SSブログ

保育園(待機児童)問題(その10)(日本で幼児教育を「義務教育」にできないわけ 最大のハードルは幼稚園と保育所の「壁」、保育園や幼稚園に通わない「無園児」は9万5000人 自治体も放置で救済方法はただ一つ、全国で波紋「保育士賃金カット」横行の残念実態 今後は「監査対象」になる可能性がある、公然と消える「保育士給与」ありえないカラクリ 国も黙認する 都合のいい「弾力運用」の実態) [社会]

保育園(待機児童)問題については、昨年4月15日に取上げた。久しぶりの今日は、(その10)(日本で幼児教育を「義務教育」にできないわけ 最大のハードルは幼稚園と保育所の「壁」、保育園や幼稚園に通わない「無園児」は9万5000人 自治体も放置で救済方法はただ一つ、全国で波紋「保育士賃金カット」横行の残念実態 今後は「監査対象」になる可能性がある、公然と消える「保育士給与」ありえないカラクリ 国も黙認する 都合のいい「弾力運用」の実態)である。

先ずは、昨年7月15日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「日本で幼児教育を「義務教育」にできないわけ 最大のハードルは幼稚園と保育所の「壁」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/291939
・『7月21日に投開票される参議院議員選挙。与党は、10月に予定通り消費税率を10%に引き上げるとともに、その増税財源で幼児教育の無償化を実施することを公約に掲げている。 2017年9月に衆議院を解散する際、10%への消費増税分の使途を変更し、教育無償化にも充てると安倍晋三首相は明言した。その衆院選で与党が勝利し、3歳から5歳までのすべての子どもたちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化することを2017年12月に閣議決定した』、「消費増税分の使途を変更」与党だけで勝手に決めた頂けない。
・『教育無償化と義務教育化には違いがある  フランス議会上院では7月4日、義務教育を現在の6歳から3歳に引き下げる法案が賛成多数で成立し、今年9月の新学期から実施されることが決まった。義務教育を3歳からとする国は、ハンガリーに次いで2カ国目という。義務教育開始年齢の引き下げはマクロン大統領による改革の一環として提案された。これにより教育の不均衡を是正したい意向だ。 わが国も、日本国憲法で義務教育は無償とするとしている。3歳からすべての子どもたちの教育を無償にするとうたうのであれば、なぜ「義務教育は3歳から」と言わないのだろうか。 実は、教育無償化と義務教育化には、かなりの隔たりがある。 日本国憲法では義務教育は無償とするとしており、授業料が無料でないと義務教育にはならない。ただ、授業料を無料にしたからといって、必ずしも義務教育になるわけではない。 義務教育とは、一義的には親に対して子に教育を受けさせる義務を負わせることだ。日本国憲法でも、国民の義務として教育を受けさせる義務を規定している。それが全うされなければ、いかに教育費が無償になっても義務教育とは言えない。別の言い方をすれば、子を任意で通わせた学校の教育費が無償だからといって、その学校教育を義務教育とは言わないのである。) 今般、フランスが義務教育を3歳からとした背景には、97.6%の3歳児が、日本の幼稚園にあたる保育学校に通っている現状がある。3歳児を通わせるのは任意である状況でこれほどの通学率だから、親の教育を受けさせる義務という点で、3歳から義務教育にしてもほとんど支障がないとみられる。ただ、貧困地域では6歳未満で保育学校などに通う子どもの割合は高くないのが実情である。 さらに、フランス政府の意図として、この義務教育の開始年齢引き下げによって、生まれた家庭の事情にかかわらず、皆が公平に人生のスタートラインに立てることを目指している。 親の世代の所得格差が子の世代に引き継がれないようにするには、子の教育機会の均等を確保することが重要である。とくに、幼児期に育まれる読み書きの能力に差があると、その後の人生を大きく左右するという。 幼児教育は認知能力を高める意味でも、生涯を通じた生産性を高める意味でも、ほかの年齢層の教育よりも一層重要であることは、教育経済学の知見から明らかになっている。国際的にもそのように認識されており、幼児教育に力点を置くことは論理的にも正当化できる』、「幼児教育は認知能力を高める意味でも、生涯を通じた生産性を高める意味でも、ほかの年齢層の教育よりも一層重要」、その通りなのだろう。
・『義務教育化の実現には高いハードル  フランスのこの取り組みについて、日本でも一部に賛成する声があるが、日本の実情はどうか。2014年7月に出された教育再生実行会議の第5次提言は「3〜5歳児の幼児教育について、財源を確保しつつ、無償化を段階的に推進し、(中略)幼稚園、保育所及び認定こども園における5歳児の就学前教育について、設置主体の多様性等も踏まえ、より柔軟な新たな枠組みによる義務教育化を検討する」と打ち出した。 その後、前述のように、消費税10%時に3~5歳児の幼児教育を全面的に無償化する財源を確保した。この提言どおり、5歳児の義務教育化が検討されるのだろうか。 参院選の公約に、教育無償化はあっても義務教育化はない。義務教育化の選択肢が消えたわけではないが、実現が難しいのが現状である。 幼児教育を義務教育にすると、教育を受けさせたい親が子どもを通わせる教育機関が日本中どこにでも存在しなければならない。待機児童のような事態が起きてはならない。目下、政府は待機児童をなくす努力をしてはいるが、3歳児でもまだ待機児童は残っている。 今回の教育無償化は、親が3歳以上の子どもを幼稚園や保育所などで教育を受けさせたいならその費用を無償化することを決めたまでで、親の意向とは無関係に3歳以上の子どもに全員、教育を受けさせる義務を課すことを意味するわけではない。教育・保育費用を無償にする財源が確保でき、最低限の教育カリキュラムを確保できても、3歳以上の子どもに教育を受けさせる義務を親に負わさなければ、3歳からの義務教育とは言えないのである。 確かに、前述の教育再生実行会議の提言も、明記しているのは5歳児の教育だけである。ちなみに、5歳児義務化は1971年に中央教育審議会が出した答申で一度打ち出されたことがあるが、結局実現には至っていない』、何故なのだろう。
・『保育所は学校教育法上の教育機関ではない  日本で3歳以上を義務教育化する最大のハードルは、保育所は学校教育法が定めた教育機関ではない点だ。前述の提言でも、設置主体の多様性を踏まえなければならないほどである。義務教育である以上、教育機関がその教育を担い、政府が定めた学習指導要領などに準じた教育を税金を投じて無償で施す。義務教育は学校教育法で規定されており、同法に基づく教育機関ではない保育所は義務教育を担えるのか、と問われたりもする。 そもそも、保育士と幼稚園教諭は資格が異なる(ちなみに、保育士資格取得後に3年以上の実務経験を経て、幼稚園教員資格認定試験に合格すれば、幼稚園教諭2種免許状が取得できる仕組みはある)。教育を受けさせたい親からすれば、どちらであってもいい教育をしてくれればそれでよいのだから、つべこべ言わずともと思うかもしれない。 しかし、義務教育化するとなれば、幼児教育の質をどう担保するかが問われる。税金を投じただけでは解決できない課題の1つである。 結局、フランスは人材育成策としての幼児教育義務化を3歳児から進めることにしたのに対し、わが国は少子化対策としての幼児教育無償化をするにとどまった。教育を施す機関は幼稚園も保育所も従来と変わらない。 日本で幼児教育を義務化するには、幼稚園と保育所の「壁」を解かなければならない。幼稚園と保育所の区別にとらわれている間に、わが国にとって大切な次世代の育成が滞ってしまっては本末転倒である』、幼保一体化の動きもいつの間にか尻すぼみになったようだ。縦割り行政の弊害は深刻だ。

次に、4月20日付けデイリー新潮「保育園や幼稚園に通わない「無園児」は9万5000人 自治体も放置で救済方法はただ一つ」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/04200556/?all=1&page=1
・『2018年3月、東京都目黒区で両親から虐待されて亡くなった船戸結愛ちゃん(当時5歳)は、保育園や幼稚園に通っていない「無園児」だった。北里大学医学部の講師で医学博士の可知悠子氏は、4月に『保育園に通えない子どもたち―「無園児」という闇』(ちくま新書)を出版。虐待を受けている無園児が少なからずいると警鐘を鳴らしている。 保育園や幼稚園に通わない未就園児は、地域社会とのつながりがないことから、「無縁」とかけて「無園児」と呼ばれている。可知氏の専門は、社会疫学。健康は社会環境などの要因に影響されることを明らかにする学問で、幼児教育は本来、専門外だ。彼女が無園児の存在を知ったのは、2017年10月である。 「安倍首相が同じ年の9月の会見で、3~5歳の幼児教育を無償化すると発表しました。それを受ける形で、厚労省のさる官僚が10月にフォーラムを開催しました。その方は講演で無園児の統計を紹介。3~5歳の子どもの1割は保育園や幼稚園に通っておらず、生育状況すら確認されていないと話していました。この無園児はどういう子どもなんだろう、と私の心がざわつきました。ひょっとして、無園児の中には虐待を受けている子どもがいるのではないかと、危機感を覚えたのです」 と語るのは、可知氏。彼女は無園児のことが気になり、研究を始めたという。 「幼児教育の色んな専門家にも話を聞きました。ですが、私のような危機感を持っていた人はいませんでした。保育園や幼稚園に通わせないのは、お金持ちで自宅で独自の教育を受けさせているからだろうと言うのです。正直言って、私の危機感は間違っているのかもしれないとも思いました。そんな時、目黒女児虐待事件が起こったのです。結愛ちゃんが無園児だとわかった時、『やはり、問題だ』と思いました」 2018年の内閣府「幼児教育の無償化に係る参考資料」によると、無園児の割合は、3歳児で5・2%(5万1000人)、4歳児で2・7%(2万7000人)、5歳児で1・7%(1万7000人)となっている。3~5歳までの無園児は9万5000人もいることになる』、「無園児」がこんなにいるとは驚かされたが、確かに「虐待」の温床なのかも知れず、問題だ。
・『義務化しかない  「3歳から5歳というのは、脳の発達が最も著しい時期です。この時期に友達や大人と関わってコミュニケーション能力をつけ、生活習慣、集団生活を学びます。また、親だけでなく、養育者となる人との信頼関係も築きます。それによって、自分が人として価値があると理解し、他人も価値があると認識するようになるのです。ちゃんとした家庭でしたら適切な養育環境を整えることができるので、保育園や幼稚園に通わなくてもそれほど問題はありません。ところが貧困家庭や児童虐待をしている家庭は、十分な養育環境とはいえません。そういう家庭の子どもたちこそ、幼児教育を受けさせる必要があるのです」(同) 幼児教育がいかに重要か、これを裏付ける調査がある。1962年から67年にかけて米ミシガン州のペリー小学校付属幼稚園で行われた「ペリー就学前プロジェクト」は、3~4歳の貧困家庭のアフリカ系アメリカ人の子どもたちを対象に、手厚い幼児教育を行った。「このプロジェクトは2年間にわたって、週5日、毎日2時間半ずつ教育を受けさせています。教育といっても、子どもの自発的な遊びを重視したものです。優秀な先生が子ども5~6人を担当し、週に1回先生が家庭訪問を行って学校と家庭での子どもの様子などについて話し合うのです。このプロジェクトに参加した58人の子どもたちと、参加しなかった65人の子どもたちを40歳まで追跡調査しています。その結果、プロジェクトに参加した子としなかった子の間に大きな差が生じていることがわかりました。幼児教育が貧困の連鎖を断つ鍵となることが判明しました」(同) IQが90以上の5歳の子は、プロジェクトに参加した子で67%、参加しない子は28%。高卒以上は、参加で77%、不参加は60%。27歳時点で、過去10年間に生活保護受給は、参加が59%、不参加が80%。40歳時点で仕事に就いている人は、参加が76%、不参加が62%。40歳で年収が2万ドル以上は、参加が60%、不参加が40%。40歳で5回以上逮捕は、参加が36%、不参加は55%と、明らかに差が出ているのである。 「厚労省は2014年度より、児童虐待防止対策の一環で『居住実態が把握できない児童に関する調査』を実施。さらに、18年度からは、目黒女児虐待事件を受け、『乳幼児健診未受診者、未就園児、不就学児等の緊急把握調査』を行っています。これによって市区町村は、無園児を把握するようになりました」(同) ところが、無園児は把握していても、無園児を幼児教育施設へ通わせる取り組みを行っている自治体は、ほとんどないというのが現状だ。 「東京の杉並区は、19年度から無園児家庭へアウトリーチ(支援者が直接出向く家庭訪問)し、子育て支援サービスの情報提供や相談を行う『子育て寄りそい訪問事業』を始めました。まだノウハウがないので、手探り状態ですね。足立区は、15年度から4~6歳児を対象に『あだちっ子歯科健診』を始めたところ、支援を要する無園児がたくさんいることがわかりました。兵庫県明石市は、子どもの政策に力を入れている全国でも珍しい自治体で、今年の10月から、0歳児のいる家庭に月に1回程度、おむつなどの育児関連用品を無償で届け、母子の健康状態や虐待の有無をチェックする予定です。自治体が無園児家庭を支援しないのは、高齢者の支援に重点を置いているからです」(同) では、十分な養育環境下にない無園児を救うにはどうしたらよいのか。 「昨年10月から、3~5歳の幼児教育が無償化されました。フランスは、昨年から義務教育を3歳からに引き下げました。日本は、幼児教育が無償化されたのですから、3歳から義務化してもいいのではないか。そうすれば、自治体も動かざるを得なくなります。子どもの数だけ必要な保育園や幼稚園をつくるでしょう。無園児家庭を救うには、こういう方法しかないと思っています」』、「ペリー就学前プロジェクト」の結果は、「幼児教育」が「貧困の連鎖を断つ鍵となることが判明」、とその重要性を明確に示している。「保育園や幼稚園」の違いといった問題はさておいても、やはり「3歳から義務化」を政治主導で強力に推進するべきだろう。

第三に、6月5日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの小林 美希氏による「全国で波紋「保育士賃金カット」横行の残念実態 今後は「監査対象」になる可能性がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/354676
・『新型コロナウイルスの感染拡大に伴い緊急事態宣言が発令された後、保育園は休園になるか登園自粛要請を行ってきた。登園児数が減ったことで職員配置は縮小され、その結果、保育士たちの自宅待機・休業が広がり、賃金カットとなるケースが全国各地で続出した。 しかし「保育士の賃金カット」は完全に誤っている。休業しても認可保育園などで働く保育士の給与は満額支給されることを国が保証しているのだ。 この問題について筆者は「コロナで保育士の『給与4割カット』は大問題だ」(4月21日)、「コロナがあぶり出した保育士『ありえない格差』」(5月31日)の2回にわたって報じてきた。この記事を読んだことを機に、賃金カットに疑問を持った保育士らが声をあげる動きが広がり、行政も対応を急いでいる。 全国で緊急事態宣言が解除されたものの、6月末まで保育園の登園自粛を要請する自治体は少なくない。いつ第2波が起こるかもわからないなか、まだ保育士の給与について誤った運用を行う園は後を絶たず、問題は深刻だ。そこで公費で運営費が補償される保育園では保育士の賃金が守られることを、改めて整理したい』、このような不当労働行為が何故横行しているのだろうか。
・『「納得がいかない」立ち上がる保育士たち  「自宅待機を命じられ、賃金は4割支給と言われて納得がいかない」 筆者の元に、関西地方の公立保育園で働く保育士Aさんから、メッセージが寄せられた。Aさんはもともと正規雇用だったが、子育てを機に非正規雇用に転じた。 Aさんは仲間に呼びかけ、筆者の記事をプリントアウトして自治体と交渉。最終的に賃金は100%補償に変更されたが、過去3カ月の平均賃金から算出されたのは、なんと実質6割の金額で、それ以上の交渉の余地はなかった。Aさんは、「非正規雇用で働いている私が悪いのか」と退職を考え始めている。 すでに報じたとおり、コロナの影響で保育士が辞めることなく体制を維持できるように、国は特例を設けている。具体的には、私立の認可保育園には「委託費」という名の運営費が、公立保育園や認定こども園などには「施設型給付費」という名の運営費が、満額支払われている。委託費と施設型給付費は、園児の年齢や地域、保育園の規模に基づく保育単価の「公定価格」から計算される。 委託費の給付関係を所管する内閣府の担当者は、「公定価格に含まれる保育士の人件費も含めて“満額支給”している。休業しても給与を減らさず支給するものと想定して委託費を減らさずに支給している。ノーワークノーペイという状況は想定していない」と説明した。 これを記した初回の記事が掲載された1週間後の4月28日、内閣府は「コロナの影響を受けても運営費用は通常どおり給付を行うため、人件費も適切に対応するように」という内容の通知を出すに至った。 その後、新聞各紙も同様の報道を行った。5月29日には、前述した内閣府の通知に重ねる形で厚生労働省もより具体的な通知を出して、適正な賃金の支払いと年次有給休暇を強制して取得させないよう呼び掛けた』、「休業しても給与を減らさず支給するものと想定して委託費を減らさずに支給している」、「内閣府」や「厚労省」の通知は余りに遅い。
・『横浜市や世田谷区は…  国に先駆け、横浜市では4月8日に施設給付費・委託費や職員給与について、保育園の園長や事業者に通知を出している。園児の登園や職員の配置状況に関わらず、給付費・委託費等の支給は通常通り行うこと、職員は常勤・非常勤を問わず、今月に予定されていた勤務表に基づいた給与を払うよう求めている。FAQ(よくある質問と答え)では、残業代や交通費などの手当についても、給与規定等に基づいて対応するよう書かれている。 東京都世田谷区は5月1日、横浜市と同様の通知やFAQを出し、休業や年次有給休暇の取得を促すこと等がないよう、適切な対応をするように求めている。世田谷区では、処遇改善加算について「賃金改善の実績報告で、賃金が減額されていた場合は処遇改善加算が返還となる場合がある」と注意する徹底ぶりだ。処遇改善加算は基準年度(原則、2012年度)と比べて賃金が上がっていなければ、つかないからだ。 こうした通知が市区町村から直接届くことで、不当な賃金カットには歯止めがかかるはずだ。 ある自治体の保育課長は「市区町村が通知を出さないなら守らなくてもいいと考える事業者がいるため、通知をきちんと出したほうがいい」と明かす。実際、都内のある区では、私立の認可保育園で働く保育補助者が、4月中旬の段階では「自宅待機の間は無給」と宣告されていた。国が4月末に人件費に関する通知を出し、ゴールデンウィーク明けに自治体が同様の通知を出すと、園側は「休業中の賃金は満額支給する」と手の平を返した。 東京都小平市では、保育士らが市に通知を出すよう求めた。筆者の記事を読んだことで休業しても満額の賃金が得られると知った非正規雇用の保育士や保育補助者が声をあげた。 小平市内の保育園では、「無給と言われた」「最初は無給と言われたが、あとから6割支給と言われた」「これから園の収入が減るからと言われるばかりで、満額補償に応じてくれない」「正規と非正規は区別する」という露骨なケースまであり、「本来は全額補償されるべきだ」と納得いかない保育士らが、市議会議員や国会議員に窮状を訴えた。 保育士から相談を受けた竹井ようこ市議会議員は小平市に対して、保育士の声を伝え、「きちんと対応している保育園もあるが、非正規雇用の保育士が休業しても人件費を100%補償するよう、市としての通知を改めて保育園に出すべきだ」と何度も要望したが、「園の事情もあるため個別に対応する」と叶わなかった。 小平市役所の保育課に確認すると、「市にも直接、保育士からの相談が寄せられ、どの保育園かわかれば、保育園と話をしている。市としての正式な通知は出していないが、東京都による賃金に関する通知を添付して5月7日ごろに、各園に保育士への給与の満額支給を意図するメールを配信した。減収とならないような国の通知を事業者が知らないこともあるため、周知徹底に努めたい」と答えた。 竹井市議は、「市として通知を出す意味は大きいはず。国が特例措置をしているのだから、市はコロナ禍で個々の保育士が100%補償されているか、不利な立場になりやすい非正規が理由なく賃金カットされていないか調査し、毅然とした態度で指導すべき。正規と非正規に対応の差があってはいけない」と憤る』、「小平市役所」が「「園の事情もあるため個別に対応する」と一律の「通知」を拒否したとは驚くべき「保育園」寄りの姿勢だ。
・『参議院の厚生労働委員会でも紛糾  6月2日、参議院の厚生労働委員会では、竹井市議とともに保育士の窮状をヒアリングした石橋通宏参議院議員が、不当な賃金カットについて取り上げ、「国は実態を把握しているのか。常勤職員や非常勤職員を問わずに賃金を支払うということでいいか」と問いただした。 内閣府は「全体像は把握していないが、個別に問い合わせや相談を受けている。保育施設の収入を補償し、そこには非常勤職員の人件費も含まれている。通常の賃金を支給するよう自治体には指導を依頼している。同じ条件で自宅待機する常勤と非常勤を区別するのは望ましくない。非常勤にも適切に人件費が払われるよう指導したい」と明確に答えた。石橋議員は、「人件費を他に流用してはいけないということ。きちんと支払うよう指導をお願いしたい」と念を押した。 また、小平市では、小学生の子がいる保育者が「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」の活用を事業者に拒まれ、賃金カットが言い渡されたケースがあった。竹井市議は「手続きの煩雑さを嫌って事業者が申請しない例がある。手続きの簡素化、雇用されている側でも個人申請できるようにする、職員から助成申請の申し出があれば事業者が必ず申請するよう義務付けるなど、制度の改善が必要だ」と指摘する。 石橋参議院議員も同助成金が活用されていないことや、相談窓口で「保育士が対象外」と言われているケースがあることも問題視し、委員会の場で改めて同助成金が保育士も対象であることを確認し、「子どもの未来をつくるのが保育士。常勤・非常勤で差別や区別のない、穴のない制度にし、助成金が分け隔てなく届くようにしてほしい」と国に要請した。 この「小学校休業等対応助成金」や「雇用調整助成金」は認可保育園なども対象になるかどうか、内閣府は4月21日に記事が掲載された段階では「正式見解を準備中」としていたが、5月29日に結論を通知した。 雇用調整助成金については、認可保育園など給与に公費が充てられている職種(保育士や調理員など)は対象外となる。ただ、認可保育園や認定こども園などでも人件費のなかで明示されていない職種、認可外保育園、施設型給付費や地域型保育給付費以外で実施する地域子ども・子育て事業は、雇用調整助成金の対象になる可能性があり、個別に都道府県やハローワークに問い合わせる。 一方の小学校休業等対応助成金は、公定価格とは趣旨が異なり、要件を満たす認可保育園の事業者は助成金の申請ができる。ただ、そもそも公定価格で施設の収入が保証されていることから、「助成金の活用にあたっては代替要員の人件費など追加的な費用に充てるなどして、人件費の支出は適切に対応するのが望ましい」と書かれている』、こんなに混乱が予想されるのであれば、国は自治体任せにせず、率先して「通知」で周知徹底を図るべきだろう。
・『延長保育を理由にする園もあるが…  このような制度があるため賃金カットを行う理由はないはずだが、保育園によっては「委託費は守られたとしても、延長保育など利用実績に応じて受ける補助が大きく減る」ことを心配し、賃金カットの理由にするケースもある。しかし、延長保育などについても国は目を配っている。 延長保育、一時預かり、病児保育事業への交付金について、内閣府と厚生労働省は連名で4月17日に「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う子ども・子育て支援交付金の取り扱いについて」という事務連絡を行い、保育園の収入が減らないよう配慮している。 延長保育、一時預かり、病児保育の事業は、自治体が1年単位で民間事業者へ委託し、職員の雇用が行われるため、コロナで減収となっては影響が出てしまう。そこで、コロナの影響で事業が実施できなかった場合でも、利用者の家での見守り、利用予定だった保護者へ電話で相談支援するなど、できる限りの支援を行ったと市区町村が認めた場合は、通常の利用と同等のサービスをしたとみなして補助が受けられるようになっている。 ほか、保護者が病気になったときや育児疲れのときにも利用できる「ショートステイ」、仕事で夜間や休日に利用できる「トワイライトステイ」をはじめとした、市区町村が行う子育て関連事業も、すでに雇用していた職員の人件費など、実際に事業者の負担が発生する経費は担保される。 ちなみに、「コロナ対策で消毒液などの出費がかさむ」ことも賃金カットの理由にされやすいが、厚生労働省は3月10日、感染対策で物品を購入する費用の補助を決めている。自治体が窓口となり、認可保育園、幼保連携型認定こども園、認可外保育園などは、1施設当たり50万円を上限に、子ども用マスク(不足があれば大人用マスクも可)、消毒液、体温計、空気清浄機、液体石鹸、うがい薬などを幅広く買うことができる。国内で初めて感染者が確認された2020年1月16日から、今年度内の購入費用が対象となる。 だからこそ厚生労働省は5月29日、前月の内閣府通知に重ねて通知を出し、登園自粛で園児が減った場合の職員の賃金と年次有給休暇の取り扱いについて、より強いトーンで注意喚起したのだろう。 具体的には、①コロナの影響で職員体制が縮小し、やむを得ず職員を休業させる場合には、休業中の手当を支払うよう就業規則に定め、安心して休める体制を整えること、②施設型給付費や委託費が支給されている認定こども園、幼稚園、認可保育所、そして小規模保育、家庭的保育などは、運営費が通常どおり給付されていることを踏まえ、職員体制の縮小にあたっては、休ませた職員についても通常の賃金を支給するなど人件費の支出を適切に対応すること、という2点を記載した。 そして、年次有給休暇は原則、労働者が請求する時期に与えるもので、使用者が一方的に取得させることはできないものだと踏み込んだ。さらに、「都道府県や政令市・中核市は、管内の市町村や保育所にこの通知を周知し、指導監査の際に確認する項目として留意すること」を求めた。 つまり、賃金が満額支払われない、年次有給休暇を強制されることは不適切で、指導監査すべきことだというのだ。日頃から自治体は「民間の給与額に口を挟めない」という悩みを抱えてきたが、今回のコロナ禍では、それは通用しないことを意味する』、「日頃から自治体は「民間の給与額に口を挟めない」という悩みを抱えてきた」、というのも「保育士」などの給与に対しては、大いに「口を挟め」る筈なのに、単に一般論で責任放棄しているに過ぎないようだ。
・『江東区が送った、毅然とした通知文  6月3日、東京都の江東区は、コロナ禍の賃金と年次有給休暇の取り扱いについて、認可保育園の運営事業者に通知文を送った。国の通知と同様、「職員の賃金について減額等することなく通常どおりの金額を支払うこと」「年次有給休暇を使用者が一方的に取得させないこと」と記した。そのうえで、保育施設の検査(監査のこと)で、賃金の支払いと年次有給休暇の取得状況について確認すると、厳しい姿勢を見せている。 江東区役所の保育課長は「国が具体的に通知したことを受け、区も対応した。企業の論理ではノーワークノーペイという概念があるかもしれないが、保育所は別。委託費が満額支払われているのに、理由のない賃金カットがあってはいけない。保育士からの不安の声もあり、それに応じたかった」と話す。 国は保育園の収入が減らずにすむ手だてを打ち、通常どおり給与を支払うよう通知している。それにもかかわらず、不当な賃金カットが行われるのであれば、ウイルスと隣り合わせで働く保育士が、あまりに報われない。 保育園とは自治体の責任で設置する福祉施設であり、事業者の性善説が通用しないことがあるなかでは、行政はより厳しく監督する責任があるはずだ。保育士の離職が進めば、保育は完全に崩壊してしまう』、「江東区役所」の対応は立派だが、本来は国がやるべきことだ。

第四に、同じ小林 美希氏による6月17日付け東洋経済オンライン「公然と消える「保育士給与」ありえないカラクリ 国も黙認する、都合のいい「弾力運用」の実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/356874
・『新型コロナウイルスの感染が拡大して緊急事態宣言が発令されるなかで、「保育士の不当な賃金カット」が全国で起こり大波紋を広げた。保育園を休業しても、認可保育園などで働く保育士の給与は満額支給されることを国が保証しているにもかかわらず、現場の判断による大幅な賃金カットが後を絶たない。 この問題について、筆者は「コロナで保育士の『給与4割カット』は大問題だ」(4月21日)、「コロナがあぶり出した保育士の『ありえない格差』」(5月31日)、「全国で波紋『保育士賃金カット』横行の残念実態」(6月5日)の3回に渡って報じてきた。 後述するように保育士の給与は保育園運営の構造上、多くの園で低く抑えられている。そこにさらに今回のような賃金カットを行うと、保育士の離職といった人手不足につながり、待機児童問題の解決をますます遅らせる要因になる。日々の保育の質にも関わりかねない。 なぜこのようなことが起こるのか。その背景には、筆者がかねてより指摘してきた「委託費の弾力運用」の問題がありそうだ。 私立の認可保育園が受け取る運営費である「委託費」。その大部分を占めるのが人件費だが、保育士に全額を支払うことなく、他に流用しても良いとされている。そのため、事業者側のなかには「人件費を満額支払わなくてもいいものだ」という認識が浸透してしまい、保育士が低賃金になる温床になっている。 その結果としてコロナ禍の中、保育士の不当な賃金カットが起きてしまったのではないだろうか。本稿では「委託費の弾力運用」とはどういう仕組みなのかを解説し、本来もらえるはずの保育士の給与額と実際の支給額に大きな差があることを検証する』、多くの「私立の認可保育園」で問題が発生している背景には、確かに「「委託費の弾力運用」の問題がありそうだ」。具体的にみてみよう。
・『給与はどこに消えるのか?  「コロナでカットされた私たちの給与は、いったい、どこに消えるのか」 保育士らの疑問が膨らむ。都内のある保育士は、「園長は”収入が減る”の一点張りで、賃金カットの理由を明確にしない。国が園の収入が減らないよう委託費を出しているというのを、まるでフェイクニュースといわんばかり」と憤る。 また、ある保育士は「私は正職員だからコロナでもフル出勤だったのに、諸手当がつかず手取りが20万円を切っていた」と納得がいかない。他の保育士は、「不当な扱いはコロナの時ばかりではない。私たちは保育で必要な折り紙でさえ満足に買う費用が渡されない。絵本もない。積み木もない。自腹を切って100円ショップで買うしかないのに、(私立保育園の)経営者は高級車を乗り回している」と不信感を募らせる。 コロナに関係なく、人件費はもちろん、折り紙や絵本、玩具を買う費用なども含めて、必要なだけ保育園に「委託費」が支給されているのに、なぜ、こうしたブラック経営が許されるのだろうか。問題の根底にあるのが、冒頭でも触れた「委託費の弾力運用」という制度がある。 まず委託費とは、私立の認可保育園が受け取る運営費のことを指す。国、都道府県、市区町村が負担する税金と、保護者の支払う保育料が原資になっている、いわば公金だ。委託費は、地域、保育園の定員、園児の年齢別で子ども1人当たりの単価である「公定価格」に基づいて計算され、毎月、市区町村を通して保育園に支払われる。 委託費の使途は、「人件費」「事業費」「管理費」の3つ。「人件費」には常勤、非常勤の保育士などの給与、法定福利費、嘱託医、年休代替要員費、研修代替要員費など含まれている。次に「事業費」には、給食費、折り紙や玩具、絵本などの保育材料費、保健衛生費、水道光熱費(保育で使う分)などが含まれる。そして「管理費」には、職員の福利厚生(健康管理や被服費など)、旅費交通費、研修費、事務消耗品、土地建物の賃借料、業務委託費、水道光熱費(事務で使う分)などとなる』、なるほど。
・『国は「人件費が8割」と積算しているが…  保育に必要な経費が「積み上げ方式」で積算されているため、委託費は「支給された保育園のなかで使い切る性質のものだ」と、国は説明する。 内閣府は委託費の8割が人件費、そして事業費と管理費はそれぞれ約1割程度と積算して支給している。この人件費と事業費と管理費の各費目について、相互に流用していいというのが「委託費の弾力運用」で、国が通知を出して認めている。 委託費の弾力運用を行うには、一定の基準をクリアする必要がある。具体的には、 +職員配置などが遵守されていること +給与規定があり、適正な給与水準で人件費が適正に運用されていること +給食が必要な栄養量が確保され嗜好を生かした調理がされている。日常生活に必要な諸経費が適正に確保されていること +児童の処遇が適切であること などがあり、ほとんどの私立の認可保育園が対象となっている。 認可保育園の運営は公共性が高いことから、もともとは自治体と社会福祉法人にしか設置が認められていなかった。そして委託費には「人件費は人件費に」「事業費は事業費に」「管理費は管理費に」という使途制限があった。 ところが待機児童の増加に伴う「規制緩和」により、この仕組みが変更された。 1990年代のバブル崩壊と不況、男女雇用参画の進展により、共働き世帯が増加。山一證券が経営破たんした1997年には専業主婦世帯と共働き世帯が完全に逆転、待機児童が社会的な問題になった。 そして2000年、待機児童解消を狙って営利企業(株式会社や有限会社)やNPО法人、宗教法人にも認可保育園の設置が認められた。 ただ、「人件費8割」というガチガチの使途制限があっては、営利企業が儲けを出す余地が小さい。そこで営利企業の参入と同時に、委託費の弾力運用が大きく規制緩和されたのだった。 この規制緩和で人件費、事業費、管理費の相互流用が認められた。そして、人件費や園舎の修繕費、備品などの購入費を上限額なく積み立てられるようになった。 積み立てを目的外で使う場合は、社会福祉法人は理事会の協議が必要だが、そこで認められれば新しく開園する保育園の建設費用に回すことも可能となった。また、同一法人が設置する保育園や保育関連事業に委託費を流用することもできるようになった。 この規制緩和の前夜、厚生大臣だったのは小泉純一郎氏だった。2001年に小泉政権が発足すると、さらに規制緩和が行われた。 2004年3月、同一法人で運営する介護施設にも委託費を流用可能となった。続く2005年3月、委託費を流用できる金額が大きく緩和された。年度(4月から翌年3月まで)の収入のうち3カ月分、つまり年間収入の4分の1も弾力運用してよいとされたのだ。この時の制度変更について、当時の関係者は、筆者の取材に対して「失政だった」と本音を語っている』、「営利企業の参入」のために「委託費の弾力運用が大きく規制緩和」、ある程度はやむを得なかったが、「年間収入の4分の1も弾力運用してよい」、とまで「緩和」したのは、確かに「失政だった」のかも知れない。
・『大手が運営するA認可保育園の場合  大手が運営する都内のA認可保育園の財務情報を例にしてみよう。委託費のほか東京都独自の処遇改善費や市区町村独自の補助金を合計した収入が2億3000万円。そのうち人件費は約4割、事業費は平均的な1割かけられている。 給食調理やリトミックの講師料の業務委託費が2900万円、土地・建物の賃借料も2000万円かかり管理費は3割に膨らんでいる。A保育園の収入を弾力運用して約5000万円が、積立てや本部経費のほか系列のB保育園、C保育事業、新規開設の費用などに回されている。 年間の収入の4分の1が流用可能であるため、制度上はA保育園では5750万円まで、他の施設の運営などに流用可能となる。本部で事務作業や採用活動などを行えば効率的だったとしても、実際に流用された5000万円の大半は、もともとはA保育園で全て使うべき収入だ。 保育園の財務情報を見ていくと、1~2億円の収入から数千万円もの金額を積み立てや他施設に流用しているケースはザラにある。他に流用することにより、本来その園で必要経費として使用されるべき保育士の給与が低くなり、また、子どものための費用が削られるのでは本末転倒だ。 安倍晋三政権の下でも、小泉政権の頃と同様、経済界が規制緩和を求めた結果、2015年に株式会社の株主配当まで認められた。「委託費の弾力運用は必要だ」とする保育の業界団体の幹部ですら「行き過ぎている」と本音を漏らす。 そして、待機児童解消が目玉政策となって急ピッチで保育園が作られるなか、「波に乗ろう」「ビジネスチャンスだ」といって異業種のからの参入が加速した。「保育への再投資だ」といって施設整備に委託費が流用され、株式会社の右にならえと社会福祉法人も規模拡大していく。 こうした一連の“制度活用”の結果、国が想定する「人件費8割」が大きく崩れた。そして、実際に支出される人件費比率は低くなった』、「他に流用することにより、本来その園で必要経費として使用されるべき保育士の給与が低くなり、また、子どものための費用が削られるのでは本末転倒だ」、その通りだ。ただ、「人件費比率」を押さえた結果、「保育士」不足が深刻化するのも「本末転倒だ」。
・『実際の支出を比較してみると…  東京都「保育士等キャリアアップ補助金の賃金改善実績報告書等に係る集計結果」(2017年度)から、実際に支出されている人件費、事業費、管理費(事務費)の比率の平均値を示した。 社会福祉法人の人件費は約7割、事業費と管理費が約1割。一方の株式会社は人件費が約5割、事業費が1割弱、管理費が2割強だった。人件費が抑えられ、給食調理の業務委託や賃料がかさみ管理費が膨らんでいる。 株式会社の人件費比率が低い理由には、新卒採用の割合が高くなり保育士が若いことのほか、土地や建物の賃貸料がかさむこと、社会福祉法人と違って法人税が課せられることなどが挙げられる。株式会社の認可保育の歴史が浅いことも背景にはある。しかし、営利企業が進出するなら、不利な条件は織り込み済みのはず。経営を考え利益を確保するのであれば、人件費を抑えることになるだろう。 東京都は社会福祉法人と株式会社を比較するため、前述の集計結果で、定員数、職員の平均経験年数を同じ条件(定員66~76人まで、職員の平均経験年数5年)にして費目区分の割合を算出している。その数値を見てもやはり、人件費分が土地建物の費用に吸収されてしまっていることが窺える。預ける側、働く側にしてみれば、重要なポイントだ。 国や自治体は多額の税金を投入して保育士の処遇改善を図っているが、本来、保育士が受け取ることのできる給与の金額はいったいいくらなのか。筆者は内閣府の資料を基に、計算した。 国は毎年度、通知で「公定価格」のなかの保育士の”年収”を示しており、2020年度は全国平均で約395万円(法定福利費や交通費、処遇改善費は含まない金額)。そこに、常勤・非常勤を問わず全職員が対象の「処遇改善加算①」がつく。処遇改善①にはキャリアアップの取り組みに応じた「賃金改善要件分」と職員の平均経験年数に応じた「基礎分」の2種類があって、まず「賃金改善要件分」を足すと保育士の年収は約417万円になる。 次に、技能や経験を積んだ保育士につく「処遇改善加算②」は、おおむね経験3年以上の「リーダー」役の保育士は月5000円が、おおむね経験7年以上で「副主任」を任される保育士は月4万円が支給される。それぞれの年収は経験3年以上で約423万円、経験7年以上で約465万円になる。 そこに、もうひとつの「処遇改善加算①基礎分」が個々に平均経験年数に応じて、1%から12%の加算がついていく。1%は約3000円なので、月約3000円から約3万6000円が前述した年収に上乗せされていく。理論上、年収500万円という賃金も国が用意していることになる。 すると、保育士は経験7年以上で、会社員の平均年収の441万円(平均勤続年数12.2年、国税庁「民間給与実態統計調査」)を超える計算になる。さらに都内で働く保育士は、東京都のキャリアアップ補助金が月平均で約4万4000円が出ているため(定員100人の場合)、年収は国の想定より年間で約53万円も多くなる』、「理論上、年収500万円という賃金も国が用意していることになる」、決して悪くない水準だ。
・『国の想定と比較して30~100万も年収が少ない  しかしながら、保育士が実際に手にとる給与は少ない。内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果(速報値)」(2019年度)で約362万円、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2019年)で約363万円となる。処遇改善費が反映されているのに、国の想定より約30万~100万円も年収が少なくなっている。 委託費がおおむね配置基準の人件費で支払われることから、それより多く保育士を雇っていれば一人当たり賃金が低くなる要因もある。ただ、保育士不足で配置基準ギリギリの現場も少なくない。既に全産業平均を超えるほどの人件費が国から出ているのに、委託費の弾力運用によってバケツの底に穴が空いたような状態だ。コロナ禍の不当な賃金カットも、そもそも保育士の給与水準が不当に低く抑えられている問題の延長線上にあるのだ。 政府は第2次補正予算で、コロナ患者を受け入れた医療機関の職員や、感染が発生した介護施設などの職員に「慰労金」を1人当たり最大で20万円給付することとした。しかし、保育園はコロナの影響を受けることなく委託費が満額支給されることを理由に、対象外になっている。そのため、業界団体は保育園なども慰労金の対象にするよう国に緊急要望し、賛同者は増えている。 もちろん、保育士も危険手当に相当する慰労金が国費で支払われるべきだろう。しかし、全国各地で不当な賃金カットが横行している。東京大学大学院の発達保育実践政策学センターが4月17日から5月1日までに行ったアンケート調査では、常勤職員の約8割は休業しても満額の賃金を得ていたが、フルタイムの非常勤職員は約6割、パート職員は約5割にとどまった。「賃金補償なし」は常勤職員でも7.6%いて、フルタイム非常勤は9.8%、パートタイム職員は15.8%に上った。 そうしたなか、本当に保育士の手に慰労金が渡たるのかという心配も生じる。業界団体が慰労金を要望するのは当然だが、業界団体をはじめ自治体はそれ以前の問題として、事業者がコロナ禍で給与を適切に支払っていたか実態調査し、結果を公表する必要があるのではないか。 国は、一連の問題について行政が監査や指導を徹底するよう改めて文書をまとめており、近く明示される予定だ』、「既に全産業平均を超えるほどの人件費が国から出ているのに、委託費の弾力運用によってバケツの底に穴が空いたような状態だ」、「常勤職員の約8割は休業しても満額の賃金を得ていたが、フルタイムの非常勤職員は約6割、パート職員は約5割にとどまった」、酷い実態だ。「国は、一連の問題について行政が監査や指導を徹底するよう改めて文書をまとめており、近く明示される予定」、余り期待できそうもないが、1つの注目点ではある。
タグ:保育園 東洋経済オンライン (待機児童)問題 デイリー新潮 土居 丈朗 小林 美希 (その10)(日本で幼児教育を「義務教育」にできないわけ 最大のハードルは幼稚園と保育所の「壁」、保育園や幼稚園に通わない「無園児」は9万5000人 自治体も放置で救済方法はただ一つ、全国で波紋「保育士賃金カット」横行の残念実態 今後は「監査対象」になる可能性がある、公然と消える「保育士給与」ありえないカラクリ 国も黙認する 都合のいい「弾力運用」の実態) 「日本で幼児教育を「義務教育」にできないわけ 最大のハードルは幼稚園と保育所の「壁」」 教育無償化と義務教育化には違いがある 義務教育化の実現には高いハードル 保育所は学校教育法上の教育機関ではない 「保育園や幼稚園に通わない「無園児」は9万5000人 自治体も放置で救済方法はただ一つ」 無園児 無園児の割合は、3歳児で5・2%(5万1000人)、4歳児で2・7%(2万7000人)、5歳児で1・7%(1万7000人)となっている。3~5歳までの無園児は9万5000人もいることになる 義務化しかない ペリー就学前プロジェクト IQが90以上の5歳の子は、プロジェクトに参加した子で67%、参加しない子は28%。高卒以上は、参加で77%、不参加は60%。27歳時点で、過去10年間に生活保護受給は、参加が59%、不参加が80%。40歳時点で仕事に就いている人は、参加が76%、不参加が62%。40歳で年収が2万ドル以上は、参加が60%、不参加が40%。40歳で5回以上逮捕は、参加が36%、不参加は55%と、明らかに差が出ている 「全国で波紋「保育士賃金カット」横行の残念実態 今後は「監査対象」になる可能性がある」 「納得がいかない」立ち上がる保育士たち 休業しても給与を減らさず支給するものと想定して委託費を減らさずに支給している 横浜市や世田谷区は 参議院の厚生労働委員会でも紛糾 延長保育を理由にする園もあるが… 民間の給与額に口を挟めない 江東区が送った、毅然とした通知文 「公然と消える「保育士給与」ありえないカラクリ 国も黙認する、都合のいい「弾力運用」の実態」 「委託費の弾力運用」の問題 事業者側のなかには「人件費を満額支払わなくてもいいものだ」という認識が浸透してしまい、保育士が低賃金になる温床になっている 給与はどこに消えるのか? 国は「人件費が8割」と積算しているが… 年間収入の4分の1も弾力運用してよい」 大手が運営するA認可保育園の場合 実際の支出を比較してみると… 理論上、年収500万円という賃金も国が用意していることになる 国の想定と比較して30~100万も年収が少ない 常勤職員の約8割は休業しても満額の賃金を得ていたが、フルタイムの非常勤職員は約6割、パート職員は約5割にとどまった 国は、一連の問題について行政が監査や指導を徹底するよう改めて文書をまとめており、近く明示される予定
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。