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中東情勢(その15)(その他)(爆発起きた「レバノン」の手が付けられない惨状 政治的怠慢のツケを国民が払わされている、混迷のレバノン 米仏の最後通牒でも進展しない理由) [世界情勢]

中東情勢(その15)(その他)については、5月18日に取上げた。今日は、(爆発起きた「レバノン」の手が付けられない惨状 政治的怠慢のツケを国民が払わされている、混迷のレバノン 米仏の最後通牒でも進展しない理由)である。

先ずは、8月9日付け東洋経済オンラインが掲載した中東ジャーナリストの池滝 和秀氏による「爆発起きた「レバノン」の手が付けられない惨状 政治的怠慢のツケを国民が払わされている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/367972
・『内戦での市街戦や自動車爆弾テロによる要人暗殺、イスラエルによる空爆に見舞われてきたレバノン国民も、首都ベイルートの港で8月4日起きた大規模な爆発には度肝を抜かれたはずだ。 港の倉庫で発生した火災が、近くで保管されていた硝酸アンモニウム約2750トンの爆発を引き起こしたこの事件。そもそも、爆発物にも化学肥料にもなる大量の危険物質が人口密集地と接する重要インフラの港に放置されてきた政府の怠慢に、レバノン市民の怒りは頂点に達している』、はじめに「レバノン」の歴史を簡単にみておくと、フェニキア人にとって3000年栄えた海洋文化の拠点。第二次大戦後、フランス支配から独立、自由経済を採用し、金融や観光などの分野で国際市場に進出して経済を急成長させ、首都ベイルートは中東経済の中心地となり、また地中海有数の国際的リゾート地として、数多くのホテルが立ち並ぶなど大いに賑わい、「中東のパリ」と呼ばれるようになった。その後、中東戦争に伴うPLOの流入によって、国内の微妙な宗派間のバランスが崩れ、1975年に内戦が勃発(Wikipedia)。爆発後は「中東のパリ」など見る影もない。
・『1975年〜90年の内戦よりひどい状況  レバノンでは昨年10月以降、政治腐敗や経済失政への不満から反政府デモが続いており、今年3月には償還期限を迎えた外貨建て国債の支払いができずに初めてデフォルト(債務不履行)に。政府の債務は3月にはGDP比約170%に達しており、通貨レバノン・ポンドは大幅下落。金融機関は外貨引き出しを制限するなど、国民は日々の食事にも苦労する困窮状態に陥っている。 さらに、新型コロナウイルスの影響も加わり、失業率は高止まり。停電が長時間に及ぶなど、「1975〜90年の内戦時よりも状況はひどい」との声も漏れてくる。 爆発の衝撃は、ベイルートの広範囲に及び、最大30万人が家を追われ、日本円に換算して3000億円を超す被害が出たもようだ。今後の焦点や市民の関心は、事件のきっかけをつくった人物が司法の裁きを受けるかどうか。 だが、政府主導の調査では、有力政治家の責任を問うのは困難と言える。レバノンでは18の宗派が権力を分け合い、宗派の政治指導者が利権や利益を宗派内に配分する利益誘導型政治が続いており、国民的な視点の欠如は目に余る。今回もこうした政治体質によって国民の安全がないがしろにされた形で、問題の根深さが浮かび上がる。 レバノンでの爆発と聞けば、テロの可能性も疑われるが、現時点ではその可能性は低いと言えそうだ。7月には、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとイスラエルの衝突が相次ぎ、イスラエルの攻撃により、シリアの首都ダマスカス近郊でヒズボラ戦闘員が死亡。月末にはヒズボラ戦闘員がイスラエル領内に侵入し、イスラエル軍が撃退している。 こうした中での大規模爆発だが、イスラエル軍は関与を否定。大勢の無実の市民を巻き込んでいることからも、ピンポイントで標的を狙うイスラエルの手口とは異なる。 いずれにしても、首都にTNT火薬数百トン相当の爆発物を放置していた怠慢が爆発の原因であり、レバノンの失政ぶりを象徴している。そもそも、こんな危険物がなぜ、放置されることになったのか。ことは2013年9月までさかのぼる。 ロシアの船会社が所有していたモルドバ船籍の貨物船がトラブルでベイルートの港に寄港し、手続き上の問題が重なり、積荷の硝酸アンモニウム約2750トンがレバノン税関によって押収された。船主は、船の所有権を放棄し、この積荷も行き場を失った。 ツイッターに投稿された画像によると、硝酸アンモニウム約2750トンはがら袋に入られて積み上げられ、安全に管理されていたとは言い難い。危険性は、港湾当局や税関当局も認識しており、税関トップから司法当局に5〜6回の対応を促す書簡が送られたとされるが、対処されなかった。書簡では、海外輸出やレバノン軍への供与、ダイナマイトを扱う民間会社への売却が提案されていたという』、危険物の「硝酸アンモニウム約2750トン」が放置されていたとは、統治能力を欠いた政府らしい。
・『早くも責任のなすり合い  ディアブ首相は、司法相や内相、防衛相、軍など4つの治安部門トップによる調査委員会を設置し、数日中に内閣に調査結果を報告するよう命じた。ただ、中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、早くも責任のなすり合いが始まっている。 港湾当局を所管するナッジャール公共事業・運輸相は、危険物の存在は爆発の11日前に知ったと主張し、「倉庫やコンテナに何が入っているのか知っている大臣は存在しない。それを知ることはわたしの職務ではない」と言い切った。 公共事業・運輸省は、司法当局に対応を求める書簡を何度も送ったといい、ナッジャール氏は「司法当局は何も対応しなかった。職務怠慢だ」と主張。これに対し、司法関係者は「主要な法的責任は港を監督している港湾当局やそれを管轄する公共事業・運輸省のほか、税関当局にある」と反論する。 このように責任の押し付け合いが熱を帯びているほか、前述したように、レバノンは宗派による権力配分型政治が続いており、特定の人物や勢力を批判したり、やり玉に上げたりすると、宗派間対立を招いてしまうことから責任追及はあいまいになりがちだ。 レバノンが金融危機に見舞われているのも、政治腐敗による組織的な経済失政の色合いが濃い。政治家や財界重鎮が金融機関を牛耳るレバノンの金融システムは、金融機関が国家に貸し付けて得た利子で、政治家や有力一族ら大口顧客に法外な利息を提供するなど「巨大なポンジ・スキーム」と揶揄されている。 詐欺師チャールズ・ポンジの名に由来するこのスキームとは、実際には資金を運用せずに自転車操業的に行う詐欺行為の一種。レバノンでは、最終的に国家が債務を返済できずに国民がツケを支払わされている。 経済失政を招いた政治腐敗は、今回指摘されるような政府や行政の機能不全の原因ともなる。政治家や省庁の人材登用は、能力よりも宗派や派閥を重視する縁故採用や情実人事という、レバノン政治の上から末端まで浸透する政治体質に基づいて行われているとの不満が多い。だから、政府や行政の仕事は、国民の利益や安全が軽視され、宗派や派閥、個人の利益や利害が優先されがち。 政府組織の中でも、ベイルートの港や税関は、違法な武器も含めて非合法的に動くことがあり、「多くの派閥やヒズボラ系を含めた政治家らが支配する、レバノンの中でも最も腐敗した、うまみのある組織の1つとして知られている」(レバノン紙アンナハール)。 民営化や資金調達の一貫として、港の管理権を海外の企業に売却する可能性も浮上していたとされるが、今回の事件で改革に向けた海外からの投資はますます停滞しそうだ。 政治家や派閥は、港など国のインフラや設備、組織を、利益を吸い上げるために利用するうえ、インフラの劣化も激しい。電力供給や安全性の高い水道の維持などの公的なサービスもままならず、国民は発電機を買うといった自衛策で猛暑を乗り切るしかない。独占的な通信事業によって携帯電話代は高く、利益は有力一族や財界重鎮に吸い上げられる。 政治腐敗に反発したデモでハリリ首相が昨年10月に辞任したものの、その後も改革が進む気配はない。経済危機打開へ国際通貨基金(IMF)に支援を仰いでいるものの、国際支援を受けるための改革は進まず、爆発が起きた前日の3日には、政治家同士の足の引っ張り合いに辟易したとして、ヒッティ外相が辞任している』、これでは「IMF」も手をつけようもなさそうだ。
・『コロナ禍で海外移住の道も閉ざされる  レバノンの政治腐敗は構造的な問題があり、一朝一夕には解決しない。このため、最近のデモでは、銀行が襲撃されるなどデモ隊が暴徒化する様相も呈している。 レバノン政治に詳しい専門家は「レバノン政治は構造的問題を抱えており、政治腐敗や宗派のボスを批判しても問題は解決しない。実際にデモ隊が求めるものを実行するにしても、どこから行っていいか分からない状況だ。銀行襲撃に走るなど明確な批判の対象が見えなくなっている」と分析する。 レバノン人たちは歴史的に、困難に直面した時には海外に活路を見出してきた。日本から逃亡したカルロス・ゴーン被告の先祖も、こうした経緯でブラジルに渡っている。レバノンでは海外に移民した国民が自国に住む国民の数よりも多いが、新型コロナウイルスの感染拡大による移動制限や世界的な景気後退により、移住という選択肢も今は取りづらい。 こうした中でも、レバノン国民は、爆発によって家を追われた人々に空き家や別荘、空き部屋を提供するなど、政府に頼れないために宗派を越えた結束力を見せている。ある市民は「今回の事件の背後に政治腐敗や怠慢があるのは明らか。まずは調査結果を見守りたい」と冷静を努める。ただ、レバノンの政治構造や体質は容易に変わらないとの見方が強い。レバノンの危機は、ますます深刻化することになりそうだ』、事実上、破綻した国家の再建は誰が、どのようにして進めるのだろう。

次に、11月22日付けロイター「アングル:混迷のレバノン、米仏の最後通牒でも進展しない理由」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/lebanon-crisis-idJPKBN27Z0EL
・『 混乱に陥ったレバノン経済の救済を模索する西側有力諸国は、同国指導部に対して最後通牒を突きつけた。財政破綻した国家の全面改革を進める信頼性の高い政府が樹立されない限り、それも迅速に実現しない限り、今後の救済はない──と。 1975─90年のレバノン内戦以来、フランス、米国をはじめとする支援国は、繰り返しレバノンに救いの手を差しのべてきた。だが、レバノンが経済危機に陥る間、政権を担当していた「おなじみの顔ぶれ」を多く含む同国の政界に対し、こうした諸国も愛想を尽かし始めている。 昨年来、レバノンでは支配層に対する大規模な抗議行動が発生している。抗議参加者たちは、国家債務が積み上がっていく一方で、支配層は自らの既得権ばかり追い求めていると非難。COVID-19のパンデミックにより、さらに国内のリソースは窮迫し、8月にベイルートの港湾地区で発生した大規模な爆発事故により、市街は大きな被害を被った。 外貨準備が減っていくなかで、一部の医薬品を含む基本的な商品の供給は不足し、貧困ライン以下に沈むレバノン国民も増加している。 かつての宗主国としてレバノンへの支援が当然視されるフランスは、爆発事故を受けてマクロン大統領が現地に駆けつけ、非常事態に対応するため、少なくとも部分的な改革を導入するよう現地の政治家らの説得に努めた。 だが、対立する党派が泥沼の勢力争いを続ける中で、爆発事故とその余波を受けて前政権が倒れて以来、レバノンでは新たな政府が成立していない。これまでも見られたこう着状態のときと同様に、各党派は組閣不能の責任をお互いに押しつけあっている。 ベイルートで先週行われた協議の席上、デュレル仏大統領補佐官(中東・北アフリカ担当)が、フランス政府はレバノンへの関与を続けるものの「改革が行われない限り救済はない」と明言した。協議に参加していた2人の関係者が明らかにした。「改革なしに救済が行われていた時代は終った」とデュレル補佐官は言った。 西側外交官の1人によれば、フランスは引き続きベイルート復興に関して予定されている会議を11月末までに開催しようと努めているが、なお予断を許さない状況だという。 「全く進展が見られない」と、この外交官は言う。「レバノンの政治家は従来通りの流儀に戻ってしまったし、憂慮すべきことに、国民のことは完全に視野に入っていない」──』、旧「宗主国」「フランス」は・・・マクロン大統領が現地に駆けつけ、非常事態に対応するため、少なくとも部分的な改革を導入するよう現地の政治家らの説得に努めた」、しかし、「フランス」の工作は実を結んでないようだ。
・<「ただ乗りは不可」>  米国のシア駐レバノン大使は13日、ワシントンのシンクタンクCSISによるオンラインカンファレンスにおける発言で「(米国は)レバノンが重要」「国家の破綻を回避することが、何よりも最優先であると認識している」と語った。 、デュレル仏大統領補佐官はヒズボラに対し、友好関係にあるバシル氏を説得して態度を軟化させるよう求めたが、ヒズボラはバシル氏への圧力を強めて同氏の立場をさらに弱めることに消極的だったという。
・<厳しくなる状況>  複数の情報提供者は、外貨準備を急速に使い尽くしつつあるレバノンにとって、現在のようなこう着状態は自殺行為だと話している。現在のレバノンの外貨準備高は、わずか179億ドルと推定されている。 米国による制裁は、退任が迫っているトランプ政権による対イラン「最大の圧力」作戦の一環であることをシア駐レバノン大使が認めており、イラン政府及びその連携勢力は、トランプ大統領の退任まで時機を待つ姿勢を見せている。 だが、レバノンの当局者の間には、こうした模様眺めの戦術について懸念する声もある。 組閣協議に詳しいベテランの政界関係者は「今やフランスが発しているメッセージは明確だ。政権が樹立されず、改革も進まなければ、はい、さようならということだ」と語る。「フランスが手を引いてしまえば、誰がそれ以降、この国を気に掛けてくれるのか。湾岸諸国、米国も含めどこも期待できない」と話す。 「結局のところ、今日のような例外的な時期・課題にどう対応すべきか、分かっている国はない」「それなのに私たちは、平穏な時期と同じように組閣のゴタゴタを演じている」という。 シア大使は「(支援国が)強い信念を持たなければならない」と話す。さもなければ、レバノンの政治エリートは真剣になってくれないからだ。「政権確立を急がなければという切迫感を彼らが持ってくれなければ、どうやって圧力をかけられようか」とシア大使は言う。「彼らは私たちに向かって、我々に改革をさせるとは面白い。お手並み拝見だと言うだろう」と語った』、さて、どうなることやら。亡命中のゴーン氏も、さぞかしハラハラしていることだろう。
タグ:ロイター 東洋経済オンライン 中東情勢 池滝 和秀 (その15)(その他)(爆発起きた「レバノン」の手が付けられない惨状 政治的怠慢のツケを国民が払わされている、混迷のレバノン 米仏の最後通牒でも進展しない理由) 「爆発起きた「レバノン」の手が付けられない惨状 政治的怠慢のツケを国民が払わされている」 「レバノン」の歴史 フェニキア人にとって3000年栄えた海洋文化の拠点 第二次大戦後、フランス支配から独立、自由経済を採用し、金融や観光などの分野で国際市場に進出して経済を急成長させ、首都ベイルートは中東経済の中心地となり、また地中海有数の国際的リゾート地として、数多くのホテルが立ち並ぶなど大いに賑わい、「中東のパリ」と呼ばれるようになった 中東戦争に伴うPLOの流入によって、国内の微妙な宗派間のバランスが崩れ、1975年に内戦が勃発 1975年〜90年の内戦よりひどい状況 首都にTNT火薬数百トン相当の爆発物を放置していた怠慢が爆発の原因であり、レバノンの失政ぶりを象徴 早くも責任のなすり合い 宗派による権力配分型政治 金融機関が国家に貸し付けて得た利子で、政治家や有力一族ら大口顧客に法外な利息を提供するなど「巨大なポンジ・スキーム」と揶揄 国際通貨基金(IMF)に支援を仰いでいるものの、国際支援を受けるための改革は進まず コロナ禍で海外移住の道も閉ざされる 事実上、破綻した国家の再建は誰が、どのようにして進めるのだろう 「アングル:混迷のレバノン、米仏の最後通牒でも進展しない理由」 フランス、米国をはじめとする支援国は、繰り返しレバノンに救いの手を差しのべてきた 一部の医薬品を含む基本的な商品の供給は不足し、貧困ライン以下に沈むレバノン国民も増加している フランスは、爆発事故を受けてマクロン大統領が現地に駆けつけ、非常事態に対応するため、少なくとも部分的な改革を導入するよう現地の政治家らの説得に努めた ただ乗りは不可 厳しくなる状況
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