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中国情勢(軍事・外交)(その7)(中印国境紛争で垣間見えた 中国「一帯一路」の真の目的とインドの本気、科学者を犯罪に走らせる中国「千人計画」の正体 海外の高度技術を違法に取得 米国が本格的な取り締まりへ、戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、6月5日に取上げた。今日は、(その7)(中印国境紛争で垣間見えた 中国「一帯一路」の真の目的とインドの本気、科学者を犯罪に走らせる中国「千人計画」の正体 海外の高度技術を違法に取得 米国が本格的な取り締まりへ、戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路)である。

先ずは、6月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中印国境紛争で垣間見えた、中国「一帯一路」の真の目的とインドの本気」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/241426
・『長年にわたり国境紛争を抱える中国とインドは6月15日夜、ヒマラヤ高地のギャルワン渓谷で衝突。報道では両国で数十人の死者が出たもようだ。今回の衝突で見えてきたのは中国の「一帯一路」の真の目的と、新型コロナウイルスの影響で疲弊するインドがトランプ政権を後ろ盾に先鋭化する可能性だ。 インドの銃口から一撃が放たれれば、中国は手加減しない――。1962年に起きた中印国境紛争以来、ヒマラヤの高地で銃弾が飛び交ったことはないが、6月15日の夜に起きた衝突では、4000メートル級の高地に数多くの遺体が並べられるという息をのむような展開となった。 中印国境地帯では日常的な小競り合いが何度となく繰り返されてきたが、今回のギャルワン渓谷での衝突を発端に、中国は大がかりな準備に乗り出した。鉄道による装甲車の輸送を開始し、空中巡邏(じゅんら)部隊、通信部隊、攻撃部隊が組織され、チベット自治区のラサ市では民兵団の入団式が行われた。これが示唆するのは「待ってました」と言わんばかりの準備万端ぶりだ』、インド側には死者20名といわれるが、中国側の死者数は不明だ。ただ、どうも「準備万端」の中国側に一方的にやられたようだ。
・『中印はもとより不安定  もともと中国とインドは仲が悪かった。62年に国境問題から紛争に至った両国では、政治面・外交面で緊張した関係が続いていたが、2013年に蜜月時代を迎え、劇的な変化を見せた。 国境でにらみ合いが発生したにもかかわらず、同年10月に中国はインドに対し「新型大国関係」を提案した。中国がシルクロード構想をカザフスタンで提唱したのは同年9月であったが、中国はこのとき「一帯一路」の沿線国の参与を視野に動いていたといえる。 ところが、インド人民党党首のナレンドラ・モディ氏が14年5月にインド首相に就任すると次第に風向きは変わり、17年にはブータンと中国の係争地で中印が対立、関係は再び不安定化した。インドも当初はインフラの建設や製造業で中国の協力に期待していたにもかかわらず、「一帯一路」に懸念を示すようになった。領土問題を抱える中印関係の難しさの一端が垣間見える。 ちなみにインドは今、コロナまん延があまりにもひどい。そのため、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に融資を申し入れ、先ごろ7億5000万米ドル(約885億円)の申請に対し認可が下りたところだ。5月にも同銀行から5億米ドル(約590億円)の借り入れを行っている。「一帯一路」は領土問題の存在からも支持していないが、AIIBに対しては創設メンバーとして関わっている。 インドではコロナ拡大の封じ込めに失敗、45万人の感染者を出し現時点で世界のワースト4だが、実態は国家が発表する数字からは著しくかけ離れているともいわれている。コロナ禍で家族を失い、仕事を失った国民の爆発寸前の不満を、今後中国という「仮想敵」でガス抜きしようとする可能性も否定できない』、「AIIB」でカネを借りておきながら、「コロナ禍で家族を失い、仕事を失った国民の爆発寸前の不満を、今後中国という「仮想敵」でガス抜きしようとする可能性」、モディ首相も「中国側」が準備しているなかで攻撃し、多大な損害を出すとは、何を考えているのだろう。
・『軍事利用される「一帯一路」  奇しくも3月のコロナ禍に、中国の友人がある動画を共有してくれた。それは、19年4月に、北京を出発した中国の旅行愛好家が、20台の車両を連ねて新疆ウイグル自治区のカシュガル市に向かう一部始終を記録したものである。 四川省成都市からチベット自治区のラサ市を結ぶ川蔵公路を西に向かってひた走り、シガツェ市から新蔵公路(国道219号)を使ってカシュガル市に向かい北上する。途中、中国が実効支配するアクサイチン(インドは「ラダック」と呼称し領有権を主張している)を経由する、実に約6500キロ(北京―ラサ3718キロ、ラサ―シガツェ640キロ、シガツェ―カシュガル2140キロ)にわたるルートである。 ギネスにも載る「世界で最も海抜の高い幹線道路」を20台の車列が流れるように走る。今回の衝突の現場となったパンゴン湖を通過し、海抜4000メートルの盆地をひたすら北進する。荒涼たる月面世界のような“無人の地”に、中国のインフラ開発で舗装された道路が貫通し、北京とアクサイチン、ついにはカシュガル市にまで到達したことに度肝を抜かれる。 チベット自治区ガリ地区のプラン県も国境沿いの町だが、すでに漢字文化圏と化していることにも面食らった。飲食店、雑貨店を中心にした街づくりはまさに中国流で、屋外の看板のほとんどに漢字が表記されている。走っている四輪車も二輪車も見覚えのある中国製だ。チベット文化圏の家屋といえば、日干しレンガを積み重ねて漆喰(しっくい)を塗るという素朴な構造が通例だが、立派な民家も立ち並ぶ。“祈りの生活”が中心だったチベットの山奥で、中国流の「富裕モデル」の移植が進んでいるのは一目瞭然だ。 動画には「このエリアは電子機器、遠距離武器を配置しやすい」とか「道路を通して大兵団を送ることができる」など、専門的なコメントが挿入されている。「戦争になればこの情報が役に立つだろう」――などという言葉さえもが刻まれていたが、中国はまさに「その日」のために、1950年代から着々と準備を進めていたということなのか。 有事の際は、カシミールの領有権をめぐり長年インドと紛争を続けるパキスタンが加勢し、新疆ウイグル自治区とチベット自治区の協力のもとに勝利に持ち込める。後方支援は準備万端整った――と、中国は強気に構えている』、どうみても「インド」側に有利な材料はなさそうだ。
・『互いの敵は米国だ  過去のパターンからすると、このような局面で中国のネット民たちは愛国心を強くたぎらせるのだが、今回はいささか様子が違い、ネット世論は落ち着いている。中国の某人気ブロガーが発するのは、「アメリカの思うつぼにハマるな」というメッセージだ。 「背後には米国がいる。彼らは中国とインドに戦争をやらせようとしている。トランプとポンペオは火をつけてあおり、両国もろともに消耗させるのが米国の狙いだ」 確かに、この中印衝突を喜んでいるのは米国だ。仮にこの紛争が発展すれば、中国から資本が流出し、中国経済の失速が加速する。中国による世界覇権を望まない米国からすれば、中国の自滅の道は願ってもないシナリオだ。 一方で、インドは米国からの武器購入に大枚をはたくだろう。遠隔操縦航空機の「MQ-9B」22機をすでに20億米ドル(約2360億円)で購入している。 米国はインドを「世界最大の民主国家」だとし、「大切なパートナーだ」と吹聴しているが、南シナ海で失敗した米国はインドに希望を見いだしているにすぎない。「武器商人の米国」にとってインドは客先であり、単なる手駒だ。 だからインドよ、目覚めてほしい――。それが中国のブロガーの真意である。 また、「中国とインドはむしろ共通点が多い」とするオピニオンもある。その共通点の1つ目は「世界史観」だ。米国は植民地時代を入れてもわずか数百年の歴史しかないことと対照的に、中国もインドも共に5000年の歴史があるという主張である。 2つ目は「人口規模」だ。世界人口77億人のトップ2は、中国14.3億人、インド13.6億人であり、世界の3分の1強を占めている。この2大国による衝突は、世界の期待が集まる消費市場にも大きく影響するどころか、一歩間違えば世界大戦に発展しかねないという危険をはらむ(ちなみに、パキスタンは人口2.1億人で世界5位、アメリカは3.3億人で世界3位。中パを足せば16.4億人だが、米印を足せば16.9億人と、数の上で逆転する)。 そして3つ目は「現代史観」だ。ともに植民地化された経験を持ち、第2次世界大戦後に独立し、近代化を目指し続けている第三世界であるという点だ。「巨竜」と「巨象」はいわば兄弟のようなものであり、「米国こそが真の敵だ」とする主張である。 中国が打ち出した「一帯一路」構想から早7年、「現代のシルクロード」と交易の重要性を掲げながらも、実は武器輸送や兵団輸送のルートにも化ける。そんな恐ろしさを露呈させたのが今回の中印衝突だ。ベールを剥ぐ中国の野望。これに抵抗するモディ政権は大統領選を控えたトランプ政権を後ろ盾に、本気で対抗姿勢を示すかもしれない』、「トランプ」再選の可能性が小さくなっても、民主党政権でも「インド」支持が得られると踏んでいるのだろうか。「巨竜」と「巨象」が手を結ぶのは、日米にとっては悪夢だろう。

次に、7月15日付けJBPressが掲載した産経新聞ワシントン駐在客員特派員・麗澤大学特別教授の:古森 義久氏による「科学者を犯罪に走らせる中国「千人計画」の正体 海外の高度技術を違法に取得、米国が本格的な取り締まりへ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61293
・『米国の連邦捜査局(FBI)長官が、中国の「千人計画」は米国など諸外国の軍事関連などの高度技術を違法に取得する手段だとして厳しい警告を発した。千人計画とは、中国政府が海外人材を破格の好待遇で集めて、中国の発展に協力させる計画である。 FBI長官は最近の千人計画の参加者による米国の高度技術の不法奪取の実例をあげて、取り締まりの強化を宣言した。 千人計画には日本の科学者も参加したと報じられている。米国政府によるその違法性の追及は日本の対中関係にも影響を及ぼしかねない』、「千人計画とは、中国政府が海外人材を破格の好待遇で集めて、中国の発展に協力させる計画」、「日本の科学者も参加したと報じられている」、日本もしっかり対応すべきだろう。
・『千人計画への関与を口止め  FBIのクリストファー・レイ長官は7月7日、ワシントンの大手研究機関ハドソン研究所で「中国の政府と共産党による米国の経済、国家安全保障への脅威」と題する講演を行った。 同長官は「現在FBIが捜査中の、外国機関による米国の官民に対する約5000件の各種犯罪案件のうち、半数は中国関連だ」として、中国の政府機関や軍組織、国有企業、民間企業などがそれぞれの組織と人員を投入して、米国の経済や安全保障を害する犯罪行為を働いている、と言明した。 それらの犯罪活動は、米国政府機関に対するスパイ活動、米国官民からの高度技術の不法取得、米国官民へのディスインフォーメーション(虚偽情報)による影響力行使など広範に及ぶという。 レイ長官はとくに中国の「千人計画」の米国にとっての危険性を強調し、同計画に関わる最近の犯罪事例を報告した。 千人計画(中国での正式呼称は「海外高層次人才引進計画」)とは、中国政府の国務院と共産党中央組織部が主体となって2008年末にスタートしたプログラムだ。諸外国の理工系の最高級人材を破格の好待遇で集め、中国の軍事、経済の発展に寄与させることを目的としている。 中国政府は同計画の存在を公表し、2017年までに合計7000人の理工系の科学者、研究者を集めたとされている。だが、その具体的な活動内容はこれまで秘密にされてきた。 米国ではこの千人計画への警戒が高まり、連邦議会上院の国土安全保障政府問題委員会が特別調査を実施して、2019年11月にその結果を報告書にまとめて公表した。 同報告書によると、中国当局は千人計画で募集した科学者たちに、米国など諸外国の高度技術を盗用してでも入手し、中国の軍事や経済に活用することを求めている。しかも外国の科学者たちには、同計画に関与することを一切口外しないよう命令しているという』、「2017年までに合計7000人の理工系の科学者、研究者を集めた」、「科学者たちに、米国など諸外国の高度技術を盗用してでも入手し、中国の軍事や経済に活用することを求めている」、由々しいことだ。
・『こんなにある千人計画関連の犯罪  こうした背景の下、レイFBI長官は講演の冒頭で、千人計画関連の犯罪案件として以下の具体的な事例を明らかにした。 +ハーバード大学化学・化学生物学科長の教授チャールズ・リーバーは、2020年6月、千人計画への関与を隠した虚偽証言の罪により刑事訴追された。リーバーはハーバード大学と米国国立衛生研究所(NIH)に雇用されながら、千人計画を通じて中国の武漢工程大学でも専属の「戦略科学者」として働いていた。 リーバーは千人計画から毎月5万ドルの給料や15万ドルの生活費を得ていたうえ、中国内に専門の研究所を開設するために150万ドルの資金を受け取っていた。 +オクラホマ州の米国石油企業に勤務していた中国人で米国永住権を持つ科学者ホンジン・タオは千人計画に加わり、その価値が10億ドルにも達する同社の高度技術の秘密を盗んだ容疑で逮捕された。2020年初めに有罪が確定し、現在服役中である。 +テキサス州で研究活動をしていた中国系科学者のシャン・シーは、潜水艦に使われる高度技術製品「シンタクティックフォーム」(軽量かつ高強度の複合材料によるプラスティック)に関する秘密技術を米国側から盗んだ罪で、2020年初めに有罪が確定した。シーも千人計画に応募しており、米国の高度技術を「消化」し「吸収」して中国の国有企業に役立てることを中国側に約束していた。 +中国系技術者のハオ・ザンは2020年6月、複数の米国企業から無線機器の企業秘密技術を盗んだ罪で刑事訴追された。ザンも千人計画に関わっていた。この技術は米国企業が開発に20年もの年月をかけてきた企業財産だった。 +オハイオ州の「クリーブランド・クリニック」で分子医学と循環器病遺伝子学の研究をしていた中国人研究者チン・ワンと、アーカンソー大学で米国航空宇宙局(NASA)関連の研究をしていた中国系科学者サイモンソー・テンアンは、2020年5月、ともに詐欺容疑で逮捕された。2人とも米国公的機関から研究資金を受け取りながら、中国の千人計画への参加を隠していた。 +ジョージア州のエモリー大学の前教授で中国系学者のシャオジァン・リは2020年5月、税金の虚偽申告容疑を認めた。千人計画から受け取った巨額の収入を申告せず、エモリー大学で米国連邦政府から50万ドルの助成金を得てハンチントン病の研究を続けながら、千人計画への参加を隠していた。 レイFBI長官は、千人計画に関わる米国での犯罪事例を以上のように列挙し、中国が米国に対して不法な知的財産盗用の組織的な活動を続けてきたことを明らかにした。そうした活動に対して、米国政府は法的な取り締まりを本格的に開始した。米国での犯罪取り締まりの最大組織であるFBIの長官が、こうして中国の活動に焦点を絞り、強硬な態度を明示することは、最近のトランプ政権全体の対中姿勢の硬化を反映していると言えよう』、既に「千人計画関連の犯罪」がこんなに行われているのであれば、民主党政権に代わっても、取り締まりは強化されるだろう。
・『「日本人の参加を把握していない」日本政府  では日本はどうなのか。 千人計画に日本人の学者や研究者が参加したことは、中国当局が認めている。2009年9月、共産党中央組織部が、千人計画に外国人の学者や研究者204人が新たに参加することが決まったと公表した。そのなかに「日本からの招致」も明記していたのだ。 日本の国会では、2020年6月2日に開かれた参議院財政金融委員会の会議で、千人計画への日本の関わりについて質疑応答があった。自民党委員の有村治子議員が米国での最近の動きをあげて、日本としての懸念を提起し、政府当局に見解を問うた。 日本の学者には、日本を拠点として安全保障や軍事関連の研究をしてはならないという自粛方針がある。しかし、千人計画に加われば中国の軍事関連の研究に期せずして関わるのではないか、という懸念を有村議員は強調していた。 だが日本政府当局者は、「政府は日本人学者らの千人計画への関わりについてはなにも把握していない」と答えたのである。 米国の高度技術の不法な取得活動を展開する中国政府組織への日本人の関与が確実なのに、日本政府は実態を何も知らないという。その対応が適切でないことは明確であろう』、「日本政府は実態を何も知らない」、情けないことだ。日本の情報機関は一体何をしているのだろう。

第三に、7月17日付けNewsweek日本版が掲載した中国出身評論家の石平氏による「戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/sekihei/2020/07/post-11_1.php
・『<アメリカやイギリス、カナダ、オーストラリア、インドそして日本......なぜ中国は同時にいくつもの国といざこざを起こすのか。計算もしたたかさもない習近平の「気まぐれ外交」は負のスパイラルに陥っている>  中国にとって、2020年の国際環境はまさしく「最悪」というべきであろう。 まず、中国にとって最重要な2国間関係である米中関係は今、1979年の国交樹立以来、最悪の状態にある。特に7月に入ってから、米政府は南シナ海に対する中国の領有権主張と軍事的拡張を「違法行為」だと断罪し、「ウイグル人権法案」を根拠に陳全国・共産党政治局員ら高官に対する制裁を発動し、国家安全維持法が施行された香港への優遇措置を廃止し、台湾への新たな武器売却を承認......と、外交・軍事両面における「中国叩き」「中国潰し」に余念がない。 その一方、経済でも米政府は中国製品に対する莫大な制裁関税を継続し、米企業の中国からの移転をうながしつつ、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)への封じ込めに一層力を入れている。そして、トランプ大統領は6月18日、「中国との完全なデカップリング(切り離し)」に言及した。 こうした厳しい現状を中国側も当然認識している。7月3日、人民日報系の環球時報は中国共産党中央委員会対外連絡部の周力・元副部長の論文を掲載したが、「外部環境の悪化」をテーマとするこの論文は冒頭から米中関係の「劇的悪化」取り上げ、「米中間の闘争の全面的エスカレートに備えよう」と呼びかけている。公職から退いたとはいえ、共産党元高官が「闘争」という言葉まで持ち出して米中関係を論じるのはまさに異例だ。 アメリカの隣国であるカナダとの関係も全く良くない。6月19日、中国が2人のカナダ人をスパイ罪で起訴すると、カナダ政府はそれを「恣意的」だと批判。トルドー首相は「非常に失望している」と述べ、6月26日にファーウェイ幹部でカナダ当局に拘束されている孟晩舟とこの2人のカナダ人との交換を拒否した。この問題をめぐって、中国とカナダとの確執は今後も続くだろう。 もう一つの英連邦国家であるオーストラリアとの関係も悪くなる一方である。本来、オーストラリアは中国と良好な関係にあった。だが今年4月、オーストラリアのモリソン首相が国際社会に新型コロナウイルスの発生源に関する独立した調査を訴えると、それが中国の逆鱗に触れた。中国は5月以降、豪州産の大麦の輸入に法外な制裁関税をかけたり、オーストラリア旅行の自粛を中国人に呼びかけるなど陰湿な手段を使っての「豪州いじめ」を始めた。 これで中豪関係は一気に冷え込んだが、6月末に中国が香港国家安全維持法を強引に成立させると、オーストラリア政府は香港との犯罪人引渡し条約を停止。中国側のさらなる強い反発を招いた。オーストラリア政府は最近、中国の一層の反発を覚悟の上で、香港からの移民受け入れの検討に入ったという』、「計算もしたたかさもない習近平の「気まぐれ外交」は負のスパイラルに陥っている」、「習近平」以前の中国外交は「計算もしたたかさも」あったのに、「習近平」は「大国意識」に酔ってしまったのだろうか。、
・『中国政府にとっての「顔面直撃パンチ」  中国は英連邦の「宗主国」であるイギリスとも険悪な関係になっている。前述の香港国家安全維持法の成立を受け、イギリス政府は300万人の香港市民に対し英国の市民権や永住権の申請を可能にする方針を表明した。中国政府はそれを「重大な内政干渉」だと非難し、方針の撤回を求めた。しかしイギリス政府は中国側の反発を完全に無視。そして7月14日、ついに5G関連の設備からファーウェイを排除すると決めた。これはファーウェイだけでなく、中国政府にとってもまさに顔面直撃のパンチ、大きな外交的失敗となった。 アジアに目を転じても、中国と一部周辺国との関係に摩擦や紛争が生じている。この原稿を書いている7月16日現在、中国当局の公船が94日連続で日本の尖閣諸島周辺の接続水域に入っており、2012年9月の尖閣国有化以降で連続日数の最長を更新した。そのうち、中国海警局の船が7月2日から3日夜にかけ、およそ30時間にわたって日本の領海に侵入したが、これは尖閣周辺の日本領海への侵入時間としては国有化以降の最長であるという。 日本の自民党内でも中国に対する反発が高まり、7月8日には習近平国家主席の国賓訪日中止を要請する決議案が党外交部会で可決され、首相官邸に提出された。もちろん中国政府は反発を強めている。 中国はまた、アジアのもう1つの大国であるインドと本格的な国境紛争を起こしている。6月中旬、国境地帯で中印両国の軍隊による殴り合いの「準軍事衝突」が起き、インド軍側に20名の死者が出たと発表された。その結果、インド国内の反中感情が急速に高まり、中国製品ボイコットの動きや対中関係見直し論がインド全体に広がっている。 以上、最近の中国と世界・アジア主要国との関係の現状を点検してみたのだが、中国は今、世界最強の超大国であるアメリカだけでなく、先進国のイギリス、カナダ、オーストラリアやアジア主要国の日本・インドとも「闘争」を展開している。これほど多くの「敵」に囲まれて「奮戦」している中国の国際環境は、まさに中国発の四字熟語である「四面楚歌」に近い状況だろう。上述の共産党元高官の周力氏が「外部環境の悪化」を嘆いているのも杞憂ではない。 中国と主要国との関係悪化は、全部中国の責任であるとは一概に言えないかもしれない。だが、中国自身にもやはり大きな責任と問題点がある。例えばCさんという人間は、Aさんとだけ喧嘩しているならどちらが悪いかはよく分からないが、しかしもし、CさんがAさんともBさんともDさんともEさんともFさんとも同時に揉め事や争いをしているなら、誰から見てもこのCさんに問題がある。Cさん自身のおかしさこそが、いろんな人とイザコザを起こす原因であるに違いない。中国という国は、まさにこのCさんなのである』、「イギリス政府」が「ファーウェイを排除すると決め」る前までは、「ファーウェイ」は「イギリス」に研究開発の拠点を設置すると言明していたが、これも流産したのだろう。「中国と主要国との関係悪化は・・・中国自身にもやはり大きな責任と問題点がある」、同感である。
・『無意味なけんかを他国に売る  例えばオーストラリアの場合、新型コロナの発生源を追及すべきという同国政府の正当な要求に対し、いきなり制裁関税などの嫌がらせや恫喝を行なったのは中国政府である。インドとの国境紛争にしても、インド軍兵士の死者数の多さから見て、中国軍が積極的に紛争を起こしたと考えられる。そして日本との領海摩擦についても、新型コロナウイルスの拡散以前、習近平国家主席の国賓訪日がほぼ確実になっていた良好な関係性からすれば、中国がこの数カ月間、どうしてあれほど執拗に日本の接続水域や領海への侵入を繰り返しているかまったく理解に苦しむ。日中関係をわざと壊すかのようなやり方である。 国際環境の悪化、主要国との関係悪化を作り出した主な原因が中国自身にあることは明々白々だが、問題は中国がどうしてほぼ同時進行的に主要国との関係を自ら壊し、「外部環境の悪化」を招いたのかである。 昔の中国ならもっとも上手に、もっとも戦略的に外交を進めていたのではないか。中国という国は古来、いわば外交戦略や外交術に長けていることで知られてきた。今から二千数百年前の戦国時代に、中国の先人たちは「遠交近攻」や「合従連衡」などの高度な国際戦略を開発した。「遠交近攻」とは、遠方の国々と親交を結ぶ一方、近隣の国を攻めるという戦略である。「合従連衡」の「合従」は、戦国七雄が並立する中で、秦国以外の6カ国が連携して最強の秦に対抗する戦略であるが、それに対し、秦国は他の6カ国のいくつかと個別的に連盟することによって「合従連合」を打ち破ろうした――それが「連衡」の戦略である。 この2つの国際戦略の着眼点は同じだ。要するに、多くの国々が並立する中で、多数の国々と同時に敵対するようなことは極力避けること、そして敵となる国を1つか2つに絞り、他の国々と連携し良好な関係を保った上で、力を集中して当面の敵国と対抗していくことである。 このような戦略的発想は、中国共産党政権にも受け継がれ、彼らのいう「統一戦線戦略」となっている。例えば1970年代、中国は主敵のソ連と対抗するためにかつての宿敵アメリカと手を握り、アメリカの同盟国の日本までその「統一戦線」に巻き込もうとした。あるいは江沢民時代、中国は一時日本に対してかなり敵視政策を取っていたが、一方で努めてアメリカとの良好な関係を維持していた。胡錦濤時代になると中国は「全方位外交」を唱え、できるだけ仲間を増やして国際的地位の安定を図ろうとしていた。 胡錦濤時代までは無闇に敵を作らず、主敵と対抗するためできるだけ多くの国々を自陣営に取り入れ、良好な関係を保つのが中国外交の伝統であり、不変の戦略だった。しかし習近平政権になった後、特に習近平国家主席が個人独裁体制を確立して外交の指揮権を完全に掌握したこの数年間、中国外交にはかつての戦略性やしたたかさは跡形もない。「一帯一路」のような大風呂敷の国際戦略を漫然たる手法で展開する一方、ほとんど無意味なところで他国にけんかを売り、敵を次から次へと作り出している』、「習近平国家主席が個人独裁体制を確立して外交の指揮権を完全に掌握したこの数年間、中国外交にはかつての戦略性やしたたかさは跡形もない。「一帯一路」のような大風呂敷の国際戦略を漫然たる手法で展開する一方、ほとんど無意味なところで他国にけんかを売り、敵を次から次へと作り出している」、「習近平」はどうなってしまったのだろう。チェック&バランスが効かない独裁政権の弱点を、世界中にさらしてしまったようだ。
・『「1国2制度による台湾統一」を台無しに  そして原稿の冒頭で記したように、今年の夏に入ってから、無闇に敵をつくるばかりの習近平外交が「佳境」に入っているようである。アメリカという強敵の全面攻撃を前にして、本来ならできるだけ仲間を増やして対処していくべきところ、習政権はその正反対のことをやっている。主敵のアメリカと戦いながら、カナダにもオーストラリアにも日本にもけんかを売っていくのはもはや狂気の沙汰で、「統一戦線」の面影もなければ戦略性のかけらもない。アメリカと対峙している最中、アジアの大国であるインドと準軍事的衝突を起こすとは、理解不可能な行動である。 もちろん習近平政権は「統一戦線」の伝統を完全に忘れたではない。6月22日、習は欧州連合(EU)のミシェル大統領及びフォンデアライエン欧州委員長とのテレビ会談に臨み、中国と欧州が「世界の安定と平和を維持する二大勢力となるべきであり、世界の発展と繁栄を牽引する二大市場となるべきであり、多国間主義を堅持し世界の安定化を図るための二大文明であるべきだ」と述べ、欧州と連携して第3勢力(すなわちアメリカ)と対抗していく姿勢を示した。 言ってみれば、習近平の「連欧抗米」戦略らしきものであるが、しかしそれからわずか1週間後、習政権がとった政治的行動が、欧州との連携を事実上不可能にした。香港国家安全維持法の強行で、中国はイギリスだけでなく、欧州の主な先進国との関係が亀裂を生じたのだ。実際、EU外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は7月13日、香港国家安全維持法に対してEUが対抗措置を準備していることを明らかにした。せっかく「連欧抗米」戦略を考案しながら、自らの行動でそれを直ちにつぶす――まさに習近平外交の不可思議なところである。 台湾政策もそうだ。2019年1月、「1国2制度による台湾統一」を自らの台湾政策の一枚看板として打ち出したのは習近平であるが、それから現在に至るまで、習政権は香港問題でとった行動の1つ1つが、まさに「1国2制度」の欺瞞性を自ら暴き、「1国2制度は嘘ですよ」と自白したかのようなものである。挙げ句の果てに、香港国家安全維持法の制定で自ら1国2制度を完全に壊し、「1国2制度による台湾統一」という構想を台無しにしてしまった。自分の打ち出す政策を自分の蛮行によって打ち壊すとは、習近平外交はもはや支離滅裂の境地に達している。 このような戦略なき「気まぐれ外交」を進めていくと、中国の国際的孤立はますます進み、中国にとっての外部環境の悪化がますます深刻化していくのがオチではなかろうか』、「自分の打ち出す政策を自分の蛮行によって打ち壊すとは、習近平外交はもはや支離滅裂の境地に達している。 このような戦略なき「気まぐれ外交」を進めていくと、中国の国際的孤立はますます進み、中国にとっての外部環境の悪化がますます深刻化していくのがオチではなかろうか」、軍事的挑発などにつながらないよう祈るばかりだ。
タグ:「日本人の参加を把握していない」日本政府 千人計画への関与を口止め 2017年までに合計7000人の理工系の科学者、研究者を集めた Newsweek日本版 無意味なけんかを他国に売る 石平 「戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路」 アメリカやイギリス、カナダ、オーストラリア、インドそして日本......なぜ中国は同時にいくつもの国といざこざを起こすのか。計算もしたたかさもない習近平の「気まぐれ外交」は負のスパイラルに陥っている 中国自身にもやはり大きな責任と問題点がある 習近平国家主席が個人独裁体制を確立して外交の指揮権を完全に掌握したこの数年間、中国外交にはかつての戦略性やしたたかさは跡形もない。「一帯一路」のような大風呂敷の国際戦略を漫然たる手法で展開する一方、ほとんど無意味なところで他国にけんかを売り、敵を次から次へと作り出している 「1国2制度による台湾統一」を台無しに 軍事利用される「一帯一路」 コロナ禍で家族を失い、仕事を失った国民の爆発寸前の不満を、今後中国という「仮想敵」でガス抜きしようとする可能性 自分の打ち出す政策を自分の蛮行によって打ち壊すとは、習近平外交はもはや支離滅裂の境地に達している。 このような戦略なき「気まぐれ外交」を進めていくと、中国の国際的孤立はますます進み、中国にとっての外部環境の悪化がますます深刻化していくのがオチではなかろうか 姫田小夏 中国情勢 中国と主要国との関係悪化は 中国政府にとっての「顔面直撃パンチ」 ダイヤモンド・オンライン 「中印国境紛争で垣間見えた、中国「一帯一路」の真の目的とインドの本気」 中印はもとより不安定 両国で数十人の死者 インドは米国からの武器購入に大枚をはたくだろう 互いの敵は米国だ 「武器商人の米国」にとってインドは客先であり、単なる手駒だ 「中国とインドはむしろ共通点が多い」とするオピニオンもある JBPRESS 「巨竜」と「巨象」が手を結ぶのは、日米にとっては悪夢 日本の科学者も参加 千人計画とは、中国政府が海外人材を破格の好待遇で集めて、中国の発展に協力させる計画 「科学者を犯罪に走らせる中国「千人計画」の正体 海外の高度技術を違法に取得、米国が本格的な取り締まりへ」 古森 義久 こんなにある千人計画関連の犯罪 科学者たちに、米国など諸外国の高度技術を盗用してでも入手し、中国の軍事や経済に活用することを求めている (その7)(中印国境紛争で垣間見えた 中国「一帯一路」の真の目的とインドの本気、科学者を犯罪に走らせる中国「千人計画」の正体 海外の高度技術を違法に取得 米国が本格的な取り締まりへ、戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路) (軍事・外交)
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