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ブラック企業(その11)(ブラック企業大賞 2年連続で「三菱電機」…電通とセブンが「特別賞」同時受賞、ワタミ「ホワイト企業化」報道のウラで…渡邉美樹の「ヒドい勘違い」 本当にこれで脱ブラックと言えるのか、劣悪なブラック企業で働き続ける人がいる納得の理由 待遇が悪いほど やる気が上がる) [企業経営]

ブラック企業については、昨年6月19日に取上げた。久しぶりの今日は、(その11)(ブラック企業大賞 2年連続で「三菱電機」…電通とセブンが「特別賞」同時受賞、ワタミ「ホワイト企業化」報道のウラで…渡邉美樹の「ヒドい勘違い」 本当にこれで脱ブラックと言えるのか、劣悪なブラック企業で働き続ける人がいる納得の理由 待遇が悪いほど やる気が上がる)である。なお、3番目の記事は大変参考になるので、必読である。

先ずは、昨年12月23日付け弁護士ドットコム「ブラック企業大賞、2年連続で「三菱電機」…電通とセブンが「特別賞」同時受賞」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_5/n_10572/
・『「ブラック企業大賞2019」の発表・授賞式が12月23日、東京都内でおこなわれて、三菱電機(メルコセミコンダクタエンジニアリング)が、史上初めて2年連続で大賞に選ばれた。長時間労働による40代社員の自殺が労災認定されるなどしていた。 ウェブサイトや会場での投票数による「ウェブ投票賞」は、ネット大手の楽天(ウェブサイト:1万303票、会場:1票)が選ばれた。楽天は、男性社員が会議中に上司から暴行を受けて、労災認定される事件が発生していた。 「特別賞」は、過去に大賞を受賞したことがある電通とセブン‐イレブン・ジャパンの2社が受賞した。電通は、36協定違反で労基署から是正勧告を受けるなどした。セブン‐イレブン・ジャパンは、フランチャイズ従業員に対する賃金不払いが発覚していた。 「#MeToo賞」は、長崎市だった。市幹部が2007年7月、女性記者に対して、性暴力をふるう事件が起きた。女性がことし4月、市を相手取って、損害賠償をもとめて提訴した。 過去に大賞を受賞して、今回もノミネートされたのは、セブンイレブンジャパン(2015年)、電通(2016年)、三菱電機(2018年)の3社』、「三菱電機」の「2年連続で大賞」受賞、「電通とセブン‐イレブン・ジャパン」の「「特別賞」受賞は、いずれも当然だろう。
・『ことしは、8社・1自治体が「ノミネート」されていた  ことしは、KDDI、セブン-イレブン・ジャパン、電通、ロピア、長崎市、トヨタ自動車、三菱電機、吉本興業、楽天がノミネートされていた(8社・1自治体)。 ノミネートの理由は、ブラック企業大賞のウェブページhttp://blackcorpaward.blogspot.com/)に掲載されている』、「ウェブページ」では、「トヨタ自動車」はパワハラで社員が自殺。「吉本興業」は過労死ラインを超える残業、タレントとの所属契約なし、パワハラなどが問題視。
・『「ブラック企業」の定義  ブラック企業大賞は、弁護士やジャーナリストでつくる実行委員会が、労働環境を改善する活動として、2012年から開催されており、ことしで8回目だ。同委員会によるブラック企業の定義は次のようなものだ。 (1)労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業 (2)パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む) 上記の定義にあたる企業のうち、裁判において企業側の非が確定した案件や、行政処分がなされた企業など、広く社会的に明白に問題があるとされた企業がノミネートされている』、「実行委員会」の「定義」は妥当なようだ。本年はどんな企業が「ノミネート」されるのだろう。

次に、フードビジネスコンサルタントの永田 雅乙氏が本年1月31日付け現代ビジネスに掲載した「ワタミ「ホワイト企業化」報道のウラで…渡邉美樹の「ヒドい勘違い」 本当にこれで脱ブラックと言えるのか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70132
・『驚きの「ホワイト企業大賞」受賞  2020年1月19日、居酒屋企業のワタミが「ホワイト企業大賞特別賞」を受賞したというニュースが報じられた。読者の皆様の中にも「えっ!?あのワタミがホワイト企業?」と驚いた方も多いのではないだろうか。 まだまだ世間のイメージには「ワタミ=ブラック企業」というイメージがついている。外食産業専門のコンサルタントである筆者は、ワタミが改善に向けて努力していることは知っていたものの、正直このニュースには驚いた。 そして同じ外食産業に関わる人間として「嬉しさ」と「疑問」が湧いてきた。ワタミは本当に「ホワイト企業」になったのだろうか――。 本題に入る前にまず、今日に至るまでのワタミの変遷について、簡単に振り返りたいと思う。 ワタミは、1984年に居酒屋ブランド「つぼ八」のFC(フランチャイズ)加盟により事業を開始。1992年、笹塚に和民1号店をオープンすると、毎年売上高・営業利益・経常利益すべて2桁という驚異のペースで成長を遂げた。 2000年に東証一部上場を果たすと、「外食産業の風雲児」、「平成のジャパニーズドリームを体現」と注目を浴びるように。海外出店や介護事業、弁当宅配事業などにも参入し、連結売上高1000億円企業となる。 そんな絶頂期を迎えていたワタミだったが、2008年頃を機に、暗い影を落とすこととなる。度重なる長時間労働、法令違反の報道を受けて、世間から向けられた「ブラック企業」の声だ』、「ホワイト企業大賞」なるものの信頼性はどうなのだろうか。
・『渡邉美樹氏の影響力は今も変わらず  ワタミ新入社員の自殺、アルバイトの残業時間切り捨て、告発したアルバイトに対する報復的解雇……といった数々の報道。さらに、創業者・渡邉美樹氏の「鼻血を出そうが、ぶっ倒れようが、とにかく1週間全力でやらせる」といった“ブラック”な発言も公になったことで、「ワタミ=ブラック企業」というイメージは浸透してしまう。 それを象徴するように、2013年には不名誉な「ブラック企業大賞」を受賞。さらに、識者ではない一般参加者によるウェブ投票から実に70%の票を獲得し、「一般投票賞」もW受賞してしまった。 と、ここまで大きな要点に絞り込み時系列で振り返ったが、やはりどうしても渡邉氏(現・同社代表取締役会長)に話題と興味が集中してしまう。そう、「ワタミ=渡邉美樹氏」なのである。 渡邉氏は2013年に政界進出と取締役辞任、そして2019年に政界引退と代表取締役復帰を果たした。この間のワタミの経営状況を見ると、2015年から赤字に転落し、2017年3月期に黒字復活、そして18年、19年と再成長期(経営再建できた)に入っている。 ここ最近の業績回復は、様々な努力があったことは間違いないし、筆者は特に、2015年に代表取締役に就任した清水邦晃氏体制を評価している。 とはいえ、渡邉氏が2013年での取締役辞任以降も現在に至るまで、筆頭株主は依然として有限会社アレーテー(渡邉美樹氏100%出資の会社)であり、渡邉氏の影響力は強い。その中で、グループ企業の整理と新規業態開発と展開業態の明確化を推進されている。 では、かつてブラック企業批判に晒された当時と変わらず、渡邉氏の強い影響下にありながら、ワタミはいかにして今回、「ホワイト企業大賞特別賞」を受賞するに至ったのだろうか』、「渡邉氏」はかつて教育問題で活発に発言していたが、まさに「偽善者」の典型だった。
・『「ホワイト化」報道への違和感  本題に戻ろう。今回「ホワイト企業大賞特別賞」を受賞したのは、正確にはワタミグループ内の「三代目 鳥メロ」である。 同ブランドは2016年「わたみん家」などの既存店舗を業態転換して誕生。秘伝のぷるぷるダレの焼鳥・菜種油で揚げた3種ダレの串揚げ・みちのく清流若鶏のモモ1本焼きの3大柱を“三代目”と表現し、「鳥料理でメロメロにしたい!」との思いから誕生したブランドだ。現在、全国に約150店舗を擁している。 ワタミグループは前述のように「ブラック企業」イメージがついて以降、様々なブランドを創出し、イメージ刷新を図っていた。そのため、「ワタミ」を冠にするブランドは激減し、「ミライザカ」「TGIフライデーズ」、そして今回の「三代目鳥メロ」が現在のワタミグループを牽引している。 さて、その三代目鳥メロが受賞した「ホワイト企業大賞特別賞」だが、そもそも世間の認知度は果たしてどれほどのものなのだろうか。 筆者はこのホワイト企業大賞について、存在は知っていた。そして従業員満足度(ES)が高く、労働環境が素晴らしく、そんな模範となる企業が表彰されていると思っていた。だが、この記事を執筆するにあたり調べてみると、ちょっと様子が違うようだ。 ホワイト企業大賞は2014年に創設。そこでは「ホワイト企業とは、社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている企業」と定義されている。エントリー企業で働く人からのアンケート調査から“ホワイト指数”を数値化し、その後個別に訪問やインタビューをした上で、賞が決められるという』、「ホワイト企業大賞」は正当性が疑わしそうだ。
・『誤解を招いた「ホワイト企業大賞」受賞  「三代目鳥メロ」は、ホワイト企業大賞の特別賞「働く一人ひとりのチャレンジ精神賞」という賞を受賞している。受賞理由は「創業当時からのビジョナリーな哲学を守りつつも、現場の一人ひとりが新しい組織になっていこうとチャレンジしている」というものだ。 ここまで読むと筆者もなるほどと思えるのだが、もう少し深堀りすると、今回のメディアで報じられた「ホワイト企業大賞特別賞受賞」とは違った印象になる。 同賞は10万円のエントリー費用を払うと審査対象となる。そして今回エントリーした団体は30数団体、そして何らかの賞を受賞した団体が31団体なのである。 大賞2団体、特別賞・推進賞29団体。無受賞の団体は数団体、その理由はアンケート回収やその点数が低いとされている。そして参加団体は受賞・無受賞関わらず「ホワイト企業フェロー」という永遠の資格が与えられる。 そう、同賞の受賞は決して「ホワイト企業」であるお墨付きではないのだ。ホワイト企業大賞の主催者も実際、「ホワイト企業というお墨付きを与えるものではなく、ホワイト企業を目指す企業の健康診断のようなもの」と答えている。 つまり、より良い企業を増やすために、ホワイト企業を目指す企業を応援する意味の賞、という代物なのだ。それにもかかわらず、ブラック企業の象徴であったワタミが「ホワイト企業大賞特別賞受賞」という字面のインパクトからマスメディアでも報道されたため、誤解が生じてしまっているようだ』、これでは全くの”お手盛りの賞”だ。食品分野で悪名高いモンドセレクションと似ている。これは、ベルギー企業が、食品分野を中心とした製品の技術的水準を審査するもの。”相対評価ではなく絶対評価を用いているため、定められた技術水準を満たした商品には全て認証が与えられる。モンドセレクションは国際的な知名度はないが、日本国内での知名度は高い。2008年の日経MJによると、審査対象品の5割が日本からの出品であり、うち8割が入賞している。2017年は、2965製品中420製品が最高金賞、1368製品が金賞と過半数が金賞以上に認証されており、90%以上の2691製品が銅賞以上に認証されている”(Wikipedia)。日本のテレビCMでも馴染みのものだが、”お手盛りの賞”の典型だ。
・『根本的に何も変わっていない  筆者が今回の記事執筆に至ったポイントは、受賞の際の渡邉美樹氏のコメントにある。 「ワタミの離職率は2015年21.6%だったのが、2018年8.5%と改善され外食業界平均よりもかなり低い。残業時間管理、有給休暇の消化の管理が変わった。以前は働きすぎの部分が生まれた。ただ今は労働時間というのは国が定めているというのが前提。それを守った上で楽しく仕事しようよ、と。以前は厳密に守っていなかった。今は火曜日・木曜日には社内に帰宅を促す放送が流れる。以前は好きなだけ仕事をしようという部分がありましたが変わりました。そこが厳守されていると思います」 筆者はこの一連のコメントを見て、「この人は根本的に何も変わっていない」「ホワイト企業が何かも解っていない」と憤りを感じてしまった。 大切な社員が自殺までし、多くの社員たちがブラック労働に苦しんだ日々に対しての反省と学びを感じられないのだ。また、未だに渡邉氏自身に経営の責任があったことを認めていないのだとも感じたのである。 ただ、同社のホワイト企業大賞にエントリーした担当者のコメントには“一筋の光”もあった。 「ワタミは労働環境の改善を最優先事項とし、2014年には外部有識者によるコンプライアンス委員会を設置、今回のホワイト企業大賞エントリーにつきましても外部基準においての自社組織の状況把握をするためです。今後も社員の声に耳を傾け、ホワイト企業大賞の定義にある『社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている企業』を目指します」 という担当者のコメントには、筆者も共感を覚えた』、「渡邉氏」が、「「この人は根本的に何も変わっていない」「ホワイト企業が何かも解っていない」と憤りを感じてしまった」、その通りだろう。
・『ワタミはまだホワイト企業ではない  筆者は1990年代から外食産業専門コンサルタントとして活動していく中で、渡邉美樹氏に尊敬の念を持ち、学ばせていただいたことからついつい感情移入してしまう。 そして今回の「渡邉美樹氏の代表取締役会長復帰」「ホワイト企業大賞特別賞受賞」のニュースにも様々な感情が湧いてきた。ブラック企業イメージからの脱却への並々ならぬ企業努力も素直に認める一方で、絶大な影響力を持つ創業者・渡邉氏の復帰はどのように影響を及ぼすのか。 おそらくかつてより30%以上も低くなった売上高を再度急成長させる部分での渡邉氏のモチベーションは高い。そして、それを見てみたい気持ちもある。 ただ時代は変わった。働き手となる社員への感謝の気持ちと幸せを願い、寄り添える経営者でなければならない。外食産業の仕事は「お客様の笑顔に、幸せにする」こと、そして、その現場を支える“身内”を何より大切にできない経営者には誰もついてこないのだ。 ワタミの現状は決して「ブラック企業」ではない。だが、お世辞にも世間が考える「ホワイト企業」でもない。しかし「ホワイト企業」を目指し、進んでいることは間違いない。その点では同社の将来に期待が持てる』、現在のコロナウィルス騒動で、足元は苦戦しているだろうが、騒動が収まったあとに業績は回復してゆくかを注目したい。

第三に、脳科学者、医学博士、認知科学者の中野 信子氏が3月6日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「劣悪なブラック企業で働き続ける人がいる納得の理由 待遇が悪いほど、やる気が上がる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/33175
・『劣悪な待遇で働かされる「ブラック企業」が成り立ってしまうのはなぜか。脳科学者の中野信子氏は、「人の脳は“嫌なことの見返りとして報酬がある”と刷り込まれている。そのため、報酬そのものの存在がタスクを嫌なこととして認知させてしまう」という——。※本稿は、中野信子『空気を読む脳』(講談社+α新書)の一部を抜粋、見出しなど再編集したものです』、面白そうだ。
・『素晴らしいごほうびのある実験  子どもにやる気を出させたいとき、部下に自発的に頑張ってほしいとき、自身を鼓舞したいとき等々、自分も含めて誰かのモチベーションを上げたい、という場面には頻繁に遭遇します。 多くの人はそんなとき、目に見える報酬を用意して、モチベーションアップにつなげようとするのではないでしょうか? たとえば、子どもには「成績が上がれば欲しいものを買ってあげよう」と伝えてみたり、部下には昇給や昇進を約束したり、自分自身にも「自分へのごほうび」を期して何ごとかを頑張ろうとしたりする、などです。 しかし、この方法は本当に良い方法と言えるのでしょうか? この問題について、実験的に分析した人たちがいます。スタンフォード大学の心理学者レッパーの研究グループです。 実験は、子どもたちに絵を好きになってもらうにはどうしたらよいか、というテーマのもとに立案されました。子どもたちをふたつのグループに分け、片方のグループには「良く描けた絵には素晴らしい金メダルが与えられる」ということを前もって知らせておきます。もう一方のグループには、メダルが与えられるという話は一切しないでおきます』、こうした興味深い研究はやはり米国が本場のようだ。
・『「ごほうびがある」=「その課題は嫌なこと」なのか  この操作のしばらくあとに、子どもたちのグループそれぞれに、実際にクレヨンと紙が渡されます。そして、子どもたちがどれだけ絵に取り組んでいたか、取り組んだ時間の総計と課題に傾ける熱心さを観察します。 すると、メダルを与えると伝えた子どもたちのグループは、メダルのことを何も知らなかった子どもたちよりも、ずっと課題に取り組む時間が少なかったのです。あたかも報酬を与えることそのものが、子どもたちを絵から遠ざけることになってしまったかのような結果でした。 絵を好きになってもらうために、良かれと思ってごほうびを約束したことが、かえって逆効果になってしまったのです。グループを変えて何度実験してもこの結果は変わらず、データには再現性がありました。 なぜ、このような現象が生じてしまったのでしょうか? この実験を行った学者たちは次のように述べています。 子どもは、「大人が子どもに『ごほうび』の話をするときは、必ず『嫌なこと』をさせるときだ」というスキーマ(構造)をそれまでの経験の中から学習してきており、報酬を与えられた子どもは「大人が『ごほうび』の話をしてきたということは『絵を描くこと』=『嫌なこと』なんだ」と、報酬そのものの存在がタスクを嫌なこととして認知させてしまう要因になると指摘したのです』、結果の意外さに驚かされたが、「報酬を与えられた子どもは「大人が『ごほうび』の話をしてきたということは『絵を描くこと』=『嫌なこと』なんだ」と、報酬そのものの存在がタスクを嫌なこととして認知させてしまう要因になる」、説得力ある指摘だ。
・『報酬とモチベーションとの関係性  これは、子どもに限った話ではありません。別の研究者による実験では、大人の被験者を対象に、公園でのごみ拾いという課題に楽しさをどのくらい感じたか、という心理的な尺度が測定されています。 「目的は公園の美化推進を効率的に行うにはどうすればよいかの調査です」と被験者には伝え、絵を描かせる実験と同様に、この実験でも被験者を2グループに分け、片方のグループには報酬として多めの金額を提示しました。もう一方のグループにはごくわずかな報酬額を提示しました。そして作業終了後には全員に、ごみ拾いがどのくらい楽しかったかを10点満点で採点してもらいました。 すると、謝礼として多めの金額を提示されたグループでは、楽しさの度合いの平均値は10点満点中2点となったのに対し、ごくわずかな報酬額を提示されたグループでは、平均値が8.5点だったのです。 つまり、何かをさせたいと考えて報酬を高くすると、かえってそのことが楽しさや課題へのモチベーションを奪ってしまうということが明らかになったのです。 公園のごみ拾いで高い報酬を提示された人たちは、ごほうびをもらえると言われた子どもたちと同じように「高い報酬をもらえるからには、この仕事はきつい、嫌な仕事に違いない」と考え、楽しさが激減してしまったのです。 逆に、ごくわずかな報酬を提示された人たちには認知的不協和が生じ、「わずかな金額でも自分が一生懸命になっているということは、この課題は楽しい課題に違いない」と自分で自分に言い聞かせるようになったと考えられます』、「大人」でも、「何かをさせたいと考えて報酬を高くすると、かえってそのことが楽しさや課題へのモチベーションを奪ってしまう」、というのは常識が如何にあてにならないかを示しているようだ。
・『ブラック企業でも辞めないのは、低い報酬だから  類似の実験は課題を変えて何度も再現性が確認されていますが、報酬額や仕事の内容によらず、低い報酬を約束された人は高い報酬の人よりも常に頑張ってしまい、課題の成績も良く、しかも圧倒的に楽しいと感じているという傾向が見られます。 この心理が、ブラック企業に利用されているのかもしれません。酷使されても辞めないケースの中には、低い報酬だからという要因も考えられます。 私自身も疑問に思い、日本テレビ系列の番組『世界一受けたい授業』の制作スタッフに同様の実験をしてもらいました(2018年5月5日放送)。すると、やはり報酬額の少ないほうがその課題を楽しく感じる、という結果に変わりはありませんでした。 人にやる気を起こさせようとするとき、多額の報酬を与えることはほとんど意味がないということがこれでわかります。短期的には馬力を出すための励みになるかもしれませんが、長期的に見ればかえって仕事に対する意欲を失わせる原因になってしまう可能性があります。 人をやる気にさせるのに効果的なのは、その仕事自体が「やりがい」があり、素晴らしいものだとくり返し伝え続けることと、「『思いがけない』『小さな』プレゼント」です。予測される報酬ではなく気まぐれに与えられること、しかも少額であることが重要です。多額のものでは、せっかく醸成されたその人のやる気が失われてしまいかねません』、最後の部分は大いに考えさせられる。
・『人は「承認欲求を満たす言葉」でやる気が出る  もともと仕事の内容が嫌なものであることが明らかな場合には、現実的な額の報酬を与え、その後、「あなたのような人でなければできない仕事です」などの心理的報酬、つまり承認欲求を満たす言葉を上手に使っていくのが効果的です。 逆を言えば今、給料は少ないし休みもないけれどやりがいがある、という状態にあるとの自覚を持っている人は、一度自分の状態が客観的に見てどうなのかを振り返ってみることが必要かもしれません。 しかし、「報酬を目当てにみんな仕事をしているし、昇給すればうれしいし、言葉よりも具体的な金額として自分の努力が認められるのは幸せなことじゃないか」と、多くの人は反論したくなるだろうと思います。たしかに、ある種の課題では、外的動機づけと呼ばれるわかりやすい報酬が生産性を上げるのに功を奏することがわかっています。 それでは、報酬を与えるのはどんな課題のときがよく、どんな課題のときには報酬を与えてはいけないのでしょうか?』、「もともと仕事の内容が嫌なものであることが明らかな場合には、現実的な額の報酬を与え、その後、「あなたのような人でなければできない仕事です」などの心理的報酬、つまり承認欲求を満たす言葉を上手に使っていくのが効果的です」、なるほど、その通りなのだろう。
・『モチベーションは「報酬」か「やりがい」か  この問いに答えを与えるのが、あまりにも有名な、ドゥンカーのロウソク問題です。私も以前、著書の中で触れたことがあります。 心理学者ドゥンカーが考案したこの実験では、次のような道具を使います。 ロウソク1本、マッチ1束、画鋲1箱。 実験中、被験者に対してひとつの課題が与えられます。ロウソクをコルクボードの壁に固定して、火をつけるというものです。ただしこの課題には条件があり、融けたロウが下のテーブルに落ちてはいけません。また、ロウソクを直接画鋲でコルクボードに固定することもできません(物理的にも難しいです)。 この問題の答えは、箱から画鋲をすべて取り出し、画鋲で箱をコルクボードに固定、そこにロウソクを立てて、マッチで火をつけるというものです。画鋲を入れてあった箱を道具として使えるかどうか、という創造性が求められる課題なのですが、今や有名になりすぎて、創造性を測るテストとしてはもはや使うことができないでしょう。 それはさておき、この課題の被験者をやはりふたつのグループに分けて、片方には多額の報酬を与え、もう一方にはやりがいのみを与えるという条件を設定します』、「画鋲を入れてあった箱を道具として使えるかどうか、という創造性が求められる課題」、私は恥ずかしながら、解けなかった。
・『単純な課題に対しては「報酬」がモチベーションになる  すると、予想どおり金銭的報酬を与えたほうがひらめくのに余計に時間がかかってしまい、やりがいのみを与えたグループのほうが平均して数分早くこの問題を解くことができたのです。この結果はおそらく多くのみなさんが想像したとおりです。 創造性を上げたいときには報酬を与えてはいけない、むしろ、やりがいを与えたほうが創造性が高くなる、ということがわかりました。類似の現象は多くの分野で実際に見られるのではないでしょうか。 さて、この問題には別のバージョンがあります。課題も条件も同じで、ただ画鋲が箱から出されている、という点だけが違うものです。画鋲が箱の中にあるか外にあるかだけで問題の難易度はまったく変わってきます。あらかじめ画鋲が箱の外にあれば、創造性やひらめきはまったく必要なく、課題はただ与えられた材料を組み立てるだけの単純作業になるからです。 では、そうなると実験の結果は変わってくるのでしょうか? 予想どおり、このバージョンでは、報酬を与えられたグループのほうが圧倒的に早く、この課題をやり遂げるという結果になりました。単純なルールとわかりやすいゴールの見えている短期的な課題に限れば、外的動機づけが有効だ、ということが改めて確認されたわけです。 ところで、私たちが経験してきて、子どもにも学習させようとしているのは、こうした単純な課題に対する応答の速さ、ではないでしょうか?』、「創造性を上げたいときには報酬を与えてはいけない、むしろ、やりがいを与えたほうが創造性が高くなる」、「単純なルールとわかりやすいゴールの見えている短期的な課題に限れば、外的動機づけが有効だ」、なるほど難しいものだ。
・『どうすれば創造性を伸ばせるのか  人的資源を大量に利用し、大量生産が利益に結びついた時代には、単純な課題をどれだけ早くこなすことができるか、が勝負でした。ゆえにそうした人材が求められ、報酬を上げることで生産性そのものもそれに比例して向上したのです。 しかし、現代はどうでしょうか? われわれやわれわれの子ども世代が取り組まなくてはならないのは、正解やゴールのない問題ばかりです。むしろ、単純作業はどんどん機械に勝てなくなっていくのですから、そんなところを鍛えてもまったくの無駄になってしまうであろうことが容易に予測できます。 人工知能の開発が進めば進むほど、報酬依存型の生産性向上のスキーマは崩壊していくでしょう。その時代にあって、どのようにしたら私たちは創造性を伸ばすことができるのでしょうか? ブレーメン国際大学の心理学者フェルスターは、創造性を伸ばすには異端的なものの存在を露わにする現代美術の絵画を眺めると効果があるのではないかと考え、2005年にある実験を行いました。 特別に印刷された2枚の絵を用意し、被験者をどちらか1枚の前に座らせます。そして、レンガひとつの使い方をできるだけたくさん考えるといった標準的な創造力テストをやってもらいます』、結果はどうなのだろう。
・『人は「暗示」に影響される  この絵はいずれも1メートル四方であり、12個の十字が黄緑色の背景の中に描かれています。片方の絵の十字はすべて濃いグリーン、もう片方の絵の十字はひとつだけが黄色であとはすべて濃いグリーンでした。濃いグリーンの十字の中にひとつだけ黄色い十字があれば、それはほかの十字からは外れた異端的な何かを示すものと無意識的に被験者に受け止められ、型破りで創造的な思考を促すのではないか、とフェルスターは考えたのです。 すると、フェルスターの思惑どおり、ひとつだけが黄色い十字の描かれている絵の前に座った被験者のほうが、有意にレンガの使い方をたくさん考えることができたのです。また、心理学の専門家は、黄色い十字のある絵の前に座った被験者のほうがより創造的な使い方を考えた、と評価しました。 子どもの創造性を高めたい、社員の創造力をアップしたいと考えるなら、今すぐに異端的な何かを示唆するアートを取り入れるべきだと言えるでしょう。 フェルスターのこの実験は、1998年にナイメーヘン大学のダイクステルホイスとニッペンベルクが行った実験に基づいています。この研究は、暗示効果(プライミング効果)により、人がその暗示に影響される、というものです』、「子どもの創造性を高めたい、社員の創造力をアップしたいと考えるなら、今すぐに異端的な何かを示唆するアートを取り入れるべき」、日本の組織が「異端」を排除しがちなのは、創造力にはマイナスのようだ。
・『常識が創造性を邪魔しているかもしれない  たとえば、パソコンの壁紙に紙幣の画像を使っていると、人はエゴイスティックに振る舞うようになり、寄付を渋ったり、他者との交流を深めようとしなくなったりします。また、ほんの少しだけ石鹼のにおいをつけた部屋にいると人はそれまでよりきれい好きになったり、会議でテーブルにブリーフケースを置くと急に競争意識が増す、ということも知られています。 フェルスターは絵の実験をする前にこんな実験をしています。 過激で反社会性の高い技術者と保守的な技術者の、行動や生き方、外見について短い文章でまとめてもらい、その後に創造力テストを行いました。すると、過激で反社会性の高い技術者について考えた被験者のほうが、はるかに創造性が高くなっていたのです。 私たちの創造性は、常識や、社会に合わせなければという思いに無意識的に縛られているのかもしれません。遺伝的に社会性が高くなりがちな素因を持つ日本人は、自分の創造性を発揮する前に、社会の一員であることに喜びを感じることが多くなりがちです。 ただ、ひとりになれる場所や、社会性を考えなくてもすむフィールドでなら、その創造性を十二分に発揮できているという現実もあります。時には本家ノーベル賞以上に創造性が求められるイグノーベル賞ですが、その受賞者には日本人が非常に多く、13年連続で受賞するなど活躍が光っています。 肩の力を抜いて個人が自由な創造性を発揮できる分野だからこその結果である、と言えるでしょう。注目された結果、むやみに研究費などが乱発されて、クールジャパンのような大惨事にならないかだけが個人的には心配です』、「私たちの創造性は、常識や、社会に合わせなければという思いに無意識的に縛られているのかもしれません。遺伝的に社会性が高くなりがちな素因を持つ日本人は、自分の創造性を発揮する前に、社会の一員であることに喜びを感じることが多くなりがちです。 ただ、ひとりになれる場所や、社会性を考えなくてもすむフィールドでなら、その創造性を十二分に発揮できているという現実もあります」、会社のオフィスも、大部屋スタイルではなく、欧米のような個室スタイル(管理職以上)にした方が、「創造性」「発揮」にはいいのかも知れない。
タグ:国際的な知名度はないが、日本国内での知名度は高い モンドセレクション 「ホワイト化」報道への違和感 2008年頃を機に、暗い影を落とすこととなる。度重なる長時間労働、法令違反の報道を受けて、世間から向けられた「ブラック企業」の声だ PRESIDENT ONLINE 大切な社員が自殺までし、多くの社員たちがブラック労働に苦しんだ日々に対しての反省と学びを感じられない 驚きの「ホワイト企業大賞」受賞 人をやる気にさせるのに効果的なのは、その仕事自体が「やりがい」があり、素晴らしいものだとくり返し伝え続けることと、「『思いがけない』『小さな』プレゼント」です。予測される報酬ではなく気まぐれに与えられること、しかも少額であることが重要です。多額のものでは、せっかく醸成されたその人のやる気が失われてしまいかねません 報酬を与えられた子どもは「大人が『ごほうび』の話をしてきたということは『絵を描くこと』=『嫌なこと』なんだ」と、報酬そのものの存在がタスクを嫌なこととして認知させてしまう要因になる 「ブラック企業大賞、2年連続で「三菱電機」…電通とセブンが「特別賞」同時受賞」 三菱電機 モチベーションは「報酬」か「やりがい」か どうすれば創造性を伸ばせるのか 永田 雅乙 ブラック企業でも辞めないのは、低い報酬だから 誤解を招いた「ホワイト企業大賞」受賞 楽天 渡邉美樹氏の影響力は今も変わらず ワタミの離職率は2015年21.6%だったのが、2018年8.5%と改善され外食業界平均よりもかなり低い。残業時間管理、有給休暇の消化の管理が変わった 中野 信子 2019年に政界引退と代表取締役復帰 『空気を読む脳』(講談社+α新書) ワタミ=渡邉美樹氏 「ブラック企業」の定義 「#MeToo賞」は、長崎市 もともと仕事の内容が嫌なものであることが明らかな場合には、現実的な額の報酬を与え、その後、「あなたのような人でなければできない仕事です」などの心理的報酬、つまり承認欲求を満たす言葉を上手に使っていくのが効果的です 「ごほうびがある」=「その課題は嫌なこと」なのか 根本的に何も変わっていない 「ホワイト企業」を目指し、進んでいることは間違いない 史上初めて2年連続で大賞に ブラック企業 創造性を上げたいときには報酬を与えてはいけない、むしろ、やりがいを与えたほうが創造性が高くなる ウェブ投票賞 弁護士ドットコム 「三代目 鳥メロ」 子どもの創造性を高めたい、社員の創造力をアップしたいと考えるなら、今すぐに異端的な何かを示唆するアートを取り入れるべき 同賞は10万円のエントリー費用を払うと審査対象となる。そして今回エントリーした団体は30数団体、そして何らかの賞を受賞した団体が31団体なのである 「ワタミ」を冠にするブランドは激減し、「ミライザカ」「TGIフライデーズ」、そして今回の「三代目鳥メロ」が現在のワタミグループを牽引 「劣悪なブラック企業で働き続ける人がいる納得の理由 待遇が悪いほど、やる気が上がる」 ワタミはまだホワイト企業ではない 審査対象品の5割が日本からの出品であり、うち8割が入賞 ことしは、8社・1自治体が「ノミネート」されていた 人の脳は“嫌なことの見返りとして報酬がある”と刷り込まれている。そのため、報酬そのものの存在がタスクを嫌なこととして認知させてしまう ブラック企業大賞2019 お手盛りの賞” 単純な課題に対しては「報酬」がモチベーションになる 何かをさせたいと考えて報酬を高くすると、かえってそのことが楽しさや課題へのモチベーションを奪ってしまう 私たちの創造性は、常識や、社会に合わせなければという思いに無意識的に縛られているのかもしれません。遺伝的に社会性が高くなりがちな素因を持つ日本人は、自分の創造性を発揮する前に、社会の一員であることに喜びを感じることが多くなりがちです。 ただ、ひとりになれる場所や、社会性を考えなくてもすむフィールドでなら、その創造性を十二分に発揮できているという現実もあります 単純なルールとわかりやすいゴールの見えている短期的な課題に限れば、外的動機づけが有効だ (その11)(ブラック企業大賞 2年連続で「三菱電機」…電通とセブンが「特別賞」同時受賞、ワタミ「ホワイト企業化」報道のウラで…渡邉美樹の「ヒドい勘違い」 本当にこれで脱ブラックと言えるのか、劣悪なブラック企業で働き続ける人がいる納得の理由 待遇が悪いほど やる気が上がる) 人は「承認欲求を満たす言葉」でやる気が出る 「特別賞」は、過去に大賞を受賞したことがある電通とセブン‐イレブン・ジャパンの2社が受賞 主催者も実際、「ホワイト企業というお墨付きを与えるものではなく、ホワイト企業を目指す企業の健康診断のようなもの」と答えている 人は「暗示」に影響される 素晴らしいごほうびのある実験 現代ビジネス 「ワタミ「ホワイト企業化」報道のウラで…渡邉美樹の「ヒドい勘違い」 報酬とモチベーションとの関係性 常識が創造性を邪魔しているかもしれない
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