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スガノミクス(アベノミクス)(その1)(すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」、菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔、「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安)  [国内政治]

スガノミクス(アベノミクス)については、これまでと入れ替え、番号も1に戻した。前回は9月23日に取上げた。今日は、(その1)(すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」、菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔、「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安)である。

先ずは、9月21日付けエコノミストOnline「すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200915/se1/00m/020/044000c
・『「次の首相は誰か。アベノミクスは継続するのか。リスクシナリオは何か」「安倍から菅へ」  安倍晋三首相の電撃辞任表明から一夜明けた8月29日。土曜日にもかかわらず、金融機関のリサーチ部門スタッフは内外の投資家からの問い合わせ対応に追われた。 首相の辞任表明が伝わった8月28日午後、日経平均株価は前日終値から一時600円急落。最後は326円安の2万2882円で取引を終えた。 ドル・円も前日の1ドル=106円台半ばから105円台前半へと1円以上、ドル安・円高に動いた。市場では「次期政権は、金融緩和・積極財政を掲げるアベノミクスを転換するのでは」との懸念からリスクオフ(回避)の動きが強まった。 しかし、それは一瞬だった。日曜日だった8月30日、菅義偉(よしひで)官房長官の出馬観測が急浮上。市場が再開した31日には、主流派閥の間で菅氏支持が急速に広まり、日経平均は2万3139円と、安倍首相の辞任表明前日の水準に戻した。円高の勢いもなくなった。 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「菅政権でアベノミクスは踏襲されるという安心感が市場に広まった」と分析する。ただし、通信セクター株は例外だった。「携帯料金の値下げを強く主張する菅氏の総裁・首相就任をマーケットは織り込みに行っている」(永浜氏)』、「市場の安心感」は大丈夫なのだろうか。
・『「忖度」は強まる  「陰の総理」「市議からのたたき上げ」──。さまざまな異名を持つ菅氏だが、ここでは「人事」と「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」の二つについて見ていく。 「人事によって、大臣の考えや目指す方針が組織の内外にメッセージとして伝わる」。菅氏は常々、こう話しているという。 安倍1強が続いたのは、霞が関官僚の人事権を官邸が掌握したからだ。それは、縦割り意識や省益保護の排除には役立つが、「忖度(そんたく)」の温床になる。元々、人事によって官僚を動かすことに長(た)けていた菅氏は2014年5月、自身が主導した内閣人事局の創設により、その権力を揺るぎないものとした。 「権力の維持、拡大のために官僚の人事権を150%行使してきた『安倍・菅政権』から、その総元締のような菅さんによる『菅・菅政権』になるのだから、その傾向はますます強まる」と、安倍政権で文部科学次官を務めた前川喜平氏は強く懸念する。 「菅さんは人事においてアメとムチの使い方が上手な人だ。また、あらゆる情報を把握している。したがって、官邸の顔色をうかがう忖度はより強まる可能性が高い」 かつて副大臣、大臣を務めた総務省の幹部人事では、現在でも菅氏の意向が反映される。総務省の放送担当の課長や国交省の運輸畑の局長が、菅氏の意向で更迭されたともささやかれる。菅氏が強い関心を示すNHK改革や観光行政で「対応が悪い」と評価されたのが原因とみられる。 その出発点は、05~06年の副総務相当時にあった。当時総務相だった竹中平蔵氏は「菅さんには、いろいろな形で助けてもらった」と振り返る。菅氏は竹中氏をそれ以前から注目していた。 02年、竹中金融相が見せた大手行の不良債権の抜本処理である。それは、01年に発足した小泉純一郎政権の大きな課題だった。柳沢伯夫氏を金融相に起用したが、一向に進まない。小泉首相は02年9月、柳沢氏を更迭して、竹中氏を金融相に抜擢。同氏は翌10月に「金融再生プログラム(竹中プラン)」を作成し、3年で処理にメドをつけた。 「竹中プラン」は、菅氏が師と仰ぐ梶山静六元官房長官が温めていた計画をほうふつとさせた。98年、橋本龍太郎首相の退陣後、党総裁選挙に梶山氏は派閥を離脱して、小渕恵三氏と争い苦杯をなめた。00年6月、無念のうちに亡くなった梶山氏。「もし、梶山首相の下で、自分が不良債権処理の任に当たっていたら……」。菅氏は、竹中氏が手際よく不良債権を処理していく姿に、そんな思いを重ねたに違いない。 同時に、大きな改革には強いリーダーとその意向に従って官僚をコントロールできる力量が不可欠だと、菅氏は痛感したはずだ。まさに第2次安倍政権における菅氏の人事力に通じるものだ。だが、それは、公文書改ざんという前代未聞の不祥事の温床にもなった』、「官邸の顔色をうかがう忖度はより強まる可能性が高い」、やれやれだ。「副総務相当時にあった。当時総務相だった竹中平蔵氏は「菅さんには、いろいろな形で助けてもらった」と振り返る」、竹中氏の影響力が強まりそうなのにも気になる。
・『臨時国会冒頭解散  菅氏は『読売新聞』の読者から寄せられた相談に答える「人生案内」を愛読。市井の声、不満を聞き、その解消に政治力を発揮する。自身もビジネス誌『プレジデント』で人生相談の回答役を務める。 そんな菅氏のもう一つの顔が「冷徹なポピュリスト」だ。携帯電話料金の値下げやふるさと納税は、その典型だろう。大衆の不満を吸い上げ、メリットを享受できるように仕向ける。 このうち携帯電話料金については、菅氏が18年8月、官房長官として「4割程度下げる余地がある」と発言。総務省で関連法を成立させた。携帯電話市場は実質的に3社独占状態で、しかも端末と通信料金が一体化しており、消費者に不透明なサービス体系だった。ここに菅氏はメスを入れた。 その結果、端末代金と通信料金の分離を義務化し、料金の引き下げにつながった。一方で、通信会社の収益を直撃した。携帯料金の値下げという国民の誰もが喜びそうな話題を取り上げ、巨額の利益を上げる独占通信会社を悪役に仕立て、官僚を使い政治力で突破していく。菅スタイルそのものだ。 菅氏が取り組むべき課題は、短期的にはコロナ対策だ。安倍首相の辞任表明会見時、冬までに1日20万件の検査体制と、ワクチンを21年前半までに全国民に提供できる数量を確保する目標を掲げたが、実現可能性は未知数だ。 今後の懸念は、企業の人員削減や倒産増に伴う失業率の上昇である。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「行政のデジタル化が遅れていることで、迅速な現金給付が妨げられただけでなく、コロナで生活に困った本当に支援が必要な人の把握もできなかった」と指摘する。 菅氏を、安倍氏の任期だった来年9月までの「つなぎ役」と見る向きもあるが、政権長期化を指摘する声もある。にわかに浮上したのが、9月16日に予定されている臨時国会冒頭の衆院解散・総選挙である。「立憲民主党と国民民主党が合流の準備に追われる中、総選挙に踏み切れば勝てる。菅政権が信任されたことにもなる」。永田町では、菅氏が長期政権をもくろむシナリオも語られ始めた』、「臨時国会冒頭解散」の可能性は現在では薄らいだようだ。

次に、9月30日付け東洋経済オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の岩村 充氏による「菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔 」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/378136
・『安倍晋三の長期政権が終わり、調整役だった菅義偉が首相となった。のっけから安倍政治の継承を掲げるという地味な路線での新政権スタートである。だが、この路線、長続きするだろうか。私は難しいとみる。 2012年末に始まった安倍政権の7年8カ月は、2016年央までの前期とそれ以降の後期に分けられる。 前期は異次元緩和の時代である。デフレの元凶とリフレ派から名指しされていた日本銀行、そこを制圧する占領軍司令官のような役柄で送り込まれた黒田東彦は、自ら異次元緩和と名付けた大規模な量的金融緩和策を打ち上げることによって安倍政権誕生に祝砲を放った。 この異次元緩和、人々の気分を変えたという意味では成功だったといえる。2008年のリーマンショック以来1万円前後で低迷していた日経平均株価は、安倍政権スタートとともに上昇を始め、2015年には2万円台を回復した。安倍の経済政策、通称「アベノミクス」は、しょせんは金融緩和頼みと皮肉られながらも、ともかく緒戦で数字を出すことには成功したのである』、なるほど。
・『日銀の弾切れも、法人税引き下げが株価にプラス  構図が変わったのは、日銀の量的緩和の限界が明らかになり始めた2016年である。この年初に黒田が繰り出した唐突ともいえるマイナス金利政策が裏目に出た同年半ば以降、黒田日銀のアピール度はめっきり落ちた。しかし、ここからが肝心の点である。頼みだった日銀に「全弾撃ち尽くし」の感が出たにもかかわらず、株式市況の強気は崩れなかったのである。安倍の辞意表明直前日の8月27日の日経平均株価は2万3208円と政権スタート時の2倍を超えている。アベノミクスは異次元緩和から乳離れできていたことになる。 なぜそれができたのか。私は、人々が異次元緩和という派手な演出に眼を奪われている隙に、税収の軸足を企業から家計へと移動させていたことにあると思っている。 安倍政権発足前の2012年度には約40%だった日本の法人税率は、2016年度までに大きく引き下げられ、今や30%の大台をも割り込んで現在に至っている。もっとも、これは世界の潮流でもあった。世界がグローバリゼーションの波に押されるようになった2000年代以降、西側主要国の法人税率は足並みをそろえて低下し、法人税率20%台が自由主義経済圏の世界標準になった感すらある。 安倍政権による法人税率引き下げは、このような「底辺への競争」とも言われる世界的な法人税引き下げ競争にわがニッポンを遅ればせながらも参戦させるものだったのだ。 しかし、法人税引き下げ競争に参戦するには代替財源が必要である。安倍にとってのそれが消費税引き上げだった。安倍は、2014年と2019年の2度にわたって消費税を引き上げ、政権発足前に5%だった消費税率を2倍の10%にまで持ってきている』、「消費税引き上げ」の表向きの大義名分は、「法人税引き下げ」ではないとはいえ、このようにみると、「法人税引き下げ」のためだったと考えることも可能だ。
・『「労働課税強化」「海外投資家優遇」が本質  安倍政権がそれまでの自民党政権と違うのは、財政再建のためなどという後ろ向きの言い訳に頼らず、「日本を、取り戻す」というスローガンが作り出す高揚感と黒田の異次元緩和が作り出した景気回復感を前面に押し出すことによって、普段なら政権の命取りになりかねない消費税引き上げを、大した抵抗もなく成功させたところにある。 だが、ここで大きな図式から全体を眺めてみよう。法人税とは、要するに売り上げから財サービスの仕入れと人件費を控除した残差である「利益」を対象とする税金である。これに対し、消費税とは、売り上げから財サービスの仕入れだけを控除した残差である「付加価値」を対象とする税金である。 すなわち、消費税を増税し法人税を減税するという安倍の政策は、企業の賃金支払いへの課税を重くする一方で、企業利益の最終的な帰属先である株主への課税を軽減することを意味するわけだ。安倍政権における税制改革の正体は、労働課税強化を財源にした資本課税軽減なのである。 そこに気づけば、アベノミクスが株式市場とりわけ海外投資家に大好評だった理由もわかってくる。安倍政治あるいはアベノミクスの本質は、低所得層や中間層の犠牲において富裕層を優遇する政策であるばかりでなく、日本国民に負担を押し付けて海外投資家に媚を売るという、時代劇に登場する「悪代官」さながらの裏の顔を持つ政策でもあったのだ。 もっとも、私は、こうした安倍政治の裏の顔を、単純な正義感から批判しているわけではない。増税すれば簡単に国境を越えて出て行ってしまう資本を優遇し、国境を越えるほどの余裕がない人々に国家を支える負担を求めるという政策セットは、グローバリズムが作り出した企業優遇競争に直面した国家たちにおける一種の標準セオリーにほかならなかったからだ。 もし当時の日本が全世界的な資本優遇競争に参加を拒否し続けたとすれば、バブル崩壊後のデフレの底がさらに深くなった可能性だって否定できなかったろう。日本経済を空洞化から救うという文脈では、安倍政治の悪代官性もただの庶民いじめではなかった面もあるわけだ。 だが、それは菅が直面するだろうジレンマを予期させるものでもある。安倍が「一強」とも言える状況を作りえたのは、前の民主党政権や白川方明総裁の下での日銀をデフレの元凶に仕立てる劇場型ともいえる政治手法にあった。しかし、その手法は、攻撃しやすい「敵」がいなくなれば通用しなくなる。たたき上げ苦労人としての「信頼できそうな人柄」が売りの菅には、劇場型演出によって消費税再引き上げや法人税再引き下げを押し通すだけの腕力はなさそうに思える』、「安倍政治あるいはアベノミクスの本質は、低所得層や中間層の犠牲において富裕層を優遇する政策であるばかりでなく、日本国民に負担を押し付けて海外投資家に媚を売るという、時代劇に登場する「悪代官」さながらの裏の顔を持つ政策でもあった」、鋭く本質を指摘しているのはさすがだ。「安倍が「一強」とも言える状況を作りえたのは、前の民主党政権や白川方明総裁の下での日銀をデフレの元凶に仕立てる劇場型ともいえる政治手法にあった。しかし、その手法は、攻撃しやすい「敵」がいなくなれば通用しなくなる」、確かにその通りだ。
・『新型コロナ対策の思い切った見直しを  では菅は何をすればよいか。 短期的には、新型ウイルス対策について筋の通った決断をすることである。本年3月から4月にかけての感染第1波を抑え込まないままで経済再開に踏み込んだアメリカの混乱はさておき、日本や欧州主要国ではウイルスの新規感染状況はまさに感染第2波の状況になった。ところが、この第2波におけるウイルスによる死亡状況を見ると、感染者数増とは裏腹に、ほとんどその深刻化を観察できない。(新規検査陽性者数の図、死者数の図はリンク先参照) こうした状況で、いつまで「感染即隔離」というウイルス対策を取り続けるのか、そこに政治としての答を求められる日は眼の前に来ているように思う。すなわち「指定感染症」の解除といった明確な方針の表明である。 今回の感染症の性質の変化に人々が気づき始めた今、ただ感染拡大防止をと叫んでいるばかりでは、あの「オオカミ少年」の物語のように、政治も専門家たちも人々の信頼を失うだろう。9月連休における活発な旅行や人出を見ても、その可能性は高まっているのではないだろうか。 だが、より本質的かつ長期的視点から菅に必要なのは、財政をどうするかの議論を始めることである。今回のウイルス禍に対して行われた財政出動は、全国民への一律10万円給付を含め、従来の景気対策的な文脈からのものではない。景気対策としての財政出動であれば、その見返りは将来の景気回復から得られるはずである。しかし、そうした将来への「投資」という側面を持たない被害者救済的な財政出動の落とし前をつけるためには、従来の課税理論を超えた税体系全体の抜本的見直しが必要なはずである。答えはあるのだろうか』、どうすればいいのだろう。
・『新たな「拡張付加価値税」の設計を  私は、答えはあると思っている。それは、法人税や個人所得税のような価値分配に対する課税を廃止あるいは大幅に縮小する一方、今の消費税つまり付加価値税の仕組みを拡張し発展させて「拡張付加価値税」ともいうべき新税を創設し、それを軸に税体系の全体を再設計することだ。 拡張付加価値税という考え方そのものについては拙著『ポストコロナの資本主義』(日本経済新聞出版、2020年8月)を参照してほしいが、狙いはファイナンス取引を取り込むことと、勤労者世帯の生計費の控除を可能にすることである。 むろんのこと、危機に備える方法は拡張付加価値税に限られるわけではない。ただ、今回を教訓とするのなら、さまざまな巨大リスクに耐えられる税制の新レジームを設計することは、次への備えの政治的コアであるはずだ。そうした税制の再デザインにより、フラットで全体整合性のある税体系を準備しなければ、次の危機に備える財政の機動性を確保することなどできるはずがない。それを避けてデジタル庁新設などという行政統廃合でお茶を濁していれば、菅内閣は単なる中継ぎ政権で終わるほかはあるまい。 安倍政治の継承という看板を掲げ続けるだけでは、菅は「悪代官」にすらなれないだろう』、「拡張付加価値税」については、本文の説明だけでは理解し難いが、理論的には面白そうだ。ただ、現実に「税体系の全体を再設計」するには、金融資産の把握など多くの困難な課題があり、派閥の談合でできた「菅内閣」にはとうてい無理だろう。

第三に、9月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院 准教授の小幡績氏による「「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安」を紹介しよう。
・『スガノミクスはアベノミクスと根本的に異なっている  第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉氏は、アベノミクスを継承すると言っているし、皆がそう思っている。それ以外に何をするのか、に注目が集まっている。 しかし、それは間違いである。「スガノミクス」はアベノミクスと根本から全く異なっている。180度違うといっても過言ではない。説明しよう。 アベノミクスが成功した理由は、アベノミクスという名前を定着させたことにある。7年8カ月を経て安倍前首相が退任しても、辞任会見直後に書いた「安倍首相辞任、アベノミクスの2つの大罪」という私の記事は異常に読まれ、スガノミクスを誰よりも早く解説した記事は見向きもされなかった。 すなわち、アベノミクスの成功はマーケティングの成功であり、「アベノミクスは成功した」と思わせることに成功したことにある。スガノミクスへの注目度は、支持率と同様に、現時点が一番高いはずだが、一般的には注目されてない。すでに、アベノミクスのような成功はおぼつかなくなっている。 これには理由がある。アベノミクスは、賛否はあるが、コンセプトがはっきりしており、経済全体に対するヴィジョンのある政策であった。経済全体に関するマクロ政策であった。そして、経済と金融市場をひっくり返すような(私からすれば、とんでもない)ものであった。日銀を使って、インフレを引き起こし、デフレ脱却をし、株高円安を進める。異次元金融緩和は異常であったが、とにもかくにも金融市場全体を変えた。 一方スガノミクスは、全体像がない。アベノミクスの全体、マクロ政策に対して、スガノミクスは局地戦、ミクロ政策である。 ひとことで言うと、スガノミクスは「器の小さい政策」なのである。 規制と戦うのは勇ましいが、あくまで部分的であり、経済の1つ1つの項目に関する話であり、局地戦である。それで世論は盛り上がるかもしれないが、経済はせいぜい一分野ごとにしか変わらない。 「縦割り打破」というもっと小さい話で、要は調整をもう少しうまくやる、という話である。全体に役立つように、部分ごとの目詰まりを解消する、ということである。立派ではあるが、ミクロであることは間違いない』、「アベノミクスの全体、マクロ政策に対して、スガノミクスは局地戦、ミクロ政策である」、言い得て妙だ。
・『器の小さい政策が目指す「規制緩和」という利益誘導策  菅氏が言うように、ダムの運用方針が所轄官庁ごとに異なっているため、全体のために利用することができなかったのは、調整不足に過ぎない。調整をうまくやるのは素晴らしいが、それはそれだけのことであり、良い例だが、経済全体が動くわけではない。 だから、世間の印象はともかく、日本経済はほとんど何も変わらない。携帯電話の通話料金が安くなったとしても、3社寡占が残っていれば、彼らはその力を何かの形で使うはずだ。そうなると、消費者のコストは間接的になり、毎月の通信料という形では見えなくなるが、どこかに見えない形で埋め込まれるだけのことだ。 3社寡占を変えない限り何も変わらない。そして、それが変わったとしても、携帯電話という業界での儲けが減るだけで、経済全体はほとんど変わらない。 規制緩和は、少しずつ部分的に進むであろう。これは、政治的には最も望ましい政策である。なぜなら、規制緩和こそが最大の利益誘導政策だからだ。規制緩和というのは理論的にも現実的にも、100%間違っている。正しい政策は、規制撤廃だ。あるいは、古い経済、産業構造のためにつくられた規制を、新しくアップデートする規制のデザイン変更である。 正しくない、あるいは新しい時代に合わない規制は緩和するのではなく、撤廃し、必要な規制を新しくつくることだ。規制というのは、社会と産業のバランスをとるためにも、産業を育成するためにも必要な場合がある。だから、規制は撤廃するか新しくデザインし直すべきで、緩和はいかなる場合にも正しくない。 ではなぜ、日本では規制緩和が政治に好まれるのか。それは昭和の業界政策だからである。規制に守られて、社会から攻撃を受けている業界に対しては、ゆっくりとしたスピードで規制緩和を進めると感謝される。「スピードを制限している」と、政治の側が主張できるからだ。 一方で規制緩和は、業界に参入したい側からも必要とされる。政治が緩和を進めてくれており、そのスピードを少しでも早くしてもらいたいから、政治に対する「お願い」は永久に続く。したがって、ゆっくり規制緩和を行うことは、政治にとって最も無難で、かつ力を維持できる政策なのだ。 すなわち、スガノミクスとは、「昭和のサプライサイダー」なのである。 IR誘致やオリンピックも、考え方は同じだ。特定産業の利益のために、産業を誘致し、イベントを興す。それで供給サイド、産業、企業を豊かにし、そこに金を消費者に落とさせることで、景気も良くするという政策である。 これは、アベノミクスと順序が逆なのである。アベノミクスは、マクロ経済全体にカネをばら撒き、消費を起こし、需要を増やし、その結果、企業収益も増える。しかし、メインターゲットであり直接働きかけるのは、経済全体、そして消費者および需要を行う企業などの需要者である。 それに対して、スガノミクスが働きかけるのは産業側であり、供給者としての企業である。彼らに利益を与え、その中で景気も良くなるということなのだ。消費者よりも企業優先、平成の消費者主導ではなく、昭和の産業主導の政策なのである』、「ゆっくり規制緩和を行うことは、政治にとって最も無難で、かつ力を維持できる政策なのだ」、なるほどその通りだ。「スガノミクスが働きかけるのは産業側であり・・・平成の消費者主導ではなく、昭和の産業主導の政策」、上手い表現だ。
・『スガノミクスが本来行うべきはアベノミクスの「幕引き」  そんな菅政権が本来行うべき政策は、産業政策ではなく、何なのか。 それはアベノミクスの「幕引き」である。 アベノミクスとは、外見はマーケティングツール、中身は、リスクとコストを先送りし、需要を先食いする政策だった。ともかく今需要を喚起し、景気を良くし、現在を謳歌する。そういう政策だった。そして、日銀が日本国債の発行残高のほぼ半分を保有し、なおかつ、新規に国が借金として発行する国債の大半を市場に通じ、間接的にとはいえ、実質的には買い支え続けるという状態を放置したまま、突然、トップが交替した政策であった。 米国中央銀行との違いは、リーマンショック後、バーナンキFRB議長(当時)が大規模金融緩和を開始し、量的緩和を行ったが、その縮小も自ら開始し、退任前に出口へ向かい始め、幕引きの道筋をつけて、交替した点である。バーナンキが出口に向かうことを宣言し、株価は暴落し、市場は非難したが、それに動じず、きちんと幕引きをお膳立てして、バーナンキは出て行ったのである。日銀は出口のないまま取り残された。菅政権は、この幕引きをする必要がある』、「アベノミクスとは・・・中身は、リスクとコストを先送りし、需要を先食いする政策だった。ともかく今需要を喚起し、景気を良くし、現在を謳歌する」、「日銀は出口のないまま取り残された。菅政権は、この幕引きをする必要がある」、同感である。
・『スガノミクスのベスト&ワーストシナリオ  アベノミクスは、地球儀を俯瞰する外交にしても、デフレ脱却、異次元緩和にしても、とにかく大風呂敷を広げた。後継のスガノミクスは、そのストーリーを閉じる必要がある。 そのシナリオは、ベストシナリオですら、日本国債バブルと株式市場バブルの崩壊を甘受し、しかしその経済全体への悪影響を最小限に留める、というものだ。これらのバブルと無関係に誠実に経済活動を営んできた企業や消費者を守り、バブル崩壊を軟着陸にとどめ、最小限の不況で平常に戻すことであろう。 ワーストシナリオは、政府の財政破綻もしくは政府の財政破綻回避のために日銀を動員し、中央銀行を破綻させ、経済を大混乱に陥れることであろう。中央銀行破綻は、政府財政破綻よりも経済を破壊する力はとてつもなく大きいから、最悪、政府が財政破綻するとしても、日本銀行を守る必要がある。それは今日は議論する余裕がないが、ともかく菅政権の役割は、アベノミクスバブルを静かに崩壊させることである。 ところが今のところ、それに対するヴィジョンや大きな絵は見当たらない。スガノミクスは、リスクを抱え続け、それを膨らませ続ける政策になる恐れが強い。なぜなら、バブルを軟着陸させずにバブル大崩壊を防ぐには、バブルをさらに膨らませて維持するしか、方法はないからだ。 アベノミクスで膨らんだバブルは、菅政権でさらに膨らみ、その次の政権で必然的により深刻なバブル崩壊が起きる可能性が高い。そうしたリスクを抱えながら、我々はスガノミクスを見守ることになろう。 私のこの分析が間違いであり、「スガノミクスは実は大きな絵を隠し持っていた」という結末を期待している』、「アベノミクスで膨らんだバブルは、菅政権でさらに膨らみ、その次の政権で必然的により深刻なバブル崩壊が起きる可能性が高い」、恐ろしいが、身構えておく必要があるだろう。 
タグ:東洋経済オンライン エコノミストOnline (アベノミクス) スガノミクスが本来行うべきはアベノミクスの「幕引き」 スガノミクスはアベノミクスと根本的に異なっている スガノミクスが働きかけるのは産業側であり・・・平成の消費者主導ではなく、昭和の産業主導の政策 スガノミクス(アベノミクス)(その1)(すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」、菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔、「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安) 「安倍が「一強」とも言える状況を作りえたのは、前の民主党政権や白川方明総裁の下での日銀をデフレの元凶に仕立てる劇場型ともいえる政治手法にあった。しかし、その手法は、攻撃しやすい「敵」がいなくなれば通用しなくなる 新型コロナ対策の思い切った見直しを 岩村 充 「拡張付加価値税」については、本文の説明だけでは理解し難いが、理論的には面白そうだ 日銀の弾切れも、法人税引き下げが株価にプラス 日銀は出口のないまま取り残された。菅政権は、この幕引きをする必要がある 器の小さい政策が目指す「規制緩和」という利益誘導策 小幡績 臨時国会冒頭解散 アベノミクスの全体、マクロ政策に対して、スガノミクスは局地戦、ミクロ政策である ダイヤモンド・オンライン 安倍政治あるいはアベノミクスの本質は、低所得層や中間層の犠牲において富裕層を優遇する政策であるばかりでなく、日本国民に負担を押し付けて海外投資家に媚を売るという、時代劇に登場する「悪代官」さながらの裏の顔を持つ政策でもあった スガノミクス ただ、現実に「税体系の全体を再設計」するには、金融資産の把握など多くの困難な課題があり、派閥の談合でできた「菅内閣」にはとうてい無理だろう 副総務相当時にあった。当時総務相だった竹中平蔵氏は「菅さんには、いろいろな形で助けてもらった」と振り返る ゆっくり規制緩和を行うことは、政治にとって最も無難で、かつ力を維持できる政策なのだ 「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安 「忖度」は強まる アベノミクスとは・・・中身は、リスクとコストを先送りし、需要を先食いする政策だった。ともかく今需要を喚起し、景気を良くし、現在を謳歌する 「菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔 」 官邸の顔色をうかがう忖度はより強まる可能性が高い 「労働課税強化」「海外投資家優遇」が本質 (その1)(すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」、菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔、「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安) 新たな「拡張付加価値税」の設計を 「アベノミクス」は、しょせんは金融緩和頼みと皮肉られながらも、ともかく緒戦で数字を出すことには成功した スガノミクスのベスト&ワーストシナリオ アベノミクスで膨らんだバブルは、菅政権でさらに膨らみ、その次の政権で必然的により深刻なバブル崩壊が起きる可能性が高い
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