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東芝問題(その39)(東芝機械 村上ファンドに勝っても不安なわけ 坂元社長「われわれの中期計画は評価された」、芝浦機械<上>TOB仕掛けた旧村上系ファンド蹴散らし再出発、芝浦機械<下>ココム違反事件を「東芝」は許していなかった、再建中の東芝が「東証1部復帰」にこだわる事情 株価を引き上げ アクティビスト追い出しへ) [企業経営]

東芝問題については、1月30日に取上げた。今日は、(その39)(東芝機械 村上ファンドに勝っても不安なわけ 坂元社長「われわれの中期計画は評価された」、芝浦機械<上>TOB仕掛けた旧村上系ファンド蹴散らし再出発、芝浦機械<下>ココム違反事件を「東芝」は許していなかった、再建中の東芝が「東証1部復帰」にこだわる事情 株価を引き上げ アクティビスト追い出しへ)である。

先ずは、3月31日付け東洋経済オンライン「東芝機械、村上ファンドに勝っても不安なわけ 坂元社長「われわれの中期計画は評価された」」を紹介しよう。
・『3月27日に東芝機械が開いた臨時株主総会で、村上世彰氏の運営する投資会社(以下、村上ファンド)が実施している株式公開買い付け(TOB)に対する東芝機械の買収防衛策が、62%の賛成を得て可決された。 機関投資家は当初、買収防衛策に否定的だとみられていたが、3月中旬に議決権行使助言会社のISSが「防衛策の導入に賛成」と推奨したことを契機に情勢は大きく変わり、結果的に東芝機械が勝利した。 村上ファンド側は買収防衛策が可決された場合にはTOBを撤回することを表明しており、東芝機械の買収防衛策は発動されない見通しだ。 ただ、勝利したとはいえ、村上ファンドが突き付けたガバナンスの問題や今後の成長戦略に問題がないというわけではない。東芝機械は4月1日に「芝浦機械」に社名変更し、新たなスタートを切ると意気込む。 今後どのように会社を経営していくのか。総会前に引き続き、東芝機械の坂元繁友社長に改めて尋ねた(Qは聞き手の質問、Aは坂元社長の回答)』、TOBの提案を受けた後に導入した付け焼き刃的な買収防衛策には、通常反対する「ISS」が賛成した背景には、何があったのだろう。
・『最後まで勝てると思っていなかった  Q:臨時株主総会の結果は予想通りでしたか。 A:先日のインタビューでは強気なことを言ったが、実際には50%少し超えるくらいのぎりぎりの攻防だったという実感で、最後まで勝てるとは思っていなかった。 2月4日に中期経営計画を発表して以降、機関投資家に改革プランを説明しにいったが、当初は買収防衛策に対して厳しい意見が多く大変苦労した。特に日本の投資家の反応は堅かった。3月中旬以降になり、ISSや(村上ファンドを除くと筆頭株主となる)ブラックロックが賛同してくれたことが追い風になり、中でも海外投資家から高い賛成率が得られた。 Q:62%の賛成という結果をどのように受け止めますか。 A:まず、買収防衛策のベースとなる論点として、自己株買いを行い、短期的に株価を上げてリターンを取るというやり方と、われわれのように設備に投資をして中長期的に企業価値をあげていくやり方のどちらがいいかという論点があった。そういう意味で、(中長期的に企業価値を上げていくことを狙いとする)われわれの中期経営計画は信任されたと思っている。 それを達成するために(村上ファンド側の)TOBにどのように対処するかが今回の臨時株主総会の議題だった。スチュワードシップコードを厳格に持つ投資家もいるので(議決権行使の)読みは難しかったが、今回導入した買収防衛策は対象と期間を限定した例外的な措置であり、通常の買収防衛策とは違うということが認識され、なんとか62%の賛成を得られた。 一方で、38%の反対意見がある。買収防衛策に対する反対だけでなく、TOB価格と市場株価の乖離を看過できないという個人投資家もいただろう。きちんと分析して意見を聞き入れていかないといけない。 Q:TOBの提案を受けた後に導入する、有事導入型の買収防衛策はガバナンス改革に逆行するのではないかという声もあります。 A:このような措置は乱発されるようなものではない。対象や期間が限定的で、実質的に経営権を握るのに経営方針を示さないというまれなTOBの形態だから通った。1つでも条件が変われば通らなかった。 ISSもブラックロックも世の中への影響度はないという判断で賛同されたと思う』、「村上ファンド側」が「実質的に経営権を握るのに経営方針を示さないというまれなTOBの形態だから通った」、極めて特殊なケースのようだ。
・『村上ファンドと話はかみ合わなかった  Q:村上ファンド側との書簡のやりとりを見ると、東芝機械と話がかみ合っていないようにも見えました。 A:おっしゃる通り、話がかみ合わなかった。TOBに関していろいろ質問したが、(村上ファンド側から)明確な回答がなかった。(われわれが)本質的に求めていた回答の1つは、TOB後の経営方針だ。 われわれはTOBやM&Aが嫌だとは思っていない。事業計画が示され、シナジーが生まれるものであれば受ける可能性も当然ある。だが、TOBをした後にどうするのかというのがまったくなかった。 もう1つは、外為法に関することだ。われわれは(工作機械などの)戦略物資を扱っている会社なので、(公開買付者に関する情報を)開示してくださいというお願いをし続けた。不確かな株主がいるだけで商売ができなくなる。 Q:今回の教訓は? A:自分たちの事業をしっかりやらないとだめだということだ。買収防衛策をいくらやろうが、自分たちの事業ができていない限り何を言ってもだめということが、身に染みてわかった。 Q:村上ファンドが入ってきてそれを痛感したと? A:彼らが入ってきてからというよりは、(2017年に)東芝グループから離脱して株主構成が変わってからだ。以前は親会社の東芝がいいといえばそれでよかった。東芝のブランドがあると、銀行から安定して借り入れができる。海外でも東芝のブランドがあれば必ずドアを開けてくれる。 そういう、すごいメリットの中で暮らしてきたが、東芝から出るとそういうのが一切なくなる一方で、株主から収益率に対する要求も強くなった。 Q:2019年3月期は、売上高販管費比率が業界平均より7%も高いなど、収益性の低い状態が続いたのはなぜでしょうか。 A:構造的な問題があった。顧客と共同で生産設備を開発して顧客の(製品の)付加価値を高めるという、高度経済成長期のやり方は小回りの利く事業部制が適していた。 顧客がグローバルに(事業を)展開するようになり、日本で成功している生産ラインをそのまま海外で作ってほしいという要望が出てきて、ボリュームで商売をするようになったが、間接部門の多い事業部制では競争力を上げられなかった。 変化に早く対応しないといけなかったが、80年続けてきた仕事を変えるのはそう簡単ではなく一歩出遅れた。その中で村上グループにTOBをかけられた』、「東芝グループから離脱して株主構成が」変わったにも拘らず、「売上高販管費比率が業界平均より7%も高いなど、収益性の低い状態が続いた」理由として挙げたものは、何をいまさらといった印象を受けたが、これも長年「東芝のブランド」に甘えていたツケだろう。
・『経営陣の首をかけて中計を達成する  Q:新しい中期経営計画では、2023年度に営業利益率を8%、ROEを8.5%へ引き上げる高い目標を掲げています(2019年3月期実績は営業利益率が3.3%、ROEが5.0%)。 今度の中計の達成には、(経営陣の)首をかけている。対抗策の承認を得られたということは、裏を返すと我々の経営改革プランが信任されたということだ。やはり、そこは約束を守らなければいけないという覚悟を、(総会後の)取締役会で改めて話した。 Q:新型コロナウイルスの影響は小さくないと思いますが、それでも達成できますか。 A:すでに中国は(工場の)稼働状態が90%くらいになってきており、早い回復が期待できる。また、われわれの機械は受注から納入までの期間が1~2年と長い。顧客は新型コロナが収束し、在庫がなくなれば生産をしなければならないので、装置メーカーであるわれわれには少し早めにオーダーがくる。そこを逃さなければ、経営計画の数値はある程度キャッチアップできる』、「中計の達成には、(経営陣の)首をかけている」、とは言うものの、未達の言い訳に「新型コロナウイルスの影響」を持ち出すのではなかろうか。

次に、ジャーナリストの有森隆氏が4月15日付け日刊ゲンダイに掲載した「芝浦機械<上>TOB仕掛けた旧村上系ファンド蹴散らし再出発」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/271862
・『東芝機械は社名を変更。4月1日から芝浦機械として再出発した。 「東芝」の2文字を外し、新たなスタートを切ろうとした矢先に、村上世彰氏が関与する旧村上ファンド系の投資会社シティインデックスイレブンス(イレブンスと略、東京・渋谷区)にTOB(株式公開買い付け)を仕掛けられ、買収防衛策や株主還元を巡って攻防が続いた。工作機械需要が低迷するなか、成長ビジョンを示していないことから標的にされた。 旧村上ファンド系との対立がヒートアップするなか、東芝機械は突如、社長が交代した。 2月21日、三上高弘社長が代表権のない取締役に退いた。旧村上ファンド系との対応に当たってきた坂元繁友副社長を社長に昇格させ、なりふり構わない総会シフトを敷いた。 抗争の過程を振り返ってみよう。 1月17日、旧村上ファンド系のオフィスサポート(東京・渋谷区)から、不本意なTOBの予告を受けたとして、新株予約権をほかの株主に無償で割り当てる「ポイズンピル(毒薬条項)」の導入を取締役会で決議した。買収防衛策である。 1月21日、オフィスサポートの子会社イレブンスが最大44%の株式取得を目指すTOBを開始した。買い付け価格は1株3456円。旧村上側はオフィスサポートが6・5%、エスグラントコーポレーションが6・2%、合わせて12・7%の東芝機械株を既に保有していた。 「反対」の意見を表明したうえで、3月27日に臨時株主総会を開催。この場で買収防衛策の導入と発動の是非を問うことにした。村上氏側は3月4日としていたTOB期間を4月16日まで延長した。 当初、機関投資家は買収防衛策の導入に否定的とみられていた。だが、3月13日、議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が「買収防衛策導入に賛成」を推奨したことで潮目が大きく変わった』、第一の記事にもあった通りだ。
・『買収防衛には成功したが…  イレブンスは3月19日、東芝機械が開催を予定する臨時株主総会以前に120億円以上の自社株買いをすれば、実施中のTOBを撤回すると表明した。坂元繁友・新社長は「短期的な資金流出は中長期的な企業価値向上を妨げる」とし、村上氏側の要求を拒否した。 村上氏側が「腰砕けになった」と判断した坂元社長は、マスコミに登場。票読みの結果、「3分の2以上をとって圧倒的に勝つ」と強気の発言をした。 3月27日、静岡県沼津市の沼津リバーサイドホテルで臨時株主総会を開き、119人の株主が出席した。防衛策の導入・発動の是非を問う2議案とも62%の賛成で可決された。 買収防衛策の導入は経営陣の保身につながると懸念する機関投資家が多い。金融庁が定めたスチュワードシップ・コードに沿って行動する国内の機関投資家が買収防衛策に賛成することは難しい。 海外の投資家に影響力がある議決権行使助言会社ISSが買収防衛策の導入と発動について賛成を推奨したことが勝負を決めたようだ。外国法人の持ち株比率は32%(19年9月末時点、自己株式除く)を占める。 村上氏側を除くと筆頭株主となる世界最大の資産運用会社ブラックロックグループ(約5%を保有)も東芝機械の中期経営計画を評価し、賛成の意向を表明した。ブラックロックとISSが先陣を切って賛成を表明したことで、大きな流れができた。元の親会社、東芝(約3%)も会社提案に賛同したとされる。 買収防衛に成功した。村上氏側は、臨時株主総会で防衛策が可決された場合、「TOBを撤回する」としており、4月2日、イレブンスは撤回を正式に表明した。それでも1割強を保有する大株主として、今後も影響力を及ぼす。 2017年、東芝グループから離脱し株主構成が変わり、株主利益の最大化を求める投資ファンドの攻勢にさらされた。東芝という籠の中で育った経営陣には初めての試練だった。6月末に開催する定時株主総会が最大のヤマ場とみる投資家が多い。買収防衛策の発動に賛同した株主も、経営計画の未達が続いている経営陣に納得しているわけではない』、「村上氏」も「ブラックロックとISSが先陣を切って賛成を表明」、したのでは手も足も出せなかったのだろう。「6月末に開催する定時株主総会が最大のヤマ場」、その通りで、どうなるのだろうか。

第三に、この続き、4月16日付け日刊ゲンダイ「芝浦機械<下>ココム違反事件を「東芝」は許していなかった」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/271930
・『東芝機械は2017年、岐路に立たされた。親会社の東芝が原子力発電事業の巨額損失で揺らいだ財務を立て直すため、関連企業の保有株の売却を急いだからだ。 17年3月3日、取引開始前に東京証券取引所の立会外取引で自社株買いを実施し、東芝が売却した東芝機械を1株506円、総額153億円で引き取った。この結果、東芝機械は東芝の持ち分法適用会社から外れた。 「東芝グループを出たくて出るわけではない。非常に残念だ」。飯村幸生社長(当時)は涙を浮かべ、悔しさをにじませた。 「東芝が東芝機械株を手放した背景には、東芝機械のココム違反事件が影を落としている」(エレクトロニクス担当のアナリスト) 1980年代、ソビエト連邦に工作機械などを不正に輸出し、対共産圏輸出統制委員会(ココム)に違反したとして告発された事件だ。東芝機械が輸出した機械がソ連原潜のスクリュー音を小さくして、西側の安全保障を脅かしたとして、米国が激しく非難したことで日米間の政治問題に発展。親会社である東芝の経営を揺るがす事態となった。同時9軸制御の高性能機がレニングラードの造船所で使われていることが判明した。 事件が発覚した87年7月、東芝の佐波正一会長と渡里杉一郎社長は、「西側の安全保障に重大な脅威を与えた道義的責任」を取って辞任した。渡里氏を失った東芝は、急激に輝きを失っていった。渡里社長が残っていれば、その後の社長の系譜が様変わりしており、今日の東芝の惨状はなかったといわれている。 米国の議会筋は日本企業独特の“ハラキリ”(両トップの引責辞任)をまったく評価せず、強硬派の下院議員が東芝製のラジカセをハンマーで打ち砕くパフォーマンスを演じてみせた。 親を不幸にする子供の罪は深い。東芝機械を許していなかった。東芝は東芝機械をグループから切り離した。 東芝機械は「スタンドアローン(単独)」での再出発を余儀なくされた。 「今後5年程度を目安に、新社名・新ブランドへ変更していく」との意向を示した飯村社長は、会長兼最高経営責任者(CEO)に就き、新たな社名とブランドづくりに取り組んだ。 行き着いた結論は源流といえる芝浦への原点回帰だった。芝浦製作所(現・東芝)の工作機械部門が分社して芝浦工作機械として発足したのは戦前の1938年。61年に東芝機械となり、工作機械のほか、プラスチック製品を製造する射出成形機、自動車エンジンの製造に使われるダイカストマシンを手掛ける東芝グループの機械メーカーとして事業を拡大した』、「東芝機械のココム違反事件が影を落としている・・・親を不幸にする子供の罪は深い。東芝機械を許していなかった。東芝は東芝機械をグループから切り離した。 東芝機械は「スタンドアローン(単独)」での再出発を余儀なくされた」、ずいぶん古い事件だが、それが「影を落としている」とは初めて知った。
・『ブランドはSHIBAURAへ  2020年4月1日、東芝機械から芝浦機械に社名を変更し、ブランド名をSHIBAURAに変えた。認知度の高いTOSHIBA MACHINEは使えない。顧客に芝浦の名前を浸透させるのは容易ではない。不安が漂う船出となった。 2月に策定した中期経営計画では23年度までに売上高1350億円、営業利益率8%、ROE(株主資本利益率)8・5%を達成するという高い目標を掲げる。20年3月期の連結決算は、コロナ禍を織り込む前の数字だが、売上高が1180億円、営業利益は33億円の見込み。営業利益率は2・8%で目標の8%には遠く及ばない。生半可なことでは達成はおぼつかない。 坂元繁友社長は、成長を加速させるために「M&A(合併・買収)を積極化する方針」を打ち出した。「私の在任期間中必ず1~2件はやりたい」と意欲的だ。 臨時株主総会で会社提案を支持した株主は旧村上ファンド系の行動に反対したのであって、経営陣を信任したわけではない。中期計画通りの結果を出せないと、株主の不満が高まる。 新型コロナウイルスの感染拡大で工作機械の市場環境は激変中だ。欧米や日本はこれからが正念場。中国市場の復活に懸けるが、未曽有の危機に耐えながらの再スタートとなる』、まだまだ目を離せないようだ。

第四は、東芝本体である。4月8日付け東洋経済オンライン「再建中の東芝が「東証1部復帰」にこだわる事情 株価を引き上げ、アクティビスト追い出しへ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/342670
・『経営再建中の東芝は4月3日、現在上場している東京証券取引所第2部から1部への復帰を東証に申請したと発表した。債務超過を理由に東証2部に降格してから3年。早ければ2020年秋にも東証1部復帰の道が見えてきたが、課題は残されている。 東芝をめぐっては、利益を水増しする不正会計が2015年4月に発覚し、同年に歴代3社長らが引責辞任するなど経営が混乱。さらに2016年末にはアメリカの原発子会社で巨額損失が発覚し、債務超過に陥ったため、2017年8月に東証2部へ降格していた』、あれだけの大規模な「不正会計」を踏まえれば、本来、上場廃止になっても当然であったが、不思議な政治力で「東証2部へ降格」で済んだようだ。
・『東証の昇格基準緩和の恩恵を受ける  2部から1部に復帰するためには、監査法人の適正意見がついた有価証券報告書が必要になる。これまでの東証ルールでは過去5年分が必要だったが、東証は2月、直近2年分でよいとする昇格基準の緩和に踏み込んだ。 このルール変更の恩恵を受けたのが東芝だ。東芝は2017年3月期の有価証券報告書で適正と認められていなかった。東証の基準緩和と軌を一にして、東芝は2019年末から1部復帰に向けた専門部署を立ち上げ、早期復帰の準備を進めていた。 そんな中で誤算だったのが、1月に発覚した子会社の東芝ITサービスで5年にわたって実態のない循環取引をしていたことだ。東芝は当初、2月にも1部復帰を申請する予定だったが、不正取引の対応に追われ、4月までずれ込んだ。 もっとも、東芝にしてみれば、今回の不正取引は子会社が主導したのではなく、過去の東芝不正決算とはまったく異なるとの認識だ。1部昇格審査への影響は限られるとの期待が東芝にはあるが、東証が審査に慎重になる可能性もある。東証の審査期間は3カ月程度とされているが、2017年に東証2部から1部へ復帰したシャープの場合は申請から承認まで約5カ月かかった。 東証1部上場のメリットは、「優良企業」という勲章や誇りが伴うだけではない。企業の信用力が増し、資金調達がしやすくなる。ただ、東芝は2018年に虎の子だった半導体メモリー事業を約2兆円で売却するなど、手元のキャッシュは潤沢だ。そのため、「(1部昇格の狙いは)資金調達がファーストプライオリティではない」(市場関係者)という見方が多い。 東芝が1部復帰を急ぐ本音は、「モノ言う株主(アクティビスト)の排除」にほかならない。2017年に実施した6000億円の大型増資により、アメリカの投資ファンド「キング・ストリート・キャピタル・マネージメント」など、百戦錬磨の外資系投資家が東芝の大株主に名を連ねている。 株価や業績を高めるよう、事あるごとに経営陣に短期的成果を迫り続けている。東芝が生きるか死ぬかの危機的状況下では、投資家の支援は心強かったが、成長を最優先させる今となっては東芝経営陣の悩みの種となっている』、上場廃止を逃れたと思ったら、今度は「東証の昇格基準緩和の恩恵を受ける」、とは政治力の強さは健在のようだ。「6000億円の大型増資」時には、「モノ言う株主」に助けられていながら、今度は「排除」すると「手の平返し」をするとは、ずいぶん虫がいい話だ。
・『「株価6000円」も視野に  大型増資とともに、東芝は2019年までに7000億円という巨額の自社株買いを実施したが、モノ言う株主が応じることはほとんどなかった。「東芝の株価は割安であり、もっと上がる」とみている株主が多く、アクティビストはいまだに東芝株の3割を保有しているとみられる。 東芝は再建過程でアメリカの液化天然ガス(LNG)や半導体メモリーなど、リスクが高かったり、採算の低い事業を次々と整理しており、現在はインフラやエネルギーを中心とした事業構造に転換。収益の振れがない、比較的安定したビジネスモデルとなった。 現在はさらにそれを、ハードの単体売りからIoT(モノのインターネット)を中心にしたサービス事業での成長投資を増やそうとしており、優秀な外部人材を多く採用し始めている。 東芝の株価は、新型コロナショックが本格化する前の2019年末から2020年初めまでは4000円前後で推移しており、2部に降格した当時と比べて1000円ぐらい高い水準だ。1部復帰でTOPIXなどの株価指数に採用されれば、新たな投資資金を呼び込めるため、市場関係者からは「6000円も視野に入ってくる」との声も上がる。 株価が上昇すれば、キャピタルゲインを求めるアクティビストらも東芝株を売却しやすくなり、その代わりに長期的な視野で東芝株を保有する機関投資家が安定株主となってくれるとの期待が東芝にはある。 だが、株価上昇には東証1部復帰のほか、解消すべき課題がある。アクティビストの多くもさらなるリストラを迫っている。 不採算事業として標的となっているのが、半導体事業などを含むデバイス部門だ。デバイス部門をめぐっては、2020年に入って異例の人事が発動されていた。東芝の執行役上席常務を務め、システムLSIを含むデバイス部門を率いてきた、東芝デバイス&ストレージ社長の福地浩志氏が4月1日から東芝グループの旅行代理店である東芝ツーリスト社長に異動になったのだ』、明確な左遷人事だ。
・『デバイス部門トップの「異例人事」  2020年1月に発表された人事で福地氏は、上席常務のまま、管掌が営業推進担当などへ異動する内容だった。しかし、2月になって突如、3月末で役員を退任する人事が発令された。 新たな行き先となる東芝ツーリストはグループ向けの旅行代理店であり、東芝関係者は「上席常務までやった人物が行くポジションではない。更迭だ」と語る。東芝再建のために送り込まれた三井住友銀行出身の車谷暢昭氏は、4月に会長兼CEO(最高経営責任者)から社長兼CEOへ肩書きを変え、綱川智社長を代表権のない会長に退けるなど、自身に権限を集中させる意向を見せている。福地氏の更迭も車谷氏による大ナタ人事との見方が多く、外部からの圧力もあったようだ。 福地氏の代わりに4月からデバイス部門を率いるのは、経営企画部長を務め、車谷社長からの信任が厚い佐藤裕之・執行役上席常務だ。その佐藤氏を支えるのが、4月から東芝本体の経営企画・経営戦略を担当するマッキンゼー出身の加茂正治・執行役上席常務だ。デバイス部門ではすでに400人規模の人員削減などを進めてきたが、佐藤氏と加茂氏が二人三脚で半導体部門の採算改善に取り組み、今後は事業売却も含めた抜本的な施策に踏み込むとの見方も出ている。 車谷社長にとって、2020年3月期決算は中期経営計画1年目の通信簿であり、1400億円(前期比3.9倍)の営業利益は必達目標だ。2019年4~12月期決算は、売上高が前年同期比7%減の2兆4586億円、最終利益はアメリカのLNG事業の売却損などで1456億円の赤字だった。本業の営業利益はインフラやエネルギー部門が堅調だったほか、パソコン事業など不採算案件の売却やリストラ効果で大幅増益になった。 だが、デバイス部門は四半期決算ごとに下方修正を繰り返しており、直近の2月にも通期の営業利益見通しを360億円から290億円に下方修正。多数の回路を1つのチップに集約したシステムLSIで成長を目指したが、データセンターが振るわず、車載向けもデンソーの採用等にとどまるなど誤算が続いている。新型コロナの影響も加わり、東芝グループ全体でみても営業利益目標達成への道のりは不透明だ。 もっとも、車谷社長の表情は意外と楽観的だ。経営危機当時より事業ポートフォリオをインフラ中心に再構築できているため、「新型コロナが東芝の業績に与える影響は限定的」と強気の姿勢を示している。はたして車谷氏率いる東芝は真の復活を果たすことができるか』、不振な「デバイス部門」はいよいよ切り捨てられるのだろうか、それとも特に不振な部門だけの切り離しで済むのだろうか。いずれにしても、決算の動向や1部復帰できるのかが、当面の注目点のようだ。
タグ:デバイス部門は四半期決算ごとに下方修正を繰り返しており、直近の2月にも通期の営業利益見通しを360億円から290億円に下方修正 デバイス部門トップの「異例人事」 半導体事業などを含むデバイス部門 アクティビストの多くもさらなるリストラを迫っている 「株価6000円」も視野に 芝が1部復帰を急ぐ本音は、「モノ言う株主(アクティビスト)の排除」 東証が審査に慎重になる可能性も 東芝ITサービスで5年にわたって実態のない循環取引 東証は2月、直近2年分でよいとする昇格基準の緩和 東証の昇格基準緩和の恩恵を受ける 東証2部へ降格 債務超過 不正会計 東京証券取引所第2部から1部への復帰を東証に申請 「再建中の東芝が「東証1部復帰」にこだわる事情 株価を引き上げ、アクティビスト追い出しへ」 ブランドはSHIBAURAへ 親を不幸にする子供の罪は深い。東芝機械を許していなかった。東芝は東芝機械をグループから切り離した。 東芝機械は「スタンドアローン(単独)」での再出発を余儀なくされた 東芝が東芝機械株を手放した背景には、東芝機械のココム違反事件が影を落としている 17年3月3日、取引開始前に東京証券取引所の立会外取引で自社株買いを実施し、東芝が売却した東芝機械を1株506円、総額153億円で引き取った。この結果、東芝機械は東芝の持ち分法適用会社から外れた 「芝浦機械<下>ココム違反事件を「東芝」は許していなかった」 6月末に開催する定時株主総会が最大のヤマ場 ブラックロックとISSが先陣を切って賛成を表明 買収防衛には成功したが… 芝浦機械として再出発 「芝浦機械<上>TOB仕掛けた旧村上系ファンド蹴散らし再出発」 日刊ゲンダイ 有森隆 経営陣の首をかけて中計を達成する 売上高販管費比率が業界平均より7%も高いなど、収益性の低い状態が続いた 海外でも東芝のブランドがあれば必ずドアを開けてくれる (2017年に)東芝グループから離脱 村上ファンドと話はかみ合わなかった 極めて特殊なケース 実質的に経営権を握るのに経営方針を示さないというまれなTOBの形態だから通った 村上ファンド側 有事導入型の買収防衛策はガバナンス改革に逆行 スチュワードシップコードを厳格に持つ投資家も ブラックロックが賛同してくれたことが追い風に ISSや 最後まで勝てると思っていなかった 東芝機械の買収防衛策が、62%の賛成を得て可決 東芝機械が開いた臨時株主総会 「東芝機械、村上ファンドに勝っても不安なわけ 坂元社長「われわれの中期計画は評価された」」 東洋経済オンライン (その39)(東芝機械 村上ファンドに勝っても不安なわけ 坂元社長「われわれの中期計画は評価された」、芝浦機械<上>TOB仕掛けた旧村上系ファンド蹴散らし再出発、芝浦機械<下>ココム違反事件を「東芝」は許していなかった、再建中の東芝が「東証1部復帰」にこだわる事情 株価を引き上げ アクティビスト追い出しへ) 東芝問題
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