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フィンテック(その4)(独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化、ブロックチェーンが世間から評価されない理由 研究の第一人者が語る、デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊 どう生き残るか) [金融]

フィンテックについては、2017年12月26日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その4)(独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化、ブロックチェーンが世間から評価されない理由 研究の第一人者が語る、デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊 どう生き残るか)である。

先ずは、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏が昨年12/15現代ビジネスに掲載した「独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69137
・『中国では、電子マネーや信用スコアリングの他にも、様々な新しいフィンテックのサービスが登場している。世界のフィンテック関連投資の約半分が中国でなされている』、「中国」はいまや最先端分野でも先頭を走っているようだ。
・『フィンテックで中国は世界のトップに  2019年11月27日に発表された「フィンテック100」で、第1位は、電子マネー、アリペイを提供するAnt Financial(アント・フィナンシャル)だった。トップ10社のうち、中国企業が3社を占めている。これはアメリカの2社より多い(「フィンテック100」は、国際会計事務所大手のKPMGとベンチャー・キャピタルのH2 Venturesが作成するフィンテック関連企業のリスト)。 これまでの推移を見ると、2014年では、100社に入った中国企業は1社だけだった。2015年には7社となり、インターネット専業の損害保険会社である衆安(ジョンアン)保険が世界のトップになった。2016年には、アメリカが35社、中国が14社となった。世界トップは、アント・フィナンシャルだった。2017年版で上位3位に入ったのは、アント・フィナンシャル、衆安保険、そして趣店(クディアン)だ。趣店は、オンラインマイクロクレジットサービス を提供している。 2018年12月に公表された2018年版では、アリババ・グループの関連会社が、トップ3を独占した。 このように中国のフィンテックはここ数年の間に驚くべき成長をとげ 、いまや世界一の地位をゆるぎないものにしているのだ』、「いまや世界一の地位をゆるぎないものにしている」、改めて驚かされた。
・『世界のフィンテック投資の半分が中国で  2019年6月に発表されたアクセンチュアの調査によると、2018年のフィンテック・ベンチャー企業への投資額は、全世界で、前年比2倍以上の553億ドルとなった。 そのうち、中国における投資額が、前年比で約9倍の255億ドルになった。つまり、世界のフィンテック投資総額のうち46%を中国が占めたことになる。 中国におけるフィンテック投資額の半分以上は、アント・フィナンシャルが5月に実施した140億ドルの資金調達が占めている。 アント・フィナンシャルに続くのは、Du Xiaoman Financial。同社は2018年4月に中国の検索エンジン大手Baiduから独立した企業で、消費者金融サービスを提供する。2つの投資案件で43億ドルを調達した。 中国におけるその他の大型案件としては、後述するLufaxが、香港証券取引所で2018年12月に13億ドルを調達した。 なお、アリババグループは、11月26日、香港証券取引所に上場した。新株の売り出しによる調達総額は875億香港ドル(約1.22兆円)になった』、「アリババ」の「株の売り出しによる調達総額は875億香港ドル」と小ぶりにみえるが、売り出し株数が少なかったからで、昨年12月20日の時価総額は5695億米ドルと中国最大の巨人である。
・『融資や資金運用での新しいサービス  中国のフィンテックのうち、電子マネーと信用スコアについては、すでに述べた・・・。そこで述べた網商銀行や微衆銀行が、中小企業への融資を拡大している。 融資や資金運用の分野には、つぎのようなサービスも登場した。 「余額宝(Yu'e Bao)」は、アリペイのプラットフォーム上で販売されるMMF(マネー・マーケット・ファンド)だ。2013年6月に始まった。小口資金をMMFとして集め、その資金を大口定期預金として運用することによって、魅力的な利回りを提示することができた。 これができたのは、当時、銀行の預金金利が規制されていたためだ。大口定期預金と小口定期預金の間には、かなりの金利差があった。この差を利用して、有利な利回りを提供できたのだ。一時は、加入者が6億人を超える世界最大のMMFと言われた。ただし、その後、規制の強化の影響で、資産額が減少している。 オンライン・クレジット(P2Pレンディング)も成長した。これは、金を貸したい人と借りたい人を、金融機関の仲介なしで、インターネットを通じて結びつける金融サービスだ。 貸したい人は既存の金融商品を買うよりも高い金利を得ることが出来、借りたい人は既存の金融機関からお金を借りることが困難でも、資金調達出来る。 2007年以降、リテール投資家にとっての新たな固定収入源として、急成長した。2016年末時点で総額8162億人民元(約13.2兆円)もの融資残高になった。 しかし、不祥事や詐欺が頻発し、後述のように規制が強化された』、「オンライン・クレジット」の融資残高は、現在は殆どなくなったようだ。規制などの影響で大きく振れ易いのは当然だ。
・『保険では平安保険や衆安保険が活躍  保険の分野にも、特徴のある企業が登場している。これらが提供する新しい保険サービスは、「インシュアテック」と呼ばれる。 中国平安保険は、1988年に設立された。最初は伝統的なサービスを提供していたが、アリババやテンセントが新しいビジネスモデルを作り出すのを見て、2007~08年頃に、方針を切り替えた。 現在、中国で最も革新的な金融グループであり、時価総額が中国最大の保険会社だ。世界でも最大の保険会社の1つになっている。 傘下企業がつぎのようなサービスを提供している。 +Lufax:平安保険集団が44%の株式を保有している P2P レンディングプラットフォーム +Ping An Good Doctor:(平安グッドドクター):スマートフォンで病院を予約できる。医師とオンラインで健康相談をし、薬の手配ができる。登録ユーザーは2億6千万人。世界最大の遠隔医療プラットフォームだ。同社は2018年に香港証券取引所に上場した。 衆安保険は、2013年にアント・フィナンシャル、中国平安グループ、テンセントによって設立されたインターネット専業の損害保険会社だ。「Fintech 100」で、3年連続で5位以内に選ばれた。2017年9月には、香港取引所に株式上場した。 同社が最初に提供した商品は、返品送料保険だ。これは、タオバオなどで購入した商品が期待通りの内容・品質でなかった場合に、返品する場合の返送料金を補償する保険だ。タオバオの成長に伴って急激に普及し、同社の急成長を支えてきた』、「返品送料保険」とは面白い商品だ。
・『フィンテックに対する規制が強まる  中国のフィンテックは、これまであまり規制がない条件下で急速に成長してきた。しかし、成長するにつれてさまざまな問題も顕在化し、規制が強化されている。悪質業者や詐欺的行為を排除して利用者保護を図るため、当局はフィンテックの規制に乗り出している。 とりわけ、オンラインクレジットの規制が、2015年12月以降、強化されている。これによって、同業界が勢いを失っている。 また、中国人民銀行は、網聯(ワンリェン)というシステムを、2018年6月から運用開始した。日本では、決済業務を行うためには、全ての金融機関が参加する「全銀ネット」を通じて行うこととされているが、これと同じような仕組みだ。 これまで、アリペイやウィーチャットペイなどの電子マネーは、直接に銀行と連携してサービスを提供してきた。しかし、網聯の導入によって、これらの決済業務は、すべて網聯プラットフォームを通じて処理しなければならなくなった。 これによって、すべての振替業務が人民銀行の管理下に置かれることとなり、マネーロンダリングや脱税などの違法行為が困難になるとされている。他方で、これまでアリペイやウィーチャットペイでは、コスト増になる。 さらに、余額宝の増加を制限するための自主規制が行われた。2017年6月には、残高の上限が、2017年12月には、1日に投資出来る金額の上限が設定された。これによって、余額宝の残高は減少している。 国内市場が飽和して成長率が低下してきたため、中国のフィンテック企業は、海外進出を進めている。 P2Pレンディングプラットフォームは、規制が弱い東南アジアの市場を目指している』、「東南アジア」は中国系企業に対しては、強い規制をためらいがちなこともあって、彼らの草刈り場とならなければいいのだが・・・。

次に、プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役の秋山進氏が2月2日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ブロックチェーンが世間から評価されない理由、研究の第一人者が語る」を紹介しよう。これと第三の記事は、かなり理論的だが、ブロックチェーンを理解するためには、読む価値があると紹介する次第である。
https://diamond.jp/articles/-/226870
・『ひところビットコインの高騰が世間を騒がせ、ブロックチェーンの技術が未来を変えると話題になった。今、この技術はどのような局面にあるのか。ブロックチェーン研究の第一人者である東京大学大学院情報学環准教授の高木聡一郎氏と、本連載『組織の病気』著者である秋山進氏が2回に分けて「ブロックチェーン技術がつくる未来」を語り合う。前編では、ブロックチェーン技術の現状の普及度合い、実際の使われ方など、一般ビジネスパーソンも知っておくべき「ブロックチェーンの現在地」について話を聞いた』、最近は世間の「ブロックチェーン」熱も冷めてきたようだが、ここで本質を知っておく意味は大きそうだ。
・『ブロックチェーンは結局何がすごいのか  秋山 一時期、2016年あたりからでしょうか、一般のビジネスパーソンにも「ブロックチェーンがすごい」という言説が浸透し、「ブロックチェーンがITの世界だけではなく、世界のビジネスや社会のあり方を一変させるのではないか」という期待が高まりました。しかしその後、ビットコインの乱高下やコインチェック事件などもあり、今では当初の熱狂が静まっているような印象も受けます。 ブロックチェーンについて頭ではわかったような気がするものの、いまひとつ実感として、どのあたりがすごいのかがよくわからない……というのが私を含めた読者の正直なところだと思います。高木先生から見て、ブロックチェーンという技術は現在どういう局面にあるのでしょうか。 高木 ブロックチェーンは、不特定多数の人々が共同で管理することにより信頼性・透明性を確保した情報の台帳です。参加者みんなで同じ台帳を持ち合い、一斉に更新することで、「リーダーがいなくてもデータに矛盾が生じない」という合意形成のアルゴリズム(仕組み)になっています。その技術が画期的で革新的であることは間違いありません。 しかし、この優れた技術は一般ユーザーにとって“見えにくい”。このことが、ブロックチェーンのインパクトが一般の人にはいまひとつ捉えがたい理由の一つではないでしょうか。 秋山 「すごい技術」はユーザーから隠れたところで稼働していると。 高木 はい。インターネットが出てきたとき、みんながその「すごさ」を受け入れられたのは、それまでは一般の人が容易にアクセスすることのできなかった情報に、アクセスできることが実感できたからだと思います。例えば、ホワイトハウスのホームページがあって、それを誰でも見に行くことができ、アドレスに飛ぶと、実際にそれがあるということを誰もが見て読むことができた。 秋山 一部の人のものだった情報が、誰にでもアクセス可能なものになって、情報の民主化ともいうべき現象が起こりましたね。 高木 そうなんです。しかし、仮に暗号通貨を取引したとしても、ユーザーが得る体験自体は、ネット証券やネット通販のeコマースのサイトと同じようなもので、いつも通りサイトやアプリを触っているのと何ら変わらない。その裏でどんなシステムが動いているのかは、ユーザーには見えません。 秋山 通貨の取引に関していえば、ユーザーにとってはビットコインも、株やドル・円の取引も、やっていることは同じに見えてしまうんですね。 高木 また、ブロックチェーンは「自律分散型」であるという点も革新的なのですが、分散的であることのメリットが一様には感じられないことも、一般ユーザーが価値を実感できない理由の一つだと思います。 秋山 自律分散型というのはキーワードですね。詳しく教えていただけますか』、「ユーザーには(メリットが)見えません」、確かにその通りだ。
・『中央集権型の従来のシステム 自律分散型のブロックチェーン  高木 一般的な管理システム(組織、通貨発行の仕組み、国家など)には、中央に一番えらい人がいて、その人に情報や権限が集中し、上意下達で命令が伝えられ、その組織のネットワークのすみずみまでコントロールしていました。いわゆる中央集権型、ピラミッド型のヒエラルキー構造です。例えば国家なら大統領や首相が、通貨なら中央銀行が、組織なら社長がその一番上というか中央にいて、組織や貨幣の流通を統制する仕組みです。 ブロックチェーンは、これとは全く違います。誰かが一番えらいということはなく、みんなが平等にネットワークにつながって情報台帳を共有しています。みんなで情報を共有して、その情報の信頼性を保証するという形です。技術的な解説は省略しますが、その信頼性を保証するときの暗号の使い方が、ブロックチェーンの技術なのです。 中央集権型組織/分散型組織(図はリンク先参照) 秋山 ブロックチェーンが生きるのは、決定する権力を分散させるべき場面だということですね。 高木 そうです。場面によって、向き不向きがあるということです。例えば、中央集権型のシステムで何かを決めるときには、最終的に一番えらい人が決めればいいので、そんなに時間はかかりません。一方、分散型の場合は参加者全員が平等なので、意見がまとまらない場合、物事が決めにくい。効率を考えると、何かを決める際には意思決定の得意な人に任せたほうがいいのです。 つまり、ブロックチェーンは何にでも汎用的に使えるのではなく、その技術が持つ分散性がそぐわないような場面もたくさんあるということです。これもブロックチェーンが爆発的な普及に至らない理由の一つです。 秋山 今の我々が使っているシステムや多くの組織は、中央集権的なピラミッド組織。ブロックチェーンが生きるのは、それとは全く違うリゾーム状の民主的な組織なんですね。 高木 インターネットが発達し、デジタル化が進むと、一部のプラットフォーマーに情報が集中します。そのプラットフォーマーが中央集権的に権限を持ってしまうと、それを使っている人の情報はすべてプラットフォーマーに握られてしまってよくない。そこで、例えば通貨の発行権のようなものを自分たちで持てないかと……ブロックチェーンが生まれたもともとの思想もこういうところにありました』、「ブロックチェーンは何にでも汎用的に使えるのではなく、その技術が持つ分散性がそぐわないような場面もたくさんある」、言われてみれば、その通りだ。
・『学歴詐称対策、電力取引 広がるブロックチェーンの使い道  秋山 ブロックチェーンというと、ビットコインをイメージするビジネスパーソンも少なくないと思いますが、それだけのための技術ではなく、ほかにもさまざまなことに幅広く使える「機能」を持っていますよね。今どんなものへの活用が、どのくらい進んでいるのでしょうか。 高木 ブロックチェーンの長所として、「共有しても改ざんされない」「価値流通の仕組みを誰でも作れる」「トレーサビリティーを担保できる」という3点があります。そして、これらの特徴を生かすことが期待できる分野として、学歴詐称対策、農作物のトレーサビリティー(安全性、フェアトレード)、アート作品の売買などがあります。 秋山 学歴詐称対策というのはおもしろいですね。 高木 ブロックチェーンで管理すれば、過去からの情報の積み上げがすべて記録として残りますし、ある人がどの大学のどんな課目を履修して、そのテストの結果はどうだったか、ということまでミクロな情報が集積されます。こうしたミクロな情報をみんなで正しいと保証して、共有してすることで、自分なりの卒業証書を作っていくこともできるでしょう。情報が改ざんされていないことを保証する要素技術としてブロックチェーンはとても優れたものです。ここまでミクロな情報ではありませんが、マサチューセッツ工科大学(MIT)でも、卒業証書の管理に使われています。 ただ一方で、信頼は人と人のあいだに生まれる心理的なものでもあります。いくらブロックチェーンの仕組みが堅牢(けんろう)で、みんなでそれを共有しているから大丈夫といっても、それを実感できるような「よりどころ」が必要だということです。) 秋山 信頼感を持てるようなインターフェースがあって、それを通じて確認ができれば、本当に保証されたとユーザーが納得できるということですね。 高木 はい。ブロックチェーンの技術のまわりには、使い勝手のよいアプリなど、多くの人がその信頼度を確認できるようなエコシステムが必要になってくるでしょう。世の中に広まって、みんながブロックチェーンの優れた機能を使えるようになるためには、ブロックチェーンそれ一つの技術だけでは完璧ではありません。 秋山 インターネットのように、普通の人が使ってメリットを享受できて、はじめて定着するんですね。その意味で、私がおもしろいと思ったのは、電力取引にブロックチェーンを使う事例です。電力の自由化でどこから電力を買うかを自由に決められる時代においては、その電力が何由来なのかを知ったうえで買うことができるのは、ユーザーにとってメリットになると思います。例えば、太陽光や風力など、化石燃料を使わない電力を使いたいと思う人は、ブロックチェーンでその電力が何由来かという情報が保証されていれば、それを選んで買うことができますね。 高木 デジタルグリッドという会社で取り組んでいる仕組みですが、電力にIDをつけてどこで発電されたものか仮想的に分かる仕組みを作ることで、ユーザー間で直接売買する、まさにブロックチェーンの長所を生かした使い方です。 もともと風力などのエコ発電で生まれる電力は、一箇所で大量の電力を一度に生み出せるわけではなかったので、やりとりも細々したものになり、それを融通することが課題でした。その意味でも、ブロックチェーンの分散的な価値観となじむ使い方なのです』、「学歴詐称対策」に意味はあるのだろうが、個人情報保護の仕組みも必須だろう。「電力取引にブロックチェーンを使う」、確かに面白そうだ。
・『新たな価値体系が組織を変える  秋山 地域通貨も、貨幣を超えた可能性を感じさせる事例だと思います。 高木 そうですね。2016年には会津大学、ベンチャー企業、東京大学、GLOCOM国際大学などが、共同研究で地域通貨「萌貨(モエカ)」の実証実験を行いました。サブカルチャーイベント「福島Moe祭」において、当日会場内のみで利用できる「萌貨」をスマホ専用アプリで取引しました。来場者同士がイベントの宣伝をしたり、会場のゴミ拾いや掃除をしたりすると「モエ」がたまり、ためた「モエ」は、飲食物やグッズが当たる福引チケットとして使用できるというものです。 秋山 ちょっとした親切やいいなと思ったことに、普通のお金ではない価値を与えることができるのがいいですね。 高木 日本円はすでに価値基準が決まった通貨ですが、それとはレイヤーの違う価値基準をつくり、従来のお金では評価されないことを積極的に評価できる仕組みです。 秋山 お金以外の価値基準というと、社内通貨を活用している企業もあるそうですね。面倒な仕事を引き受けてくれたら、社員同士で“サンキューポイント”をやりとりするというような。お金ではなく社内だけで流通する社内通貨で払うことで、ちょっとした善意や通常の業績評価で表せない人の行為に対する感謝の気持ちを、社内通貨という価値として付与することができる。これが機能すれば社内のコミュニケーションが劇的に変わると思いますし、給与とは別の価値体系でその人のよいところを評価できるのは組織開発の観点からも、画期的な意味を持つと思います。 高木 これもまた業績評価や給与といった従来の価値とは違う価値体系をつくることができるという例ですね。 秋山 例えば、コールセンターの対応一つ見ても、一件あたりの時間が短くすめば優秀ということになるかもしれませんが、電話をかける側としては「今回の人はすごく説明が丁寧でよかった」とか、「中身はわかったけど嫌な感じだった」とか、評価に差は出てきますね。よかった人に円というお金を払うことはなじまないにしても、ブロックチェーンの仕組みで「いいね」のようなものをつけることができたらおもしろいでしょうね。 高木 新たな価値体系でいうと、フェイスブックが開始する暗号通貨「リブラ」には注目しています。リブラがお金の価値や従来の権威が付与するものとは異なる価値認識を生むと、おもしろくなりそうです。 ブロックチェーンを使うことで、評価が多様化し、誰でも新たな価値体系をつくることができる。おっしゃるように、コミュニケーションが変わるというところも注目すべき点だと思います』、「新たな価値体系が組織を変える」、確かに面白い発展が期待できるのかも知れない。

第三に、上記の続き、2月10日付けダイヤモンド・オンライン「デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊、どう生き残るか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/228232
・『一時期大きく注目を集めたブロックチェーン。その技術は今、どうなっているのか。そして新たな技術の普及により、企業のビジネスモデルや社会構造、われわれの生き方はどう変わるのか――ブロックチェーン研究の第一人者である東京大学大学院情報学環准教授の高木聡一郎氏と、本連載『組織の病気』著者である秋山進氏が2回に分けて「ブロックチェーン技術がつくる未来」を語り合う。前編(ブロックチェーンが世間から評価されない理由、研究の第一人者が語る)に続き、後編ではブロックチェーンを含めたデジタル化によって企業に起こる変化、さらに社会や個人の生き方にまで話題が広がった』、興味深そうだ。
・『パブリックではないブロックチェーンの功罪  秋山 前回に引き続き、ブロックチェーンが活用されている事例について聞かせてください。昨年話題になったキャッシュレス決済、この決済システムでブロックチェーンが使われることもあるようですね。 高木 キャッシュレス決済のプラットフォームにブロックチェーンの技術が活用されています。LINEペイやペイペイのようなキャッシュレス決済は便利ですが、LINEのアカウントしかない人からペイペイのアカウントしかない人に支払うといった、規格をまたがった決済はできません。 そこで、アリババがつくったのがキャッシュレス決済のプラットフォーム。たとえば、香港のアリペイとフィリピンのGキャッシュという異なる規格間での送金にブロックチェーンを活用するなど、すでに運用を開始しています。 ただし、こういったビジネスのプラットフォームで利用されるブロックチェーンの多くは、そこに参加する企業が限定されます。これは「コンソーシアム(会員制)型」と呼ばれるタイプで、ビットコインのように誰もが参加できるわけではありません。 秋山 コンソーシアム型は、オープン型のビットコインと何が違うのでしょうか。 高木 そもそもビットコインは「誰でも使える」ことを目指して生まれたもので、パブリックなものです。だからこそ、マイニング※に多くの人が参加して、競争が激化し、計算のために大電力が必要になります。 ※情報のブロックを新しくつなぐときの暗号を探し当てるため、膨大な量の計算をすること。その作業をいち早くやり遂げた人にビットコインが支給される。 一方で、参加者が決まっているコンソーシアムはお互いに知っているもの同士なので、その意味では最初から取引の内容は保証されています。つまり、情報改ざんの可能性が低いので、マイニングはありません。よって、運用コストも低くなります。 とはいえ本質的には、ブロックチェーンは「パブリックである」場合にこそ、その革新性があります。情報の非対称をなくして効率的な資源配分をする、インターネットの民主化をさらに進めるものとしてつくられ、受け入れられた技術であるという点では、この方法は、本来のブロックチェーンの意義を生かしていないことになるのですが。 秋山 平等にしたら競争が起こるので電力を使いすぎ、低コスト運営にするとメンバーが限られて、平等性が薄れると。 高木 エネルギー効率と機会平等をどう考えるかですね。組織の経済学が問題になってきます。 秋山 今、マイナス面についておうかがいしたのですが、もう一つ、たとえば、膨大な量の計算処理を高速で行うことができる「量子コンピューター」を使えば、ハッシュ値をもとにした非改ざんの証明という現在の方法が崩されるのではないか、という懸念への対応についてはいかがですか。 高木 仕組みをアップデートすることで対応できる可能性はあるのですが、問題は意思決定が必要になることです。どの時点から量子対応にする、ということをみんなで決めなくてはなりません。その合意形成は、前回お話しした分散性ゆえに難しいでしょう。ブロックチェーンは全員が平等に参加するものなので、意思決定をするのには非効率なのです。 秋山 なるほど。いろいろな事例をうかがって、ブロックチェーンを使うとメリットがある場面と、そうでない場面がだいぶ具体的にわかってきました』、みずほや三菱UFJグループが検討しているものも、「マイニング」が不要な「コンソーシアム型」なのだろう。
・『デジタル化による影響を読み解く3つのキーワード  秋山 さて、高木先生はブロックチェーンを含めたデジタル化、情報技術の進展により、既存の枠組みを超えて内部要素の組み直しがなされる「デフレーミング」という状況が起こっていると主張されています。それについて少しお話しいただけますか。 高木 デフレーミングによって、「分解と組み替え」「個別最適化」、そして「個人化」が進むと考えています。 すでにいろいろなところで起こっているように、デジタル化は事業やサービスをはじめ、従来のさまざまな枠組みを崩したり、その垣根をなくしたりしています。その結果、細分化された要素を新たに組み直すといった、「分解と組み替え」が起こっています。 ここでは、企業は一度自分たちの持っている事業を分解してみて、何が強みなのか、「中核価値」を定義し直す必要があります。そしてそれをデジタルの技術と組み合わせて新しく価値を提供していくことを考えなければなりません。 業務のデジタル化にしてもそう。デジタルで業務を効率化、最適化しようとすると、いままで通りの業務のプロセスを組み替えたり、なくしたりしなくてはならない。いままでと同じパッケージは最適ではなくなります。 秋山 全部棚卸しして、「自分のコア」を見つめ直す、ということですね』、「企業は一度自分たちの持っている事業を分解してみて、何が強みなのか、「中核価値」を定義し直す必要があります。そしてそれをデジタルの技術と組み合わせて新しく価値を提供していくことを考えなければなりません」、面白そうだが、大変な作業だろう。
・『個人化が進む社会 埋もれた才能の活用も可能に  高木 また、それぞれのニーズに応じた「個別最適化」が起こります。これには2つあって、1つはプラットフォームのマス・カスタマイゼーションです。 たとえば、ナイキの靴を自分のサイズ、好みの色の組み合わせ、好みのデザインで発注して、自分だけの一足を買うことができるといったようなことです。自分のプラットフォーム内で扱っている商品を、個人向けにカスタマイズする動きです。 秋山 扱う商品そのものが、ユーザーニーズによってカスタマイズされるということですね。 高木 もう1つは、プラットフォームの外部にある価値とユーザーをマッチングさせるGAFAのようなビジネスです。モノではなく、仲介する情報や仲介する内容、マッチングを個別最適化する。プラットフォームは仲介をしているだけなので、自社のリソースによらず膨大なニーズとシーズ※をマッチングすることができます。 ※供給者が持っている特別な技術や材料のこと そしてその場合、プラットフォームには情報が集中し、圧倒的に有利になります。たとえば有望な会社があって、GAFAのプラットフォームで取引をしたら、プラットフォーム上にすべての記録と履歴が残ります。極端に言えば、脅威に感じれば買収するとか、潰すとか、優越的に振る舞うことができる。 秋山 産業構造として寡占化が急速に進みますね。ヨーロッパでは特にそれに反対する動きも活発ですね。 高木 寡占化が進むことについては課題も多いのですが、一方で、デフレーミングによって小さな企業でも自社の「中核価値」を再定義することで、既存のサービスをユーザーに最適化されたものに転換して提供することができます。また、個人のスキルやリソースを個別に特定して取引するビジネスも実現可能です。このように「個人化」が進むことも大きな流れです。 秋山 ブロックチェーンによってすべてのデータが蓄積され、かつその正しさが証明されていれば、得意なことがある人とその能力を必要としている人とを結びつけられる。埋もれた才能の発掘も進みそうですね。 高木 おっしゃるとおり、これまで活躍できなかった人が組織によらず活躍できる機会が増えます。雇用されながら別の副業をするとか、個人の潜在的な能力をあますところなく発揮できます。デフレーミングで起こる「個人化」はまさにそういうこと。個人の力が強い社会になるともいえるでしょう。 ただ、もちろん注意すべきこともあります。個人の能力や実績が情報として残ってしまえば、それを隠すことはできない。一度何かで失敗したことが、全部履歴に残り、生きづらくなるということも考えられます。また、才能があったとしても、使うかどうかは個人の意思によるということもいえるでしょう』、「デフレーミングで起こる「個人化」はまさにそういうこと。個人の力が強い社会になるともいえるでしょう」、結構なことのように思えるが、「個人の能力や実績が情報として残ってしまえば、それを隠すことはできない。一度何かで失敗したことが、全部履歴に残り、生きづらくなるということも考えられます」、こんなデメリットがあるのであれば、あえて使おうとする個人は少ないのではなかろうか。
・『「初期のゆらぎ」で規定される危険性  秋山 ニーズに合わせて「個別最適化」されるということで一つ思ったのは、幅が狭められてしまう可能性もあるのではないかということです。たとえば私は一時期、能力開発の観点からニュースサイトでよくサッカーの久保建英選手の記事を読んでいたのですが、そういう記事の下には久保選手に関係する記事が出てくるので、またクリックして読む。そうすると、別に私は24時間久保選手のことだけを考えている人間というわけではないのに、レコメンドニュースがすべて久保選手だらけになってしまう(笑)。 まだデータアナリシスの精度が低いせいなのかもしれませんが、こうして選択の幅が狭められるのも危険ですね。過去の履歴から、自分の嗜好が解析されて、見たくないものは表示されない、自分の目になじむ記事だけに囲まれるフィルターバブルもそうですが。 高木 「初期のゆらぎ」で規定されてしまうことの危険性はありますね。多様性がなくなるので、ランダム性を導入するということも必要でしょう。 秋山 ニュースサイトでも、わざとその個人に最適化されていない記事を差し挟む工夫も必要ですね。まったく興味のない可能性のあるニュースをあえて入れるという。 高木 個人化が進んで個人が強くなるけれども、やはりそれだけでは限界がある。10年後、20年後に「揺り戻し」が来る可能性は大いにあると思います。個人化だけではなく、並行してコミュニティや対面のコミュニケーションが再評価されるといったようなことです』、「自分の目になじむ記事だけに囲まれるフィルターバブル」では、確かに「多様性がなくなる」弊害は極めて大きい。「ランダム性を導入する」程度で済む問題ではないのではなかろうか。
・『デジタル・ネイティブでない世代が新しい社会で生き抜くために  秋山 デフレーミングでいろいろなことが変わるだろうということがわかりました。ただ、デジタル・ネイティブではない40代以上の世代にとっては、正直そういう社会には感覚的についていけないのではないかという諦めの気持ちや恐怖があると思います。しかし、それでも人生100年時代を生き抜かなければならない。何かヒントはありませんか。 高木 新しいことが生まれている技術の変わり目は、ビジネスの変わり目です。今まで大きな組織でなければ持ち得なかったシステムや情報を、個人がデジタル技術で使うことができる。これまでの寡占をひっくり返せる可能性もあります。最先端技術そのものに追いつかなくても、そこに合わせたエコシステム(注)に関わることはできるでしょう。 個人としても改めて「中核価値」を整理、再定義して、自分の持っている能力や対面コミュニケーション能力を新しいエコシステムで生かせないか考える。そして、そのエコシステムやコミュニティに接続することができれば、チャンスは広がると思います。 秋山 自分のできることを整理したり、発信したり、新しい技術や社会、コミュニティに、オープンマインドで接すると。これからは、「自分から開かれていく」ことが必要ですね』、こんな難しいことが求められているとは、困ったことだが、余り深刻に考えずに、その場その場で乗り切ってゆけるのではなかろうか。
(注)エコシステム:本来は生態系を指す英語「ecosystem」を比喩的に用い、主に情報通信産業において、動植物の食物連鎖や物質循環といった生物群の循環系という元の意味から転化して、経済的な依存関係や協調関係、または強者を頂点とする新たな成長分野でのピラミッド型の産業構造といった、新規な産業体系を構成しつつある発展途上の分野での企業間の連携関係全体を表すのに用いられる用語(Wikipedia)
タグ:フィンテック (その4)(独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化、ブロックチェーンが世間から評価されない理由 研究の第一人者が語る、デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊 どう生き残るか) 野口 悠紀雄 現代ビジネス 「独走!フィンテック超大国として急成長を遂げた「中国の実態」 一方で当局の規制も本格化」 フィンテックで中国は世界のトップに 中国のフィンテックはここ数年の間に驚くべき成長をとげ 、いまや世界一の地位をゆるぎないものにしている 世界のフィンテック投資の半分が中国で 融資や資金運用での新しいサービス MMF 余額宝 オンライン・クレジット(P2Pレンディング) 保険では平安保険や衆安保険が活躍 フィンテックに対する規制が強まる P2Pレンディングプラットフォームは、規制が弱い東南アジアの市場を目指している 秋山進 ダイヤモンド・オンライン 「ブロックチェーンが世間から評価されない理由、研究の第一人者が語る」 高木聡一郎 ブロックチェーンは結局何がすごいのか 参加者みんなで同じ台帳を持ち合い、一斉に更新することで、「リーダーがいなくてもデータに矛盾が生じない」という合意形成のアルゴリズム リーダーがいなくてもデータに矛盾が生じない 中央集権型の従来のシステム 自律分散型のブロックチェーン 分散型の場合は参加者全員が平等なので、意見がまとまらない場合、物事が決めにくい。効率を考えると、何かを決める際には意思決定の得意な人に任せたほうがいいのです ブロックチェーンは何にでも汎用的に使えるのではなく、その技術が持つ分散性がそぐわないような場面もたくさんあるということ 学歴詐称対策、電力取引 広がるブロックチェーンの使い道 情報が改ざんされていないことを保証する要素技術としてブロックチェーンはとても優れたものです 電力取引にブロックチェーンを使う事例 新たな価値体系が組織を変える 「デジタル化が巻き起こすビジネスの枠組み崩壊、どう生き残るか」 パブリックではないブロックチェーンの功罪 コンソーシアム型 参加者が決まっているコンソーシアムはお互いに知っているもの同士なので、その意味では最初から取引の内容は保証されています。つまり、情報改ざんの可能性が低いので、マイニングはありません 運用コストも低くなります デジタル化による影響を読み解く3つのキーワード デフレーミング 細分化された要素を新たに組み直すといった、「分解と組み替え」が起こっています。 ここでは、企業は一度自分たちの持っている事業を分解してみて、何が強みなのか、「中核価値」を定義し直す必要があります。そしてそれをデジタルの技術と組み合わせて新しく価値を提供していくことを考えなければなりません 個人化が進む社会 埋もれた才能の活用も可能に 「初期のゆらぎ」で規定される危険性 自分の目になじむ記事だけに囲まれるフィルターバブル 多様性がなくなる デジタル・ネイティブでない世代が新しい社会で生き抜くために
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