょうか。」と契約者自身にチェックを求めて、そして、はがきを送り返してもらうというシンプルなものなんです。 今のところ、1900万人のうち100万通ほどのはがきが送り返されています。特別調査委員会の分析でも、不適正販売の契約者というのは7割以上が60歳以上ではないかということがありまして、なかなか自分の保険を正確に把握しているというケースも少ない可能性がありますので、調査の在り方というのが問われていると思います。 武田:データによる社会課題について研究されている宮田さんは、こういった調査の手法はどう見られていますか。 ゲスト 宮田裕章さん(慶応義塾大学教授)宮田さん:顧客目線で問題を把握する視点で考えると、データの取り方に改善の余地はあると思います。意向に沿っているかどうかという、あいまいな言葉では顧客はなかなかイメージすることができないので、支払いに困難を感じたか、契約時に不安を感じたか、具体的な言葉で把握させて、そこから不適正事案を絞り込むことも必要です。また、先ほどの映像でも、多くの顧客側は問題に気付いていないという指摘もありましたが、こういった場合には、主観的なデータではなく、収入や貯蓄に対して支払いのバランスが悪くないのかという客観的データを使うことで、被害を受けている可能性がある人を把握することも重要なのかなと思います。 武田:今後の調査をどう進めていくのか。かんぽ生命の幹部に聞きました』、「現役郵便局員 Aさん「・・・一番取っかかりやすいようなところを見ているのかなと。(他にも)会社が把握していた、あくどい話法があります。こちらの方が(特定事案より)圧倒的に多い。」、驚くべき証言だ。「意向に沿っているかどうかという、あいまいな言葉では顧客はなかなかイメージすることができないので、支払いに困難を感じたか、契約時に不安を感じたか、具体的な言葉で把握させて、そこから不適正事案を絞り込むことも必要」、その通りだ。
・『かんぽ問題 救済は?幹部に問う  2年前、私たちの取材に対し、不適正な契約を発生させないよう経営陣を挙げて取り組むと語っていた、かんぽ生命の幹部です。問題をどう認識しているのか、改めて問いました。 クロ現ディレクター:今の特定事案というのは、ほんの一部ですよね。問題が疑われる可能性のある類型、これらは調査の対象にはならないのでしょうか? かんぽ生命 堀家吉人専務執行役「お客さまのご意向に沿わないような多数のご加入をされているお客さま、特に高齢者のお客さまですね。こういったところにつきましては、当然、お客さまの不利益解消にむけて取り組む必要があると思っておりますし、また、そういったお客さまに不利益が生じるような募集をした募集人についても、しっかり調査をしていく必要があるということで進めて参ります。」 クロ現ディレクター:単にお客さまからの返事を待つということだけではなくて、能動的な調査に踏み込んでいくことを、今後お考えになられるのでしょうか? かんぽ生命 堀家吉人専務執行役「やはり(不利益の回復を)お申し出にならないお客さまがいらっしゃる。高齢のお客さまも含めて。そういったことも認識してございますので、お客さまからのお申し出を待つまでもなく、こちらから、しっかりとご対応すべきものがあるというふうにも考えております。 顧客本位について、われわれ意識をどう変えていくか、あるいは、どう浸透させていくかということにつきましては、まさにこの半年間の、たいへん世の中の厳しいご指摘であり、お客さまのことに思いを致す、あるいは、そのはざまで苦しんでいる社員に思いを致す、こういったことが足りなかったということだと思いますので、これを会社のあらゆる仕組みの中で、しっかりと取り上げていく。言葉だけに終わってはいけませんけれども、本当の意味で、これを進めていく必要がある。」 武田:郷原さん、顧客本位の姿勢を徹底するよう改めるということでしたが、これまでなぜ、こうした実態を把握できなかったのでしょうか。 郷原さん:日本郵政におけるコンプライアンスが、法令遵守に偏りすぎていたところに根本的な原因があると思いますね。法令違反やルール違反、こういったものがなくすべきもので、それには取り組んでいたのでしょうけど、実際には、いろんな事業の環境の変化の中で、法令やルールが追いついていない部分があると思うんですね。もっとストレートに、社会の要請、そして、その中のまさに重要なのは顧客の利益。本当に実績に沿うということですから、そこに目を向けてこなかったから問題が見えてこなかった。結局、そういうことだと思います。 武田:安藤さん、今回の調査や救済の在り方について、監督官庁はどのように指摘しているのでしょうか。 安藤記者:監督省庁の総務省と金融庁は先月、郵政グループに対して、3か月間の一部業務停止などを含む厳しい行政処分を行いました。そして、特定事案以外の契約に関しても、「多数・多額契約」ですとか、「ヒホガエ」といった契約調査をして、適切な顧客対応をするように求めました。そして、結果として解約、合意解除となっているようなもので、顧客に経済的な損失は発生していなくても、販売した時点で不適正なものがあったのではないか。こういった指摘もしています。 こうした指摘について先月、日本郵政グループの新しい社長に就任した増田氏は次のように会見で話しています。 日本郵政 増田寛也社長「一刻も早く全容を解明して、それでやるべきことをやる。それから、被害を解消するということは、どんな状況であっても、もう過去に起こったことですから、それは急いでやっていかなければいけません。全件調査の対象に入ってくるものの中で、ふるい分けをして、類型化できるものは、また別途、調査をしていきたいというふうに考えております。どういう類型のものについて、どういう網をかけていくかという詳細について、またこれから優先度を高めて、調査するということになると思います。」』、郷原氏の「いろんな事業の環境の変化の中で、法令やルールが追いついていない部分があると思うんですね。もっとストレートに、社会の要請、そして、その中のまさに重要なのは顧客の利益。本当に実績に沿うということですから、そこに目を向けてこなかったから問題が見えてこなかった」、持論のコンプライアンス論だ。
・『検証2年 かんぽ問題 顧客の救済に何が必要か?  安藤記者:日本郵政としては、詳しい調査を行っていく対象を広げていく方針を示しまして、今月中にも、より詳しい具体的な調査のやり方を固めていきたい意向です。そして、これまでは販売した社員が認めなければ不適正なものではないとしてきたんですけども、それも改めて、外形上で強く疑われる場合には、顧客側に立って救済などを進めていくとしています。今、日本郵政グループとして保険の営業活動というのはしていない状況で、再開のめどはたっていませんが、それだけに、今度こそ顧客の立場に立った調査で全容解明する。これが重要だと思います。 武田:その調査、そして救済をどう進めていくのか、そのために何が必要なのかという点ですが、宮田さんはどう考えますか。 宮田さん:長門前社長はじめ、今回辞任した首脳陣は外部から雇用された人材で、今日に至る郵政を形作ったのは、その下にいる人たち。そして、その中で長年にわたって積み上げられてきた仕組みですね。単にトップを代えるだけでは、恐らく問題は解決しません。巨大な組織を変革する道のりは長く険しいというのは、増田新社長、麻生財務相もすでに指摘していますが、非常にタフだろうと思います。一方で監督省庁である金融庁ともお話しましたが、今回のケースにもかかわらず、通常、販売停止を解除するには問題の実態を明らかにするだけではなくて、新たな被害者が出ないことを保証する必要があります。組織としての課題を改善するだけではなく、改革を継続するための仕組みを示す必要が、今の郵政にはあると思います。 武田:原因究明だけではなく、これからどうやって新しい仕組みを作っていくのかというところまで示すべきだということですね。 郷原さんは、何が必要だとお考えですか? 郷原さん:これまでのやり方というのは、不適切を自認した場合が調査の対象になると。 武田:みずから募集人が認めた場合ですね。 郷原さん:その場合は、厳しいペナルティーの対象になることが前提になっているので、その事案自体が広がってこないということがありました。そうすると、その事案を通して原因を究明して、さらにそれを再発防止につなげていくのはなかなか困難になる。今後は、あまり悪性のない事案であれば、制裁を軽減するとか免除するということも含めて、事案の実態を把握して、救済をしていくというのを結び付けていくことも必要ですし、そのために、世の中の理解、納得が得られるように、新たにトップが十分な説明をしていくことも必要ではないかと思います。 武田:あくまで実態を解明するためのひとつの手法として、ペナルティーを科さない。 郷原さん:悪質な事案はもちろん厳しいペナルティーの対象になりますが、流されてしまって、その状況の下で不適切に手を染めてしまった募集人に、ある程度話しやすい環境を作っていくのも、このようなタイプの問題には必要ではないかと思います。 武田:自分も不適正な契約を結んでしまったかもしれない人たちは、どうすればいいんでしょうか。 望月ディレクター:チェックリストを作ってみました。「記憶にない保険の加入・解約」がないか。「短期間に保険の解約・新規契約」が繰り返されていないか。あるいは、「保険料の支払額が認識以上に高い」。 こういった項目に思い当たる人は、かんぽのコールセンターや家族、保険に詳しい人と相談して、慎重に対応していただければと思います。 公的な相談先などもホームページに載せていますので、ご覧いただければと思います。 武田:高齢者の中には、なかなか自分では分からない方もいらっしゃると思いますが、ご家族の方もこういった項目に思い当たるところがあれば、ぜひ、かんぽのコールセンターや保険に詳しい人に相談していただければと思います』、「これまでは販売した社員が認めなければ不適正なものではないとしてきたんですけども、それも改めて、外形上で強く疑われる場合には、顧客側に立って救済などを進めていくとしています」、これまでの定義が余りに甘過ぎただけで、当然のことだ。郷原氏の「今後は、あまり悪性のない事案であれば、制裁を軽減するとか免除するということも含めて、事案の実態を把握して、救済をしていくというのを結び付けていくことも必要ですし、そのために、世の中の理解、納得が得られるように、新たにトップが十分な説明をしていくことも必要ではないかと思います」、現実的な対応策で、大いに検討に値する。

第三に、上記の続き、1月16日付けNHKクローズアップ現代+「シリーズ 検証・かんぽ問題② 郵政グループ 再生への課題は?」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4373/index.html
・『第2夜は、再発防止に向け、郵政グループの体質改善にどこまでメスが入るのか、検証する。調査報告書では、「一部のコンプライアンスの低い職員」の問題を指摘。経営陣は「現場の実情を把握していなかった」とされている。しかし、我々の取材から浮かび上がってきたのは、「優績者」と呼ばれる販売実績の高い社員が、不適正な疑いがある契約を行うのを許容する「不適正を誘因」するかのような仕組みだった。さらに、民営化途上の制約を抱えたまま、無理な販売を拡大していく構造も浮かび上がってきた。今月から経営陣を刷新した郵政グループ。真に再生するためには何が必要なのか?幹部への直撃インタビューのほか、スタジオに識者を招き徹底討論する。 出演者 郷原信郎さん (弁護士、元日本郵政ガバナンス検証委員長) 宮田裕章さん (慶應義塾大学 教授) 武田真一 (キャスター)』、「「優績者」と呼ばれる販売実績の高い社員が、不適正な疑いがある契約を行うのを許容する「不適正を誘因」するかのような仕組みだった」、多かれ少なかれ、日本の組織にはあるがちな傾向だ。
・『検証2年 かんぽ問題 巨大組織の体質に迫る  武田:昨日から2夜連続でお伝えしている、日本郵政グループの保険の不適正契約問題。今夜は一連の問題がなぜ起きたのか。二度と被害を出さないために何が必要かを考えていきます。 郵政グループには、持ち株会社の「日本郵政」と全国に郵便局を持つ「日本郵便」、そして「かんぽ生命」、「ゆうちょ銀行」があります。「かんぽ生命」や「ゆうちょ銀行」は、金融商品などの販売を郵便局に委託。郵便局は業績によって手数料を得ます。 問題の調査にあたった特別調査委員会は報告書で抜本的解決を先延ばしにし、「問題わい小化の組織風土」であったなど、組織の体質に言及しました。とりわけ「高い実績の局員に依存」せざるを得ない状況の中、「不適正を黙認する風潮」が形成されたと指摘しています。 この高い販売実績の局員の中でも、特に会社から評価されているのが“優績者”と呼ばれる人たちです。彼らを取材しますと、組織の中に長年染みわたっていた深刻な問題が見えてきました』、「「高い実績の局員に依存」せざるを得ない状況の中、「不適正を黙認する風潮」が形成された」、大いにありそうな話だ。
・『かんぽ問題 組織を支える“成績優秀者”の実態  問題の原因のひとつとして報告書が指摘しているのが、“成績優秀者”の存在です。1%あまりしかいない販売実績の優秀者が、違反が疑われる契約の、実に4分の1以上に関与していたと指摘しています。 こうした人たちはどのような契約をしていたのか。成績優秀者の中でも、会社が高く評価する“優績者”が取材に応じました。 みずからも不適正契約を行っていたことを認めたうえで、その手法について語りました。 郵便局 優績者 Cさん「ゆるいお客さん、こちらの言っていることに言いなりになってくれるお客さん。『ゆるキャラ』ですとか、1年間で何度も契約を交わす方もおいでになりますので、そういった世帯ばかりを訪問していました。」 主に高齢者や、持ちかけた話に疑いを持たない人にねらいを定め、契約数を稼いでいたといいます。 契約の数は、会社内での評価に直結していました。年間、数百万円から数千万円以上の販売実績を上げる局員だけが“優績者”と呼ばれ、模範として位置づけられていました。優績者の中でも、「ゴールド」「ダイヤモンド」などの称号でランク付けがなされ、契約額の多さなどで手当を支給。年収が2000万円を超える局員もいたといいます。 さらに取材を進めると、優績者であれば不適正の疑いのある契約でも、一定程度は許容されていたとも受け取れる実態が浮かび上がってきました。 取材に応じた優績者が差し出した内部資料。日本郵便の保険の販売実績、上位1000人のリストです。年間販売実績・数百万円から、トップクラスは1000万円以上が並んでいます。そこに示されていた、ある数値。契約に問題がないかどうかを示す、品質基準です。優績者の基準は甘く設定されていました。 不要な保険料を払い込ませ、客の不利益となる「二重払い」などの疑いがある契約については、全体の5%以下。本来、顧客の利益を守るための仕組みを悪用している可能性がある「料済」や「減額」は12%以下。こうした基準は、一般の局員を含む全局員の不適正な疑いのある契約の、実際の発生率よりも高いものだったのです。 郵政グループも取材に対して、「結果として優績者への基準は緩かった面があった」と認めています。こうした仕組みから、この優績者は「利益さえ上げれば、ある程度の不適正な契約は許される」と受け止めていたと言います。 郵便局 優績者 Cさん「会社も形の上では『不適正な行為は行うな』と言っていましたけれども、実際のところ不適正な募集をしても、会社から処分を受けることはないという感覚でした。優績者には数字を、契約を取ってきてもらわなければならないといった、会社のひとつの合図だったのかなと。」 さらに、優績者の手法が組織の中で広がっていた可能性も内部資料から浮かび上がってきました。これは、優績者などが有志の局員に販売手法を指導する、自主的な勉強会で配られた資料です。契約がたくさんある顧客ほど勧誘しやすいなど、ねらい目となる顧客の特徴などが具体的に記されています。ほかにも、特定事案にもなった「二重払い」については“いつやめるの?あとでしょ!”と解約時期を遅らせ、客に不利益を生じさせることを推奨するかのようなタイトルが付けられていました。 “自主研”と呼ばれる、こうした勉強会は全国で開かれていました。 自主研に参加し、優績者から指導を受けたという一般局員がその内容を語りました。 自主研の参加者「管理者である部長が『お前は参加しろ』という感じで、ほぼ強制的に参加させられました。二重払いとか、こういうやり方ですよと教えてもらいました。こういう方法で頑張っている人は推進しているから、それをまねしろみたいな形です。数字をやる(上げる)ものが全てだっていうような体質があった。」 優績者による手法が組織で共有され、顧客の利益はないがしろにされてきました。 優績者によって被害を受けたと訴える家族です。 契約した保険は、確認されただけで68件に上っていました。この契約に関わっていたのは、全国で上位30位以内に入り、9年連続ダイヤモンドの表彰を受けていた優績者。その優績者が母親の担当になった10年前から、毎年のように新規契約が繰り返されていました。最も契約数が多い2015年には、わずか2か月で20件の新規契約が行われ、1000万円以上の保険料が支払われていました。 娘「『保険に入れば(税金を)免れる』ということを聞いて『はい、わかりました』って。調べてもらったら、もう(お金が)減っていて。郵便局の人ということだけで信頼しきっていて。本当に悲しいですね。」 保険の多くは2年あまりで次々と解約され、払い戻された金を元手に新たな保険契約が繰り返されていました。その際、優績者が最大限の営業実績や手当を得るため、保険の対象となる被保険者を次々と変更する手法が用いられたとみられています。 異変に気づいた娘は郵便局に抗議。 しかし、自宅を訪れた上司は優績者をかばうかのような発言を繰り返したといいます。その音声記録を入手しました。 娘「どう思いました?あなたは。」 管理者「(担当の優績者は)お客さまの立場にたった仕事は一応させていただいておりますので。」 娘「親の財産が減っとるん。なんでそんなの勧めとんのよ。それを何とも思わんのよ。」 管理者「どうしたらよろしいんでしょうか?」 娘「母のもとに全部お金を戻してよ。」 管理者「それは、できることとできないことがございますので。」 娘「どうにもならんことぐらいわかるやん、私だって。取り返しのつかんことをやってくれたのは、あんたんとこなんやで。」 娘の再三にわたる抗議の結果、かんぽ生命は63件の契約を解約して、生じた損失1100万円の返還を認めました。 娘「本当にあきれるっていうか、会社は大丈夫なのって。おかしくないですかって。怒りが収まらないですね。」 別の郵便局の管理者が取材に応じました。 会社も売り上げ達成のために優績者に依存し、不適正な手法を黙認してきた風潮があると語りました。 郵便局 管理者 Dさん「優績者が頼りですから。頼りなんですよ。なので、どうしても営業優先のなかで、やっぱり優績者を守っていく、かばう形になる。いつの間にか、適正なのか不適正なのかがマヒしながらになったのかなと。経営陣の責任でしょうし、本社も支社も一番の責任かなと。」 問題を解決し、再発を防ぐことはできるのでしょうか? 武田:取材にあたった望月さん。新体制になった郵政グループ、この優績者の問題に厳しく対応していくとしていますが、なぜ、ここまで十分に対処しきれていなかったのでしょうか? 望月ディレクター:優績者が処分されにくい仕組みがありました。これは、実際に販売した局員本人が認めなければ不適正と認められなかったんですね。もし顧客側から強い苦情があったとしても、返金をして契約自体をなかったことにすると。これが問題として明るみに出ることはなくて、処分もほとんどされていなかったという状況で。これについては、実態を調査報告書も指摘をしています。 武田:昨夜に続いて弁護士の郷原さんに伺いますが、報告書も指摘するとおり、優績者個人の問題にとどまらず、むしろ利益を上げさえすれば一定の不適正は見過ごすという組織の問題もあったのではないかと思うのですが、いかがですか? ゲスト 郷原信郎さん(弁護士、元日本郵政ガバナンス検証委員長)郷原さん:本来、顧客の利益にかなっているかどうかを見たいのであれば、一人一人の顧客がどういう契約をしているのか、それがプラスになっているのかマイナスになっているのかをしっかり見極めるべきですね。ところが、実際には募集品質の向上という言葉でそれを隠れみのにして、顧客の利益に目をそむけてきたのではないかという気がします。募集品質というのは、法令違反とか社内規定違反があるかないか、しかも、それを認めるかどうかの問題です。そういうことであれば、優績者と言われる人たちは、不適正にならないようにうまくすり抜けながら、どんどん営業成績を上げている。そういった実態が放置されていたということは、組織として顧客の利益に本当の意味で向き合ってなかった。このような体質がずっと続いてきたということではないかと思います。 望月ディレクター:取材した優績者は、これまで散々自分たちをもてはやしてきた会社が、問題が明るみに出て以降、今度は自分たちを犯人扱いすると。これはトカゲの尻尾切りだということで、強く憤りを感じていました。もちろん不適正契約に携わった局員は責任を取るべきだとは思いますが、管理者も含めた組織全体に重い責任があると思います。 武田:果たして、対策がきちんと実効性を持って進められるのか。優績者の問題や、それを助長してきた組織の体質を変えられるのか。日本郵便の幹部に聞きました』、郷原氏の「実際には募集品質の向上という言葉でそれを隠れみのにして、顧客の利益に目をそむけてきたのではないかという気がします・・・優績者と言われる人たちは、不適正にならないようにうまくすり抜けながら、どんどん営業成績を上げている。そういった実態が放置されていたということは、組織として顧客の利益に本当の意味で向き合ってなかった。このような体質がずっと続いてきたということではないかと思います」、は鋭い本質を突く指摘だ。
・『かんぽ問題 幹部に問う 組織の体質は変わるのか?  以前、番組のインタビューで「踏み込んだ対策をする」と語っていた日本郵便の佐野公紀常務執行役員。保険の営業推進の責任者です。2年前の放送を踏まえ、今回の事態をどう受け止めるのか改めて問いました。 日本郵便 佐野公紀常務執行役員「(2年前の)番組放送後、私どもはかんぽ生命とともに募集品質改善に努めてきたつもりでございました。しかし今回、明るみになってきた事実を見ると、その取り組みというものが非常に不十分であったと。」 クロ現ディレクター:優績者が一般社員よりも緩い基準になっているのではないかと? 日本郵便 佐野公紀常務執行役員「従来に比べて、ここ近年、2年ぐらい、募集品質の水準は厳しく引き上げたわけではございますけれども、それでも今のこの状況で考えますと、募集品質を欠格にする水準は緩かったと思います。優績者のあり方も、これから見直しを考えることになる。自主研自体、いろいろな問題と不適正な話法の伝播の一因になっているというご指摘もいただいているところ。自主研のあり方ということも当然、見直しをこれからかけていくということだと思います。まだまだ遠い道のりですけど、お客さまへの信頼回復に向けては、お客さま本位の営業活動を組織全体として覚悟を持って取り組んでいく。」』、いまだに、「優績者のあり方」については、奥歯にモノ挟まったような言い方だ。
・『検証2年 かんぽ問題 再生への課題は?  武田:経済部の安藤さん。郵政グループは具体的に、どう対処していこうとしているのでしょうか? 安藤記者:郵政グループの再発防止策、主なものをまとめました。まず「営業目標の見直し」。新規契約の獲得に偏っていたものを改めて、「継続性も重視」して目標を決めていくとしています。それから「70歳以上への営業とりやめ」のほか、「顧客との会話を録音」。もし何かあったときに不適正な営業がなかったか確認できるような体制にするといいます。そして、「局員が否認しても不適正を認定」。不適正な販売だと認めなかったということも、外形上で十分に疑わしい場合は不適正だと認め、顧客の対応にあたっていくとしています。 武田:ただ、宮田さん、そうはいっても巨大な組織です。対策が実効性を持ってなされるためには、何が必要だと考えますか? ゲスト 宮田裕章さん(慶應義塾大学 教授)宮田さん:問題の原因に一つ一つ対応していくことも重要ですが、一方、全社員の問題として改革に取り組むことで、問題を生まない土壌を作ることも必要なんです。この点については、規模の違いはありますが、同じ旧官営企業のJALのケースが参考になります。経営破綻から再生した現在、振り返って何が一番大事なのかを考えたとき、その要素の1つが全従業員に行った意識改革です。例えば、顧客目線を徹底するということ。前線に立つ営業担当だけではなく、バックオフィスも含めて一人一人の従業員が目標を共有することで、マニュアルやコンプライアンスの外側の問題も含めて、真に質の高いサービスを実現することができるようになった。あるいは、体質性を作ることによって一部の暴走をみんなで抑えて、サービスの質を変えていくということにもつながったともいわれています。 武田:今回の報告書では、問題の背景に民営化の過程で生じた構造的な課題もあると指摘されています。長年、郵政問題を研究してきた田尻嗣夫さんは、利益優先の体質に変わってしまったのではと指摘しています。 東京国際大学 名誉教授 田尻嗣夫さん「民間企業として配当もしなきゃいかん、株主を喜ばせないといかん、ということです。国民を喜ばせなくてはいかんと考えていないんですよ。そこが問題なんです。民営化企業だから、新しいものをどんどん売り込めと。それは、だって能力主義で目標達成主義でね。(民営化前は)ノルマ、ノルマ、ノルマということを言う必要がなかったのですから。」 武田:一方で、民営化が徹底されていないことが問題の背景にあるという意見もあります。日本郵政公社の初代総裁を務めた生田正治さんです。日本郵政公社 初代総裁 生田正治さん「中途半端な民営化。(官と民の)中間にいると、両方のいいとこ取りでやれるならいい。ところが要は、悪いとこ取りになっちゃう。新商品の開発ができない。これは致命的。こういう状態がずっと残るわけですよ。半官半民の、変な不自由な事態が。普通の人と同じように商売できるようにならないと大変困る。」 武田:安藤さん、お二人が指摘したことを含めて、日本郵政グループが抱える構造的な問題はどういう点がありますか? 安藤記者:2007年に民営化した郵政グループですが、民間企業として当然、利益を追求していくことが求められるようになりました。一方で歴史的な低金利ということで、本来、かんぽ生命が得意としてきた貯蓄性の商品の魅力が大変に落ちてしまったと。こうなれば何か別の商品をということですが、まだ民営化のプロセスの途中ということもあって、政府が間接的に出資をしている状態なのが、かんぽ生命です。このため、ほかの民間の保険会社と競争条件を平等に保つために、新商品の開発などに制約もあるのです。こうした制約がある中で、2015年から2017年といった時期には“高齢者らの深耕”、つまり既存の高齢者のお客さんたちを深掘りしようということを経営計画上、掲げていた時期もあります。そして、終身保険の加入の年齢の上限も引き上げられました。不適正な契約を防ぐ体制が十分ならよかったんですけれども、結果的には、こうした体制が十分ではなかったことで、問題を広げた根っこになってしまったと思います。 武田:郷原さんは、背景にある構造的な課題はどう捉えていらっしゃいますか? 郷原さん:全国の郵便局網、ユニバーサルサービスの義務をそのままにしていこうと思えば、どうしても民業圧迫という観点からの制約を受けざるを得ない。そうした中で、民営化でどんどん利益を得ていこうと思えば、そこに無理がかかってしまうのです。そこに、かつての保険商品とは、魅力の問題というよりも全く性格の違う保障性商品を売っていくことになって。昔のように保険に入っても特に損はない。元本が保証されたものの販売と、入れば入るだけ、リスクによって逆に損失が生じてしまう商品の販売とは全く違うやり方をとらなくちゃいけないんです。どんどん契約を取っていく旧来のやり方で利益を確保してきた。これが結局、顧客の利益に反する結果につながったということなのではないかと思います。 武田:大きな課題を抱えて新たに組織を運営することになった増田社長は、次のように語ります。 日本郵政 増田寛也社長「民営化を進めていくという方針は揺るぎないもの。それは、いささかも変わっていない。われわれは半官半民のような形になっているので(商品開発などの)上乗せ規制もありますけれども、(不適正問題を)民営化の中途半端なことのせいにすべきではないというか、それをしては本当の民営化もできないしサービスの向上にはつながらない。愚直に感謝の気持ちを持って、1つ1つお客さまに対しての応対をしていくことが一歩一歩の信頼回復につながるのではないかと。」 安藤記者:民営化の推進そのものに変わりはないという話でした。政府は保有する郵政株を売却して、東日本大震災の復興に充てる財源にしたい方針なのです。ただ、今回の問題が起きて以降、次の売却の時期が不透明になっています。ですから、日本郵政が信頼回復をできるかどうかは、東日本大震災の復興という点で広く国民に影響する話でもあるんです。 武田:二度とこうした問題を繰り返さないためにどうするのか。そして、郵便局がこれからどういうふうに進んでいくのか。そのために何を考えるべきなのか。宮田さんは、いかがですか。 宮田さん:昨年、私はG20の生命保険会合に出席したのですが、いま業界を越えた大変革の中、単に契約を取り付ければいいという時代ではなくなっています。つまり契約をしたあと、一人一人、顧客はよりよい人生を歩む。あるいは病や事故に遭遇しても、その人らしく生きることができるという顧客目線の体験にコミットできなければ生き残ることができない。例えば、携帯のアプリを通して、その人を支え続けるというサービスだったり、健康にいい行動をとったら保険料が安くなる。こういう人生に寄り添うサービスが出始めています。事件が起きたからといって郵政が行ってきたすべてが否定されるのではなくて、地域を支えるサービスは今もありますし、あるいは実態調査を適切に行えば、顧客が何に困難を抱えるかという点を明らかにして、新しいサービスを開発するチャンスにもつながります。立ち止まらざるを得ない今だからこそ、マイナス面をなくすだけではなく、プラス面も含めて顧客視点に立ったビジョンを作り、そして、われわれ国民はそれを見守っていくことが必要かなと思います。 武田:郷原さんは? 郷原さん:郵政民営化の歩みも、常に同じ方向ではなかったということが言えます。一気に民営化を進めようとした時期と、それにブレーキがかかった時期がありました。そういう民営化のぶれが、いろんな問題を生じさせていることは間違いないです。日本郵政をどういうものとしていくのか、全国の郵便局網をどう守っていくのか、それとも、どんどん収益を上げる方向にいくのかという選択肢を、この辺りで政治が示していく必要があるのではないか。国民がそれを選択する必要があるのではないかと私は思います。 武田:最後に望月さん、取材を通じて何を感じますか。 望月ディレクター:ひとたび保険のトラブルが起きますと、専門知識があるわけでもないですし、すごく長い時間と労力がかかるのです。「おばあちゃん、なんでそんな保険に入ったの?」みたいなことで家族の中で不和が起こったりだとか。本来、もともと保険というのは安心を得るためのものなので、絶対あってはならないことだということを本当に重く受け止めて、再生に向けた取り組みに向かっていってほしいと思います。 武田:高齢者の中には、なかなか自分では分からない方もいらっしゃると思いますが、ご家族の方もこういった項目に思い当たるところがあれば、ぜひ、かんぽのコールセンターや保険に詳しい人に相談していただければと思います』、安藤記者の「2015年から2017年といった時期には“高齢者らの深耕”、つまり既存の高齢者のお客さんたちを深掘りしようということを経営計画上、掲げていた時期もあります。そして、終身保険の加入の年齢の上限も引き上げられました。不適正な契約を防ぐ体制が十分ならよかったんですけれども、結果的には、こうした体制が十分ではなかったことで、問題を広げた根っこになってしまった」、経営計画に問題があったとの指摘は新鮮だ。郷原氏の「民営化のぶれが、いろんな問題を生じさせていることは間違いないです。日本郵政をどういうものとしていくのか、全国の郵便局網をどう守っていくのか、それとも、どんどん収益を上げる方向にいくのかという選択肢を、この辺りで政治が示していく必要があるのではないか。国民がそれを選択する必要があるのではないか」、説得力がある主張だが、現実にはいまさらそんな原点に立ち返る議論をする政治家はいないだろう。残念だ。
タグ:日本郵政 (その14)(かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた、クローズアップ現代+:検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?、② 郵政グループ 再生への課題は?) 現代ビジネス 「かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた」 「民間」とは遠い人物 増田寛也 NHKクローズアップ現代+ 「シリーズ 検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?」 検証2年 かんぽ問題 あなたの保険は大丈夫? 検証・かんぽ問題 埋もれた不適正契約とは? 「料済」「減額」「ヒホガエ」「多額契約」のほかに、「相続話法」という手法も 一番取っかかりやすいようなところを見ているのかなと。(他にも)会社が把握していた、あくどい話法があります。こちらの方が(特定事案より)圧倒的に多い 意向に沿っているかどうかという、あいまいな言葉では顧客はなかなかイメージすることができないので、支払いに困難を感じたか、契約時に不安を感じたか、具体的な言葉で把握させて、そこから不適正事案を絞り込むことも必要 かんぽ問題 救済は?幹部に問う 検証2年 かんぽ問題 顧客の救済に何が必要か? 「シリーズ 検証・かんぽ問題② 郵政グループ 再生への課題は?」 「優績者」と呼ばれる販売実績の高い社員が、不適正な疑いがある契約を行うのを許容する「不適正を誘因」するかのような仕組みだった 検証2年 かんぽ問題 巨大組織の体質に迫る 「高い実績の局員に依存」せざるを得ない状況の中、「不適正を黙認する風潮」が形成された かんぽ問題 組織を支える“成績優秀者”の実態 実際には募集品質の向上という言葉でそれを隠れみのにして、顧客の利益に目をそむけてきたのではないかという気がします・・・優績者と言われる人たちは、不適正にならないようにうまくすり抜けながら、どんどん営業成績を上げている。そういった実態が放置されていたということは、組織として顧客の利益に本当の意味で向き合ってなかった。このような体質がずっと続いてきたということではないかと思います かんぽ問題 幹部に問う 組織の体質は変わるのか? 検証2年 かんぽ問題 再生への課題は? 2015年から2017年といった時期には“高齢者らの深耕”、つまり既存の高齢者のお客さんたちを深掘りしようということを経営計画上、掲げていた時期もあります。そして、終身保険の加入の年齢の上限も引き上げられました。不適正な契約を防ぐ体制が十分ならよかったんですけれども、結果的には、こうした体制が十分ではなかったことで、問題を広げた根っこになってしまった 民営化のぶれが、いろんな問題を生じさせていることは間違いないです。日本郵政をどういうものとしていくのか、全国の郵便局網をどう守っていくのか、それとも、どんどん収益を上げる方向にいくのかという選択肢を、この辺りで政治が示していく必要があるのではないか。国民がそれを選択する必要があるのではないか
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