GoTo問題(その2)(菅首相 迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」 問われる首相の器、Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」、後手に回った政治の決断 「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下、第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに) [国内政治]
GoTo問題については、12月5日に取上げたばかりだが、今日は、(その2)(菅首相 迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」 問われる首相の器、Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」、後手に回った政治の決断 「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下、第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに)である。
先ずは、12月16日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「菅首相、迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」、問われる首相の器」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/396428
・『菅義偉首相がかたくなに推し進めてきた観光支援事業「Go Toトラベル」が12月14日、全国一斉の一時停止に追い込まれた。 菅首相は、持論である「コロナ感染防止と経済活性化の両立」にいったん白旗を掲げた格好だ。その背景には自らの「ガースー発言」大炎上をきっかけとした支持率急落があるとみられる。 メディアの最新の世論調査では、Go Toトラベルの停止を求める声が圧倒的多数で、自民党内からも「このままでは政権へのダメージが大きすぎる」(幹部)という不安と不満が噴出している』、鉄壁ガースーと呼ばれながら、意外に脆かったようだ。
・『菅首相の指導力低下は不可避に 菅首相自身が官房長官時代から主導してきたGo To事業の方針大転換により、首相としての指導力低下は避けられない。野党側は「菅政権による人災」(共産党幹部)と厳しく批判しており、今後の展開次第では「トップリーダーとしての器が問われる事態」(自民長老)ともなりかねない。 政府は14日に開催した新型コロナウイルス感染症対策本部で、7月下旬以降、全国規模で実施してきたGo Toトラベル事業を、12月28日から2021年1月11日まで全国で一斉に停止することを決定した。12月27日までは、札幌、大阪両市に加えて東京都、名古屋市を目的地とする旅行が事業対象から除外される。事業を担当する国土交通省や観光業界は混乱を極めている。 菅首相は14日の対策本部で、「年末年始にかけて、これ以上の感染拡大を食い止め、医療機関などの負担を軽減し、(国民の)皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるよう、最大限の対策を講じることにする」と思い詰めたような表情で語った。 菅首相はこれまで一貫して「Go Toで感染が拡大したというエビデンス(証拠)はない」と主張してきただけに、「事実上、Go To政策運営の失敗を認めた格好」(閣僚経験者)だ。自民党内では「まさに泥縄。決断が遅すぎた」(同)との批判が相次ぎ、野党側は「Go Toトラベルによる感染拡大を政府が認めた」(立憲民主党幹部)と攻勢をかける。 菅首相の方針転換は、GoTo事業継続に対する国民世論の反対が12月中旬に拡大したことが最大の原因とされる。しかも、そのきっかけとなったのが11日の菅首相の不用意な発言だった。 菅首相は11日午後、インターネット動画の「ニコニコ生放送」に出演した際、視聴者に対し「みなさん、こんにちは。ガースーです」と笑顔であいさつした。「国民に親しみを持ってもらう狙い」(首相周辺)とみられたが、動画中継の画面には「今はそれじゃない」「余りにも無神経」など書き込みがあふれ、ネット上での大炎上となった。 菅首相の出演は、11日のコロナ分科会後に尾身茂会長が記者会見で「Go Toトラベルの見直し」を切々と訴えたのとほぼ同時進行だった。対談形式で国民に直接訴えるのが目的だったが、「完全にスベった」(民放幹部)のは間違いない。この動画は同じ時間帯の民放テレビ情報番組でも中継されていたが、居並ぶコメンテーターたちも苦笑と困惑を隠さなかった』、「ニコニコ生放送」上での「みなさん、こんにちは。ガースーです」とのあいさつは、まさに「今はそれじゃない」と言う他ない。
・『「不支持」が「支持」を初めて逆転 菅首相の出演は約30分間だったが、その中で「Go To一時停止」については「そこは考えていません。今日提言を受けたわけですから」と表情も変えずに語り、「いつの間にかGo Toが悪いことになってきちゃったんですけど、移動では感染しないという提言もいただいていた」などと「Go To悪者説」への不満もあらわにした。 この動画は瞬く間にインターネットで拡散。翌12日未明には立憲民主党の蓮舫参議院議員が「いつの間にかGo Toが」発言をツイッターに引用し、「税金で旅行を後押しする政策を力強く進めてきたのは貴方の政権です」と投稿。さらに、ドイツのメルケル首相の「クリスマスで人々の接触が増えれば、祖父母たちとの最後のクリスマスになることもある」との言葉を引用し、「胸に響きます。国民に危機意識を伝える言葉です」と菅首相の不用意な発言と対比して批判した。 4月には当時の安倍晋三首相が自宅でくつろぐ様子を「コラボ動画」として発信して大炎上し、与党内からは「今回はそれ以上の国民的反発」(自民幹部)との声も相次ぐ。野党側は「菅さんはまさに、KY(空気が読めない)の典型」(立憲民主党)と批判を強めた。 当然、世論の反応は敏感で、12日の毎日新聞の世論調査では内閣支持率が17ポイント下落の40%、不支持は13ポイント増の49%と、菅政権発足以来初めて、支持と不支持が逆転した。 さらに、14日に公表されたNHK世論調査でも内閣支持率は14ポイント下落の42%となり、菅首相に追い打ちをかけた。Go Toトラベル自体については、停止や中止を求める声が毎日調査で67%、NHK調査で79%に達した。 今回の菅首相の方針転換は「まさに世論に抗しきれなくなった結果」(自民幹部)だ。14日夜、官邸で記者団の取材に応じた菅首相は、「年末年始は集中的に対策を講じられる時期だと思い、『Go Toトラベル』を全国で一旦停止することを自ら決断した」と平静さを装った。ただ、記者団が「緊急事態宣言は検討しているか」と問いただすと「してません」とそっけなく答え、踵を返すように立ち去った』、「蓮舫参議院議員」が「メルケル首相」「の言葉を引用し」「批判した」、とはいつものことながらジャーナリスト感覚の切れには感心する。「ガースー」も「内閣支持率」の大幅「下落」は堪えたのだろう。
・自民党「観光族」の間に渦巻く不満 そもそも、政府が「勝負の3週間」と位置付けた11月下旬から、菅首相に提言する役目の分科会メンバーからは「このままGo Toを続ければ、感染拡大が止まらず、トータルでいえば経済への悪影響も大きい」(経済専門家)との声が相次いでいた。併せて、決断を委ねられた格好の都道府県知事からも政府の迷走への不満が噴出。「政府は小出しの対応でしのごうとしたが限界に達した」(閣僚経験者)のが実態とみられる。 その一方で、自民党内には「急ブレーキをかければ飲食店がバタバタつぶれる」(若手議員)と、Go To停止の決断を疑問視する声も少なくない。いわゆる「観光族」と呼ばれる議員の間では「菅首相が自分ファーストで勝手なことをした」(有力議員)との不満も渦巻く。 観光族のドンは、菅首相とタッグを組む二階俊博幹事長だ。菅首相は14日夜、その二階氏と銀座のステーキ店で会食した。しかし、プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長や有名タレントも同席し、「Go Toトラベルは誰も話題にしなかった」(出席者)とされる。「菅、二階両氏とも腫れ物には触れない」(自民長老)というわけだ。 気象庁の天気予報によると12月中旬から列島に強烈な寒波が襲来するという。多くの医療専門家は「寒波で空気も乾燥していれば、Go Toを止めても感染拡大は収まらない」と口をそろえる。菅首相は事業停止の出口となる1月12日以降の対応については口を濁すが、政府部内では「全国的な仕事始めで人の移動が活発化する12日以降のGo To再開は、リスクが大きすぎる」との不安も広がっている。 14日夜に記者団から「首相にとっての今年の漢字」を問われた菅首相は、「私自身は『国民のために働く内閣』と銘打っています。ですから働く『働』という字です」と答えたが、口の悪い野党議員は「自分のためにしか働かない」とくさす。自民党内には「年明けに事態が悪化していれば、衆院解散どころか、菅首相の早期退陣論も浮上しかねない」(長老)との声も広がっている』、「自民党「観光族」の間に渦巻く不満」、族議員の視野狭窄が改めて浮き彫りになったようだ。
次に、12月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/257474
・『「Go To」だけではない善意が事態を悪化させる政策 ヨーロッパの有名なことわざに、「地獄への道は善意で舗装されている」というものがある。 これにはいろいろな解釈があるが、世の中を良くしようとか、弱者を助けようとか、善意から行われたことがかえって事態を悪化させてしまい、結果として「地獄」のように悲惨な結果を招いてしまうという、皮肉な状況を指すこともある。ニュアンスとしては、日本の「ありがた迷惑」「無用の親切」という言葉が近いかもしれない。 では、具体的にどんな状況かというと、全国一斉停止が決まった「Go Toトラベル」がわかりやすい。 コロナで大打撃を被った観光業を救うとともに、冷え切った地方経済を循環させるという名目で、感染が拡大する中でもギリギリまで継続したことによって、「旅行=コロナを撒き散らす」というネガティブイメージを国民の間に定着させてしまった。良かれと思ってやった「善意の政策」が、皮肉にも地方経済と観光業を「地獄」へつき落としてしまった格好なのだ。 実は、日本ではこういう「地獄への道は善意で舗装されている」ということがちょくちょく起きる。 GoToがここまでゴリ押しされた背景に、「観光族のドン」である二階俊博氏がいるという指摘があるように、この国の政策は基本、有力政治家にパイプを持つ産業界の陳情で決まる。一見すると世の中を良くするように見える政策も、実はその裏には特定業界を利するような意図が隠されているのだ。 当たり前の話だが、こういう社会全体のメリットを考えていない政策はさまざまな問題を引き起こし、最悪の場合、国民生活に「害」をもたらす。 つまり、日本の国民は「何かよくわからないけど、えらい政治家センセイたちが必要というから必要な政策なんだろ」と思っているうちに、知らない間に「地獄への道」をアクセル全開でつき進むゴーカートに乗せられている、というパターンが非常に多いのだ』、「地獄への道は善意で舗装されている」、とはなかなかよく出来た「ことわざ」だ。太平洋戦争突入もこの典型例だろう。
・『「入管法改正」で本当に日本は良くなったか 「そんな大袈裟な」と思う人もいるかもしれないが、こういう例を出したらキリがない。まだ記憶に新しいところで言えば、「外国人労働者の受け入れ拡大」などというものも典型的なパターンだ。 今でこそマスコミは、連日「コロナの感染拡大が止まらない」と大騒ぎだが、実は2年ほど前は「人手不足で日本が滅びる!」と大騒ぎしていた。政府が入管法改正を進め、人手不足業界を救済するため、「外国人労働者の受け入れ拡大」を進めていくとぶちまけたからだ。 当時のマスコミの論調は、日本は深刻な人手不足で待ったなしの状況だし、多様性のある社会ということでは、外国人労働者の受け入れ拡大はいたしかない。ただ、働かせるだけではなく、彼らが日本でしっかりと生活もできるような支援もすべきだ――。などと言っていた。 要するに、「世の中が良くなる政策」だからしょうがないと、大きな批判をすることもなくスルーしていたのだ。「モリだ、カケだ」と大騒ぎをして、それどころじゃないという状況もあった。 では、政治もマスコミも軽くスルーした「外国人労働者の受け入れ拡大」で、果たして日本は良くなったのか。 入管法改正で新設された「特定技能」の受け入れは、目標に届かずスベっているが、「外国人労働者の受け入れ拡大」自体は、政府の後押しもあって着々と進んでいる。 厚生労働省が発表した『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』によると、2019年10月時点の外国人労働者の総数は165万8804人と、過去最多となっている。 中でも近年急速に増えているのが、日本への技能実習生送り出しに積極的なベトナムである。これまで、外国人労働者と言えば中国人というイメージだったが、19年10月時点の国籍別外国人労働者の割合を見ると、中国人の41万8327人(25.2%)に迫る勢いで、ベトナム人が40万1326人(24.2%)も日本で働いているのだ。 では、これだけの「外国人労働者」が増えているわけだから、日本の「人手不足」は解消されたのかというと、ご存じのようにそんなことは全くない。 なぜ、社会をより良くするはずの政策が機能していないのかというと、外国人労働者は増えているが、そのぶん失踪する人も増えているからだ。法務省によれば、2018年に失踪した技能実習生は9052人ということだったが、これが2020年7月1日時点で、受け入れ企業から失踪するなど不法在留状態で日本に滞在する元技能実習生の数は1万2457人となっている。 もちろん、役所が把握している失踪外国人など氷山の一角に過ぎない。職場から忽然と姿を消して不法滞在をしている元・外国人労働者は、もっとたくさんいるはずだ』、「当時のマスコミの論調は・・・」は、実際には官庁が自らやりたい政策の必要性をPRするため、事前に「マスコミ」を誘導して書かせているケースが多いようだ。「失踪する人も増えている」、深刻な問題だ。
・『日本で働く外国人が姿をくらます本当の理由 では、なぜ彼らは姿をくらませるのか。いろいろな事情があるだろうが、1つには「低賃金」の問題が大きい。 法務省が不法残留などで検挙された外国人労働者2892人を対象に調査をした『失踪技能実習生の現状』によれば、彼らが日本で経験した不正行為を尋ねたところ、「低賃金」と答えた人が67.2%にものぼった。 実は、これが日本の「人手不足」問題の正体である。人手不足の業界で足りないのは人手ではなく賃金であって、これが日本の若者などの国内労働者から敬遠されている。そこで、外国人だったら低賃金でも文句を言わずに、ありがたがって働くだろうということで、「外国人材の活用」をぶちまけたわけだ。 ただ、これは大きな勘違いだ。中国やベトナムも経済発展が著しい。確かに、まだ日本で働きたいという人はたくさんいるが、生活水準も向上している中で、低賃金や長時間労働を強いられたら、すぐに職場に嫌気が差して失踪してしまう。日本人が嫌がるような低賃金重労働は、中国人もベトナム人も嫌がるに決まっているのだ。 では、そのような低賃金労働から逃げ出した外国人はどうなるか。別の仕事に就いたり、そのまま日本に失望して祖国へ帰るという人もいるが、中には当然、「もっと稼げる仕事があるよ」という悪い仲間からの誘いに乗ってしまう人も多い。何もしないでプラプラしている若者が、地元の悪い先輩に誘われて、オレオレ詐欺の出し子になるように、犯罪に手を染めるのだ。 警察庁によれば、2019年に摘発した来日外国人は、前年比573人増の1万1655人だった。内訳で最も多いのはベトナム人で3365人(28.9%)、ついで中国人2948人(25.3%)と、外国人労働者とほとんど同じバランスになっている。ちなみに、ベトナム人犯罪は化粧品の万引きなどの窃盗が多く、中国人犯罪は在留カードを偽造したり、不正入手したスマホの決済サービスで大量の商品を騙し取ったりすることが多いという』、「人手不足の業界で足りないのは人手ではなく賃金であって、これが日本の若者などの国内労働者から敬遠されている。そこで、外国人だったら低賃金でも文句を言わずに、ありがたがって働くだろうということで、「外国人材の活用」をぶちまけたわけだ」、「日本人が嫌がるような低賃金重労働は、中国人もベトナム人も嫌がるに決まっているのだ」、その通りだ。
・『人手不足の業界が巡り巡って痛めつけられる外国人材の活用 さて、ここまで説明すれば、この「外国人労働者の受け入れ拡大」という政策が「地獄への道は善意で舗装されている」ということの典型パターンだと申し上げた理由が、わかっていただけただろうか。 「人手不足の業界を救うため、外国人労働者を活用!」「これからの日本は、外国人と一緒に働く多様性のある社会に」というのは一見すると、社会をより良くするための「善意」のある話に見える。 しかし、先ほども述べたように、日本の「人手不足」は労働者の絶対数が足りないという話ではなく、特定の産業で低賃金・重労働が常態化してしまったことで、国内労働者がそっぽを向いた「雇用ミスマッチ」が主な原因である。そういう根本的な問題を解決せずに、ベトナムなどの外国人労働者を甘い言葉で誘い込んでも、人手不足が解消されるわけがないのだ。 しかも、そのような低賃金・重労働というブラックな環境を改善しないで、外国人労働者の受け入れを増やすということは、職場から逃げ出す不法滞在外国人を増やすことに他ならない。そうなれば、アンダーグラウンドな世界で外国人ネットワークが構築され、組織的な犯罪が増える。 そこで被害に遭うのは、万引きされたり、不正なスマホ決済サービスで商品を騙し取られたりする小売店。そして、家畜や野菜を盗まれる農家などである。これらが深刻な人手不足に悩む業種だということは、説明の必要がないだろう。 つまり、人手不足の業界を救済するという善意が回り回って、人手不足業界を苦しめる悪循環を生み出してしまうという、何とも皮肉な結果となっているのだ』、「人手不足の業界を救済するという善意が回り回って、人手不足業界を苦しめる悪循環を生み出してしまうという、何とも皮肉な結果となっている」、同感だ。「ベトナム人」によるブタ盗難事件も記憶に新しいところだ。
・『「GAFA規制」にも見える政治家と特定業界との癒着 こういう過去の事例を踏まえて、次にこのパターンに陥るのではないか、と筆者が心配している「善意の政策」がある。それは、「GAFA規制」である。 ご存じの方も多いだろうが、今世界的にGAFAの力を抑えようという潮流がある。つい先日もEUで、巨大IT企業が自社サイトで同業他社に対して自社のサービスなどを優先的に扱うことを厳しく制限するほか、ユーザーごとに表示されるオンライン広告の基準の開示などを義務づけるという規制案を発表。これに違反した場合、年間売り上げの最大10%を制裁金として科すという。 こうした欧州のムードを受けて、日本でも2020年5月、巨大IT企業に取引の透明性向上や情報開示を求める「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が成立している。現在、2021年春の施行を目指し、要件の詳細などが議論されている段階だ。 「いいことじゃないか」という声が聞こえてきそうだ。もちろん、巨大企業が優位的な立場を生かして、自由な競争を阻害するようなことは許されない。特にGAFAなどは社会的な影響力も強いので、公平性や透明性がより求められるというのも全く異論はない。 ただ日本の場合、これまで見てきたように、有力政治家とパイプのある特定の業界を利する政策がつくられるというパターンが圧倒的に多い。国内産業保護が過度に優先されたり、菅義偉首相など政権幹部に近い企業や業界の利益を守るような規制になりかねないのである。 そうなったとき、「巨大企業の市場独占を抑える」という一見社会のためになる政策のもとで、「地獄への道は善意で舗装されている」といういつもの負けパターンに陥ってしまう恐れがあるのだ。 少し前、その危険性を示唆するような調査が出た。慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授の試算レポート『対デジタルプラットフォーマー規制強化に伴う地方企業への悪影響』によれば、デジタルプラットフォーマーへの過度な規制強化が行われた場合、地方企業のデジタル広告経由の売り上げが、5年間で最大6.47兆円毀損される可能性があるという。 ご存じのように、グーグルやフェイスブックなどデジタルプラットフォーマーへの広告は、テレビや新聞などのマス広告に比べて、かなり少額から出稿できる。そして、影響力がある。地方企業が全国ネットでテレビCMを流したり、全国紙に出稿したりすることはかなりハードルが高いが、デジタルならば手軽に全国の客にリーチできるというメリットがあるのだ。 しかし、これが規制の対象となると、デジタルプラットフォーマー側もその対応でコストが上がるので、それが広告費の値上げにつながって、結果として地方の中小企業や小規模事業者を苦しめる恐れがある、とこのレポートでは指摘しているのだ』、「岩本隆特任教授の試算レポート」の指摘はその通りなのだろうが、この研究が「デジタルプラットフォーマー」から資金援助されてない中立なものであってほしい。
・『「日本のためになる」という思い込みで突き進む地獄への道 もちろん、これはあくまで最もネガティブなシナリオにおける試算であって、必ずしもこれが現実になるとは限らない。ただ、これまでの「外国人労働者の受け入れ拡大」「Go Toトラベルのゴリ押し」のように、やることなすこと裏目に出ているという「実績」を踏まえると、そこまで荒唐無稽な話ではないような気もしている。 太平洋戦争の時代まで遡って日本の近代史を学べば、政府とマスコミが「これが日本のためになるベストな政策なのだ」と胸を張っているときほど、立ち止まって慎重に検証をしなくてはいけないというのは明らかである。「我々は絶対に間違っていない」と叫びながら「地獄への道」を突き進むというのが、日本の典型的な負けパターンだからだ。 菅首相も、仲の良い人たちや、チヤホヤしてくれる人たちと「密」になって忘年会をするのも結構だが、そろそろ自分の政策に対して厳しい批判をするような人たちの声に、真摯に耳を傾けた方がよろしいのではないか』、「菅首相」は言うまでもないが、各省庁も審議会などを隠れ蓑にして政策実現を図っているが、その運営ももっと開かれたものにしてゆくべきだろう。
第三に、12月17日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「後手に回った政治の決断、「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78420?imp=0
・『専門家は11月には停止の声 後手後手に回った結果、最悪のタイミングになった。「GoToトラベル」の「一時停止」である。 菅義偉首相は12月14日、「GoToトラベル」を12月28日から1月11日まで全国一斉に「一時停止」することを表明した。ようやくの「政治決断」である。 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は12月9日、衆議院の厚生労働委員会で立憲民主党の山井和則議員の質問に答えて、「分科会はステージ3相当の地域は、感染のこの状況を打開するには、GoToを含めて人の動き、接触を控える時期だと思う」と発言。「ステージ3ということは東京を含めて一時停止すべきか」との重ねて問われたのに対して、「分科会はそう思っています」と明確に答えた。 実は、分科会の議論では11月の早い段階から、「GoToトラベルの一時停止」を求める声がメンバーから出されていた。 しかし「GoToトラベル」という政府の政策に関する決定は「政治家の仕事」で、専門家はその材料を提言するにとどめるべきだという考えがあった。結局、11月中に尾身会長が直接「一時停止」に触れることはなかった。それを翻して国会質問で踏み込んだのは、政治が決断しない状況が続いたからだった。 尾身会長が踏み込んでも菅義偉首相は「一時停止」の決断をためらった。尾身会長は12月11日に記者会見し、同日開いた分科会の結論として感染拡大地域の「GoToトラベル」を一時停止するよう正式に求めた。にもかかわらず、菅首相は決断をまだ躊躇していた。 同日夜に出演した「ニコニコ生放送」で、GoToトラベルの一時停止を問われると、「まだそこは考えてません。考えていないというか、きょう提言を受けたわけですから」と答えていた』、「尾身会長が踏み込んでも菅義偉首相は「一時停止」の決断をためらった」、確かに「政府の政策に関する決定は「政治家の仕事」」、とは言っても、理由をきちんと説明すべきで、「ニコニコ生放送」で油を売るなどもってのほかだ。
・『世論調査に押されてやっと そうした姿勢を180度、菅首相が変えたのは、分科会の専門家から受けた厳しい提言を熟考したからだろうか。どうもそうではない。 一時停止を表明した12月14日にNHKが発表した世論調査で、菅内閣の支持率が42%と、11月の調査から14ポイントも低下した。「支持しない」と答えた人も17ポイント上昇して36%となった。支持と不支持の逆転こそ起きなかったが、支持率の急低下が鮮明になった。 同じ調査で、「新型コロナをめぐる政府への対応」について「まったく評価しない」が16%、「あまり評価しない」が40%に達したほか、「GoToトラベル」について「いったん停止すべき」と答えた人が79%にのぼり、「続けるべき」とした人の12%を大きく上回った。 実は、その2日前の12月12日には毎日新聞の世論調査結果が公表され、内閣支持率が40%、不支持率が49%と不支持が支持を上回っていた。永田町に動揺が走ったが、毎日新聞はもともと菅内閣に批判的で、政府に厳しい結果が出がちだとの見方もあった。 それが、政権に比較的近いと見られているNHKの調査でも支持率が急落したため、菅官邸は何らかの手を打たざるを得なくなったとみられている。つまり、専門家の声を聞いたからではなく、支持率が急低下したから、決断したということのようなのだ』、「世論調査結果」は、反政府的な「毎日新聞」ではなく、「政権に比較的近いと見られているNHK」が決め手になったとは、最後の望みも絶たれたということなのだろう。
・『年末年始シーズンはこれで台無し 結果をみれば、菅首相の決断は遅過ぎた。11月の上旬に感染拡大が懸念されていた地域だけでも「一時停止」を決めていれば、12月に入ってここまで感染拡大は起きず、年末年始の「書き入れ時」に人の動きを止めずに済んだかもしれない。最悪のタイミングでの「一時停止」を避けることが出来たかもしれないのだ。 何せ11月21~23日の3連休は各地の観光地で猛烈な人出となった。紅葉が見頃を迎えた京都嵐山では、昨年11月の休日平均に比べて、最大で1.6倍を記録していた。凄まじい人出だったのだ。 それにもかかわらず、GoToトラベルと新型コロナ拡大の因果関係があるとは「我々は見ておりません」と菅首相は言い続けた。 菅首相が「一時停止」をなかなか決断できなかったのは、それだけ「GoToトラベル」の効果が大きかったこともある。 7月22日から11月15日までの利用者数は、少なくとも5260万人泊、割引支援額は少なくとも3080億円にのぼった。地域共通クーポン券を除いた宿泊旅行代金の補助だけで2509億円に達しており、自己負担分も含めると7000億円以上のお金が宿泊業を中心とする旅行業者に落ちたことになる。まさに「GoTo特需」だったわけだ。 年末年始の「一時停止」によって、旅館やホテルなどには予約のキャンセルが殺到しているという。 旅行者にキャンセル料はかからないうえ、事業者にも旅行代金の50%が補償金として国から払われる。ひとり1泊2万円の上限があるので、高級旅館・ホテルなどはコスト回収は難しいが、一定の助成によって、事業者は壊滅的な打撃を受けなくても済む、というのが政府の見方だ』、「7月22日から11月15日までの利用者数は、少なくとも5260万人泊、割引支援額は少なくとも3080億円・・・自己負担分も含めると7000億円以上のお金が宿泊業を中心とする旅行業者に落ちた」、確かに効果も大きかったが、副作用も大きかったようだ。
・『一番脆弱な雇用を痛撃 もっとも、最大の稼ぎ時である年末年始の利用客が減れば、パート従業員やアルバイトなどの仕事が減ることになりかねない。「宿泊業・飲食サービス業」の就業者数は10月段階で前年同月比10%近く減っているが、年末年始の雇用情勢が大きく悪化することになりかねない。 こうした雇用対策も含め、もう少し早く政治決断していれば、対応の仕方があったのにと悔やまれる。 菅内閣が発足して3カ月、国民への説明力が乏しいという菅評が定着しつつある。そこに「優柔不断」「決断できない」と言ったマイナス評価が加わるのを避けようと、「全国一斉」に「GoToトラベル」の一時停止を広げたようにも見える。 専門家は「感染拡大地域」の一時停止を求めていたが、その意見にはまともに向き合わなかったということだ。 大きな犠牲を払って人の動きを止める今回の措置が成果をあげ、新型コロナの感染拡大が止まることを祈るばかりだ』、「鉄壁ガースー」も二階幹事長に遠慮するの余り、賭けは裏目にばかり出ているようだ。
第四に、12月19日付け日刊ゲンダイ「第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/282905
・『「感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない」――。肝いりの「Go To トラベル」をめぐる批判に、こう繰り返してきた菅首相だが、「言い逃れ」はもはや通用しない。新型コロナウイルスの感染拡大とトラベル事業の因果関係を示す「エビデンス」が示されたからだ。 注目を集めているのが国立感染症研究所が発表した「新型コロナウイルスSARS―CoV―2のゲノム分子疫学調査」と題されたリポート。新型コロナのゲノム配列を分析したもので、4月と8月の調査と合わせて3回発表されている。その目的は、ウイルスのゲノム情報を分析し、分かりやすい形で「ウイルス同士の関連を可視化」すること。ウイルスの由来や感染の広がり方をゲノム分析を通じて調査しているのだ。 足元の感染再拡大に言及しているのが、今月11日に発表された3回目のリポートだ。今年10月末までのクラスター発生やウイルスの変異について説明していて、1回目と2回目の調査と突き合わせると、トラベル事業と感染拡大の間に重大な「エビデンス」が浮かび上がる。 医師で参院議員(国民民主党)の足立信也氏がこう解説する。 「全てのリポートを読むと、第3波がどんなウイルスによるものなのかを推測できます。日本国内では中国・武漢由来のウイルスの流行がひとまず終息した後、欧州型のウイルスが流入。3月から5月にかけて第1波が発生しました。収束の兆しが見えたものの、6月に経済活動が再開され、無症状者に感染する中で変異したウイルスが東京都や首都圏を中心に広がりました。夏の第2波の要因となったのは欧州型が変異したもので、いわば『東京型』だった。第2波が収まらないうちに『東京型』が拡散し、第3波へとつながっているのです」』、「感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない」との「菅首相」発言は、実は真相を知った上での嘘だった可能性もあるようだ。
・『国会の閉会を待って公表か 第2波を生んだ「東京型」が現在も流行中との指摘の根拠は、リポートに掲載された「ハプロタイプ・ネットワーク図」。簡単に言えば、ゲノム情報の変異に基づいて描かれたウイルスの“親子関係”を表す相関図のようなものだ。円形や楕円のクラスターが赤やオレンジに着色されている。 2回目のリポートの「ハプロタイプ・ネットワーク図」では、〈欧州系統の全国同時多発〉由来の〈国内クラスター群〉(第1波)がオレンジで描かれ、それとは別に〈6月中旬より“突然顕在化”したクラスター〉群(第2波)が赤で描かれている。そして3回目の報告書の図では、7月から10月末までに国内で検出されたウイルスによるクラスターは赤色で表記。つまり、「東京型」に由来するクラスターだと分析されているのだ。 トラベル事業は、感染がくすぶる東京都を除外して7月22日に前倒しスタート。10月1日に人口1400万人を抱える東京が追加されて以降、感染がみるみる深刻化した。 この図は、トラベル事業によって『東京型』が全国にバラまかれた傍証です。収束しかけた第2波の『東京型』が再燃していると言ってもいいでしょう。リポート発表のタイミングが不自然なのも気になります。3回目の調査は〈10月26日現在〉と書かれていますが、発表されたのは臨時国会閉会から1週間ほど経った12月11日。1回目と2回目は調査から2~3週間で発表された。3回目はかなり間が空いているのです。閉会を待って発表されたのではないか」(足立信也氏) 酒類を提供する飲食店の時短営業やトラベル事業の全国中止が実を結び、「東京型」の流行が一服したとしても、海外との往来緩和で欧州由来のウイルスが再流入する懸念もぬぐえない。科学的知見に目もくれず、専門家の意見にも耳を傾けない菅政権の下で、一体いくつの「波」に襲われることになるのか』、「10月1日に人口1400万人を抱える東京が追加されて以降、感染がみるみる深刻化した。 この図は、トラベル事業によって『東京型』が全国にバラまかれた傍証です。収束しかけた第2波の『東京型』が再燃していると言ってもいいでしょう」、「閉会を待って発表されたのではないか」、極めて悪質だ。これでは、菅政権の基盤も一段と弱まりそうだ。
先ずは、12月16日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「菅首相、迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」、問われる首相の器」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/396428
・『菅義偉首相がかたくなに推し進めてきた観光支援事業「Go Toトラベル」が12月14日、全国一斉の一時停止に追い込まれた。 菅首相は、持論である「コロナ感染防止と経済活性化の両立」にいったん白旗を掲げた格好だ。その背景には自らの「ガースー発言」大炎上をきっかけとした支持率急落があるとみられる。 メディアの最新の世論調査では、Go Toトラベルの停止を求める声が圧倒的多数で、自民党内からも「このままでは政権へのダメージが大きすぎる」(幹部)という不安と不満が噴出している』、鉄壁ガースーと呼ばれながら、意外に脆かったようだ。
・『菅首相の指導力低下は不可避に 菅首相自身が官房長官時代から主導してきたGo To事業の方針大転換により、首相としての指導力低下は避けられない。野党側は「菅政権による人災」(共産党幹部)と厳しく批判しており、今後の展開次第では「トップリーダーとしての器が問われる事態」(自民長老)ともなりかねない。 政府は14日に開催した新型コロナウイルス感染症対策本部で、7月下旬以降、全国規模で実施してきたGo Toトラベル事業を、12月28日から2021年1月11日まで全国で一斉に停止することを決定した。12月27日までは、札幌、大阪両市に加えて東京都、名古屋市を目的地とする旅行が事業対象から除外される。事業を担当する国土交通省や観光業界は混乱を極めている。 菅首相は14日の対策本部で、「年末年始にかけて、これ以上の感染拡大を食い止め、医療機関などの負担を軽減し、(国民の)皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるよう、最大限の対策を講じることにする」と思い詰めたような表情で語った。 菅首相はこれまで一貫して「Go Toで感染が拡大したというエビデンス(証拠)はない」と主張してきただけに、「事実上、Go To政策運営の失敗を認めた格好」(閣僚経験者)だ。自民党内では「まさに泥縄。決断が遅すぎた」(同)との批判が相次ぎ、野党側は「Go Toトラベルによる感染拡大を政府が認めた」(立憲民主党幹部)と攻勢をかける。 菅首相の方針転換は、GoTo事業継続に対する国民世論の反対が12月中旬に拡大したことが最大の原因とされる。しかも、そのきっかけとなったのが11日の菅首相の不用意な発言だった。 菅首相は11日午後、インターネット動画の「ニコニコ生放送」に出演した際、視聴者に対し「みなさん、こんにちは。ガースーです」と笑顔であいさつした。「国民に親しみを持ってもらう狙い」(首相周辺)とみられたが、動画中継の画面には「今はそれじゃない」「余りにも無神経」など書き込みがあふれ、ネット上での大炎上となった。 菅首相の出演は、11日のコロナ分科会後に尾身茂会長が記者会見で「Go Toトラベルの見直し」を切々と訴えたのとほぼ同時進行だった。対談形式で国民に直接訴えるのが目的だったが、「完全にスベった」(民放幹部)のは間違いない。この動画は同じ時間帯の民放テレビ情報番組でも中継されていたが、居並ぶコメンテーターたちも苦笑と困惑を隠さなかった』、「ニコニコ生放送」上での「みなさん、こんにちは。ガースーです」とのあいさつは、まさに「今はそれじゃない」と言う他ない。
・『「不支持」が「支持」を初めて逆転 菅首相の出演は約30分間だったが、その中で「Go To一時停止」については「そこは考えていません。今日提言を受けたわけですから」と表情も変えずに語り、「いつの間にかGo Toが悪いことになってきちゃったんですけど、移動では感染しないという提言もいただいていた」などと「Go To悪者説」への不満もあらわにした。 この動画は瞬く間にインターネットで拡散。翌12日未明には立憲民主党の蓮舫参議院議員が「いつの間にかGo Toが」発言をツイッターに引用し、「税金で旅行を後押しする政策を力強く進めてきたのは貴方の政権です」と投稿。さらに、ドイツのメルケル首相の「クリスマスで人々の接触が増えれば、祖父母たちとの最後のクリスマスになることもある」との言葉を引用し、「胸に響きます。国民に危機意識を伝える言葉です」と菅首相の不用意な発言と対比して批判した。 4月には当時の安倍晋三首相が自宅でくつろぐ様子を「コラボ動画」として発信して大炎上し、与党内からは「今回はそれ以上の国民的反発」(自民幹部)との声も相次ぐ。野党側は「菅さんはまさに、KY(空気が読めない)の典型」(立憲民主党)と批判を強めた。 当然、世論の反応は敏感で、12日の毎日新聞の世論調査では内閣支持率が17ポイント下落の40%、不支持は13ポイント増の49%と、菅政権発足以来初めて、支持と不支持が逆転した。 さらに、14日に公表されたNHK世論調査でも内閣支持率は14ポイント下落の42%となり、菅首相に追い打ちをかけた。Go Toトラベル自体については、停止や中止を求める声が毎日調査で67%、NHK調査で79%に達した。 今回の菅首相の方針転換は「まさに世論に抗しきれなくなった結果」(自民幹部)だ。14日夜、官邸で記者団の取材に応じた菅首相は、「年末年始は集中的に対策を講じられる時期だと思い、『Go Toトラベル』を全国で一旦停止することを自ら決断した」と平静さを装った。ただ、記者団が「緊急事態宣言は検討しているか」と問いただすと「してません」とそっけなく答え、踵を返すように立ち去った』、「蓮舫参議院議員」が「メルケル首相」「の言葉を引用し」「批判した」、とはいつものことながらジャーナリスト感覚の切れには感心する。「ガースー」も「内閣支持率」の大幅「下落」は堪えたのだろう。
・自民党「観光族」の間に渦巻く不満 そもそも、政府が「勝負の3週間」と位置付けた11月下旬から、菅首相に提言する役目の分科会メンバーからは「このままGo Toを続ければ、感染拡大が止まらず、トータルでいえば経済への悪影響も大きい」(経済専門家)との声が相次いでいた。併せて、決断を委ねられた格好の都道府県知事からも政府の迷走への不満が噴出。「政府は小出しの対応でしのごうとしたが限界に達した」(閣僚経験者)のが実態とみられる。 その一方で、自民党内には「急ブレーキをかければ飲食店がバタバタつぶれる」(若手議員)と、Go To停止の決断を疑問視する声も少なくない。いわゆる「観光族」と呼ばれる議員の間では「菅首相が自分ファーストで勝手なことをした」(有力議員)との不満も渦巻く。 観光族のドンは、菅首相とタッグを組む二階俊博幹事長だ。菅首相は14日夜、その二階氏と銀座のステーキ店で会食した。しかし、プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長や有名タレントも同席し、「Go Toトラベルは誰も話題にしなかった」(出席者)とされる。「菅、二階両氏とも腫れ物には触れない」(自民長老)というわけだ。 気象庁の天気予報によると12月中旬から列島に強烈な寒波が襲来するという。多くの医療専門家は「寒波で空気も乾燥していれば、Go Toを止めても感染拡大は収まらない」と口をそろえる。菅首相は事業停止の出口となる1月12日以降の対応については口を濁すが、政府部内では「全国的な仕事始めで人の移動が活発化する12日以降のGo To再開は、リスクが大きすぎる」との不安も広がっている。 14日夜に記者団から「首相にとっての今年の漢字」を問われた菅首相は、「私自身は『国民のために働く内閣』と銘打っています。ですから働く『働』という字です」と答えたが、口の悪い野党議員は「自分のためにしか働かない」とくさす。自民党内には「年明けに事態が悪化していれば、衆院解散どころか、菅首相の早期退陣論も浮上しかねない」(長老)との声も広がっている』、「自民党「観光族」の間に渦巻く不満」、族議員の視野狭窄が改めて浮き彫りになったようだ。
次に、12月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/257474
・『「Go To」だけではない善意が事態を悪化させる政策 ヨーロッパの有名なことわざに、「地獄への道は善意で舗装されている」というものがある。 これにはいろいろな解釈があるが、世の中を良くしようとか、弱者を助けようとか、善意から行われたことがかえって事態を悪化させてしまい、結果として「地獄」のように悲惨な結果を招いてしまうという、皮肉な状況を指すこともある。ニュアンスとしては、日本の「ありがた迷惑」「無用の親切」という言葉が近いかもしれない。 では、具体的にどんな状況かというと、全国一斉停止が決まった「Go Toトラベル」がわかりやすい。 コロナで大打撃を被った観光業を救うとともに、冷え切った地方経済を循環させるという名目で、感染が拡大する中でもギリギリまで継続したことによって、「旅行=コロナを撒き散らす」というネガティブイメージを国民の間に定着させてしまった。良かれと思ってやった「善意の政策」が、皮肉にも地方経済と観光業を「地獄」へつき落としてしまった格好なのだ。 実は、日本ではこういう「地獄への道は善意で舗装されている」ということがちょくちょく起きる。 GoToがここまでゴリ押しされた背景に、「観光族のドン」である二階俊博氏がいるという指摘があるように、この国の政策は基本、有力政治家にパイプを持つ産業界の陳情で決まる。一見すると世の中を良くするように見える政策も、実はその裏には特定業界を利するような意図が隠されているのだ。 当たり前の話だが、こういう社会全体のメリットを考えていない政策はさまざまな問題を引き起こし、最悪の場合、国民生活に「害」をもたらす。 つまり、日本の国民は「何かよくわからないけど、えらい政治家センセイたちが必要というから必要な政策なんだろ」と思っているうちに、知らない間に「地獄への道」をアクセル全開でつき進むゴーカートに乗せられている、というパターンが非常に多いのだ』、「地獄への道は善意で舗装されている」、とはなかなかよく出来た「ことわざ」だ。太平洋戦争突入もこの典型例だろう。
・『「入管法改正」で本当に日本は良くなったか 「そんな大袈裟な」と思う人もいるかもしれないが、こういう例を出したらキリがない。まだ記憶に新しいところで言えば、「外国人労働者の受け入れ拡大」などというものも典型的なパターンだ。 今でこそマスコミは、連日「コロナの感染拡大が止まらない」と大騒ぎだが、実は2年ほど前は「人手不足で日本が滅びる!」と大騒ぎしていた。政府が入管法改正を進め、人手不足業界を救済するため、「外国人労働者の受け入れ拡大」を進めていくとぶちまけたからだ。 当時のマスコミの論調は、日本は深刻な人手不足で待ったなしの状況だし、多様性のある社会ということでは、外国人労働者の受け入れ拡大はいたしかない。ただ、働かせるだけではなく、彼らが日本でしっかりと生活もできるような支援もすべきだ――。などと言っていた。 要するに、「世の中が良くなる政策」だからしょうがないと、大きな批判をすることもなくスルーしていたのだ。「モリだ、カケだ」と大騒ぎをして、それどころじゃないという状況もあった。 では、政治もマスコミも軽くスルーした「外国人労働者の受け入れ拡大」で、果たして日本は良くなったのか。 入管法改正で新設された「特定技能」の受け入れは、目標に届かずスベっているが、「外国人労働者の受け入れ拡大」自体は、政府の後押しもあって着々と進んでいる。 厚生労働省が発表した『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』によると、2019年10月時点の外国人労働者の総数は165万8804人と、過去最多となっている。 中でも近年急速に増えているのが、日本への技能実習生送り出しに積極的なベトナムである。これまで、外国人労働者と言えば中国人というイメージだったが、19年10月時点の国籍別外国人労働者の割合を見ると、中国人の41万8327人(25.2%)に迫る勢いで、ベトナム人が40万1326人(24.2%)も日本で働いているのだ。 では、これだけの「外国人労働者」が増えているわけだから、日本の「人手不足」は解消されたのかというと、ご存じのようにそんなことは全くない。 なぜ、社会をより良くするはずの政策が機能していないのかというと、外国人労働者は増えているが、そのぶん失踪する人も増えているからだ。法務省によれば、2018年に失踪した技能実習生は9052人ということだったが、これが2020年7月1日時点で、受け入れ企業から失踪するなど不法在留状態で日本に滞在する元技能実習生の数は1万2457人となっている。 もちろん、役所が把握している失踪外国人など氷山の一角に過ぎない。職場から忽然と姿を消して不法滞在をしている元・外国人労働者は、もっとたくさんいるはずだ』、「当時のマスコミの論調は・・・」は、実際には官庁が自らやりたい政策の必要性をPRするため、事前に「マスコミ」を誘導して書かせているケースが多いようだ。「失踪する人も増えている」、深刻な問題だ。
・『日本で働く外国人が姿をくらます本当の理由 では、なぜ彼らは姿をくらませるのか。いろいろな事情があるだろうが、1つには「低賃金」の問題が大きい。 法務省が不法残留などで検挙された外国人労働者2892人を対象に調査をした『失踪技能実習生の現状』によれば、彼らが日本で経験した不正行為を尋ねたところ、「低賃金」と答えた人が67.2%にものぼった。 実は、これが日本の「人手不足」問題の正体である。人手不足の業界で足りないのは人手ではなく賃金であって、これが日本の若者などの国内労働者から敬遠されている。そこで、外国人だったら低賃金でも文句を言わずに、ありがたがって働くだろうということで、「外国人材の活用」をぶちまけたわけだ。 ただ、これは大きな勘違いだ。中国やベトナムも経済発展が著しい。確かに、まだ日本で働きたいという人はたくさんいるが、生活水準も向上している中で、低賃金や長時間労働を強いられたら、すぐに職場に嫌気が差して失踪してしまう。日本人が嫌がるような低賃金重労働は、中国人もベトナム人も嫌がるに決まっているのだ。 では、そのような低賃金労働から逃げ出した外国人はどうなるか。別の仕事に就いたり、そのまま日本に失望して祖国へ帰るという人もいるが、中には当然、「もっと稼げる仕事があるよ」という悪い仲間からの誘いに乗ってしまう人も多い。何もしないでプラプラしている若者が、地元の悪い先輩に誘われて、オレオレ詐欺の出し子になるように、犯罪に手を染めるのだ。 警察庁によれば、2019年に摘発した来日外国人は、前年比573人増の1万1655人だった。内訳で最も多いのはベトナム人で3365人(28.9%)、ついで中国人2948人(25.3%)と、外国人労働者とほとんど同じバランスになっている。ちなみに、ベトナム人犯罪は化粧品の万引きなどの窃盗が多く、中国人犯罪は在留カードを偽造したり、不正入手したスマホの決済サービスで大量の商品を騙し取ったりすることが多いという』、「人手不足の業界で足りないのは人手ではなく賃金であって、これが日本の若者などの国内労働者から敬遠されている。そこで、外国人だったら低賃金でも文句を言わずに、ありがたがって働くだろうということで、「外国人材の活用」をぶちまけたわけだ」、「日本人が嫌がるような低賃金重労働は、中国人もベトナム人も嫌がるに決まっているのだ」、その通りだ。
・『人手不足の業界が巡り巡って痛めつけられる外国人材の活用 さて、ここまで説明すれば、この「外国人労働者の受け入れ拡大」という政策が「地獄への道は善意で舗装されている」ということの典型パターンだと申し上げた理由が、わかっていただけただろうか。 「人手不足の業界を救うため、外国人労働者を活用!」「これからの日本は、外国人と一緒に働く多様性のある社会に」というのは一見すると、社会をより良くするための「善意」のある話に見える。 しかし、先ほども述べたように、日本の「人手不足」は労働者の絶対数が足りないという話ではなく、特定の産業で低賃金・重労働が常態化してしまったことで、国内労働者がそっぽを向いた「雇用ミスマッチ」が主な原因である。そういう根本的な問題を解決せずに、ベトナムなどの外国人労働者を甘い言葉で誘い込んでも、人手不足が解消されるわけがないのだ。 しかも、そのような低賃金・重労働というブラックな環境を改善しないで、外国人労働者の受け入れを増やすということは、職場から逃げ出す不法滞在外国人を増やすことに他ならない。そうなれば、アンダーグラウンドな世界で外国人ネットワークが構築され、組織的な犯罪が増える。 そこで被害に遭うのは、万引きされたり、不正なスマホ決済サービスで商品を騙し取られたりする小売店。そして、家畜や野菜を盗まれる農家などである。これらが深刻な人手不足に悩む業種だということは、説明の必要がないだろう。 つまり、人手不足の業界を救済するという善意が回り回って、人手不足業界を苦しめる悪循環を生み出してしまうという、何とも皮肉な結果となっているのだ』、「人手不足の業界を救済するという善意が回り回って、人手不足業界を苦しめる悪循環を生み出してしまうという、何とも皮肉な結果となっている」、同感だ。「ベトナム人」によるブタ盗難事件も記憶に新しいところだ。
・『「GAFA規制」にも見える政治家と特定業界との癒着 こういう過去の事例を踏まえて、次にこのパターンに陥るのではないか、と筆者が心配している「善意の政策」がある。それは、「GAFA規制」である。 ご存じの方も多いだろうが、今世界的にGAFAの力を抑えようという潮流がある。つい先日もEUで、巨大IT企業が自社サイトで同業他社に対して自社のサービスなどを優先的に扱うことを厳しく制限するほか、ユーザーごとに表示されるオンライン広告の基準の開示などを義務づけるという規制案を発表。これに違反した場合、年間売り上げの最大10%を制裁金として科すという。 こうした欧州のムードを受けて、日本でも2020年5月、巨大IT企業に取引の透明性向上や情報開示を求める「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が成立している。現在、2021年春の施行を目指し、要件の詳細などが議論されている段階だ。 「いいことじゃないか」という声が聞こえてきそうだ。もちろん、巨大企業が優位的な立場を生かして、自由な競争を阻害するようなことは許されない。特にGAFAなどは社会的な影響力も強いので、公平性や透明性がより求められるというのも全く異論はない。 ただ日本の場合、これまで見てきたように、有力政治家とパイプのある特定の業界を利する政策がつくられるというパターンが圧倒的に多い。国内産業保護が過度に優先されたり、菅義偉首相など政権幹部に近い企業や業界の利益を守るような規制になりかねないのである。 そうなったとき、「巨大企業の市場独占を抑える」という一見社会のためになる政策のもとで、「地獄への道は善意で舗装されている」といういつもの負けパターンに陥ってしまう恐れがあるのだ。 少し前、その危険性を示唆するような調査が出た。慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授の試算レポート『対デジタルプラットフォーマー規制強化に伴う地方企業への悪影響』によれば、デジタルプラットフォーマーへの過度な規制強化が行われた場合、地方企業のデジタル広告経由の売り上げが、5年間で最大6.47兆円毀損される可能性があるという。 ご存じのように、グーグルやフェイスブックなどデジタルプラットフォーマーへの広告は、テレビや新聞などのマス広告に比べて、かなり少額から出稿できる。そして、影響力がある。地方企業が全国ネットでテレビCMを流したり、全国紙に出稿したりすることはかなりハードルが高いが、デジタルならば手軽に全国の客にリーチできるというメリットがあるのだ。 しかし、これが規制の対象となると、デジタルプラットフォーマー側もその対応でコストが上がるので、それが広告費の値上げにつながって、結果として地方の中小企業や小規模事業者を苦しめる恐れがある、とこのレポートでは指摘しているのだ』、「岩本隆特任教授の試算レポート」の指摘はその通りなのだろうが、この研究が「デジタルプラットフォーマー」から資金援助されてない中立なものであってほしい。
・『「日本のためになる」という思い込みで突き進む地獄への道 もちろん、これはあくまで最もネガティブなシナリオにおける試算であって、必ずしもこれが現実になるとは限らない。ただ、これまでの「外国人労働者の受け入れ拡大」「Go Toトラベルのゴリ押し」のように、やることなすこと裏目に出ているという「実績」を踏まえると、そこまで荒唐無稽な話ではないような気もしている。 太平洋戦争の時代まで遡って日本の近代史を学べば、政府とマスコミが「これが日本のためになるベストな政策なのだ」と胸を張っているときほど、立ち止まって慎重に検証をしなくてはいけないというのは明らかである。「我々は絶対に間違っていない」と叫びながら「地獄への道」を突き進むというのが、日本の典型的な負けパターンだからだ。 菅首相も、仲の良い人たちや、チヤホヤしてくれる人たちと「密」になって忘年会をするのも結構だが、そろそろ自分の政策に対して厳しい批判をするような人たちの声に、真摯に耳を傾けた方がよろしいのではないか』、「菅首相」は言うまでもないが、各省庁も審議会などを隠れ蓑にして政策実現を図っているが、その運営ももっと開かれたものにしてゆくべきだろう。
第三に、12月17日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「後手に回った政治の決断、「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78420?imp=0
・『専門家は11月には停止の声 後手後手に回った結果、最悪のタイミングになった。「GoToトラベル」の「一時停止」である。 菅義偉首相は12月14日、「GoToトラベル」を12月28日から1月11日まで全国一斉に「一時停止」することを表明した。ようやくの「政治決断」である。 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は12月9日、衆議院の厚生労働委員会で立憲民主党の山井和則議員の質問に答えて、「分科会はステージ3相当の地域は、感染のこの状況を打開するには、GoToを含めて人の動き、接触を控える時期だと思う」と発言。「ステージ3ということは東京を含めて一時停止すべきか」との重ねて問われたのに対して、「分科会はそう思っています」と明確に答えた。 実は、分科会の議論では11月の早い段階から、「GoToトラベルの一時停止」を求める声がメンバーから出されていた。 しかし「GoToトラベル」という政府の政策に関する決定は「政治家の仕事」で、専門家はその材料を提言するにとどめるべきだという考えがあった。結局、11月中に尾身会長が直接「一時停止」に触れることはなかった。それを翻して国会質問で踏み込んだのは、政治が決断しない状況が続いたからだった。 尾身会長が踏み込んでも菅義偉首相は「一時停止」の決断をためらった。尾身会長は12月11日に記者会見し、同日開いた分科会の結論として感染拡大地域の「GoToトラベル」を一時停止するよう正式に求めた。にもかかわらず、菅首相は決断をまだ躊躇していた。 同日夜に出演した「ニコニコ生放送」で、GoToトラベルの一時停止を問われると、「まだそこは考えてません。考えていないというか、きょう提言を受けたわけですから」と答えていた』、「尾身会長が踏み込んでも菅義偉首相は「一時停止」の決断をためらった」、確かに「政府の政策に関する決定は「政治家の仕事」」、とは言っても、理由をきちんと説明すべきで、「ニコニコ生放送」で油を売るなどもってのほかだ。
・『世論調査に押されてやっと そうした姿勢を180度、菅首相が変えたのは、分科会の専門家から受けた厳しい提言を熟考したからだろうか。どうもそうではない。 一時停止を表明した12月14日にNHKが発表した世論調査で、菅内閣の支持率が42%と、11月の調査から14ポイントも低下した。「支持しない」と答えた人も17ポイント上昇して36%となった。支持と不支持の逆転こそ起きなかったが、支持率の急低下が鮮明になった。 同じ調査で、「新型コロナをめぐる政府への対応」について「まったく評価しない」が16%、「あまり評価しない」が40%に達したほか、「GoToトラベル」について「いったん停止すべき」と答えた人が79%にのぼり、「続けるべき」とした人の12%を大きく上回った。 実は、その2日前の12月12日には毎日新聞の世論調査結果が公表され、内閣支持率が40%、不支持率が49%と不支持が支持を上回っていた。永田町に動揺が走ったが、毎日新聞はもともと菅内閣に批判的で、政府に厳しい結果が出がちだとの見方もあった。 それが、政権に比較的近いと見られているNHKの調査でも支持率が急落したため、菅官邸は何らかの手を打たざるを得なくなったとみられている。つまり、専門家の声を聞いたからではなく、支持率が急低下したから、決断したということのようなのだ』、「世論調査結果」は、反政府的な「毎日新聞」ではなく、「政権に比較的近いと見られているNHK」が決め手になったとは、最後の望みも絶たれたということなのだろう。
・『年末年始シーズンはこれで台無し 結果をみれば、菅首相の決断は遅過ぎた。11月の上旬に感染拡大が懸念されていた地域だけでも「一時停止」を決めていれば、12月に入ってここまで感染拡大は起きず、年末年始の「書き入れ時」に人の動きを止めずに済んだかもしれない。最悪のタイミングでの「一時停止」を避けることが出来たかもしれないのだ。 何せ11月21~23日の3連休は各地の観光地で猛烈な人出となった。紅葉が見頃を迎えた京都嵐山では、昨年11月の休日平均に比べて、最大で1.6倍を記録していた。凄まじい人出だったのだ。 それにもかかわらず、GoToトラベルと新型コロナ拡大の因果関係があるとは「我々は見ておりません」と菅首相は言い続けた。 菅首相が「一時停止」をなかなか決断できなかったのは、それだけ「GoToトラベル」の効果が大きかったこともある。 7月22日から11月15日までの利用者数は、少なくとも5260万人泊、割引支援額は少なくとも3080億円にのぼった。地域共通クーポン券を除いた宿泊旅行代金の補助だけで2509億円に達しており、自己負担分も含めると7000億円以上のお金が宿泊業を中心とする旅行業者に落ちたことになる。まさに「GoTo特需」だったわけだ。 年末年始の「一時停止」によって、旅館やホテルなどには予約のキャンセルが殺到しているという。 旅行者にキャンセル料はかからないうえ、事業者にも旅行代金の50%が補償金として国から払われる。ひとり1泊2万円の上限があるので、高級旅館・ホテルなどはコスト回収は難しいが、一定の助成によって、事業者は壊滅的な打撃を受けなくても済む、というのが政府の見方だ』、「7月22日から11月15日までの利用者数は、少なくとも5260万人泊、割引支援額は少なくとも3080億円・・・自己負担分も含めると7000億円以上のお金が宿泊業を中心とする旅行業者に落ちた」、確かに効果も大きかったが、副作用も大きかったようだ。
・『一番脆弱な雇用を痛撃 もっとも、最大の稼ぎ時である年末年始の利用客が減れば、パート従業員やアルバイトなどの仕事が減ることになりかねない。「宿泊業・飲食サービス業」の就業者数は10月段階で前年同月比10%近く減っているが、年末年始の雇用情勢が大きく悪化することになりかねない。 こうした雇用対策も含め、もう少し早く政治決断していれば、対応の仕方があったのにと悔やまれる。 菅内閣が発足して3カ月、国民への説明力が乏しいという菅評が定着しつつある。そこに「優柔不断」「決断できない」と言ったマイナス評価が加わるのを避けようと、「全国一斉」に「GoToトラベル」の一時停止を広げたようにも見える。 専門家は「感染拡大地域」の一時停止を求めていたが、その意見にはまともに向き合わなかったということだ。 大きな犠牲を払って人の動きを止める今回の措置が成果をあげ、新型コロナの感染拡大が止まることを祈るばかりだ』、「鉄壁ガースー」も二階幹事長に遠慮するの余り、賭けは裏目にばかり出ているようだ。
第四に、12月19日付け日刊ゲンダイ「第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/282905
・『「感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない」――。肝いりの「Go To トラベル」をめぐる批判に、こう繰り返してきた菅首相だが、「言い逃れ」はもはや通用しない。新型コロナウイルスの感染拡大とトラベル事業の因果関係を示す「エビデンス」が示されたからだ。 注目を集めているのが国立感染症研究所が発表した「新型コロナウイルスSARS―CoV―2のゲノム分子疫学調査」と題されたリポート。新型コロナのゲノム配列を分析したもので、4月と8月の調査と合わせて3回発表されている。その目的は、ウイルスのゲノム情報を分析し、分かりやすい形で「ウイルス同士の関連を可視化」すること。ウイルスの由来や感染の広がり方をゲノム分析を通じて調査しているのだ。 足元の感染再拡大に言及しているのが、今月11日に発表された3回目のリポートだ。今年10月末までのクラスター発生やウイルスの変異について説明していて、1回目と2回目の調査と突き合わせると、トラベル事業と感染拡大の間に重大な「エビデンス」が浮かび上がる。 医師で参院議員(国民民主党)の足立信也氏がこう解説する。 「全てのリポートを読むと、第3波がどんなウイルスによるものなのかを推測できます。日本国内では中国・武漢由来のウイルスの流行がひとまず終息した後、欧州型のウイルスが流入。3月から5月にかけて第1波が発生しました。収束の兆しが見えたものの、6月に経済活動が再開され、無症状者に感染する中で変異したウイルスが東京都や首都圏を中心に広がりました。夏の第2波の要因となったのは欧州型が変異したもので、いわば『東京型』だった。第2波が収まらないうちに『東京型』が拡散し、第3波へとつながっているのです」』、「感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない」との「菅首相」発言は、実は真相を知った上での嘘だった可能性もあるようだ。
・『国会の閉会を待って公表か 第2波を生んだ「東京型」が現在も流行中との指摘の根拠は、リポートに掲載された「ハプロタイプ・ネットワーク図」。簡単に言えば、ゲノム情報の変異に基づいて描かれたウイルスの“親子関係”を表す相関図のようなものだ。円形や楕円のクラスターが赤やオレンジに着色されている。 2回目のリポートの「ハプロタイプ・ネットワーク図」では、〈欧州系統の全国同時多発〉由来の〈国内クラスター群〉(第1波)がオレンジで描かれ、それとは別に〈6月中旬より“突然顕在化”したクラスター〉群(第2波)が赤で描かれている。そして3回目の報告書の図では、7月から10月末までに国内で検出されたウイルスによるクラスターは赤色で表記。つまり、「東京型」に由来するクラスターだと分析されているのだ。 トラベル事業は、感染がくすぶる東京都を除外して7月22日に前倒しスタート。10月1日に人口1400万人を抱える東京が追加されて以降、感染がみるみる深刻化した。 この図は、トラベル事業によって『東京型』が全国にバラまかれた傍証です。収束しかけた第2波の『東京型』が再燃していると言ってもいいでしょう。リポート発表のタイミングが不自然なのも気になります。3回目の調査は〈10月26日現在〉と書かれていますが、発表されたのは臨時国会閉会から1週間ほど経った12月11日。1回目と2回目は調査から2~3週間で発表された。3回目はかなり間が空いているのです。閉会を待って発表されたのではないか」(足立信也氏) 酒類を提供する飲食店の時短営業やトラベル事業の全国中止が実を結び、「東京型」の流行が一服したとしても、海外との往来緩和で欧州由来のウイルスが再流入する懸念もぬぐえない。科学的知見に目もくれず、専門家の意見にも耳を傾けない菅政権の下で、一体いくつの「波」に襲われることになるのか』、「10月1日に人口1400万人を抱える東京が追加されて以降、感染がみるみる深刻化した。 この図は、トラベル事業によって『東京型』が全国にバラまかれた傍証です。収束しかけた第2波の『東京型』が再燃していると言ってもいいでしょう」、「閉会を待って発表されたのではないか」、極めて悪質だ。これでは、菅政権の基盤も一段と弱まりそうだ。
タグ:実際には官庁が自らやりたい政策の必要性をPRするため、事前に「マスコミ」を誘導して書かせているケースが多いようだ 10月1日に人口1400万人を抱える東京が追加されて以降、感染がみるみる深刻化した。 この図は、トラベル事業によって『東京型』が全国にバラまかれた傍証です。収束しかけた第2波の『東京型』が再燃していると言ってもいいでしょう 日刊ゲンダイ 現代ビジネス 「閉会を待って発表されたのではないか」、極めて悪質だ。これでは、菅政権の基盤も一段と弱まりそうだ 「尾身会長が踏み込んでも菅義偉首相は「一時停止」の決断をためらった」、確かに「政府の政策に関する決定は「政治家の仕事」」、とは言っても、理由をきちんと説明すべきで、「ニコニコ生放送」で油を売るなどもってのほかだ。 「第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに」 「日本のためになる」という思い込みで突き進む地獄への道 「不支持」が「支持」を初めて逆転 「菅首相」は言うまでもないが、各省庁も審議会などを隠れ蓑にして政策実現を図っているが、その運営ももっと開かれたものにしてゆくべきだろう 国会の閉会を待って公表か 「菅首相」発言は、実は真相を知った上での嘘だった可能性も 感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない 鉄壁ガースー」も二階幹事長に遠慮するの余り、賭けは裏目にばかり出ているようだ 年末年始シーズンはこれで台無し 「ベトナム人」によるブタ盗難事件も記憶に新しいところだ 一番脆弱な雇用を痛撃 自己負担分も含めると7000億円以上のお金が宿泊業を中心とする旅行業者に落ちた」、確かに効果も大きかったが、副作用も大きかったようだ 7月22日から11月15日までの利用者数は、少なくとも5260万人泊、割引支援額は少なくとも3080億円 「世論調査結果」は、反政府的な「毎日新聞」ではなく、「政権に比較的近いと見られているNHK」が決め手になったとは、最後の望みも絶たれたということなのだろう 世論調査に押されてやっと 専門家は11月には停止の声 「後手に回った政治の決断、「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下」 磯山 友幸 「岩本隆特任教授の試算レポート」の指摘はその通りなのだろうが、この研究が「デジタルプラットフォーマー」から資金援助されてない中立なものであってほしい 「GAFA規制」にも見える政治家と特定業界との癒着 人手不足の業界を救済するという善意が回り回って、人手不足業界を苦しめる悪循環を生み出してしまうという、何とも皮肉な結果となっている 人手不足の業界が巡り巡って痛めつけられる外国人材の活用 日本人が嫌がるような低賃金重労働は、中国人もベトナム人も嫌がるに決まっているのだ 人手不足の業界で足りないのは人手ではなく賃金であって、これが日本の若者などの国内労働者から敬遠されている。そこで、外国人だったら低賃金でも文句を言わずに、ありがたがって働くだろうということで、「外国人材の活用」をぶちまけたわけだ 日本で働く外国人が姿をくらます本当の理由 「失踪する人も増えている」、深刻な問題だ 当時のマスコミの論調は 「入管法改正」で本当に日本は良くなったか 太平洋戦争突入もこの典型例 ヨーロッパの有名なことわざに、「地獄への道は善意で舗装されている」というものがある 「Go To」だけではない善意が事態を悪化させる政策 「Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」」 窪田順生 ダイヤモンド・オンライン 「自民党「観光族」の間に渦巻く不満」、族議員の視野狭窄が改めて浮き彫りになったようだ 自民党「観光族」の間に渦巻く不満 「ガースー」も「内閣支持率」の大幅「下落」は堪えたのだろう 言葉を引用し、「胸に響きます。国民に危機意識を伝える言葉です」と菅首相の不用意な発言と対比して批判した メルケル首相の 蓮舫参議院議員 「ニコニコ生放送」上での「みなさん、こんにちは。ガースーです」とのあいさつは、まさに「今はそれじゃない」と言う他ない 菅首相の指導力低下は不可避に 「菅首相、迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」、問われる首相の器」 泉 宏 東洋経済オンライン (その2)(菅首相 迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」 問われる首相の器、Go Toなどの善意の政策が悲惨な結果を招いてしまう「日本的な勘違い」、後手に回った政治の決断 「最悪のタイミング」でGoTo一時停止 「優柔不断」菅内閣の支持率低下、第3波元凶は「GoTo」だった 感染研レポートで浮き彫りに) GoTo問題
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