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パンデミック(経済社会的視点)(その6)(アフターコロナはバブルになる可能性が大きい 適応的市場仮説でコロナ後の市場を考えてみた、安倍首相のコロナ対応、日米欧6カ国で「最低」 国際世論調査、経済支援策に不満大きく、科学的根拠が明示されない日本の感染症対策の咎 【対談】西浦博・京都大学大学院教授×森田朗・NFI代表理事(前編)) [国内政治]

パンデミック(経済社会的視点)については、8月11日に取上げた。今日は、(その6)(アフターコロナはバブルになる可能性が大きい 適応的市場仮説でコロナ後の市場を考えてみた、安倍首相のコロナ対応、日米欧6カ国で「最低」 国際世論調査、経済支援策に不満大きく、科学的根拠が明示されない日本の感染症対策の咎 【対談】西浦博・京都大学大学院教授×森田朗・NFI代表理事(前編))である。

先ずは、8月8日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「アフターコロナはバブルになる可能性が大きい 適応的市場仮説でコロナ後の市場を考えてみた」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/368090
・『今回は「コロナ後のマーケット」を考えるうえで、ある興味深い仮説を紹介することから始めよう。 それは「適応的市場仮説」である。経済学者のアンドリュー・W・ローが提唱している理論的枠組みで、市場の振る舞いや人間の行動を、環境への適応の観点から説明しようとするものだ』、「適応的市場仮説」とは興味深そうだ。
・『「適応的市場仮説」では人間をどう考える?  ローが最初に論文を発表したのは2004年だが、筆者は割合早い時点からこの理論に注目していた。 個人的な話で恐縮だが、2007年に出版した一般向けの株式投資の解説本(『新しい株式投資論』、PHP新書)では、この説を好意的に紹介している。 筆者の不勉強もあって、その後の研究の進展に気づかなかったが、このほど「Adaptive Markets 適応的市場仮説」(望月衛訳、東洋経済新報社)というタイトルで、この理論と周辺の研究を包括的に紹介した一般向けの書籍の翻訳が出版された。 本文が600ページ以上に及ぶ大著だが、投資理論に興味のある方にとっては、注釈、引用文献まで含めて、舐めるように精読しても損のない本だ。筆者は、7月下旬の4連休に、どこにも「Go To」せずに読みふけった。過去15年分くらいのこの分野の読書で得た諸々の知識が整理された気分になった。 適応的市場仮説は、人間を合理的な計算装置ではなく「生物学的存在」として理解する。人間は、進化の結果としてゆっくり変化してきた生物的特徴(例えば、急に恐怖を感じた時に冷静な計算や論理的思考が止まる)の影響と、環境からのフィードバックを受けて思考を変化させる「思考のスピード」で変化する行動パターンの影響と、二つの影響を受けながら、意思決定と行動を変化させる。後者は、過去にどのような経験があったか、直近の経験がどのようなものであったか、といった事実が辿った時間的な経路に大きく依存する。 「コロナ」が大きな影響を与えている今日のマーケットと、その先行きを考える上で「適応的市場仮説」が幾つかヒントを与えてくれそうだ。 今年の3月にかけて内外の株価が急落した「コロナショック」は、株価の下げの大きさと何よりもそのスピード、そして、株価の戻りのスピードが「意外」であった。 伝統的な金融論の意味で合理的に解釈しようとすると、例えば、コロナが経済に与えると予想されるマイナスのインパクトが当初非常に大きくて、その後に幾らか小さく修正された、というような市場参加者の「期待」(予想の平均)の変化が対応しなければならない。だが、この間、中国を除き先進国を中心として、経済成長率見通しはほとんどがマイナス幅拡大の方向に変化していた。 アメリカでいうと、2020年のGDP成長率が3、4月時点でマイナス3%くらいと予想されていたのに対して、今はマイナス5%台の数字を予想するエコノミストが多い。日本も欧州諸国も、この間の実体経済に対する見通しの変化は「悪化」だ』、こうした市場の一見すると不可解な動きをどう説明するのだろう。
・『「エルズバーグのパラドックス」とは?  しかし、株価は大きく戻った。これに対して「実体経済と株価の危険な乖離だ」と警戒する論調もある。株価が戻る理由には、FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする先進国の中央銀行の金融緩和と財政政策の後押しも小さくないと思われるのだが、これに加えて、当初は「(経済にとって)どのくらい怖いか得体の知れないコロナ」から、現在では「厄介な感染症だが(相対的には)正体が見えてきたコロナ」に人々の認識が変化したことの影響があるだろう。 これは、どちらかというと人間の生物的な進化の過程で組み込まれたバイアスだと思われるが、人は同じオッズのはずの賭けでも中身の詳細が分からない賭けを嫌う傾向がある。 前掲書に「エルズバーグのパラドックス」(p75)と呼ばれる現象の説明がある。人間は「赤玉50個と白玉50個」の壺から取り出す玉の赤白に賭ける方が、「中身は赤玉か白玉のどちらかだ」と言われた壺から取り出す玉の赤白に賭けるよりも「リスク回避度が小さい」傾向があるのだ。どちらの賭けも赤白五分五分で、赤白どちらに賭けてもいいにもかかわらずだ。 仮に、コロナが主として「未知の病」であると思われている時と、「かなり分かった病」だと思われている時とで、他の条件を一定として、投資家のリスクプレミアムが前者で7%、後者で5%となるとすれば、リスクフリー金利をゼロとするなら、前者の株価は後者の株価よりも約28.6%安くなる計算だ。 やみくもに逆張りするのはお勧めできないが、「得体が知れない」ことの株価への影響は過大になりがちであることを知っておいて損はない』、「「得体が知れない」ことの株価への影響は過大になりがち」、素人の常識でも理解しやすい。
・『「密」と「非接触」を巡る進化論  人間は、「社会的動物」と呼ばれることがあるように、人同士が集まろうとする傾向がある。また、人同士の距離が近い状態、多くの人がいっしょに集まる状態などを好む人が多い。 「ウィズコロナ」の状況にある現在だと、「密です!」と叱られるような状況が多くの人に好まれてきたし、幾つかのビジネスにあっては、「密」を意図的に演出して効果を得ていた。実際、一部の精神科医や心理学者からは、コロナが去ったら、人々は「密」な関係を回復する必要があるとの指摘がある。 興味深いのは、この「密」愛好がどの程度普遍的であるかだ。今回のコロナで「3密回避」や「ソーシャルディスタンシング」の必要性が繰り返し強調され、テレワークが広まるような状況に対応するうちに、他人と「密」であるよりも、「非接触」的に距離を保つほうが快適であると感じるようになった人が徐々に増えている。 感じ方や性格が変化するほど時間が経っていないことを思うと、「非接触」愛好型が増えたというよりは、隠れた「非接触」愛好者が自らの真の好みを、コロナをきっかけに発見したと考えるのが実態に近いかも知れない。 満員電車の不快感はほぼ普遍的かも知れないが、大人数の社内会議が苦痛なサラリーマン、レストランや居酒屋で間隔をあけて座ると気が楽な客、プロ野球やサッカーの試合を応援なしで観る方が実は快適なスポーツファン、などが、コロナによってソーシャルディスタンシングが要求される期間が長引くほどに、徐々に増えてくるのではないだろうか。 これは、感染症への警戒心から来るだけの問題ではなさそうだ。進化論を素朴に考えると、「密」の愛好者の方が多く遺伝子を残して長期的に優勢になりそうにも思うが、「非接触」の愛好者の方が経済的に豊かだったり、社会に上手く適応できたりすると、こちらの方が増える可能性もある。 環境が人間に与える影響を考えると、特定の環境がどのくらいの期間続くかが重要に思えるが、社会生活やビジネスのあり方の無視できない大きさの部分がコロナによって変化するのではないだろうか。いさかか雑だが、金融商品の売れ方などの経験を当てはめると、株高(安)でも円安(高)でも、2年間同一の傾向が続くと投資家のセンチメントが相当に変化する。 「ウィズコロナ生活」の継続期間に注目したい。 いつの時点なのか筆者にはまだ分からないが、状況が「ウィズコロナ」から「アフターコロナ」に変化する時が来るはずだ。「ウィズコロナ」の経済とマーケットは、大まかには、コロナによる活動制約と需要縮小がもたらす実物経済の「不景気」と、これを金融システムに波及させないための金融・財政の緩和政策の引っ張り合いだと要約できる。政策論としては、後者は目標インフレ率に達するまで十分に強いものである必要があるし、いきなり中止したり、逆回転させたりするべきではない。 さて、こうした状況で、業種や会社、個人によって差を伴いながらも、コロナの影響が後退して、経済が「アフターコロナ」に移行すると何が起こるだろうか。 思うに、バブルが起こる可能性が相当に大きいのではないだろうか。政策面での「緩和」は急に止められないだろう。ただでさえ、金融政策では中央銀行に引き締めが遅れるバイアスがあると言われてきた(日本は極端な例外だが、今回、日銀は「そうはしない」と繰り返し言っている)。 付け加えると、サブプライム問題の際に「個人」に溜まった債務は、コロナ前には「企業」(特にアメリカ企業)で膨らみ、コロナを機に、債務を膨らませる主体が「政府」に移った。常識的に考えて、次に債務を肩代わりしてくれる移転先はないので、「アフターコロナ」では、いよいよ何十年かぶりにインフレが問題になるかも知れない』、「他人と「密」であるよりも、「非接触」的に距離を保つほうが快適であると感じるようになった人が徐々に増えている・・・隠れた「非接触」愛好者が自らの真の好みを、コロナをきっかけに発見したと考えるのが実態に近いかも知れない」、「コロナを機に、債務を膨らませる主体が「政府」に移った。常識的に考えて、次に債務を肩代わりしてくれる移転先はないので、「アフターコロナ」では、いよいよ何十年かぶりにインフレが問題になるかも知れない」、大胆で面白い見方だ。
・『リスクプレミアムの過剰な縮小が起こる可能性  インフレはさておき、「アフターコロナ」に移行する段階で、投資家の認識や行動はどう変化するだろうか。端的に言って、リスクプレミアムの過剰な縮小が起こるのではないか。アメリカでいうと、2000年代初頭のネットバブルの崩壊、2007年から2008年にかけてのサブプライム問題からリーマンショックに至ったプロセス、さらに今回のコロナショックとった「ショック」(≒株価の大幅下落)が、何れも主に中央銀行の政策によって救われた。こうした経験が続くと、投資家は、「株価は下がっても必ず戻る」という経験則に対する忠誠心と同時に依頼心を高め、「長期に投資していれば絶対に大丈夫だ」との思想を強化するのではないか。 この認識変化の帰結は、リスクプレミアムの縮小だ。例えば、先程のリスクプレミアムの拡大と同様の計算をすると、例えばリスクプレミアムが5%から3%に低下するなら、株価に対しては66.7%の上昇効果があっておかしくない。 仮にそうなると、長期投資の成功に「強い信念」を持って臨んだ投資家は、そのさらに将来、リスクプレミアムが平均回帰する際に、かなりの深傷を負うことになるかも知れない。念のために申し上げておくが、最後の状況を、今の時点では警戒する必要は「全く」ない。 なお、適応的市場仮説は人間を「生物」と見るのだが、人間は、立場により、個体差によって「一様に同じ存在」ではない。生活、ビジネス、金融市場など様々な場で、有利な集団と不利な集団、さらには食う側と食われる側に分かれるのが現実だ。 適応的市場仮説には、人間を集団に分けた適応・不適応などの分析が進むことを期待したい。念のために付け加えるが、経済的人間の適切な区分は、今や「資本家」と「労働者」ではない。資本家も時には搾取されるカモでありうることは、すでにリーマンショック時に、分かる人には分かっていたことだと思う。この続きは、また別の機会に(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「長期投資の成功に「強い信念」を持って臨んだ投資家は、そのさらに将来、リスクプレミアムが平均回帰する際に、かなりの深傷を負うことになるかも知れない」、その通りなのかも知れない。

次に、8月13日付け東京新聞「安倍首相のコロナ対応、日米欧6カ国で「最低」 国際世論調査、経済支援策に不満大きく」を紹介しよう。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/48602
・『新型コロナウイルスに関する日米欧6カ国の国際世論調査で、自国のリーダーがコロナ危機へ適切に対応できているかを聞いたところ、日本は新型コロナ感染症の死者数が米欧に比べ少ないにもかかわらず、安倍晋三首相の国民からの評価が6カ国で最も低かった。一方で経済的な不安を感じている人の割合は、日本が最も高かった。 調査は、米独のPR戦略会社「ケクストCNC」が7月10~15日に、日本、米国、英国、ドイツ、スウェーデン、フランスで1000人ずつ、計6000人を対象に行った。 自国リーダーのコロナ危機対応の質問では、「うまく対応できている」と答えた人の割合から「対応できていない」と答えた人の割合を引いて数値化した。安倍首相はマイナス34ポイントだった。次に低かったのはトランプ米大統領でマイナス21ポイント。6カ国で唯一、肯定的な評価を受けたドイツのメルケル首相はプラス42ポイントだった。 政府の経済支援策への評価では「企業が必要とするビジネス支援を提供できている」と回答した人の割合が、日本の23%に対し、他の5カ国は38~57%。リーダーだけでなく政府全体に対しても、日本は評価が最も厳しかった。 日本は、経済的不安に関する質問で「失業するのではないかと懸念している」との回答が38%、「勤務している会社が倒産しないか心配」との回答が36%に上り、ともに6カ国の中で最も高かった。 日本の調査結果について、ケクストCNCのヨッヘン・レゲヴィー日本最高責任者は「政府のビジネス支援策に対する非常に強い不満が、安倍首相への否定的な評価につながった一因ではないか」と分析している』、「メルケル首相はプラス42ポイント」とはさすがだ。「安倍首相」は健康問題を名目に退陣、後継はさきほど菅官房長官に決まった。これほど、厳しい評価が出ていることを報じた「東京新聞」はさすがだ。他紙は忖度して握り潰したのだろうか。

第三に、8月19日付けJBPress「科学的根拠が明示されない日本の感染症対策の咎 【対談】西浦博・京都大学大学院教授×森田朗・NFI代表理事(前編)」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61863
・『少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。 その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。 今回は、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーを務めた西浦博・京都大学大学院医学研究科教授とNFI代表理事の森田朗氏によるスペシャル対談の前編。専門家会議の反省点や新型コロナウイルスの感染拡大が全国的に進む現状、あるべき感染症対策の形について、率直に意見を交わした(過去11回分はこちら)』、面白い組合せの対談で、期待できそうだ。
・『「今の日本の状況をとても懸念している」  森田朗氏(以下、森田):はじめに、新型コロナウイルス感染の現状について、どのように見ておられるのかということから聞かせていただけますか。 西浦博氏(以下、西浦):ここ最近、感染者が全国的に増えているのは皆さんご存知の通りです。とくに都市部で顕著で、「実効再生産数」、つまり1人の患者が何人の二次感染者を発生させているかという数で言うと、全国は1.6から1.7ですが、愛知県で2を超えたり、沖縄県で3を超えている状態です(1を超えれば感染が拡大し、1を下回れば収束する)。今の状況をとても懸念しています。 第一波の時は、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が会見を通して、分析結果や必要となる行動変容などを直接国民に語りかけていました。こういった対策は国民生活や社会経済活動にも大きな影響が及びます。会見を通して直接語りかけるというスタイルは、専門家としての責任を果たそうと決めて始めたことです。 ただ、国民の目から見ると、専門家がすべての政策を決めていると感じられるようになってしまいました。実際のところ、そんなことはないんです。僕たちに政策決定権なんか何もないし、提言してもそうならなかったことなんてゴマンとあります。ただ、そう映ってしまったのは事実です。 西浦:本来、リスク評価とリスク管理は別のものですが、リスク評価者であるべき僕たちがリスク管理にある程度、立ち入ってしまった状態だったんですね。いったん専門家会議が終わるところで、専門家会議の座長、副座長であった脇田(隆字)先生と尾身(茂)先生が皆さんの前で、「前のめりになりました。ごめんなさい」というお話をしたのも、リスク管理に立ち入ったという反省があったからです。 そうした経緯があって、リスク評価や現状分析を専門家が直接皆さんに届ける機会はとても少なくなっています。現状、リスク評価自体は厚労省のアドバイザリーボードという専門家組織に残っていて、リスク管理は厚労省外の内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策分科会(尾身茂分科会長)でやっています。第一波の教訓もあるので、リスク評価と管理の切り分けをしたいという強い意識が専門家の中にあります。 今後のことも考えると、リスク管理や政策の決断に関しては政治家の人にやっていただかないといけないということを、専門家は相当意識しています。結果的に、流行の現状について専門家組織が自由にしゃべらないという状況になっています』、9月12日現在の「実効再生産数」は、全国0.94、東京都1.38、大阪府1.28、沖縄県0.34とかなり低下している。「リスク管理や政策の決断に関しては政治家の人にやっていただかないといけない」、「専門家」が「政治家」の弾除けになっている感すらある。
・『実効再生産数はずっと1を超えていた  西浦:実際のところ、緊急事態宣言を解除してから実効再生産数はずっと1を超えていたんです。でも、日本はかなり速いペースで規制が緩和されました。それ自体はもちろん政策判断なので仕方ありませんが、海外では、実効再生産数がたとえば1を超えている時間が一定期間続くとそこでブレーキを踏んで逆戻りをするという対応をとっています。 それに対して、日本では実効再生産数を使った判断が採用されてきませんでした。実効再生産数を活用した指標については私もリスク評価の場でたびたび説明してきましたが、8割接触削減の考えのベースになったSIRモデル(感染症の数理モデル)や実効再生産数がさも悪かのように政治家に扱われた時期が宣言解除後にありました。残念ながら、実効再生産数が積極的に採用されずに規制緩和が進み、ここまで感染者が増えてきたのが実情です。 実効再生産数が、たとえば東京で1.4ですという時には、リスクの高い場所での全接触のうち30~40%の接触を減らすと、実効再生産数が1を割るということにつながります。でも、そうやって言及することは、対策、つまりリスク管理の方の話になってしまうので、専門家がどこまで入り込んでいいのかという葛藤をずっと抱えながらやってきました。 現状では、公には実行再生産数をリアルタイムで説明できていません。だから今、実効再生産数を計算できるダッシュボードの近日公開を目指しています。市町村等が自分のデータを使って最新の実効再生産数が分かるサイトです。 森田:リスク評価とリスク管理といった場合、たとえば、感染者が増えているから実効再生産数がこういう数字になるというのは、これは評価の話ですね。その次に、たとえば接触を30%減らすと実効再生産数が1以下になるという予測も評価から出てくる判断です。具体的にどうやって接触を30%減らすかというのはオペレーションだから、管理の話になるという理解でいいでしょうか。また、どこを抑えると30%減になるかということは、評価サイドの研究者が提供できるのでしょうか。 西浦:一部の地方自治体が持っているデータで、どのような属性の人の間で二次感染が起こっているかはある程度、分析ができています。たとえば、職業別で誰が誰に二次感染を起こすという相対的頻度を推定すると、どこを止めるとどれくらい効果があるというのが分かってきています。ただ、自治体の懸念もあって、その情報はなかなか公表することができていません。 また、俗に「夜の街」と呼ばれているところについても、自治体で思い切って検査をして、集団発生の時点で封じ込める試みをしたところがありました。それに対して、ホストクラブなどがとても協力的になるという1つの変化も起きました。協力してもらう代わりに、地下に潜らず、部分営業を安心して続けてもらうためということでやるわけです。 ただ、その後に休業要請をしてばっさりと閉めてしまうと、協力をしていた人の気持ちを反故にするような面もあります。夜間の接待飲食業での伝播を何十%減らせば伝播の多くが止まるって言ったとしても、それを実行するのはなかなか難しい状況にあります』、「緊急事態宣言を解除してから実効再生産数はずっと1を超えていたんです」、実際には8月11日以降、1を下回り、8月17日には0.81まで低下したが、その後上昇に転じ、前述のように9月12日には0.94になった。
・『公衆衛生より営業と行動の自由が重視される日本  森田:海外では、はっきりと禁止して十分な補償もなしというのが一般的だと思います。強制力をもって閉めていますね。行政学をやっていた立場から言うと、公衆衛生では、まだ感染していない人たちを守るために、強制隔離によって感染者との接触を断つというのが一番重要です。でも日本の対応はソフトというか、公衆衛生よりも営業、行動の自由が重視されているように思います。 西浦:おっしゃる通りです。感染症法の基本的な考え方はそこなんです。感染症の流行を制御することによって、感染していない人の感染や死亡を防ぎ、人口全体の利益を最大限にするために一定の行動制限というものを認めるということです。たとえば、感染症法の44条などを利用すれば、自宅待機や就業制限というところまで、ある程度行動を縛って二次感染を防げます。ただ、とくに要請ベースでこの流行に立ち向かっている日本では、それぞれの細部にほころびやずれが出てしまいます。それが、今の状況につながっているんだと思います。 森田:私が非常に危惧するのは、このままさらに感染が広がって、かなり強い手段を使わざるを得ない状況になる可能性です。その時には、戦略としては一番まずい「兵力の逐次投入」のようなことになり、国全体として疲弊してしまうのではないかと懸念しています。 しかしそれ以前に、強い手段に踏み切るためには法改正が必要で、その議論が進まないのを歯がゆく思っています。刀を用意をした上で伝家の宝刀にしておくのも1つの方法だと思うんですね。抜くか抜かないかは最後に決めればいい。抜かなきゃならなくなってから刀を作るのでは間に合いません』、「強い手段に踏み切るためには法改正が必要で、その議論が進まないのを歯がゆく思っています」、同感だ。
・『「三密」が最も有用なのは感染者が少ない時  西浦:これまでも何度も、政策決定者の立場から感染症対策と社会経済活動というのを両立するということが明確に説明されているんですけれど、一方でその根拠に明示的なものがないことに気付いておくことは極めて重要です。アカデミックに最適解を追求していない、いわば勘に頼っている状態に近いかもしれません。これは、次の波までに何らかの形で解決しておかないといけないことだと思います。 今の制御の考え方は、医療体制の逼迫を避けるという論理で進められていますが、実を言うと、感染を減らすために休業要請が必要なら、もっと小さい山の時点で接触を減らす方が休業期間も短くなるし、流行のピークも小さくなるんです。この点については、増える前の段階から厚生労働省が発表した病床の改善版シナリオで明示的に議論をしてきました。今はもう感染者が増えてしまっているので、病院も、それ以上に保健所も相当厳しい状態です。 本格的にクラスター対策をやっていた時には、数が少ないから感染伝播の連鎖が消えるという確率的な現象を、三密を防ぎながら狙っていました。「感染者数が少ない時に三密対策が特に有用」という考え方は、実は皆さんにあまり知られていませんが、背景の理論に確率的な絶滅というものがあるんです。 三密については、患者が少ない時も増えた時でも三密を避ける効果が同じだと思ってはいけないところに落とし穴があります。なのに、感染者が増えてもモノトーン調に三密の重要性が発表されています。他方、専門家メンバーは三密回避が依然として重要だけれども、話の内容が真新しくないために上手に伝達されないことに悩んでいる状態です。 いずれにしても、今の戦略自体が感染対策と経済を両立させる最適解かというと、少し怪しいです。仮に科学的に正しくないとするならば、なぜこういうやり方をとっているのかという点は、もうちょっと政策策定側が明確にしておかないといけないように思います』、「「三密」が最も有用なのは感染者が少ない時」であるにも拘らず、いまだに「三密」が切り札であるかのように強調するのは、おかしいようだ。
・『無傷では実現できない感染対策と経済の両立  森田:経済と感染症対策の「両立」という言い方がされますが、日本の場合にはゼロリスクというのがあるべき状態になっているように思います。経済もまったく傷がつかず、感染者も減ることを目指すのが両立というふうに言ってるように思えます。 しかし、実際にはそんなことは起こらない。実際に重要なことは、トータルなダメージを最小化することです。でも、ダメージの話はなかなか言えないので、感染が広がるから移動しないようにと言いながら、他方でGo Toトラベルというキャンペーンを同時にやるという、そういう形で出てくるのかなと。 西浦:観光に関しては、僕も北海道と京都府という観光業と深く関係している地域にお世話になっているのでとても強く感じます。両方とも大打撃を受けている場所ですから。だから「感染しないように行ってくれ」と言うしかないのもよく分かります。 でも、感染者が増えれば増えるほど、今は関係者の皆さんの良心で社会資本として成り立っている病院経営が、いつ終わりを迎えるのかなというあたりがとても不安に思います。 感染者が増えると病院の負荷は入院管理の面でも経営面でも大きくなっていきます。感染者を受け入れている公立病院だけじゃなくて、他のところも含めて受け入れざるを得なくなりますし、受け入れると決めてないところで感染者が増えるのも大変難しいところだと思っています。それを防ぐには本来的には感染者を減らすのが最良の策なのですが・・・。 第二波で国や地方公共団体の要請で受け入れたところも、これ以上、支援もなしに負担ばかり要求されると、そもそも収入が減っているわけですから、第三波以降で協力してもらえるのか、長期的な視点で考えないと現場の信頼は得にくいかもしれません。(後編に続く)』、「病院経営」へのテコ入れは確かに必要なようだ。「後編」の紹介は省略するが、興味ある方は下記リンクを参照されたい。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61863
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