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貧困問題(その3)(新型コロナが追い打ち「月収10万円」貧しさの現実、5歳超の非正規男性が悲惨なほど困窮する現実 正社員と違い年齢を重ねても賃金が上がらない)

貧困問題については、3月19日に取上げた。今日は、(その3)(新型コロナが追い打ち「月収10万円」貧しさの現実、5歳超の非正規男性が悲惨なほど困窮する現実 正社員と違い年齢を重ねても賃金が上がらない)である。

先ずは、5月26日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「新型コロナが追い打ち「月収10万円」貧しさの現実」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00075/?P=1
・『数年前、40代の男性のインタビューで、思わぬ告白をされたことがあった。 「お恥ずかしい話なんですけど……、僕、半年前はホームレスやってたんです」 目の前に座っているスーツを着た男性は、ごく普通のサラリーマン。その彼から、「ホームレス」という言葉が飛び出して面食らった。というか、私は正直なところ、何の話をしてるのか一瞬分からなくなった。 河合「えっ……と。それって……」 男性「派遣切りにあって、次の仕事がなかなか見つからなかったんです。それで家賃も払えなくて、ひと月くらいですけどね」 河合「で、そのあとが、今の会社ですか?」 男性「はい。そうです。ハローワークに行くときに、昔、飲みに行ってた焼鳥屋のマスターにばったり会いましてね。『お客さんの会社で体調を崩して入院する社員がいて、時間をかけて採用してる余裕もないから仕事の一部をバイトに頼みたいと言ってた』と、すぐに連絡してくれたんです」 河合「今、契約社員……ですよね?」 男性「はい。バイトなのに、上司の人がすごく丁寧に仕事を教えてくれたんですよ。不思議なもんで、そうやって扱ってもらうと自分でもいろいろと工夫するようになって、ひと月後に『契約社員にならないか』って言ってくれたんです。時給が月給になったし、がんばれば正社員にもなれると言われました。生まれて初めて仕事って楽しいって思えました。僕は本当に運が良かった。ホント、運が良かったんだと思います」 「貧困は簡単に外から見えない」。彼の話を聞き、強く実感した』、「焼鳥屋のマスター」の紹介で就職先が見つかったとはラッキーという他ない。
・『新型コロナの影響で貧困問題も表面化  先週、NPO法人しんぐるまざあーず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長が、新型コロナウイルスの影響で困窮するシングルマザーについてコメントしていた。その内容があまりに衝撃的で、今回は「見えない貧困」を取り上げようと思った次第である。 赤石氏によると、4月以降、シングルマザーからの相談が急増し、「子供がおなかをすかせていても、食べさせるものがない」「公園の水や野草で空腹を満たしている」などの、驚くべき内容もあったそうだ。 多くがパートなどの非正規で雇用されているため、自宅待機で収入が減るという人が半数以上。中には、子供の保育園が休みになったと相談したら、「だったら来なくていい」と言われたケースもあった。 「私たちの感触では、本当にいつ悲惨な事件が起きてもおかしくない」。こうコメントしていた(5月21日付朝日新聞朝刊)。 新型コロナウイルス感染が拡大した当初から、「今起きている問題はこれまで見ないふりをされたり、だましだましやり過ごしたりしてきた問題が表面化しただけ」と書き続けているけど、貧困問題はその1つだ。 しかしながら、貧困問題を取り上げると、「公園の水と野草食べるなんて人、本当にいるの?」「昔の方がもっと貧しい人が多かった」というリアクションが少なくない。 そういった意見が出てしまうのは、貧困問題を語るときに、使われる「相対的貧困」という言葉のニュアンスにあると私は考えている。つまり、「貧困っていっても、相対的貧困でしょ?」と。「その日に食べるものがなくて困ってるわけじゃないだろ」と。つまり、「相対的」という言葉が、貧しさのリアルをぼやかしてしまうのだ。 ご承知のとおり、相対的貧困は、絶対的貧困=1日2ドル未満で生活する人々(世界銀行の定義)とは異なり、「世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない人々」のこと。平たく言うと「恥ずかしい思いをすることなく生活できる水準」にない人々を捉えたものだ。 その水準の目安となるのが貧困ラインで、日本の場合、122万円程度になる(国民生活基礎調査)。月額にすると10万円(単身世帯の場合)。たった10万円だ。月に10万円の収入では普段から貯金するのは難しい。となれば、今回のコロナ禍のような突発的な出来事に耐えられるわけがない。 この10万円という金額を念頭に、改めて次の数字の重みを考えてみてほしい。 +日本の相対的貧困率はG7(先進7カ国)でワースト2位 +ひとり親世帯に限るとOECD(経済協力開発機構)加盟国35カ国中ワースト1位 +そして、日本の母子家庭の母親の就業率は、84.5%と先進国の中でもっとも高いにもかかわらず、突出して貧困率が高く、アメリカ36%、フランス12%、英国7%に対して、日本は58%と半数を超えている(OECDの報告より)』、「日本の相対的貧困率はG7(先進7カ国)でワースト2位、ひとり親世帯に限るとOECD(経済協力開発機構)加盟国35カ国中ワースト1位」、「日本の相対的貧困」の酷さに改めて驚かされた。
・『相談に行ったことがさらなる貧困のきっかけに  日本も含めた先進国の貧しさは「目に見えない」。とりわけ日本では、働いているのに貧困、すなわち「ワーキングプア」が多いので、余計に見えなくなる。 さらに、貧困の問題は「そういう人はなぜ、生活保護を受けないのだろう?」「シングルマザーの貧困は養育費をちゃんともらえばかなり解決できるのでは?」といった疑問で矮小(わいしょう)化され、個人の責任にすり替えられがちだ。 数年前、就職氷河期に非正規社員の道を余儀なくされた人たちが、「助けて」と言えずに孤立したり、食事も取れずに餓死するという事件があった。この時代に「餓死する」とは、信じがたい出来事だが、取材する中で、生活保護の相談に行ったことが、孤立の引き金になった人がいることがわかった。 「まだ、若いんだから、もう少しがんばって仕事探してみなさい」──。 こう言われたことで、二度とSOSを出せなくなってしまったのだ。 彼らは一見すると健康に見える。何よりも若い。なので、相談された人も「もう少しがんばって」と励ました。 だが、彼らの心は既にズタズタだった。藁(わら)をもつかむ気持ちで相談にいったのに、「がんばって」と突き放され、心も体も金縛りにあったように動けなくなってしまったのだ。 実は冒頭の「僕は運が良かった」と繰り返した男性も、そのひとりだった。 彼は地方の有名国立大学に進学しながらも、就職できずにフリーターの道に進み、結婚もできずに30歳を過ぎてしまったという。 「正社員の経験がないと、中途採用にも応募できない。年齢的にもどんどん厳しくなり、30を過ぎると応募できる会社自体がなくなる。周りの視線も厳しくなっていきました。『落ちこぼれ』『負け組』などと、自業自得と言わんばかりのレッテルを貼られ、自己嫌悪に陥りました。俺はなんてダメな人間なんだろう、って。ホント、最悪でした」 生活や将来への不安と、自尊心が限りなく低下し、「もうどうにでもなれ」とホームレスになったときに、たまたま出会ったのが焼鳥屋さんだった。 弱い立場にならないと見えない景色がある。彼が「僕は運が良かった」と繰り返したのは、その景色を見た経験があったからだ。 そして、「私たちの感触では、本当にいつ悲惨な事件が起きてもおかしくない」という赤石理事長の懸念も、その景色を実感できるからなのだろう』、「生活保護」バッシングのなかで、窓口担当者も、「もう少しがんばって」と励ますよう上司から指示されている可能性がある。
・『格差拡大で80年代以降先進国の貧困が問題に  そもそも先進国が相対的貧困を貧しさの指標に用いるようになったのは、1980年以降だ。それまでは絶対的貧困の方が重視されていたのだが、先進国で格差が広がり始めたことで、相対的貧困が注目されるようになった。 絶対的貧困が「人が生きていく上で最低限必要な生活」を主要な論点にしているのに対し、相対的貧困は「貧困がどの程度社会に容認されているのか?」という問題意識が根底にある。すなわち「広がり過ぎた格差=相対的貧困率」を捉えれば、貧困の背後に隠された低賃金の労働要因、ひとり親世帯や高齢者世帯などの家族要因、病気などの医療要因、学歴格差などの教育要因などを、時代を追って分析すれば「私たちの問題」を具体的に知ることができる。 例えば、経済格差が拡大し始めた1995~2001年の厚生労働省の「所得再分配調査」から所得の中央値と貧困線、貧困率を推定すると、中間層の所得水準は、1995年の284万円台から01年は262万円台に落ち込み、貧困ラインは142万から131万円と10万円低下。相対的貧困率は、15.2%から17%に上昇していたことが分かった。 そこで95年の貧困ラインを基準にして相対的貧困率を推定したところ、01年の貧困率は20%。なんと5世帯に1世帯が貧困ライン以下という、かなり衝撃的な状況になってしまったのだ(「日本の貧困と労働に関する実証分析」橘木俊詔、浦川邦夫)。) また、過去10年間における貧困率の上昇には、「単身世帯(主に単身高齢者世帯)」「高齢者の世帯」「大人1人と子供1人の世帯」の増加が影響していていることも分かっている(「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」平成27年12月18日)。 日本では貧困層の約9割が働いているので、ワーキングプアの割合を年齢階級と性別に見ると、もっと「今の日本社会の問題」が分かる。 
(ワーキングプア率=働いている層で世帯所得が相対的貧困線以下の人の割合のグラフはリンク先参照) ご覧の通り、男性のワーキングプア率は20代後半から減少し、50代になると増加に転じ70歳で急増する。一方、女性は25~29歳では低下するがそれ以外は一貫して男性より高く、70代になるとさらに差は広がっていく。 別の調査からは、この30年間で働き盛り世代の非正規化の問題も指摘されている。男性の25歳~34歳では4%から14.4%に増加し、そのまま高水準が続いている。 このような年齢別、性別格差をもたらしているのは、第1に、正規雇用と非正規雇用の賃金格差。第2に、男性と女性の雇用格差による賃金格差だ。非正規社員男性の生涯賃金は約6200万円、これは正社員の約4分の1(正社員男性=約2億3200万円。みずほ総合研究所の試算)。非正規の年収では、男性229万円に対し女性はわずか150万円になってしまうのだ。) ……とまぁ、数字を立て続けに紹介してしまったけど、とにもかくにも貧困ラインは年収122万円。月々の所得は10万円程度。その生活が、コロナ禍で突然途切れた。今すぐにでもお金が必要なのに、なかなか届かない。いつになったら次の仕事が見つかるか分からないのに、そのあとの支援は決まっていない現状がある。 個人的には今こそ、「ベーシックインカム(最低限所得保障)」を導入したらいいと考えている。ベーシックインカムの考え方自体は18世紀に生まれたものだが、1980年代以降、格差問題から注目され、「ピケティに次ぐ欧州の知性」と称されるオランダ人歴史学者のルトガー・ブレグマン氏により、さまざまな国で「導入実験」の機運が高まった。 ブレグマン氏は「Poverty isn’t a lack of character, it’s a lack of cash(貧困とは人格の欠陥によるものではない。貧困は現金の欠如によるもの)」と説き、ホームレスなどは最初から怠惰だったわけではないし、貧困層が薬物をより頻繁に使用するのは、基本的欲求(寝食住)が満たされていないからだと訴えた』、「貧困とは人格の欠陥によるものではない」、とは言い得て妙だ。
・『現状はベーシックインカムを再考する機会  2年前に、こちらのコラムで取り上げ、みなさんからご意見を募集したところ、たくさんの前向きな意見、懸念点などを書いていただいた(参考コラム:「働かなくてもカネがもらえる」から働くんです)。 残念ながら、サイトが変わってしまいコメント欄が削除されてしまったのでそれを見ることができないのだが、「財源の問題」が多かった。 ならば、今こそ、困窮している人たちに焦点を絞った追加の経済対策を盛り込み、実証実験も兼ねてやってみてはどうだろうか』、最近は新自由主義旗手の竹中平蔵までがベーシックインカム導入を主張しだしたようだ。彼の主張は、代わりに社会保障などを廃止するというドラスチックで、乱暴極まりないもののようだ。河合氏はそこまで考えてはいないのではあるまいか。

次に、9月16日付け東洋経済オンラインが掲載した京都女子大学客員教授・京都大学名誉教授の橘木 俊詔氏による「35歳超の非正規男性が悲惨なほど困窮する現実 正社員と違い年齢を重ねても賃金が上がらない 」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/375140
・『1990年代半ばから2000年代前半の「就職氷河期」。その影響を全面に受けた世代が今、大きな格差に直面している。一度レールから落ちてしまった人に厳しい日本社会の特徴が、就職時期に「機会の平等」を享受できなかった中年世代の上に重くのしかかっている。 しかし、それは決して特定の世代の問題ではない。「今の40歳前後に苦しい生活を送る人が多い因縁」(2020年9月1日配信)、「今の30~40代非正規を待つ『極貧』老後の超不安」(同9月8日配信)に続き、格差問題に取り組み続けている橘木俊詔氏の新刊『中年格差』から、本書の一部を抜粋・再編集してお届けする』、興味深そうだ。
・『非正規雇用者の厳しい労働条件  格差社会に入った日本において、それを説明する根拠として1つ重要なのが、労働者の雇用形態における正規労働と非正規労働の対比である。細かいことを言えば両者の定義はそう単純ではないし、しかもあいまいさが残るものである。 しかしわかりやすい定義をすれば、正規はフルタイムで働いており、しかも雇用期間は無限が原則であるのに対して、非正規は労働時間が短くかつ雇用期間が無限ではない、ということになる。 前者は正社員と呼ばれ、後者は非正社員と呼ばれることもある。両者間に賃金を含めた労働条件にかなりの格差があり、ここ数十年間の不況経済の継続によって非正規労働者の数が激増したことで低所得の人を多く生み、高所得の正規労働者と低所得の非正規労働者の併存というのが、格差社会の1つの象徴となったのである。 非正規労働は、労働時間が短く、雇用期間に定めがあるのが2大特色であるが、これに関連していくつかの特性がある。 +解雇通知があらかじめあればいつでも解雇できる +労働時間も企業側の都合によって自由に変更できる +ボーナス支払いのない場合が多い +労働時間が特に短ければ(例、週20時間以下)社会保険制度(年金、医療、失業など)に入る資格がない  などである。これらの諸特性を知ると、非正規労働者の労働条件は悪いと言わざるをえない。なお、派遣社員やアルバイトも非正規のカテゴリーに入る。 非正規労働者の急増を統計で確認しておこう。下記の図(2-3)は、ここ20年弱の間に、形態別に非正規の人がどのように増加してきたかを示したものである。(図はリンク先参照) まず全体で見ると、1984(昭和59)年が604万人だったところ、2017(平成29)年には2036万人に達しており、実に1400万人ほどの急増加である。労働人口に占める比率も、15.3%から37.3%へと22%ポイントの増加であるし、現代ではほぼ40%弱の人が日本では非正規で働いているという異常さにいる。 異常さというのは少し誇張を含んでいる。非正規の人でも意図的にそれを望んでいる人(特に既婚女性のパート、学生のアルバイト)がかなりいるからである。とはいえ、たとえ意図的に非正規労働を選択しているとしても、賃金などの労働条件が悪いという事実は厳然と存在している。 ところで非正規労働者のうち、もっとも多いのはパート労働であり、およそ半数を占めている。これは既婚女性と高齢者に多い。次いで20.5%のアルバイトであり、これは若者や学生に多い。この両者、すなわちパート労働とアルバイトの増加が、非正規労働の急増を説明する重要な要因である』、「ほぼ40%弱の人が日本では非正規で働いている」、「非正規」の比率はやはり異常に高いようだ。
・『中年期の人に非正規労働者はどれだけいるか  本記事のポイントとなるのが、年齢別に見た場合に、中年期の人に非正規労働者がどれだけいるかだ。下の図(2-4)で総計と年齢別の動向を示した。 (図はリンク先参照) 2017(平成29)年でもっとも非正規労働者の多いのは、421万人(20.7%)の55~64歳である。次いで413万人(20.3%)の45~54歳である。これら後期中年期の人(45~64歳)に非正規労働が多いのである。これに前期中年期(35~44歳)を加味すると、中年層に多くの非正規労働者のいることがわかり、まさに不況の影響を直接に受けた世代の代表とみなしてよい。 それを証明するもう1つの手段は、各年齢別に増加率を見ることにある。1992(平成4)年から2017(平成29)年まで、15年間ほどの増加率を計算してみた。15~24歳で1.53倍、25~34で2.17倍、35~44歳で1.48倍、45~54歳で1.97倍、55~64歳で2.64倍、65歳以上で5.54倍となる。 もっとも高い増加率の見られる年代は高齢者である。定年などによる退職後も週に2~3日とか、1日に4~5時間とか働くのは健康に良いし、高齢者の持っている技能を若い年齢の人に教える機会もあるので、この増加は悪いことではなくとても好ましい。 次いで高い増加率は45~64歳の中年層の2.64倍と1.97倍であり、長い深刻な不況が中年層に及ぼした影響力の大きいことを物語っている。このうちのかなりの割合は、若い頃や中年期にバブル後の不況によって職探しに苦労して、失業の状態からやっとのことで非正規の仕事が得られたか、それともずっと以前から非正規労働を続けているか、のどちらかである。いずれにせよ、中年期の人が非正規で働いており、経済的に苦労している姿が明らかである。 では、どれほどの経済的な苦痛の下にいるかを確認しておこう。下の図(2-5)は雇用形態別、男女別に正規労働者と非正規労働者の間でどの程度の賃金差があるかを示した。 (図はリンク先参照) これは年齢別に見ていない平均像の姿である。男性の非正規労働の賃金は正規労働者の約6割強、女性の場合には約7割の賃金しか受領していない。男性のほうに格差の大きいのは、男性の正規労働者の中には管理職に就いている人が女性に比較してかなり多く、平均して男性の正規労働者の賃金が高くなるからである。一方の女性では管理職が少ないので、正規労働であっても賃金は低く、したがって格差は小さくなるのである』、「長い深刻な不況が中年層に及ぼした影響力の大きいことを物語っている。このうちのかなりの割合は、若い頃や中年期にバブル後の不況によって職探しに苦労して、失業の状態からやっとのことで非正規の仕事が得られたか、それともずっと以前から非正規労働を続けているか、のどちらかである。いずれにせよ、中年期の人が非正規で働いており、経済的に苦労している姿が明らか」、就職氷河期の影響がその後も続いているようだ。
・『正社員は年齢とともに賃金上昇を続けるのに  もう1つこの図から読み取れることは、男性と女性を比較すれば、正規と非正規ともに女性のほうが男性よりも水準としての賃金が低いということである。これは女性差別もあるが、一般に教育水準と就いている職業、そして管理職の地位などで女性が男性よりも低い点の効果もある。 むしろ衝撃的な事実は、年齢別に見た結果に出現する。下の図(2-6)は、一般労働者(正社員と非正社員の両方がいる)と短時間労働者(正社員と非正社員の両方がいる)の間で、1時間あたり賃金額が、年齢でどう異なるかを示した。 (図はリンク先参照)  ここでは正社員と正社員以外の格差と一般労働者と短時間労働者に注目してみよう。この図でわかることは、若年層(~19歳から29歳頃まで)は正社員と非正社員の間で時給はそう変わらないが、30歳を超える頃から賃金が開き始め、そして30歳から35歳を超えると、まず正社員の人の賃金は急カーブで上昇するが、正社員であっても短時間労働の人はなんと賃金は低下に転じるということだ。 そして、もっと強調すべきことは、正社員であれ非正社員であれ、短時間労働の人の賃金は年齢を重ねても変化しない点である。正社員の一般労働者だけが年功序列の恩恵を受けて、賃金は上昇を続けるのである。この結果が50~54歳になると、それらの人はかなり高い賃金を得ており、他の労働者との格差は非常に大きくなっているのである。 では一方の非正社員の人の賃金はどうかといえば、年功序列という勤続年数による賃金増加はなく、中年になっても時給が1100円前後であり、それが高年まで続く。30歳から49歳までの時給は1100円で、たとえ1日に8時間、月に22日というようにあたかもフルタイムのように働いたとしても、月額で19万円前後の賃金にしか達しない。現実は労働時間が短いので、この額より低いのは確実である。一般労働者としての非正社員の時給を1300円とみなして同じように月額賃金を計算しても、おおよそ23万円程度にしかならない』、「非正社員の人の賃金はどうかといえば、年功序列という勤続年数による賃金増加はなく、中年になっても時給が1100円前後であり、それが高年まで続く。30歳から49歳までの時給は1100円で、たとえ1日に8時間、月に22日というようにあたかもフルタイムのように働いたとしても、月額で19万円前後の賃金にしか達しない」、就職氷河期の影響で一旦、「正社員」になり損ねると一生低賃金にあえぐとは、余りに不条理だ。
・『未婚者であれば結婚して家庭を持つ人生は不可能  これら中年になってから20万円弱、あるいは高くても23万円の月額の収入であれば、生活が非常に苦しいことは確実である。所得税を払っているかどうかは課税最低限所得あたりなので、ゼロかとても低い所得税しか課せられないであろうが、社会保険料負担がもしあればそれが控除されるので、可処分所得はもっと低くならざるをえない。既婚者で子どもがいれば生活保護支給を必要とするほどの生活困窮者になること確実である。未婚者であれば結婚して家庭を持つという人生は不可能である。 さらに付言すれば、ここで挙げた時給の額は、該当する労働者の平均額であり、この平均額より低い額の賃金しか受領できない人が相当数いることを忘れてはならない。これらの人を貧困者とみなせることは当然であり、悲惨な経済生活を強いられているのである。 ただしここで留意すべきことがある。後に示すように、中年の非正規ないし非正社員の労働者の多くは女性、特に既婚女性で占められている。中年で単身の女性、ないし男性でここに該当する人はそう多くない。 こういう人が該当しているなら中年貧困者とみなしてよいが、多くを占める既婚女性においては夫の収入が充分にあれば、貧困の状態にはいないと解釈してよい。ただし、夫が失業しているとか、夫の収入が低ければたとえ夫婦が働いていたとしても、貧困者になる可能性はある。 もう一つ重要な留意点は、中年の女性で離婚した人は、一部のキャリアウーマンでフルタイムで働いていた人を除いて、一気に貧困者になってしまう点である。特に専業主婦だった人、パートなどの非正規労働であった女性は、技能の程度が低いだけに、離婚後に賃金の高い仕事を探しても、なかなか見つけられないのは確かである。 日本では男性よりも女性が離婚後に子どもを引き取る確率がかなり高い。子どもを引き取った女性であれば、生活費を一人で負担できるほどの収入はない。母子家庭の貧困者の生まれる理由がここにあり、およそ50%の母子家庭が貧困に陥っている現状がある』、「およそ50%の母子家庭が貧困に陥っている」とは深刻だ。別れた夫からの扶養手当などが離婚時の約束通り支払われない場合も多いだろう。簡便な救済手段の検討も必要だろう。
タグ:正社員は年齢とともに賃金上昇を続けるのに 非正社員の人の賃金はどうかといえば、年功序列という勤続年数による賃金増加はなく、中年になっても時給が1100円前後であり、それが高年まで続く。30歳から49歳までの時給は1100円で、たとえ1日に8時間、月に22日というようにあたかもフルタイムのように働いたとしても、月額で19万円前後の賃金にしか達しない 相談に行ったことがさらなる貧困のきっかけに 長い深刻な不況が中年層に及ぼした影響力の大きいことを物語っている。このうちのかなりの割合は、若い頃や中年期にバブル後の不況によって職探しに苦労して、失業の状態からやっとのことで非正規の仕事が得られたか、それともずっと以前から非正規労働を続けているか、のどちらかである。いずれにせよ、中年期の人が非正規で働いており、経済的に苦労している姿が明らか 『中年格差』 「新型コロナが追い打ち「月収10万円」貧しさの現実」 (その3)(新型コロナが追い打ち「月収10万円」貧しさの現実、5歳超の非正規男性が悲惨なほど困窮する現実 正社員と違い年齢を重ねても賃金が上がらない) 非正規雇用者の厳しい労働条件 最近は新自由主義旗手の竹中平蔵までがベーシックインカム導入を主張しだしたようだ。彼の主張は、代わりに社会保障などを廃止するというドラスチックで、乱暴極まりないもののようだ。河合氏はそこまで考えてはいないようだ 「およそ50%の母子家庭が貧困に陥っている」とは深刻だ 就職氷河期の影響で一旦、「正社員」になり損ねると一生低賃金にあえぐとは、余りに不条理だ 未婚者であれば結婚して家庭を持つ人生は不可能 就職氷河期の影響がその後も続いているようだ 中年期の人に非正規労働者はどれだけいるか 「非正規」の比率はやはり異常に高いようだ ほぼ40%弱の人が日本では非正規で働いている 「35歳超の非正規男性が悲惨なほど困窮する現実 正社員と違い年齢を重ねても賃金が上がらない 」 橘木 俊詔 東洋経済オンライン 現状はベーシックインカムを再考する機会 貧困とは人格の欠陥によるものではない ワーキングプア 日本では貧困層の約9割が働いている 格差拡大で80年代以降先進国の貧困が問題に 「生活保護」バッシングのなかで、窓口担当者も、「もう少しがんばって」と励ますよう上司から指示されている可能性がある 日本の相対的貧困率はG7(先進7カ国)でワースト2位、ひとり親世帯に限るとOECD(経済協力開発機構)加盟国35カ国中ワースト1位 新型コロナの影響で貧困問題も表面化 河合 薫 日経ビジネスオンライン 貧困問題
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