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中国国内政治(その9)(習近平 激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した、長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判、習近平vs李克強の権力闘争が始まった) [世界情勢]

中国国内政治については、6月3日に取上げた。今日は、(その9)(習近平 激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した、長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判、習近平vs李克強の権力闘争が始まった)を紹介しよう。

先ずは、6月21日付け現代ビジネスが掲載した産経新聞台北支局長の矢板 明夫氏による「習近平、激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73453?imp=0
・『中国共産党内の序列で、トップの習近平国家主席とナンバー2の李克強首相の対立が最近、顕著になってきた。 担当分野ではない経済問題にも積極的に口を出し、実現できそうにない大きな目標を掲げることが好きな習氏と、規制緩和を通じて民間企業の力を引き出し、経済の活性化を目指す李氏。両者の間には以前からすきま風が吹いていたが、新型コロナウイルスの影響で、大きな打撃を受けた中国経済を立て直す方針をめぐり、確執は一層深刻になったようだ』、「ナンバー」1と2の対立とは興味深そうだ。
・『南北院の争い  「南院と北院の争いは最近、激しくなっている。巻き込まれた私たちは大変だ」 中国共産党の中堅幹部は電話の向こうでこのように漏らした。北京市中心部の政治の中枢、中南海地区には、南側に党中央の建物、北側に国務院(政府)の建物がある。党幹部らは、習近平総書記(国家主席)と李克強首相の経済政策をはじめとするさまざまな対立について、「南院と北院の争い」という隠語を使って表現している。 5月下旬に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、習氏と李氏の抗争の舞台となった。 22日の開幕式で李氏が読み上げた政府活動報告の中には、2020年の国内総生産(GDP)成長の数値目標がなかった。極めて異例のことだった。  共産党関係者は、習氏と李氏が激しく対立したため、調整がつかなかったことが理由だと説明した。中国の2019年の経済成長率は6.14%だが、今年は新型コロナの影響で、大きく低下することは避けられない。実務担当者の李氏らは「2%以下になる可能性もある」と想定したのに対し、習氏とその周辺は「5%以上を目指せ」としつこく要求したという。 中国の経済成長率は1991年以降、5%を下回ったことがない。2022年秋の党大会で三期目の続投を狙う習氏にとって、その直前の経済失速をどうしても避けたい事情があった。 しかし一方、高い目標を設定して達成できなかった場合に責任を押し付けられることを警戒した李氏は、習氏の意向に最後まで抵抗した。二人が主張する数値の隔たりが余りにも大きいため、結局、政府活動報告への記入そのものが見送られたという。 経済成長の目標値に関しては、数年前から二人の対立があった。経済の実態に即した目標を設定したい李氏と、少しでも高くしたい習氏の間で調整がつかず、二人の意見を同時に盛り込んで「6.0~6.5」という幅を持たせた数値目標が発表されたこともあった。 今回、その調整すらつかなかったことで「二人の対立はより高いステージに突入した」と表現する党関係者もいる』、「実務担当者の李氏らは「2%以下になる可能性もある」と想定したのに対し、習氏とその周辺は「5%以上を目指せ」としつこく要求」、この結果、「成長の数値目標がなかった。極めて異例のこと」、絶対的権力を振るう「習氏」に対し、一歩も引かないとは「李氏」も相当の覚悟の上の行動なのだろう。
・『爆弾発言「貧困層が6億人いる」  さらに、李氏が5月28日、全人代閉幕後の記者会見で「中国の平均年収は3万元(約45万円)だが、月収千元(約1万5000円)以下の人も6億人おり、地方都市で家を借りることすらできない」と発言したことも大きな波紋を呼んだ。 自国の高度経済成長を長年喧伝してきた中国人の多くにとっては、「家すら借りられない貧困層が国内に6億人もいる」ことは、初耳だったのだ。 李氏が言わなくてもよいはずの「中国の貧困の実態」を暴露した真意については、「習近平氏が推進してきた、2020年末までに全国で貧困を脱却するというキャンペーンに対する抵抗ではないか」との指摘がある。 習氏は昨年の全人代で、「2020年末までに全地域を貧困から脱却させる目標を必ず達成するよう」という号令をかけた。習氏はさらに「貧困脱却の基準」について「衣食の心配がなく、義務教育、医療、住宅が保障されていることが基準だ。これを引き下げてはならない」と述べ、この基準を勝手に引き下げるなど、背いた幹部は徹底的に取り締まるとも強調した。 しかし、経済運営の実務を担当している李氏は、中国農村部を中心に今も貧困層が多くいる実態を知っている。習氏が目指す年内の目標達成が、絶対に不可能であることもわかっている。年末に大幅な数字の改ざんをしたくない李氏は、記者会見の機会を利用して、「習近平が掲げる貧困脱却の目標は実現できない」と暗にアピールしたわけだ。 これまで長年、習氏との対立表面化を避けてきた李氏が、最近になって公然と反抗的な態度を取るようになったのは、新型コロナウイルスの対応を主導し、正しい感染情報などを隠蔽してきた習氏に対し、国際社会から批判が集まり、党内でも習氏の求心力が弱まっていることが背景にある。 しかし、この李氏の発言の数日後、6月1日発売の共産党理論誌「求是」は、習氏の寄稿を掲載し「今年は『小康社会(ややゆとりのある社会)』の全面的実現という目標はほぼ達成された」と強調している。 「小康社会」とはかつての指導者、鄧小平氏が唱えた言葉で「貧困のない社会」との意味がある。習氏はこの寄稿で、李氏の発言に対して全面的に反論した形だ』、「爆弾発言「貧困層が6億人いる」」も「李氏」のさらなる覚悟を示しているようだ。
・『「露天商経済」をめぐる混乱  習氏と李氏の攻防は、具体的な経済政策にも及んでいる。それが「露天商経済」だ。 6月初め、山東省煙台市を視察した李氏は、「露天商は重要な雇用の源であり、中国の生命力だ」と語った。 新型コロナウイルスのまん延に伴い、中国国内の多くの中小企業が倒産し、失業者が急増して、出稼ぎ労働者が集まる広州や青島など治安が悪化し始めた都市も増えている。全人代では、「露天商に対する制限を緩和し、失業者が露天商になることを応援することで、雇用創出を図るべきだ」といった意見が多くあり、李氏はそれを受け入れた形だ。 この李氏の発言はたちまち大きく宣伝され、露天商を原則禁止していた上海、西安など複数の都市が禁止措置を取り消し、屋台や路上の個人営業店が特定の時間と場所に開業することを許可した。 しかし、これまで中国当局は、街の景観維持、食の安全などを理由に、露天商を厳しく管理してきた。合法的な経営許可をもらえる露天商は少なく、無許可の露天商を取り締まる部署である「城市管理行政執法局」(城管)は各都市で大きな権限を持っていた。 李氏が打ち出した「露天商経済解禁」という方針は、この「城管」の存在そのものを否定するものではないかと、現場は混乱した。また、屋台など飲食を提供する露天商が増えれば、一般の飲食店の売り上げにも影響する、との懸念の声も少なくない』、「一般の飲食店の売り上げにも影響する、との懸念」、は大いにあり得る話だ。
・『習近平側近メディアの「李克強潰し」  李氏の山東視察からわずか一週間後の6月7日、北京市党委機関紙「北京日報」は「露店商経済は首都・北京のイメージや中国のイメージを損ない、質の高い経済発展には有害だ」と李氏の方針を完全に否定する社説を掲載した。 その後、国営中央テレビも追随して、「露店商経済は、長年の都市建設の成果を台無しにする」との論評を発表した。この二つの報道を受けて、「露天商経済」を宣伝するメディアは急速に減少した。 北京市トップの党委書記の蔡奇氏と、中央テレビを指導する立場にある黄坤明・党中央宣伝部長が、いずれも習氏の側近であることはよく知られている。「露天商経済の推進」という重大な方針変更について、李氏から相談を受けていなかった習氏が激怒し、「露天商経済をつぶせ」と部下に指示したとの情報もある。習派には、露天商経済が成功すれば、李氏の影響力が拡大するとの警戒もあったとみられる。 本来ならば、中国共産党の役割分担として、トップの総書記兼国家主席は外交と安全保障、ナンバー2の首相は経済を主導する、となっている。しかし、権力掌握を進めたい習近平氏は、以前から経済分野に積極的に介入しており、誰が中国の経済政策を主導しているのか外から見えにくい状態になっている。 李氏の周辺に近い共産党幹部によれば、「習氏は、ちゃんとした経済政策を持っているわけではなく、体面などを重要視しているだけだ。北京や上海などで露天商が増えれば、『中国の経済はよくない』との印象を外国に与えるのではないかと気にしているようだ」と説明した。 そもそも、李氏が提唱した露店商経済には大きな限界があり、全国で展開しても、本格的な景気回復には繋がらず、一時しのぎの雇用対策に過ぎないと言われている。この政策も党内の対立によって朝令暮改され、国民を振りまわすことになった。 共産党のツートップの確執は2022年の党大会まで続きそうだ。「天の声」が2つあることで、行政の現場では大きな混乱が生じている。 コロナ禍によって深刻な打撃を受け、低迷し続ける中国経済は、しばらく立ち直りそうにない』、「ツートップの確執は2022年の党大会まで続きそうだ」、大いに注目したい。

次に、8月17日付けYahooニュースがニッポン放送記事を転載した「長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c0f64d298b61d7cc4e862f2308d3dd980fd74380
・『8月17日、辛坊治郎が、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に生出演。政治・経済・文化・社会・芸能まで、一日の出来事の中から独自の視点でニュースをズーム、本質を解説する同番組の今回は、中国政府が沖縄県の尖閣諸島を含む東シナ海周辺での「漁」を3か月ぶりに解禁したなか、漁師らに対して中国政府から「尖閣周辺では操業をしないよう」に指示をしたという報道を受けて、中国問題に詳しい評論家の石平(せき へい)氏が解説した。 辛坊が端的に「どういうことですか?」と聞くと、石平氏は背景を説明。「7月下旬から8月上旬にかけて『北戴河会議』が行われたことによるもの」と説明。北戴河とは中国の有名な避暑地で、そこに中国共産党指導部や旧指導部の長老たちが集まって行われるものが『北戴河会議』。石平氏は、「今年の北戴河会議では、習近平のやり方を良く思っていない現指導部と胡錦涛や温家宝らの長老たちが、習近平をつるし上げ、対米関係の改善を求めた。その結果、アメリカに対しては融和政策をとっていくようだ」と話した。 一方、日本との関係に関しては、二つの可能性があるとし、「一つは、アメリカに対して融和政策をとる分、より高圧的な対応に出る可能性。もう一つは安倍総理にトランプ大統領との仲介を頼む可能性。従って、尖閣諸島近辺で中国漁船がどういう動きをするかは注視しなければならない」と警戒を促した。 石平氏によると、今回の北戴河会議で特に長老たちが習近平に迫ったのは前述の対米関係の改善であると断言。その理由として「アメリカとの関係が徹底的に悪化すると、長老たちの親族がアメリカに持っている資産・財産が凍結されてしまうことを恐れている。だから長老たちも必死」とした。 辛坊が、「中国は、ここにきてインドの国境紛争地帯ではインド領内に施設を建設したり、南シナ海では、岩礁を埋め立てて滑走路を作ったり、先日の香港では国家安全維持法で一国二制度を廃止する方向に舵をとることをはっきりさせりといったい中国では何が起きているんですか!?」と強い口調で質問すると、石平氏は「伝統的な外交戦略からするとはっきり言ってあり得ない話。中国というのは昔は外交上手だった。どこかの国とけんかするときは周辺の国と仲良くしていた。今の習近平のやり方は、みんな敵にしてしまう。だから北戴河会議では彼の外交姿勢が批判を浴びた」と話した』、「中国というのは昔は外交上手だった。どこかの国とけんかするときは周辺の国と仲良くしていた。今の習近平のやり方は、みんな敵にしてしまう。だから北戴河会議では彼の外交姿勢が批判を浴びた」、はともかく、「アメリカとの関係が徹底的に悪化すると、長老たちの親族がアメリカに持っている資産・財産が凍結されてしまうことを恐れている。だから長老たちも必死」、笑いを禁じえない本音だ。

第三に、8月31日付けNewsweek日本版が掲載した中国出身で日本国籍を取得した評論家の石平氏による「習近平vs李克強の権力闘争が始まった」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/sekihei/2020/08/vs_1.php
・『<5月の全人代から8月の水害被災地視察にいたる共産党のさまざまな行事の水面下で、習近平と李克強の激しい暗闘が繰り広げられていた。その勝者は?> 今年5月28日、年に一度の全国人民代表大会(全人代)が閉幕したその日、中国の李克強首相は恒例の首相記者会見で「爆弾発言」をした。中国の貧困問題についての記者質問に答える中で「今の中国では、6億人が月収1000元前後」と発言したのである。 記者会見は中国中央電視台(CCTV)によっても中継されていたので、李がそこで淡々と披露したこの数字は直ちに全国に伝わってマスコミと国民の間に大きな波紋を呼んだ。 今年3月に国家統計局が公表した2019年の国民1人当たりGDPは7万892元(1万392ドル)で、初めて1万ドルの大台を超えた。一方、14億の国民のうちの6億人が「月収1000元(=年収1万2000元)」であるなら、上述の「1人当たりGDP」との落差はあまりに大きい。ちなみに「月収1000元」は日本円で約1万5000円、日本の生活保護の基準金額よりもはるかに少ない。今の中国でも、この程度の月収はまさに貧困そのものである。総人口の4割以上を占める6億の国民が未だに貧困にあえいでいる実態を、李が披露した数字によって多くの国民が知り、そして愕然と「世界第2位の経済大国」幻想から覚めたのである。 そういう意味においても、中国経済の実態を暴露した李の「月収1000元」発言はまさに爆弾発言の部類に入るものだが、実はこの発言にはもう1つ重大な政治的意味合い――事実上、習近平国家主席にケンカを売ったこと――が含まれていた。 習は2015年ごろから「2020年に脱貧困、小康社会の全面的実現」を自らの政権の看板政策として掲げてきた。それ以来の5年間、習はずっと全国の党幹部に対して「脱貧困・全面小康」実現の大号令をかけ続けてきた。今年になって新型コロナウイルスの影響があった中でも、習は既定の政策目標を変えようとはしなかった。3月、習は「脱貧困達成」の座談会を開き、「新型コロナの影響を克服し、脱貧困の全面勝利を勝ち取ろう」との檄を飛ばした。とにかくこの2020年内に「貧困人口の全員脱貧困」を実現させたい、との固い決意が伺える。 地方幹部たちは最高指導者の想いを忖度して、「脱貧困の成果」を次から次へとつくり出し習を喜ばせようとした。今年に入って省・自治区の多くは「わが地方は貧困人口の全員が脱貧困寸前」と宣言し始めた。人口8000万人の江蘇省に至っては今年の1月7日、「江蘇省で未だに脱貧困していないのはわずか17人」とまで宣言した。 各地方から相次ぐ「脱貧困報告」に基づき、習政権は2020年の年末に「14億国民全員が脱貧困し全面小康社会が実現された」と誇らかに宣言し、それを習の偉大な業績にする腹積もりだろう。これで習は、中国という国が始まって以来の最大の偉業を達成した偉大なる指導者――になる筋書きである』、「李」発言は、上の記事でも触れたが、「李が披露した数字によって多くの国民が知り、そして愕然と「世界第2位の経済大国」幻想から覚めた」、とはインパクトが大きかったようだ。「脱貧困」で「習は、中国という国が始まって以来の最大の偉業を達成した偉大なる指導者――になる筋書きである」、とんだ皮算用だ。
・『「習近平の夢」を葬り去った李克強の一撃  しかし中国首相である李克強の口から出た1つの数字によって、習の「偉業達成」はかなり危うくなっている。どういう基準で「14億人が脱貧困」と言えるのかについて、習政権はさまざまな数字の操作を「工夫」することもできよう。しかし、いくら何でも「6億人の国民が月収1000元」の現状で、習が筋書き通りに今年末の「14億全員脱貧困」と宣言するのはかなり難しい。無理矢理宣言しても誰も信じないし、ただの笑い話に終わってしまう。 要するに、「中国有史以来の偉業を達成した偉人」となって自らの権威樹立を図る習近平の目論見は、李克強の手によってほぼ完全に打ち壊され、「中国の夢」ならぬ「習近平の夢」の1つはこれで破れたのである。 もちろん、成熟した政治家の李が、自ら披露した数字がこのような「殺傷力」を持っていることを知らないわけはない。いや、むしろ知っているからこそ彼は、テレビ中継の記者会見においてこの数字を披露し一瞬にして全国に広げたのであろう。この数字の披露はまさに、李が習に対して仕掛けた奇襲作戦だ。この一挙で習の「脱貧困」の欺瞞性を暴露したとの同時に、習がただのホラ吹きであることを国民に明らかにしたわけである。 このケンカの売り方は巧妙なところは、習近平批判をしたわけでもなければ習の名前すら出さず、淡々と披露した数字によって、習に顔面パンチの打撃を与えた点にある。 李は上述の数字の披露によって、もう1つの目的も達成している。それは、「李首相こそ国家の実情をしっかりと把握し、本当のことを国民に伝えるまともな政治家」であるとの印象を国民と国際社会に与えたことである。そして、その対比において習近平はむしろ「国の実情を無視してホラ吹きをする政治家」と国民の目に映る。習近平にとっては二重ダメージである。 以上は、5月28日の全人代記者会見を利用して、中国首相の李克強が国家主席の習近平に仕掛けた奇襲作戦の一部始終であるが、習主席サイドは当然、何らかの反撃を考えなければならない。 そして7月になると、習からの反撃が予想もせぬ形で始まった』、「この数字の披露はまさに、李が習に対して仕掛けた奇襲作戦だ。この一挙で習の「脱貧困」の欺瞞性を暴露したとの同時に、習がただのホラ吹きであることを国民に明らかにしたわけである。 このケンカの売り方は巧妙なところは、習近平批判をしたわけでもなければ習の名前すら出さず、淡々と披露した数字によって、習に顔面パンチの打撃を与えた点にある」、「「李首相こそ国家の実情をしっかりと把握し、本当のことを国民に伝えるまともな政治家」であるとの印象を国民と国際社会に与えた」、誠に巧みな戦略だ。。
・『奇襲作戦への反撃に出た習近平  7月21日、習近平国家主席は北京で国内の経営者たちを招いて「企業家座談会」を開き、中国の経済問題について討議した。 座談会には習以外に、汪洋全国政治協商会議主席、王滬寧政治局常務委員、韓正副首相が出席した。共産党の最高指導部である政治局常務委員会の7人のメンバーのうち、習を含めて4人も出席しているから、まさに異例のハイレベル会議だ。当面の経済問題に対する習と指導部の重要視ぶりがうかがえる。 驚いたことに、この主席主催の重要会議を首相の李克強は欠席した。中国で経済運営は首相の管轄事項の1つである。政権中枢に設置されている経済運営の司令塔「中央財経指導小組」では、組長の習の下で李が副組長を担当している。李は本来、習主催の経済関連ハイレベル会議に誰よりも出席すべきであろう。 李欠席の原因は、外遊や地方視察のために北京を留守にしていたわけでもない。同じ7月21日、彼は北京で別の外交活動に参加していることが人民日報の報道で判明している。もちろん、習主催の重要座談会であるから、李が自ら参加を拒んだとは考えにくい。拒む理由もないはずである。 だとすれば、習自身が李を呼ばなかったことが欠席の理由だろう。つまり習は最初から、李を参加者リストから外していた。しかし事実がもしそうであれば、それは重大な政治的意味を持つ出来事である。職務担当が経済運営と全く関係のない王滬寧政治局常務委員までが会議に呼ばれたのに、李が呼ばれなかったのはもはや異常事態、あまりにも露骨な「李克強排除」だ』、「企業家座談会」で「李克強排除」をしたとは、余りに大人げない。
・『さらに再反撃する李克強  習による「李克強排除」は当然、前述の李の奇襲作戦に対する反撃、あるいは報復であろう。「俺の経済政策を打ち壊すなら、お前を経済運営の中枢から追い出してやるぞ」という意味合いの行動である。それ以来、できるだけ李を経済政策の意思決定から排除するのが習の基本方針となっている模様だ。 8月24日、習近平が9人の専門家たちを招いて座談会を開き、第14次5カ年計画について討議した。この座談会には前述の王滬寧、韓正が出席したものの、李克強はやはり「欠席」していた。 ここまでくると、熾烈さを増す習近平と李克強との政治闘争は半ば表面化している。こうした中、8月初旬からの恒例の北戴河会議が終わった直後に、李はまたもや思いもよらぬところから習に対する果敢な奇襲作戦を展開した』、「果敢な奇襲作戦を展開した」とは面白そうだ。
・『「反撃への反撃」の舞台は洪水被災地  その舞台となったのは洪水の起きた南部地域である。今年の7月中旬ごろから、長江流域で大雨による洪水が発生し、湖北省・安徽省・江西省では大変な被害になった。 胡錦濤時代までの中国共産党政権の伝統では、大水害などの自然災害が発生すると、国家主席あるいは首相などの中央指導者は必ず災害現場を視察し、陣頭指揮を執った。しかし習政権になると、どういうわけかこの伝統が完全に廃れ、災害があっても習以下の指導者はなかなか現場へ行かない。視察に行っても災害がすでに収束した後である 今回も習がやっと安徽省の水害地域に入ったのは8月18日のことである。しかしそこでの被害は2週間前にとっくに治まっていた。実際、翌日から新華社通信の公式サイトに掲載された習近平の「水害視察写真」を見ていると。肝心の川はかなり静かになり水害の痕跡はほとんど見られない。習の視察は緊迫した災害視察というより、余裕綽々の物見遊山風情なのである。 しかしまさにその時、中国では別の地方で大変な水害が起きていた。直轄市の重慶である。主に三峡ダムの大量放流が原因だが、8月18日からの数日間、大都会の重慶は物流が止まるほどの水害に見舞われた。 そして、水害が既に終わった後の安徽省を視察した習近平とは違って、李克強は8月20日、水害の最中の重慶へ飛び、電撃視察を行った。視察において彼は、水害の現場を実際に歩き回った。翌21日、李克強がトップである国務院管轄下の中国政府公式サイトに、重慶の被災地の現場で彼が長靴を履き、泥水の中を歩く写真数点が掲載された。 長靴で泥水を歩く李克強の写真は、報道されるや否やネットで急速に拡散され大きな反響を呼んだ。多くの中国人民は「しかるべき指導者」の姿を久しぶりに見たのと同時に、数日前に見た別の指導者の写真をも思い出した。そう、水害の痕跡のないところで綺麗な革靴を履いて悠然と「物見遊山視察」を行う習近平の姿である。 この2人の写真を脳裏に並べて再現した時、多くの国民の中で「間が抜けて無責任な指導者・習近平」と「危険を省みず泥水の中を歩く頼もしい指導者・李克強」との対比的イメージが一瞬にして出来上がるに違いない。そしてそれこそが、災害のさなかの重慶を視察し、わざと泥水の中を歩いた李の狙いではないのか』、「多くの国民の中で「間が抜けて無責任な指導者・習近平」と「危険を省みず泥水の中を歩く頼もしい指導者・李克強」との対比的イメージが一瞬にして出来上がる」、またしても「李氏」に一本取られたようだ。
・『「首相の視察」を無視した中央メディア  習近平の「物見遊山視察」の2日後に、李克強が水害被災地の重慶へ飛んで行って視察したのはむしろ周到な計算にも続く政治行動と見るべきであろう。李克強は当然、習近平が18日に安徽省に行ったことを知っていた。習近平の視察写真が国民の間で大変不評であることも知っていたはずだ。 もし事実がそうなら、これはまた李克強が習近平に対して仕掛けた奇襲作戦の1つである。そして李のこの作戦はどうやら成功したようだ。その証拠がある。彼の視察があった8月20日から23日の晩まで新華社通信・人民日報・CCTVの三大中央メディアは李の重慶視察を完全に黙殺し、一切報道しなかったのだ。 共産党ナンバー2である首相の地方視察を、党中央メデイアが完全黙殺するのはまさに異例中の異例である。それは宣伝機関を握っている習近平サイドが、李の重慶視察を国民に知らせることを恐れているからであろう。そしてこのことは逆に、李の重慶視察が習にとって大変破壊力のある行動だったことを証明している』、「首相の地方視察を、党中央メデイアが完全黙殺するのはまさに異例中の異例・・・習近平サイドが、李の重慶視察を国民に知らせることを恐れているから」、見え透いた小細工を弄したものだ。
・『李克強の堪忍袋が切れた原因  しかし、李克強の地方視察を完全に黙殺する習近平サイドのやり方はあまりにも乱暴であって拙い。共産党党内からも民間からも大きな批判が起き、逆に支持と同情が李克強の方に集まりかねない。 こうした中、23日夜になってようやく、CCTVと新華社通信がこの数日前の「旧聞」を報道した。そして翌日の24日の人民日報でも、李の重慶視察のニュースは一面を飾った。党内と民間の李首相支持・同情の声に押されて習近平サイドの「李克強隠し」は完全に失敗し、李の奇襲作戦はまたもや大勝利を収めたのである。 以上は、今年の5月以来、中国の李克強首相が習近平国家主席に対して盛んに売った「ケンカ」の一部始終であるが、この背景には当然、習近平と李克強との長年の確執とライバル意識があっただろう。 2007年の党大会で胡錦濤前主席の後継者を決める時、胡は自らの率いる「共青団派」のホープで子飼いの李克強を自分の後継者に推したかった。これに対し、当時絶対な影響力を持った江沢民一派はその対抗馬として習近平を推した。結果的には江沢民派の勝利となって習は次期最高指導者の座を約束され、2012年の党大会では首尾よく共産党総書記に選出され翌年には国家主席になった。一方、李克強は最高指導者になるチャンスを奪われ、習の下の首相ポストに甘んじることとなった。 このように両者は最初から確執があってライバル意識が強く、信頼関係が全くない。政権が始まった後、習は独裁志向を強め、外交や経済運営などの決定権を首相の李克強からことごと取り上げ、政権内でいわば「李克強封殺」を進めた。 一方の李は習政権スタート以来のこの8年、ずっと隠忍自重して習に逆らわず、不本意な立場で首相職を淡々とこなしてきた。それが今年に入ってから突如、君子豹変して習近平にケンカを売るようになった。豹変のきっかけは新型肺炎の感染拡大だろう。このコラムでも以前に取り上げたが、1月下旬に武漢が都市封鎖された直後、中央に設置された「疫病対策指導小組(対策本部)」の組長(対策本部長)に国家主席の習近平は就任せず、李克強に押し付けた。 ・・・李克強は「危急存亡の秋」にもっとも困難な仕事を引き受け、感染拡大中の武漢に入って危機対応に当たった。しかしその後、武漢の感染拡大が治まりかけた時になってようやく、習は「疫病対策はずっと全て自分の直接指揮下にあった」と宣言し、李克強の手柄を横取りしたのである。 おそらく李克強はこれで堪忍袋の緒が切れ、隠忍自重をやめて習近平と戦う姿勢に転じたのだろう。今の習近平政権が内政と外交の両面でかなりの行き詰まりを見せ、習に取って代わる指導者を求める思いが党内と民間に広がり始めていることも李の豹変の背後にあろう。 いずれにしても、習近平と李克強という共産党ナンバー1とナンバー2の権力闘争の火蓋が切って落とされたことは事実である。今後、この2人の戦いがどう展開していくのかは、中国の政治と外交を大きく左右する。引き続き注目していく必要があろう』、「胡は自らの率いる「共青団派」のホープで子飼いの李克強を自分の後継者に推したかった。これに対し、当時絶対な影響力を持った江沢民一派はその対抗馬として習近平を推した」、こんないきさつがあったとは、初めて知った。「今の習近平政権が内政と外交の両面でかなりの行き詰まりを見せ、習に取って代わる指導者を求める思いが党内と民間に広がり始めていることも李の豹変の背後にあろう」、納得できた。「今後、この2人の戦いがどう展開していくのか」、大いに注目したい。
タグ:ニッポン放送 「習近平の夢」を葬り去った李克強の一撃 (その9)(習近平 激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した、長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判、習近平vs李克強の権力闘争が始まった) Newsweek日本版 yahooニュース 中国というのは昔は外交上手だった。どこかの国とけんかするときは周辺の国と仲良くしていた。今の習近平のやり方は、みんな敵にしてしまう。だから北戴河会議では彼の外交姿勢が批判を浴びた 中国国内政治 実務担当者の李氏らは「2%以下になる可能性もある」と想定したのに対し、習氏とその周辺は「5%以上を目指せ」としつこく要求 長の数値目標がなかった。極めて異例のこと アメリカとの関係が徹底的に悪化すると、長老たちの親族がアメリカに持っている資産・財産が凍結されてしまうことを恐れている。だから長老たちも必死 北戴河会議 石平 爆弾発言「貧困層が6億人いる」 南北院の争い 中南海地区には、南側に党中央の建物、北側に国務院(政府)の建物 「露天商経済」をめぐる混乱 矢板 明夫 現代ビジネス トップの習近平国家主席とナンバー2の李克強首相の対立が最近、顕著になってきた 「習近平、激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した」 この数字の披露はまさに、李が習に対して仕掛けた奇襲作戦だ。この一挙で習の「脱貧困」の欺瞞性を暴露したとの同時に、習がただのホラ吹きであることを国民に明らかにしたわけである。 このケンカの売り方は巧妙なところは、習近平批判をしたわけでもなければ習の名前すら出さず、淡々と披露した数字によって、習に顔面パンチの打撃を与えた点にある 「脱貧困」で「習は、中国という国が始まって以来の最大の偉業を達成した偉大なる指導者――になる筋書きである」 「長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判」 李が披露した数字によって多くの国民が知り、そして愕然と「世界第2位の経済大国」幻想から覚めた 今後、この2人の戦いがどう展開していくのか 「習近平vs李克強の権力闘争が始まった」 ツートップの確執は2022年の党大会まで続きそうだ 今の習近平政権が内政と外交の両面でかなりの行き詰まりを見せ、習に取って代わる指導者を求める思いが党内と民間に広がり始めていることも李の豹変の背後にあろう 習近平側近メディアの「李克強潰し」 胡は自らの率いる「共青団派」のホープで子飼いの李克強を自分の後継者に推したかった。これに対し、当時絶対な影響力を持った江沢民一派はその対抗馬として習近平を推した 共産党党内からも民間からも大きな批判が起き、逆に支持と同情が李克強の方に集まりかねない。 こうした中、23日夜になってようやく、CCTVと新華社通信がこの数日前の「旧聞」を報道した 李克強の堪忍袋が切れた原因 「首相の視察」を無視した中央メディア 危険を省みず泥水の中を歩く頼もしい指導者・李克強」との対比的イメージが一瞬にして出来上がる 多くの国民の中で「間が抜けて無責任な指導者・習近平 「反撃への反撃」の舞台は洪水被災地 習に対する果敢な奇襲作戦を展開した さらに再反撃する李克強 奇襲作戦への反撃に出た習近平 「李首相こそ国家の実情をしっかりと把握し、本当のことを国民に伝えるまともな政治家」であるとの印象を国民と国際社会に与えた
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