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薬物(その2)(芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門、芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)、合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった、「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者) [社会]

薬物については、昨年3月19日に取上げた。今日は、(その2)(芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門、芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)、合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった、「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者)である。

まずは、筑波大学教授の原田 隆之氏が昨年12月1日付け現代ビジネスに掲載した「芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門 違法薬物とは何か、なぜ依存するのか」を紹介しよう。なお、脚注は省略した。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68820
・『薬物問題とわれわれの社会  このところ、次々と芸能人の薬物問題が起き、世間は大騒ぎとなっている。しかし、一昔前の「ダメ絶対!」一辺倒だった頃と違って、最近では「治療も大事」「バッシングして排除するのは良くない」などという論調も目立つようになってきた。 大前提として、違法薬物使用は法律違反であり、犯罪である。しかし、依存性薬物の恐ろしいところは、厳罰を与えればそれに懲りてやめられるという単純なものではないということだ。 また、薬物使用者を排除し、孤立させてしまうことは、問題をさらに深めるだけで、解決にはならない。これらは、単に人道的な見地からのみ述べているのではなく、科学的エビデンスに基づいた事実である。 したがって、単なる末端の使用者に対しては、できるだけ治療や福祉などのヒューマンサービスを優先し、警察や麻薬取締当局は、薬物の密輸や密売を行っている者の摘発に力を傾けることが、世界的な潮流であり、薬物に関する社会的コストを最低限に抑えることができる方法である。 その一方で、われわれは社会とわれわれ自身を守るために、薬物問題について正しい知識を持っておくことが大事である。 「自分には関係ないから」と思い込み、あやふやな知識しか持っていないと、「大麻には害がない」「MDMAくらいなら大丈夫」などという誘惑に惑わされてしまったり、逆にいたずらに害や不安を煽って薬物使用者をバッシングしたり、医療目的などの適切な使用さえ手控えてしまうことにつながりかねない』、一般的なマスコミ情報では、断片的な知識だけなので、体系的に整理してくれるとは有り難い。
・『違法薬物とは  現在、さまざまな薬物が条約や法律で規制されている。一時「危険ドラッグ」のブームがあったように、その種類は増えるばかりである。違法薬物のなかには、かつては合法的に使用されていたものもあるし、合法な薬物でも違法薬物に優るとも劣らない害があるものもある。 どの薬物が違法で合法化を決めるのは、もちろん法律である。そしてその法律の根拠となるのが薬物に関する2つの国際条約であり、いずれも国連条約である。 1つは、「麻薬に関する単一条約」である。これは、それまで乱立していた薬物に関する条約を一本化したもので、主に植物由来の「伝統的な」薬物を規制するものである。ケシの樹液から作られるアヘン、それを精製したり化学的に合成したモルヒネやヘロイン、麻の一種である大麻(葉や蕾を乾燥させたものはマリファナ、樹脂はハシシと呼ばれる)、南米アンデス地方にしか生えないコカという木からつくられるコカインなどが代表的なものである。 もう1つは、「向精神薬に関する条約」で、これは化学的に合成された比較的新しい薬物を規制するものであり、覚せい剤、LSD、MDMAなどが含まれる。覚せい剤には、主にアンフェタミンとメタンフェタミンがあり、後者は日本人薬学者が世界で初めて合成したものである。 世界で最も多く乱用されている薬物は大麻であるが、それは世界中に自生しているし、栽培が容易であるから、入手しやすいことが大きな原因である。国連の報告を見ると、世界で約1億9千万人が乱用しているとされている。 2番目に乱用が多いのは、かつてはヘロインであったが、近年覚せい剤が2番目となっている。乱用人口は3,400万人と推計されている。これは、やはり比較的入手しやすい化学物質から容易に密造できるという理由が大きい。 90年代以前は、ほぼ日本でしか乱用されていなかったものが、アジア、オセアニア、西ヨーロッパ、アメリカなどに一気に乱用が広がってしまった』、「植物由来の「伝統的な」薬物を規制する」「麻薬に関する単一条約」と、「化学的に合成された比較的新しい薬物を規制する」「向精神薬に関する条約」の2つがあるとは初めて知った。
・『薬物の作用  これらの薬物は、その作用の違いによって大きく2つに分けることができる。1つは中枢抑制作用であり、もう1つは刺激作用である。俗に「ダウナー」「アッパー」などと呼ぶこともあるが、脳や神経系の働きを抑制するのが「ダウナー」であり、刺激するのが「アッパー」である。 抑制系の薬物を摂取すると、覚醒レベルが下がり、陶酔感を抱き、最後は眠りに落ちる。代表的なものが、ヘロインや大麻である。違法薬物ではないが、アルコールにも抑制作用がある。 刺激系の薬物は、覚醒作用を有し、気持ちがシャッキリとし、ハイな気分になる。文字通り覚せい剤はこのような作用を有する。コカインや少量のアルコール、タバコ(ニコチン)、カフェインも中枢刺激剤である。 また、幻覚作用が前面に出やすい薬物もあり、LSD、大麻、MDMAなどが含まれる。 これらの薬物に共通するのは、快感や多幸感をもたらし、依存性があるということである。薬物の摂取によって、ドーパミンという神経伝達物質が多量に分泌され、それが快感を生みだす。それが作用する脳の部位は、大脳辺縁系という「古い脳」にある側坐核を中心とした「報酬系」と呼ばれる神経回路である。 ドーパミンは、薬物を摂取したときだけでなく、われわれが快感を抱いたときは、必ず分泌されている。逆に言うと、ドーパミンが分泌されたから、われわれは主観的体験として快感を抱くのである。たとえば、うれしいことや楽しいことがあったとき、食事、スポーツ、セックスなどの際には、ドーパミンが分泌されている。 しかし、違法薬物、たとえば覚せい剤を摂取したときは、これら自然なドーパミン分泌量と比べると、何十倍から百倍近い量が一気に分泌される。したがって、強烈な快感を抱くが、その後ドーパミンが枯渇してしまうため、大きな不安、抑うつ、焦燥感、イライラ、疲労感などに苛まれることがある。いわゆる禁断症状(離脱症状)である。 このような快と不快の繰り返しによって、脳は不快を避け、快を求めるようになり、薬物使用が反復され、依存症が進行していく。 さらに、同じ薬物を使っても、依存症になりやすい人となりにくい人がいる。たとえば、ちょっとしたことで落ち込んだり不安になったり、ストレスを感じたりしやすい人は、アルコールや薬物の力を借りてそうした不快感情を紛らわせようとしやすい。 さらに、そうした状況にあって、対処スキル(たとえば、友達に相談する、体を動かす、趣味の活動をする)が欠乏している人も、薬物の力にすがろうとして、依存症になりやすいと言われている。遺伝的な基盤があるという知見も報告されている。(つづく)』、「脳や神経系の働きを抑制するのが「ダウナー」であり、刺激するのが「アッパー」である」、「違法薬物、たとえば覚せい剤を摂取したときは、これら自然なドーパミン分泌量と比べると、何十倍から百倍近い量が一気に分泌される。したがって、強烈な快感を抱くが、その後ドーパミンが枯渇してしまうため、大きな不安、抑うつ、焦燥感、イライラ、疲労感などに苛まれることがある。いわゆる禁断症状(離脱症状)である」、「違法薬物」の恐ろしさが幾分、理解できた気がする。

次に、この続き、12月2日付け現代ビジネス「芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68825
・・・『依存症の診断  一般に、強い依存性のある物質を、大量に長い期間使用していればいるほど、依存症は重症になると考えられるし、多種多様の薬物を乱用しているほど、心身への害は大きくなる。 実際、芸能人の薬物報道などでは、「10年以上もの期間、大麻、コカイン、MDMAなどを用いていたから、依存症が深刻だ」などと報道されることもあるし、裁判でもそのように判定されることがある。 とはいえ、事はそう単純ではない。人によって依存症になりやすい脆弱性は異なるし、長い期間乱用していたといっても、使用の方法(注射か、吸引かなど)や頻度によっても違ってくる。 したがって、依存症の程度を正確に判定するには、国際的な診断基準に則って専門医が正しく診断する必要がある。 診断基準には、使用頻度や量の増加、耐性の存在(昔の量では効果がなくなり量が増えること)、渇望や離脱症状があること、やめようとする努力が失敗に終わっていること、社会生活や職業生活に害が出ていること、そしてそれでもやめられないことなどが含まれている。 さらに、重症度の判定には、科学的に妥当性が検証されたツールを用いることが必要である。世界中で最も広く用いられているのが、嗜癖重症度指標(Addiction Severity Index: ASI)という包括的質問紙である。 しかし、これは項目数が多く、網羅的かつ専門的なので、より簡便な質問紙もいくつか開発されている。こうした専門的なツールで、使用薬物の種類、量や頻度、使用方法、社会的な機能の障害などを判定する必要がある』、なるほど。
・『薬物の依存性と害の大きさ  薬物の依存性の強さや害の大きさを比較することは難しい。それは、これらの薬物はみな作用も性質も違うからである。しかし、研究者はさまざまな方法を工夫して、それらを比較しようとしている。 たとえば、イギリスのナットらは、合法・違法含めて20種類の薬物の依存性の強度と害の大きさを数値化している。これは世界で最も権威がある医学雑誌ランセットに発表された論文である。 図-1は、縦軸に依存性の強度、横軸に害の大きさを表したものである。どちらも最も大きいのがヘロインであり、ヘロインは最悪の薬物であると言える。依存性がきわめて強いうえ、致死量が小さいので、欧米では過剰摂取による死亡が絶えない。 ヘロインの依存性は、最大の3.00である。それに次ぐのがコカインの2.39、そして第3位はタバコの2.21である。アルコールは1.91、覚せい剤は1.67である。タバコやアルコールの依存性が、他の違法薬物に引けをとらないどころか、大きく凌いでいることに驚かされる。 害については、同じくナットを中心とする研究者のグループが、より細かく分析している(図-2)。これもランセットに発表されたものであるが、自分に対する害と社会に対する害を分けて数値化したものである。 20種類の代表的な薬物のうち、最も害が大きいのは、何とアルコールであり、数値は72ポイントとなっている。これは、アルコールが合法であり、入手しやすいこと、広く用いられていることが大きく影響している。 2番目以下は、ヘロイン(55ポイント)、クラックコカイン(54ポイント)、メタンフェタミン(覚せい剤)(54ポイント)、コカイン(27ポイント)、タバコ(26ポイント)、アンフェタミン(覚せい剤)(23ポイント)、大麻(20ポイント)と続く。 大麻は害がないなどという根拠のない噂が広がっているが、20種類の薬物のなかで、8番目に害が大きいし、使用頻度や期間などによっては一層害が大きくなる。 ナットは、論文のなかで、「スコアが小さいからといって、それは害が小さいという意味ではない。これらのドラッグは、状況によってはすべて害のあるものだ」と警告している。 害の種類を細かく分けてみると、アルコールは、外傷、犯罪、家族への害、経済的損失が大きく抜きんでている。一方、致死性の害が最も大きいのがヘロインとタバコである。たとえば、わが国のタバコ関連死は、年間20万人と見積もられている。 覚せい剤は、精神的な害が大きく、幻覚妄想状態などを引き起こしやすく、これは覚せい剤精神病と呼ばれる。また、大麻はどの種類の害も平均的に大きい(死亡、精神異常、犯罪、家族、経済的損失など)』、「タバコやアルコールの依存性が、他の違法薬物に引けをとらないどころか、大きく凌いでいる」、「20種類の代表的な薬物のうち、最も害が大きいのは、何とアルコール」、「致死性の害が最も大きいのがヘロインとタバコ」、とはショッキングだ。
・『有効な薬物依存対策  このように、依存性のある薬物は、合法、違法問わず、使用者本人と社会に大きな害をもたらすものである。アルコールとタバコは合法であるが、これは歴史上早くから使用されていた薬物であり、近代社会になる前にすでに広く蔓延していたからにすぎない。合法か違法かの線引きに、科学的で合理的な根拠があるわけではない。 したがって、これ以上他の薬物を合法化することは、賢明な選択ではないし、本人や社会への害を減らすためには、現在合法であるものも含めて、できる限り使用を減らしていくべきである。 ナットは、結論として「公衆衛生の問題として対処すること」の重要性を強調している。つまり、繰り返しになるが、使用者への処罰や社会的排除では解決とはならず、予防、治療、教育などのヒューマンサービスこそが有効な対処だということだ。 有名人が逮捕されるたびに、その個人をいくらバッシングしても、懲らしめても、何の問題の解決にならないのは明らかである。われわれ社会全体の問題として、科学的エビデンスに基づいた医療や公衆衛生の力を総動員し、効果のある対策を取る必要がある』、説得力に溢れた主張で、その通りだろう。「アルコールとタバコは合法であるが、これは歴史上早くから使用されていた薬物であり、近代社会になる前にすでに広く蔓延していたからにすぎない。合法か違法かの線引きに、科学的で合理的な根拠があるわけではない」、なるほどと納得した。

第三に、メディカルジャーナリズム勉強会が11月29日付け東洋経済オンラインに掲載した「合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった」を紹介しよう(訂正についての記述は省略)。
https://toyokeizai.net/articles/-/316514
・『「合法薬依存」と聞いたときに、どんな状況をイメージするだろうか?一時期大きな話題となった、いわゆる「脱法ドラッグ」のことではない。医療機関やドラッグストアで普通に手に入る、完全に合法な医薬品――それによって、薬物依存に陥り、生活に大きな問題を抱えてしまう。そんなケースが少なくないのだ。 メディア関係者と医療者の有志で構成するメディカルジャーナリズム勉強会がスローニュース社の支援のもとに立ち上げた「調査報道チーム」が、全5回にわたる連載でこの合法薬依存の深い闇に斬り込む。 タレントの田代まさしの覚せい剤取締法違反、同じく沢尻エリカの合成麻薬MDMA所持による麻薬及び向精神薬取締法違反など芸能人の違法薬物問題が昨今、世間をにぎわせている。とりわけ田代まさしの覚せい剤取締法違反による逮捕は4度目で違法薬物からの離脱の難しさがクローズアップされている。 もっとも薬物依存と呼ばれるものの中で、覚せい剤、大麻、コカイン、ヘロインなどに代表される違法薬物は、田代まさしのようなケースはあるにしても比較的使用者が離脱しやすいとの指摘も少なくない。こうした違法薬物は使用そのものだけではなく、製造、所持、輸出入、譲渡、譲受のすべてが違法であるため、この一連の流通ルートがつねに取り締まりで脆弱化される恐れが高いからだ。 ここで厚生労働省の厚生労働科学研究費補助金による「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(研究分担者:松本俊彦・国立精神神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長)」という研究報告書を例示する。これは全国の入院機能を持つ精神科の医療施設を対象に薬物を乱用して急性中毒や依存、精神障害などの治療を受けた患者の実態をまとめたものである。 1987年から隔年で行われてきた同調査の最新版である2018年版は246施設から2609例の実態を集計したものだ。この薬物関連の精神疾患の原因となった薬物をグラフにまとめると下図のようになる』、「合法薬依存」とは初耳だが、何故、発生してしまうのだろう。
・『「逮捕されない薬物乱用」が4分の1  やはり最も多いのは過半数を占める覚せい剤だ。そして2番手は「睡眠薬・抗不安薬」である。これは医療機関で処方されている医療用医薬品で基本的には合法のもの。3番手がいわばシンナーなどの「揮発性溶剤」、4番手が風邪薬や頭痛薬などの「市販薬」となる。 概説すれば、この報告において医療機関での処方や市販薬など非合法でない薬物は約4分の1を占める。この報告にカウントされた睡眠薬・抗不安薬、市販薬などは定められた用法・用量を超える量を服用する「乱用」により関連精神疾患となった状態を指す。違法薬物の場合は入手、所持自体が摘発されるが、これら合法薬物は「逮捕されない薬物乱用」ともいえる。 この「睡眠薬・抗不安薬」にはどんな薬が含まれているのか?報告書では内訳が明らかにされている(下表)。 不眠や精神疾患によって医療機関で薬を処方された経験がある人ならば名前を聞いたことがある薬もあるだろう。この中では精神安定薬の成分名(一般名)で「エチゾラム」という薬の乱用が多いことが目立つ。この「エチゾラム」の乱用は報告書に集計された全症例の9.3%。実に乱用で問題がある人の約10人に1人はこの薬が原因なのだ。 しかし、そもそも医師の適切な診察のもと処方されているはずの薬で、なぜ依存や乱用が引き起こされているのか?この問いに対する答えを探すのは、実は非常に難しい。患者、医師、そして製薬企業それぞれの事情などが複雑に絡み合っているからだ。 今回、わたしたちはスローニュース社の支援のもと、この「合法的に処方・販売されている薬」によって依存症が引き起こされる背景を探った。国が公開しているデータや依存・乱用の実態を示す報告書を調べ、そして患者・医師・薬剤師などさまざまなステークホルダーたちから証言を得た。 見えてきたのは、医療現場において、依存のリスクを軽視した「気軽な」処方が行われたケースがあること。そしてひとたび依存症となった当事者に対しては「違法ではない」がゆえに支援の手が差し伸べられにくい、という皮肉な事態が起きていることも見えてきた。 「薬物はダメ、ゼッタイ」という単純なロジックでは捉えきれない複雑な事情。その闇の中を丁寧にのぞき込むことで、『合法薬物依存』が起きる背景に光を当ててみたい』、「闇の中を丁寧にのぞき込む」とは興味深そうだ。
・『発売から35年、成分名は「エチゾラム」  エチゾラムは1984年3月の当時の吉富製薬(現・田辺三菱製薬)が「デパス」という商品名で発売した歴史のある薬だ。医薬品の場合は、発売された新薬が一定期間を経ると特許が切れ、これと同一成分でより安価な薬、いわゆるジェネリック医薬品が発売されることはよく知られている。発売から35年を経たデパスもすでに1990年代前半からジェネリック医薬品が登場し、現在10社を超える製薬企業がジェネリック医薬品を発売している。 ちなみに本来複数の製薬企業から同一成分の薬が発売されている際の表記では、成分名のエチゾラムを使うのが一般的である。しかし、服用患者も含め世間一般では簡単に覚えやすい「デパス」でその名が広く知られていることが多い薬である。このため以後はエチゾラムではなく「デパス(エチゾラム)」と表記することをあらかじめお断りしておく。 デパス(エチゾラム)は薬学的にはベンゾジアゼピン受容体作動薬と称されるグループに属する。国内で厚生労働省が承認しているベンゾジアゼピン受容体作動薬はデパス(エチゾラム)を含め実に30種類を超える。 このベンゾジアゼピン受容体作動薬は、ヒトの神経細胞の間で情報伝達を行う神経伝達物質で興奮状態を抑えるγ-アミノ酪酸、通称GABA(ギャバ)の働きを強めることで、神経を鎮静化し、不安や緊張を取り除くという作用を示す薬だ。また、この作用の一環としてベンゾジアゼピン受容体作動薬では、脳内を鎮静化させて眠りを導く「催眠作用」、筋肉の緊張をほぐす「筋弛緩作用」、けいれんを抑える「抗けいれん作用」などがある。 現在、デパス(エチゾラム)が保険診療で認められている適応は次のとおりだ。 +神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害 +うつ病における不安・緊張・睡眠障害 +心身症(高血圧症, 胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害 +統合失調症における睡眠障害 +頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛での不安・緊張・抑うつ) ざっと見ればわかるとおり、不安、緊張、抑うつ、睡眠障害がキーワードになるが、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の中でもデパス(エチゾラム)は筋弛緩作用が比較的強いと言われるためか、保険適応にもあるとおり頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛などにも効果があるとされる。処方される診療科としては、精神科、神経内科、心療内科にとどまらず、整形外科、脳神経外科でも比較的よく使われる。 また、デパス(エチゾラム)のように睡眠障害に保険適応を持つ薬は、精神科系診療科だけでなく、市中の一般内科でもよく処方される。これは不眠を感じる患者はまずそれだけで精神科などを受診しない傾向が強く、さらには糖尿病、高血圧などの生活習慣病などの診療を受けている患者が「最近よく眠れない」などと訴える時などに処方されがちだからだ。 このため睡眠障害に使われる薬は、業界関係者の間では主な病気で受診中についでに訴えると処方されることを揶揄して「ついでの薬」と呼ばれることがある。 ところでなぜデパス(エチゾラム)での乱用・依存がとりわけ目立つのか?それについてはいくつかの理由が考えられる』、「デパス」がずいぶん広範な症状に処方されているのには、驚かされる。余程よく「効く」薬なのだろう。
・『服用後の効果出現が早く明確だが時間は短い  一般に乱用・依存を来しやすい薬物は、服用後の効果出現が早く明確で、かつ効果持続時間が短いという特徴があると言われる。この種の薬は服用者にとって効果が感じられやすい分、効果切れも実感できてしまう。だから再び薬に手を伸ばす。次第に服用者は薬に依存し、それが極端になると規定の用法・用量を超えた乱用に至ってしまう。 下表は国内で発売されている主なベンゾジアゼピン受容体作動薬の作用時間の長短を示したものだ。デパス(エチゾラム)はまさに作用時間が短い短時間作用型と分類される。ちなみに前述の内訳表で示した乱用原因となっている睡眠薬・抗不安薬の中で、ハルシオンは超短時間作用型、マイスリーはデパス(エチゾラム)と同じく短時間作用型である。 ちなみにデパス(エチゾラム)に次いで乱用が多いサイレースは中間作用型で、効果持続時間が長い点ではやや異なるが、効果が強いことで知られ、また違法薬物であるヘロインやコカインと併用することでいわば「トリップ」作用を強めるという使用や、覚せい剤の使用でハイになってしまい眠れなくなったときの不眠解消などを目的に乱用されることが従来から国内外で知られている。 それでも同じ作用時間が短いハルシオンやマイスリーに比べ、デパス(エチゾラム)の乱用が突出して目立つ理由を簡単に言うならば、服用している患者が多いからである。 こうした抗不安薬など合法的な薬での乱用は、「治療で服用⇒常用量依存⇒乱用」というルートをたどる。ちなみに常用量依存とはおおむね定められた用法・用量の範囲で使用している中で、薬が必要な症状がもはやないにもかかわらず、薬を止めることができないケースである。 前述の流れに沿うならば、同程度の依存性を持つ薬ならば、乱用の分母ともいえる治療で服用している人の数が多ければ多いほど、最終的な乱用患者も多くなる可能性が高い。 この点で考えるとハルシオンは保険適応が不眠と麻酔前投薬、マイスリーは不眠のみであり、前述のように5種類の適応を持ち幅広い診療科で使われるデパス(エチゾラム)は必然的に処方される患者数が多くなる。 加えて法的規制の問題もあった。国内では麻薬や向精神薬の乱用防止、中毒者への必要な医療提供、生産や流通の規制を目的に「麻薬及び向精神薬取締法」という法律がある。 同法では合法的な精神疾患の薬なども別途政令で具体的な薬剤名を挙げて指定し、この指定を受けた薬は厚生労働大臣あるいは都道府県知事から免許を受けた者しか取り扱いできず、厳格な保管や在庫記録の管理などが求められ、医療機関同士や保険薬局同士でも一部を除き譲渡・譲受はできない。ある薬が同法に基づく政令での指定を受けていることについては医療現場でいくつかの意味をもつ。 まず、指定を受けた薬剤は処方日数の上限が定められる。これは効果や副作用などの安全性の確認や患者が正しく使えているかなどを定期的にチェックすることが必要になるからだ。一般に向精神薬の指定を受けたものの多くは処方日数上限が30日となる。これにより患者の乱用へのハードルは高くなる。 また、この指定を受けることは医師に対する「警告」的な効果も大きいとされる。指定を受けると、とくに精神科などの専門医以外の医師にとっては「注意が必要な薬だ」というイメージが定着し、専門医以外は処方を躊躇しやすい、つまり安易な処方は防げる可能性が高まるというものだ。 デパス(エチゾラム)も2016年9月に指定を受けている。しかし、その指定は発売から実に30年以上と、医療従事者の間でもいぶかしげに思う人が少なくないほど、発売から指定までの期間が空いている。 つまるところ依存を生みやすい薬剤特性がありながら、幅広い診療科で処方され、服用者の裾野が広く、なおかつ法的な規制が緩かったというのがデパス(エチゾラム)が乱用されやすい原因と考えられる』、「抗不安薬など合法的な薬での乱用は、「治療で服用⇒常用量依存⇒乱用」というルートをたどる」、大いにありそうなことだ。にも拘わらず、「デパス」の「向精神薬の指定」が、「発売から実に30年以上」、その遅さには確かに首を傾げざるを得ない。
・『高齢になればなるほど処方量は増加  このデパス(エチゾラム)の国内での処方実態の一端をうかがわせるデータがある。厚生労働省は、医療機関が保険診療に際して市町村や健康保険組合に対して患者負担分以外の医療費の支払いを求める明細書(通称・レセプト)の集計結果を2015年分からNDB(ナショナル・データベース)オープンデータという名称で公開している。 NDBオープンデータでは医療に関わる各種技術料や薬剤を項目別に全国集計し、都道府県、年齢階層別でデータが公開されている。 このデータからデパス(エチゾラム)の処方量を人口統計の各年齢層の人口で割り算し、1000人当たりの平均処方量をまとめたものが下図になる。一見するとわかるが、高齢になればなるほど処方量は増加し、最も多いのは80代である。 繰り返しになるが精神神経系の薬の乱用の場合、そこに至るルートは、「治療のための服用⇒常用量依存⇒乱用」のことが多い。となればデパス(エチゾラム)の乱用も高齢者が多くてしかるべきだ。前述の全国調査では各原因薬物内での年齢データは存在しない。しかし、全国調査で報告された全症例における年齢階層別で70代以上は3.3%しかいない。 どういうことか?実はデパス(エチゾラム)をはじめとするベンゾジアゼピン受容体作動薬では、前述の全国実態調査には出てこないまさに一歩手前の「常用量依存」の患者が多いのではないかという指摘は医療従事者の中ではかなり多い。 前述の全国調査の研究分担者でもある精神科医で国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長の松本俊彦氏は、次のように語る。 「まず断っておくと、継続服用患者=常用量依存者ではありません。問題は、長期服用者のデータはあっても、常用量依存の実態に関するデータは存在しない、ということです。常用量依存の定義は、治療すべき症状が改善してもその治療薬をやめることができない状態。だから常用量依存を確認するためには、とにかく一定期間、薬をやめても、それで症状がぶり返さないことを確認しなければなりません。 ところが実際の臨床現場でそれができないし、患者さんたちも嫌がります。だからずるずる飲み続けて、常用量依存かもしれないし、不眠とかあるいは治療を要する水準の不安が持続しているのかの区別がつかないのです。これでは、常用量依存の実態はわかりません」 では「常用量依存は薬物依存症なのか」?松本氏の考えは違うという。 「いろいろ論議はありますが、私の答えは『薬物依存症ではない』というものです。精神科医が依存症と判断する際に重視するのは、身体依存(身体が薬に慣れてしまい、急な中断で離脱症状が出現する状態)ではなく、精神依存(渇望、なりふり構わない薬物探索行動)の存在です。 本来の自分の価値観をかなぐり捨ててでもその薬を欲しくなり、正直者で有名だった人が『薬なくしちゃいました。もう1回処方して下さい』とうそを言う、並行して複数の医療機関からお薬をもらってくる、医者にすごくごねたり恫喝したりとかして処方を要求したりとかする人たち、あるいは、大切な家族を裏切り、仕事を犠牲にしても薬物を使い続ける人たち、それが私たちが日々、依存症専門外来で診ているベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存症なんです。 常用量依存の人には、身体依存はありますが、精神依存はありません。医者から言われたとおりきちんと病院に行って薬を飲んでいるものの、本人は薬をやめたいと思っている。でも、いざやめようとするとやめられない。その理由が、病気の症状がまだ改善していないからなのか、身体依存が生じてしまっているのかがわからない。だから、本当にその人が常用量依存に陥っているのかどうかがわからないのです。 しかし、誤解しないでいただきたいのですが、私は、常用量依存は薬物依存症ではないから大した問題ではないなどとは考えていません。やはり漫然と飲んでいて高齢になると、若いときには出なかった副作用が急に出てくるものなのです。ですから、とくにデパスのような即効性のあるベンゾジアゼピン受容体作動薬を漫然と処方し続けることは、到底推奨できるものではありません」』、「デパスのような即効性のあるベンゾジアゼピン受容体作動薬を漫然と処方し続ける」、こうした医師の無責任さは大いに問題だ。
・『事故につながりかねない副作用はある  デパス(エチゾラム)の場合、発生頻度はいずれも5%にも満たないが、主な副作用として眠気、ふらつき、倦怠感、脱力感などが報告されている。これらはいずれもぱっと見はそれほど重大なものには思えないかもしれない。 しかし、もし眠気が自動車の運転中や大きな作業中に起これば、人の命が失われる重大な事故につながる可能性もある。また、高齢者ではふらつき、倦怠感、脱力感は転倒による骨折などにもつながる。高齢者の場合、転倒による骨折はその後の寝たきりやその結果に伴う認知症の進行や日常活動の低下などに行き着くこともある。 実際、高齢者医療の専門医が集まる日本老年医学会では、薬による副作用が出やすい高齢者での治療の際に注意すべきことなどをまとめた医師向けの「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を作成し、この中で副作用の危険性から75歳以上の高齢者や75歳未満でもフレイルと呼ばれる身体が虚弱な状態、あるいは要介護状態の人に対して「特に慎重な投与を要する薬物リスト」を公表している。この中にはデパス(エチゾラム)をはじめとするベンゾジアゼピン受容体作動薬すべてが含まれている。 乱用にまで至らなくとも、事故などにつながる可能性をもつ常用量依存。しかしその実態は把握されず、もしふらつきによる転倒が起きたとしても、それが薬のせいなのかそうでないのかは見分けがつきにくい。それを許容すべきなのかは議論の余地が残ると言えるだろう』、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」は、「高齢者医療の専門医が集まる日本老年医学会」が作成したのはいいが、「デパス」を使う他の科目の医師にも周知徹底するべく、もっと広い学会でも取上げるべきだろう。

第三に、この続きである本年1月17日付け東洋経済オンライン「「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/324565
・『メディア関係者と医療者の有志で構成するメディカルジャーナリズム勉強会がスローニュース社の支援のもとに立ち上げた「調査報道チーム」が、全6回にわたる連載で追っている「合法薬物依存」。最終回となる第7回は、一筋縄ではいかないデパス(エチゾラム)の減薬・中止について、現役の医師や薬剤師に話を聞いた。 第1回:合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情(2019年11月29日配信) 第2回:20年間「デパス」を飲み続ける彼女の切実な事情(2019年12月3日配信) 第3回:薬剤師が見たデパス「気軽な処方」が招いた実態(2019年12月6日配信) 第4回:「デパス」に患者も医者も頼りまくる皮肉な実態(2019年12月10日配信) 第5回:田辺三菱製薬「デパス」製造者の知られざる歩み(2019年12月27日配信) 第6回:デパスの取り締まりが「遅すぎた」と言われる訳(2019年12月31日配信) ※本来複数の製薬企業から同一成分の薬が発売されている際の表記では、成分名のエチゾラムを使うのが一般的である。しかし、服用患者も含め世間一般では簡単に覚えやすい「デパス」でその名が広く知られていることが多い。このため以後はエチゾラムではなく「デパス(エチゾラム)」と表記することをあらかじめお断りしておく。 「一度、デパス(エチゾラム)依存になってしまうと離脱はかなり困難になる」精神科医の多くが口をそろえて言う言葉だ。もっとも、デパス(エチゾラム)を含むベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性については、以前と比べ医療従事者への注意喚起も盛んに行われていることもあり、最近では精神科医以外でも新規処方は避けたがる傾向が強いと関係者は口にする。 また、高齢者では数多くの薬を服用する多剤併用により副作用のリスクが高まるという研究報告も多くなり、ベンゾジアゼピン受容体作動薬も含め、漫然と投与が続いている薬は減薬・中止のターゲットになりやすい。ただ、デパス(エチゾラム)の場合、それが一筋縄ではいかないことが多いという。ある若手医師は次のように語る』、「減薬・中止」が「一筋縄ではいかない」とはどういうことなのだろう。
・『医師や薬剤師も苦労するデパス(エチゾラム)の減薬  「多剤併用問題がメディアで報じられることが増えたせいか、高齢の患者さんに減薬を提案すると、多くの場合、基本的には同意してくれます。ところが減薬に同意したはずの患者さんでも、デパス(エチゾラム)を服用している場合にその減薬を提案すると、一気に険しい表情になって『いや、先生、この薬だけは……』となることが多いのが現実です。それまでの和やかな雰囲気が一変して緊迫することすらあります。ああ、これが常用量依存なのだ、と実感する瞬間です。このためデパス(エチゾラム)の減薬・中止は、日常診療で十分な関係が構築されてからでないと提案すらできません」 また、高齢者が入所する介護施設に医師と同行して服薬指導に従事する薬剤師からもデパス(エチゾラム)の減薬・中止には苦労するという声を耳にする。 「デパス(エチゾラム)の減薬・中止を提案すると、ご家族の方から『この薬だけは続けさせてください』と哀願されることもあります。よくよくお話を聞くと、そのご家族がデパス(エチゾラム)を長年服用している半ば常用量依存だったということもあります」(都内の薬局勤務の薬剤師)) 本連載第4回での証言のように高齢者の一部では、あえてデパス(エチゾラム)を減薬・中止はしない現実もある。ただ、デパス(エチゾラム)を含むベンゾジアゼピン受容体作動薬は、長年服用している高齢者では副作用とみられる症状の原因として有力視される種類の薬でもある。 2016年に大阪薬科大学教授の恩田光子氏らが在宅医療に取り組む薬局1890件での約5500人の患者で薬の副作用の状況を調査した結果、副作用の原因として疑われた薬の筆頭は、やはりベンゾジアゼピン受容体作動薬の多くが含まれる睡眠導入薬・抗不安薬の17.9%だった。 また、2005年にイギリス医師会雑誌に掲載された研究では、平均年齢60歳以上の高齢者で不眠症状に対してベンゾジアゼピン受容体作動薬を服用した人とプラセボ(薬効がない偽薬)を服用した人を比較した複数の臨床試験を分析し、プラセボの人に比べ、ベンゾジアゼピン受容体作動薬を服用している人では転倒の危険性が2.6倍、日中の疲れ(倦怠感)を感じることが3.8倍高いとわかった。さらに認知機能障害の危険性が4.6倍も高いとも報告された。 このようなことを鑑みれば、高齢者でも可能ならば、デパス(エチゾラム)のようなベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬・中止に取り組む意義は少なくないだろう。実際、高齢者施設の往診に同行して服薬指導や処方提案を行っている「みんなの薬局東中野駅前店」に勤務する薬剤師の杉本進悟氏は、デパス(エチゾラム)の減薬について次のように語る。 「デパス(エチゾラム)は適応症が多い薬なので、手始めは服用し始めた経緯を確認し、肩こりや腰痛などで服用し始めた場合は痛みの状態、不眠の場合は夜間の睡眠状態などをチェックします。服用開始に至った症状が落ち着いていれば、転倒などのリスクがあることを説明したうえで医師に中止を提案し、同意が得られればそのまま患者さんにも医師あるいは薬剤師から減薬・中止を提案します」』、「2005年にイギリス医師会雑誌に掲載された研究」では、副作用としての「危険性」の高さが顕著だ。厚労省ももっと積極的に動くべきだろう。
・『慎重に減薬を進める介護施設の事情  ただ、介護施設に居住する高齢者でのデパス(エチゾラム)の服用中止を提案する場合はそこで働くスタッフの事情などにも考慮が必要だと杉本氏は語る。 「例えば認知症が進行している高齢者で、睡眠導入薬としてデパス(エチゾラム)を服用している場合、もしその方が減薬で眠れなくなってしまうと、ほかの入所高齢者へのケアができない状況になってしまうこともあります。その場合は、減薬・中止の相談はしにくくなります。 ただ、そのような場合でも長期的に患者さんの様子を見ていくと、『最近は夜間眠れている』、『傾眠(薬の副作用である昼間のうたた寝)傾向がみられる」という状況変化が報告されることはしばしばあります。こうした報告があったときには、すかさず減量・頓服への変更・中止を提案するようにしています」 デパス(エチゾラム)の服用原因となった症状が落ち着いていて、患者の同意が得られた際の減薬・中止手順は、痛みや不安症状で朝昼夕の毎食後に合計1日3回服用している場合は、まずは朝夕の食後のみに減量し、その後は朝の食後のみ、最終的に中止と徐々に行うことが多いという。 また、就寝前の睡眠導入薬として頓服となっていてなおかつ睡眠状態に問題ない場合は、患者本人が不眠症の自覚を持って服用しているかどうかで対応を変える。 「認知症などで何を服用しているか本人がよくわかっていないような状況では単純に中止することもあります。睡眠導入薬服用の自覚があり、睡眠状態も良好ならば、転倒などの危険性など話して減薬を提案しますが、患者さんが同意しない場合もあります。 この場合は医師、看護師、施設スタッフの了解のもと、転倒リスクなどを評価したうえで形状が似たプラセボに変更します。プラセボの場合は副作用は起きないことが前提なので、患者さんのご家族への連絡は事後報告になることが多いですね。 これで問題がなければ、そのままプラセボを服用してもらいながらその中止を目指しますが、実際にはプラセボのまま服用が続くケースは少なくありません。プラセボ変更後に不眠症状が表れてしまう場合は頓服として戻すか、筋弛緩作用の弱いほかの睡眠導入薬に変更するなどの対応をするようにしています」 ちなみに杉本氏によると、プラセボを服用していた患者に対して後に「あれはプラセボでした」と明らかにすることはないという。薬の服用を必要とする症状がないのにデパス(エチゾラム)をやめられない常用量依存について、医師や薬剤師はよく「患者さんにとっては薬が『お守り』状態になっている」と表現する。気づかない間に中身のないプラセボに変更されても服用を続ける人が存在する現実は、まさにこの問題の深刻さを物語っているともいえるだろう。 今回の取材で当事者からはさまざまな声が飛び交った。 「実態がわからない薬物依存症とは必ずしも言いがたい常用量依存」「依存しつつもこの薬で命をつないでいる」「患者はなんでも薬で解決しようとする」「『必要悪』のような薬」 ここでいう「当事者」とは、不眠や痛みを早く改善したい患者だけを指すのではない。症状に苦しむ患者を何とか早く改善してあげたいと考える医療従事者、薬効の高い薬を世に出してブランド力を高めたい製薬企業、発売後に本格化した法規制を担った厚生労働省。 これらステークホルダーたちが、みな課題を解決したいという「善意」を持ちながらも、それぞれに抱える「事情」との兼ね合いの中でどうしても埋められない「空隙」が生まれていた。その空隙を、魔法のように埋めてくれるように見えたのがデパス(エチゾラム)という薬だったのではないか。しかし埋められたように見えたのはうわべだけで、実は、空隙はより深くなってしまっているのかもしれない。 まさに「地獄への道は善意で舗装されている」かのごときだ。この構図の中には、絶対的にも相対的にも正義の味方も悪の化身もいるようには見えない』、「デパス」を黙って「プラセボ」に替えるというのはなかなかいい手のようだ。「地獄への道は善意で舗装されている」とは言い得て妙だ。
・『松本俊彦医師との一問一答  そこで最後にこの問題に長く向き合ってきた国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長の松本俊彦氏との一問一答で本稿を締めくくりたい(Qは聞き手の質問、Aは松本医師の回答)。 Q:正直、これだけ問題があるデパス(エチゾラム)がなぜ1980年代に発売されてから最近まで30年間も向精神薬の指定を受けずに放置されてきたのかは不思議に思います。 A:やっぱり発売当初は「いいお薬だ」とみんなが思っていたと思います。医師でも飲んでる人が多かった、「夢の薬」でした。頭がぼーっとしないし、肩こりが取れてスッキリして、切れ味がいい薬として重用されていました。筋肉を弛緩させてくれるから、頭痛の中で多い筋緊張性頭痛とか、ある種の腰痛症とか、肩こりとかの症状も和らげてくれます。精神科だけではなく整形外科や内科などいろいろな診療科で処方したいというニーズがありました。 薬を出すと患者さんからも喜ばれる。「あの先生が出してくれた薬はよかった」と、いいお医者さんと見られます。ある意味で医療機関として安定した顧客を得ることができるというところもあったと思います。 「デパス(エチゾラム)まずいよね」というコンセンサスが出始めたのは1990年代の終わりから2000年くらい。一部の医者は内心でそう思ってなんとなく使用を避けていました。公式にデパス(エチゾラム)のことをまずいよねって言い始めたのは多分、私たちが調査データを公表した2010年くらいだと思います。そしてようやく向精神薬指定を受けたということだと思います。 Q:このデパス(エチゾラム)問題は具体的にどのように対処していけばよいのでしょう? A:私は一般内科の医師の研修会などでデパス(エチゾラム)の危険性について話すときに「新規処方はやめましょう」と言いますが、「デパス(エチゾラム)をすでに飲んでる人に処方するな」とは言わなくなっています。これまで診察が5分で終わっていた患者さんが、薬をやめる話をすると1時間も長引いて、結局、薬を出してくれる優しいお医者さんのところに行ってしまう。何も問題が解決しないのです。だから新規に処方しないことしかないかなと思うことがあります。) Q:では現在高齢で服用し続けている常用量依存の可能性のある人についてはどう考えるべきなのでしょう? A:年齢を重ねてさまざまな弊害が出てくる可能性が高まることも事実ですが、デパス(エチゾラム)を服用しながら何のトラブルもなく人生を普通に送っている人もいます。それを若い医師が頑張って薬をやめさせようとしたら、これまでできたことができなくなったとかの事態も生じているのです。 今後は新規に出さないけれども、今飲んでトラブルが出てない人に関しては、もうとやかく言うのはやめようと、私自身は思い始めています。何か問題が生じたときにしっかり関わろうと思っています。実際、この薬は本当に止めづらいのです。 Q:どの程度止めづらいものなのでしょう? A:薬物依存の治療の中で覚せい剤の治療はほとんど入院せずに外来診療できます。しかし、デパス(エチゾラム)のようなベンゾジアゼピン受容体作動薬依存の人は1~2カ月間の入院が必要になります。根気よく薬の量を少しずつ減らし、退院後も外来での治療を継続していきます。 高齢でデパス(エチゾラム)の常用量依存が疑われる人の場合ならば、何か大きな病気をして入院したり手術を受けたりのときはチャンスなんですよ。「ちょっといろいろあるし、麻酔もかけるからお薬整理しようね」と話してデパス(エチゾラム)を整理していくのです。 中には元気になって「また前の薬」って言う人もいますが、「もう歳もとったし実際飲まないで何日間もやれたじゃないですか」など話をして止めるという手法を使っている医師は少なくないと思います』、「「夢の薬」でした。頭がぼーっとしないし、肩こりが取れてスッキリして、切れ味がいい薬として重用されていました。筋肉を弛緩させてくれるから、頭痛の中で多い筋緊張性頭痛とか、ある種の腰痛症とか、肩こりとかの症状も和らげてくれます。精神科だけではなく整形外科や内科などいろいろな診療科で処方したいというニーズがありました。 薬を出すと患者さんからも喜ばれる。「あの先生が出してくれた薬はよかった」と、いいお医者さんと見られます。ある意味で医療機関として安定した顧客を得ることができるというところもあった」、しかし、依存症を治療するには、「デパス(エチゾラム)のようなベンゾジアゼピン受容体作動薬依存の人は1~2カ月間の入院が必要になります。根気よく薬の量を少しずつ減らし、退院後も外来での治療を継続していきます」、恐ろしい魔法の薬のようだ。
・『「治療を短期的な成果だけで考えてはいけない」  Q:そのほかにデパス(エチゾラム)を減らすアプローチは何かありますか? A:実は内科などでデパス(エチゾラム)を出している医師の多くは、より効果が早い薬で症状を改善してあげたいという患者さん思いの優しい先生で、近所でも評判だったりすると思います。その意味ではデパス(エチゾラム)を服用している患者さんの話をもっと丁寧に聞いてあげるとか、本人が困っている問題に関心を持って毎回触れてあげて「頑張ってるね」とねぎらってあげるとかしたらどうでしょう。 患者全員が精神科の認知行動療法を必要としているわけではないのですが、患者さんはちゃんとわかってほしい、認められたいと思っていて、そういう場があれば、薬は減らせると私は思っているのです。ただ、そうなると診察時間が長くなります。たくさんの人が関わっていろんな形で多職種がアプローチすると本当に薬は減りますよ。 Q:私たち患者になりうる立場の人たちも薬への向き合い方が問われるのでしょうか? A:私は新規の患者さんにデパス(エチゾラム)を処方することはありません。その理由はデパス(エチゾラム)がいい薬すぎるから。切れ味がよくて、患者さんの満足度が高い薬なのです。しかし、薬でこんなに楽になる体験をするのは、罪深い気がするのです。薬はいい部分もあるけど悪い部分もたくさんあります。 だから魔法のような薬で夢を見させてしまって、患者さんが薬に幻想を持つようにならないほうが、「しょせん薬はこんなもんですよ」という諦めを持ってもらったほうがいい気がします。同時に私たちは治療を短期的な成果だけで考えてはいけないのだろうと思います。薬を出してこの人はどのようにこの薬から卒業していくんだろうかというイメージを持って薬を出さなければいけない時代になってきていると思います』、常習性のある薬とは、本当に恐ろしいものだ。安易に薬を出す医師には気をつけたいものだ。
タグ:東洋経済オンライン デパス 薬物 現代ビジネス 原田 隆之 (その2)(芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門、芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)、合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった、「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者) 「芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門 違法薬物とは何か、なぜ依存するのか」 薬物問題とわれわれの社会 単なる末端の使用者に対しては、できるだけ治療や福祉などのヒューマンサービスを優先し、警察や麻薬取締当局は、薬物の密輸や密売を行っている者の摘発に力を傾けることが、世界的な潮流であり、薬物に関する社会的コストを最低限に抑えることができる方法 違法薬物とは 「麻薬に関する単一条約」 主に植物由来の「伝統的な」薬物を規制するもの 「向精神薬に関する条約」 化学的に合成された比較的新しい薬物を規制するもの 薬物の作用 脳や神経系の働きを抑制するのが「ダウナー」 刺激するのが「アッパー」 違法薬物、たとえば覚せい剤を摂取したときは、これら自然なドーパミン分泌量と比べると、何十倍から百倍近い量が一気に分泌される その後ドーパミンが枯渇してしまうため、大きな不安、抑うつ、焦燥感、イライラ、疲労感などに苛まれることがある。いわゆる禁断症状(離脱症状) 「芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)」 依存症の診断 国際的な診断基準 依存症の程度を正確に判定するには 嗜癖重症度指標(Addiction Severity Index: ASI)という包括的質問紙 より簡便な質問紙もいくつか開発 薬物の依存性と害の大きさ ヘロインの依存性は、最大の3.00である。それに次ぐのがコカインの2.39、そして第3位はタバコの2.21である。アルコールは1.91、覚せい剤は1.67 20種類の代表的な薬物のうち、最も害が大きいのは、何とアルコールであり、数値は72ポイントとなっている。これは、アルコールが合法であり、入手しやすいこと、広く用いられていることが大きく影響し アルコールは、外傷、犯罪、家族への害、経済的損失が大きく抜きんでている。一方、致死性の害が最も大きいのがヘロインとタバコ 有効な薬物依存対策 有名人が逮捕されるたびに、その個人をいくらバッシングしても、懲らしめても、何の問題の解決にならないのは明らかである。われわれ社会全体の問題として、科学的エビデンスに基づいた医療や公衆衛生の力を総動員し、効果のある対策を取る必要がある メディカルジャーナリズム勉強会 「合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった」 「合法薬依存」 「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査 「逮捕されない薬物乱用」が4分の1 発売から35年、成分名は「エチゾラム」 神経を鎮静化し、不安や緊張を取り除くという作用を示す薬だ。また、この作用の一環としてベンゾジアゼピン受容体作動薬では、脳内を鎮静化させて眠りを導く「催眠作用」、筋肉の緊張をほぐす「筋弛緩作用」、けいれんを抑える「抗けいれん作用」などがある 精神科、神経内科、心療内科にとどまらず、整形外科、脳神経外科でも比較的よく使われる 服用後の効果出現が早く明確だが時間は短い 高齢になればなるほど処方量は増加 事故につながりかねない副作用はある 「「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者」 一度、デパス(エチゾラム)依存になってしまうと離脱はかなり困難になる 高齢者では数多くの薬を服用する多剤併用により副作用のリスクが高まる 減薬・中止 一筋縄ではいかない 医師や薬剤師も苦労するデパス(エチゾラム)の減薬 慎重に減薬を進める介護施設の事情 松本俊彦医師との一問一答 「夢の薬」でした。頭がぼーっとしないし、肩こりが取れてスッキリして、切れ味がいい薬として重用されていました。筋肉を弛緩させてくれるから、頭痛の中で多い筋緊張性頭痛とか、ある種の腰痛症とか、肩こりとかの症状も和らげてくれます。精神科だけではなく整形外科や内科などいろいろな診療科で処方したいというニーズがありました。 薬を出すと患者さんからも喜ばれる。「あの先生が出してくれた薬はよかった」と、いいお医者さんと見られます。ある意味で医療機関として安定した顧客を得ることができるというところもあった 依存症を治療するには、「デパス(エチゾラム)のようなベンゾジアゼピン受容体作動薬依存の人は1~2カ月間の入院が必要になります。根気よく薬の量を少しずつ減らし、退院後も外来での治療を継続していきます」 「治療を短期的な成果だけで考えてはいけない」 薬を出してこの人はどのようにこの薬から卒業していくんだろうかというイメージを持って薬を出さなければいけない時代になってきている
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