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米中経済戦争(その13)(米国か中国か 究極の踏み絵を迫られる金融機関 対中金融制裁法成立で米中経済圏は完全に分離へ、米中対立が先鋭化する中で 日本が絶対に失敗してはいけない対応とは、習近平のオウンゴールで 中国の「経済」と「先端技術」が後退する…! むしろ米中対立の「歩留まり」に留意を) [世界情勢]

米中経済戦争については、8月2日に取上げた。今日は、(その13)(米国か中国か 究極の踏み絵を迫られる金融機関 対中金融制裁法成立で米中経済圏は完全に分離へ、米中対立が先鋭化する中で 日本が絶対に失敗してはいけない対応とは、習近平のオウンゴールで 中国の「経済」と「先端技術」が後退する…! むしろ米中対立の「歩留まり」に留意を)である。

先ずは、8月6日付けJBPressが新潮社フォーサイト記事を転載した共同通信社特別編集委員の杉田弘毅氏による「米国か中国か、究極の踏み絵を迫られる金融機関 対中金融制裁法成立で米中経済圏は完全に分離へ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61545
・『「予想より厳しい内容」(欧州大手銀行幹部) 「こんなに早く制裁法ができるとは思わなかった」(米上院スタッフ) そんな驚きを呼んでいるのが、米国の対中金融制裁法「香港自治法」である。米中関係のプロたちの反応からは、先端技術に加えて、通貨の面でも米中切り離し(デカップリング)が急速に進むのではないか、という憶測が浮上する。 香港自治法は7月14日にドナルド・トランプ米大統領が署名し、成立した。しかし、この法ができあがった背景やもたらす意味は、まだ十分理解されていない。あらためて法の成立の裏舞台や今後予想されるインパクトを考えてみたい』、「香港自治法」「成立の裏舞台や今後予想されるインパクト」、とは興味深そうだ。
・『ドル決済の禁止は国際企業への死刑宣告  香港自治法は2つの段階からなる。第1段階は、「一国二制度」で認められた香港の自由や自治を侵害した人物や団体に制裁を科すこと。第2段階は、そうした個人法人と取引がある金融機関を、米ドルの決済システムから締め出す、というものだ。 個人や団体への制裁は、米国入国ビザの発給停止と、米国内にある資産の凍結である。これは米国と敵対する国の指導者や高官、軍関係者に対するよくある制裁であり、国務省が90日以内に制裁対象者リストをつくる。中国政府幹部は米国に不動産などの資産を持ち、子女を米国に留学させているから、これだけでも発動されれば痛いはずだ。 香港に対する強硬措置を指揮してきた韓正副首相(香港担当)、香港政府トップの林鄭月娥行政長官、クリス・タン香港警察処長らが国務省リスト案に入っていると報じられた。もちろん香港政策のトップは習近平国家主席だが、それは米国による本格的な宣戦布告となるから、まだ入っていない。 さて問題は、金融機関をドル決済から締め出す第2段階の制裁だ。 国務省が制裁対象者リストを最終作成した後30日から60日以内に、財務省が制裁対象者と「かなりの額の送金」業務を行った金融機関を、制裁対象と決める。 その制裁内容だが、米金融機関からの融資・米国債の入札・外国為替取引・貿易決済の禁止、資産の移動禁止、商品・ソフトウエア・技術の輸出制限、幹部の国外追放――などである。特に外国為替取引、貿易決済の禁止はドル決済を禁じるものであり、ドル金融システムからの追放を意味する。 ドル決済は、ニューヨーク連邦準備銀行など米国の金融機関を通過することから米国の管轄権の下にあるため、どこの国の銀行であろうとも、米法の適用を受ける。 だからドル決済の禁止は、基軸通貨ドルが持つ力をフルに発揮した制裁だ。しかもドル決済は依然世界の貿易・投資の大半を占めるから、その禁止は国際企業にとって「死刑宣告」でもある。 こうしたドル制裁を米国は、北朝鮮、イランやベネズエラなどに対して発動してきたが、中国のような世界第2の経済大国の取引に関連して発動するのは初めてだ。米国が中国に対して、「ルビコンの川」を渡ったことがよくわかる』、「ドル決済は依然世界の貿易・投資の大半を占めるから、その禁止は国際企業にとって「死刑宣告」でもある」、「ドル制裁を」「中国のような世界第2の経済大国の取引に関連して発動するのは初めて」、ずいぶん思い切った措置発動だ。
・『洗い出し作業を怠ると途方もないツケが  香港自治法が定める金融制裁には注意点がいくつかある。 まずは制裁対象となるのが、米中だけでなく日本を含めて世界中の金融機関であることだ。香港はアジアの金融センターであり中国マネーの窓口だから、名の知れた銀行は事業を展開している。 このためこの法が議会を通過した7月2日以降これらの銀行は、顧客の中に制裁対象、つまり香港の民主化運動を弾圧した当事者がいるかどうか、いる場合には預金や送金などのビジネスを打ち切るべきかの検討を始めた。 制裁対象者が家族の名前や代理人を使って銀行に預金を持っている可能性もあるから、疑惑の完全払拭は気の遠くなるような作業となる。この洗い出し作業は、日本の金融機関も例外なく進めなければならない。 かつて『ニューヨーク・タイムズ』は、温家宝前首相一族による27億ドルの蓄財を報じたことがあるが、預け先は中国の銀行だけでなく外国の金融機関の場合も多い。 洗い出し作業を怠ると、そのツケは途方もない。 かつてイランに送金業務を行った欧州最大手「BNPパリバ銀行」が米制裁法違反をとがめられ、89億7360万ドルもの罰金を米国に支払った。ほかにも英「スタンダードチャータード」が16億7900万ドル、英「HSBC」が19億ドルなど、法外な罰金や和解金を米当局に支払っている。日本のメガバンクも摘発され、巨額を支払った』、「この洗い出し作業は、日本の金融機関も例外なく進めなければならない」、これは金融機関にとっては、膨大な負担だ。
・『米国か中国か、究極の踏み絵を迫られる  次に、制裁が米国の恣意性を帯びる点だ。 香港自治法が問題視する「かなりの額の送金」とは、どれほどの金額だろうか。米財務省の金融制裁担当部署である外国資産管理室(OFAC)は、「かなりの額の送金」について、量、頻度、性格、銀行幹部が知っていたかどうか、制裁逃れを狙った隠蔽性があるかどうかなどで判断するという。だがどれも抽象的な表現であり、米政府のさじ加減次第となる。 3つ目の注意点は、米国の香港自治法と中国が6月30日に施行した香港国家安全維持法の両法を守る事業展開が不可能である、という点だ。 米国の制裁を回避するために中国当局者との金融取引を停止すれば、それは香港国家安全維持法が禁止する「外国勢力との結託」による反中国行為となってしまい、今度は中国当局に訴追される。 米国の香港自治法も中国の香港国家安全維持法も、違反すれば外国人であっても罰すると定めている。ということは、金融機関は香港や中国ビジネスから撤退するか、あるいはドル決済システムからの締め出しを覚悟して中国と取引を続けるという、究極の踏み絵を迫られることになるのだ」、これは大変だ。特に、米国籍のHSBCは「香港」での発券銀行として大きな存在感があるので、どちらを選択するか大いに注目される。
・『11月までには制裁が発動される可能性  4点目は予想より早い制定であることだ。 米議会は昨年11月、香港の民主化運動弾圧の当局者に資産凍結の制裁を科す「香港人権・民主主義法」を成立させた。 だが、中国による国家安全維持法が予想より早く施行され、中国の強硬姿勢が露わになったことから、米国も金融制裁という強力な武器を急いで使わざるを得なくなった。今後は、いつ第1段階の個人・団体に対する制裁、そして第2段階の金融機関に対する制裁が始まるかが焦点となるが、米国の制裁専門家は「予想より早いだろう」と見る。 参考になるのは、米国のウイグル人権法による制裁発動だ。ウイグル人権法は、中国が新疆ウイグル自治区で100万人以上のイスラム教徒を強制収容するなどの人権弾圧を行っているとして、資産凍結や米国入国拒否の制裁を定めたものだ。 この法律は今年5月末に議会を通過、6月17日にトランプ大統領が署名し成立した。その3週間後の7月9日には、自治区トップの陳全国共産党委員会書記らに対し制裁を発動している。スピード感がある。 香港では9月に、議会である立法会の選挙がある。民主派の候補者はあらかじめ立候補資格を認められない可能性があり、その時が制裁発動の1つのタイミングであろう。 また11月3日の大統領選を前に、トランプ大統領は新型コロナ被害に憤る米国民にアピールするためにも、対中強硬策に踏み切る必要がある。11月までには制裁が発動される可能性があるとみておいた方がよさそうだ』、「11月までには制裁が発動される可能性がある」、ということであれば、「大統領選」の結果を待つという戦略も通用しそうもなさそうだ。
・『議会に尻を叩かれた大統領  そして5点目は、議会が主導したことだ。提案者のクリス・バンホーレン上院議員は、「ホワイトハウスは香港問題に極めて生ぬるいのでこの法をつくった」と述べている。 ジョン・ボルトン前国家安全保障問題担当補佐官が回顧録で明らかにしたように、トランプ大統領は香港のデモについて「私は関わりたくない」と述べ、関心は薄かった。このため、議会がホワイトハウスの尻を叩くために立ち上がったという構図だ。 香港自治法は、上下両院とも全会一致で可決し、議会の総意としてつくった法だ。条文には、大統領が制裁見送りを決めても議会が3分の2の賛成で決議を可決すれば、見送り決定は覆されるとある。また、国務省リストに1年間、財務省リストに2年間掲載されれば、制裁が自動的に科される。 こうした法の厳格さを見れば、トランプ大統領が再選に失敗し、ジョー・バイデン政権が誕生しても、中国に対する金融制裁などの強硬策は変わらないと覚悟すべきだろう』、「バイデン政権が誕生しても、中国に対する金融制裁などの強硬策は変わらないと覚悟すべき」、HSBCだけでなく、多くの西側金融機関にとって、「中国」ビジネスは大きなメシの種になっていたがけに、頭が痛い問題だ。
・『ウイン・ウイン通用せず  ここ数カ月の米国による対中政策は、異なる次元に入った。 7月13日にはマイク・ポンペオ米国務長官が、中国の南シナ海での行動を「完全に違法」と踏み込んで宣言し、ベトナム、フィリピンなどの肩を持った。米国は、南シナ海の軍事拠点化を進める中国を批判しつつも、領有権については特定の立場を取らずに当事者間の話し合いでの解決を主張してきたが、それを転換したのだ。中国が「譲れない核心的利益」とする南シナ海での主権を明確に切り捨てたのだから、中国は猛反発だ。 ほかにも習近平主席への「全体主義の信奉者」との個人攻撃、ヒューストンにある中国領事館閉鎖命令などで、中国の神経を逆なでしている。「華為技術(ファーウェイ)」包囲網もさらに締め上げている。昨年5月に同社を安全保障上のブラックリストであるエンティティー・リストに指定した米商務省は、1年後の今年5月15日には、米国由来の半導体技術を外国企業がファーウェイに輸出することも禁止した。 8月からは国防権限法に基づき、ファーウェイや「ZTE」、「ハイクビジョン」など5社と取引がある外国企業を米政府調達から締め出すことが始まる。 米国は同盟国への圧力も強め、英国がファーウェイの排除を決めるなど、米英カナダ、オーストラリア、ニュージーランドによる機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」+日本・インドの連携で、中国先端技術企業をデカップル(切り離し)する動きが着々と進んでいる。 もちろんグローバル経済の中で米中デカップルなど果たして可能か、といった疑問がわく。またドイツやロシアなど大陸欧州の実力国家は米国に同調しないだろう。 しかし、今年5月に発表された米国家安全保障会議(NSC)の戦略文書「米国の対中戦略アプローチ」は、米中関係を「体制間競争」と定義している。これは経済、軍事、技術などだけでなく、政治体制(民主主義か強権主義か)や価値観を含む全面的な対立に米国がゲームを格上げしたことを意味する。香港やウイグル問題など、中国の内政問題を正面から取り上げる理由はそこにある。 こうなると、中国が好んできた「ウイン・ウイン」、つまり両者の主張の真ん中で決着させるというルールは通用しない。「デカップルはあり得ない」といった国際経済の常識が通用しない時代であるとの認識が必要になる』、「ドイツやロシアなど大陸欧州の実力国家は米国に同調しないだろう」、とはいっても、米国は「踏み絵」を迫る筈で、どこまで抵抗できるかは疑問だ。
・『「米中」2つの経済圏ができあがる  制裁は、いったん始まると解除が難しい。中国は香港をかつてのような自由都市に戻すことなどしないだろう。そうなると米国の対中制裁は半永久的に続くことになる。中国も米国の対中強硬派議員らに制裁を科しており、米中の制裁合戦は終わりそうにない。 中国も半導体技術の国産化やデジタル人民元の導入準備の本格化など、米国による先端技術やドル制裁に備えている。それはファイブ・アイズを中心とする米国の海洋国家圏域に対して、中国はユーラシア大陸に広がる「一帯一路」を圏域にする動きと平仄が合う。そうなると、ドルを基軸とする米経済圏と人民元の中国経済圏ができあがることになる。 米国の金融制裁が、そんな近未来の秩序づくりのキックオフとなるかもしれない』、「「米中」2つの経済圏ができあがる」、金融市場のグローバル化も一時の夢だったのだろうか。

次に、8月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「米中対立が先鋭化する中で、日本が絶対に失敗してはいけない対応とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/246088
・『先鋭化している米中の対立  ここへ来て、日増しに米中の対立が先鋭化している。11月の大統領選挙を控えたトランプ政権は、香港の人権問題や南シナ海の領海問題、5G通信などのIT先端分野で中国への圧力を高めている。 米国の厳しい対中政策に引っ張られる格好で、日英豪などが中国に対する懸念を表明した。5G通信インフラの整備から、中国のファーウェイ製品を排除する国も増えている。米国の圧力に対して中国は報復措置などで応酬し、世界の2大国のパワーのぶつかり合いが鮮明化している。 米国が対中強硬姿勢を強める背景には、共和党保守派を中心にオバマ前政権が中国の台頭を許した反省や批判がある。リーマンショック直後に発足したオバマ政権は、経済運営に注力せざるを得なかった。その間隙(かんげき)を縫って中国は海洋進出を強化し、一方的に南シナ海の領有権を主張するに至った。 さらに、広大な人民元流通圏の整備プロジェクトである“一帯一路(21世紀のシルクロード経済圏構想)”を推進した。 それが覇権国・米国の地位を脅かしている。 足元、経済成長の限界や新型コロナウイルスの発生によって、それまで盤石にみえた習近平国家主席の支配基盤はやや不安定化しているようだ。米国をはじめとする自由主義陣営からの圧力に対して、共産党指導部は強く対応しなければならず、これから米中の摩擦はさらに激化するだろう。日本は、米国との関係に加えてアジア・欧州各国との連携を強化して米中の対立に対応することが必要になるはずだ』、「オバマ前政権が中国の台頭を許した反省や批判がある」、同感である。
・『オバマ前政権の対中政策を批判する米保守派  近年、米国の共和党保守派は、先述したようにオバマ前政権が中国の力を見誤り、米国の地位が脅かされていると懸念を強めてきた。就任当初のオバマ氏は、どちらかといえば中国との協調を重視した。その背景には、米国経済の立て直しのために中国との関係を安定させ経済の安定につなげる意図があっただろう。結果的に、オバマ政権は中国の台頭を許すことになった。 リーマンショック後、中国は投資によって経済成長を人為的に高め、世界第2位の経済大国にのし上がった。中国は公共事業などで景気を支えつつ“中国製造2025”の下で人工知能(AI)などIT先端分野の競争力を高めた。また、中国は軍備を拡張しアジアやアフリカ地域の新興国に関係強化を求め、国際社会への影響力を強めた。 米国の保守派はその状況に危機感を強めた。彼らにとって、トランプ大統領が中国に対する強硬姿勢をとったことは重要だ。それが、岩盤のようなトランプ大統領の支持につながっている。保守派にとってオバマ前大統領の対中政策の「負の遺産」を取り除けるのはトランプ氏以外に見当たらないというのが本音だろう。 その一つの取り組みとして、トランプ大統領は中国のSNSへの規制を強化している。2017年に中国は国家情報法を制定し、個人や企業は国家の情報活動に協力しなければならない。香港の民主活動家がSNSを通じて海外と結託したとの理由で逮捕され、新疆ウイグル自治区では公安当局が監視カメラ網を用いて人々の行動を監視し、拘束している。 中国のIT機器、アプリの使用は米国にとって安全保障にかかわる問題であり、トランプ政権は中国の“ティックトック”や“ウィーチャット”との取り引きを禁じる方針だ。 実際に中国のアプリなどが米国から締め出されると、米国企業にはかなりの影響が生じる。 典型例はアップルだろう。アップルストアから中国企業のアプリが除外されればiPhoneへの需要は低下するだろう。そのほかにも、中国が米国企業の活動に制裁を科す、あるいは反米感情の高まりからiPhoneなどの販売に下押し圧力がかかることも想定される』、「“ティックトック”」は米国オペレーションの売却を迫られている。
・『国際社会が懸念表明を始めた中国の人権問題  そうした負の影響が想定されるにもかかわらず、米国が対中圧力を強めていることは冷静に考える必要がある。人々の自由を尊重してきた米国にとって、中国が人々の自由への渇望を力ずくで抑えていることは容認できない。 日英などの主要先進国も中国への懸念を表明し、国際社会における対中世論は変化し始めた。それは、自由主義陣営と、それに対する国家主義の強化に邁進する中国との軋轢(あつれき)が高まっていることにほかならない。 米国が懸念しているのは、漢民族による支配を重視する中国の価値観が他国に広がることだろう。香港、チベット、新疆ウイグル自治区などでの人権抑圧は国際社会からの非難を浴びている。それでも、中国共産党政権は強制的に人々を従わせようとしている。それは、経済成長の限界を迎えた上に新型コロナウイルスが発生したことによって、共産党政権の支配体制がやや不安定になったことを示唆しているといえるだろう。習近平国家主席は、米国に強硬な姿勢で応じざるを得なくなっている。 懸念されるのは、アジアやアフリカ各国における中国の影響力が拡大したことだ。コロナショックの発生によって世界経済は低迷し、パキスタンやアフリカ諸国が中国に債務の減免を求めている。中国もそれに応じる意向を示しているが、実際に返済期間の延長などが約束されるとなれば、中国は支援と見返りに各国にこれまで以上の服従を求めるだろう。その結果として、中国がアジアやアフリカ地域への影響力を追加的に強め、当該国の資源や個人情報などのデータを手に入れる展開は軽視できない。 仮に中国の影響力が強まれば、中国国内だけでなくアジア・アフリカ地域では人々の不平・不満が高まり、政情が不安定化することもあるだろう。そうなると、世界経済全体の安定にはかなりのマイナス影響がある。それに加えて、米国が中国の行動を放置したとの批判が高まり、米国の優位性がこれまで以上に不安定化する可能性も軽視できない』、「パキスタンやアフリカ諸国が中国に債務の減免を求めている・・・実際に返済期間の延長などが約束されるとなれば、中国は支援と見返りに各国にこれまで以上の服従を求めるだろう。その結果として、中国がアジアやアフリカ地域への影響力を追加的に強め・・・アジア・アフリカ地域では人々の不平・不満が高まり、政情が不安定化することもあるだろう。そうなると、世界経済全体の安定にはかなりのマイナス影響がある」、恐ろしいような悪影響だ。
・『熱を帯びる米中の対立構造  今後、米国を中心とする自由主義陣営と、共産党の一党独裁体制の維持と強化を目指す中国の激突は一段と苛烈(かれつ)なものとなる可能性がある。米国は、中国の影響力の拡大を何とかして食い止めたいと考えているはずだ。 当面、中国の共産党指導部は、国内支配と海外への影響力拡大のために米国に対抗せざるを得ない。米国は技術やソフトウェア面で中国を抑えようとしているが、中国のAI開発力は世界トップクラスだ。共産党政権は、公共事業の積み増しや補助金政策によって当面の景気を支えつつ、先端分野の競争力を引き上げることによって米国の圧力を跳ね返そうとするだろう。それは共産党の求心力の維持と社会監視の強化にも重要だ。 わが国は、米中の対立先鋭化に対応しなければならない。わが国は中国の人権抑圧を容認してはならず、民主主義国家として人々の自由を尊重する姿勢を明確にしなければならない。 その上でわが国は、安全保障面では米国との関係を基礎としつつ、そのほかの外交面ではEUやアジア新興国などとの関係を強化する必要がある。それは、数の面から対中包囲網を形成することにつながる。 足元、アセアン各国は中国への不安を強めている。世界経済のダイナミズムの源泉として期待を集めるアジア新興国とわが国が関係を強化することは、トランプ政権との通商摩擦などに直面するEUとの連携強化に有効だ。わが国がアジア各国やEUとの経済連携を推進することは、経済面から対中包囲網を整備することにつながる。また、わが国が米国に対して主要国との連携の重要性を説き、国際社会の安定に向けた協力を求めるためにも、そうした国際連携は強化されるべきだ。 それによってわが国は、多数決のロジックに基づいて中国により公正な姿勢を求め、経済的な利得を目指すことができるだろう。さまざまな懸念や問題があるものの、中国が世界最大の消費国であることは無視できない。 わが国は国際世論を味方につけながら、是々非々で自国の立場を確立しなければならない時を迎えている』、その通りだが、気になるのは、「習近平」主席の国賓訪日について、自民党外交部会は中止を申し入れたが、政府としてはいまだに見解を明らかにしていないことだ。やはり政府としても、招待取消しを上手い大義名分で申し入れるるべきだろう。

第三に、8月21日付け現代ビジネスが掲載した元外交官・外交評論家の河東 哲夫氏による「習近平のオウンゴールで、中国の「経済」と「先端技術」が後退する…! むしろ米中対立の「歩留まり」に留意を」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74995?imp=0
・『米中対立が、高まっている。トランプは、中国ByteDance社が米国で展開するビデオ・プラットフォームのTikTokは、情報を中国に転送するから危険だとして、米企業への売却を促すとともに、ByteDanceは売却代金の一部を米国庫に納めるべきだと言明している。 このままでは米中は、貿易・投資・技術面で、相手国企業の接収など仁義なき戦いに至りかねない。現代の国際社会に土足で上がり込もうとする感のある中国を抑えるのは賛成だが、抑えて抑えきれるものだろうか? 筆者は、経済関係を断絶する必要は毛頭ないが、けじめをつけて、絞るべきところはきちんと絞る。それは可能だ、と思う。検証してみよう』、「ByteDanceは売却代金の一部を米国庫に納めるべき」、ここまでくると近代国家にあるまじき不当な要求だ。
・『米国はどこまで本気なのか?  中国との対立は、米国の総意になっていない。 もともとオバマ政権時代には南シナ海におめおめ人工島=軍事拠点を作らせてしまったし、尖閣防衛についてもへっぴり腰だった。 トランプが中国叩きを続けるのは、「中国製品に米市場を奪われ、職も失った」と感じている中西部の白人労働者向けのサービスだ。彼は中国の危険性などは認識しておらず、自分の再選に中国叩きを使うことしか考えていない。 今、彼の一部側近、そして軍は、トランプの中国叩きに乗じて、軍事・技術・資金等あらゆる面で中国を封じ込めようとしているが、トランプは再選されれば中国と握手することだろう。バイデンが当選しても、中国との過度の対立にはブレーキがかけられ、気候変動、核拡散防止などの問題の方に注意が向けられることだろう。 つまり米国の尻馬に乗って中国を叩くのは程々にしておかないと、はしごを外されることになる、ということだ』、「トランプは再選されれば中国と握手することだろう。バイデンが当選しても、中国との過度の対立にはブレーキがかけられ、気候変動、核拡散防止などの問題の方に注意が向けられることだろう。 つまり米国の尻馬に乗って中国を叩くのは程々にしておかないと、はしごを外されることになる」、元外交官らしい深い読みだ。
・『とりあえず米国が狙っていること  中国は既に世界2位のGDPを持つ。中国に行くと、その高層ビルの数に圧倒される。中国の貿易量は世界2位で、日本にとっても中国は輸出相手として2番目だ。この中国を世界から切り離せるのか?  昔、共産主義ソ連を作った革命家レーニンはうそぶいたことがある。「見てろ。資本家の連中は今に自分達を絞首刑にするための縄を、俺達に売りにやってくるよ」と。 西側はソ連に対して「縄を売る」ことはなかったが、中国に対しては1990年代後半から資本と技術をつぎ込み、中国の低賃金労働者に自社製品を組み立てさせ、それを自分達が輸入するやり方を大々的に続けた。 外国企業による輸出は今でも中国の輸出全体の40%程度を占め、2018年でも年間3518億ドルもの貿易黒字を中国にもたらしている。 2000年代にはこの貿易黒字と直接投資合わせて、年間30兆円分を越える外国資本が中国に流入して、中国の急成長のシード・マネーとなった。 中国共産党は、国民の低賃金労働と外国の資金・技術に乗って、今や世界中の先端技術企業の買い占めをもくろみ、軍を強化しては周辺への拡張戦略に出ているのである。西側は、自分達をつるすための縄を中国に売ってきたのだ。 今、米国や西側諸国は中国との関係をすべて切るのではなく、「絞首刑の縄」、つまり自分たちの安全を脅かすようなものは渡さないことに注力している。 米国は中国企業に国内の通信インフラを牛耳られるのを防ぐためにZTE社、ファーウェイ等を閉め出したし、半導体を中心に軍事転用可能な先端技術の対中流出を止めようとしている』、「米国や西側諸国は中国との関係をすべて切るのではなく、「絞首刑の縄」、つまり自分たちの安全を脅かすようなものは渡さないことに注力している」、面白い捉え方だ。
・『中国半導体産業の脆弱な足元  焦点は「半導体」と言うか、センサー等個々の目的を持ったマイクロ・プロセッサー=超小型回路、それも最先端の性能を備えたもの、そしてこれを製造することのできる機械にある。半導体は、現代の産業のコメと言われるもので、多くの製品、そして兵器の性能、競争力を左右するが、中国はまさにこの分野でまだ後れているからだ。 半導体は千差万別、そしてそれを製造する工程は何段階にも及び、それぞれの段階でいくつもの種類の機械が必要である。 それぞれの半導体については、パソコンのプロセッサーがインテル、スマホのものが米国のクアルコム、英国のアーム、自動運転などに不可欠の「目」センサーはソニー、工場のAI化に不可欠なセンサー・システムについてはボッシュ、キーエンス等々、そして半導体製造機械では米国のアプライド・マテリアルズ、オランダのASML、日本の東京エレクトロン等、圧倒的なシェアを持つ企業が、世界で既に確立している。 クアルコムやキーエンスは自分の工場を持たず、他社に生産を委託しているが、そうした電子製品の生産を受託する企業は台湾で発達しており、ホンハイ(アップル社の製品組み立てを受託)、TSCM(クアルコム社の製品生産を受託。工場は主として台湾にあるが、中国のファーウェイ社からも受注している)などは押しも押されもせぬ世界規模の大企業になっている。この体制を破ることは、中国にはできない。 だから中国のGDPは世界2位だと言っても、実は世界中から資金、技術を受けての上のことで、これを絞られた場合、どこまで自力で成長できるかは、まだわからないのだ。 2019年でも中国は半導体を1000億ドル強も輸入していて、自給率は15%程度と言われる。だからこそ習近平指導部は、中国経済の自立化をはかる「中国製造2025」計画で、半導体の自給率を70%にまで高めることを目標に据えたのだ。 伸びているところもある。「紫光集団」系の長江存儲科技は4月、世界の大手に追いつく128層の「三次元NAND型フラッシュメモリー」の開発に成功しているし、台湾の人材が作った民営の中芯国際集成電路製造(SMIC)は半導体製造受託企業=ファンドリーとして急伸。アップル製品組み立て受託にも成功して、台湾のTSCM等を追い上げている』、「中国のGDPは世界2位だと言っても、実は世界中から資金、技術を受けての上のことで、これを絞られた場合、どこまで自力で成長できるかは、まだわからない」、その通りだ。
・『対中先端技術規制は可能  しかし、問題は山積している。中国は党・政府主導、つまり役人がビジネスを決めるので、多くのことがちぐはぐになる。 福建省では晋華集成電路(JHICC)(国営)が6000億円相当あまりを投じて大規模な半導体生産工場を建設したが、米国が半導体製造装置の輸出を止めたために、もぬけの殻となっている。 装置を輸入しても、技術要員を外国に依存するケースが残っている。武漢の液晶パネル工場ではコロナ禍後、生産を再開しようとしたが、日本人技術者が日本に引き上げたままで稼働が遅れている。 民営のファーウェイはもっとまともなビジネスをしているように見える。傘下の海思半導体社の製品は「世界トップクラス」で、ファーウェイ社のスマホに搭載する半導体の5割は内製だと言う。 しかしこれも内実は、英国のアームに設計を、台湾のTSCMに製造を依存したものだし、新型スマホ「Mate30」も部品の3割は日本製である。中国経済は、実はまだ脆弱なのだ。 今のように経済がグローバル化していると、中国に先端技術が渡るのを完全に止めるのは無理だろう、という声もある。確かにその通り。米ソ冷戦時代も、ココム(共産圏への先端技術輸出を規制した、西側諸国間の紳士協定)破りは絶えなかった。 しかし米政府の規制をかいくぐった企業は、多額の罰金を科されることになる。それが第3国の企業であっても、米国はその企業の米国内での取引を禁じ、ドルの使用さえ禁じることができるので、そのリスクを冒す企業は少ないだろう。 それに、冷戦時代の名残で、先端技術の輸出は多くの国が自前で規制している。先端技術が中国に渡るのを規制するのは、可能なのである』、なるほどそうなのだろう。
・『細り始めたカネと技術の流入  中国は、先端技術面での後れを、外国企業を買収することで克服しようとしてきたが、米国や日本はもちろん、ドイツでさえロボット技術最先端のクーカ社を買収されて以来、中国のカネに警戒的な姿勢に転じている。 「中国人は多数が米国に留学しているから、技術、マネジメントの双方で進んだものを中国に持ち帰るだろう」と言われるが、それは一般化していない。米国に留学した高度な知識を持つ中国の人材の多くは、米国での就職を選んでいる。今後、トランプ政権による圧力で、これら研究者が中国に帰還しても、能力を十分発揮できる環境は中国にあるまい。 中国は何でもカネで手に入れようとしてきたが、そのカネも次第に手に入りにくくなっている。2018年、中国には約1400億ドルの直接投資が流入し、貿易黒字は3518億ドルに及んだが、後者の60%程度をたたき出していた対米貿易黒字がこれから減少していくと、中国は恒常的な経常収支赤字国に転落するだろう。 これまで米国の投資銀行等は「中国経済の将来性」を吹聴しては、中国企業の米株式市場上場を受け持って大儲けをしてきたが、米国当局は、中国企業の経理は透明性に欠けるとして規制する方向に転じた。2019年中国企業が米国での上場で調達できた資金は僅か35億ドルで、前年から61%減少している。 米国上院は共和・民主超党派で、軍人の年金基金FRTIBに、資金を中国株に投資するのを再考するよう呼びかけている。この基金の資産総額は5780億ドルに及ぶ。 そして香港が金融ハブの機能を停止すれば、ここで上場して外貨を手に入れていた中国企業は困窮するだろう。2018年の中国企業のエクイティファイナンスのうち、香港での調達額は42%、IPOに限れば55%に及んでいるからだ』、米国内での上場も、不正会計の横行で厳しく審査される方向だ。「香港での調達額」難と合わせ、資金調達の道は厳しくなるだろう。
・『西側は中国なしでやっていけるのか  では、西側は中国なしでやっていけるのか? 中国は多くの国にとって主要な貿易相手国になっている。家電製品も文具製品もmade in Chinaのものがなくなると、我々の生活は成り立たない。中国市場を失うと、多くの国は輸出の20%以上を失うことになるだろう。 中でも米中は相互依存性が高く、中国はその貿易黒字の60%を米国相手に稼いでいたし(2017年)、米国で売られている家電製品、日用品、文具など、自動車をのぞく多くのものがmade in Chinaになっている。 しかし米国はパソコン、スマホはベトナムからの輸入を急増させているし、ゴープロは米国向け製品の生産を中国からメキシコに移転した。 そして日本の場合、対中輸出のうちかなりの部分は、中国市場向けと言うよりは、中国で自社製品を組み立てている日本、そして欧米、台湾の企業向けのもので、多くは最終製品に組み込まれて米国やEUに再輸出されている。 これら工場が例えばベトナムや米国やインドに移転すれば、日本はそこに輸出するので、総輸出量は減らない。中国市場で消費される分は、日本から輸出、あるいは中国国内で生産を続ければいい。2018年、日本製造業の対中直接投資累積額は8.8兆円あったが、ASEAN諸国では12.5兆円もあったのだ。中国が日本経済の死命を制するわけではない。 中国は太陽発電パネル、風力発電設備、ドローンなどで世界市場を席巻し、最近では製薬業の成長も著しい。これは別に規制する必要はない。ビジネスの競争の話しである。 衣料用染料やリチウムのように、製造・加工時の環境汚染基準が緩かった故に、中国が世界で高いシェアを持つ品目があり、中国が西側に対して持つ切り札だと言われるが、レアアースは他の場所でも豊富にあるし、代替材料もある』、概ねその通りだが、日本企業にとって、大きな「中国国内市場」を失うとすれば、深刻な痛手だ。
・『大げさなファーウェイ5G覇権説  5Gについては、大げさな議論がまかり通っている。 それは、ファーウェイの5G製品を拒むこととすれば、西側は5Gの普及で中国に大きく後れてしまう、というものだ。これは、5Gとは何か、ファーウェイの製品はその中でどういう意味を持っているのか、を調べずに虚しい議論をしているのである。 5Gとは大量の情報を瞬時に伝達、瞬時に分析して対応を瞬時に指令し返す技術である。ファーウェイは、このうち送受信と伝達のインフラ作りに特化した企業で、集めた情報を処理して自動運転を可能にするような技術――5Gで最も難しく最も利益の上がる分野――はファーウェイではなく、内外の自動車企業等がしのぎを削っているところなのである。 しかも5G通信のインフラはファーウェイの独占ではなく、かつて世界の電話・電信インフラを牛耳っていたフィンランドのノキアや、電機業界で大手のスウェーデンのエリクソンも大きなシェアを持っている。 ファーウェイは、5Gがまだ雲をつかむような話でいる段階なのに、「これが5G用です」と言って、割安の設備を各国に売りつけているに過ぎない。中国の青年はポルノを瞬時にダウンロードできると言って喜ぶだろうが、将来、遠隔医療や自動運転などで5Gが実用化される時、ファーウェイの今の規格では使い物にならないかもしれない。 中国ではサプライ・チェーンが整っているし、人材も豊富だから、工場をなかなか移転できない、という声もある。 しかし、1990年代末に西側企業が中国に工場を作った時には、サプライ・チェーンは不在、つまり西側企業が使えるような部品を納期を守ってきちんと納入してくれるような企業は皆無だったから、西側企業は部品企業も本国から連れて行ったのである。 そして今では何でもすぐ作ってくれることになっている深圳でも、品質基準が日本と違い、こちらの要求通りのものが出て来ないというような問題がある(「深圳に学ぶ」藤岡淳一)』、「ファーウェイは、5Gがまだ雲をつかむような話でいる段階なのに、「これが5G用です」と言って、割安の設備を各国に売りつけているに過ぎない」、ビジネスとしては巧みなやり方だ。ただ、「将来、遠隔医療や自動運転などで5Gが実用化される時、ファーウェイの今の規格では使い物にならないかもしれない」、それは「ファーウェイ」の口車に乗せられたユーザーの責任でもある。
・『西側の懐はまだまだ深い  それでも1つ、ひそかな懸念がある。それは米国、西側が先端技術、特にAI技術で中国に競り負けるのではないかということである。 中国はロボットの生産も急増させ、2025年までに国産のシェアを7割に高めようとしている。中核部品である小型精密減速機では日本のハーモニック・ドライブ・システムズに依存してきたが 、最近では中国のリーダードライブ社が台頭。中国で2割以上のシェアを占めるに至っている。 先端技術と言えば「シリコン・ヴァレー」だが、最近ではその勢いは衰えている。GAFA等「鯨」の住処となったせいで、家賃、賃金が高騰する等、スタート・アップに優しいところではなくなった。 これに比べて深圳は、デジタルとモノの技術開発が共存し、安全基準などの規制がゆるいために、新規製品の開発は非常に容易だと言われる。 中国に軸足を置くTESLA社は128種類もの部品の生産を深圳の企業に生産委託したし、シリコン・ヴァレーの企業自体が深圳とヒト、モノ、カネの面で交流を深めており、その様は目をみはるほどだと言われる。 しかし、西側の懐は深い。 日本は電子部品・素材のいくつかで、未だに世界首位の座を確保しているし、半導体製造装置でも上位を維持している分野がある。 米国では、シリコン・ヴァレーは硬直化しても、MITを擁するボストン地域が再び活発化しつつあるし、ヒューストン、フェニックス、デトロイト、ピッツバーグ、そして首都ワシントン郊外など、様々な分野でのハブがひしめいている。市場経済の活力は、指令経済に勝つだろう』、「「シリコン・ヴァレー」だが、最近ではその勢いは衰えている」、「深圳は、デジタルとモノの技術開発が共存し、安全基準などの規制がゆるいために、新規製品の開発は非常に容易だと言われる」、「ボストン地域が再び活発化しつつあるし、ヒューストン、フェニックス、デトロイト、ピッツバーグ、そして首都ワシントン郊外など、様々な分野でのハブがひしめいている」、まではその通りなのだろうが、「市場経済の活力は、指令経済に勝つだろう」、は筆者の希望的観測に過ぎないようだ。
・『米国債・ドルの運命が中国の手中に?  米国人が中国との過度の対立を自戒する時持ち出すのが、「中国は米国国債を大量に保有している。つまり米国に多額の資金を貸してくれているのだ。中国を怒らせたら、何をされるかわからない」ということだ。 そこは、米国は心配し過ぎで、米国債を大量に売って困るのは、むしろ中国の方なのだ。そんなことをすれば中国元のレートが跳ね上がって輸出ができなくなるだろう。それに、多額の外貨を保管する手段は、米国債以外にない。 最近では、「世界通貨は人民元に交代する」という見出しがマスコミで踊るが、これは販売部数を増やすための掛け声のようなものだ。誰も信じてはいない。 なぜか? まず中国の金融当局が、本音ベースでの人民元の国際化、つまり資本取引の自由化をする気がない。自由化すれば、中国国内の資本は海外に大量に流出して(他ならぬ中国のエリートが、公金を横領してはドルにして、米国の自分の隠し口座に送る)人民元の暴落と国内のインフレを呼び起こすだろうからだ。 中国は「デジタル人民元」を発行する準備をしている、と言われる。しかしこれは、国内での国民監視、徴税には役に立っても、例えば湾岸諸国が中国に、これまで通りドルでの石油代金支払いを求めてくるなら(多分そうなる)、「デジタル人民元」は国際貿易の決済にはほとんど使われまい』、「人民元の国際化」、「デジタル人民元」については、同感である。
・『中国は米国農家を倒産させるか?  中国が米国農産物の輸入を止めると、米国の農家が困って、トランプ批判に回るだろうという声もある。 確かに米国は2016年に214億ドルの農産物を中国に輸出していたが、2018年には中国が米国産大豆の輸入関税を大幅に上げたため、91億ドルに激減している。 しかし、これで米国中西部の農家が倒産したという話しは聞かない。 米国では、大豆だけ作っている農家はあまりなくて、種々の作物を組み合わせているので、大豆が駄目なら他のものを増やせばいいのである。 従って米農産物のグローバルな輸出額は2018年、むしろ微増しているし、中国は大豆消費の約9割を輸入しているので、米国大豆をブラジル産などで簡単に代替もできない。 大豆不足は国内の豚肉価格上昇を招くこともあり、中国は米国産大豆に対する追加関税を2019年7月には撤廃して輸入量を回復させている』、なるほど説得力がある。
・『中国経済の上辺ではなく中身を見ろ  西側や日本では、中国経済の話になると圧倒されて、へっぴり腰になる人が多い。大袈裟な報道や、見せかけの数字に圧倒されているのである。 たとえば、中国政府は電気自動車(EV)生産を振興し、これで西側企業を圧倒しようとしているが、中国企業は政府助成金を得るため、「何ちゃったってEV」を濫造。2019年には国産EVの発火事故が7件明らかになっている。多分、電池に問題があるのだろう。 寧徳時代新能源科技(CATL)のように、自動車用電池の生産では世界一にのし上がった大企業もあるが、助成金のおこぼれを狙う急造メーカーが乱立して事故を起こしているのだ。 「科学技術の研究論文の数や質で、中国は日本を抜き去り米国に迫っている」という報道がある。しかし、中国の科学者は論文掲載の数を争いがちで、その質には問題があることが多い。盗作、偽作が多い上に、金を払えば掲載してくれる悪質な雑誌が多い。 日本の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の調査によると、引用回数の多い中国人研究者の論文でも、研究者が実績作りのために相互に引用し合っているケースが見られたという。 欧米研究者との共同研究が多く、そのため西側の専門雑誌に論文が掲載されるケースが多いのも、カネで実現している面があるだろう。 中国は、米国のナスダック市場の向こうを張って、2019年にはスタート・アップ向けの「科創板」なる新市場を上海に創設したが、初めの熱気はすぐに冷め、取引は低調に終始している。 「中国経済の有望さ」の証左として、スタート・アップの数が急増していることが指摘されている。しかしこれも、政府が2014年に「大衆創業・万衆創新」政策を打ち出して、助成金を増やしたことがブームを過熱させているのである。 新卒毎年700万人のうち、20万人が創業に走り、1日約1万6000に達する起業ラッシュとなったが、うまくいっているものはごく少数である』、「引用回数の多い中国人研究者の論文でも、研究者が実績作りのために相互に引用し合っているケースが見られた」、初めて知った。ただ、「欧米研究者との共同研究が多く、そのため西側の専門雑誌に論文が掲載されるケースが多いのも、カネで実現している面があるだろう」、「カネで実現している面がある」、は粗雑だ。
・『中国はオウン・ゴールで後退する  習近平は、中国経済のうわべを本物と取り違え、覇を唱えるのを急ぎ過ぎた。経済を知らず、ものごとを見せかけの力と大きさだけで判断したからだ。 中国は米国の虎の尾を踏んで技術とカネをしぼられ、これまでの成長モデルは逆回転をし始めている。義和団のような混乱の時代さえ招きかねない。 経済成長のためのシード・マネーを稼いできた外資系工場が、これから次第に本国や第3国に移転していくと、中国経済は大きな打撃を受けることになるだろう。 輸出業で働くのは1億人。その家族と関連サービス業従業員も入れると、4億人もいると推計されている。アップル1社だけでも、中国経済への年間貢献の規模は240億ドルと見積もられており、150万人の労働者がアップル製品の組み立て、250万人がアプリの開発に携わっていると見られている。 だから、中国を世界経済から完全に切り離すという、無理なことをする必要はない。一部の先端技術の対中流出、資本の過度の流出を抑えていけば、世界と中国は節度のある協力関係を続けていくことができるだろう』、「中国はオウン・ゴールで後退する」、成長が共産党政権を支えていただけに、政治が不安定化する懸念がある。「中国を世界経済から完全に切り離すという、無理なことをする必要はない。一部の先端技術の対中流出、資本の過度の流出を抑えていけば、世界と中国は節度のある協力関係を続けていくことができるだろう」、妥当な見解だ。
タグ:大げさなファーウェイ5G覇権説 西側は中国なしでやっていけるのか 細り始めたカネと技術の流入 対中先端技術規制は可能 中国半導体産業の脆弱な足元 米国や西側諸国は中国との関係をすべて切るのではなく、「絞首刑の縄」、つまり自分たちの安全を脅かすようなものは渡さないことに注力している とりあえず米国が狙っていること トランプは再選されれば中国と握手することだろう。バイデンが当選しても、中国との過度の対立にはブレーキがかけられ、気候変動、核拡散防止などの問題の方に注意が向けられることだろう。 つまり米国の尻馬に乗って中国を叩くのは程々にしておかないと、はしごを外されることになる 米国はどこまで本気なのか? 「習近平のオウンゴールで、中国の「経済」と「先端技術」が後退する…! むしろ米中対立の「歩留まり」に留意を」 河東 哲夫 現代ビジネス 熱を帯びる米中の対立構造 国際社会が懸念表明を始めた中国の人権問題 オバマ前政権の対中政策を批判する米保守派 先鋭化している米中の対立 「米中対立が先鋭化する中で、日本が絶対に失敗してはいけない対応とは」 真壁昭夫 ダイヤモンド・オンライン 「米中」2つの経済圏ができあがる ウイン・ウイン通用せず 議会に尻を叩かれた大統領 HSBCは「香港」での発券銀行として大きな存在感 11月までには制裁が発動される可能性 米国か中国か、究極の踏み絵を迫られる JBPRESS 新潮社フォーサイト (その13)(米国か中国か 究極の踏み絵を迫られる金融機関 対中金融制裁法成立で米中経済圏は完全に分離へ、米中対立が先鋭化する中で 日本が絶対に失敗してはいけない対応とは、習近平のオウンゴールで 中国の「経済」と「先端技術」が後退する…! むしろ米中対立の「歩留まり」に留意を) 洗い出し作業を怠ると途方もないツケが 「ドル制裁を」「中国のような世界第2の経済大国の取引に関連して発動するのは初めて ドル決済の禁止は国際企業への死刑宣告 「米国か中国か、究極の踏み絵を迫られる金融機関 対中金融制裁法成立で米中経済圏は完全に分離へ」 米中経済戦争 中国は米国農家を倒産させるか? ファーウェイは、5Gがまだ雲をつかむような話でいる段階なのに、「これが5G用です」と言って、割安の設備を各国に売りつけているに過ぎない 西側の懐はまだまだ深い 米国債・ドルの運命が中国の手中に? 中国を世界経済から完全に切り離すという、無理なことをする必要はない。一部の先端技術の対中流出、資本の過度の流出を抑えていけば、世界と中国は節度のある協力関係を続けていくことができるだろう 中国はオウン・ゴールで後退する 中国経済の上辺ではなく中身を見ろ 杉田弘毅
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