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高齢化社会(その15)(暴力検挙率20倍 祭りの衰退が怒声を上げる老人を増やした、「高齢者の高き志」と権力に腐る組織の微妙な関係、55歳新人CAの「スチュワーデス物語」 コロナに負けず今日もフライトへ) [社会]

高齢化社会については、2月6日に取上げた。今日は、(その15)(暴力検挙率20倍 祭りの衰退が怒声を上げる老人を増やした、「高齢者の高き志」と権力に腐る組織の微妙な関係、55歳新人CAの「スチュワーデス物語」 コロナに負けず今日もフライトへ)である。

先ずは、6月17日付け日刊ゲンダイが掲載した心理技術アドバイザー・メンタルトレーナー・トランスフォー ムマネジメント代表取締役の梯谷幸司氏による「暴力検挙率20倍 祭りの衰退が怒声を上げる老人を増やした」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/274690
・『市役所の窓口で怒鳴る老人が問題になっている。駅員、スマホ店員などに逆ギレする老人も少なくない。2007年に「暴走老人!」(藤原智美著)が話題になったが、高齢者の暴力による検挙率は、90年代と2015年を比べると、20倍以上に増えた。キレる高齢者にどのように対処すべきか、社会は頭を悩ませている状態だ』、「暴力検挙率20倍」とは確かに深刻な問題だ。
・『なぜ高齢者はキレるのか、心理技術アドバイザーの梯谷幸司さんはこう分析する。 「ぶつけどころのない怒りがたまっている状態ですね。そこにはいくつかの要因があります。まず、『弱い犬ほどよく吠える』というもので、強がっているのです。『先に言った者勝ち』とばかりにキレて目の前の人を押さえつけ、自分のルールを押し通そうとします。このパターンを深層意識のメタ無意識では“自分型”と言います。背景には、『人生思い通りにならない』『自分は見えない何かに縛られている』という思い込みがあるのです」 世の中が進化し、社会のルールもどんどん変化していく中で、高齢者の深層意識には、「現代に対応できない」という劣等感に似た感覚がある。 「オキシトシンというホルモン物質が不足しているのです。脳の動きには苦痛系と報酬系があります。ストレスや嫌なことがあると苦痛系が働き、副腎という臓器にコルチゾールとアドレナリンを分泌しろという命令が出ます。その結果、複雑なプロセスを経て、精神的にキレやすくなるのです。しかし、オキシトシンが分泌されると、苦痛系の動きに待ったをかけます。嫌なことが起きても『そんなこともあるよね』と許せるようになるのです」』、「脳の動きには苦痛系と報酬系があります。ストレスや嫌なことがあると苦痛系が働き、副腎という臓器にコルチゾールとアドレナリンを分泌しろという命令が出ます。その結果・・・精神的にキレやすくなるのです。しかし、オキシトシンが分泌されると、苦痛系の動きに待ったをかけます」、なるほど脳内ホルモンが影響しているようだ。
・『ではなぜオキシトシンが不足するのだろうか。 「数多くの人に接して感じるのは、『人生に甘さが少ない』と信じ込んでいるからではないかということです。人生に甘さが足りないと思っていると、人生が義務になってしまうのです。次にスキンシップ不足もあります。オキシトシンは身体接触でも分泌されますが、ハグやキスの習慣のない日本人は、加齢とともに身体接触は相当減ってしまうのでしょう」 このオキシトシンは、身体の振動によって分泌が促進されるという研究もある。 「実は、祭りの衰退もオキシトシン不足の原因ではないか。昔はみこしを担いだり、太鼓の音とともにみんなで踊ったり、祭りは参加するものでした。このときの振動がオキシトシンの分泌に一役買っていたはずです」 その代わり、現代であれば社交ダンスやスポーツがあるだろう。できるだけ人と接する機会を持つことも大切になる』、「オキシトシンは身体接触でも分泌されますが、ハグやキスの習慣のない日本人は、加齢とともに身体接触は相当減ってしまう」、「できるだけ人と接する機会を持つことも大切になる」、新型コロナウィルス危機での「社会的距離」の強要は、「オキシトシン」を減らしてしまう思わぬ副作用がありそうだ。
・『「チャールズ・ダーウィンは『進化論』の中でこう言っています。〈強いものが生き残ったわけではない。賢いものが生き残ったわけでもない。唯一生き残ったのは、変化できるものであった〉と。これからの時代は、柔軟に変化していくことが重要になります」 若い頃に比べカッとしやすくなったと自覚できる人は、積極的にスキンシップを図りたい』、「積極的にスキンシップを図」るのは、新型コロナウィルス危機が一段落してからとなりそうだ。

次に、6月30日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「「高齢者の高き志」と権力に腐る組織の微妙な関係」を紹介しよう。
・『「73歳定年制」をめぐり、自民党の国会議員の中でベテランと若手のバトルがまたもや勃発している。 2017年の秋に行われた解散総選挙のときは、当時の安倍内閣の合言葉だった「一億総活躍」に乗じて、「老人差別を撤廃せよ! 一億総活躍社会を掲げているのに矛盾しているではないか!」とベテラン議員たちが吠(ほ)えた。当時78歳だった二階俊博幹事長にいたっては、「年齢の若い人が新しい意見を持っているかと言えば、そうでない場合もある。年齢なんか関係ない」と、自らの健在ぶりをアピールしていた。 で、今回。「人生100年時代」を合言葉に、79歳の衛藤征士郎氏と74歳の平沢勝栄氏が、81歳の二階幹事長と面会し、「政府が人生100年時代を唱える中で年齢により“差別”を行うのはおかしい」と、定年制廃止を直訴したという。 しかも、「あえて若手の候補者に一言申し上げたい。高齢者の高き志に対し、果敢に挑戦し、圧倒する意気込みと迫力を示してほしい」(by 衛藤氏) などと、若者を挑発するようなコメントをし、若手議員らは猛反発している。 37歳の小林史明氏は「コロナにおいて大変国民が厳しい状況にある中で、国会議員の立場を守るための議論が行われていることに正直、優先順位が全く違うと驚きを隠せない。高き志を持っている先輩方にはぜひ堂々と小選挙区で戦っていただきたい」と切り捨て、自民党の下村博文選挙対策委員長に73歳定年制の維持を申し入れたそうだ。 ふむ。仁義なき“志”対決である』、どうも比例区での「定年」をめぐる争いのようだ。
・『若手は実力で戦うべきではないか  確かに「年齢による差別」はよろしくないし、「若い=良い、高齢=ダメ」とは微塵(みじん)も思わない。だが、このバトル、どこからどう考えても若手の勝ちと言わざるを得ない。 そりゃあ誰だって、制限を付けられるのは嫌だし、年齢という自分ではどうにもならない属性ではじかれるのは悔しい。しかしながら、衆議院の73歳定年制はあくまでも比例区のお話であって、小選挙区に定年は存在しないのだ。 「高き志」があるなら、「制度を撤廃せよ!」などと組織に頼るではなく、小林氏の言うように“右手ポンポン(腕をたたく)”と実力勝負で堂々と戦えばよろしい。 だいたい国民には「70歳定年制」を法制化し、明確に「70歳」という年齢で線引きしているのに、なぜ、自分たちのこと=国会議員になると反発するのか? 私の理解が間違っていなければ、国会議員の給与は私たちの血税である。ならば「どうせ、我が身かわいさでしょ?」と揶揄(やゆ)されないよう、国民が納得できる“材料”に基づき、制度撤回を求めてほしい。 デリケートな問題なので念のため繰り返すと、私は年齢で区切ることには基本的には「反対」である。 本コラムで何度も、定年やらシニア雇用の重要性を訴えているのも、「若い=良い、高齢=ダメ」という風潮への違和感と、ベテランが持つ暗黙知の大切さが評価されないのはおかしいと心底感じているためだ。 ただし「組織」を主語にした場合、話は別だ。組織は多様な人材で構成され、常に新しい“風”が流れている方が美しい。いかなる組織も、何年も同じ顔ぶれが陣頭指揮をとっていると、やがて腐る。 組織とはある意味生き物であり、血流がよどまない工夫が必要である。その最良の手段が多様性を持つことで、それは個人の「志」とはまた別の問題だ。 しかも、人間は実に勝手な存在で、どんなに高い志があろうとも自分を俯瞰(ふかん)できなくなることが往々にしてある。いわゆる「老害」である。とりわけ「老い」に「権力」という係数が加わると、ややこしいことになる。 ゆえに、組織においては去り際を決められない人の背中を押す制度は、ある程度必要だと考えている。 もっとも、「後進にゆずる」とか「若手を育てよう」という価値観が浸透している組織なら、そんな制度は無用だが、「肩書文化」の日本では、つい、老害を及ぼしてしまいがちだ』、「比例区」は「組織」が中心だ。もともと、「衛藤征士郎氏」と「平沢勝栄氏」は「小選挙区」の地盤を後進に譲って、「73歳定年制」がある「比例区」に移ったのだから、今になって、「定年」を伸ばせというのは見苦しい。
・『過去の栄光を失う恐怖が老害の源  「老害」は、なぜ、起きてきてしまうのか? この素朴な問いは古くからあり、老害は心理学者や人類学者、社会学者、さらには脳科学者たちの手によってアレやコレやと研究され、心理と脳の2つの側面から、いくつかの知見が得られている。 まず、人は年齢を重ねると、本人の意思や志とは関係なく、精神的にも、肉体的にも、衰えていくわけだが、この現実と向き合うのはとてつもなくしんどい。 私たちは自分が考えている以上に、「今あるもの」を手放すのを恐れる性質を持ち、特に、自分の人生の成果でもある「社会的な地位」や「社会的な役割」が失われる恐れがあると、「オレはここにいるんだぞ!」と叫びたくなる。自分の存在価値の不確かさに耐えきれなくなってしまうのだ。 その恐怖から逃れるために、人は過去の栄光にすがる。自己評価の高い人ほど、無意識に弱みを悟られたくないと心が動き、「オレって、こんなにすごいんだぜ!」と強がることで心の均衡を保とうとするのだ。 脳の老化は得意分野以外の部分から進むため、過去の栄光が最後まで残ることに加え、人は自分自身について話すと、いわゆる報酬のメカニズムがはたらき、セックス、コカイン、おいしい食事のような快楽の刺激に関係する脳の領域が活発になるという、困った特性を持ち合わせている。 そのため「オレって、こんなにすごかったんだぜ!」という過去の栄光話が、いったん始まると永遠に何度でも繰り返されることになる。 オレ様の自慢を聞かされる方は耐え難いけど、そんな話を聞かされていた人でさえ自分が年をとると、相手が聞いていようがいまいが関係なく快楽を求める脳が稼働し、「オレってすごいだろ?」的トークを繰り返してしまうリスクを抱えているのだ。) 老いは自然現象だし、それは生き物として美しいことだと個人的には思っているけど、社会的に上手に老いるのは実に難しい。ホント、社会的地位ってやっかいな代物だなあと、つくづく思う。 とはいえ、老害は年をとった権力者の問題でありながら、権力者の問題だけとも言い切れないのも、また事実だ。人は権力を嫌うくせに、権力を好むという歴然たる事実があり、これが老害を加速させてしまう側面を多分に持ち合わせているのだ。 例えば、「権力がある」とみなされているリーダーほど、部下たちから話しかけられる頻度が高かったり、権力あるリーダーの言葉にしか耳を貸さない部下がいたりするのは、どこの組織でも見受けられる。権力あるリーダーに声をかけられる方が部下たちの満足感は高まるし、チームのモチベーションを高めるには、権力への野心があるリーダーの存在が不可欠との調査研究も少なくない』、私も若い頃、自分を採用した尊敬する大先輩に連れられて、銀座のクラブなどに行ったが、そこで聞かされる自慢話にはつくずく辟易し、自分はこうはなるまいと心に誓ったものだ。
・『部下の態度が権力者を増長させる面も  また、身もふたもない言い方になってしまうが、どんなに人格的に優れていても、権力がないと部下から無能扱いされるケースがある。 「あの人、いい人なんですけどね~」「うちの上司、人間的には尊敬してるんですけど……」「人格だけじゃ仕事はできないからね~」なんて具合に、バカにされてしまうのだ。 とりわけ「ウチ」と「タテ」という、権力の独占が起こりやすい組織構造を持つ日本では、長い時間権力の座に就いた人ほど、「権力者」とみなされ、その影響力はクモの巣のごとく組織全体に広がり、「この人に好かれていればいいことがある。うん、きっとある」という、よこしまな感情を抱くメンバーを量産する。 上昇志向の強い輩ほど、“ヨイショ”を武器に「いい匂いがする」リーダーに取り入り、それがさらに権力者に権力を集中させ、権力者の絶対感を助長し、権力を盾に新しい動きを阻む鉄壁の「ジジイの壁」をつくり上げていくのだ。 それは権力者が「老い」を自覚する機会を逸することであり、やがて組織の上層部には教条主義と前例至上主義がはびこるようになり、「高い志」を持っている人ほど「何をやっても無駄」と組織を離れ、緊迫感が全くない“ウミ”だらけの組織に落ちていく。 おそらく若手議員が定年制導入にこだわるのも、そんな危機感を察知しているからではなかろうか。「壁」の中にいる人には決して感じられない組織のひずみが、権力とは遠いところ、すなわち壁の外のメンバーにはよく見えてしまうのだろう。 だいたい、ベテラン議員たちは、「年齢差別されている!」と被害妄想ばかり募らせるが、年齢差別されているのは“上”ばかりではない。ご承知のとおり衆議院議員の被選挙権は満25歳以上で、18歳で投票ができるのに、政治家となることが許されないという不合理がある。 「世界を見よ! 定年制を導入してる国は少ない!」とのたまうけど、先進国はほとんどの国が18歳以上(下院)で立候補でき、25歳以上に制限されているのは米国とイタリアなどに限られていることを、ベテラン議員たちはどう考えているのか(「諸外国の選挙権年齢及び被選挙権年齢」国立国会図書館調査及び立法考査局)。 興味深いことに、被選挙権年齢が相対的に低い国ほど、若い政治家の割合が高い傾向が認められている。ある研究によれば、21歳以下に被選挙権を付与している国においては、平均で33.4%が45歳以下の政治家で占めるのに対し、被選挙権年齢が21歳以上である国においては、この割合が27.3%に下がるという(「Raising Their Voices」IFES)。 実際、被選挙年齢の下限が18歳の英国の政治家の平均年齢は50.5歳(2017年下院)、ドイツ49.4歳(同)、フランス48歳(同)なのに対し、下限が25歳の米国は57.8歳(17-18年下院)だ。日本も54.7歳(17年衆議院議員)と高い』、「被選挙権年齢が相対的に低い国ほど、若い政治家の割合が高い傾向が認められている」、確かに面白い傾向だ。
・『若者だけでなく女性登用も多様性のカギ  女性議員についても、英国、ドイツ、フランスの女性議員比率は32%、30.7%、38.8%と軒並み3割を超えているのに、米国では19.1%と2割弱で、日本にいたっては、たったの10.1%だ。 おまけに、2000年以降、米国も含めた各国の女性議員比率が軒並み上昇しているのに対し、日本だけが全く増えていないどころか、逆に減っている。2009年、10年は11.3%だったが、12年には7.9%まで低下し、17年でやっとこ1割台に復帰した(「データで見る議会」国立国会図書館調査及び立法考査局)。 くしくも、73歳定年制の維持を申し入れた若手議員たちの要望書には、「女性をはじめとした多様な人材が、これまで以上に党公認として登用されるよう強く求める」と記されていたそうだが、被選挙年齢を下げることも早急に議論し、実現に向けて同時並行で進めないことには、大きな変化にはつながらないだろう。 ちなみに日本は2017年時点で、30歳未満の国会議員は存在していない。 2019年9月にNPO法人 Rights が行った調査では、10.1%の若者が「立候補の意思がある」、もしくは「立候補するかもしれない」と回答した。これを同法人は、日本国内全体で45万3000千人に相当する若者(8~24歳)が潜在的立候補者となる可能性が示されたと指摘している。 つまり、もし本気で「年齢による差別」を訴えるなら、被選挙権の年齢についても同時並行で進めるべきだ。で、そのときはぜひとも、国政選挙なら選挙区で300万円、比例区で600万円を選挙管理委員会に供託しないと立候補ができないという、世界一高い供託金を下げる、あるいはこの制度をなくす議論もしてほしいものだ。 供託金の代わりに、北欧で導入されているような、一定数の支持者の署名提出を立候補の条件とする方法を取り入れれば、若い人、シングルマザー、派遣や非正規労働者、中小企業の経営者など多様な人たちが立候補できる。候補者の裾野が広がり、それによって選挙への関心も高まり、投票率アップも期待できる。 今のように地盤・看板・鞄(かばん)の三バン(組織、知名度、資金)のある人が立候補し、既得権を持っている人や、利権の恩恵を受ける人ばかりが必ず投票に行くような暗黙のシステムは健康的じゃないと思いますけど、ベテラン議員のみなさん、いかがですかね?』、「供託金の代わりに、北欧で導入されているような、一定数の支持者の署名提出を立候補の条件とする方法を取り入れ」るとのアイデアには大賛成だ。

第三に、6月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの草薙厚子氏による「55歳新人CAの「スチュワーデス物語」、コロナに負けず今日もフライトへ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/240263
・『航空業界は新型コロナウイルス感染症の拡大で甚大な影響を受けた。人の移動が制限されたことで欠航が相次ぎ、開店休業状態を余儀なくされた。しかし、そんな未曾有の危機に見舞われた航空業界で、客室乗務員として働く夢を諦めず、挑戦した日本人女性がいた。子育てを終え、55歳にして新たなチャレンジを続け、見事夢をつかんだ一人の女性の物語をお届けする』、そんな夢のような話があったとは、喜ばしいことだ。
・『3人の子育てを終えて挑戦した学生時代からの夢  WHO発表(6/15時点)によると、全世界の新型コロナウイルス感染症による死者数は42万人を超えた。最も被害が大きい米国では、これまでに10万人以上が死亡、約180万人以上が感染しており、終息への道のりはまだまだ遠い。 「今、ニューヨーク州のロチェスターのホテルにいます。その後、ワシントンDCに行って、またここのホテルに戻って、家に帰るのは3日後になります」 東京アラートが発動されている中、新型コロナの感染を心配する日本にいる友人に送られてきたメールだ。 このメールを送った女性の名前は奈々美さん(仮)。年齢は56歳で、米国人と結婚して、現在はニュージャージー州に住んでいる。彼女は昨年秋、長年の夢だった米国の大手航空会社の客室乗務員(CA)試験に合格。55歳で客室乗務員としてのデビューを果たしたのだ。 奈々美さんは大学卒業時、健康上の問題でCAの夢を諦めなければならなかった。しかし、世界を飛び回る仕事に就くことをどうしても諦め切れず、卒業後はオーストラリアと米国を放浪した。そして1992年、28歳のときに現地で知り合った男性と結婚。その後3人の子どもに恵まれて、無事に成人を迎えた子どもたちは家から巣立っていった。 そこで彼女はこれまでの人生を振り返り、残されているこれからの長い人生の時間をどう使ったらいいかを考えたという』、「残されているこれからの長い人生の時間をどう使ったらいいかを考えた」、大したものだ。
・『50歳で老後の準備をする日本人 新たな生き方を模索する米国人  子育てが終わった後、08年からは障害者学校の教師として働いた。その背景には、大学時代は社会福祉学科に在籍していて、人のために役立ちたいという強い思いがあった。障害者教育はもちろん、介護士の資格も取り、やり甲斐がある仕事だったが、心の奥底から求めていたものとは少し違っていることに気づく。 「自閉症や発達障害の子どもの職業訓練の仕事がメインでした。障害がある生徒たちが、社会に出て行くには、訓練が必要です。職場体験などに連れて行ったりしました。障害があっても自立できるように、寄り添ってきました。そんなとき、さらに興味があった医療に携わりたい、社会のために役立ちたいと思ったのです」 そこで選んだのは救急救命士だった。実際の仕事は12時間拘束されるハードなものだ(午前6時から午後6時までと午後6時から午前6時まで)。そこで彼女は障害者学校の教師として働きながら、救急救命士の資格を取ってボランティアとして続けた。 「救急救命士の仕事を選んだのは、医療現場に興味があったことと障害者の学校の仕事に役立たせたかったこと、週末に自分の仕事をしながらできると思い学校に通いました。そこには非日常の世界がありました。救急車を運転したこともあります。いつ呼ばれるか分からないので、ストレスはたまっていきましたが、人のために役立っていると思うとそれも吹っ飛んでしまいました」 日本の社会では50歳を過ぎると、「老後の貯蓄はいくら必要か」や「終活に向けての断捨離をすべきだ」などとマスコミにあおられ、残りの人生はできるだけ快適に、のんびりと過ごすことを考える人が多い。 しかし、米国では全く違う。奈々美さんはたまに日本の友人と話をすると、文化の違いを感じることが多々あったという。そこで彼女は一念発起して、30年以上前に諦めた夢に再びチャレンジすることを決心したのだ。 それは並大抵な努力ではかなわないのは分かっていた。しかし、彼女が住んでいる米国ではその夢を笑う者は誰もいなかった』、「障害者学校の教師」、「救急救命士」までやったとは、本当に意欲的で、老いを感じさせない。
・『リアル「スチュワーデス物語」 壮絶な競争を生き残り首席で卒業  19年5月、キャビンアテンダントの求人に申し込み、数多くの志願者の中で大手航空会社系列の面接に合格したのだ。ただしそれで終わりではなかった。その後、3週間にわたって合宿によるトレーニングスクールがある。ここでついていけないものは振り落とされ、脱落してしまう。毎日何らかのテストが行われ、基準点以下は落とされる。80年代に日本ではやった「スチュワーデス物語」を超える、壮絶な世界だった。 「日本の単語帳を使ってエアポートコードなんかを全て覚えました。でも一番大変だったのは避難訓練です。一字一句間違えず、一挙手一投足、全部正しく実行しないとパスできないんです。急病人が出たときの対処法、緊急時の行動などは救急救命士のときに全部やってきましたから経験があったのです。心臓マッサージなんかは、ほとんどの人がやったことがない。私はインストラクターの人よりうまかったです(笑)」 24人いた志願者はふるいにかけられ、途中で同室だった仲間もいなくなってしまった。まるでオーディション番組のアメリカン・アイドルのような厳しさだ。最終合格者は半数以下の11人だった。 合宿トレーニングの最後に、筆記と実習のテストの成績を合わせたGPA (Grade Point Average) が発表された。彼女のポイントは一番高く、首席での合格となり、卒業式では総代として全員の前で代表スピーチを行ったのだ。 「レッスンの最終日に21歳の子が私に向かって『人間って、いくつになっても道を切り開くことができるんですね』って言ってきたから、『うるさいわ!』って言ってやりました。自分の子どもより年下の同僚です(笑)」』、米国での「キャビンアテンダント」は、日本より地位は低いのかも知れないが、「首席で卒業」とは大したものだ。
・『マスクを着けない文化に苦労 夢は国際線長距離フライトでの勤務  そして19年秋、晴れて客室乗務員として勤務し、55歳の新人スチュワーデスとして新たなスタートを切った。まさにそれはアメリカンドリームの世界だ。 しかし20年に入り、突然暗雲が立ち込める。誰もが予想しなかった新型コロナウイルスの影響で、航空会社はどこも大幅な運休や減便となってしまったのだ。利用客が激減した現在、客室業務員にとっては何より働く場がない。 そこで米国財務省は、米系大手航空会社に対して、労働者を保護する給与支援プログラム(PSP)に基づく資金援助を開始し、約1兆3100億円の資金援助を実施した。そのため、このプログラムを利用する会社に対しては今年9月末までの間は、従業員の解雇などは禁止される措置が取られた。 米国の航空会社ではCAとパイロットに対しては「Seniority Rule(先任権制度)」というものがあり、先に就職して勤続年数が長く、古い従業員は後から就職した者よりも有利な扱いを受けられる権利がある。入社番号の桁が小さい人は優遇され、番号が大きく、最近入社したスタッフから解雇されることになる。 「利用客については、少しずつ回復の兆しが見えてきましたが、感染前の水準にはまだまだです。4月はガラガラで、1回のフライトは政府関係者や航空関係者がほとんどで、乗客が1人だけというときもありました。5月の前半は忙しかったのですが、後半は1度も飛んでいません。給与支援プログラム(PSP)のおかげで基本給だけはもらえますが、感染前の水準に戻らなければ10月以降はどうなるのか不安です」 奈々美さんはこの時期のフライトで何よりも困ったことがあるという。マスク着用の習慣がない米国では、地域によってはいまだにマスク着用に抵抗があるというのだ。 「ニューヨークで感染が広がってきた頃はまだまだ米国ではマスクを着けないで勤務する人がほとんどでした。そのためフライトでも着けることができず、ポケットに除菌ジェルを忍ばせて使っていました。ようやく5月から対策として、乗客や乗務員にマスク着用が義務付けられました。乗務員は検温、マスク、手袋はマストです」 米国では南部や中西部の州では、日常生活でもマスクを着けていない人が多く、フライトの際にお願いしてもマスクをしてくれなかったり、何かと大変だったという。 「バンダナを巻いてゴムで留めているだけだったり、ガスマスクやゴーグルをしてくる人もいるし、いろんな人がこの新型コロナの環境下で搭乗してくれます。パイロットにも面白い人がたくさんいて、副業としてウーバーのドライバーをしている人や、整備士だったのが空を飛びたくなってパイロットになったり、ヨットで世界一周していて空を見ていたら飛行機が見えてきれいだと思ったから帰ったらパイロットになったとか。今の最低賃金と比べたら、給料は前職の方がもらえていました(笑)。だけど全然後悔はないです。乗客も含めて魅力のある人、面白い人と出会えることが、今は一番の支えですね」 現在、彼女は近距離線の担当で、国内線やカナダなどへのフライトが中心だが、搭乗する人が戻ってきて、便数が回復して雇用環境が整えば国際線、特に長距離線に移行したいと思っている。 夫や3人の子どもたちはきっと誇りに思っているに違いない。米国でつかんだ55歳のスチュワーデス物語は、今始まったばかりである』、「Seniority Rule」でレイオフされずに、勤務が続き、「国際線、特に長距離線」に「移行」できることを祈りたい。
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