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自動運転(その4)([議論]トヨタは10年後も世界のリーダーでいられるか  File 3 「自動運転業界」(第4回)、自動運転車は誰を犠牲にすべき?究極の思考実験「トロッコ問題」とは、なぜトヨタは富士にイチから「自動運転実験都市」を作らなければならないのか) [イノベーション]

自動運転については、昨年7月6日に取上げた。今日は、(その4)([議論]トヨタは10年後も世界のリーダーでいられるか  File 3 「自動運転業界」(第4回)、自動運転車は誰を犠牲にすべき?究極の思考実験「トロッコ問題」とは、なぜトヨタは富士にイチから「自動運転実験都市」を作らなければならないのか)である。

先ずは、昨年6月25日付け日経ビジネスオンライン「[議論]トヨタは10年後も世界のリーダーでいられるか  File 3 「自動運転業界」(第4回)」を紹介しよう。
・『現在の議論のテーマ  「自動運転業界」を深掘りする当連載もいよいよ最終回。今回は、自動車業界の未来予想図について議論します。出演者4人の議論を踏まえて、コメント欄に自由に書き込み、ぜひ皆さんで議論してください。 各業界をよく知る第一線のゲストに話を聞きながら、今後、その業界がどう変わっていくかを探る連載「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」。入山章栄氏は早稲田大学ビジネススクール教授。 安田洋祐氏は大阪大学経済学部准教授。 第3回シリーズ(File 3)では、モビリティーの新たなサービスやプロジェクトに積極的にかかわるDeNAの中島宏常務執行役員オートモーティブ事業本部長とアーサー・ディ・リトル・ジャパンのパートナーで自動車業界・自動運転業界に精通している鈴木裕人氏をゲストに招き、自動運転業界についての議論を展開中。 最終回の議題は「自動運転で自動車業界はどう変わるか」。自動車メーカーを中心に回ってきた自動車業界だが、自動運転化やMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の進行によって、巨大IT企業や新興企業がキープレーヤーとして存在感を増しつつある。果たして日本の自動車メーカーや部品メーカーは10年後も生き残ることができるのか。大胆に将来像を語り合った。 安田:「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」、このシリーズでは自動運転を取り上げています。今回は自動運転によって自動車業界はどう変わっていくのかについて、お話をお聞きしたいと思います』、興味深そうだ。
・『入山:なんといっても自動車は日本のものづくりを支える一大産業。今後、どうなるのかに関心を持つ方は多いですよね。 安田:読者の方から質問もたくさんいただいています。ご紹介しましょう。人生のらりくらりさん。「自動運転車になったら車を所有する人は減るのかな?」という質問です。サービス化が進むと、個人は自動車を所有しなくなるのかということですが、いかがですか。 鈴木:私は「持ち家に住むか、賃貸に住むか」という選択に近いと思っていて。住宅を考えてみても、みんなが持ち家でもなければ、みんなが賃貸でもないですよね。 個人の嗜好にかかわるものなので、みんなが自家用車でもないし、みんながサービス利用でもない。持ち家比率に近いところに収まるんじゃないかと思います。一般論としては、地方の方が遅くまで自家用車が残っていくと思います。 入山:中島さん、いかがですか。 中島:諸説ありますけれども、世の中に存在する総車両数は減ってしまうと思います。特に自家用車。自家用車って稼働率3%といわれています。わずか3%しか乗らないものを、何百万円も出して所有欲を満たすためだけに買うという時代はもう終わっていくでしょう』、「個人の嗜好にかかわるものなので、みんなが自家用車でもないし、みんながサービス利用でもない。持ち家比率に近いところに収まるんじゃないか」、説得力のある見方だ。
・『使ってわかる、「やっぱり高級車っていい」  入山:所有か使用かという話でいうと、前にあるデザイン会社の社長さんから面白い話を聞いたことがあります。人間には所有欲と使用欲があって、使用すればするほど、所有欲が高まるっていうんです。例えば、漫画の世界では今、スマホに取って代わられて雑誌は全く売れない。『少年ジャンプ』も『少年マガジン』も部数はかつてに比べてずいぶん減っています。けれど、コミックはそんなに落ちていない。スマホで漫画を読んで所有欲をかき立てられた人たちが、例えば「『ワンピース』を全巻そろえておきたい」とコミックを買っているからです。 そこから考えると、「ポルシェ」みたいな豪華なクルマは所有するためのクルマとして残るんじゃないでしょうか。感性を満足させるものですから。 鈴木:高級車はたぶん残ると思います。大衆車はやはり機能性の面で使う方が多いので、中島さんがおっしゃるように、減っていく可能性はある。 中島:所有欲と使用欲の切り口で「まさに」と思う話があります。我々は「Anyca(エニカ)」という個人間カーシェアリングサービスを手掛けています。運営しているのは20~30代のメンバー。20代で都心に住んでいたら、ふつうクルマなんて持てないじゃないですか。ところが、ある日気付いたら、「Anyca」の運営メンバーがやたらと高級車を持っているんですよ。「なんでオレよりいい車を持っているんだ」と思うぐらいに(笑)。 よくよく聞いてみると、「カーシェアすることを前提に高級車を買っています」という話なんです。シェアリングすれば個人の負担は軽くなりますから。 入山:高いクルマをシェア前提で買っているんですね。 中島:そう。でもそれなら、自分で買ってオーナーにならなくても、ふつうに「Anyca」で利用すればいいじゃないですか。どうやら、最初はそうしていたらしいんです。ところがポルシェとかBMWとかに乗っているうちに、欲しくなってきちゃったと。「中島さん、知っていますか。やっぱり高級車っていいんですよ」って。 入山:へえ。それで持ちたくなったんだ。 中島:でもそんな高級車を買うほどの金銭的余裕はない。なのでシェアリングを前提に買おうとする。つまり金銭負担をなるべく抑えながら所有欲を満たそうとしているんです』、「人間には所有欲と使用欲があって、使用すればするほど、所有欲が高まる」、「「ポルシェ」みたいな豪華なクルマは所有するためのクルマとして残るんじゃないでしょうか」、なるほどと納得させられた。
・『ダイムラーは宣伝の一環でカーシェアを活用  安田:そういうことなら、高級自動車メーカーこそカーシェアリングを手掛けて、若い人たちにとりあえず乗ってもらうという戦略をとった方が、長期的には勝ち残れるかもしれないですね。そういう動きって出ていますか。 鈴木:完成車メーカーの中ではダイムラーが最も積極的にモビリティーサービスを手掛けていますね。彼らに聞くと、ある種の宣伝としてカーシェアリングをやっていると。そこから何かのきっかけでオーナーになってもらおうと考えています。まさに「Anyca」で起きたようなことを狙っている。 中島:高級車からエントリーしてもらって、慣れてきて「やっぱり持ちたい」となったら買ってもらうという戦略ですね。今、メーカーはエントリーカーとしてカーシェアリングを使うことに非常に積極的です。 入山:従来のエントリーカーは軽自動車とか「カローラ」のような大衆車だったけれど、今はいきなり「ベンツ」か。 安田:もともと自家用車は3%しか使われてないというのだから、残りの97%分は伸びしろだらけですね。カーシェアによって利用効率を上げていくと、少ない出費で、今まで「モノ」としては手が届かなかった高級車に、「コト」として触れる消費者が増えてくるわけですね。 入山:うん。面白いね。 安田:さて、冒頭で話をしたように、日本の産業界では自動車メーカーの影響力がものすごく大きいですね。そういう中で、「モノからコト」とか「MaaS」の流れが世界中で進んでいったとき、日本の自動車産業はどうなるのでしょうか。懸念する声も大きいと思います。皆さんにはぜひここで○×棒でお答えいただこうと。 入山:お、きましたね。 安田:この先10年ぐらいを考えたとき、日本の自動車メーカーが、世界の自動運転業界、自動車業界で依然として中心的なプレーヤーでいられるのか。世界市場を引っ張って活躍できるのか。できると思われる方は「○」、ちょっと厳しいと思う方は「×」を上げてください。 もちろんその後、理由もお聞きしますから。「バツなところだけ出されてちょっとバツが悪い」、なんてことはないです。はい。 入山:ちょいちょいおやじギャグが出るんだよね(笑)。 安田:はい(笑)。皆さん準備はよろしいですか。では出してください。せーの。はい』、「ダイムラーが最も積極的にモビリティーサービスを手掛けていますね。彼らに聞くと、ある種の宣伝としてカーシェアリングをやっていると。そこから何かのきっかけでオーナーになってもらおうと考えています」、上手い戦略だ。
・『EV普及まで日本メーカー優位は保たれる  入山:わ、全員「○」だ。 安田:じゃあ、入山さんから理由をどうぞ。 入山:自動運転とは離れますが、この後、自動車市場では電気自動車が出てきます。といっても、たぶん一気に普及することはない。充電のインフラを配備しなくてはいけないし、バッテリー技術をもっと成熟させないといけないですから。 この前、トヨタ自動車がハイブリッドの特許を開放しましたね。あれはおそらく、うまく誘導すれば、当面マーケットがハイブリッド中心でいけると判断し、仲間を増やそうと考えたからだと読んでいます。つまり電気自動車への移行をなるべく遅らせようという狙いなのではないかと。 ハイブリッドの設計思想ってガソリン車寄りです。部品点数がめちゃめちゃ多い。電気自動車は逆で部品点数が少ない。電気自動車はパソコンと同じで、部品やモジュールを組み合わせれば誰でもつくれます。それに比べるとハイブリッドは組み合わせて、すり合わせて、という技術が必要。これって日本の自動車メーカーがものすごく強いところです。 この先10年ぐらいなら、電気自動車はまだそれほど普及していないはずですから、日本の自動車メーカーの優位は保たれると僕は思っています。 安田:電気自動車が普及すれば自動車メーカーだけでなく、系列の部品メーカーなども厳しくなるといわれていますが、そういう変化は10年ぐらいならまだ大きくは進まない。トヨタなどはハイブリッドの仲間を増やして電気自動車への移行を遅らせつつ、一方で「MaaS」などへの対応も着々と進めているのではないかと。 入山:そうですね。電子機械産業には「スマイルカーブ」という現象が起きます。バリューチェーンの上流と下流はもうかるけれど、真ん中のアセンブリーメーカーはもうからないという状況です。典型はパソコン業界で、もうかるのは部品をつくっているインテル、OSをつくるマイクロソフト、エンドユーザー向けのサービスを手掛けるグーグルやフェイスブックで、組み立てるパソコンメーカーはもうからない。 電気自動車の時代になると自動車も同じで、組み立てをやっていた自動車メーカーがもうからなくなる可能性がある。だからトヨタは人工知能に投資したり、「イーパレット」の構想を打ち出したりして下流を取ろうとしている。さらに、上流を取るために、ハイブリッドの技術を開放して、システムサプライヤーみたいなことをやろうとしている。僕はそう理解しています』、「トヨタなどはハイブリッドの仲間を増やして電気自動車への移行を遅らせつつ、一方で「MaaS」などへの対応も着々と進めているのではないか」、「トヨタは人工知能に投資したり、「イーパレット」の構想を打ち出したりして下流を取ろうとしている。さらに、上流を取るために、ハイブリッドの技術を開放して、システムサプライヤーみたいなことをやろうとしている」、「トヨタ」は万全の構えのようだ。
・『10年後、VWは中国の会社になっている?  安田:日本の自動車メーカーはスマイルカーブの底に沈まないような施策をすでに先駆けて打ち始めているということですね。わかりました。 続いて僕もさらっと「○」の理由を言うと、今のお話にも出てきたように、自動車メーカーは一歩先、二歩先を意識しながら、ワーストケースを避ける積極投資をしているんじゃないかと見たからです。 もっとも、実を言うと、僕は今日お2人のお話を伺う前は、やっぱり厳しいんじゃないかと思っていたんですが……。 入山:うん。今日の話を聞くとかなり違うよね。 安田:自動運転でも、隠し持っている技術があるというお話ですし。そんなことから考えると、世界の自動車市場をけん引してきたメーカーとしての先行者利益はまだまだ効いてくるのかなと思いました。ただし、この先5年ぐらいの投資は非常に重要だという印象を持っています。 ではここからはプロのご意見をお聞きしましょう。鈴木さんからお願いします。 鈴木:入山さんが指摘した電気自動車というのは非常に重要なキーワードで。経営的に言うと、電気自動車はそのままだと絶対儲からない。 入山:うん。さっきのスマイルカーブですね。 鈴木:そうです。だからエンジン車をつくった方が絶対もうかります。電気自動車は環境規制が厳しいところから増えていくので、欧州と中国で普及が進むと考えられます。欧州と中国って、幸か不幸か、トヨタはじめ日本のメーカーはそんなに強いマーケットではないんですよ。強いのはフォルクスワーゲンなど。ということは、フォルクスワーゲンの方が先にもうからなくなる。だから私は、10年後にはフォルクスワーゲンはなくなっているか、中国の会社になっているか、どっちかだと思っているんですけれども。 入山:おっと。大胆発言が出ました。えーと、関係者の方、これはあくまで個人の予測ですので。 鈴木:はい。すみません。 安田:その頃には中国やヨーロッパでは電気自動車化が進行しきっていると。 鈴木:はい。なので、相対的に日本は結構いいポジションにいる。主戦場としているマーケットがそんなに電動化が進まないという意味で、すごくラッキーなんです。その間に、いかに先行投資を続けられるかが重要です。 それから、日本には自動車みたいなすり合わせの機械の産業があって、DeNAみたいなITの産業があって、エレクトロニクスの産業もある。そういう多様な産業が全部集まっているというのは大きなアドバンテージです。ドイツはITがそんなに強くないし、アメリカは機械やエレクトロニクスが今あまりない。日本の産業構造は、これから自動車のサービスをつくっていく上で、すごくいい状態にあると思います。) 安田:鈴木さんの見立てでは、日本には自動運転業界とか「MaaS」の世界でリーダーになるチャンスがあるということですね。逆に言うと、このチャンスを取りそびれると、日本の産業は厳しいっていうことになりますね。 鈴木:そうですね。この10年が勝負だと思いますね。 安田:なんとしてもここでチャンスをつかまないといけないですね。では満を持して中島さん。 中島:今、日本で自動車業界を引っ張っている企業が、引き続き世界のリーダーになれる可能性は十分にあると思います。 さっきのスマイルカーブの話ですが、お付き合いすればするほど、自動車という分野で、スマイルカーブの真ん中にいるOEMメーカーの努力やノウハウの質はすさまじい。この座布団は結構厚くて、まだ十分に世界をリードするだけのノウハウがあるという印象です。 それから、OEMメーカーは製造だけでなく販売会社も持っています。ここはサービスも請け負うので下流工程ですね。自動運転技術が進化して高度化すればするほど、メンテナンスやアフターサービスによってクルマの安全・安心を維持し続ける価値はぐっと高くなります。下流工程も持っている自動車メーカーは実は磐石だと思っています』、「電気自動車はそのままだと絶対儲からない・・・欧州と中国で普及が進むと考えられます・・・強いのはフォルクスワーゲンなど。ということは、フォルクスワーゲンの方が先にもうからなくなる。だから私は、10年後にはフォルクスワーゲンはなくなっているか、中国の会社になっているか、どっちかだと思っている』、日系が「中国」で弱かったのが幸いするとは皮肉だ。
・『日本の自動車業界はこの10年が勝負  安田:そうか。これから自動運転がサービスの分野で広がっていくとなると、その価値は非常に重要になりますね。 中島:そうです。ただ、クルマの販売台数はどうしたって減りますから、もうけ方を変えないといけない。今までみたいに何年かに1回だけメンテナンスに持ってきてもらったり、車検のときに補修したりということではなく、日々メンテナンスフィーを受け取るようなビジネススキームにしないと生き残れないと思います。ビジネスモデルのスムーズな転換ができるかどうかにかかっていると思います。 入山:それは大事なポイントですね。強みを生かしながら、きちんと変革できる会社ならば、おそらくこれからも世界をリードできるということですね。 いや、今日実は僕、始まる前まで、自動運転にも日本の自動車業界にも少し悲観的な見方をしていたんです。でもお話を伺えば伺うほど、結構、未来は明るくて、希望が持てるんだなと思いました。まさに自動運転業界、自動車業界の未来が見えたなと思います。 安田:改めまして、お2人に感謝をして。 入山:はい、本当にどうもありがとうございました。 中島・鈴木:ありがとうございました。(この後の出席者の略歴の紹介は省略)』、「クルマの販売台数はどうしたって減りますから、もうけ方を変えないといけない・・・日々メンテナンスフィーを受け取るようなビジネススキームにしないと生き残れない」、いくら努力しても、」「販売台数」減少のインパクトは大きそうだ。「日本の自動車業界はこの10年が勝負」、とすると、日産の大混乱は心配になる。

次に、11月13日付けダイヤモンド・オンライン「自動運転車は誰を犠牲にすべき?究極の思考実験「トロッコ問題」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220343
・『本格的な自動運転時代が2020年にも始まるが、ルール作りや社会的コンセンサスが追い付いていない部分が少なくない。特集「トヨタ、ホンダ、日産 自動車の最終決断」(全9回)の番外編として自動運転時代の課題や考え方について、明治大学自動運転社会総合研究所やモビリティ企業への取材を基にレポートする』、「自動運転時代の課題や考え方」、大いに考えさせられるテーマだ。
・『緊急時のハンドル操作を予めプログラムできるのか  政府のロードマップ上では、2020年にも本格的な自動運転(レベル3〈条件付運転自動化〉以上)時代に突入することになっている。 交通業界にとって天変地異なのは、操縦の主体がドライバー(人)からシステムに置き換わることだ。人は運転から解放されて車内で自由な時間を持てる。安全性も人の運転より高まるとされている。一方で法律面、倫理面の課題も見えてきた。 学者らの間で話題沸騰中なのが、倫理上の思考実験「トロッコ(トロリー)問題」だ。究極的な人命選択の運転場面を想定し、「あらかじめシステムに対してどのような選択基準をプログラムすればよいのか」、という問題だ。 上の概念図で説明すると、ブレーキが壊れた(あるいはブレーキをかけても間に合わない)トロッコがある。そのままAの方向に進めば3人と衝突する。一方、分岐点でBの方向に進行を切り替えれば、衝突するのは1人。さあどちらの選択が正しいのか、という思考実験だ。概念図は線路なので走行ルートは限られているが、実際の道路上では例えば急ハンドルを切って壁に激突して自損事故(被害者は運転手、乗員のみ)という選択肢もある。 操縦主体がドライバーならば、どの判断をするにせよ、責任者は人間。一方、システムが操縦主体の自動運転下では、システムが責任者となる。システムの選択基準をあらかじめ設定することになるのは、自動車メーカーになろう。ケースごとに「社会的合意を得られる判断をあらかじめ考えておくことが必要になるのでは」、ということで自動車業界や保険業界などを中心に関心が高まっている。 米マサチューセッツ工科大学は、「モラル・マシーン」という名のウェブサービスで、世界規模の調査を実施している。トロッコ問題に関わるさまざまな運転場面を想定し、イラストを交えて質問。例えば「直進すれば壁に激突して複数の乗員に死傷者が出るが、ハンドルを切れば乳児を含む複数の男女をはねる(ただし男女が歩いている横断歩道の信号機は赤色)」といった具合だ。回答傾向を分析したところ、社会的合意を得られる判断が国によって大きく違うことが浮き彫りになった。日本は世界平均と比べ、歩行者、法令順守、不作為(ハンドルを切ることで被害者を選ばない)を優先する傾向が強い。中南米では、社会的地位の高さ、子ども、女性の優先度が高い。欧米は不作為の傾向が強かった。 学者らの間でトロッコ問題の議論が過熱する一方、「ただの思考実験なので勝手にやってくれ。自動運転社会ではそもそもトロッコ問題は起きない」と断言するモビリティ企業幹部もいる。高度に進化した自動運転車両では、センサーが肉眼以上に余裕を持ってブレーキの間に合う距離で対象物を把握するし、ブレーキの異常を感知した時点で補助ブレーキが作動してトロッコ問題が起きる前に停車する。つまり、「トロッコ問題は手動運転時代の遺産に過ぎない」というのだ。 最終的にはそうなるのかもしれないが、自動運転車両はまさに進化の過程にある。さまざまなリスクに対して議論をしておくことは大切だ。 以下ではトロッコ問題を含め自動運転を巡るさまざまな課題を、18年に設立された明治大学自動運転社会総合研究所の識者2人へのインタビューで掘り下げてみた(Qは聞き手の質問、Aは回答)』、「日本は世界平均と比べ、歩行者、法令順守、不作為・・・を優先する傾向が強い。中南米では、社会的地位の高さ、子ども、女性の優先度が高い。欧米は不作為の傾向が強かった』、確かに「社会的合意を得られる判断が国によって大きく違う」ようだ。
・『自分が死ぬ車を誰が買うのでしょうね【中山幸二部門長(法律分野)】  Q:政府の自動運転ロードマップでは「2020年までに移動サービスでレベル4(高度自動運転)」が始まることになっています。日本のレギュレーションが追い付いていない部分を整理して教えてください。 A:道路運送車両法はレベル4まで想定しています。でも、道路交通法はレベル3(条件付自動運転)までしか想定していない。道路交通法を所管する警察庁はドライバーがいなければいけないという考えが根強いからです。「いざとなれば、すぐにシステムからドライバーに切り替わる」までのレベルは認めるというのが今の彼らのスタンスです。 車両の認証(保安)基準もレベル3以上は世界で基準ができていません。独アウディの新車もレベル3の機能は備えていますが、封印していますよね。国際的な基準を今作ろうとしている。システムをどうやって測るか。今までは機械的に検査していました。これからは設計段階から設計思想を見ないといけません。 Q:自動運転を巡っては、トロッコ問題が話題です。 A:ドイツでは17年、国の倫理委員会がガイドラインを公表しています。要するに無作為が正解。プログラムは被害者を選択してはいけない、と。ドイツの自動車メーカーはそれに則ってプログラミングするのでしょうね。 一方、運転手、乗員が第一だという考え方を唱える人もいます。運転手・乗員優先の方がメーカーは安心して造れます。自分が死ぬかもしれない車を誰が買うのでしょうということになりますから。世界的には、運転手・乗員優先のクルマが売れていくのでしょう。 Q:日本の議論の状況をどう見ていますか。 A:日本の自動車メーカーはまだ態度を表明していません。 日本ではトロッコ問題になるといつも議論がストップする。外国の議論を紹介してそれで終わっちゃうのです。トロッコ問題は避けて通れないが、「そういう場面を作ってはいけないんだ」というのが今の状況だと思います』、「日本では・・・トロッコ問題は避けて通れないが、「そういう場面を作ってはいけないんだ」というのが今の状況」、いくら技術的に安全にしても、やはり想定外の事故は避けられないとして、正面から議論しておくべきだろう。
・『自動運転社会への過渡期で損保会社は倫理観を問われる【中林真理子所長(保険分野)】  Q:自動運転ではトロッコ問題が話題です。 A:私は日本経営倫理学会に入っているのですが、自動運転をめぐる問題として出て来ていますね。さまざまな場所でここ2、3年、特に話題に上ってきた印象です。トロッコ問題という哲学の命題自体は以前からありました。でもこれまでは現実味がありませんでした。AIの開発進化に伴い、自動運転という身近な話題が出てきました。米ウーバー・テクノロジーズが自動運転車両で死亡事故を起こしたりと。そこで改めてどう考えればいいのかという議論が起きています。 Q:結論は出るのでしょうか。 A:日本ではまだ、国もメーカーも誰も結論を出していません。たぶん結論は出ないです。哲学は「これが正解」という世界ではありません。「議論する」ということ自体が恐らく正解なのではないでしょうか。 超一流の学者たちの団体、日本学術会議でも取り上げられています。9月に傍聴しましたが、まだ、「新しいトロッコ問題が出てきた」「どう議論したらいいのか」という取っ掛かりの段階です。何かしらの方向性が出れば、国の決定にも影響する可能性があります。 Q:損保会社の自動車保険は自動運転時代の到来でどうなるのでしょうか。 A:自動運転社会では事故は減ると言われています。それでもたぶん事故自体はなくならない。リスクがある限りなんらかの保険は必要です。 損保各社は倫理観が問われています。誰も想定していないような事故が起きた時、「約款にないから」と断ち切っていいのか。例えば大地震の際には人道上、お見舞金などの形で例外的に支払う対応をしています。自動運転の過渡期はそんなことが多いのではないでしょうか。 損保会社の自動車メーカーなどへの求償権もクローズアップされそうです。これまでは製造物責任の立証困難などから損保会社がかぶるケースが多く、でも再保険が掛かっているので大きな問題にはなりませんでした。自動運転時代ではシステムの欠陥が明確な場合、損保会社が求償権行使する可能性があります。そうすると行使先は自動車メーカーなのかセンサーメーカーなのかと、わけが分からなくなります。この辺りはまだ議論が始まったばかりです。 一つの解決案として、明治大学自動運転社会総合研究所監修『自動運転と社会変革――法と保険』で紹介している模擬裁判では、利害関係者による仲裁コンソーシアムの設立を提案しています。まだ業界でその方向に進んでいるわけではありません。責任割合とか出資割合とか議論は大変だろうと思います』、「トロッコ問題・・・日本ではまだ、国もメーカーも誰も結論を出していません。たぶん結論は出ないです。哲学は「これが正解」という世界ではありません。「議論する」ということ自体が恐らく正解なのではないでしょうか」、やはり難しい問題のようだ。

第三に、フリージャーナリストの西田 宗千佳氏が本年1月8日付け文春オンラインに掲載した「なぜトヨタは富士にイチから「自動運転実験都市」を作らなければならないのか 豊田章男社長がラスベガスで語った真意」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/24521
・『米・ラスベガスでは、1月7日から10日の4日間、世界最大のテクノロジー関連展示会である「CES 2020」が開催される。開催前日の1月6日(現地時間)、トヨタは記者会見を開き、新しい施策を発表した。 ここ数年、CESでは自動運転などが大きなテーマになっている。だが、トヨタが発表したのは自動運転技術でも、自動運転車でもなく、「街」だった。自動車メーカーであるトヨタがなぜ街づくりを発表したのか? その理由には、自動運転などをめぐるひとつの本質が存在する』、「トヨタがなぜ街づくりを発表したのか?」、その答えが知りたいところだ。
・『富士の裾野に「自動運転のための街」を作る  「これは私の『フィールド・オブ・ドリームス』だ」 記者会見に登壇した、トヨタの豊田章男社長はそう記者に語りかけた。 トヨタが作る街の名前は「Woven City」。トヨタが織機製造からスタートしたことをうけて「織物(Woven)」の名を冠した。街の場所は東富士。2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本・東富士工場(静岡県裾野市)の跡地を使い、最終的には約70.8万平方メートルの土地を使う。 Woven Cityの特徴は、電気で動く自動運転車の利用が前提となっていることだ。トヨタがソフトバンクなどと組んで開発中の自動運転車「e-Palette」を活用し、「速度の速い自動運転車が走る道」「電動キックボードや人が一緒に動くプロムナード」「歩行者専用の歩道」という3種類の道が入り交じるような構造になるという。基本的にはゼロエミッション・カーボンニュートラルな街をめざし、建物も木製が基本。屋根には太陽電池が設けられる。生活インフラとしての電線や燃料電池による発電施設などは地下に設置され、外からは見えない。 デザインを担当するのは、建築家ビャルケ・インゲルスが率いるBjarke Ingels Group(BIG)。イーロン・マスクとともに、火星移住計画用の都市設計やチューブ状の高速移動システム「ハイパーループ」を検討したことでも知られる。富士の裾野に未来的な都市を作るなら、うってつけのパートナーといえる』、「東富士工場の跡地」利用とは上手い手だ。
・『スマートシティを作る理由とは  トヨタは2021年からWoven Cityの建設に着工。当初はトヨタ社員や研究者を中心に、2000名が暮らす街の開発を目指す。 こうした都市づくりは俗に「スマートシティ」と呼ばれる。取り組みとしてはそこまで珍しいものではない。地方自治体などが取り組む例が多いのだが、日本でもパナソニックが神奈川県藤沢市・横浜市綱島、大阪府吹田市などと共同で進めている。 ただ、それらとトヨタのWoven Cityでは、性質が異なる部分がある。トヨタが自社の敷地内に、まず自社関係者を集めて作る「実験都市」でもある、ということだ。パートナーは「オープンに募る」(豊田社長)とはいうものの、トヨタの敷地でトヨタの技術とアイデアを使って作っていくため、スマートシティよりもトヨタ1社の考えが強く押し出されている。 また、既存の都市をスマート化するのではなく、1から作るため、より大胆に「自動運転車があることを前提とした街」を作り上げることができる。非常に夢のある壮大な計画だ。 しかし、夢がある壮大な計画であるがゆえに、具体性に欠ける部分がある。2021年着工とされているが、いつまでにどういう計画で作っていくのか、という情報は公開されていない。かかる予算も、技術的な課題に対する答えも示されていない。なにより、この街を作ったからといって、トヨタが直接的に儲かる仕組みにはなっていない』、「1から作るため、より大胆に「自動運転車があることを前提とした街」を作り上げることができる」、早く具体的な「計画」を知りたいものだ。
・『自動車の未来を「自ら作ってみせる」  それでは、なぜトヨタは、このような街を作るのだろうか? 答えは、豊田社長の、次の言葉にある。 「我々は誰も、自動車の未来を占う水晶玉はもっていない」 自動運転が自動車の未来であることは、関係者の多くが認めることだ。だが、「実際に自動運転車が多数、あたりまえのように走っている街」がどのようになるのか、ちゃんと予測できている人はいない。やってみなければわからない部分が多すぎる。 トヨタは、2018年のCESで「e-Palette」という構想を発表した。自動運転車を作り、それをカーシェアリングや物流などに「サービス」として提供することで、単に自動車を売るのではない、「モビリティ(移動)をサービスとして提供する企業」への脱皮を宣言した。その後、ソフトバンクと組んで「モネ・テクノロジーズ」を設立、今年2020年には、e-Paletteの実車を街中で走らせる計画を持っている。 しかし、現状では、e-Paletteを実験として走らせるのがせいぜい。自動運転車を理想的に運行するには、街中にセンサーを張り巡らせて、人と車の情報を常に収集・活用する仕組みの存在が望ましい。自動車を売るのではなくサービスを売る、という新しいビジネスモデルを実現するには、まだまだハードルが多い。 こんな状況では、トヨタのビジョンを理解してもらうのも難しいし、ビジネスを具体化するための研究開発や試験も難しい。 だからこそトヨタは、「サービスとしての自動運転車が存在しうる街」を作ってしまうことで、その姿や可能性を、誰の目にもはっきりと見せようとしているのだ。 重要なのは、ここまで大胆なビジョンを、トヨタのような大企業がトップダウンで打ち出せているということだ。イーロン・マスクが同じことを言い出しても驚かないが、豊田章男社長が打ち出している、というのが面白い。具体性や実現性には疑問点が多いが、トヨタには、そうした懸念を「実証」で払拭していって欲しい。』、「「サービスとしての自動運転車が存在しうる街」を作ってしまうことで、その姿や可能性を、誰の目にもはっきりと見せようとしている」、狙いは理解できたが、「そうした懸念を「実証」で払拭」できるのかを注目したい。
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