トランプ VS バイデン(その2)(2021年正月 米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令 ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ、日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由、バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力) [世界情勢]
トランプ VS バイデンについては、11月19日に取上げた。今日は、(その2)(2021年正月 米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令 ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ、日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由、バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力)である。
先ずは、11月30日付けJBPressが掲載したジャーナリストの堀田 佳男氏による「2021年正月、米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令、ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63070
・『新型コロナウイルスの感染者と死亡者が世界一多い米国。医療分野だけでも多くの問題を抱えているが、コロナに関連した深刻な社会問題も浮上してきている。 その一つが、家賃を支払えない賃借人が数百万の単位で、年明け早々に住まいを追い出されかねない問題である。 投資銀行業務やコンサルティングを手がける米スタウト社がまとめた資料によると、最大で647万世帯が住まいを退去せざるを得なくなるという。 家族を考慮すると1000万人を超えるとも言われる。どういうことかご説明したい。 コロナの感染拡大により米経済が大きな打撃を受け、春から失業者が増え始めた。4月の米失業率は14.7%にまで跳ね上がった。 以後、少しずつ改善して10月には6.9%まで落ち着いてきたが、それでもコロナ前の3%台には至っていない。 失業率が高止まりすることで再就職は簡単ではなく、解雇された人たちは収入減に見舞われた。 失職したすべての人たちが失業手当を受けられるわけではない。 首都ワシントンにある経済政策研究所(EPI)の試算では、何らかの理由で失業手当を受けられない人が、夏の段階で最大1390万人にのぼったという。 仕事を失って給与が入らなくなり、貯蓄も不十分で失業手当も受けられないと、家賃の支払いが滞る。 手持ちの限られた資金はまず食費などに当てられるため、生活は困窮する。 米国ではこうした境遇から、コロナ禍で家賃を滞納する人たちが増えてきている。日本でも家賃の滞納者はいるが、米国では日本と比較すると冷酷なまでに強制的な退去が行われたりする』、「647万世帯が住まいを退去せざるを得なくなるという。 家族を考慮すると1000万人を超えるとも言われる」、総統な規模な人々が家を失うようだ。
・『それでも米政府は滞納者にまず、定められた期限内に自主的に引っ越すように促す。それでも立ち退かない場合、裁判所に強制撤去を求めて退去命令が出される。 日本では賃借人の権利が保護されているため、家賃の支払いが数カ月滞っても追い出されることはまずない。 だが日米で法の執行に対する意識の違いと、賃借人と賃貸人の立場が違うことから、米国では強制退去が執行されてしまう。 ドナルド・トランプ政権はコロナ禍という事情を考慮して、家賃滞納者に対する強制退去の執行停止を命じるなど、方策を講じてきた。 だがそれで賃借人を一時的には救済できたとても、今度は家賃が入ってこないことで家主側は減収となり、本質的な問題解決にはいたらないのだ。 それでも、家賃を支払えない人たちの救済がまず優先されるべきとの理由から、トランプ政権の保険福祉省(HHS)内の疾病予防管理センター(CDC)は9月4日、特例措置を出した。 それは今年12月末日まで、住まいからの強制退去が猶予・禁止される(立ち退きモラトリアム)というものだった。 ここで注目したいのは、同措置を発令したのがCDCという点だ。 CDCは感染症対策の総合研究所であり、医療機関である。国交省のような役所ではない。 つまり、強制退去によって住む所を失った市民たちが増えることで、コロナ感染リスクがこれまで以上に高まるということである。 強制退去させられた人たちは、現実的には親族や知人・友人のところに移るか、シェルターや福祉施設、最悪の場合はホームレスになることもあり得る』、「立ち退きモラトリアム」を本来はお門違いの「CDC」が「発令した」のは、放置すれば、家を追い出された人々への感染拡大が懸念される以上、ある意味で当然だ。
・『医療関係者が憂慮するのは、強制退去させられた人たちが密集した場所で寝起きすることで、今以上にコロナウイルスの感染者・死亡者が増加することなので、CDCが分野違いとも言える措置を出したのだ。 幸い、年内は強制退去が執行されないので、支払いの滞った賃借人もいまの住居にいられるが、年明け早々、退去せざるを得なくなる人たちがでるのは間違いない。 11月末、米「ファスト・カンパニー」誌は「米600万世帯が1月1日に強制退去されるかもしれない」というタイトルの記事を出し、深刻な社会問題が待ち受けうけていると警鐘を鳴らした。 トランプ政権が1月1日以降にさらなるモラトリアムを出すことはありそうもない。いま米国では、バイデン新政権が別枠で温情を示せるかに焦点が移っている。 ただ新政権誕生は1月20日であり、年明けから20日間、バイデン政権は何もできない。その間に強制退去が施行されて、家を追われる人が出てしまう恐れがあるのだ。 強制退去を命じられた人たちを救うことはできるのか。同問題に詳しいウェイク・フォレスト大学法律大学院のエミリー・ベンファー教授はこう述べる。 「バイデン氏が退去を求められている人たちを救済することは十分に考えられます。年明けから3週間以内に滞納している賃貸者を追い出すかどうかは家主にかかっていますが、当面の解決策としては、政府が直接的な財政援助に動くかどうかです」 さらなる問題がある。 9月初旬にCDCが発令した強制退去の猶予・禁止は家賃の支払いを一時的に棚上げにしたが、それは逆に、過去から積み重なった滞納分を含めて、支払うべき金額が増えることにつながった。 強制退去の対象になっている数百万世帯の多くは低所得者層の人たちであるため、さらに支払いが難しくなる。 トランプ政権が今月中に新たな手立てを示さず、連邦議会も救済策の法案を通過できない場合、バイデン政権が誕生するまで州を含めた地方自治体が負担を背負うことになる可能性が高い。 米国勢調査局が11月初旬にまとめた報告書によると、約1160万人が来月の家賃・住宅ローンの支払いができない状況であるという数字がでている。 最初に示した647万世帯という数字は「最悪の場合」という設定ではあるが、バイデン政権が発足から荊の道を歩まざるを得ないことが明らかである。 米国の住宅事情とコロナ禍による感染状況は悪化の一途を辿ることになりそうだ』、新大統領就任直前の空白期間にどう対処するのか、大いに注目される。
次に、12月18日付けダイヤモンドオンラインが掲載した元日銀でトランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボード、中部大学経営情報学部教授の酒井吉廣氏による「日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256812
・『混迷を極めた米国大統領選挙。過去にない接戦の結果、バイデン勝利の確率が高まっています(トランプ陣営は負けを認めておらず、1876年以来の下院での投票に持ち込まれる可能性がわずかに残っています)。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードも務め、米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。これら先、世界はどう変わるのか、本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末についてご紹介しましょう。連載1回目となる本記事でお伝えするのは、なぜ日本のメディアやビジネスパーソンが、米国の実情を理解できていないかという問題について。その裏側には構造的な課題があります。 私たちがこれまで生きてきた世界のルールが、根底から変わりつつある――。 今、世界の大きなうねりを肌で感じている人は、決して少なくはないはずです。 それにもかかわらず、日本ではピント外れの議論ばかりが繰り返され、なぜ米国と世界がこのように変わっているのか、明瞭に説明できる人がほとんどいないように感じています。 日本国内で報じられる情報は、リベラルな立場を支持するCNNなど、民主党寄りのメディアの翻訳ばかりです。ドナルド・トランプ第45代大統領を支持する保守的な立場のFOXニュースなど、共和党寄りのメディアがどのように米国や世界を報じているのか、ほとんど日本で語られることがありません。 つまり日本人は、米国の世論のうちの「片側」しか知らないままなのです。そんな状況で、日本人が米国や世界の本音を知ることはまずできません。 私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。 米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。 だからこそ、私に伝えられることがあるに違いないと思い至りました。 日本の政府や企業、ビジネスパーソンの多くが、世界を動かす新しいルールを知ることなく、古い価値観にとらわれたままだと、この先の国際競争に大きく劣後する可能性がある――。 そんな危機感を強く抱いています』、「ホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました」、とは日本人としては極めて珍しい存在だ。
・『米国と世界の新しいルールとは何か なぜ、米国と世界が変わったのか。そして新しいルールとは何か。 著書『NEW RULES 米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』では、なるべく中立的な立場で解説しましたが、中にはこれまでほとんど日本で報じられることのなかった視点や切り口も多分に含まれています。そのため、読者のみなさんに戸惑いを与えてしまうかもしれません。 しかし最後まで読み進めていただければ、新しいルールで動き出した先に世界がどうなるのかがクリアに見えてくるはずです。 +なぜ米国民は、あんな下品な不動産王を世界の大国の大統領に選んでいたのか。 +米国はどうして繁栄の象徴でもあるグローバリゼーションを止めたのか。 +バラク・フセイン・オバマ第44代大統領は抑圧されてきた人々を優遇したのに、トランプ大統領は残酷だ。 +米国が自分たちの事情だけを考えて“世界の警察官”を辞めるのは都合が良すぎる。 +世界一の経済大国が、どうしてポピュリズムに転じたのか。 +欧州連合(EU)から離脱することを選んだ英国民は愚かなんじゃないか。 +EUの各国でポピュリズム政党が存在感を高めているのが理解できない。 2020年、米国や英国、EUは自国優先の経済政策を推し進めています。 トランプ大統領が米国で実践してきた所得税や法人税の大幅減税やインフラ投資の強化、大規模な規制緩和などを打ち出して強い米国を取り戻そうとする政策は、今では「トランプノミクス」と呼ばれ、世界の主要な国々も実践するようになりました。 トランプノミクスは、絶対王政時代の利益優先の経済とも共通しているということで、「新重商主義」とも表現されます。 第二次世界大戦以降、国際社会は互いに協調しながらグローバリゼーションを進め、共に発展し、米ソ冷戦の終結でそれは加速しました。 トランプノミクスは、これまで長く続いたグローバリゼーションと正反対の動きである―。トランプが大統領に就任してからは、こんな批判をよく受けます。グローバリゼーションを止めるのは世界全体の経済発展の持続性にとってマイナスである、というのです』、「トランプノミクスは、絶対王政時代の利益優先の経済とも共通しているということで、「新重商主義」とも表現されます」、「新重商主義」とは大げさな感もあるが、「利益優先の経済」であれば、やむを得ないだろう。
・『トランプノミクスが生まれた背景 過去50年間の米国と世界の中心となった経済学は「レーガノミクス」でした。 ロナルド・レーガン第40代大統領が1980年代前半に実践した経済政策で、トランプノミクスはこれを復活させようと考えたものです。 しかしレーガノミクスも、発表した当時は、のちの副大統領のブッシュ(父)でさえ、魔術的な経済学だと批判したような政策でした。レーガノミクスを立案したジャック・ケンプ元下院議員は2002年4月、私にこう打ち明けてくれました。 「レーガノミクスでは、減税をすると税収が増えます。一見すると論理矛盾があるように感じるので反対者が多いのは当然のことでした。レーガノミクスを実施する前の1979年には在イラン米国大使館人質事件などがあり、景気低迷を含めて米国全体が沈滞ムードに覆われていました。そんな状況なのにレーガノミクスを実践して国民の勤労意欲を駆り立てようとしていたのだから、夢物語と批判されるのも覚悟の上でした」 なぜトランプノミクスが生まれたのか。 背景にあったのは、国際経済学の基本でもある比較優位の原則が成立しにくくなってきたことでした。低コストの労働力を豊富に持つ国が増え、世界全体の貿易バランスを保つことが難しくなっていったのです。しかも米国のほかに、国際連合や世界銀行といった国際的な機関からも支援を受ける後進国は、それらの支援をうまく生かして先進国を追い抜くきっかけを模索するようになっていきました。米国が今、猛烈に中国を意識して批判する原点にも、このしこりが横たわっています』、「レーガノミクスも、発表した当時は、のちの副大統領のブッシュ(父)でさえ、魔術的な経済学だと批判したような政策でした」、「魔術的な経済学だと批判」は知っていたが、それを「ブッシュ(父)」が言ったとは初めて知った。
・『ファンドの台頭で加速した繁栄の終わり こうした動きを加速させたのが、株式市場で徹底して利益を求めるファンドの台頭でした。ファンドは、世界が力を合わせて技術開発などの恩恵に浴することよりも、利益を極大化してコストダウンを突きつめることを企業に求めてきました。 この影響で、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は急成長し、従来型の製造業や小売業などは大規模化や合理化を進めていきました。人々の生活はより便利になりましたが、一方では富の偏在も加速していったのです。 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)は、私たちに新たな生活様式や働き方に変化を迫ると同時に、最新技術についていけるか否かによって、職業格差を生み出しつつあります。それも新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界を覆う変化のスピードは加速度的に速まっています。 恐らくあと30年もすれば、世界経済は今から想像もできない変化を遂げているはずです。しかもこの流れは、能力のある者とそれ以外の者を残酷に選別します。 2020年5月、米国ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人のジョージ・フロイド氏を殺したことで、全米のみならず世界中に広がった人種差別の抗議活動も、急激な変化にさらされる中で常に「負け組」の側に取り残される人々の反抗と言えます。 トランプ大統領が声高に叫ぶ「米国への製造業の回帰」は、徹底したコストダウンのために国外に出ていった米国企業への対応であり、ブルーカラーと言われる人々を含めて、米国全体の経済を底上げしようと狙ったものでした。 そう考えると、「アメリカ・ファースト」は歴史の必然でもあります。米国企業が安心して自国に回帰して経営できるよう、所得税や法人税を減税しようと考えたわけです。 だからこそトランプ大統領は、かつてレーガン大統領が米国を復活させるとの思いを込めて、「Make America Great Again」と繰り返し訴えているのです』、「海外に出ていった「米国企業」が戻ってきた例はどの程度あるのだろう。
・『日本人が米国と世界を理解できないワケ 私のキャリアは、日本銀行からスタートしました。金融政策部署(営業局=現金融市場局)とプルーデンス部署(考査局=現金融機構局)などで働いた後、野村ホールディングスに転じ、ワシントンやニューヨーク、ロンドンやシンガポール、香港、北京といった世界の金融都市で働き、主に金融や証券などの事業に携わってきました。その後は日本政策投資銀行のほか、ワシントンや北京のシンクタンクや大学で、エコノミストや政治外交アナリストのような仕事をしてきました。現在も米国の政府関係などで仕事をし、世界の政治経済を分析しています。 私は幸運にも、金融経済業界を軸にしながら、世界の主要都市で幅広い業界の人々と知己を得ました。その中で、私が出会った米国人の多くが共和党員か共和党支持者であったことから、私自身も自然に共和党員に近い考え方で物事を理解するようになりました。 米国での最初の仕事は、日本銀行で不良債権の処理について、米国のかつての処理策を調べて日本に早期の直接処理を提案することでした。ここで日本と米国の考え方や商慣習の違いについて理解を深めることができました。 そして米国人の発想方法がより深く理解できるようになるほど、冒頭で触れたように、私の中での違和感が大きく膨らんでいったのです。 日本に住むみなさんに、世界を動かす人々のリアルな本音と思考方法を伝えたい。 米国や中国、そして世界の主要国が何を考え、どのようなルールに基づいて政策を決定しているのか。著書『NEW RULES 米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』では、世界を動かす新しいルールがどういったものなのか、みなさんに分かりやすくお伝えしようと試みました。 願わくは、近視眼的な観点で私の予測を評価するのではなく、大きなうねりの根底に何があるのかというところから見渡せる米国と世界、そして日本の未来をみなさんと共有できれば、これに勝る幸せはありません。 次回からは米国と中国、そして世界と日本が2021年以降、どのように変わっていくのか予測した内容を、みなさんにお伝えしていきます。 (酒井氏略歴はリンク先参照)』、惜しむらくは、「トランプ」退陣ではなく、登場の時であれば、もっと役立ったろう。
・『本書の見どころ 混迷の大統領選を経て、2021年1月には民主党のバイデン政権がスタートします。世界はこの先、未曾有の大混乱に突入していきます。日本人がこれまで尊んできた平和な世界はもう終わりました。 グローバル経済や民主主義、自由主義など、これまで世界の経済発展と平和をけん引してきたルールが変わったのです。では、新しいルールは何か。 米大統領選挙でトランプ陣営のアドバイザリーボードを務め、共和党と民主党の両陣営に詳しい著者が「米国の中枢の内側」から、新しい世界を支配するルールについて解説します』、興味深そうだ。
・『本書のポイント (1)米国と中国、世界をめぐる「なぜ」が、どの本よりも分かりやすく理解できます。 +なぜ、あんな下品な男が大統領だったのか +なぜ、米国はグローバリゼーションを止めたのか +なぜ、世界はポピュリズムに転じるのか +なぜ、米国は中国を目の敵にするのか +EUから離脱する英国は、愚かなんじゃないか +一体、いつから世界の主要国は自分勝手になったんだ リベラル層やリベラル寄りのメディアの情報だけでは分からない、米国の中枢の思考法や意思決定について、トランプ陣営の大統領選挙選アドバイザリーボードの一員でもある著者が、「中の日本人」として分かりやすく解説します。 (2)新しい世界を動かすルールと、その原理原則が、いちはやく理解できます。 +米国VS中国、21世紀の新冷戦、2020年以降の世界を動かす原動力に +コロナ禍を踏み台に、米国経済はさらに伸びる +米国の頭脳は旧来のエスタブリッシュメントから「新たなエリート」の手にわたる +近い未来に朝鮮半島は統一し、そして米国と中国の緩衝地帯になる +気候変動でアフリカから大量の難民が欧州へわたり、欧州経済はひっ迫 +財政基盤まで統合して、ついにEUは一つの国になる +日本は「米国隷従」を続け、米国と中国の間を取りもつように』、なるほど。
・『主な目次 第1章 トランプに至る米国の必然 第2章 トランプ政権、絶大なパワーの源泉 第3章 トランプ大統領は愚者か賢者か 第4章 新しい「重商主義」に舵を切った米国 第5章 ついに始まった米中新冷戦 第6章 中国弱体化を仕掛ける米国 第7章 本格的に「一つの国」へ向かうEU 第8章 世界を動かす新しい10のルール』、ヒマが出来たら読んでみたい。
第三に、この続きを、同じ酒井吉廣氏による12月20日付けダイヤモンドオンライン「バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256824
・『過去にない大統領選挙の結果、バイデン勝利の確率が非常に高まっています しかしトランプ陣営はまだ負けを認めておらず、1876年以来の下院での投票に持ち込まれる可能性もわずかに残っています)。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードも務め、米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。これら先、世界はどう変わるのか、本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末についてご紹介しましょう。連載3回目となる今回は、2021年から始まるであろうバイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」が世界に与える影響についてご紹介します』、「アメリカ・ファースト」が「バイデン新政権でも続く」、とはやれやれだ。
・『米国は新しい重商主義で世界を変える 「米国支配による平和」を意味する「パックス・アメリカーナ」という言葉は、歴史的には第二次世界大戦が終わった1945年に使われ始めました。 当時の米国は戦後の復興援助計画「マーシャル・プラン」を実施して欧州を援助する一方で、太平洋戦争に負けた日本の戦後復興はアジア諸国の中でも最後に回しました。 米国が戦争で傷んだ世界各国の中から復興させる国や地域を選び、優先順位を付けて支援をしていったのです。まさに米国の力によって世界平和が保たれているということで、「パックス・アメリカーナ」という言葉が使われていました。 歴史を振り返れば、古くはジュリアス・シーザーなどが活躍したローマ時代を指して「パックス・ロマーナ」、あるいはチンギス・カンの子孫がユーラシア大陸のかなりの部分を支配したことを指して「パックス・タタリカ」と呼ばれてきました。 「パックス・アメリカーナ」とは世界史においてはローマ帝国、モンゴル帝国に続く3回目の世界の支配者が米国であるということを意識した言葉です。もっとも、その後は米国とソ連の間で冷戦構造が誕生したことで、「パックス・アメリカーナ」は形を変えていきました。 1945年に英国の作家ジョージ・オーウェル氏は『あなたと原子爆弾』という作品の中で「冷戦」という言葉を出し、1946年には英国の首相も務めたウィンストン・チャーチル氏がかの有名な「鉄のカーテン」の演説をしました。 これと前後して米外交官のジョージ・ケナン氏が勤務先のモスクワ大使館から長文の「ソ連封じ込め戦略」を打電し、その戦略がトルーマン政権内で本格的に検討されるようになりました。 1947年になると、ハリー・トルーマン第33代大統領は、第二次世界大戦で国力を消耗した英国に変わり、米国がギリシャとトルコを守ると宣言しました。同じ年には欧州の戦後復興計画「マーシャル・プラン」も発表されました。 いずれも、背景にあったのはソ連を中心とした共産主義勢力の台頭です。 最終的に1949年にソ連が核実験を成功させたところで、世界は「パックス・アメリカーナ」が終わったことを理解しました。そして「パックス・ルソ・アメリカーナ」(ソ連の存在を認めながらの米国支配による平和)という時代に入ったのです。 米ソ冷戦時代を含めたパックス・ルソ・アメリカーナ時代、米国は世界の安全保障や経済の安定に積極的に関与する強い意志を持っていました。 米国は日本の経済復興はアジア諸国の中でも最後にするという方針でしたが、1950年に始まった朝鮮動乱で状況は一変しました。日本に朝鮮特需の恩恵を与えると同時に独立国としての国連加盟を認め、日本を共産主義に対する極東の防波堤とすべく、日米安全保障条約を締結して西側陣営に組み込みました。 日本は西太平洋における米国の“代貸”となり、日本列島そのものが米軍基地の役割を果たすようになったのです。同時に米国の肝入りで経済復興を加速し、やがて世界第2位の経済大国に成長しました』、「米国は日本の経済復興はアジア諸国の中でも最後にするという方針でしたが、1950年に始まった朝鮮動乱で状況は一変しました」、「朝鮮動乱」は日本には有利に作用したようだ。
・『戦後75年続いた秩序をひっくり返す 20世紀初めに新興勢力だった米国は当時の既存勢力だった英国の覇権に挑み、そして勝利しました。背景には第一次世界大戦への米国の参戦、第一次世界大戦で主役となった英国とフランスに対する借款の棒引き、第二次世界大戦への参戦がありました。 ただ、米国の勢いは徐々に衰えています。 為替の面では1971年にドルと金の兌換停止を決め(ニクソン・ショック)、為替相場もそこからは対円でドル安が進みました。それ以降、世界は市場に価格決定機能を委ねる変動相場制に移行しました。安全保障面を見ても1989年に米ソ冷戦が終結しましたが、2001年にはテロとの戦いが始まり、結果的にそれが中国の台頭を招いてしまいました。 1975年に始まった主要国首脳会議(当時はG5サミット)は1993年の欧州連合(EU)の誕生以降、協調を強めながら世界の政治経済を運営する考え方が強まりました。EU全体は世界経済の発展は目指したものの、米国に貢献することはありませんでした。 やや前置きが長くなりましたが、「パックス・アメリカーナ」から米ソ冷戦時代の間に構築され、その後の30年間で進化した国際秩序、言い換えれば第二次世界大戦後からおよそ75年続いた世界のルールをひっくり返そうとしているのが、現在の米国です』、「テロとの戦いが始まり、結果的にそれが中国の台頭を招いてしまいました」、初めて知った。
・『米国は、もう世界を救わない トランプ大統領はしばしば、北大西洋条約機構(NATO)に対する拠出金の削減を求めてきました。NATO加盟国が相応の防衛費の負担をしていないことでも批判を繰り返してきています。 こうした米国のNATO軽視を批判する声もあります。しかし、第二次世界大戦以降75年が経過し、NATOの役割が変わってきていることを無視してはいけません。 NATOはソ連を中心とする共産圏に対抗するための西側陣営として誕生したものです。大前提となったソ連のワルシャワ条約機構(ソ連と東欧8カ国が結成した軍事同盟)は、ソ連の解体で消滅し、東欧諸国は競ってEUとNATOに加盟しています。 米ソ冷戦終結前には、デンマークの首都コペンハーゲン近くの基地からソ連の旧都サンクトペテルブルク(冷戦当時はレニングラード)まで3000キロもあった距離が、今ではNATOに加盟するバルト三国の一つであるエストニア共和国のロシア国境沿いの都市から、サンクトペテルブルクまでの距離はたった140キロしかありません。つまりNATOはもう、中長距離ミサイルや長距離爆撃機などを前提とした軍備の必要がなくなったのです。本来なら必要な予算は見直されてもいいはずです。 現在、NATOの海軍はインド洋で海賊退治をしていますが、果たしてそれが本来のNATOの役割なのかということも再考すべきでしょう。 NATO加盟国の拡大に伴って中距離ミサイルは不要になりましたが、その結果、中距離ミサイルの開発で米国は中国やロシアに後れを取りました。対中国という観点で中距離ミサイルの開発は不可欠です。現在、米国はその後れを取り戻すために必死で中距離ミサイルを開発しています。 米国はNATO加盟国に対して経済力に応じた分担をすべきだと主張していますが、その背後には現状の予算規模に対する疑問がありました。世界の構造そのものが変わったのに、なぜ旧来通りの考え方を変えないのかと問うているわけです。 同じことは、在韓米軍の維持経費についても起こっています。米国が韓国に対して、在韓米軍に対する支出を5倍に引き上げるよう求めるのも、仮に韓国が地続きの北朝鮮と戦うことになったとしても、海軍がないに等しい北朝鮮を攻めるのに軍艦を増やす必要はなく、そんなムダ遣いをするくらいなら駐留経費を支払ってほしいと主張したまでのことです。 EUは、コロナ禍で経済が疲弊した加盟国を支援すると決めました。 恐らくEUの経済が元の状態に戻る数年後まで、EUは本格的な国際競争力を削がれた状態が続くはずです。それでも今回、米国が第二次世界大戦後のように復興支援計画を用意して欧州を支えることはないでしょう。 この先、米国は何よりも自分たちの復興と繁栄を優先させるはずです。世界をまんべんなく栄えさせるよりも、EUを離脱した英国や日本との二国間の自由貿易協定(FTA)を前提に仲間内で繁栄を分かち合うことを選ぶはずです。 そもそも今回の新型コロナウイルスは、第二次世界大戦のように欧州全土を焦土としたわけではありません。財政規律を守る北欧の国々は自力での復興に成功しつつあります。 問題は緊縮財政を取らずにEUが求めた財政赤字の対GDP比率を守らなかったポピュリズムの国々ですが、彼らを米国が助ける義理はありません。 一方でユーロ共同債の発行を決めるなど、ドイツは自国民の税金をこうした国々に使うことを決断しました。EUの盟主であり続けるための対価を支払おうと決断したわけです。 第二次世界大戦後の75年、米国は自分たちの国を最優先するよりも世界の秩序を守るために動いてきました。しかし、もう旧来型の構図は限界を迎えたようです。 これから米国が軸に据えるのは「アメリカ・ファースト」です。 その上で、米国が合意できる相手とだけ合意できる点で手を結び、新しい「パックス・アメリカーナ」を構築することになるのでしょう。先に例を挙げたNATOや韓国だけでなく、日本もこの先は米国の要求に驚くことがあるはずです。 米国の要求の根底にある思想は何なのか。米国の腹づもりが事前に分かっていれば、きっと私たち日本人が無茶な米国の要求に振り回されることは減るでしょう。 戦後75年続いた平和な時代は終わりました。 自国の事情を何よりも優先する米国とうまく交渉する胆力が求められます。 (この後は、上記記事と同じなので、省略)』、「NATOに加盟するバルト三国の一つであるエストニア共和国のロシア国境沿いの都市から、サンクトペテルブルクまでの距離はたった140キロしかありません。つまりNATOはもう、中長距離ミサイルや長距離爆撃機などを前提とした軍備の必要がなくなったのです」、確かに政治的環境が激変すれば、軍事戦略も大きく変わる筈だ。「ユーロ共同債の発行を決めるなど、ドイツは自国民の税金をこうした国々に使うことを決断しました。EUの盟主であり続けるための対価を支払おうと決断した」、「これから米国が軸に据えるのは「アメリカ・ファースト」です」、「(日本は)自国の事情を何よりも優先する米国とうまく交渉する胆力が求められます」、「日本」の外交力が問われる時代になったようだ。
先ずは、11月30日付けJBPressが掲載したジャーナリストの堀田 佳男氏による「2021年正月、米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令、ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63070
・『新型コロナウイルスの感染者と死亡者が世界一多い米国。医療分野だけでも多くの問題を抱えているが、コロナに関連した深刻な社会問題も浮上してきている。 その一つが、家賃を支払えない賃借人が数百万の単位で、年明け早々に住まいを追い出されかねない問題である。 投資銀行業務やコンサルティングを手がける米スタウト社がまとめた資料によると、最大で647万世帯が住まいを退去せざるを得なくなるという。 家族を考慮すると1000万人を超えるとも言われる。どういうことかご説明したい。 コロナの感染拡大により米経済が大きな打撃を受け、春から失業者が増え始めた。4月の米失業率は14.7%にまで跳ね上がった。 以後、少しずつ改善して10月には6.9%まで落ち着いてきたが、それでもコロナ前の3%台には至っていない。 失業率が高止まりすることで再就職は簡単ではなく、解雇された人たちは収入減に見舞われた。 失職したすべての人たちが失業手当を受けられるわけではない。 首都ワシントンにある経済政策研究所(EPI)の試算では、何らかの理由で失業手当を受けられない人が、夏の段階で最大1390万人にのぼったという。 仕事を失って給与が入らなくなり、貯蓄も不十分で失業手当も受けられないと、家賃の支払いが滞る。 手持ちの限られた資金はまず食費などに当てられるため、生活は困窮する。 米国ではこうした境遇から、コロナ禍で家賃を滞納する人たちが増えてきている。日本でも家賃の滞納者はいるが、米国では日本と比較すると冷酷なまでに強制的な退去が行われたりする』、「647万世帯が住まいを退去せざるを得なくなるという。 家族を考慮すると1000万人を超えるとも言われる」、総統な規模な人々が家を失うようだ。
・『それでも米政府は滞納者にまず、定められた期限内に自主的に引っ越すように促す。それでも立ち退かない場合、裁判所に強制撤去を求めて退去命令が出される。 日本では賃借人の権利が保護されているため、家賃の支払いが数カ月滞っても追い出されることはまずない。 だが日米で法の執行に対する意識の違いと、賃借人と賃貸人の立場が違うことから、米国では強制退去が執行されてしまう。 ドナルド・トランプ政権はコロナ禍という事情を考慮して、家賃滞納者に対する強制退去の執行停止を命じるなど、方策を講じてきた。 だがそれで賃借人を一時的には救済できたとても、今度は家賃が入ってこないことで家主側は減収となり、本質的な問題解決にはいたらないのだ。 それでも、家賃を支払えない人たちの救済がまず優先されるべきとの理由から、トランプ政権の保険福祉省(HHS)内の疾病予防管理センター(CDC)は9月4日、特例措置を出した。 それは今年12月末日まで、住まいからの強制退去が猶予・禁止される(立ち退きモラトリアム)というものだった。 ここで注目したいのは、同措置を発令したのがCDCという点だ。 CDCは感染症対策の総合研究所であり、医療機関である。国交省のような役所ではない。 つまり、強制退去によって住む所を失った市民たちが増えることで、コロナ感染リスクがこれまで以上に高まるということである。 強制退去させられた人たちは、現実的には親族や知人・友人のところに移るか、シェルターや福祉施設、最悪の場合はホームレスになることもあり得る』、「立ち退きモラトリアム」を本来はお門違いの「CDC」が「発令した」のは、放置すれば、家を追い出された人々への感染拡大が懸念される以上、ある意味で当然だ。
・『医療関係者が憂慮するのは、強制退去させられた人たちが密集した場所で寝起きすることで、今以上にコロナウイルスの感染者・死亡者が増加することなので、CDCが分野違いとも言える措置を出したのだ。 幸い、年内は強制退去が執行されないので、支払いの滞った賃借人もいまの住居にいられるが、年明け早々、退去せざるを得なくなる人たちがでるのは間違いない。 11月末、米「ファスト・カンパニー」誌は「米600万世帯が1月1日に強制退去されるかもしれない」というタイトルの記事を出し、深刻な社会問題が待ち受けうけていると警鐘を鳴らした。 トランプ政権が1月1日以降にさらなるモラトリアムを出すことはありそうもない。いま米国では、バイデン新政権が別枠で温情を示せるかに焦点が移っている。 ただ新政権誕生は1月20日であり、年明けから20日間、バイデン政権は何もできない。その間に強制退去が施行されて、家を追われる人が出てしまう恐れがあるのだ。 強制退去を命じられた人たちを救うことはできるのか。同問題に詳しいウェイク・フォレスト大学法律大学院のエミリー・ベンファー教授はこう述べる。 「バイデン氏が退去を求められている人たちを救済することは十分に考えられます。年明けから3週間以内に滞納している賃貸者を追い出すかどうかは家主にかかっていますが、当面の解決策としては、政府が直接的な財政援助に動くかどうかです」 さらなる問題がある。 9月初旬にCDCが発令した強制退去の猶予・禁止は家賃の支払いを一時的に棚上げにしたが、それは逆に、過去から積み重なった滞納分を含めて、支払うべき金額が増えることにつながった。 強制退去の対象になっている数百万世帯の多くは低所得者層の人たちであるため、さらに支払いが難しくなる。 トランプ政権が今月中に新たな手立てを示さず、連邦議会も救済策の法案を通過できない場合、バイデン政権が誕生するまで州を含めた地方自治体が負担を背負うことになる可能性が高い。 米国勢調査局が11月初旬にまとめた報告書によると、約1160万人が来月の家賃・住宅ローンの支払いができない状況であるという数字がでている。 最初に示した647万世帯という数字は「最悪の場合」という設定ではあるが、バイデン政権が発足から荊の道を歩まざるを得ないことが明らかである。 米国の住宅事情とコロナ禍による感染状況は悪化の一途を辿ることになりそうだ』、新大統領就任直前の空白期間にどう対処するのか、大いに注目される。
次に、12月18日付けダイヤモンドオンラインが掲載した元日銀でトランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボード、中部大学経営情報学部教授の酒井吉廣氏による「日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256812
・『混迷を極めた米国大統領選挙。過去にない接戦の結果、バイデン勝利の確率が高まっています(トランプ陣営は負けを認めておらず、1876年以来の下院での投票に持ち込まれる可能性がわずかに残っています)。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードも務め、米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。これら先、世界はどう変わるのか、本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末についてご紹介しましょう。連載1回目となる本記事でお伝えするのは、なぜ日本のメディアやビジネスパーソンが、米国の実情を理解できていないかという問題について。その裏側には構造的な課題があります。 私たちがこれまで生きてきた世界のルールが、根底から変わりつつある――。 今、世界の大きなうねりを肌で感じている人は、決して少なくはないはずです。 それにもかかわらず、日本ではピント外れの議論ばかりが繰り返され、なぜ米国と世界がこのように変わっているのか、明瞭に説明できる人がほとんどいないように感じています。 日本国内で報じられる情報は、リベラルな立場を支持するCNNなど、民主党寄りのメディアの翻訳ばかりです。ドナルド・トランプ第45代大統領を支持する保守的な立場のFOXニュースなど、共和党寄りのメディアがどのように米国や世界を報じているのか、ほとんど日本で語られることがありません。 つまり日本人は、米国の世論のうちの「片側」しか知らないままなのです。そんな状況で、日本人が米国や世界の本音を知ることはまずできません。 私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。 米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。 だからこそ、私に伝えられることがあるに違いないと思い至りました。 日本の政府や企業、ビジネスパーソンの多くが、世界を動かす新しいルールを知ることなく、古い価値観にとらわれたままだと、この先の国際競争に大きく劣後する可能性がある――。 そんな危機感を強く抱いています』、「ホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました」、とは日本人としては極めて珍しい存在だ。
・『米国と世界の新しいルールとは何か なぜ、米国と世界が変わったのか。そして新しいルールとは何か。 著書『NEW RULES 米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』では、なるべく中立的な立場で解説しましたが、中にはこれまでほとんど日本で報じられることのなかった視点や切り口も多分に含まれています。そのため、読者のみなさんに戸惑いを与えてしまうかもしれません。 しかし最後まで読み進めていただければ、新しいルールで動き出した先に世界がどうなるのかがクリアに見えてくるはずです。 +なぜ米国民は、あんな下品な不動産王を世界の大国の大統領に選んでいたのか。 +米国はどうして繁栄の象徴でもあるグローバリゼーションを止めたのか。 +バラク・フセイン・オバマ第44代大統領は抑圧されてきた人々を優遇したのに、トランプ大統領は残酷だ。 +米国が自分たちの事情だけを考えて“世界の警察官”を辞めるのは都合が良すぎる。 +世界一の経済大国が、どうしてポピュリズムに転じたのか。 +欧州連合(EU)から離脱することを選んだ英国民は愚かなんじゃないか。 +EUの各国でポピュリズム政党が存在感を高めているのが理解できない。 2020年、米国や英国、EUは自国優先の経済政策を推し進めています。 トランプ大統領が米国で実践してきた所得税や法人税の大幅減税やインフラ投資の強化、大規模な規制緩和などを打ち出して強い米国を取り戻そうとする政策は、今では「トランプノミクス」と呼ばれ、世界の主要な国々も実践するようになりました。 トランプノミクスは、絶対王政時代の利益優先の経済とも共通しているということで、「新重商主義」とも表現されます。 第二次世界大戦以降、国際社会は互いに協調しながらグローバリゼーションを進め、共に発展し、米ソ冷戦の終結でそれは加速しました。 トランプノミクスは、これまで長く続いたグローバリゼーションと正反対の動きである―。トランプが大統領に就任してからは、こんな批判をよく受けます。グローバリゼーションを止めるのは世界全体の経済発展の持続性にとってマイナスである、というのです』、「トランプノミクスは、絶対王政時代の利益優先の経済とも共通しているということで、「新重商主義」とも表現されます」、「新重商主義」とは大げさな感もあるが、「利益優先の経済」であれば、やむを得ないだろう。
・『トランプノミクスが生まれた背景 過去50年間の米国と世界の中心となった経済学は「レーガノミクス」でした。 ロナルド・レーガン第40代大統領が1980年代前半に実践した経済政策で、トランプノミクスはこれを復活させようと考えたものです。 しかしレーガノミクスも、発表した当時は、のちの副大統領のブッシュ(父)でさえ、魔術的な経済学だと批判したような政策でした。レーガノミクスを立案したジャック・ケンプ元下院議員は2002年4月、私にこう打ち明けてくれました。 「レーガノミクスでは、減税をすると税収が増えます。一見すると論理矛盾があるように感じるので反対者が多いのは当然のことでした。レーガノミクスを実施する前の1979年には在イラン米国大使館人質事件などがあり、景気低迷を含めて米国全体が沈滞ムードに覆われていました。そんな状況なのにレーガノミクスを実践して国民の勤労意欲を駆り立てようとしていたのだから、夢物語と批判されるのも覚悟の上でした」 なぜトランプノミクスが生まれたのか。 背景にあったのは、国際経済学の基本でもある比較優位の原則が成立しにくくなってきたことでした。低コストの労働力を豊富に持つ国が増え、世界全体の貿易バランスを保つことが難しくなっていったのです。しかも米国のほかに、国際連合や世界銀行といった国際的な機関からも支援を受ける後進国は、それらの支援をうまく生かして先進国を追い抜くきっかけを模索するようになっていきました。米国が今、猛烈に中国を意識して批判する原点にも、このしこりが横たわっています』、「レーガノミクスも、発表した当時は、のちの副大統領のブッシュ(父)でさえ、魔術的な経済学だと批判したような政策でした」、「魔術的な経済学だと批判」は知っていたが、それを「ブッシュ(父)」が言ったとは初めて知った。
・『ファンドの台頭で加速した繁栄の終わり こうした動きを加速させたのが、株式市場で徹底して利益を求めるファンドの台頭でした。ファンドは、世界が力を合わせて技術開発などの恩恵に浴することよりも、利益を極大化してコストダウンを突きつめることを企業に求めてきました。 この影響で、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は急成長し、従来型の製造業や小売業などは大規模化や合理化を進めていきました。人々の生活はより便利になりましたが、一方では富の偏在も加速していったのです。 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)は、私たちに新たな生活様式や働き方に変化を迫ると同時に、最新技術についていけるか否かによって、職業格差を生み出しつつあります。それも新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界を覆う変化のスピードは加速度的に速まっています。 恐らくあと30年もすれば、世界経済は今から想像もできない変化を遂げているはずです。しかもこの流れは、能力のある者とそれ以外の者を残酷に選別します。 2020年5月、米国ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人のジョージ・フロイド氏を殺したことで、全米のみならず世界中に広がった人種差別の抗議活動も、急激な変化にさらされる中で常に「負け組」の側に取り残される人々の反抗と言えます。 トランプ大統領が声高に叫ぶ「米国への製造業の回帰」は、徹底したコストダウンのために国外に出ていった米国企業への対応であり、ブルーカラーと言われる人々を含めて、米国全体の経済を底上げしようと狙ったものでした。 そう考えると、「アメリカ・ファースト」は歴史の必然でもあります。米国企業が安心して自国に回帰して経営できるよう、所得税や法人税を減税しようと考えたわけです。 だからこそトランプ大統領は、かつてレーガン大統領が米国を復活させるとの思いを込めて、「Make America Great Again」と繰り返し訴えているのです』、「海外に出ていった「米国企業」が戻ってきた例はどの程度あるのだろう。
・『日本人が米国と世界を理解できないワケ 私のキャリアは、日本銀行からスタートしました。金融政策部署(営業局=現金融市場局)とプルーデンス部署(考査局=現金融機構局)などで働いた後、野村ホールディングスに転じ、ワシントンやニューヨーク、ロンドンやシンガポール、香港、北京といった世界の金融都市で働き、主に金融や証券などの事業に携わってきました。その後は日本政策投資銀行のほか、ワシントンや北京のシンクタンクや大学で、エコノミストや政治外交アナリストのような仕事をしてきました。現在も米国の政府関係などで仕事をし、世界の政治経済を分析しています。 私は幸運にも、金融経済業界を軸にしながら、世界の主要都市で幅広い業界の人々と知己を得ました。その中で、私が出会った米国人の多くが共和党員か共和党支持者であったことから、私自身も自然に共和党員に近い考え方で物事を理解するようになりました。 米国での最初の仕事は、日本銀行で不良債権の処理について、米国のかつての処理策を調べて日本に早期の直接処理を提案することでした。ここで日本と米国の考え方や商慣習の違いについて理解を深めることができました。 そして米国人の発想方法がより深く理解できるようになるほど、冒頭で触れたように、私の中での違和感が大きく膨らんでいったのです。 日本に住むみなさんに、世界を動かす人々のリアルな本音と思考方法を伝えたい。 米国や中国、そして世界の主要国が何を考え、どのようなルールに基づいて政策を決定しているのか。著書『NEW RULES 米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』では、世界を動かす新しいルールがどういったものなのか、みなさんに分かりやすくお伝えしようと試みました。 願わくは、近視眼的な観点で私の予測を評価するのではなく、大きなうねりの根底に何があるのかというところから見渡せる米国と世界、そして日本の未来をみなさんと共有できれば、これに勝る幸せはありません。 次回からは米国と中国、そして世界と日本が2021年以降、どのように変わっていくのか予測した内容を、みなさんにお伝えしていきます。 (酒井氏略歴はリンク先参照)』、惜しむらくは、「トランプ」退陣ではなく、登場の時であれば、もっと役立ったろう。
・『本書の見どころ 混迷の大統領選を経て、2021年1月には民主党のバイデン政権がスタートします。世界はこの先、未曾有の大混乱に突入していきます。日本人がこれまで尊んできた平和な世界はもう終わりました。 グローバル経済や民主主義、自由主義など、これまで世界の経済発展と平和をけん引してきたルールが変わったのです。では、新しいルールは何か。 米大統領選挙でトランプ陣営のアドバイザリーボードを務め、共和党と民主党の両陣営に詳しい著者が「米国の中枢の内側」から、新しい世界を支配するルールについて解説します』、興味深そうだ。
・『本書のポイント (1)米国と中国、世界をめぐる「なぜ」が、どの本よりも分かりやすく理解できます。 +なぜ、あんな下品な男が大統領だったのか +なぜ、米国はグローバリゼーションを止めたのか +なぜ、世界はポピュリズムに転じるのか +なぜ、米国は中国を目の敵にするのか +EUから離脱する英国は、愚かなんじゃないか +一体、いつから世界の主要国は自分勝手になったんだ リベラル層やリベラル寄りのメディアの情報だけでは分からない、米国の中枢の思考法や意思決定について、トランプ陣営の大統領選挙選アドバイザリーボードの一員でもある著者が、「中の日本人」として分かりやすく解説します。 (2)新しい世界を動かすルールと、その原理原則が、いちはやく理解できます。 +米国VS中国、21世紀の新冷戦、2020年以降の世界を動かす原動力に +コロナ禍を踏み台に、米国経済はさらに伸びる +米国の頭脳は旧来のエスタブリッシュメントから「新たなエリート」の手にわたる +近い未来に朝鮮半島は統一し、そして米国と中国の緩衝地帯になる +気候変動でアフリカから大量の難民が欧州へわたり、欧州経済はひっ迫 +財政基盤まで統合して、ついにEUは一つの国になる +日本は「米国隷従」を続け、米国と中国の間を取りもつように』、なるほど。
・『主な目次 第1章 トランプに至る米国の必然 第2章 トランプ政権、絶大なパワーの源泉 第3章 トランプ大統領は愚者か賢者か 第4章 新しい「重商主義」に舵を切った米国 第5章 ついに始まった米中新冷戦 第6章 中国弱体化を仕掛ける米国 第7章 本格的に「一つの国」へ向かうEU 第8章 世界を動かす新しい10のルール』、ヒマが出来たら読んでみたい。
第三に、この続きを、同じ酒井吉廣氏による12月20日付けダイヤモンドオンライン「バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256824
・『過去にない大統領選挙の結果、バイデン勝利の確率が非常に高まっています しかしトランプ陣営はまだ負けを認めておらず、1876年以来の下院での投票に持ち込まれる可能性もわずかに残っています)。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました。トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードも務め、米国人のリアルな思考を理解し、米国と世界を動かす原理原則や、彼らが実践しようとしている新しい世界のルールについて日頃から肌で感じています。これら先、世界はどう変わるのか、本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末についてご紹介しましょう。連載3回目となる今回は、2021年から始まるであろうバイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」が世界に与える影響についてご紹介します』、「アメリカ・ファースト」が「バイデン新政権でも続く」、とはやれやれだ。
・『米国は新しい重商主義で世界を変える 「米国支配による平和」を意味する「パックス・アメリカーナ」という言葉は、歴史的には第二次世界大戦が終わった1945年に使われ始めました。 当時の米国は戦後の復興援助計画「マーシャル・プラン」を実施して欧州を援助する一方で、太平洋戦争に負けた日本の戦後復興はアジア諸国の中でも最後に回しました。 米国が戦争で傷んだ世界各国の中から復興させる国や地域を選び、優先順位を付けて支援をしていったのです。まさに米国の力によって世界平和が保たれているということで、「パックス・アメリカーナ」という言葉が使われていました。 歴史を振り返れば、古くはジュリアス・シーザーなどが活躍したローマ時代を指して「パックス・ロマーナ」、あるいはチンギス・カンの子孫がユーラシア大陸のかなりの部分を支配したことを指して「パックス・タタリカ」と呼ばれてきました。 「パックス・アメリカーナ」とは世界史においてはローマ帝国、モンゴル帝国に続く3回目の世界の支配者が米国であるということを意識した言葉です。もっとも、その後は米国とソ連の間で冷戦構造が誕生したことで、「パックス・アメリカーナ」は形を変えていきました。 1945年に英国の作家ジョージ・オーウェル氏は『あなたと原子爆弾』という作品の中で「冷戦」という言葉を出し、1946年には英国の首相も務めたウィンストン・チャーチル氏がかの有名な「鉄のカーテン」の演説をしました。 これと前後して米外交官のジョージ・ケナン氏が勤務先のモスクワ大使館から長文の「ソ連封じ込め戦略」を打電し、その戦略がトルーマン政権内で本格的に検討されるようになりました。 1947年になると、ハリー・トルーマン第33代大統領は、第二次世界大戦で国力を消耗した英国に変わり、米国がギリシャとトルコを守ると宣言しました。同じ年には欧州の戦後復興計画「マーシャル・プラン」も発表されました。 いずれも、背景にあったのはソ連を中心とした共産主義勢力の台頭です。 最終的に1949年にソ連が核実験を成功させたところで、世界は「パックス・アメリカーナ」が終わったことを理解しました。そして「パックス・ルソ・アメリカーナ」(ソ連の存在を認めながらの米国支配による平和)という時代に入ったのです。 米ソ冷戦時代を含めたパックス・ルソ・アメリカーナ時代、米国は世界の安全保障や経済の安定に積極的に関与する強い意志を持っていました。 米国は日本の経済復興はアジア諸国の中でも最後にするという方針でしたが、1950年に始まった朝鮮動乱で状況は一変しました。日本に朝鮮特需の恩恵を与えると同時に独立国としての国連加盟を認め、日本を共産主義に対する極東の防波堤とすべく、日米安全保障条約を締結して西側陣営に組み込みました。 日本は西太平洋における米国の“代貸”となり、日本列島そのものが米軍基地の役割を果たすようになったのです。同時に米国の肝入りで経済復興を加速し、やがて世界第2位の経済大国に成長しました』、「米国は日本の経済復興はアジア諸国の中でも最後にするという方針でしたが、1950年に始まった朝鮮動乱で状況は一変しました」、「朝鮮動乱」は日本には有利に作用したようだ。
・『戦後75年続いた秩序をひっくり返す 20世紀初めに新興勢力だった米国は当時の既存勢力だった英国の覇権に挑み、そして勝利しました。背景には第一次世界大戦への米国の参戦、第一次世界大戦で主役となった英国とフランスに対する借款の棒引き、第二次世界大戦への参戦がありました。 ただ、米国の勢いは徐々に衰えています。 為替の面では1971年にドルと金の兌換停止を決め(ニクソン・ショック)、為替相場もそこからは対円でドル安が進みました。それ以降、世界は市場に価格決定機能を委ねる変動相場制に移行しました。安全保障面を見ても1989年に米ソ冷戦が終結しましたが、2001年にはテロとの戦いが始まり、結果的にそれが中国の台頭を招いてしまいました。 1975年に始まった主要国首脳会議(当時はG5サミット)は1993年の欧州連合(EU)の誕生以降、協調を強めながら世界の政治経済を運営する考え方が強まりました。EU全体は世界経済の発展は目指したものの、米国に貢献することはありませんでした。 やや前置きが長くなりましたが、「パックス・アメリカーナ」から米ソ冷戦時代の間に構築され、その後の30年間で進化した国際秩序、言い換えれば第二次世界大戦後からおよそ75年続いた世界のルールをひっくり返そうとしているのが、現在の米国です』、「テロとの戦いが始まり、結果的にそれが中国の台頭を招いてしまいました」、初めて知った。
・『米国は、もう世界を救わない トランプ大統領はしばしば、北大西洋条約機構(NATO)に対する拠出金の削減を求めてきました。NATO加盟国が相応の防衛費の負担をしていないことでも批判を繰り返してきています。 こうした米国のNATO軽視を批判する声もあります。しかし、第二次世界大戦以降75年が経過し、NATOの役割が変わってきていることを無視してはいけません。 NATOはソ連を中心とする共産圏に対抗するための西側陣営として誕生したものです。大前提となったソ連のワルシャワ条約機構(ソ連と東欧8カ国が結成した軍事同盟)は、ソ連の解体で消滅し、東欧諸国は競ってEUとNATOに加盟しています。 米ソ冷戦終結前には、デンマークの首都コペンハーゲン近くの基地からソ連の旧都サンクトペテルブルク(冷戦当時はレニングラード)まで3000キロもあった距離が、今ではNATOに加盟するバルト三国の一つであるエストニア共和国のロシア国境沿いの都市から、サンクトペテルブルクまでの距離はたった140キロしかありません。つまりNATOはもう、中長距離ミサイルや長距離爆撃機などを前提とした軍備の必要がなくなったのです。本来なら必要な予算は見直されてもいいはずです。 現在、NATOの海軍はインド洋で海賊退治をしていますが、果たしてそれが本来のNATOの役割なのかということも再考すべきでしょう。 NATO加盟国の拡大に伴って中距離ミサイルは不要になりましたが、その結果、中距離ミサイルの開発で米国は中国やロシアに後れを取りました。対中国という観点で中距離ミサイルの開発は不可欠です。現在、米国はその後れを取り戻すために必死で中距離ミサイルを開発しています。 米国はNATO加盟国に対して経済力に応じた分担をすべきだと主張していますが、その背後には現状の予算規模に対する疑問がありました。世界の構造そのものが変わったのに、なぜ旧来通りの考え方を変えないのかと問うているわけです。 同じことは、在韓米軍の維持経費についても起こっています。米国が韓国に対して、在韓米軍に対する支出を5倍に引き上げるよう求めるのも、仮に韓国が地続きの北朝鮮と戦うことになったとしても、海軍がないに等しい北朝鮮を攻めるのに軍艦を増やす必要はなく、そんなムダ遣いをするくらいなら駐留経費を支払ってほしいと主張したまでのことです。 EUは、コロナ禍で経済が疲弊した加盟国を支援すると決めました。 恐らくEUの経済が元の状態に戻る数年後まで、EUは本格的な国際競争力を削がれた状態が続くはずです。それでも今回、米国が第二次世界大戦後のように復興支援計画を用意して欧州を支えることはないでしょう。 この先、米国は何よりも自分たちの復興と繁栄を優先させるはずです。世界をまんべんなく栄えさせるよりも、EUを離脱した英国や日本との二国間の自由貿易協定(FTA)を前提に仲間内で繁栄を分かち合うことを選ぶはずです。 そもそも今回の新型コロナウイルスは、第二次世界大戦のように欧州全土を焦土としたわけではありません。財政規律を守る北欧の国々は自力での復興に成功しつつあります。 問題は緊縮財政を取らずにEUが求めた財政赤字の対GDP比率を守らなかったポピュリズムの国々ですが、彼らを米国が助ける義理はありません。 一方でユーロ共同債の発行を決めるなど、ドイツは自国民の税金をこうした国々に使うことを決断しました。EUの盟主であり続けるための対価を支払おうと決断したわけです。 第二次世界大戦後の75年、米国は自分たちの国を最優先するよりも世界の秩序を守るために動いてきました。しかし、もう旧来型の構図は限界を迎えたようです。 これから米国が軸に据えるのは「アメリカ・ファースト」です。 その上で、米国が合意できる相手とだけ合意できる点で手を結び、新しい「パックス・アメリカーナ」を構築することになるのでしょう。先に例を挙げたNATOや韓国だけでなく、日本もこの先は米国の要求に驚くことがあるはずです。 米国の要求の根底にある思想は何なのか。米国の腹づもりが事前に分かっていれば、きっと私たち日本人が無茶な米国の要求に振り回されることは減るでしょう。 戦後75年続いた平和な時代は終わりました。 自国の事情を何よりも優先する米国とうまく交渉する胆力が求められます。 (この後は、上記記事と同じなので、省略)』、「NATOに加盟するバルト三国の一つであるエストニア共和国のロシア国境沿いの都市から、サンクトペテルブルクまでの距離はたった140キロしかありません。つまりNATOはもう、中長距離ミサイルや長距離爆撃機などを前提とした軍備の必要がなくなったのです」、確かに政治的環境が激変すれば、軍事戦略も大きく変わる筈だ。「ユーロ共同債の発行を決めるなど、ドイツは自国民の税金をこうした国々に使うことを決断しました。EUの盟主であり続けるための対価を支払おうと決断した」、「これから米国が軸に据えるのは「アメリカ・ファースト」です」、「(日本は)自国の事情を何よりも優先する米国とうまく交渉する胆力が求められます」、「日本」の外交力が問われる時代になったようだ。
タグ:「日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由」 酒井吉廣 トランプ VS バイデン ダイヤモンドオンライン 新大統領就任直前の空白期間にどう対処するのか、大いに注目される。 「立ち退きモラトリアム」を本来はお門違いの「CDC」が「発令した」のは、放置すれば、家を追い出された人々への感染拡大が懸念される以上、ある意味で当然だ トランプ政権はコロナ禍という事情を考慮して、家賃滞納者に対する強制退去の執行停止を命じるなど、方策を講じてきた 647万世帯が住まいを退去せざるを得なくなるという。 家族を考慮すると1000万人を超えるとも言われる 「2021年正月、米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令、ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ」 (その2)(2021年正月 米国を最大の危機が襲う 最大600万世帯に退去命令 ホームレス激増でコロナ大爆発の恐れ、日本人が世界の新秩序を理解できない意外な理由、バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」の破壊力) JBPRESS 堀田 佳男 (日本は)自国の事情を何よりも優先する米国とうまく交渉する胆力が求められます」、「日本」の外交力が問われる時代になったようだ。 これから米国が軸に据えるのは「アメリカ・ファースト」です ユーロ共同債の発行を決めるなど、ドイツは自国民の税金をこうした国々に使うことを決断しました。EUの盟主であり続けるための対価を支払おうと決断した NATOに加盟するバルト三国の一つであるエストニア共和国のロシア国境沿いの都市から、サンクトペテルブルクまでの距離はたった140キロしかありません。つまりNATOはもう、中長距離ミサイルや長距離爆撃機などを前提とした軍備の必要がなくなったのです 米国は、もう世界を救わない 「テロとの戦いが始まり、結果的にそれが中国の台頭を招いてしまいました」、初めて知った 戦後75年続いた秩序をひっくり返す 米国は日本の経済復興はアジア諸国の中でも最後にするという方針でしたが、1950年に始まった朝鮮動乱で状況は一変しました 米国は新しい重商主義で世界を変える アメリカ・ファースト」が「バイデン新政権でも続く」、とはやれやれだ 「バイデン新政権でも続く「アメリカ・ファースト」 主な目次 本書の見どころ 惜しむらくは、「トランプ」退陣ではなく、登場の時であれば、もっと役立ったろう 日本人が米国と世界を理解できないワケ 「海外に出ていった「米国企業」が戻ってきた例はどの程度あるのだろう ファンドの台頭で加速した繁栄の終わり なぜトランプノミクスが生まれたのか。 背景にあったのは、国際経済学の基本でもある比較優位の原則が成立しにくくなってきたことでした レーガノミクスも、発表した当時は、のちの副大統領のブッシュ(父)でさえ、魔術的な経済学だと批判したような政策 トランプノミクスが生まれた背景 トランプノミクスは、絶対王政時代の利益優先の経済とも共通しているということで、「新重商主義」とも表現されます 米国と世界の新しいルールとは何か ホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。主に共和党の立場で、大統領選挙などの分析や応援もしてきました トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードも務め
コメント 0