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中国経済(その6)(「三峡ダム」だけではなかった……84%が「危険」という中国のダム問題について=立沢賢一、中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機 武漢弘芯 最先端設備を導入も資金ショート、中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か それとも縮小するのか) [世界情勢]

中国経済については、7月9日に取上げた。今日は、(その6)(「三峡ダム」だけではなかった……84%が「危険」という中国のダム問題について=立沢賢一、中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機 武漢弘芯 最先端設備を導入も資金ショート、中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か それとも縮小するのか)である。

先ずは、9月6日付けエコノミストOnlineが掲載した元HSBC証券社長で投資コンサルタントの立沢賢一氏による「「三峡ダム」だけではなかった……84%が「危険」という中国のダム問題について=立沢賢一」を紹介しよう』。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200902/se1/00m/020/002000d
・『中国国内の政治闘争の産物、三峡ダム  中国には多くの水利専門家が執筆した治水と水害防止の専門著書が数々あり、治水および水害防止の理論と技術水準を絶え間なく向上させていました。 中国は国土が広いので、各地の地形や気候の相違が大きく、水害の形式も複雑です。 中でも、湖北省の武漢や四川省の重慶等は流域洪水の影響が大きく、その被害を食い止める方策が必要でした。 三峡ダムは、1919年に孫文が三峡ダム建設プロジェクトを提唱した事から始まりました。 しかしながら、共産党と国民党の政治的争いや、中国共産党により1949年に中華人民共和国が建国された後も大躍進政策や文化大革命など様々な事件が障害となり、ダムの着工まで漕ぎ着ける事ができませんでした。 長江は全長6300kmという大スケールの川です。 従いまして、長江の開発は「持続可能な開発」への取り組みとして、水力発電、水資源の確保、水上交通、養殖漁業などを目的に、中国の発展の為にはなくてはならないプロジェクトと考えられていました。 ようやく1993年に着工した山峡(注:正しくは「三」)ダムは、16年の月日をかけて2009年に完成しました。 ところが、時の李鵬首相が環境保護を無視し、フィージビリティースタディー(事業の実現可能性を事前に調査すること)も行わず、汚職のための手抜き工事を行い、構造上も問題のあるダムを建設してしまったのです。 巨大な三峡ダムの貯水量は393億立方メートルで、日本の琵琶湖(水量:275億立方メートル)の1.43倍に相当します。 また、三峡ダムは2,250万kWの発電が可能な世界最大の水力発電ダムでもあり、中国全体の7.5%に相当する膨大な電力エネルギーを供給しています。 そして、ダムを挟んで上海まで続く長江流域は4億人の生活の場であり、工業や農業を始めとする中国の産業生産の約40%を担う“流域圏”です。 今回問題になっている三峡ダム決壊リスクに関して、6月からの異常な降水量で7月19日午後8時には水位が164・18メートルに達し、運用開始以来の最高水位163・11メートルを超えたのです。その後更に水位は増し、8月21日午前までに165.6メートルに到達。危険水位を約20メートルも上回り、設計最高水位である175メートルに迫りつつあります。 それは増水期の制限水位とされている145mを、20m以上オーバーしたことになります』、一時は「三峡ダム」の「水位」が新聞を賑わせていたが、最近は報道がないところをみると、最悪期は脱したようだ。「孫文が」「提唱した」とは初めて知った。
・『三峡ダムは「問題のデパート」 (1) 犠牲者補償問題(三峡ダムの貯水池は全長660㎞にも及ぶため、ダム湖に水没する地域は広大なものであり、多数の村落や都市が水没することとなったのですが、これら「三峡移民」の多くは充分な補償も受けられないまま貧困層へと転落しており社会問題となっています)。 (2) 地質問題(地質が脆い場所に作られたダムに貯水を行うと、ダム湖斜面や周辺の地盤への水の浸透と強大な水圧により、地滑りやがけ崩れが発生する可能性が高まります。三峡ダム区地質災害防止作業指導事務室チームが調査を行った結果、5,386カ所で地滑りやがけ崩れなどの問題が発生する恐れがあることが判明しました)。 (3) 水質汚染問題(人口3,000万人を超える重慶など上流域での工業・生活排水対策が不十分で、ダムが「巨大な汚水のため池」になってしまっています)。 (4) 地震発生問題(2008年5月に発生した四川大地震はマグニチュード7.9を記録し、甚大な被害をもたらしました。震源地近くでは地表に7メートルの段差が現れ、その破壊力は阪神・淡路大震災の約30倍にも及びました。最近の中国の研究では、地震発生の原因のひとつは「三峡ダム」の巨大な水圧ではないかとの指摘があるのです。ダムの貯水池に貯めた水圧と、地面から地下に沁みこんだ水が断層に達することで、断層がズレやすくなったという分析です)。 (5) ダム決壊とそれによる洪水発生問題(2018年、人工衛星からの写真で「ダムが変形している」と指摘され、ダム決壊への不安が広がっているのが現状です。もし自然に決壊したら、安徽省、江西省、浙江省などの穀倉地帯は水没の危機に瀕し、4億人から6億人もの被災者が出るとの予測もあるほどです。河口には上海が位置しますが、その都市機能は壊滅的な被害を受けることになります。上海に限らず、流域に位置する重慶や武漢などの経済、工業地帯には日本企業も多数進出しており、コロナ禍以上にサプライチェーンが寸断されることにもなりかねないです。中国経済の40%がダメージを受け上海が復興するには2-3年掛かるという試算すら発表されています。 重慶と武漢の間の川に建設された三峡ダムは放水しないと上流の重慶が浸水し、放水すると現在の様に武漢が浸水してしまうのです。放水してもしなくてもダメというダムが三峡ダムで、ダムの専門家は少しでも早く三峡ダムを爆破して破壊すべきだと警鐘を鳴らしています。 恐らく、中国当局は人民を犠牲にしてでも世界最大の山峡(注:正しくは「三」)ダムを守ろうとするのでしょう。中国当局はそもそも洪水被害を軽減する為にダムを建設したのですが、中国の洪水の多くは人為的な理由が原因で発生しているという皮肉な結果になっています』、「三峡ダムの貯水池は全長660㎞」とはやはり巨大で、「決壊」した場合の損害は天文学的規模のようだ。
・『84%のダムが危険という驚くべき報告……  2019年6月11日に国務院で開催された政策説明会の席上で、水利部の水害・干害防御局長の田以堂は中国国内のダムに関して次のように言及しました。 「中国国内には9.8万基以上のダムが存在するが、このうちの6.6万基以上はすでに欠陥があって危険なダムであり、これ以外の1.6万基以上は現在欠陥が判明して危険なダムである。このため、早急に欠陥を取り除いて補強することが必要である。」 このデータが正しければ、欠陥があって危険なダムの総数は8.2万基(6.6万基+1.6万基)以上となり、ダム全体の84%を占めます。この欠陥があって危険なダムの中には間違いなく三峡ダムも含まれているのです。 三峡ダムが自然決壊することは今の所ないであろうという「憶測」を信じているのか、上海株式市場には水害の影響は見られないようです。 しかし、万が一、自然決壊が発生した場合、それが中国経済に与えるマイナスのインパクトは計り知れませんので、その時上海株式市場はかなり下落するのではないかと思われます』、「84%のダムが危険」とは驚かされた。「三峡ダムが自然決壊」すれば、「上海株式市場はかなり下落」どころではなく、市場自体も崩壊するだろう。
・『メコン川流域を震え上がらせている「中国ダム問題」  三峡ダムからは話が逸れますが、中国のダム問題に関してはもう一つ大きな問題があります。 それはメコン川問題です。メコン川の源流はチベット高原とされ、中国・雲南省からミャンマーとラオス国境、タイとラオス国境、カンボジア、ベトナムを流れ、南シナ海に至ります。 全長約4350キロで、源流からラオスまでの約2000キロは標高約5000メートルから数百メートルまで下る形で流れ、標高差が大きいです。また、周辺流域住民は約6000万人です。 メコン川には現在11基の中国の水力発電ダムが稼働し、さらに20基が建設中または計画中とも言われています。中国国内の欠陥ダムが全体の84%という数字から鑑み、メコン川沿いの東南アジア各国はかなり敏感になっています。 これに関しては、ポンペオ米国務長官が「中国によるダム建設が川を統治する新しいルールを作っている」と厳しく批判しています。 今後、三峡ダムを含め中国製ダムがどの様に国内外に影響を与えるのかは注視する必要があります。立沢賢一氏の略歴はリンク先参照』、「メコン川流域」諸国は、ダムの決壊よりも、水が中国側だけで利用され、水量が減ってしまうことへの懸念は強い筈だ。「ポンペオ」の「批判」は当然だが、中国の勝手な「ダム」開発を押し止める力はなさそうだ。

次に、9月7日付け東洋経済オンラインが財新 Biz&Techを転載した「中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機 武漢弘芯、最先端設備を導入も資金ショート」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/371894#:~:text=%E6%AD%A6%E6%BC%A2%E5%BC%98%E8%8A%AF%EF%BD%A4%E6%9C%80%E5%85%88%E7%AB%AF%E8%A8%AD%E5%82%99%E3%82%92%E5%B0%8E%E5%85%A5%E3%82%82%E8%B3%87%E9%87%91%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88&text=%E3%80%8C1000%E5%84%84%E5%85%83%EF%BC%88%E7%B4%841,%E3%81%8C%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82
・『「1000億元(約1兆5300億円)プロジェクト」という触れ込みで3年前に華々しくスタートした半導体工場の立ち上げが、資金ショートで頓挫の危機に瀕していることが明らかになった。湖北省武漢市の東西湖区政府が公表した同区内の経済状況に関する報告書のなかで、「武漢弘芯プロジェクトは大幅な資金不足に直面しており、いつストップしてもおかしくない」と指摘したのだ。 武漢弘芯は正式社名を武漢弘芯半導体製造(HSMC)といい、2017年11月に設立された新興半導体メーカーだ。武漢市政府は同社を地元の半導体産業育成のための重要プロジェクトと位置付け、建設工程の第1期に520億元(約7956億円)、第2期に760億元(約1兆1628億円)、合計で1280億元(約1兆9584億円)を投じると発表していた。 前述の東西湖区政府の報告書によれば、第1期工事は2018年初めに着工し、これまでに工場の主要な建屋と研究開発棟がほぼ完成した。装置メーカーに発注した300台余りの半導体製造設備も続々と工場に運び込まれ、そのなかにはオランダASML製の最先端の露光装置も含まれている』、「新興半導体メーカー」であれば、スポンサーと思われる「武漢市政府」の意向も重要だ。
・『TSMC出身の総経理が辞職か  武漢弘芯は発行済株式の90%を北京光量藍図科技という民営企業が、残り10%を東西湖区政府の国有資産監督管理局の傘下企業が保有する。前者の経営権を握るのは武漢弘芯の董事長(会長に相当)の李雪艶氏と取締役の莫森氏だが、2人は半導体業界ではまったく無名の人物。彼らの背景や資金源は謎に包まれている。 2019年7月、武漢弘芯は半導体の受託製造(ファウンドリ)で最大手の台湾積体電路製造(TSMC)で研究開発部門を率いた経験を持つ蒋尚義氏を総経理兼COO(社長兼最高執行責任者)として招聘し、業界関係者をあっと驚かせた。ところが数カ月前から、蒋氏は武漢弘芯を辞職したという噂が流れている。財新記者は蒋氏に連絡を取ろうと試みたが、コメントは得られなかった。 武漢弘芯のウェブサイトによれば、同社は2019年3月から14nm(ナノメートル)のプロセス技術の研究開発をスタートし、2020年下半期から初期段階のテスト生産を始める計画だった。と同時に、2020年から世界最先端の7nmのプロセス技術開発に着手するとしていた。 だが実態を見る限り、武漢弘芯は資金ショートの難局を打開できなければ「未完のプロジェクト」に終わりそうだ』、「TSMC出身の総経理が辞職」、後任も決まってないとなれば、少なくとも「第1期」「工事」分の「520億元(約7956億円)」は宙に浮いてしまいそうだ。どこか他のメーカーが買い叩くのだろうか。

第三に、9月28日付け東洋経済オンラインが掲載したAPI地経学ブリーフィング上席研究員の大矢伸氏による「中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か、それとも縮小するのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/377214
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。 中国の「双循環戦略」(Dual Circulation Strategy)について関心が高まっている。「双循環」とは「国内循環」と「国際循環」の2つの循環を指す。この言葉は、今年5月14日の中国共産党政治局常務委員会の会議で最初に用いられた。そこでは「中国の巨大な市場規模と国内需要の潜在力という強みを生かして、国内と国際という相互に補完する2つの循環に基づく新たな発展のパターンを確立する」ことがうたわれた。 中国は今年10月開催予定の共産党第19期中央委員会第5回全体会議で第14次五カ年計画を策定する予定だが、「双循環戦略」はその中心テーマになる可能性がある。この概念を推進しているのは、習近平主席の信頼が厚く米中貿易交渉で中国側のリーダーを務めた劉鶴副首相と言われている。 ただ、詳細が決定・発表されていないこともあり、人により受け止め方や理解が異なる。「双循環」を、従来からある内需重視政策の延長で、外部との経済交流は継続し、中国経済の改革にもつながるものと考える人々もいる。逆に、「双循環」は、外部との交流を縮小のうえで自力更生を志向し、経済改革にはつながらないと考える人々もいる。中国はどちらの道を進むのか』、新たな「双循環」の考え方は「どちら」なのだろう。
・『外部交流継続・拡大の立場  外部交流を継続・拡大するものとの立場としては、8月14日付のChina Dailyの記事が挙げられる。同記事は、改革・開放政策の下で中国は発展を遂げるが、沿海部と内陸部の格差が拡大、1990年代にすでに内需を重視したバランスある発展の重要性が認識されていた。2006年には、内需を増やし、投資、国内消費、輸出のバランスを重視することを政策決定していたとして、過去との継続性を強調。そのうえで、「外との扉を閉ざすものではない」とし、「国内市場の拡大は、国内金融市場や対内投資をより対外開放し、輸入も拡大する」と主張する。 また、中国人民大学・経済学部のLi Yiping教授も、習近平主席が今年7月21日に北京の企業関係者に行った講演で、外とのドアを閉ざす可能性を否定したと指摘。「国内市場と国際市場の双方が重要である」「国内市場を外にも開放する」「国内経済を中心に据えつつ海外経済とも統合し、世界経済の活性化にも貢献する」と主張する。 さらに、改革に関しては、South China Morning Post(SCMP)のFrank Tang氏が中国政府関係者等から取材した話として、焦点は競争促進と開放で、対内投資の障壁を低くし、地域貿易協定にも意欲的に取り組むとし、さらに、国有企業改革を含めた供給サイドの構造改革も行うとの見解を紹介している』、なるほど。
・『外部交流縮小の立場  外部交流を縮小するものとの立場に近いものとしては、Global Timesの編集者であるLi Hong氏が率直に、「双循環」は「アメリカによるいじめと覇権主義と戦うことが狙い」であり、「アメリカの保護主義と技術ブロックに対抗し、経済・技術センターを打ち立てるもの」と説明。また、「国際循環」を諦めるものではないとしつつも、「アメリカがリードするデカップルを相殺するため、アメリカ、カナダ、オーストラリアの非友好的3カ国とは距離を置き、欧州、英国、アジア、アフリカ等と緊密な経済パートナーシップを形成する」とし「一帯一路(BRI)も積極的に実施する」とする。 改革に関してはウォールストリート・ジャーナルのLingling Wei氏が、劉鶴副首相には、この動きを国内経済改革の実現に利用したい、例えば国有企業よりも民間企業への融資の配分を増やしたいという思いがある、しかしこれは、経済の国家管理を強化するという習近平主席の考えに反する可能性があり、改革は容易ではないと分析する。 1949年の建国後、中国は重工業重視の輸入代替政策をとった。1960年代にソ連との関係も悪化、以降「自力更生」の傾向を強めた。貯蓄率は20%から30%程度と所得水準の割には高く、この資金を重工業の設備投資に充てた。しかし、経済成長は限られ、1978年時点で、世界のGDPに占める中国の比率は2%を切り、貿易に至っては1%にも満たなかった。 1978年に鄧小平の改革開放が始まる。1978年から2008年までの実質経済成長率は年平均9.8%と驚異的であった。貿易も、1979年から2001年まで輸出が年平均16%増加、2002年から2008年まで年平均27%増加し、世界最大の輸出国となった。 人口爆発への対応として1970年代に採用した「一人っ子政策」の結果、人口に占める生産年齢人口の比率が増えて、いわゆる「人口ボーナス」が発生。沿海部の工場には、農村から余剰労働力が供給され、労働コストをさほど上げずに生産と輸出が拡大した。貯蓄率も上昇し、1980年代は30%超、1990年代は40%超、2010年前後には50%超という驚異的な貯蓄率を達成、これが旺盛な投資を支えるとともに、巨額の経常黒字の要因となった』、確かに「改革開放」後の高成長は目覚ましく、「人口ボーナス」により「労働コストをさほど上げずに生産と輸出が拡大」出来たのも幸運だった。
・『中国経済の課題  このように、1978年以降の中国は大きく経済発展を遂げたが、その前提条件は崩れつつある。「人口ボーナス」期は終息を迎え、労働コストは上昇、貯蓄率も減少した。米中貿易摩擦が示すように、過度に輸出に依存した経済成長を続けることも国際環境から困難となった。 中国の1人当たりGDPはまだ1万ドル。アメリカの6万ドル、日本の4万ドルとの差は大きい。高齢化が急速に進行する中で「豊かになる前に老いる」リスクに直面している。人口増加が見込めない中では生産性を高めるしかないが、生産性(全要素生産性、TFP)上昇率は1996年から2004年の6.1%から、2005年から2015年は2.5%に減少したとの推計もある。 全要素生産性の上昇のためには、技術革新に加えて、資源配分の効率改善が重要である。具体的には、将来性があり伸びる企業やセクターに資金を配分する必要があるが、自由化が遅れる中国の金融セクターは、資金配分や金利決定に経済原理以外の要素が入り込む。国有企業が、民間企業よりも生産性が低いにもかかわらず優先的な資金配分を受けているとも指摘される。 北京もこうした課題は認識している。輸出と投資に依存した経済成長の限界を意識し、前述のとおり2000年代から内需の拡大はうたわれてきた。そうした流れの中で、「双循環戦略」が掲げるものも、内需重視を今後さらに強化する、しかし外部との経済交流を断つわけではなく、市場開放を進め外資の中国投資も歓迎するという立場であろう。 ただ、「双循環戦略」を急ぐ背景には米中対立、それに伴う技術の流れの停止、アメリカ市場での中国企業の活動の制約、西側諸国のサプライチェーン見直しの動きへの「恐怖」がある。ファーウェイの子会社であるハイシリコンは半導体の設計・開発に特化し、生産は台湾のTSMCへ委託していたがアメリカの制裁でTSMCから調達できなくなった。中国の半導体製造業者であるSMICはTSMCから2世代遅れている。中国の先端技術分野での「自力更生」への決意は強固であろう』、「中国」が「高齢化が急速に進行する中で「豊かになる前に老いる」リスクに直面している」、のは確かだ。「全要素生産性」を「上昇」させようにも、「国有企業が、民間企業よりも生産性が低いにもかかわらず優先的な資金配分を受けている」のがネックのようだ。「中国の先端技術分野での「自力更生」への決意は強固であろう」、とは言っても、米中対立のなかでは、「自力更生」も簡単ではなさそうだ。
・『「完全輸入代替」「自給自足」への転化リスク  米中対立が激化する中では、「内需重視」の掛け声が、歪んでいる「消費」「投資」「輸出」のバランスの回復という次元を超えて、「完全輸入代替」「自給自足」に転化していくリスクがある。アメリカ内でも対中全面デカップル論と技術分野等に範囲を絞った部分分離(partial disengagement)論などさまざまな意見がある。中国においても、「双循環戦略」という言葉に対して、論者によりさまざまな思いが投影されている可能性がある。 「双循環戦略」は、国有企業改革や金融セクターの自由化などの中国経済自身が現在かかえる課題の解決を盛り込むことで、輸出や投資に過度に依存しない、生産性向上を通じた新たな成長モデルにつながる可能性もある枠組みである。最終的な結論がどうなるかは大いに注目される。 南シナ海、尖閣諸島、香港、新疆ウイグル自治区等で中国が見せる異なる価値観、国際ルール違反の行動に対し国際社会は警戒が必要であり、技術分野等での一定の部分分離は自由社会を守るために必要であろう。しかし、西側が国内雇用維持や重商主義的衝動に基づき中国を過剰にデカップルする動きを見せれば、中国も外との交流を絞る形での「双循環」を志向するだろう。 2018年9月、視察先の黒竜江省で習近平主席は、「保護主義の台頭が中国に自力更生の道を歩むよう迫っている」と発言した。作用は反作用を生み、ナショナリズムは相互作用を増幅する。海外との交流を断つ経済政策は、中国にとっても世界にとってもマイナスが大きい。「双循環戦略」の行方が注目される』、「双循環戦略」以前に、先ずは中国が思い上がった姿勢を変えることが先決なのではなかろうか。
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