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生命科学(その1)(そもそも「宇宙生物学」って何ですか?、生命誕生の鍵を握る驚異の「リボソーム」、山中伸弥が「人類は滅ぶ可能性がある」とつぶやいた「本当のワケ」 生命科学の危険性とは何か? ) [科学技術]

今日は、生命科学(その1)(そもそも「宇宙生物学」って何ですか?、生命誕生の鍵を握る驚異の「リボソーム」、山中伸弥が「人類は滅ぶ可能性がある」とつぶやいた「本当のワケ」 生命科学の危険性とは何か? )を取上げよう。

先ずは、昨年3月12日付け日経ビジネスオンラインが掲載した文筆家の川端 裕人氏による東京工業大学の藤島皓介氏へのインタビュー「そもそも「宇宙生物学」って何ですか?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00007/?P=1
・『生命は地球以外にも存在する? だとしたらどんなもの? 生命は宇宙(地球)でどのように誕生した? など、宇宙と生命という究極の問いに挑み続ける宇宙生物学が活況だ。その中心地であるNASAのエイムズ研究センターを経て、最前線をひた走る東京工業大学(ELSI)の藤島皓介さんの研究室に行ってみた!  最近、宇宙生物学(アストロバイオロジー)という研究ジャンルをよく耳にするようになった。 字面を素直に解釈するならば、「宇宙の生物を研究する」学問ということになる。 とすると、「宇宙人の研究?」という連想も成り立つだろうし、実はNASAは極秘裏に宇宙生命体との接触に成功しているが秘密にしている、というような謀略論、陰謀論にもつながりうる。 そこまでいかずとも、どこかSFめいた、浮世離れした研究であると思われがちだ。 しかし、現実にはすでに20年以上の歴史がある研究分野だ。1995年、当時のNASA長官ダニエル・ゴールディンが、カリフォルニア州のエイムズ研究センターにて記者会見を行い、これからは"Astrobiology"という言葉を公式に使うと宣言したとされる。エイムズ研究センターは、その拠点に指定された。その後、「宇宙生物学」は着実に存在感を増し、今では国際学会も頻繁に行われている。そこには、宇宙物理学、天文学、鉱物学、海洋学、化学、生物学、情報学など、一見、方向が違う専門分野から、さまざまな研究者が集って、「宇宙と生命」という究極の問いに挑んでいる。 対応する動きは日本国内でもあって、2015年には東京都三鷹市の国立天文台の敷地内に、自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターが開設された。初代センター長は本連載でも登場いただいた田村元秀さんだ。田村さんは、ハワイ島のすばる望遠鏡を使って太陽系外の惑星を探し、その中に生命が存在しうる、つまり「ハビタブル」な惑星も見いだせることを教えてくれた。これはまさに、宇宙生物学的な研究だったのである。 また、2012年には、東京工業大学が地球生命研究所(ELSI)を設けて、地球生命の起源を解明し、さらには宇宙における生命の存在を探索する「生命惑星学」という分野を確立しようと目標を掲げた。これもまた宇宙生物学と共通の関心を持っているのは明らかだ。 そこで今回は、後者の地球生命研究所(ELSI)を訪ね、「地球生命の起源」と「宇宙の生命」にかかわる宇宙生物学の話を中心に知見を深めたい。 取材を受け入れてくれたのは、ELSI公式ウェブサイトで、専門領域を「宇宙生物学」と表記している藤島皓介研究員だ。慶應義塾大学で、システム生物学、合成生物学といった、先進的かつ不思議な響きのある研究分野を修めた後、宇宙生物学発祥の地にして梁山泊、NASAのエイムズ研究センターで博士研究員を務めた俊英だ。2016年、日本に戻って現職にある』、まさに最先端の研究者のようだ。
・『東工大大岡山キャンパスのELSI研究棟を訪ね、1階の広々したラウンジのテーブルで相対した。壁一面を埋める大きな黒板があって、たぶん研究者たちはここに概念図や化学式や数式を描いて白熱した議論を展開するのだろうと想像した。まさに映画に出てくるようなシーンだ。 そこで、ぼくは映画に出てくる素人が研究者に向かって、よく分かっていない質問をするような場面を想像しつつ、とても大づかみなことを聞いた。 「そもそも宇宙生物学って何ですか」と。 この分野に名をつらねる研究者には、天文学者(いわば「宇宙」担当)、生物学者(いわば「生物」担当)だけでなく、地学、惑星、海洋、化学、情報科学研究者などさまざまな専門性を持った人たちがいて、どうもとらえどころがないと感じる人がいても不思議ではないのである。 「たしかに、とらえどころがないと思われても仕方がありませんよね。実は、宇宙生物学の研究者によっても、それぞれ答えは違うんじゃないでしょうか」 ぼくを含めて一般の人たちが「宇宙生物学」と聞いて抱くつかみどころのない感覚は、研究者側からしても理解できるという。学際的、かつ、次々と新たな発見が続くスピード感のある分野なので、学問としての枠組みすら、誰もが認める「定義」が定まりにくいのだと想像した。それでは、やはり鵺(ぬえ)のような存在ということでよいのだろうか。 「ただ学問のテーマとしては、非常にシンプルなんです」と藤島さんは続けた。 「宇宙生物学研究の関心というのは、宇宙における『生命の起源』と『生命の分布』、そして人類を含めた『生命の未来』なんですね。この3つの関心の中にすべてがおさまっていると言っていいと思います」 これには、ちょっとしびれた。 宇宙における生命の起源、分布、未来。簡単に言うけれど、このスケール感はすごい』、「生物学者だけでなく、地学、惑星、海洋、化学、情報科学研究者などさまざまな専門性を持った人たちがいて」、「宇宙における『生命の起源』と『生命の分布』、そして人類を含めた『生命の未来』」を研究しているというのは確かに凄そうだ。
・『宇宙でなく、地球における生命の起源、分布、未来、と言っただけでも、今、ぼくたちの周りにあるおびたただしい生命の現在、過去、未来、すべての話なわけで、気が遠くなるほど壮大だ。なのに、それが宇宙規模になったらどうなってしまうのだろう。 いや、地球生命の「起源」を考える時でさえ、そもそもその材料になったアミノ酸などが、隕石と一緒に宇宙から来たという話がある。また、我々の身体を作っている化学物質は、宇宙開闢(かいびゃく)後の物質進化の中で生み出されたものだ。 一方、地球生命の「未来」というと、今世紀中、いや十年二十年の間に、人類が月や火星に定住し始める可能性が現実味を帯びてきた。地球生命が宇宙に出ていくこと自体はもう間違いないように思える。 結局、生命について起源や未来を考えようとすると、それだけでも地球内では話が完結できず、枠組みが宇宙規模になってしまうのは当たり前のことなのだ。 さらにいえば、「分布」だってそうだ。 「我々が、現時点で知っている生命というのは地球の生命、ただ1種類なんですよね。では、この宇宙において、生命がその1種類だけかという問題が常にあります。地球の生命の起源を知る研究は、すなわち宇宙において似たような、あるいは全く違うメカニズムで生命が誕生するかということに迫る研究でもあるんです。地球の生命の普遍性、特殊性を考えた場合、地球のような惑星がどれぐらいの頻度でこの宇宙に存在しているか、天文学系の研究と考え合わせれば、宇宙のどういったところに生命が分布しうるのかという話にもつながっていきます」 地球の生命を問うには宇宙を考えなければならず、宇宙の生命を問うにはまずは地球の生命を理解するところから始めなければならない。宇宙生物学では、解き明かしたい目標とそのステップとなる個々の探求が、「卵が先か、鶏が先か」というレベルで入れ替わりながら密接にかかわっている。 そんな中、藤島さん自身の研究者としてのバックグラウンドは、合成生物学やシステム生物学、さらには情報生命科学といった、生物学の中でも非常に先鋭的なものだ』、「地球の生命の普遍性、特殊性を考えた場合、地球のような惑星がどれぐらいの頻度でこの宇宙に存在しているか、天文学系の研究と考え合わせれば、宇宙のどういったところに生命が分布しうるのかという話にもつながっていきます」、確かに研究分野は宇宙的な広がりがあるようだ。
・『大きくて複雑な様相を呈している「宇宙生物学」のイメージをつかむためには、まず藤島さん自身が宇宙生物学に出会って、今に至るまでの話を伺うのがよいと、お話を聞き始めて最初の5分で作戦を立てた。特に、藤島さんが研究の中心に置いている「起源」から始めて、そこから発展して関わるようになった「分布」の問題に進めば、主に生物学方面から見た宇宙生物学の景色もかなりよく見えてくるのではないかと期待できる。 というわけで、藤島さん自身の「宇宙生物学」との出会いをまずは聞きたい。 そのように述べると、藤島さんは大判の「本」を、さっとぼくの前に差し出した。 「宇宙生物学との出会いといいますと、学生時代に取り組んでいたことから始まります。大学時代の長い話をギュッと縮めた学位論文のタイトルを見ていただければと思います」 その「本」、つまり、製本された博士論文の表紙にはこのようにあった。「古細菌(アーキア)におけるセントラルドグマ理解に向けたシステム生物学的アプローチ(“Systems biology approach toward understanding the central dogma in Archaea”)」 「古細菌におけるセントラルドグマ」を理解したい、という。 まず、古細菌というのはどういうものだろう。 「古細菌は、最初は高温、強酸、強アルカリといった地球上のさまざまな極限環境の中で見つかってきた微生物です。現在では地球上のバイオマス(生物量)の20%ぐらいを占めると言われていまして、あまり一般には知られていないけれども、非常に多様性にも富んでいます。この微生物になぜ注目したかというと、すべての生物の共通祖先から、まずはバクテリア(細菌)と古細菌が2つに分かれて、さらにその古細菌の一門から、人間を含めた真核生物が進化したということが予想されています。言ってみれば古細菌は私たち真核生物の大先祖ともいえる興味深い存在です。また、生命の共通祖先の近くにいる生物というのは、好熱菌、つまり熱いところに住んでいたと言われているものが大半なんですけれども、古細菌はその中でも特に多くの種類が見つかっているので、古細菌の研究をしたら生命の起源に少しでも近づけるのかなっていうふうに当時はぼんやりと思っていました」』、「博士論文」のタイトルだけではさっぱり分からなかったが、解説を読んで理解できた。
・『古細菌は、真核生物、細菌とならんで、地球の生物界を3分するグループのうちの一つで、高度好塩菌、メタン菌、好熱菌、高圧菌など、極限環境微生物の研究から見つかった。真核生物の「大先祖様」だから、ひょっとすると生命の共通祖先に近いかもしれないという魅力がある。また、極限環境で生きられることから「別の惑星でも……」といった妄想を抱かせられる存在でもある。 では、セントラルドグマとはなんだろう。 「DNAという遺伝情報を格納する高分子があって、これはいわばタンパク質の設計図を保管している図書館のようなものです。そこからRNAというものに一時的にその設計図がコピーされ、リボソームといういわば工場みたいなところでタンパク質をつくります。設計図を転写して持ってくるのがmRNA(伝令RNA)で、その設計図に応じたアミノ酸を一つ一つ連れてきてつなげるのがtRNA(転移RNA)ですね。こういった一連の遺伝情報を変換する仕組みをセントラルドグマと呼んでいます。生命の共通祖先は38億年ぐらい前に存在していたと言われていますが、38億年前の生命が既にこの仕組みを持っていたという事実が非常におもしろいなというところで、研究をはじめました」 セントラルドグマは地球生命が持つ共通の仕組みであって、博士研究で扱うテーマとしては「大きすぎる」どころか「恐れ多い」とすら感じる人も多いはずなのだが、藤島さんは成し遂げた(日本の大学の博士論文でタイトルに"central dogma"という語が入っているのは、今のところ藤島さんの論文だけだ。国立国会図書館の博士論文検索で確認)。そして、リボソーム、mRNA、tRNAといった生命の起源を問う時に頻出するキーワードもここですでに登場する。 また、藤島さんの博士論文には、システム生物学的なアプローチ“Systems biology approach” という言葉もある。これはどんな意味だろう』、「博士研究で扱うテーマとしては「大きすぎる」どころか「恐れ多い」とすら感じる人も多いはずなのだが、藤島さんは成し遂げた」、大したものだ。
・『「私が大学院時代を過ごした慶應の先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)では、いろんな分野を並列に研究しているのが特徴でした。例えば、ゲノムレベルで解析をする人がいれば、一つ上のRNAのレイヤーで見ている人もいます。さらに、合成されたタンパク質の機能を網羅的に調べている人もいれば、代謝物質を見ている人もいます。結局、いろんな階層で生物が実際にどういうプロセスを生体内で行っているのかというのを見ていく。で、その階層同士のつながりをシステムとして統合してとらえるのがシステムズバイオロジーということです。僕の研究は、古細菌におけるセントラルドグマ、つまりDNAからRNAを経てリボソームでタンパク質が合成される部分に関わる分子の多様性や関係性を階層を超えて見ていたわけです」 この時、藤島さんが師と仰ぐ金井昭夫教授の下で行っていた研究については、設計図に応じたアミノ酸を連れてきてつなげるtRNA(転移RNA)の進化が含まれていたことを付け加えておく。博論にはこれ以上深入りしないけれど、生命の基本システムといえるセントラルドグマの仕組みを研究する中で、藤島さんは自然と「生命の起源」というテーマに引き寄せられていった。 博士研究を無事に終えて研究室の先生と後輩達の前で最終発表を行った後、藤島さんは思いの丈をぶつけた。 「これからはアストロバイオロジーをやりたいって宣言しました。生命の起源の研究をやりたいから、アストロバイオロジーが直に学べる場所でやりたい。でも、正直どこに行っていいか分からないからご助言をお願いしますって。すると、僕の先輩で、今慶應の先端生命研究所にいらっしゃる荒川和晴先生から、NASAのエイムズ研究センターにクマムシの研究をやっている堀川大樹さんという人がいるから相談してみろと言われて、堀川さんとの縁からエイムズにインターンしに行くことになったんです」 前述の通り、エイムズ研究センターは宇宙生物学発祥の地だ。そして、クマムシは極限環境に耐える生物として、当時も今も宇宙生物学的な注目を集めており、この連載にも登場してもらった堀川大樹さんも、キャリアの初期にエイムズ研究センターで研鑽したのだった。 藤島さんもエイムズ研究センターにて、宇宙的な枠組みの中で生命の起源を問う研究へと足を踏み出した。2011年のことだった。 「生命とは何か」から宇宙生命探査まで、藤島さんはわくわくする話をたっぷり語ってくれた。次回以降に乞うご期待! (このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版サイトに掲載した記事を再掲載したものです)』、「NASAのエイムズ研究センター・・・は宇宙生物学発祥の地だ」、さすがNASA、単にロケットだけでなく、幅広く研究しているようだ。

次に、上記のあと2つを飛ばして、昨年4月2日付け日経ビジネスオンライン「生命誕生の鍵を握る驚異の「リボソーム」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00010/
・『生命は地球以外にも存在する? だとしたらどんなもの? 生命は宇宙(地球)でどのように誕生した? など、宇宙と生命という究極の問いに挑み続ける宇宙生物学が活況だ。その中心地であるNASAのエイムズ研究センターを経て、最前線をひた走る東京工業大学(ELSI)の藤島皓介さんの研究室に行ってみた!その4回目。 前回のペプチド(短いタンパク質)と鉄・硫黄クラスターの話は、主に代謝にかかわる話として理解していたところ、最後は「卵が先か、鶏が先か」のジレンマが出てきた。エネルギー代謝とセントラルドグマ、つまり、代謝系と翻訳系が両輪になっていないといけない、と。 藤島さんの関心は、まさにそういった「両輪」の秘密をめぐる部分へと進む。 キーワードは、「リボソーム」だ。 高校の生物を学んだ人なら、「タンパク質を合成する工場」として記憶しているだろう。DNAから転写されて運ばれてきたタンパク質の設計図を、ここで翻訳してひとつひとつアミノ酸をつないで合成する。こんな精巧な仕組みがどうやって出来上がったのか素人考えでも不思議だし、プロの生物学者たちはもっと不思議に思ってきたらしい。だから、リボソームの起源は、長年の謎とされる。 「僕がおもしろいと思うのは、このリボソームというのは、実はそれ自体、RNAとタンパク質の両方からできている分子だということです。タンパク質をつくるときに、mRNA(伝令RNA)がリボソームに結合して、そこにtRNA(転移RNA)がアミノ酸をつれてきてタンパク質を合成するわけですけど、実はその舞台となるリボソーム自体、RNAとタンパク質の複合体なんですよ」 リボソームは数十種類以上のタンパク質と、数種類のRNA分子(リボソームRNAと呼ばれる)からできている。立体的な構造は代表的なものをネットでいくつも見ることができるのだが、それらは本当に「絡まり合っている」というのがふさわしい。 2種類の「紐」が、解きほぐし難く一つの構造物を作り上げ、そこで、紐1(核酸)の情報から紐2(タンパク質)の合成が行われる。リボソームそのものが、二重の意味で、2つの「紐」が交わるところになっている。 (リボソームの構造と働きを可視化した動画。働きがよくわかる映像は1分25秒前後から。青と紫のいちばん大きなかたまりがリボソームで、黄色い紐がタンパク質を作る情報を記録したmRNA。緑色のブロックがアミノ酸を連れてくるtRNA。その先端の赤い部分が、タンパク質の合成に使われるアミノ酸だ。テープレコーダーのようにリボソームが黄色い紐を取り込んで、その情報(3塩基分ごと)に対応するtRNAが順番にくっつき、赤い紐がどんどん伸びてゆく、つまり、アミノ酸の紐であるタンパク質が合成される様子が巧みに再現されている。 生命の起源の議論では、RNAが先か、タンパク質が先かという議論があって、それぞれ、RNAワールド仮説、プロテインワールド仮説、などと呼ばれている。リボソームは、セントラルドグマの中で重要な役割を果たすものだから地球生命の進化のきわめて早い段階からないと困るのに、いきなり両方が絡まり合って存在しているから謎が深まる』、リンク先の「リボソームの構造と働きを可視化した動画」、なかなかよく出来ていて、精巧な仕組みには改めて驚かされる。
・『「そこで、僕の立場は、RNAが先かタンパク質が先かという話ではなく、恐らく同時に進んできたのではないか、というものです。原始地球の頃からRNAとタンパク質の紐が共存していて、両方の紐が同時にあることがお互いにそれぞれ有利に働くような共進化が働いて、そのおかげで徐々に大きいリボソームのようなものができてきたんじゃないかというふうに考えています」 RNAが先でも、タンパク質が先でも、両方が絡まり合ってできているリボソームの起源は説明しにくいのだとしたら、両方が共存してともに進化しきた可能性があるのではないか、というのが藤島さんの見立てだ。 「RNA、つまり核酸の紐と、ペプチド、つまりアミノ酸の紐、2種類の紐が共存している世界があったと仮定して、2つが同時に存在することがそれぞれの進化にとって有利だったということを証明したいんです。それがもし証明できれば、タンパク質とRNAからなるリボソームができた過程も分かるでしょうし、そもそも、地球の生命が核酸とタンパク質の2つの紐をかくも見事に協調させて使っていることの説明もできるはずです」 具体的には、藤島さんは徹底的、網羅的な手法を取る。あたかもコンピュータの中でシミュレーションのプログラムを走らせるかのように総当たり的な組み合わせを実際に試す。 「今、合成生物学の世界では、ランダムな配列のDNAをデザインして注文することができて、それだと10の13乗ぐらいの異なる配列のDNAが手元に届きます。そこから転写して、10の13乗種類のRNAを作り、さらにそれを翻訳してタンパク質を作るものも市販されているので、試験管の中でまぜまぜしてRNAとタンパク質のカクテルを作ることができます。その時に、できたタンパク質が逃げてしまわずにそのままRNAとくっついているような化学物質を加えておくと、RNAタンパク質複合体ができます。そして、その中から、何か特定の機能を持っているものをスクリーニングしていきます」 藤島さんが考える原始の「RNA・ペプチド共存ワールド」では、RNAとそこから翻訳されたペプチドが一緒にいることで有利になったと想定されるので、それが実際に起きるかを見ていく。 「これまでの過去の実験事例から、RNA自体が折りたたまって、それ自体、触媒活性を持ったり(リボザイム)、特定の分子に結合能があるもの(アプタマー)が見つかっています。つまり、それらは、原始地球でRNAワールドがあったという時に引き合いに出されるものです。でも、RNAだけよりも、タンパク質も一緒にあると、より適応度が高くなるような状態を示したいわけです。これもう、黒板に書いてしまいますね──」 藤島さんはさっと立ち上がって、黒板になにやら図表を描き始めた。 3次元の座標がまずあって、その「底面」から山がいくつも立ち上がる。 「こういうのを適応度地形と言います。縦の軸は『適応度』といって、どれくらい分子が環境に適応しているか、この場合は、RNAの機能の高さを測った尺度だと解釈してください。そして、横軸といいますか底面は、配列空間です。たとえば、RNAの配列に応じて、この底面に点を打てるわけです。そして、それぞれのRNAについて『適応度』を見ていきます。『適応度』の尺度には、ここでは、RNAがエネルギーの共通通貨といわれるATPという物質と結合する能力を考えましょうか。最初のスクリーニングをすると、結合能が高いものが小さな山として立ち上がって見えてくるので、今度はそういった能力が高いものを集めてまたスクリーニングするというサイクルを繰り返します。すると、最終的にある程度高い山がいくつかできていきます。こうやってRNAの機能が高いものの配列がとれます」』、「合成生物学の世界では、ランダムな配列のDNAをデザインして注文することができて、それだと10の13乗ぐらいの異なる配列のDNAが手元に届きます。そこから転写して、10の13乗種類のRNAを作り、さらにそれを翻訳してタンパク質を作るものも市販されている」、世の中にこんなビジネスが登場しているとは初めて知った。
・『ここまではRNA単独での話で、既存の研究がある。RNAワールドでも、たとえばATPとの結合能が高い方が分子の生存に有利であるならば、そういった「適応度」が高いものが選ばれて残っていくことが観察できる。藤島さんが試みるのは、ここに同時にペプチドの紐があったらどうなるか、ということだ。 「結局、環境中を考えると、RNAのような複雑な分子がそれ単独で存在しているなんてことはあり得ないですし、RNAがある世界では、それよりも出来やすいペプチドはもうあったはずなんです。RNA・プロテインワールド、つまり両方の紐が共在していた世界ですね。そういう前提で考えると、RNA単独では見られなかったようなところにも山が立ち上がってくるはずです。そうなると山の裾野同士がオーバーラップする場所がでてくるかもしれない。そうすると一つの機能に対して、より高い山に登りやすくなる、つまり進化が連続的に起きやすいということでもあります。RNA単独、ペプチド単独よりも、両方存在する時により連続的な高分子の進化が成り立ちやすいんだということを示せれば、ながらく謎だったリボソームの起源にも近づけると思っています」 RNAとペプチドの両方があると、山の裾野がオーバーラップして、高い山により登りやすくなるような現象がもし確認できれば、地球の生命が核酸とタンパク質の2つの紐を見事に協調させて使っていることも説明できると藤島さんは考えている。 以上、藤島さんが実験室で、自ら手を動かし、原始地球で起きたかもしれない進化を再現しようとしている一連の実験を紹介した。 合成生物学的な方法で、生命の起源を問う学術領域の熱い雰囲気が伝わればなによりだ。 もう一点だけ、ずっと気になっていたことを確認したい。 これまでの議論は、「紐」ができたり、それらが共進化したりという、生命のシステムに必要なことばかりだけれど、何かが足りない。 いったい何だろうか、と考えていて、ふと気づいた。足りないのは「形」だ。 これは生き物である、生命である、という時には、シロナガスクジラみたいに大きなものにせよ、大腸菌のように小さなものにせよ、すべて「形」がある。形がないと境界がなくなって、「これは生命だ」といえなくなるのではないだろうか』、「RNA単独、ペプチド単独よりも、両方存在する時により連続的な高分子の進化が成り立ちやすい」、確かにその通りなのかも知れない。
・『「それって、たしかにその通りで、例えば膜がないと生命じゃないという立場もあります。それは理にかなっていて、つまり自己と他己を分ける境界線が膜なので、それがないと、大きなスライムみたいなかたまりの中でいろんな分子のやりとりをして……エヴァンゲリオンでいうあれですね、人類補完計画の補完後の状態みたいなものです。でも生命は補完前に戻ろうとするという(笑)。つまり個で自立できた系を生命と名付けたにすぎません」 システムが働いたとしても、形がないものを生命といえるだろうか? この点は本当に奥深く、自己と他者の区別がつかない状態でも生命のシステムが動いている状態というのは想定できるということだ。でも、そんな中から、くっきりとした「個」が登場するというのはどう考えればいいのだろう。 「その議論はある意味おもしろくて、偶然か必然かという話もあります。かりに必然じゃなくて偶然だったとしても、たまたまちぎれた一つの個体が、周囲の環境に適応した場合、そのまま増えていく可能性があります。適者生存のダーウィン的進化に突入していくと。その前はダーウィン的進化ではなくて、水平伝搬の嵐ですね。自己と他者の区別が曖昧な状況でお互いがお互いに必要なものを作って交換していくという。もちろん僕たち今の生命は、ダーウィン的進化の結果できたものです」 ダーウィン的進化というのは、端的に言えばダーウィンが考えた生存競争による「適者生存」によって起きる進化のことだ。これは、生命が「個体」であることを前提にしている。言われてみればそのとおりだ。 「ダーウィン的進化が起きるための必要条件というのは、遺伝情報物質を持っているということと、それが膜に包まれているということですね。つまり自分と他が分かたれているような状態であること。そうじゃないと、ヨーイドンである環境にさらしたときに、適応しているもの、してないものの差がつかない以上、ダーウィン的進化が起こっていきません。逆にそれが観察できるということは、遺伝情報物質を持っていて、他己と自己が分かれている、ちゃんとセパレートしているような系であるということです。そこにあとはエネルギーを自分自身がつくれるような仕組みもあれば、限りなく今の生命に近いものになってくると思います」 今のぼくたちは生命の歴史に思いを馳せて系統樹を描き、古細菌と真核生物はいつ分かれたなどと議論するわけだが、それはこういったダーウィン的進化があってのことだ。藤島さんが今、研究のリソースを集中させている2つの「紐」の共進化の問題と隣接してこんな議論もあって、またスリリングであることをお伝えしておきたい。 つづく (このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版サイトに掲載した記事を再掲載したものです)』、「「ダーウィン的進化が起きるための必要条件というのは、遺伝情報物質を持っているということと、それが膜に包まれているということですね。つまり自分と他が分かたれているような状態であること。そうじゃないと、ヨーイドンである環境にさらしたときに、適応しているもの、してないものの差がつかない以上、ダーウィン的進化が起こっていきません」、「ダーウィン的進化」について考えを深めることができた。

第三に、10月5日付け現代ビジネスが掲載した山中 伸弥氏とNHKプロデューサーの浅井 健博氏の対談「山中伸弥が「人類は滅ぶ可能性がある」とつぶやいた「本当のワケ」 生命科学の危険性とは何か? 」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67554
・『タモリさんと山中伸弥さんが司会を務めたNHKスペシャル「シリーズ人体Ⅱ遺伝子」は、今年高視聴率を獲得した番組として話題になった。背景にあるのは、現在急速に進む「遺伝子」研究への期待と不安――。技術は日々進化し、テレビで遺伝子検査のCMが流れる時代にあって、ゲノム編集で人体が「改造」されるのもそう遠くないのではないかと考える人もいるだろう。 今回、そんな『シリーズ人体 遺伝子』書籍化のタイミングで、特別対談が企画された。生命科学研究のトップリーダー山中伸弥さんと浅井健博さん(NHKスペシャル「シリーズ人体」制作統括)が、いまなぜ生命倫理が必要か――その最前線の「現実」を語り明かした』、「シリーズ人体」は参考になる点が多かった。その対談とは、興味深そうだ。
・『山中さんの踏み込んだ発言  「人類は滅ぶ可能性がある」――これは収録中、司会の山中伸弥さんがつぶやいた言葉である。 私たち取材班は、番組を通じて、生命科学の最前線の知見をお伝えした。どちらかといえば、その内容は明るく、ポジティブな未来像を描くものだった。 それだけに私(浅井健博)は、山中さんの踏み込んだ発言に驚かされたが、同様の不安を視聴者も感じていたことを後に知った。 Twitterや番組モニターから寄せられたコメントの中に、未来に期待する声に交じって、生命科学研究が際限なく発展することへの漠然とした恐れや、技術が悪用されることへの不安を指摘する意見も含まれていたからだ。 それにしても「人類が滅ぶ可能性」とは、ただごとではない。山中さんは日本を代表する生命科学者であり、iPS細胞の作製という最先端技術を生み出した当事者でもある。だからこそ生命科学が、人類に恩恵をもたらすだけでなく、危険性も孕んでいることを誰よりも深く認識しているのではないか。 そう考えた私は、山中さんの話を聞くため、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の所長室を訪ねた』、山中発言の真意を探る意味は大きい。
・『「こんなことまでできるのか」  浅井 まず今回の番組の感想をお聞かせください。山中さんのご研究と関連して、興味を持たれたところ、面白いと感じられたところはございますか? 山中 番組で扱われた遺伝子やゲノムは、僕たちの研究テーマですから、内容の大半に馴染みがありました。しかし、DNAから、顔の形を予測する技術には、正直、ビックリしました。 浅井 どのあたりに驚かれたのですか? 山中 研究の進展のスピードです。僕の予想以上のスピードで進んでいる。番組の台本をいただく前に、取材先の候補とか、番組の中でDNAから顔を再現するアイデアをあらかじめ教えていただきましたね。その段階では、DNAからの顔の再現は、将来は実現可能だとしても、まだしばらく無理だろうと思っていました。 しかしその後、関連する論文を自分で読んだり、実際に映像を見せていただいたりして考えをあらためました。「こんなことまでできるのか」と。 僕たちも、以前は自分の研究とは少し異なる分野の関連する論文も読んでいましたが、今は数が多くなりすぎて、とてもすべてをフォローできません。番組のもとになった、中国の漢民族の顔の再現の研究についてはまったく知りませんでした。もっと勉強しないとダメだと思いましたね。 浅井 今回の番組をご覧になった視聴者の方が寄せた声から、研究の進展のスピードや精度の向上が大きな驚きを持って受け止められたことがわかりました。 一方で、「悪用も可能ではないか」「遺伝子で運命が決まるのではないか」と不安や恐れを感じられた方もいました。山中さんは、こういった技術に対する脅威あるいは危険性を、どう考えておられますか? 山中 以前はDNAの連なりであるゲノムのうち2%だけが大切だと言われていました。その部分だけがタンパク質に翻訳されるからです。 ところが、タンパク質に翻訳されない98%に秘密が隠されていると、この10年で劇的に認識が変わりました。ジャンク(ゴミ)と言われていた部分にも、生命活動に重要な役割を果たすDNA配列があることが明らかになったのです。 さらにDNA配列だけでは決まらない仕組み、第2部で登場したDNAメチル化酵素のような遺伝子をコントロールする、いわゆるエピゲノムの仕組みの解明も急速に進みました。 iPS細胞も遺伝子を導入して作りますが、そのときエピゲノムに大きな変化が起こって細胞の運命が変わります。ですから、最先端の生命科学研究のひとつひとつを詳しくフォローできないまでも、その研究の持つ意味については、僕もよく理解していたつもりです。 もちろん理解できることは大切ですが、それだけでは十分ではありません。すでにゲノムを変えうるところまで技術が進んでいるからです。 宇宙が生まれて百数十億年、あるいは地球が生まれて46億年、生命が生まれて38億年、その中で僕たち人類の歴史はほんの一瞬にすぎません。しかしそんな僕たちが地球を変え、生命も変えようとしている。 長い時間をかけてできあがったものを僕たち人類は、今までになかった方法で変えつつある。よい方向に進むことを祈っていますが、一歩間違えるととんでもない方向に行ってしまう。そういう恐怖を感じます。番組に参加して、研究がすさまじい速度で進展することのすばらしさと同時に、恐ろしさも再認識しました』、「タンパク質に翻訳されない98%に秘密が隠されていると、この10年で劇的に認識が変わりました。ジャンク(ゴミ)と言われていた部分にも、生命活動に重要な役割を果たすDNA配列があることが明らかになった」、「さらにDNA配列だけでは決まらない仕組み・・・DNAメチル化酵素のような遺伝子をコントロールする、いわゆるエピゲノムの仕組みの解明も急速に進みました」、生命科学の進歩は確かに日進月歩だ。
・『外形も変えられ病気も治せるが……  浅井 番組の中では、どこまで最先端の科学が進んでいるのかをご紹介しました。それは、私たち素人にとってもとても興味深い内容でした。中でも、先ほど山中さんがおっしゃったゲノムを変える技術について、おうかがいしたいと思います。 ゲノムを人為的に変える技術は昔からありましたが、最近になってゲノム編集と呼ばれる新しい技術が登場して、従来よりも格段に簡単にゲノムを改変できるようになりました。この技術に注目が集まると同時に、生命倫理の問題も浮上しています。 山中 ゲノム編集は、力にもなれば、脅威にもなると思います。僕たちの研究所でも、ゲノム編集を取り入れていますが、ゲノムをどこまで変えていいのかという問題に、僕たちも今まさに直面しています。 浅井 ゲノムを辞書にたとえると、自由自在に狙った箇所を、一文字単位で書き換えられるのが、ゲノム編集ですね。 2012年に、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授とスウェーデンのウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエ教授らの共同研究チームによって開発された「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」と呼ばれる技術が有名です。 山中 今では生命科学研究に欠かせない技術です。 浅井 番組の中で、鼻が高くなる、低くなるといった身体的特徴の違いや、あるいはカフェインを分解しやすい、分解しにくいといった体質の違いなど、いろんな性質を決める仕組みが遺伝子研究によって明らかにされつつある状況を紹介しました。 こういうさまざまな性質は今後、コントロールできるようになるのではないかと考えられています。本当に顔の形や病気のかかりやすさなど、コントロールすることはできるのでしょうか? 山中 たとえば、ミオスタチンと呼ばれる筋肥大を抑制する遺伝子をゲノム編集によって破壊すると、種を超えていろんな動物の筋肉量が増えることが知られています。 遺伝情報に基づいて外見的、生理的に現れた性質を「表現型」と呼びますが、病気を含め、いろいろな表現型をゲノム編集によって実際に変えられることが示されています。 ただしわかっていないこともたくさんあります。どこまで正確に変えられるのか。表現型を変えたとして1~2年はともかく、何十年か後に影響が出ることはないのか。 生殖細胞を改変した場合、つまり次の世代に伝わる変化を起こしたとき、何百年という単位でどういう影響がありえるのか。これらは未解決の問題です。 今の段階では、人類がゲノムを完全に制御できるわけではなく、リスクがある。やはりリスクとベネフィットを評価して、ベネフィットが上回ると考えられる場合に限って、慎重に進めていくべきです。規制も必要でしょう。逆に、規制がないと大変なことになるという漠然とした恐怖感が常にあります。 浅井 恐怖と言えば、世代を超えて恐怖が遺伝するという研究も番組で紹介しましたが、ゲノムを改変すれば恐怖をコントロールすることすら可能かもしれないですね。 山中 知らないうちに記憶を植えつけられるといったモチーフを使ったSFもあります。言い古されていることですが、SFで描かれている内容は現実になることが多い。さらにSFで描かれていない、SF作家ですら想像できないことを科学が実現することもよくあります。 どういう未来が来るのか、本当にわかりません。科学者として、僕も人類を、地球をよくしたいと思っています。しかし科学は諸刃の剣です。 浅井 人類のために良かれと思ってしたことが、災いをもたらす可能性もあります。山中さんがスタジオトークで「人類が滅ぶ可能性もある」とおっしゃったとき、ハッとさせられました。 山中 僕たち人類は、1000年後、1万年後も、この地球に存在する生物の王として君臨していると思いがちですが、自明ではありません。1万年後、私たちとは全然違う生物が、地球を支配していても不思議ではありません。しかも、自然にそうなるのではなく、人間が自らそういう生物を生み出すかもしれません。 うまくいけば人類は地球史上最長の栄華を誇ることができるかもしれないし、一歩間違うと、新たな生物に地球の王座を譲り渡すことになります。 今、人類はその岐路に立っていると思います。ゲノムを変えることだけではありません。大きな電力を作り出すことができる原発ですが、ひとたび事故が起きると甚大な被害が発生します。 暮らしの中のあらゆる場面で活躍するプラスチックですが、海を漂流するゴミとなり生態系に影響を及ぼしています。科学技術の進歩が、人間の生活を豊かにするのと同時に、地球、生命に対して脅威も与えているのです』、「病気を含め、いろいろな表現型をゲノム編集によって実際に変えられる・・・ただしわかっていないこともたくさんあります。どこまで正確に変えられるのか。表現型を変えたとして1~2年はともかく、何十年か後に影響が出ることはないのか。 生殖細胞を改変した場合、つまり次の世代に伝わる変化を起こしたとき、何百年という単位でどういう影響がありえるのか。これらは未解決の問題です・・・リスクとベネフィットを評価して、ベネフィットが上回ると考えられる場合に限って、慎重に進めていくべきです。規制も必要でしょう。逆に、規制がないと大変なことになるという漠然とした恐怖感が常にあります」、山中氏も「規制」が必要と考えているようだ。
・『研究者の倫理観が弱まるとき  浅井 遺伝子には多様性を広げる仕組み、あるいは局所的な変動に適応する仕組みが組み込まれています。遺伝子は、今現在の僕らを支えつつ、将来の変化に対応する柔軟性も備えているわけです。その仕組みに人の手を加えることはどんな結果につながるのでしょうか? 山中 ダーウィンは、進化の中で生き残るのは、いちばん強い者でも、いちばん頭がよい者でもなく、いちばん適応力がある者であると言いました。 適応力は、多様性をどれだけ保てるかにかかっています。ところが今、人間はその多様性を否定しつつあるのではないか。僕たちの判断で、僕たちがいいと思う方向へ生物を作りかえつつあると感じています。 生物が多様性を失い、均一化が進むと、ちょっと環境が変わったとき、たちどころに弱さを露呈してしまいます。日進月歩で技術が進む現代社会は、深刻な危うさを孕んでいると思います。 浅井 しばらくは大丈夫と高をくくっていましたが、あっというまにそんな事態に陥るかもしれません。だからこそわれわれは番組制作を通して、警鐘を鳴らす必要があると考えています。 一方、山中さんは番組の中で「研究者としてどこまでやってしまうのだろうという怖さがある」と発言されています。 多くの研究者の方々はルールに従い、何をしていいのか、してはならないのかを正しく理解していると思いますが、研究に歯止めが利かなくなると感じるのはなぜでしょうか?』、「日進月歩で技術が進む現代社会は、深刻な危うさを孕んでいる」、その通りだろう。
・『人間の残虐性に迫ったアイヒマン実験  山中 人間は、特定の状況に置かれると、感覚が麻痺して、通常では考えられないようなひどい行動におよぶ場合があるからです。そのことを示したのが、アイヒマン実験です。 浅井 有名な心理学実験ですね。アイヒマン(アドルフ・アイヒマン)はナチス将校で、第二次大戦中、強制収容所におけるユダヤ人大量虐殺の責任者でした。 戦後、死刑に処されました。彼は裁判で自分は命令に従ったにすぎないと発言しました。残虐というよりは、内気で、仕事熱心な人物に見えたとも言われています。 山中 そんな人物がどうして残虐になり得るのか。それを検証したのが、イェール大学の心理学者スタンリー・ミルグラムが行ったアイヒマン実験です。 この実験の被験者は教師役と生徒役に分かれ、教師役が生徒役に問題を出します。もし生徒役が問題を間違えると、教師役は実験者から生徒役に電気ショックを与えるように指示されます。 しかも間違えるたびに電圧を上げなければなりません。教師役が電気ショックを与えつづけると生徒役は苦しむ様子を見せます。ところが実際には生徒役はサクラで、電気など通じていない。生徒役の苦しむ姿は嘘ですが、叫び声を上げたり、身をよじったり、最後には失神までする迫真の演技なので、教師役は騙されて、生徒役が本当に苦しんでいると信じていました。 それでも、教師役を務めた被験者の半分以上が、生徒役が失神するまで電気ショックを与えた。教師役の被験者がひとりで電気ショックのボタンを押すのなら、そこまで強いショックを与えられなかったでしょう。 ところが、白衣を着て、いかにも権威のありそうな監督役の実験者から「続行してください」とか「あなたに責任はない」と堂々と言われ、教師役はボタンを押すのをためらいながらも、どんどんエスカレートして、実験を継続したんです。 浅井 ショッキングな実験結果ですね。権威のある人のもとで、人間は際限なく残酷になってしまう』、「アイヒマン実験」は有名だが、「権威のある人のもとで、人間は際限なく残酷になってしまう」、大いに心すべきだろう。
・『チームのほうが誘惑に弱くなる  山中 研究にも似ている側面があるのではないか。ひとりで研究しているだけなら、生命に対する恐れを感じて、慎重に研究する。そういう感覚はどの研究者にもあると思います。 ところがチームになって、責任が分散されると、慎重な姿勢は弱まって、大胆になってしまう。たとえルールがあっても、そのルールを拡大解釈してしまう。気がついたらとんでもないことをしていたというのは、実際、科学の歴史だけでなく、人類の歴史上、何度も起きたし、これからも起こりえます。 科学を正しく使えば、すばらしい結果をもたらします。しかし今、科学の力が強すぎるように思います。現在ではチームを組んで研究するのが一般的です。そのため責任が分散され、倫理観が弱まって、危険な領域へ侵入する誘惑に歯止めが利きにくくなっているのではないかと心配しています。 浅井 山中さんご自身も、そう感じる局面がありますか? 山中 そういう気持ちの大きさは人によって違います。 僕はいまだにiPS細胞からできた心臓の細胞を見ると不思議な気持ちになる。ちょっと前まで、血液や皮膚の細胞だったものが、今では拍動している、と。 ヒトiPS細胞の発表から12年経ちますが、この技術はすごいと感じます。しかし人によっては、毎日使っているうちにその技術に対する驚きも消えて、当たり前になる。 歯止めとして有効なのは、透明性を高めることだと思います。密室で研究しないことです。研究の方向性について適宜公表し、さまざまな人の意見を取り入れながら進めていくことが重要ですし、そうした意見交換をしやすい仕組みを維持することも大切だと思います』、「科学の力が強すぎるように思います。現在ではチームを組んで研究するのが一般的です。そのため責任が分散され、倫理観が弱まって、危険な領域へ侵入する誘惑に歯止めが利きにくくなっているのではないかと心配しています」、「歯止めとして有効なのは、透明性を高めることだと思います。密室で研究しないことです」、マスコミが監視機能を果たしてくれればいいのだが、情報欲しさに監視機能をないがしろにする懸念もある点は要注意だ。
タグ:NASA 博士論文 生命科学 日経ビジネスオンライン 宇宙生物学 現代ビジネス 川端 裕人 (その1)(そもそも「宇宙生物学」って何ですか?、生命誕生の鍵を握る驚異の「リボソーム」、山中伸弥が「人類は滅ぶ可能性がある」とつぶやいた「本当のワケ」 生命科学の危険性とは何か? ) 藤島皓介氏 「そもそも「宇宙生物学」って何ですか?」 エイムズ研究センター "Astrobiology"という言葉を公式に使うと宣言 東京工業大学が地球生命研究所(ELSI) 生物学者(いわば「生物」担当)だけでなく、地学、惑星、海洋、化学、情報科学研究者などさまざまな専門性を持った人たちがいて 宇宙における『生命の起源』と『生命の分布』、そして人類を含めた『生命の未来』」を研究している 地球の生命の普遍性、特殊性を考えた場合、地球のような惑星がどれぐらいの頻度でこの宇宙に存在しているか、天文学系の研究と考え合わせれば、宇宙のどういったところに生命が分布しうるのかという話にもつながっていきます 博士研究で扱うテーマとしては「大きすぎる」どころか「恐れ多い」とすら感じる人も多いはずなのだが、藤島さんは成し遂げた 「生命誕生の鍵を握る驚異の「リボソーム」」 リボソームの構造と働きを可視化した動画 合成生物学の世界では、ランダムな配列のDNAをデザインして注文することができて、それだと10の13乗ぐらいの異なる配列のDNAが手元に届きます。そこから転写して、10の13乗種類のRNAを作り、さらにそれを翻訳してタンパク質を作るものも市販されている RNA単独、ペプチド単独よりも、両方存在する時により連続的な高分子の進化が成り立ちやすい ダーウィン的進化が起きるための必要条件というのは、遺伝情報物質を持っているということと、それが膜に包まれているということですね。つまり自分と他が分かたれているような状態であること。そうじゃないと、ヨーイドンである環境にさらしたときに、適応しているもの、してないものの差がつかない以上、ダーウィン的進化が起こっていきません 山中 伸弥氏 浅井 健博氏 「山中伸弥が「人類は滅ぶ可能性がある」とつぶやいた「本当のワケ」 生命科学の危険性とは何か? 」 NHKスペシャル「シリーズ人体Ⅱ遺伝子」 山中さんの踏み込んだ発言 「人類は滅ぶ可能性がある」 タンパク質に翻訳されない98%に秘密が隠されていると、この10年で劇的に認識が変わりました。ジャンク(ゴミ)と言われていた部分にも、生命活動に重要な役割を果たすDNA配列があることが明らかになった DNA配列だけでは決まらない仕組み、第2部で登場したDNAメチル化酵素のような遺伝子をコントロールする、いわゆるエピゲノムの仕組みの解明も急速に進みました 外形も変えられ病気も治せるが…… 病気を含め、いろいろな表現型をゲノム編集によって実際に変えられる ただしわかっていないこともたくさんあります。どこまで正確に変えられるのか。表現型を変えたとして1~2年はともかく、何十年か後に影響が出ることはないのか。 生殖細胞を改変した場合、つまり次の世代に伝わる変化を起こしたとき、何百年という単位でどういう影響がありえるのか。これらは未解決の問題です リスクとベネフィットを評価して、ベネフィットが上回ると考えられる場合に限って、慎重に進めていくべきです。規制も必要でしょう。逆に、規制がないと大変なことになるという漠然とした恐怖感が常にあります 研究者の倫理観が弱まるとき 人間の残虐性に迫ったアイヒマン実験 権威のある人のもとで、人間は際限なく残酷になってしまう チームのほうが誘惑に弱くなる 歯止めとして有効なのは、透明性を高めることだと思います。密室で研究しないことです
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