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航空会社(その3)(乗客ゼロの旅客機が担う「知られざる重要任務」 平時でも、航空貨物の半分は旅客機が運ぶ、JAL・ANAにコロナ再編の波も 1社で十分なら3万人雇用は…、「JAL123」騒動が映す月日の流れと揺らぐ働く意義) [産業動向]

航空会社については、2017年4月20日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(乗客ゼロの旅客機が担う「知られざる重要任務」 平時でも、航空貨物の半分は旅客機が運ぶ、JAL・ANAにコロナ再編の波も 1社で十分なら3万人雇用は…、「JAL123」騒動が映す月日の流れと揺らぐ働く意義)である。

先ずは、本年5月15日付け東洋経済オンラインが掲載した交通ライターの谷川 一巳氏による「乗客ゼロの旅客機が担う「知られざる重要任務」 平時でも、航空貨物の半分は旅客機が運ぶ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/349639
・『新型コロナウイルス感染症拡大の影響が世界的に広がっている。鉄道でも旅客数が激減しているが、貨物列車はJR貨物の4月輸送実績は前年同月比90.3%と、減ってはいるものの、旅客数の落ち込みほどではない。 新幹線など国内の長距離列車は青息吐息だが、貨物列車はそれなりに動いている。航空では多くの路線が運休となる中、北米や中国行きを中心にいつも通りに飛んでいる国際旅客便もある。運休にならない理由は、旅客便には航空貨物を運ぶという役割もあるためだ。多くの旅客便が運休になっていることから、飛んでいる便へ貨物が集中し、需要増で貨物運賃が高騰すらしているという。 われわれが思っている以上に旅客便は航空貨物を運んでいる。とくにワイドボディ機(客室通路が2列ある機体)は大きな貨物輸送能力を持っている。世界の航空貨物のうち、約半分が貨物専用便で運ばれ、残り半分は旅客便の床下で運ばれている。貨物専用便のほうが多くの貨物が運べるが、旅客便は便数が多いのでこのような結果になる。 その旅客便が運休になったことで、貨物が滞ってしまうのだ。そのため貨物専用便による臨時便を運航したり、旅客機に貨物だけ載せて運航したりしている。旅客便は貨物も運ぶことで成り立っていたので、旅客がいないからといって簡単に運休にできない路線も多いのだ』、「世界の航空貨物のうち、約半分が貨物専用便で運ばれ、残り半分は旅客便の床下で運ばれている」、「旅客便は貨物も運ぶことで成り立っていたので、旅客がいないからといって簡単に運休にできない路線も多いのだ」、「旅客便」で運ばれる「貨物」が想像以上に多いようだ。
・『旅客がいなければもっと運べる  それでは旅客機の床下にどのくらいの貨物スペースがあるだろうか。旅客機の床下中央は主翼であり燃料タンクで、機首側には前脚(前の車輪)が収納されているが、それ以外は貨物スペースである。 同じ大きさのボーイング777-200(旅客機)と777-200F(貨物機)を貨物室の容積で比べると、旅客機の床下に150㎥、貨物機は機体全体が貨物室なので653㎥の大きさがある。貨物機は旅客機の4倍の容積があり、圧倒的な輸送力があるように思える。 しかし、話は単純ではない。貨物機に653㎥の大きさがあるといっても、重い貨物を満杯にすることは通常できない。そんなことをしたら、貨物だけで最大離陸重量になり、燃料をほとんど積めなくなってしまう。成田から関空まで飛ぶ程度なら可能だが。 ではどうするか。貨物専用便は重くて小さいものと軽くて大きいものをうまく組み合わせることで、重さ、容積をバランスさせることでアンカレッジまで飛べるくらいの燃料の重さを捻出し、機体性能を目一杯使って飛んでいる。 旅客機は150㎥の貨物スペースしかないものの、旅客や手荷物がなければ、貨物スペースは重い貨物で満杯にすることも可能だ。客室にマスクの入った段ボールを載せる映像もあったが、好んで客室に載せるはずはないので、少なくともその便の床下は貨物で満杯なのである。 日本航空は貨物専用便を運航していたが、破綻を機に運航を取りやめた。旅客便の床下だけでも多くの貨物が運べるというのが専用便撤退の大きな理由だ。逆にいえば、貨物専用便を運航している航空会社は、特大貨物を運べることが強みとなる。またボーイング747貨物機を運航している場合は、機首部の貨物ドアが開くので、長大物も運べる』、「貨物専用便は重くて小さいものと軽くて大きいものをうまく組み合わせることで、重さ、容積をバランスさせることで・・・機体性能を目一杯使って飛んでいる」、ただ積み込めばいいのではなく、工夫が必要なようだ。
・『航空貨物の中身は?  そもそも国際航空貨物として運ばれるものはどのようなものなのか。航空貨物は「速さ」がメリットで、通関も含めて船で1カ月かかるところを2~3日で運ぶ。しかし、運賃は船便の10倍くらいとなる。航空貨物向きなのは小さく軽く高価なもの、具体的には電子機器などである。 いっぽう、食料品は高級ワインなどを除くと船で運ぶのが主流で、航空便が使われるケースは減っている。なぜ減っているかというと、冷凍方法など輸送技術の進歩で、船便でも品質が損なわれることなく運べるようになったためだ。 需要形態にも特徴がある。旅客は気候や世界情勢などで需要が増減するが、貨物需要は安定していることが多い。日本、北米、中国などでたとえれば、アメリカに自動車生産ラインがあり、日本でパーツを、さらにそのパーツの部品を中国で生産していれば、航空貨物便はそれらを運ぶベルトコンベアーの役割を果たす。どこも在庫を多く持つことはしないので、航空貨物便が滞ると全体の流れに対する影響は大きい。いわば航空会社にとって貨物は、定期券で利用しているような需要になる。 旅客便の貨物需要は路線によっても大きく異なり、欧米や中国行きは旺盛な需要があるものの、リゾート路線などでは貨物需要は望めない。一般に欧米路線や中国便には、豪華なビジネスクラスが多い。それは出張需要に応えるためであるが、欧米への長距離便では、燃料もたくさん積まねばならず、旺盛な貨物需要にも応えたいので、エコノミークラスを多めにして定員を増やすことはできない。いっぽう、貨物需要の望めないリゾート路線では、旅客数を多くする必要がある。 旅客数の激減で経営が厳しいLCCが、貨物を増やして収入を補うことができるかというと、そうもいかない。大手の航空会社系列のLCCであれは、大手だけでは運びきれない貨物をLCCに分担させるということも可能であろう。しかし、多くのLCCが利用している機材はエアバスのA320やボーイング737といったナローボディ機(客室通路が1列の機体)で、貨物室が小さく、貨物輸送には適さない。A320には小さなコンテナ搭載も可能だが、737はバラ積みだけなので、貨物といえるような大きなものは積むことはできない』、「多くのLCCが利用している機材は・・・ナローボディ機・・・で、貨物室が小さく、貨物輸送には適さない」、なかなか上手くはいかないようだ。
・『かつての機体は有事も予測していた?  「旅客機は貨物も多く運べなければ経済性で優位に立てない」という考え方は、1970年代からあった。アメリカ製が独占していた旅客機市場にヨーロッパ製のエアバスが参入する際には、エアバスの機体は意図的に客室床面を機体中央よりやや上にずらし、貨物スペースを大きく確保した。客室スペースを少し犠牲にして貨物スペースを捻出したのである。 いっぽう、昔のボーイングには、今日のような事態を予測していたかのような機体もあった。747ジャンボ機にC型という機体があった。Convertible(コンバーチブル)の頭文字で、旅客型にも貨物型にも転用できる機体だった。窓があり旅客型であるが、貨物機として活用する場合、機首部分がぱっくり開き、長大貨物の搬出入が可能なほか、側面に貨物ドアも持っていた。アメリカのチャーター会社やイラク、イスラエルなどの航空会社が購入した。アメリカのチャーター会社は米軍輸送にあたることが多く、兵員を輸送することもあるが、物資輸送にも使われたのである。 新型コロナウイルス感染症の拡大が収束しても、しばらくの間は旅客の低迷が続くだろう。貨物の輸送も考慮しながらどうやって経営の舵取りを行うか、各社の経営陣にとって頭の痛い日々が続きそうだ』、我慢がどこまで続くか、経営の正念場のようだ。

次に、7月26日付けYahooニュースがマネーポストWEBを転載した「JAL・ANAにコロナ再編の波も 1社で十分なら3万人雇用は…」を紹介しよう。
・『コロナで航空業界は大打撃を受けた。2020年1~3月期は、JAL(日本航空)、ANAホールディングス(以下、ANA)ともに赤字に転落。両社の5月の旅客数(国内・国際線)は前年同月比で約94.7%減と壊滅的だ。【表】この1年の国内・国際線利用者数の推移(2019.5 806万人→2020.5 43万人 94.7%減) 国内線は政府と観光業界がゴリ押しする「Go Toキャンペーン」を頼みの綱とするが、“第2波”が迫るなか、世論の猛反対を受け、東京は対象外となり効果は限定的だろう。『経済界』編集局長の関慎夫氏が語る。 「テレワークなど新しい生活様式の普及で、人の移動が以前の状態に戻るとは考えにくい。市場規模縮小は避けられず、JALとANAの経営統合さえ机上の空論ではなくなる。もともと、人口3.2億人の米国が大手3社に集約されていることを考えれば、“1億人あまりの日本に大手は1社で十分”という議論はあったが、いよいよ現実味を帯びてくるのではないか」 ANAの社長、会長を歴任した大橋洋治氏(現相談役)はコロナの影響が拡大する最中に、「こんな小さな国で大手が2社も飛んでいる。1社で十分ですよね」と言及している(ダイヤモンド・オンライン、3月26日付)。 両社の従業員数(連結)はそれぞれ3万人を超える。「大手は1社でいい」となれば、“1社分=3万人の雇用”がどうなるのか。すでに両社は2021年度の新卒採用を中断・中止するなど、雇用への影響は表面化している。 「さらにANAは国内のLCC各社(ピーチ・アビエーション、スカイマーク、エア・ドゥ、ソラシドエア)を子会社か関連会社にしている。ANAの体力が削がれている状況ではLCCの統合や売却の可能性も排除できない」(関氏) 両社は「健全な競争環境を維持することで、運賃やサービス面などでお客さまに満足いただけるようになると考えています」(JAL広報部)、「他社との関係というよりも、自立的な経営を基本に(中略)市場で生き残り、事業を成長軌道に戻すことが重要」(ANA広報部)と説明する。 ただ、パイロットやCAなど、かつて“憧れの的”だった仕事に就く人たちの描ける未来図が、一変したことは確かだ』、「JALとANAの経営統合」については、初めて聞いただけで、まだ具体的な話ではなうようだが、現在の苦境にどれだけ耐えられるか、今後の注目点だ。

第三に、8月18日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「「JAL123」騒動が映す月日の流れと揺らぐ働く意義」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00087/?P=1
・『不思議なものでかれこれ20年近く、現場の声に耳を傾けたり、社会問題に関するコラムを書き続けたりしていると、時代の空気の変化を敏感に感じとることができる。 そんな私が思うのは、今、私たちは「働き方」「働かせ方」の大きな転換期にいるということ(これは誰もが感じていることでしょう)。そして、この変化は、今、私たちが考えている以上に大きなプラスと、想像もしていなかった果てしないマイナスをもたらすってこと。いかなる変化もプラス面は分かりやすく、マイナス面は分かりづらい。その正体は、具体的な出来事が起きて初めて分かるものだ』、その通りなのかも知れない。
・『「取り返しがつかない事態」を予見する難しさ  少々、例えが悪いかもしれないけれど、戦後70年のときに行った戦争経験者たちのインタビューで、「気がついたら戦争になっていた」と多くの人たちが語っていたことを、最近思い出すことが多い。あるいは、産業革命の最中、工場から立ち上る黒い煙を見た科学者のスヴァンテ・アレニウスは、「この煙が私たちの生活に及ぼす悪影響に多くの人が気づいたときは、手遅れになる」と地球温暖化を憂いたことを思い浮かべる。 つまり、それらと同じような“変化”がこの先に待ち受けているのではないか。妙な楽観主義はやめ、今から一つでも多く、予想されるリスクへの事前の対処を考える必要があるのではないか。などと、考えてしまうのだ。 「おい! 何、大げさなこと言ってんだ!」と、叱られてしまうかもしれないけど、理屈じゃない。ただただそう感じるのだ。よほど私の“勘ピューター”が劣化していない限り、取り返しのつかない事態が近い未来に起きる気がして仕方がないのである。 と、しょっぱなから、えらくグダグダした書きっぷりになってしまったが、実はそのマイナス面の輪郭の一部が少しだけ見えたので、今回、あれこれ考えてみようと思った次第である。 テーマは……、「仕事への向き合い方」「危機対応」「会社であることの意義」……、ふむ、なんだろう。 とにもかくにも、先週8月12日のテレビや新聞の報道を見ていて、おぼろげに見えた輪郭と、深まった憂いを、「書いておかなきゃ!」という衝動にえらく駆られている。皆さまも、ぜひ、一緒に考えてくださいませ。 ご存じの方も多いかもしれないけど、8月6日、民間航空機の現在位置をリアルタイム表示するサービス、「Flightrader24」に表示されたある画像がTwitterに投稿された。 「NRT tokyo →N/A」と書かれた画像に映っていたのは、尾翼にツルのマークが描かれたボーイング777の機体で、物議をかもしたのがその「便名」だった。 「JL123」(JAL0123)。そう。昭和世代なら絶対に忘れることができない御巣鷹の尾根に墜落し、520人の命が奪われた航空業界最悪の事故。その事故機の「JAL123」)の便名が付けられた飛行機が、リアルタイムで飛んでいたのだ。 この画像は瞬く間に拡散され、「これは一体何だ?」「123便は永久欠番でしょ?」「操作ミスか?」と話題になり、一万回以上リツイートされた。コメントの中には、「以前にも123便を見たことがある」というのも含まれていて、「幽霊では?」と書き込まれるほどだった。 で、その後の報道で、飛行機が整備場などに向かうときに、実際のフライトと間違わないように任意の便名を付けることがあり、「JAL123」も“たまたま付けられた”ことが分かった』、「JAL123」騒動については、初耳だ。
・『便名は単なる「数字」ではない  「整備作業上の理由で任意の便名を設定する必要があったため、0123という数字を使用した。今後は便名設定時のルールを作成するなど、再発防止を図ってまいります。お騒がせすることとなり、大変申し訳ありません」(JAL広報部)、ということだったらしい。 これを受けて、再びSNSには、 「ってことは、事故を知らない人が増えてるってことでしょ?」「この投稿で123便のこと知ったって人もいるくらいだから」「知ってもらえてよかったね」 などという投稿が相次ぎ、思わぬ形で“事故から35年”という歳月の長さを痛感させられることになった。 中には「実際に運行してる飛行機と間違っちゃいけないなら、永久欠番の123をつけることは、ある意味安全なのでは?」という意見もあったが、航空業界で働いた経験を持つ一人として、コメントさせていただくと、便名は単なる数字ではない。 例えば、ANAの「NH001」便は、ANAが長距離国際線として最初期に就航したワシントンDC線の初便に付けられた便名で、私は今でもその「数字」を忘れたことはない。ANAがいまだに「NH」という航空会社コードを使っているのも、ANAの前身が「日本ヘリコプター輸送」であることに由来している。 私がANAに入社した当時、1週間伊豆山で新人研修があったのだが、「NH」の意味を死ぬほど教官にたたき込まれ、「ANA」という会社を作ってきた先人たちの歴史を教え込まれた。 当時、私はANAという会社に前身があったことも知らず、NHというコードに「何でANAなのにNH?」という疑問を抱くこともない、ノーテンキな新人だった。なので、教官たちから耳にタコができるほど、美土路昌一氏(初代社長)や岡崎嘉平太氏(第2代社長)たちの「民間の航空会社が国際線の空を飛ぶ夢にかけた思い」を聞き、ANAがいかに厳しい状況に追い込まれても、経営陣たちが社員を大切にしてきたことにえらく感動した。 と同時に、NH001便が就航するまでの苦労や、就航した後の機内サービスがいかに大変だったかを、ワシントンDCに飛ぶ度に先輩たちから繰り返し聞き、徐々に「ANAのCA」としての自覚が芽生えていったように記憶している。 であるからして、たかが数字されど数字。「JAL123」という便名が“たまたま”付けられていたという事実に、得体の知れない怖さを感じてしまったのだ。 実際、JAL123便の事故から35年もの歳月が過ぎ、事故の後にJALに入社した社員は全社員の96.5%を占める。事故後に生まれた社員も35%に達し、JALでは事故の教訓や空の安全の重要性を、社員にどう伝えていくかが課題となっているという。 JALの社員でなくとも、1985年、8月12日18時56分の瞬間を経験していると、あのとき「自分が〇〇にいた」という記憶と結びついているので記憶の箱から決して消えることはない。35年という歳月も、「もう、35年なのか」と時間の早さに驚くほどだ』、「ノーテンキな新人だった」、河合氏にもそんな時代があったのかと微笑んでしまった。「事故の後にJALに入社した社員は全社員の96.5%を占める。事故後に生まれた社員も35%に達し、JALでは事故の教訓や空の安全の重要性を、社員にどう伝えていくかが課題となっている」、やはり「35年という歳月」は事故を風化させるようだ。
・『安全とは何か、どこで育まれるのか  だが、35年といえば、生まれた子供が結婚し、子供を持ち、次世代を残すほどの長い時間だ。 長い。とてつもなく長い。 35年前の経験の教訓を、どう伝えていくのか? は、本当に難しいことだと思う。 そもそも「安全」とは何か? それを理解するには、前提として「なぜ、何のために、自分がここにいるのか?」という、仕事への信念=ミッションの獲得が必要不可欠である。 そして、その信念は、実際の現場でしか育まれない。 先輩たちと接し、言葉を交わし、訓練を繰り返し、年月をかけて仕事を共にすることで、自分の内部におのずと育まれる。 経験者から紡がれる言葉には絶対にまねできない「熱量」があり、その熱は同じ空間でフェイスtoフェイスのコミュニケーションでしか伝わらないものだ。 生きた言葉には、その言葉以上の意味がある。生きた言葉を受け取った人の心を動かすパワーがある。そして、その生きた言葉を繰り返し聞くことで、自分の中に“仕事への確信”が生まれるのだ。 私事で申し訳ないけど、私は御巣鷹の事故の3年後にANAに入社したが、たくさんの先輩たちから、123便のクルーが最後の最後まで、乗客の命を守ろうと必死だったと聞かされた。今振り返ると、おそらく先輩たちは「自分たちと同じように空を飛ぶ人」たちの信念を信じていたのだと思う。 そして、実際に数年前に公開された、JAL123便のボイスレコーダーには、先輩たちが信じていたことが残されていた。 機長(墜落32分前)「まずい、何か爆発したぞ」 機長(墜落6分前)「あたま(機首)下げろ、がんばれ、がんばれ」 副操縦士「コントロールがいっぱいです」 公開されたコックピットで格闘する高濱雅己機長(当時49歳)と佐々木祐副操縦士(当時39歳)の声からは、キャプテンたちが最後の最後まであきらめず、最後の一瞬までお客さんの命を守るために踏ん張っていたことが分かるものだった。 コックピットクルー、客室乗務員の最大の任務は「お客様の大切な命を守る保安要員」だ。 私はそのことを新人教育で教官から言われ続けた。だが、その教えを理解するまでにはかなりの時間がかかった』、「コックピットクルー、客室乗務員の最大の任務は「お客様の大切な命を守る保安要員」だ」、初めて知った。
・『「ミッションを自分と一体化させる」ことの意味  フライトの度に先輩から言われ、FE(航空機関士)さんからたくさんのマニュアルの入った大きなパイロットケースを持たされ、「重たいだろ? これが僕たちが人命を預かっているという仕事の重さだ」と教えられ、整備さんからは、「小さなことでも声に出して確認しながら整備しなきゃダメなんだ」と聞かされ、そして、あるとき自分が“失敗”し、「どんなにいいサービスをしても、保安要員であることを忘れたら、飛んでいる意味はない!」と、こっぴどく怒鳴られ、やっと、本当にやっと、「なぜ、何のために、自分がここにいるのか?」という仕事への信念=ミッションが、皮膚の下まで入り込んだ。 おかげでいまだに、緊急時の衝撃防止姿勢や脱出用のスライドを滑り降りるときの確認事項が即座に言えるし、CAを辞めた後の仕事でも、常に「なぜ、何のために、自分がここにいるのか?」を考えるようになった。 “ミッション”を自分と一体化させないと、必ずぶれる。そこに例外はない。 想定外の危機に遭遇しても、骨の髄までミッションが染み込んでいれば、「自分のなすべきことは何か? 自分にできることはどういうことか?」と、自らの正義に従い、危機に対峙できる。 自分がやるべきことに徹することで、最高の選択が可能になる。たとえそれが万事を解決せずとも納得できる行動が取れる。 一方、ミッションが忘れられてしまうと、効率性だけが重視され、自分の存在意義を自ら壊し、本来やるべきことがないがしろにされてしまうのだ。 ミッションはすべての仕事、すべての業種にあり、おそらく誰もが、私がそうだったように、先輩たちと仕事をする中で学び、「自分ごと化」してきたのではないか。JALなどの航空業界だけではなく、いかなる業種においても、「なぜ、何のために、自分がここにいるのか?」という信念が熟成されなければ、不幸な事故は起こるし、自分自身の職務満足感が満たされることもない。 それは「現場の力」が失われていくことでもある。 そういった先輩と後輩が、上司と部下が関わる機会が、今後ますますなくなってしまうのではないか? その転換期に今私たちはいるのではないか? そう、思えてならない。 既に「働き方」「働かせ方」の羅針盤は、「効率化」の方向に加速し、「クオリティー・タイム=質の高い時間」が重視され、「クオンティティー・タイム=量を伴う時間」は淘汰されていく可能性が高まっている。 コストパフォーマンスを最適化することは、「仕事・家庭・健康」という幸せの3つのボールを回し続けるためには必要だろう。 しかし、生産性や効率化とは一見無縁な無駄話や無駄な関わりでしか、育まれないものがある。 現場に必要な知識のかなりの部分は体系化するのが難しく、暗黙知のままにとどまり、人々の中に体現され、日常の業務や仕事のなかに現れ、引き継がれていくものだ。 極論を言えば、「職務満足感」という言葉さえ通じない時代がきてしまうかもしれないという危機感を抱いているのである。 最後に。以下はこれまで何回も、他のコラムでも書いているのだが、とても大切なことなので今年も書きます。 JAL 123便のボイスレコーダーが公開された当時、高濱機長のお嬢さんである、洋子さんはJALで働く客室乗務員だった。 ご自身もご遺族という立場なのに、墜落したジャンボ機の機長の娘であることから、事故当初から想像を絶する苦悩の日々が続いたそうだ。 「519人を殺しておいて、のうのうと生きているな」――。バッシングを容赦なく浴びせられたという。 そんな世間のまなざしに変化が起きたのは、ボイスレコーダーが公開されてからだった。 キャプテンたちの必死な、最後の最後まであきらめず、最後の一瞬までお客さんの命を守るために踏ん張っていた“声”を聞いたご遺族から、「本当に最後までがんばってくれたんだね。ありがとう」と言われたそうだ。 「ご遺族からの言葉を頂いたときには、本当に胸からこみ上げるものがありました。涙が出る思いでした。父は残された私たち家族を、ボイスレコーダーの音声という形で守ってくれたと感じました。私にとっては8月12日は、また安全を守っていかなければと再認識する、そういう一日かなと思います。父が残してくれたボイスレコーダーを聞き、新たにそう自分に言い聞かせています」(ボイスレコーダー公開時にメディアに洋子さんが語った内容より)』、「ミッションはすべての仕事、すべての業種にあり、おそらく誰もが、私がそうだったように、先輩たちと仕事をする中で学び、「自分ごと化」してきたのではないか」、航空会社で「安全」が確固とした「ミッション」であるとしても、他の業種では「ミッション」は時代により変化する可変的なもののなのではないだろうか。ただ、「現場に必要な知識のかなりの部分は体系化するのが難しく、暗黙知のままにとどまり、人々の中に体現され、日常の業務や仕事のなかに現れ、引き継がれていくものだ」、というのは他の業種にも共通するように思う。「JAL123」騒動をネタにここまで深く考察するとは、さすが河合氏の面目躍如だ。
タグ:貨物専用便は重くて小さいものと軽くて大きいものをうまく組み合わせることで、重さ、容積をバランスさせる 旅客便は貨物も運ぶことで成り立っていたので、旅客がいないからといって簡単に運休にできない路線も多いのだ 旅客がいなければもっと運べる 貨物機は旅客機の4倍の容積があり、圧倒的な輸送力があるように思える 機体性能を目一杯使って飛んでいる 航空会社 (その3)(乗客ゼロの旅客機が担う「知られざる重要任務」 平時でも、航空貨物の半分は旅客機が運ぶ、JAL・ANAにコロナ再編の波も 1社で十分なら3万人雇用は…、「JAL123」騒動が映す月日の流れと揺らぐ働く意義) 東洋経済オンライン 谷川 一巳 「乗客ゼロの旅客機が担う「知られざる重要任務」 平時でも、航空貨物の半分は旅客機が運ぶ」 世界の航空貨物のうち、約半分が貨物専用便で運ばれ、残り半分は旅客便の床下で運ばれている ミッションはすべての仕事、すべての業種にあり、おそらく誰もが、私がそうだったように、先輩たちと仕事をする中で学び、「自分ごと化」してきたのではないか 現場に必要な知識のかなりの部分は体系化するのが難しく、暗黙知のままにとどまり、人々の中に体現され、日常の業務や仕事のなかに現れ、引き継がれていくものだ 「ミッションを自分と一体化させる」ことの意味 コックピットクルー、客室乗務員の最大の任務は「お客様の大切な命を守る保安要員」だ 安全とは何か、どこで育まれるのか 事故の後にJALに入社した社員は全社員の96.5%を占める。事故後に生まれた社員も35%に達し、JALでは事故の教訓や空の安全の重要性を、社員にどう伝えていくかが課題となっている ノーテンキな新人だった 私がANAに入社した当時 便名は単なる「数字」ではない 「JAL123」騒動 「「JAL123」騒動が映す月日の流れと揺らぐ働く意義」 河合 薫 日経ビジネスオンライン JALとANAの経営統合さえ机上の空論ではなくなる 「JAL・ANAにコロナ再編の波も 1社で十分なら3万人雇用は…」 マネーポストWEB yahooニュース かつての機体は有事も予測していた? 、貨物室が小さく、貨物輸送には適さない ナローボディ機 多くのLCCが利用している機材は 船で1カ月かかるところを2~3日で運ぶ。しかし、運賃は船便の10倍くらいとなる 航空貨物の中身は?
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