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日本の政治情勢(その44)(東京五輪延期で“解散”機運急上昇 安倍首相が描く黒い思惑、安倍昭恵氏 花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた、「官邸官僚」の嘘と罪 ゲーム感覚で権力振るうモンスター、小田嶋氏:言葉を扱うはずの「政治家」というお仕事) [国内政治]

日本の政治情勢については、3月15日に取上げたばかりだが、事態の急転を受けた今日は、(その44)(東京五輪延期で“解散”機運急上昇 安倍首相が描く黒い思惑、安倍昭恵氏 花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた、「官邸官僚」の嘘と罪 ゲーム感覚で権力振るうモンスター、小田嶋氏:言葉を扱うはずの「政治家」というお仕事)である。

先ずは、3月25日付け日刊ゲンダイ「東京五輪延期で“解散”機運急上昇 安倍首相が描く黒い思惑」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/270924
・『東京五輪の1年延期が確実となったことで、早期解散説が急浮上している。 国民民主党の榛葉賀津也参院幹事長は24日、早期解散説について「新型コロナウイルスの対策が終わらないのに、夏や秋に選挙だと言うのはいかがなものか」と早期解散を牽制。公明党の山口那津男代表も、「解散権を持っている人は世界が危機にひんしている状況にいろいろと配慮して賢明に対応していただきたい」とクギを刺した。 与野党の幹部がブレーキをかけるのは、早期解散説が強まっている裏返しだ』、「早期解散説が急浮上」、やはり危機に悪乗りするのかといった印象だ。
・『都知事選との「W選挙」も浮上  浮上しているのは、7月5日の都知事選とのダブル選挙や、秋解散だ。早期解散は安倍首相にとっていいことだらけなのだという。 一番の利点は、早期解散なら確実に勝利できるということだ。コロナ対策で前面に出ている安倍首相の支持率は上昇している。逆に野党は出番がなく、与党にコロナ対策で協力せざるを得ない。 自民党内の不満も抑えられるという。 「安倍首相が新型コロナ対策で一斉休校要請を突然打ち出し、党内からは『唐突』『独断』と不満が上がった。森友事件、検事長定年延長問題もくすぶっています。でも、解散をブチ上げ『選挙モード』にすれば、公認権を持つ首相の求心力は一気に上昇する。不満を払拭するには十分です」(永田町関係者) 早期解散で勝利すれば、首相退任後もキングメーカーとして実権を握れるという計算もあるらしい。 「来年9月の総裁任期満了の直前に五輪の旗を振り、“有終の美”を飾りたいようです。選挙の圧勝と五輪を成功に導いた実績をひっさげ、総裁選で“子分”の岸田文雄政調会長にポストを禅譲すれば、退いた後も強い影響力を残せる。今後もキングメーカーとして君臨する絵を描いているようです」(官邸事情通) 退陣後も裏で糸を引くつもりだ』、「早期解散で勝利すれば、首相退任後もキングメーカーとして実権を握れるという計算も」、「首相退任後」もシャシャリ出てのは、御免こうむりたい。

次に、3月26日付けNEWSポストセブン「安倍昭恵氏、花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20200326_1550908.html
・『満開を迎えようという桜、そして笑顔の男女──その中心にいるのは、安倍首相の妻・昭恵夫人だ。森友学園問題をめぐり自殺した近畿財務局職員の手記が報じられ、疑惑が改めて注目される中、渦中の昭恵夫人は私的な“桜を見る会”を楽しんでいた。 3月下旬の都内某所、ライトアップされた桜をバックに肩を寄せ合う13人。その中心に写っているのが昭恵夫人だ。写真を見た、参加者の知人はこう話す。 「この日の参加者は、昭恵さんと以前から交流があった人が中心だそうです。写真で昭恵夫人の隣にいるのは人気モデルの藤井リナさん。藤井さんは2014年にYouTubeで昭恵さんと対談するなど、もともと交友があったようです。他にもアイドルグループ・NEWSの手越祐也さんや音楽プロデューサーなど芸能関係者の姿もありました」 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、小池百合子・東京都知事が花見の宴会などの自粛を要請する中、この写真を世論はどう受け止めるだろうか。 週刊ポスト3月30日(月)発売号では、昭恵夫人および参加した芸能人らへの取材結果などを含めて詳報する』、国会で追及された安部首相は、公園ではなく、入ったレストランの敷地内だと強弁していたようだが、「宴会の自粛要請が出ている中での行動として適切か」との野党の主張の方に分がありそうだ。

第三に、元経産官僚の古賀茂明氏が3月28日付け日刊ゲンダイに掲載した「「官邸官僚」の嘘と罪 ゲーム感覚で権力振るうモンスター」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/271045
・『「権力行使は謙抑的に」という言葉。権力者への戒めだが、安倍晋三総理は、これとは逆に、自分が持つ権力は「限界まで」使う。 例えば、集団的自衛権を違憲だとする内閣法制局長官をクビにして、自分に協力する官僚にすげ替えた。法制局長官は内閣の「憲法の番人」としてその独立性が守られるという不文律を総理の権力で簡単に破ったのだ。 この人事は、安倍政権が官僚に対して、君たちの人事は好きにさせてもらうという宣言だった。こんな官僚支配術を編み出せるのは官僚しかいない。しかも、省益にとらわれる各省官僚にはできない。今井尚哉総理秘書官や長谷川栄一報道官(いずれも首相補佐官兼務の元経産省官僚)ら、官邸官僚の役割だ。 彼らの特徴は、権力を好き放題に行使するだけではない。政治をゲーム感覚で動かすことに喜びを感じ、時に精緻な仕掛けと大ウソを使って大胆なゲームチェンジに挑むことだ。批判承知であえて勝負に出ることも多い』、「「権力行使は謙抑的に」・・・安倍晋三総理は、これとは逆に、自分が持つ権力は「限界まで」使う」、「官邸官僚・・・政治をゲーム感覚で動かすことに喜びを感じ、時に精緻な仕掛けと大ウソを使って大胆なゲームチェンジに挑む」、まさにその通りなのだろう。
・『2013年9月のブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会では、彼らは福島の原発事故について「状況は、統御されています(アンダーコントロール)」という世紀の大ウソを準備した。安倍総理のこの大ウソによって各国の不安を取り除き、五輪招致に成功したのだ。その後の国内の批判が五輪招致フィーバーにかき消されたことも彼らの読み通りだった。 「桜を見る会」で土俵際に追い詰められていた安倍総理を救ったのも今井秘書官だ。アメリカの政治ドラマさながら、スキャンダルで追い詰められたら、別の「危機」をつくりだす。わざと大きな批判と論争を巻き起こし、前のスキャンダルをかすませるというやり口だ。 今回は、突然の一斉休校という荒業だった。閣僚の反対を押し切ったのは今井秘書官だ。現場大混乱で批判の嵐というのも全て計算ずく。野党を休校批判に誘い出し、国会論戦の焦点を桜からシフトさせた。その後も与野党協議などで野党に抱き付きながら、「コロナ国会」が続く。今井氏の狙い通りだ。 五輪延期への転換も官邸官僚の役割だ。狙いは来夏開催。来年9月の自民党総裁選前に五輪フィーバーを盛り上げ、安倍4選または安倍院政のオプションを用意する。全てお膳立てが整ったところで、安倍総理とバッハIOC会長の電撃電話会談を演出し、官邸クラブの記者に「急きょ総理から電話」と書かせた。 不正まみれの安倍政権を嘘で延命するモンスター官邸官僚たちの罪は重い。(おわり)』、「突然の一斉休校という荒業で・・・野党を休校批判に誘い出し、国会論戦の焦点を桜からシフトさせた」、「五輪延期への転換も・・・狙いは来夏開催。来年9月の自民党総裁選前に五輪フィーバーを盛り上げ、安倍4選または安倍院政のオプションを用意する」、「不正まみれの安倍政権を嘘で延命するモンスター官邸官僚たちの罪は重い」、「敵」ながらあっぱれな手際だ。それに乗せられているマスコミもだらしない限りだ。

第四に、コラムニストの小田嶋 隆氏が3月27日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「言葉を扱うはずの「政治家」というお仕事」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00063/?P=1
・『10日ほど前から、あらゆる事態がものすごいスピードで変化している。 世界を動かしているCPUのクロックが暴走したのかもしれない。そうとでも考えないと説明がつかない。それほど、身の回りのすべての出来事が急展開している。 この1週間ほどの展開は、いくらなんでも、ニュースソースの無駄遣いだと思う。 普通の状況だったら、新聞社のデスク諸氏は、五輪延期まわりの話題をいじくりまわすことだけで、1週間は楽に暮らせたはずだ。 週刊文春がスクープした財務局職員の遺書の話題にしたところで、状況が状況なら半月はイケるネタだ。 それが、たったの3日で「過去の話」になっている。 「いまさらそんな古いネタ蒸し返しても仕方がないだろ?」的な、地層の下の化石みたいな話題になってしまっている。 こんなバカなことがあるだろうか。 しかし、現実に、事態はそんな調子で進行している。 ニュースは、オーバーシュートしている。 で、われわれの理解力はロックダウンし、事態を追う人々は呼吸困難に陥っている。 正直なところを申し上げるに、私は、現今の状況の変化に追随できていない。 ようやくのことで事態を把握したと思う間もなく、その私の現実認識は、半日後にはすっかり陳腐化している。そういうことが毎日のように繰り返されている。時事コラムを書く人間は、3時間ごとに現状認識を更新しなければならない。そんなことは不可能だ。なので、この1週間ほど、私は最新情報をウォッチする作業を断念している。理由は、たいして性能の良くない頭脳をこれ以上酷使したところで、疲労が蓄積するだけだからだ。 前回は、休日の関係で休載させてもらった。その決断をしたのは、実は当日だった。 というのも、新刊を2冊出したばかりということもあって、当初は、掲載日を1日前倒しにして、木曜日更新の形で原稿を書くつもりでいたからだ。ええ、私もこう見えてわりと商売熱心なのです。 ところが、いざ執筆日がやってきてみると、これが、どうやっても意欲がわかない。書くべきネタが見つからなかったのではない。むしろ、あまりにもネタが多すぎて、話題が絞りきれなかったという方が実態に近い。それ以上に、私は、世界で起こっている様々な事態の進行のスピードにキャッチアップできなくなっていた。簡単に言えば、変化のめまぐるしさが、こちらの思考速度を凌駕していたわけで、それゆえ、私は、自分のアタマの中にある言葉を文章の形で定着させることに困難を感じていたのだ。あるいは、私は、せっかく苦労して書いた原稿が、3日で無意味になってしまう予感を抱いていて、そのあらかじめの徒労感のために執筆忌避に陥っていたのかもしれない。 「こんな調子で2時間ごとに一面トップの大ニュースが飛び込んで来る状況で、オレはいったい何を書いたらいいんだ?」と思うと、コラムニストの執筆意欲はその時点で枯渇する。 そういう時は自粛要請の如何にかかわらず、休んだ方が良い。 そもそも、自粛は他人に要請されるべきものではない。他人に要請して良いものでもない。 あたりまえだ。 「自粛」は、あくまでも本人が自分の意思で自分の行動を差し控えることだ』、「10日ほど前から、あらゆる事態がものすごいスピードで変化している」、「ニュースは、オーバーシュートしている。 で、われわれの理解力はロックダウンし、事態を追う人々は呼吸困難に陥っている」、誠に的確な世相描写だ。
・『世間の空気を忖度したり、他者からの圧力に屈して活動範囲を狭めたりする反応は「萎縮」と呼ばれるべきだし、自分以外の人間や集団に自粛を求める態度は「恫喝」ないしは「強要」と名付けられなければならない。 さて、今回は、あえて個別の事件や出来事に焦点を当てることを避けて、この半月ほどの間に私が「政治家の言葉」について考えたことを書いてみようと思っている。 このテーマを選んだ理由は、ドイツのメルケル首相が3月18日(現地時間)の夜に発信したテレビ演説に感銘を受けたからだ。 私は基本的に「感動」という言葉は使わないことにしているのだが、今回のテレビ演説に関しては、その言葉を使ってもかまわないと思った。それほど強く心を打たれた。 全文の日本語訳は、こちらのサイトで読むことができる。 冒頭で書いた通り、3月にはいってからというもの、あらゆる事態がとんでもない勢いで動いている。そして、この状況を受けて、世界中の政治家たちが、それぞれに強いメッセージを発信している。私は、先日来、危機的な状況を前に立ち上がった世界の政治家たちの言葉に耳を傾けながら、政治家が言葉を扱う仕事なのだということを、あらためて思い知らされている次第だ。 そうなのである。政治家は、一も二もなく、言葉で説明することの専門家であったはずなのだ。 ちなみに、政治家が言葉の専門家であるという旨のこのお話は、ずっと以前から、専修大学の岡田憲治先生が繰り返し強調しているテーマだ。私も、直接お会いした機会に、いくたびか詳しくお話をうかがっている。 より詳しいところは、『言葉が足りないとサルになる』あたりの著作に詳しい。ぜひ一読してみてほしい。 コラムニストも、言葉を扱う仕事に従事する人間ではある。 ただ、文筆業者の仕事は、文字をいじくりまわすことでなにがしかの表現をたくらむ言語玩弄者としての側面をより多く含んでいる。それゆえ、言葉への誠実さにおいて、政治家にはかなわないと思っている。 まあ、このあたりの事柄についての見解は、人それぞれ、立場によって、まるで違っていたりもするはずだ。なので、これ以上突き詰めることはしない。ここでは、私がそんなふうに思っているということを簡単に受け止めていただければ十分だ。話を先に進めることにする。 さて、私が感心したのは、メルケルさんの演説だけではなかった。 イギリスのボリス・ジョンソン首相のテレビ演説も、メルケル首相の演説とは別の意味で見事な出来栄えだったと思っている』、「コラムニスト・・・の仕事は、文字をいじくりまわすことでなにがしかの表現をたくらむ言語玩弄者としての側面をより多く含んでいる。それゆえ、言葉への誠実さにおいて、政治家にはかなわないと思っている」、自虐的で、メルケル首相の場合には当てはまるが、少なくとも安部首相には全く当てはまらないようだ。
・『「別の意味」というのは、ジョンソン首相が、23日に英国民に向けて語った外出禁止令を含む思い切った内容の演説原稿が、それ以前に、英国政府が示していた方針と、かなりの部分で矛盾するものだったからだ。つまり「一貫性」という観点からすると、23日のジョンソン首相の演説は、支離滅裂だったと言っても良い。「裏切り」という言葉を使うことさえできるかもしれない。 ただ、重要なのは、ジョンソン氏が、状況の変化に応じて、最新の事態に適応した政策転換を悪びれることなく実行してみせたことと、その自分の前言撤回(あるいは「朝令暮改」)を、率直に、わかりやすい言葉で国民に向かって語った点だ。 この点において、彼の説明はいちいち出色だった。 イギリス国民は、前後の経緯はともかくとして、あの日の演説には納得したはずだ。 個人的には、これまで、ジョンソン首相について、その振る舞い方や選ぶ言葉のエキセントリックさから 「軽薄」で 「お調子者」で 「受け狙い」の 「ポピュリズム」丸出し の政治家だというふうに評価していた。 それが、23日の演説を聴いて、見方をあらためた。 「なーんだ。やればできるんじゃないか」と、大いに見直した。 ふだんはお行儀の悪い軽薄才子みたいに振る舞っていても、いざ国難という場面では、にわかに引き締まった言葉でシンプルなメッセージを発信することができるわけで、なるほど、政治家の評価は危機に直面してみないと定められないものなのかもしれない。 同じことは、トランプ氏についてもある程度言える。 この人について、私はずいぶん前から「問題外」の政治家だというふうに判断している。あらゆる点で、ほとんどまったくポジティブな評価ができない人間だとも思っている。しかしながら、今回の新型コロナ対応に伴うテレビ演説に限って言うなら、まことにトランプさんらしい率直な言葉で、米国民に語りかけている。この点は評価しないわけにはいかない。 もちろん、いつまでたっても「チャイナウイルス」という言い方を引っ込めないところや、必要のないところで野党やメディアの悪口を並べ立てる悪癖は相変わらず健在なのだが、国民に向けてのテレビ演説では、さすがの芸達者ぶりというのか、あれだけの選挙戦を勝ち抜いた政治家ならではの説得力を発揮している。 ついでに申せば、7000億ドルという前代未聞の巨額を投じる経済政策の打ち出し方も見事だった。 この点は、ドイツもすごい。報道によれば、7500億ユーロ(約89兆円)規模の財政パッケージを承認したという。 これも、これまでのドイツ政府の態度からは想像できない思い切った決断だ。 国民に覚悟と忍耐を求める以上、国としては、それだけの裏付けのある数字を示さなければならない。 これは、言葉の使いかたそのものとは別の話だが、言葉に説得力を与える意味で、不可欠なことでもある』、これまでの「ジョンソン首相」や「トランプ氏」については、私も嫌いな方だったが、新型ウィルス危機への対応は確かに立派だ。「ドイツ」の「7500億ユーロ(約89兆円)規模の財政パッケージ」には私も驚いた。
・『引き比べて、わが国のリーダーは、国民の前にほぼ顔を出さない。 これは、どれほど嘆いても嘆き足りないことだ。 メルケル首相は、ドイツ国民一人ひとりに向けて、さらにはドイツにいる外国人や底辺の労働者にも目を配りながら、新型コロナウイルスとの長く苦しい戦いに臨む覚悟を求める歴史的な演説を披露した。 ジョンソン首相も、いつもとは違う真剣な表情と言葉で、丁寧に政府の施策を説明し、国民に理解を求めている。 トランプ大統領も、いつものウケ狙いのスベったジョークや底意地の悪い罵詈雑言とはまるで違う口調で、米国民に自覚と希望を持ち続けることの大切さを訴えている。 彼らは、いずれも未曽有の危機に当たって、政治家の本領を遺憾なく発揮してみせたと言って良い。 一方、うちの国の政府の人間は、テレビの画面に出ることを極力避けようとしている。 記者会見では質問を打ち切るし、そもそも、臨機応変な記者との受け答え自体を、あらかじめ拒絶している。 こんな態度で、国民に政策を説明できる道理がないではないか。 ふだんの日常的な政策は、官僚に説明させればそれで足りるのだろうし、施策の細部について言うなら、担当官庁の役人の方が詳しいのだろうからして、彼らに説明を委ねることは、むしろ適切でもあるのだろう。 しかし、危機への対応は別だ。 文字通りの「国難」に対処する場面では、選挙で選ばれた政治のリーダーが、自分の言葉で国民に直接語りかけることが絶対に必要なはずだ。 が、そのことがこの国ではおこなわれていない。 なんという損失だろうか。 一説には、危機に直面する場面で国民の前に顔を晒すことで、失敗の責任を取らされることを避ける深謀遠慮だという見方もある。 まさかそんなことはないと思うのだが、そうでないにしても、言葉が少ない。 少ないだけならまだしも、出てくる言葉があまりにも空疎だ』、「うちの国の政府の人間は、テレビの画面に出ることを極力避けようとしている。 記者会見では質問を打ち切るし、そもそも、臨機応変な記者との受け答え自体を、あらかじめ拒絶している」、安部首相の記者会見は見るに耐えないが、首相のお気に入りのNHKの岩田解説委員だけは常に首相を絶賛するのも、見るに耐えない。
・『報道によれば、麻生太郎財務相兼副総理は、3月24日の午前、記者団に対して次のように語ったとされる。 《―略― 一律(給付)でやった場合、現金でやった場合は、それが貯金に回らず投資に回る保証は? 例えば、まあ色々な形で何か買ったら(一定割合や金額を)引きますとか、商品券とかいうものは貯金には(お金が)あまりいかないんだよね。意味、分かります? リーマン(・ショック)の時と違うんだよ。リーマンの時、マーケットにキャッシュがなくなったんだから。今回はどこにそういう状態があるの? みんな銀行にお金が余っているじゃん。だから、お金があるんですよ。要はそのお金が動かない、回らないのが問題なんだから。(24日、記者会見で)》 なんというのか、記者を子供扱いにするものの言い方からして、記者の向こう側にいるはずの国民に、マトモに説明する気持ちを持っていないとしか思えない。 察するに麻生さんは、現金の給付には乗り気ではなくて、その理由は、現金が貯蓄に回るなどして、必ずしも景気浮揚につながらないからということのようだ。 実際に現金を配布した場合、一定数の国民はその現金をすぐには使わず、貯蓄に回すだろう。その点は、麻生さんのおっしゃる通りだ。 が、国民が、現金を貯蓄に回す理由は、必ずしも現金が不要だからではない。むしろ、多くの国民は、将来が不安だから貯金をしている。そう考えれば、現金は、安心料として必要なものだし、多くの国民の不安を取り除くためにも、現金を支給することには大きな意義がある。 この記事を読んですぐ、私は以下のようなツイートを発信した。 《政府が現金じゃなくて商品券を配りたがるのは「カネはやるけど、使いみちはオレが決める」「援助はするが、援助の方法はオレの一存で決める」「食べさせてやるけど、何を食べるのかはオレが決める」「オレの推奨する消費先以外にカネを使うことは許したくないから現金は渡せない」ということだよね。》2020年3月25日-17:03 《貧しい人間が現金をほしがるのは、生活に困窮しているからでもあるが、それ以上にカネが無いことで行動が制限されているからだ。その意味で、生活困窮者が本当に必要としているのは、現金で買える「モノ」ではなくて、現金と引き換えに手にはいる「自由」なのだよ。麻生さんにはわからないだろうが。》2020年3月25日-18:09 《メシを食うカネにも困っている人間がパチンコや酒にカネを使ったり、風俗だのゲーセンだのになけなしの現金をつぎ込むのは、それこそが「自由」だからだ。「オレはオレの時間をオレの好きなように過ごす」という実感が欲しくて人は時に愚行に走る。商品券では自由が買えない。ここがポイントだぞ。》2020年3月25日-18:14 もうひとつ付け加えれば、政府が、現金でなく商品券を配りたがるのは、貧窮する国民の暮らしを支えることや、近未来に不安を抱いている国民に一定の安心感を与えることよりも、彼らの購買行動を促して経済を回すことをより重視しているからでもあれば、特定の業界(つまり商品券が指し示しているところの「商品」の生産者たち)への利益誘導をはかりたいからでもある。 こんなことでは、到底国民の支持は得られない。 もしかしたら、安倍さんや麻生さんが、テレビ演説で直接国民に語りかけようとしないのは、自分たちの打ち出す政策が、筋の通った言葉で説明できない筋の通らない政策だからなんではなかろうか。 政治家の言葉は、巧みでなくても、誠実であれば十分に伝わるはずのものだ。 せめて、正直に、自分の言葉で、まっすぐに語りかけてほしい。 安倍総理が、和牛券やお魚券や旅行クーポン券を配布する理由について、万民を納得させるだけの言葉を持っているのなら、ぜひその言葉を披露してもらいたい。 もし仮に、現政権が、説明をしないリーダーに追随する国民を作ることに成功していたのだとすればこれはもうわれわれの負けだ。好きにしてくださってけっこうだ。私は非国民の道を選ぶだろう』、「麻生太郎財務相兼副総理」の「リーマンの時、マーケットにキャッシュがなくなったんだから。今回はどこにそういう状態があるの? みんな銀行にお金が余っているじゃん。だから、お金があるんですよ。要はそのお金が動かない、回らないのが問題なんだから」、には余りのお粗末さに心底驚かされた。「リーマンの時、マーケットにキャッシュがなくなった」のは、米国の金融市場が疑心暗鬼になって機能しなくなったのは事実だが、「今回は・・・みんな銀行にお金が余っているじゃん」は日本の銀行の話で、「リーマンの時」も同様だった。新聞記者もおかしいと思いながら、「麻生」に忖度して誰も指摘しなかったのだろう。「私は非国民の道を選ぶだろう」との締めは、最大限に皮肉が利いていて痛快だ。
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