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パンデミック(医学的視点)(その17)(「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要、意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由、「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない) [国内政治]

パンデミック(医学的視点)については、9月16日に取上げた。今日は、(その17)(「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要、意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由、「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない)である。

先ずは、12月11日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの沙鴎 一歩氏による「「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/41327
・『来年12月までにイギリス国民の3割に接種する計画  イギリスで12月8日、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの接種がスタートした。ワクチンはアメリカのファイザーとドイツのビオンテックが共同で開発したもので、国民への大規模な接種は先進国ではイギリスが初めてだ。アメリカも近く接種を始める。同じワクチンは日本へも供給される。 報道によると、イギリスでの接種は重症化しやすい80歳以上の高齢者のほか医療関係者らが優先され、来年12月までに4000万回分(2回接種で2000万人分)の供給を受け、イギリス国民の3割に接種する。この12月中に500万回分が供給される。 イギリスの感染死は6万人に達している。このため政府が早期接種の実現を目指して12月2日にワクチンを緊急承認し、その6日後に接種を始めた。ジョンソン首相は「来年4月のイースター(キリスト教の復活祭)のころには、社会・経済活動の制限から抜け出せる。ワクチンを開発した科学者に感謝したい」と語っていたが、ジョンソン氏の思惑通りにことが運ぶとは限らない。 ワクチンに期待を寄せるのは当然だろう。しかし、ワクチンは人間の体にとって異物だ。多くの人が接種すれば、必ず副反応の訴えが出てくる』、日本での接種については、12月9日付け東京新聞によれば、厚労省幹部は「本年度中にも(高齢者や基礎疾患のある人などに)接種していきたい」、とのことだ。
・『人体にもたらす作用がすべて解明されているわけではない  とくに今回のワクチンは、人工合成した新型コロナウイルスの遺伝子の一部を使う初めてのワクチンで、人体にもたらす作用がすべて解明されているわけではない。しかも常温だとすぐに効果が失われてしまうため、氷点下70度という超低温での冷凍保存が欠かせない。超低温保存でも保管の有効期限は半年しかない。有効な獲得免疫を得るために接種が2回必要になる。 安全性と有効性を見極め、輸送と保存の冷凍施設をどう確保するか。ワクチン供給という問題はこれからが正念場である。 今回のワクチンは「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」と呼ばれる遺伝子ワクチンである。製造方法などがこれまでのワクチンとはまったく違う新しいタイプのワクチンだ。 病原体のウイルスを複製するメッセンジャーRNAの断片を人体に投与することで、ウイルスの一部のタンパク質(抗体)が細胞内で合成され、発症や重篤化を防ぐ免疫が獲得できる。 製造・開発に5年ほどかかる既存のワクチンと違い、遺伝子ワクチンは製造・開発時間が極めて早く、効き目も高いとされている。インフルエンザやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)といった感染症、がん、アルツハイマー型認知症の予防と治療への応用などが期待されている。しかし、これまで遺伝子ワクチンが承認され、実用化に踏み切った例はなかった。今回のイギリスが最初になる』、「遺伝子ワクチン」は今回が「最初になる」、ので分からない部分も多いのだろう。
・『英国では2人が、接種直後に「アナフィラキシー」に  注目すべきニュースがある。英メディアによると、12月8日、高齢者らとともに接種したNHS(国民保健サービス)のスタッフ2人が、接種の直後に「アナフィラキシー」と呼ばれる激しいアレルギー反応を示したという。2人は過去にも強いアレルギー反応が出たことがあり、症状を抑える注射薬を所持していた。2人は手当てを受けて回復した。 イギリスの規制当局は「臨床試験(治験)ではアナフィラキシーなどは出なかった」としながらも、医療関係者にこれまでにワクチンや薬、食物でアナフィラキシー症状が出たことがある人には、「ワクチンを投与しない」と一時的な勧告を出した。 なお、ここでは人体の抗原抗体反応を利用するワクチンには「副反応」、ワクチン以外の薬剤には「副作用」という表現を用いる』、「2人が、接種の直後に「アナフィラキシー」と呼ばれる激しいアレルギー反応を示した」ので、「これまでにワクチンや薬、食物でアナフィラキシー症状が出たことがある人には、「ワクチンを投与しない」と一時的な勧告を出した」、なるほど。
・『ウイルス自体が大きく変異すると、ワクチンの効き目はなくなる  ファイザーとビオンテックが共同で開発した今回のワクチンは世界各国で臨床試験が実施され、「95%の有効性が見られた」との結果が示される一方で、副反応として倦怠感、頭痛、局所の腫れ、筋肉痛、関節痛などがみられた。臨床試験と違い、今後、接種が進むと世界で何十億人がワクチンの投与を受けることになり、その過程でこれまで見えなかった副反応が出るかもしれない。 新型コロナとウイルス構造がほぼ同じSARS(サーズ)のワクチンは、マウスへの投与で重い副反応が現れて失敗した。それにウイルス自体が大きく変異してしまうと、ワクチンの効き目はなくなる。このためコロナウイルスのワクチン製造は難しいとされてきた。 日本では過去には麻疹、おたふく風邪、風疹の三種混合のMMRワクチンで重度の副反応を引きこした失敗例がある。近年では子宮頸がんワクチンで一部の接種者に重い副反応が出たことから、厚生労働省の「積極的推奨」が中断されたままになっている。 子宮頸がんワクチンは、筋肉に届くように垂直に針を深く刺す筋肉内注射の痛みから神経障害などが出るとの見解もある。今回の新型コロナワクチンも同じ筋肉内注射で投与されるため、厚生労働省は同様の障害を懸念している』、この程度の「副反応」であれば我慢するしかないのだろうか。
・『世界で140以上の製薬会社が研究開発を行うワケ  WHO(世界保健機関)によれば、世界で140以上の製薬会社が新型コロナワクチンの研究開発を行っている。これだけ多くの製薬会社がワクチン開発に乗り出すのは、「成功すれば儲かる」という判断があるからだ。製薬では利益よりも安全を優先することが欠かせない。過去の薬害事件はその苦い歴史である。 沙鴎一歩はワクチンがすべて問題だとは考えない。安全で有効なワクチンも多い。しかし、今回の新型コロナのワクチンには未知の部分が多く、どうしても不安が残る。 新型コロナウイルスは日本では8割以上の感染者が他人に感染させていないし、感染しても80%以上が無症状あるいは軽症で治癒している。どのような患者が重症化するのかはわかってきており、重症化を防ぐ治療方法も確立しつつある。しかも日本の人口100万人あたりの感染死者数は欧米の数十分の1~100分の1以下とかなり低い。 こうした観点から見ると、日本に本当に新型コロナのワクチンが必要なのだろうかと思う。 ワクチンは薬と同じく両刃の剣である。役立つ反面、危険なところもある。バランスを取ることが大切だ。日本は欧米の接種動向とそれにともなう副反応の出現を注意深く見ながら、新型コロナに対する今後のワクチン政策を行っていくべきである。ワクチン接種で重い副反応が多く出るようならそれこそ、本末転倒だ』、「日本は欧米の接種動向とそれにともなう副反応の出現を注意深く見ながら、新型コロナに対する今後のワクチン政策を行っていくべきである」、その通りだ。
・『朝日社説はワクチンのリスクに正面から触れていない  12月10日付の朝日新聞の社説は「ワクチン接種 国の貧富問わず供給を」の見出しを付け、「暗闇の中にほの見えた光は、世界中の人をあまねく照らさなければなるまい」と書き出す。 通常、社説は冒頭で読者を引き込む必要がある。それだけにこの朝日社説を書いた論説委員は熟慮したのだろうが、見出しも書き出しもこれではいただけない。まるでワクチン礼賛の社説である。なぜ、ワクチンのリスクに正面から触れようとしないのか。 朝日社説は書く。「新型コロナウイルスの感染者は6800万人を超え、150万人以上の命が奪われた」 「異例の早さで承認されたことから、効果や安全性に対する疑問の声もある。それでも、感染拡大を食い止める切り札となることへの期待は大きい」 感染の拡大を防いで死者の数を減らせれば、副反応は二の次ということなのか。沙鴎一歩にはこの朝日社説が納得できない』、「社説」であれば、功罪をきちんと書き分けるべきだ。「朝日」も困ったものだ。
・『東京社説は「英ワクチン承認 安全性の確認を慎重に」  東京新聞は朝日社説よりも3日早く、12月7日付の社説で「英ワクチン承認 安全性の確認を慎重に」との見出しを立てた社説を掲載している。 その書きぶりはワクチンを礼賛する朝日社説とは違う。東京社説は日本のワクチン政策についてこう解説する。 「日本政府は、6千万人分の供給を受けることでファイザー社と合意している。今月2日には新型コロナのワクチンの費用を国が全額負担する改正予防接種法が成立した。早ければ年度内にも承認、接種が始まる可能性がある」 「ファイザー社は日本で160人を対象に初期段階の治験を実施している。数万人を対象に最終段階の治験を行うが、欧米に比べ感染者が少なく、十分なデータが集まらない場合、海外の治験結果と合わせ承認申請する方針という」 日本はワクチンの供給を受け、接種を待つばかりの状況ではあるが、問題の副反応への対応はどうなのか。 東京社説は書く。「厚生労働省は本格的な接種を始める前に、医療従事者ら約1万人を対象として接種後、健康状態を報告してもらう安全調査を実施する予定だが、副作用への不安はぬぐえない。来年に延期された東京五輪開催をにらみ、ワクチン承認に前のめりになりがちだが、英米などの先行例を十分分析し、有効性や安全性を慎重に見極めたい」 その通りだ。日本は英米などの先行例を十分分析してからでも遅くないはずだ』、同感である。
・『世界中で多くの人がワクチンを肯定的に捉えているが…  ところで、スイスでダボス会議を主催する非営利財団の「世界経済フォーラム」などが10月に日本やアメリカなど計15カ国1万8000人に対し、新型コロナワクチンについての意識調査を行ったところ、ワクチン接種に「同意する」と答えた人は15カ国の平均で73%、「同意しない」とした人は27%だった。世界の多くの人々がワクチンを肯定的に捉えている。 ワクチン接種に同意すると答えた人の国別の割合ではインドが87%で、これに中国85%、イギリス79%、日本69%、アメリカ64%、フランス54%だった。 同意しない理由として34%の人が「副反応への懸念」を挙げていた。副反応に対する不安解消は、欠かせない大きな課題である』、「ワクチン接種に同意すると答えた人」が「日本69%」とは意外に少ないようだ。背景には、厚労省のワクチン行政への不信があるのかも知れない。

次に、12月14日付けJBPressが掲載したステラ・メディックス代表取締役/編集者 獣医師の星 良孝氏による「意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63250
・『世界は、新型コロナウイルス感染症のワクチンの話題で持ちきりだ。そうした中で、さほど注目されていないが、一つ、筆者が気になるニュースがあった。 アストラゼネカが、ロシアのガマレヤ国立疫学微生物学研究所とワクチンで協力するというニュースだ。自社製ワクチンとロシア製ワクチンを組み合わせた臨床試験を始める。2020年の中頃は拙速な承認だと欧米諸国から批判を受けたロシアだが、ここに来てのアストラゼネカの協業は、ロシアのワクチンを評価するような動きにも見える。 かねて筆者はロシアのワクチンに対するアプローチが、ワクチンの弱点とされる点をうまくカバーしていると考えていた。今回、アストラゼネカがロシアの研究所と協業した背景とも関係しており、ワクチンの有効性を考える参考になると思い、その辺りについて考察する』、「ロシアのワクチンに対するアプローチが、ワクチンの弱点とされる点をうまくカバーしていると考えていた」、意外に進んでいるようだ。
・『「フェーズ3」を飛ばして承認したロシア  ロシアや中国は2020年の夏にいち早くワクチンを承認および緊急的に接種を開始したが、社会主義国家特有の強引さに対する偏見もあるのか、「有効性や安全性の検証がおろそかであり、あまりに拙速だ」と批判を浴びた。 確かに、ロシアは、1万人を超える健常者を対象とするような最終段階の臨床試験、フェーズ3をスキップして承認に踏み切った。リスクがあるので、そこは批判を浴びても仕方がない。中国も同様だ。 さらに言えば、欧米の中だけではなく、ロシア国内でもワクチンのフェーズ3を飛ばしたことは禍根を残している。 12月9日、ロシアの独立系英語メディアであるモスクワタイムズは、ロシアでは医療従事者などのエッセンシャルワーカーを対象にワクチン接種を進めていると報じた。 この記事では、ワクチン接種について医師らの不信感も募っている状況も示されている。医師らはワクチン接種を拒否している状況というのだ。「ワクチン接種を拒絶すれば、上司からクビを宣告されるかもしれない」と不安のコメントも載せている。 医師が接種に積極的になれない理由はフェーズ3の情報がないからだ。ワクチンに期待を抱いている一方で、様子見したい気持ちが強いようだ。こうした状況を見ると、通常を上回るペースでの開発プロセスは世界共通であり、欧米や日本でもワクチン忌避が課題になるのは間違いない。 ロシア国内も含め、ロシア産ワクチンには疑いの目がいまだに強いが、筆者からすると、社会主義国のワクチン開発は正々堂々としている面もあると、以前から感じていた』、「正々堂々としている面」とはどういうことだろう。
・『ワクチンの情報公開はしっかりしている中露  その理由は論文発表での情報公開の姿勢だ。特に中国だが、欧米で先行するアストラゼネカ&オックスフォード大学、ビオンテック&ファイザー、モデルナといった企業と比べて、早い段階から研究の詳細を中立的な論文で発表していた。 中国がフェーズ1の最初の論文報告したのは2020年5月のこと。中国から感染症が出たとされるので当たり前かもしれないが、欧米などから論文が出始めたのは2020年8月以降なので随分と早いという印象を持った。ロシアのガマレヤ研究所も拙速な承認だと批判されながら、フェーズ1/2の論文を9月に発表している。 こうした論文もまゆつばではないかと言われるかもしれないが、査読を経た論文であることは確か。論文発表後に、それに対する反論が発表される場合もあり、実際に出ていたが、ロシアのグループは誌上で疑問に対して回答を寄せている。 これらの情報公開がなかったら、中国やロシアへの風当たりはもっと強かっただろう。 2020年11月に、ロシアのグループはロシア製ワクチン「スプートニクV」が92%の有効性を示したと中間報告した。アストラゼネカとの協業につながったことからも分かるように、ある程度、それが欧米諸国から受け入れられたように見えるのは、9月の論文発表で科学的なデータを示した経緯があったからであるように思われる。ロシアのグループは現在4万人のボランティアを対象として、スプートニクV、あるいはプラセボを接種して、感染者の発生に差が出るかを調べている。20人のケースが出たところで、今回の有効性の結果を得たと説明している。 ロシアのワクチンについては、他国のワクチンにはない、特徴的な優位性がある。ロシアのワクチンは、1回目の接種と2回目の接種でワクチンを体内に届ける「運び屋」を変えている点だ。だからこそ、アストラゼネカはロシアとの提携に動いたという面があると見ている』、「ロシアのワクチンは、1回目の接種と2回目の接種でワクチンを体内に届ける「運び屋」を変えている」、とは確かに「特徴的な優位性」だ。
・『「運び屋」の弱点を補うロシア製ワクチン  どういうことかというと、ロシアのグループはワクチンの病原体の一部を、アデノウイルスという風邪のウイルスによって運ばせている。このアデノウイルスの中に新型コロナウイルスの遺伝情報を組み込んでいるが、1回目と2回目で、運び屋になるアデノウイルスの型が異なっているのだ。 わざわざ型を変えているのは、ワクチンの懸念点とかねて言われていた点をクリアするための設計思想が背景にあると考えられる。ロシアの研究グループは、論文の中で明確にその狙いを説明している。 そもそもワクチンとは、病原体の一部をあらかじめ免疫細胞に記憶させるという医療行為だ。新型コロナウイルスの一部が体に入ることで、それを異物と認識できるようになる。その結果として、ウイルスが本当に体内に侵入した時に抵抗することが可能になるのだ。 そのためには、何らかの方法で病原体の一部を体に送り込む必要がある。その方法として、たんぱく質の一部を断片として送り込む、病原体の一部を設計図としてDNAやRNAといった化合物に組み込んで送り込む、アデノウイルスのようなウイルスに設計図を組み込んで送り込む。このように送り込むワクチンを媒介するのが運び屋だ。英語ではベクター(vector)と呼ばれている。 問題は、運び屋に対して免疫反応が発動する場合があることだ。例えば、運び屋の一つであるアデノウイルスは風邪のウイルスなので、必然的に、体はこれに免疫反応を引き起こす。この反応が強くなると、ワクチンの本体となる新型コロナウイルスの病原体の一部を体内にうまく送り込めなくなる恐れがある。荷物を運ぶトラックが壊され、積み荷まで破壊されるようなイメージだ。そうなると、ワクチンの効果が下がる可能性があるわけだ。 ロシアのワクチンの優れたところは、運び屋を2回で別の型に分けていることだ。免疫反応は、以前に出合ったものに強く出るので、最初に接種した運び屋に対して体が備える免疫反応を避けることができる。2回目のワクチンのアデノウイルスは異なるので、備えたアデノウイルスに対する免疫反応が発動しづらくなる。 ロシアの9月の論文では、こうしたワクチンの設計を巡る背景を指摘している。 ワクチンの懸念点としてたびたび指摘されるのは、免疫反応ができることで感染を悪化させる「抗体依存性感染増強(ADE)」だ。このADEほどではないが、運び屋であるベクター自体に対する免疫反応も懸念の一つに数えられる。ロシアのワクチンはベクターに対する免疫反応を意識した作りになっている。こうしたワクチンはなかなか他にない。 このたびアストラゼネカがロシアと組むという方針が明らかになったが、アストラゼネカが採用しているベクターはチンパンジーのアデノウイルスで、ロシアのグループが採用している2種類のアデノウイルスともまた異なっている。ベクターが内包する課題を回避するような新しい設計を組めるわけだ。 世界がロシアのワクチンに注目する理由は、この設計思想にあると考える』、「ロシアのワクチンの優れたところは、運び屋を2回で別の型に分けていることだ」、「世界がロシアのワクチンに注目する」わけだ。
・『複数ワクチンの組み合わせに可能性  ロシアも感染症の押さえ込みには苦労している。米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、累計感染者は250万人を超えており、死亡者は4万5000人に達している。日本の10倍超の水準で、大きな第2波に見舞われている。ワクチン承認が拙速だと批判されたが、それだけ状況が緊迫しているということだろう。 ワクチン開発では、世界各国が従来以上に緊密な連携を取ることが重要だ。ワクチンを巡っては、ワクチンの供給を通して覇権を競うような見方もあるが、ロシアのワクチンを見ると、組み合わせていく方にこそ妙があるとも言える。 英国ではアストラゼネカとファイザーのワクチンの組み合わせが今後、検証される予定だ。ファイザーのワクチンはRNAという化合物を使っており、また別の運び屋が用いられている。ロシアのワクチンとの組み合わせを検証しつつ、他の組み合わせも確かめる意図があると推定される。有効性の向上につながる組み合わせを模索する余地は今後、開発されるワクチンの数だけある。小規模な企業のワクチンを、先行する世界的な製薬企業のワクチンを主に、それと組み合わせるような、コバンザメのような利用価値も出てくるかもしれない。 欧米のワクチンも有効性の疑問やアレルギーのリスクなど、依然として問題は残っている。日本でもワクチン開発は進められ、欧米と比べて遅れているとの指摘もあるが、単独での使用に加えて、他社のワクチンとの組み合わせも含め、存在価値を探る余地はまだまだ大きいと見える』、「組み合わせていく方にこそ妙があるとも言える。 英国ではアストラゼネカとファイザーのワクチンの組み合わせが今後、検証される予定」、なるほど。中国製の「ワクチン」にこの記事では触れられてないが、中国は途上国外交上のテコとして「ワクチン」を大々的に活用。ただ、ペルーでは被験者に神経症の症状が出たとして、治験を中止。他方で、アラブ首長国連邦(UAE)は9日、臨床試験で86%の有効性が確認されたと発表。「外交上のテコとして「ワクチン」を大々的に活用」、という「中国」のやり方も困ったものだ。

第三に、12月13日付けPRESIDENT Onlineが掲載した順天堂大学医学部教授の小林 弘幸氏による「「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/41221
・『日本で新型コロナの重傷者や死者が少ない要因を、京都大学の山中伸弥教授は「ファクターX」と名づけた。その正体はなにか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「さまざまな研究からファクターXは2つに絞られた」という——。 ※本稿は、小林弘幸著、玉谷卓也監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『アジア諸国と他地域の死者数の差  今回の新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックでは、アジアと欧米で大きく被害状況に差が出ました。欧米諸国の肥満率の高さなど健康水準のちがいが指摘されていますが、それだけでは説明できません。 日本では、中国のように強権的なロックダウンを行ったわけでも、台湾のように各国から賞賛される国家レベルの対策を打ったわけでもありません。 2020年4月の緊急事態宣言の発出によって感染の広がりをある程度抑えられたことは確かですが、欧米に比べ1カ月近く中国からの入国制限は遅れ、宣言発出まで満員電車は変わらずに走り続け、すでにかなりの数の国民に感染していることは明白でした。 しかし、PCR検査の体制が整わず、発症した患者にしか検査が行われなかったため、その実態も見えないままに時が経っていったのです。 それでも、世界、とくに欧米と比較すれば奇跡のように少ない発症者数、死亡者数で今日まで推移しています。国民の健康水準だけでなく、感染または発症を防いだ、なんらかの外的要因があったことは間違いないでしょう。 日本において被害が抑えられた未知の要因を、京都大学の山中伸弥教授は「ファクターX」と名づけ、その解明が進められています。ここでは、日本に限らず広くアジアの範囲で「ファクターX」について考えてみましょう』、「日本に限らず広くアジアの範囲で」、というのは「日本」だけよりも分析が深まる筈だ。
・『示唆的な「BCGワクチン」と「交差免疫」  まずは、新型コロナウイルス感染症による被害状況をデータで見てみましょう。以下の表は、2020年10月1日時点での新型コロナウイルスの流行状況のデータです。 (図表1はリンク先参照) 「感染者数における死亡率」を見ると、感染症の被害が甚大だった欧米、中南米と日本・中国・韓国の数値に大きな差はないように見えます。しかし、実際のところ「感染者数」は各国の検査体制に左右されるため、あまり参考になりません。 そこで、注目すべきは「人口100万人あたりの死亡者数」です。アメリカやブラジルでは100万人あたりで500人以上が死亡。同等かそれ以上の死者が、欧州や南米地域で出ています。 一方、日本、中国、韓国のほか、この表にはない東南アジア諸国を含むアジア全体で、100万人あたりの死者数は低い数値を示しています。また、死者数だけでなく、100万人あたりの感染者数も少ない傾向にあります。 結論からお伝えしましょう。 アジア諸国の被害の少なさの要因であるファクターXは、「BCGワクチン」と「交差免疫」の存在なのではないかと考えられています』、具体的な例証をみてみよう。
・『BCGワクチン接種国と比較的少ない感染者数・死亡者数の相関性  BCGワクチンは子どもの結核予防で接種するワクチンで、日本では1949年から接種が法制化されています。二の腕に痕が残る、あの注射ですね。 ちなみに、かつては乳幼児、小学生、中学生の計3回接種が行われましたが、現在では乳児期に1回接種するだけに変わっています。 BCGワクチンによる新型コロナウイルスの感染・重症化の抑制には懐疑論もありますが、実際に接種を行っている国では感染者数・死亡者数ともに驚くほどはっきりと抑えられているのが事実です。 例えば、スペインとポルトガルは同じイベリア半島にあり、人の行き来も多く、人種や食文化は似ています。 しかし、BCG接種国であるポルトガルの感染者数・死亡者数はスペインよりもずっと低いのです。人口100万人あたりの死亡者数(2020年10月1日時点)では、スペイン687人に対し、ポルトガル192人。3分の1以上の被害状況の開きがあります。 アジア圏のほとんどの国では、BCG接種が義務づけられています』、「BCG接種国であるポルトガルの・・・人口100万人あたりの死亡者数(2020年10月1日時点)では、スペイン687人に対し、ポルトガル192人。3分の1以上の被害状況の開きがあります」、隣の国でこんな開きがあるとは驚かされた。
・『BCGワクチンによる訓練免疫の効果  それに対し、新型コロナウイルスによる甚大な被害を受けているアメリカやイタリアでは、BCG接種を義務づけてきませんでした。また、欧州では多くの国が1970年代以降、BCGの接種を中止していたのです。 118カ国のBCG接種状況と新型コロナウイルスの被害状況との関連性を調べた、昭和大学の大森亨准教授の研究によれば、感染者数の増加速度で約1.7倍、死亡者数の増加速度で約2.4倍の差が生じていることがわかっています。 BCGが新型コロナウイルスを抑えるメカニズムは明確になっていません。しかし、以前からBCGが免疫力を強化し、とくに乳幼児では結核以外の病気に対する耐性を高め、死亡率を半分にしていることがあきらかになっています。 また高齢者に対しても、呼吸器への感染を減少させる効果があることが報告されています。 さまざまな研究から、BCGには免疫系を訓練して、活性化しやすい状態にする効果があると考えられているのです』、「118カ国のBCG接種状況と新型コロナウイルスの被害状況との関連性を調べた・・・感染者数の増加速度で約1.7倍、死亡者数の増加速度で約2.4倍の差が生じている」、「BCGには免疫系を訓練して、活性化しやすい状態にする効果がある」、「BCG」にこんな効用があったとは初めて知った。「新型コロナウイルス」用の「ワクチン」接種よりも有効なのかも知れない。
・『「メモリーT細胞」の存在  もうひとつのアジア圏におけるファクターXは、「交差免疫」です。 アジア圏では、過去にも別種のコロナウイルスに感染した経験のある人が多く、新型コロナウイルスに対して獲得免疫が機能したのではないか、と考えられています。 このように、近縁のウイルスで得た獲得免疫が機能することを「交差免疫」といいます。近年に確認されたコロナウイルスは7種類あります。 ・新型コロナウイルス ・SARS(重症急性呼吸器症候群)……2002年に中国で発生 ・MERS(中東呼吸器症候群)……2012年にアラビア半島で発生 ・そのほか、4種類の普通の鼻風邪ウイルス これらはすべて、コロナウイルスの仲間たちです。前半の3種類は下気道(気管・気管支・肺)に感染し、肺炎などの重篤な症状をもたらすコロナウイルスですが、あとの4種のコロナウイルスは上気道(鼻・口・咽頭)に軽い風邪の症状を起こすだけ。 日本の風邪のなかではライノウイルスに次いで2番目に感染が多い、ありふれた鼻風邪のウイルスです。おそらく、多くの方に感染の経験があるはずです。 新型コロナウイルスも、SARS、MERS、鼻風邪のウイルスも、同じコロナウイルスである以上、遺伝子の構造は似通っています。 そのため、別のコロナウイルスの情報を記憶した「メモリーB細胞」や「メモリーT細胞」などの免疫細胞が、新型コロナウイルスにも共通する目印を見つけて対処したのではないかと考えられています』、なるほど。
・『近縁のウイルスで得た獲得免疫が機能しているのか  実際に、アメリカでは新型コロナウイルスの症状がない健康な人の4割から6割が、新型コロナウイルスに反応するT細胞を持っていたことがわかっています。 SARSは中国で発生してアジアに広がり、MERSも中東から発生して中国にも広がったように、コロナウイルスの中心地はアジアといえます。 そのため、アジアではアメリカ以上に、交差免疫による新型コロナウイルスにも反応するT細胞を持つ人の割合が高い可能性があるのです。 まだまだ検証段階ではありますが、これが実証されれば、PCR検査や抗体検査だけではなく、T細胞の検査によって感染リスクを測ることが、新型コロナウイルス感染症の拡大抑止に重要な役割を果たすでしょう。 さらに、新型コロナウイルスに対する免疫の状態だけではなく、感染・重症化リスクの遺伝要因および環境要因が研究で明らかになってきています。 このような研究をもとに、新型コロナウイルス感染症の感染・重症化リスクを判定する検査も受けられるようになってきています(筆者プロフィールにリンクあり)。こうした検査によって自分のリスクを把握することで、適切な新型コロナウイルス感染症への対策が可能となります』、「ウイルス」に関する我々の知識はまだまだのようだ。もっとも、「ウイルス」自体が進化していくので、研究もいたちごっこにならざるを得ないのだろう。
タグ:「意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由」 星 良孝 JBPRESS アラブ首長国連邦(UAE)は9日、臨床試験で86%の有効性が確認された さまざまな研究からファクターXは2つに絞られた (医学的視点) パンデミック ワクチンの情報公開はしっかりしている中露 世界がロシアのワクチンに注目する (その17)(「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要、意外に良かったロシア製ワクチン「スプートニクV」 英アストラゼネカがロシア製を組み合わせた臨床試験を始める理由、「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない) BCGには免疫系を訓練して、活性化しやすい状態にする効果がある 感染者数の増加速度で約1.7倍、死亡者数の増加速度で約2.4倍の差が生じている 「ワクチン接種に同意すると答えた人」が「日本69%」とは意外に少ないようだ。背景には、厚労省のワクチン行政への不信があるのかも知れない 沙鴎 一歩 PRESIDENT ONLINE 中国は途上国外交上のテコとして「ワクチン」を大々的に活用 組み合わせていく方にこそ妙があるとも言える。 英国ではアストラゼネカとファイザーのワクチンの組み合わせが今後、検証される予定 「メモリーT細胞」の存在 山中伸弥教授は「ファクターX」 「「なぜ日本は重症化率が低いのか」新型コロナ"ファクターX"は2つに絞られた 肥満率の低さだけでは説明できない」 小林 弘幸 世界中で多くの人がワクチンを肯定的に捉えているが… ペルーでは被験者に神経症の症状が出たとして、治験を中止 複数ワクチンの組み合わせに可能性 ロシアのワクチンの優れたところは、運び屋を2回で別の型に分けていることだ ロシアのワクチンに対するアプローチが、ワクチンの弱点とされる点をうまくカバーしていると考えていた BCGワクチン接種国と比較的少ない感染者数・死亡者数の相関性 示唆的な「BCGワクチン」と「交差免疫」 東京社説は「英ワクチン承認 安全性の確認を慎重に」 「ロシアのワクチンは、1回目の接種と2回目の接種でワクチンを体内に届ける「運び屋」を変えている」、とは確かに「特徴的な優位性」 「ウイルス」に関する我々の知識はまだまだのようだ。もっとも、「ウイルス」自体が進化していくので、研究もいたちごっこにならざるを得ないのだろう 近縁のウイルスで得た獲得免疫が機能しているのか 「運び屋」の弱点を補うロシア製ワクチン 近縁のウイルスで得た獲得免疫が機能することを「交差免疫」 社会主義国のワクチン開発は正々堂々としている面もある 「フェーズ3」を飛ばして承認したロシア 朝日社説はワクチンのリスクに正面から触れていない 日本は欧米の接種動向とそれにともなう副反応の出現を注意深く見ながら、新型コロナに対する今後のワクチン政策を行っていくべきである 世界で140以上の製薬会社が研究開発を行うワケ 118カ国のBCG接種状況と新型コロナウイルスの被害状況との関連性を調べた BCGワクチンによる訓練免疫の効果 BCG接種国であるポルトガルの感染者数・死亡者数はスペインよりもずっと低いのです。人口100万人あたりの死亡者数(2020年10月1日時点)では、スペイン687人に対し、ポルトガル192人。3分の1以上の被害状況の開きがあります ウイルス自体が大きく変異すると、ワクチンの効き目はなくなる 英国では2人が、接種直後に「アナフィラキシー」に 「遺伝子ワクチン」は今回が「最初になる」、ので分からない部分も多いのだろう 人体にもたらす作用がすべて解明されているわけではない 日本での接種については、12月9日付け東京新聞によれば、厚労省幹部は「本年度中にも(高齢者や基礎疾患のある人などに)接種していきたい」、とのことだ 日本に限らず広くアジアの範囲で「ファクターX」について考えてみましょう 来年12月までにイギリス国民の3割に接種する計画 アジア諸国と他地域の死者数の差 「「ついに英国で接種開始」でも新型コロナワクチンに期待しすぎてはいけない 欧米での接種動向の見極めが重要」
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