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尖閣諸島問題(その6)(米軍は「尖閣を守る根拠なし」 日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ、「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」) [外交]

尖閣諸島問題については、10月4日に取上げた。今日は、(その6)(米軍は「尖閣を守る根拠なし」 日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ、「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」)である。

先ずは、11月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「米軍は「尖閣を守る根拠なし」、日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254873
・『菅義偉首相は11月12日、バイデン次期大統領と電話会談を行い、「バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があった」とコメントしている。そもそも「5条」の意味するところは何か、それで尖閣が守られるのか』、興味深そうだ。
・『安倍政権や菅政権がこだわる日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用(米国大統領選挙の結果、民主党候補であるバイデン前副大統領が次期大統領に選出されたとされている。「されている」というのは、共和党候補であるトランプ現大統領がバイデン候補の勝利を認めず、「不正があった」として選挙の無効を主張するとともに、法廷闘争に持ち込む可能性を示唆していることによる。 そうした中、菅義偉首相は、11月12日にバイデン次期大統領(便宜上そう記載する)と電話会談を行っている。その詳細な中身は明らかではないが、首相官邸のサイトに掲載された情報によると、以下のとおりとのことである(※カッコ内は筆者追記)。) 「私(菅総理)から、日米同盟は、厳しさを増すわが国周辺地域、そして国際社会の平和と繁栄にとって不可欠であり、一層の強化が必要である。その旨、また、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、日米で共に連携していきたい、こうした趣旨を申し上げました。 バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があり、日米同盟の強化、また、インド太平洋地域の平和と安定に向けて協力していくことを楽しみにしている旨の発言がありました。 また、コロナ対策や気候変動問題といった国際社会共通の課題についても、日米で共に連携していくことで一致しました。 拉致問題への協力も、私から要請いたしました」 いつまで「日米同盟」という意味不明の呼称を使い続けるのかという点や、その強化とは何を意味するのかこの人は理解できているのだろうか、といった点は脇に置いておくとして、本稿で取り上げたいのは、「日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があり」という部分。 安倍政権においても米国大統領の訪日の際に確認が行われ、それを言ってもらうために貿易協定等において大幅譲歩(というより献上と表現した方がいいか)が行われたようであるが、いずれにせよ、安倍、菅両政権ともこの点を相当重要視しているようである。 加えて、野党からも、例えば国民民主党の玉木雄一郎代表も、この点が確認されたことを積極的に評価している』、「「日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明・・・安倍政権においても米国大統領の訪日の際に確認が行われ、それを言ってもらうために貿易協定等において大幅譲歩・・・が行われた」、これしきの発言を引き出すため、「貿易協定等において大幅譲歩」、とは正気の沙汰とは思えない。「国民民主党の玉木雄一郎代表も、この点が確認されたことを積極的に評価」、情けない話だ。
・『日米安全保障条約第5条の意味するところは?  本件のポイントは、日米安全保障条約第5条の意味するところ、そしてその適用範囲如何である。 まず第5条の意味についてであるが、同条前段は以下のとおり規定されている。 「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」 この条文のこの部分をもって、アメリカに日本防衛義務があるなどと言われることがあり、そのように説明するメディアや政治家は少なくない。 しかし、この条文をよく読めば、「防衛義務」という言葉もなければ、その根拠となりうる記載も見当たらない。あくまでも日米それぞれが、それぞれの国の憲法の規定及び手続きに従って対処するよう行動すると書いてあるだけであり、その中身が米国にあっては日本を防衛する軍事行動、物理的力の行使であることが一義的に明らかなわけでもない。従って単に非難するだけかもしれない。 あくまでもそれを「宣言」しているだけである。 本条約は日英両語で作成されたものがそれぞれ正文(正式な文書)であるので、英文の同じ箇所を抜き出せば以下のとおりである。 「Each Party recognizes that an armed attack against either Party in the territories under the administration of Japan would be dangerous to its own peace and safety and declares that it would act to meet the common danger in accordance with its constitutional provisions and processes.」  「would」が使われていることからしても、いかなる義務も導き出すことは困難である。 つまり、あくまでも各国の国内手続きに従って、「各国の判断で対処するとされているだけである」ということである。それを「日本防衛義務がある」などとするとは、拡大解釈も甚だしく、「妄想幻想の世界」もいいところである』、「「日本防衛義務がある」などとするとは、拡大解釈も甚だしく、「妄想幻想の世界」もいいところである」、というのは確かだ。
・『日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことも  次に、適用範囲如何について、焦眉の課題は尖閣諸島への適用如何ということのようであるが、日米安全保障条約では「日本国の施政の下にある領域における」とされている。尖閣諸島については日本の領土である旨、政府はかねてから主張してきており、少なくとも日本の実効支配下にある。従って、当然に日米安全保障条約第5条の適用範囲に含まれると考えるのが適当である。 ただし、曲者なのは「施政下にある」という表現。「領土」や「領海」という表現は使われていない。この点については11月12日午前6時25分公開のBloombergの記事においても次のとおり指摘されている。 「The U.S. recognizes the disputed islands as administered by Japan, rather than saying they are part of the country.」 つまり、米国からすれば、尖閣諸島は日中両国による「係争地」であり、いずれの領土であるとも認識せずに、ただ単に日本の施政下にあるということだけを認識しているということであり、日米安全保障条約第5条における規定もそうした考え方に基づくか、そうした考え方を反映したものであるということである。 ということは、仮に中国軍の艦船なり、中国の海上保安庁に当たる海警の船舶が、間隙を突いて尖閣諸島に接岸し、上陸して実効支配を始めた場合は、日本の施政下からは外れたことになりえるので、日米安全保障条約第5条の適用範囲から外れることにもなりかねない。 そうなった場合、日米安全保障条約第5条は、尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことになる。 「そんなことをさせない、そうならないためにも日米安全保障条約第5条の確認なのだ」といった反論が返ってきそうだが、米国に日本防衛義務がない以上、そして「米国の国益」にとってプラスとならないのであれば、米国軍は尖閣諸島防衛のために何ら行動することはないだろう』、「仮に中国軍の艦船なり、中国の海上保安庁に当たる海警の船舶が、間隙を突いて尖閣諸島に接岸し、上陸して実効支配を始めた場合は、日本の施政下からは外れたことになりえるので、日米安全保障条約第5条の適用範囲から外れることにもなりかねない。 そうなった場合、日米安全保障条約第5条は、尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことになる」、驚くべきことだが、確かに米国がそのように解釈しても文句は言えないようだ。。
・『「脱ハンコ」や「携帯料金の引き下げ」の方が安全保障よりも優先すべき課題なのか  要するに日本が「自ら何とかするしかない」「自力で守るしかない」ということなのだが、日米安全保障条約の尖閣諸島への適用について確認することに執心する一方で、中国の海警による尖閣諸島海域への侵入が繰り返されているにもかかわらず、何ら具体的かつ積極的な行動を起こしていないのが実態である。 その背景には、緊縮財政で海上保安庁が十分な人員や艦船などの装備が保有できていないことと、その積極的活動を担保する法制が不十分であることがある(本稿の目的は問題点の指摘にあるので、こうした点についての詳細な解説は別稿に譲ろう)。 いつ「絵に描いた餅」に化するか分からない空文に、後生大事にしがみついている暇があったら、海上保安庁の体制強化のための歳出の拡大と、領域警備法等の関連法性の整備を急ぐべきである。 それよりも「脱ハンコ」や「携帯料金の引き下げ」、「インバウンド」に「カジノ」が優先と言うのであれば、菅首相は具体的かつ物理的にわが国の領土を失った戦後最初の首相として、歴史にその名を刻むことになるだろう』、「日米安全保障条約」の重要部分の解釈で国民に嘘をついているとは罪が深い。「海上保安庁の体制強化のための歳出の拡大と、領域警備法等の関連法性の整備を急ぐべき」、同感である。

次に、12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経産省出身の評論家の中野剛志氏による「「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256426
・『11月24日の日中外相共同記者会見における王毅外相の「尖閣諸島」に関する発言と、その場で反論しなかった茂木外相に対する強い批判が巻き起こったのは当然のことだった。しかし、問題の本質はそこにはない。直視しなければならないのは、中国が爆発的に軍事力を強化した結果、東アジアにおける軍事バランスが完全に崩壊したことだ。アメリカが、東アジアにおける軍事的プレゼンスを維持する「能力」と「意志」を失いつつある今、この10年を無策のまま過ごしてきた日本の「地政学リスク」は、明らかにレッドゾーンに突入した。日本は、あまりに過酷な現実に直面している』、「王毅外相」の発言は、「日本の漁船が絶えず釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な水域に入っている」と述べた。日本側が「事態を複雑にする行動」を避けるべきだとも主張」、「先に発言した茂木氏は「中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調。「外務省は「ルールとして反論するような場ではなかった」と説明」(日経新聞11月26日)。「中国が爆発的に軍事力を強化した結果、東アジアにおける軍事バランスが完全に崩壊したことだ。「アメリカが、東アジアにおける軍事的プレゼンスを維持する「能力」と「意志」を失いつつある今、この10年を無策のまま過ごしてきた日本の「地政学リスク」は、明らかにレッドゾーンに突入した」、厳しい現状認識だ。
・『すでに絶望的なまでに広がった、日本と中国の「軍事力の差」  2020年は、パンデミックにばかり注目が集まっている。しかし、後世の歴史家は、この年を、東アジアにおける国際秩序の転換点として記録することだろう。 2020年5月、東アジアの軍事情勢研究の権威であるトシ・ヨシハラが、「過去十年間で、中国海軍は、艦隊の規模、総トン数、火力等で、海上自衛隊を凌駕した」とする重要な分析を公表した。 その中で、ヨシハラは、「今日の中国の海軍力は十年前とは比較にならない。中国海軍に対する従来の楽観的仮定はもはや維持不可能である」と指摘した。 ヨシハラは、日中の戦力を詳細に比較しているが、一例をあげると、図のように、中国の軍事費は日本の5倍にもなっている。この結果、中国の政治家や軍の指導者は、自国の軍事的優位に自信をもつに至った。今後、中国は、尖閣諸島など局地的な紛争において攻勢的な戦略を採用するであろうとヨシハラは論じた。 要するに、東アジアの国際秩序を支えてきた軍事バランスが崩壊しつつあるというのだ。 どうして、こうなってしまったのか。先ほどの図を見れば一目瞭然であろう。中国はこの20年間、軍事費を急増させてきたが、日本の防衛費はほぼ横ばいである。これでは、軍事バランスが崩れるのも当然である』、「中国はこの20年間、軍事費を急増させてきたが、日本の防衛費はほぼ横ばいである。これでは、軍事バランスが崩れるのも当然である」、やむを得ないが、日本としての対応はますます難しくなる。
・『この10年の「日本」の過ごし方が、「致命的」であった理由  特に、ヨシハラも言うように、過去10年間が決定的であった。 ちょうど10年前、ヨシハラは、ジェームズ・ホームズ海軍大学教授とともに『太平洋の赤い星』(バジリコ刊)という著作を発表した。 その中で、二人は、中国の戦略研究家たちが鄧小平の「改革開放」以降、海洋戦略家アルフレッド・T・マハンへの関心を強めてきたことに着目した。マハンに学んだ中国の戦略研究家たちは、国際貿易や経済発展のためには海洋進出が必要であり、そのためにはシーレーンの支配が必要だと考え、強力な海軍の建設を目指しているというのである。 冷戦終結後の世界では、グローバル化が進展することで国家は後退し、領土をめぐる国家間の紛争は無意味になるという楽観論が支配していた。日本もこの楽観論を信じた。ところが、中国は、グローバル化が進むからこそ海軍力が必要になるという、日本とはまったく逆の戦略的思考に立っていたのである。 ヨシハラとホームズは、警告を発した。 「今日の西側の研究者たちは、地政学に注意を払わず、グローバル化と相互依存の時代には、絶望的に時代遅れで無関係なものとみなしている。彼らは、国際政治における地理の役割を軽視し、その過程で、自分たちの世界観を他の大国にも当てはめる。しかし、中国の学界の大多数は、まさに正反対の方向に向かっているのは、文献から明らかだ。」 なお、ホームズは、2012年、日中間で尖閣諸島をめぐる軍事衝突が起きた場合のシミュレーションを考察し、日本は、米軍の支援が得られれば、苦戦しつつも勝利するだろうと結論した。つまり、当時はまだ、日本はぎりぎり領土を守れたのだ。 しかし、それから今日までに、中国は軍事費を1.5倍以上にしたというのに、日本の防衛費は微増に過ぎなかった。 この決定的な10年間、日本はいったい何をやってきたのか。 安倍前政権は、TPP(環太平洋経済連携協定)など自由貿易を推進し、集団的自衛権の行使を認める法整備を推進してきた。要するに、グローバル化と日米同盟の強化が、外交戦略の柱だったのだ。 しかし、ヨシハラとホームズが警告したように、中国はグローバル化と共に海軍力を強化していた。したがって、グローバル化は、中国の軍事的な脅威の増大を招くものと認識すべきだった。ところが、日本はその認識を欠き、防衛力の強化を怠った』、「中国はグローバル化と共に海軍力を強化していた。したがって、グローバル化は、中国の軍事的な脅威の増大を招くものと認識すべきだった。ところが、日本はその認識を欠き、防衛力の強化を怠った」、中国に対抗して「防衛力の強化」をするには、膨大な防衛費が必要になるので、「防衛力の強化を怠った」のはやむを得ない。
・『米国に「守ってもらえる」時代は終焉を迎えた  他方で、日本は日米同盟の強化に努めてはきた。しかし、問題は、肝心の米国の軍事的優位が、この10年間で失われたことにある。 10年前、米国の軍事費は中国の5倍あった。それが、今では3倍程度しかないのだ。「3倍もあるではないか」と楽観するのは間違っている。中国は自国の周辺に戦力を展開しさえすればいいが、米国は太平洋を越え、あるいはグアムや沖縄など点在する基地から戦力を投射しなければならない。この地政学的不利を考慮すると、米中の軍事バランスはもはや崩れたと言うべきだ。 実際、2018年、米議会の諮問による米国防戦略委員会の報告書は、もし米国が台湾を巡って中国と交戦状態になったら敗北するだろうと述べている。また、2020年の米国防省の年次報告書は、中国の軍事力がいくつかの点で米国を凌駕したと認め、その一例として、中国が、すでに米国より多くの戦艦等を有する世界最大の海軍国家であると指摘している。 米国は、中国の侵略を抑止する能力だけでなく、その意志も失いつつある。昨年のある調査によると、「近年の中国のパワーと国際的な影響力の著しい増大に対して、米国の対中政策はどうあるべきか」という問いに対して、米国民の57.6%が「アジアの軍事プレゼンスを削減すべき」と回答している。 しかも、2020年は大統領選で国が分断され、政権移行で混乱し、さらにコロナ禍によって現時点で27万人以上もの死者を出している。こんな状態の米国が、尖閣諸島をめぐる日中の軍事衝突が起きた場合に、日本を支援する能力そして意志がどれだけあるというのか。 菅義偉首相は、11月12日、バイデン次期米大統領との電話会談で、日米安保条約が尖閣諸島に適用されることを確認した。しかし、バイデン政権移行チームからの発表には、「尖閣」の文字はなかった。 2020年――。 それは、日本が米国に守ってもらえた時代の終わりが始まった年なのである』、「米国民の57.6%が「アジアの軍事プレゼンスを削減すべき」と回答」、しているような状況では、「日米安保条約」で尖閣奪還してもらおうと期待するのは無理なようだ。日本として、核保有国の中国に如何に対抗すべきかについては、極めて難しい問題なので、今日のところは回答を留保したい。
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