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中国情勢(軍事・外交)(その10)(こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国、オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声、中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、10月28日に取上げた。今日は、(その10)(こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国、オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声、中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった)である。

先ずは、12月10日付けJBPressが掲載した元産経新聞北京特派員でジャーナリストの福島 香織氏による「こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63219
・『新型コロナウイルスワクチンの接種が英国でいよいよ始まった。米ファイザーと独ビオンテックの開発したワクチンで、最初の接種者は90歳の女性だった。アメリカでも年内に接種が開始される見通しだという。ロシアでも「スプートニクV」の大規模接種が始まっており、中国シノバック・バイオテック製ワクチンもインドネシアでの大規模接種にむけて第1便の120万回分が到着したことが報じられている。 ワクチン接種が始まったことは、コロナ禍にあえぐ各国にとってとりあえず朗報ではあるが、やはり気になるのは、世界のコロナワクチン市場をどこの国が制するか、ということだろう。なぜならコロナをワクチンによって制した国が、ポストコロナの国際社会のルールメーカーになる可能性があるとみられているからだ。 気になるのは、やはり中国だ。中国のシノファーム傘下のシノバック・バイオテックなどが開発する不活化ワクチンは、マイナス70度以下という厳しい温度管理が必要なファイザー製などと違い、2~8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい。しかも年内に6億回分のワクチンを承認する予定であり、その流通性と量産で世界の途上国市場を圧倒しそうな勢いだ。 だが世界は、本当に中国製ワクチンに依存してよいのだろうか』、「中国製ワクチン」は「2~8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい」、「途上国」にとっては魅力的だ。
・『年内に6億回分のワクチンを市場に供給  中国の王毅外相は、習近平国家主席の名代として出席した12月3日の新型コロナ対応の特別国連総会の場で、「中国が新型コロナワクチンを積極的に途上国に提供し、主要な大国としての影響力を発揮する」と強調した。中国は年内に6億回分の新型コロナワクチンを市場に供給することを12月4日に当局者が明らかにしている。要は、中国のワクチン外交宣言である。 中国の孫春蘭副首相は12月2日に北京の新型コロナウイルスワクチン研究開発生準備工作の会合の場で、今年(2020年)中に空港や港湾の職員および第一線の監督管理人員などハイリスクに分類される職業から緊急使用を認めていく、としている。軍や医療関係者にはすでに投与が始まっている。 中国工程院の王軍志院士によれば「中国の不活化ワクチンの主な特性は天然ウイルスの構造と最も近く、注射後の人体の免疫反応が比較的強く、安全性もコントロール可能」という。ファイザーやモデルナのワクチンはマイナス70度やマイナス20度といった非常に低温での厳密な温度管理が必要だが、中国の不活化ワクチンは2~8度での輸送が可能で、通常のクール便で問題ないほど手軽だ、と主張していた。 米ニューズウィーク誌サイト(12月4日付)によれば、トルコは12月後半から中国製ワクチンの接種を開始する予定である。一部南米国家でも数カ月内に中国製ワクチンの接種を開始するという。また、モロッコでは年内に国内8割の成人に中国製ワクチンを投与する準備を進めている。 さらにアラブ首長国連邦も12月9日に、正式にシノバックの不活化ワクチンを導入することを表明。同国ではシノバック・ワクチンの第3期治験を実施していたが、その結果として86%の有効性が確認されたという。明らかな副作用もなく安全性も保障された、とした。すでに閣僚たちはこのワクチンの接種を受けている』、「中国のワクチン外交宣言」とは本音丸出しだ。
・『中国製ワクチンの効果に疑問符も  一方で、中国製ワクチンに対して、中国人自身が根深い不信感を抱いていることも確かだ。たとえばウガンダの中国大使館によれば、現地のインド企業が請け負っている建設プロジェクトに従事している中国従業員47人が新型コロナ肺炎検査で陽性を示していた。このうち一部の患者は発熱、咳、倦怠感、下痢などの症状が出ている。台湾紙自由時報によれば、この47人はすでに中国製ワクチンを接種していたはずだという。だとするとワクチンの効果はなかった、ということになる。 中国の公式報道によれば、シノバックのワクチンは、海外に出国した中国人労働者に6月から優先的に投与されていた。特に中央機関直属の労務従事者およそ5.6万人には接種済みと発表されている。ウガンダのプロジェクトの従業員も当然接種済のはずだという。中国側はこの点について正式に確認はしていない。 また10月にブラジルで行われていたシノバック製ワクチンの治験が、治験者の深刻な不良反応を引き起こし死亡したという理由で一時中断されたこともあった。中国側は、この不良反応とワクチンの安全性は無関係であると主張しており、ブラジルの治験中断は多分に政治的判断である、としている。 医学誌「ランセット」に寄稿された治験結果によれば、シノバックのワクチンは1回目の接種から28日以内に新型コロナウイルスへの抗体を作り出したが、その抗体レベルは新型コロナに感染したことがある人より低い、とあり、レベルが不十分ではないか、という見方もある』、「中国側は・・・ブラジルの治験中断は多分に政治的判断である、としている」、ボルソナロ大統領が「政治的判断」をするというのは、考え難く、やはり安全性の問題なのではなかろうか。
・『ワクチンメーカー康泰生物のスキャンダル  中国のワクチンに対するネガティブなイメージは、中国の製薬業界の伝統的な不透明さのせいもある。たとえば深センの大手ワクチンメーカー、康泰生物の会長、杜偉民にまつわるスキャンダルである。 ニューヨーク・タイムズ(12月7日付)が改めて特集していた。康泰生物は自社独自で新型コロナワクチン開発を行うと同時に、英アストラゼネカ開発の新型コロナワクチン2億回分の中国国内製造を請け負うことになっている。 だが、康泰生物と杜偉民はかねてからワクチン利権の中心としてスキャンダルにまみれ、2013年に、康泰製のB型肝炎ワクチン接種後に17人の乳幼児が死んだ事件も引き起こしている。ワクチンと乳幼児の死の因果関係は科学的に証明されていないが、それは父母ら批判的言論を行う人々に当局が圧力をかけて世論をコントロールしたからだとみられており、中国社会における杜偉民とワクチンメーカーに対する不信感はずっとくすぶり続けている。 ちなみに杜偉民が関わったワクチンによる健康被害事件は2010年にも起きている。狂犬病ワクチン18万人分について効果がないことが監督管理機関の調べで分かり、大きく告知されたのだが、このワクチンを生産した当時の製薬企業は杜偉民の所有企業だった。杜偉民はこのスキャンダルから逃げるために、問題の製薬企業株を別の製薬企業に譲渡した、という。 また同じ年に、康泰製のB型肝炎ワクチンを接種した広東省の小学生数十人が嘔吐、頭痛などを訴える事件もあった。当局はこれを「集団性心因反応」とし、ワクチンの品質が原因だとはしなかった。だがその3年後に康泰製B型肝炎ワクチンを接種した乳幼児の集団死亡事件があり、庶民の心象としてはワクチンの品質が怪しい、とみている。だが、当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた。 杜偉民は2016年に自社のワクチンの承認を早期に得るために関連部門の官僚に賄賂を贈り、その官僚は収賄罪で有罪判決を受けた。しかし、杜偉民自身は起訴されていない。ニューヨーク・タイムズもその真の理由については触れていないが、杜偉民が特別な背景を持つ人物であるとみられている。ちなみに出身は江西省の貧農の出で、苦学して衛生専門学校で学び、地元衛生官僚になったあと、改革開放の波に乗って「下海(官僚をやめて起業)」し、中国ワクチン業界のドンとなっていたことは、メディアなどでも報じられている。 これだけスキャンダルにまみれているにもかかわらず、康泰生物は、ビル・ゲイツ財団の元中国担当責任者の葉雷氏から「中国最先端のワクチン企業の1つ」と絶賛され、新型コロナワクチンでも不活化ワクチンを開発、9月には臨床に入っている。同時に、英アストラゼネカ製ワクチンの生産も請け負うことになり、深セン市政府から2万平方メートルの土地を譲渡され、新型コロナワクチン用の新しい生産工場を建設している』、「当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた」、やはり報道の自由がない中国では、問題を隠蔽され易いようだ。
・『中国のワクチン外交に対抗せよ  こうした問題を、中国の製薬会社の地元政府との癒着体質、という一言で受け流していいのだろうか。中国製ワクチンが中国国内で使われるだけであれば、それは中国の内政問題だが、新型コロナワクチンは世界中で使用される。しかも、世界のワクチン市場をどこの国のワクチンが制するかによって、国際社会の枠組みも影響を受けることになる。 南ドイツ新聞は「中国のワクチン外交」というタイトルで次のような論評を掲載している。 「中国は各国にマスク外交を展開し、ウイルスの起源(が中国だという)議論を封じ込めようとした。現在はワクチン外交を展開中で、その目的は単なる象徴的な勝利を獲得することだけではない。今後、何カ月後かに、中国が将来的にどのような世界を想像しているかはっきりと見えてくるだろう。南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い、ブラジル衛生相はあちこちに頭を下げまわって中国のワクチンに対する不信を打ち消そうとしている。すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加している。ワクチン戦略は中国指導者に言わせれば衛生領域の“シルクロード”だ」 つまり、中国が目論んでいるのは衛生版シルクロード構想、ワクチン一帯一路戦略である。中国に従順な国には優先的にワクチンを供与し、中国がゲームのルールを作る。WHOが中国に従順になってしまったように、中国からワクチンを与えらえた国々が皆、中国に従順になってしまう、という予測があると南ドイツ新聞は論じる。 民主主義国が、こうした中国のワクチン外交に対抗するために、合理的な価格で途上国でも扱いやすいワクチンを開発できなければ、結局世界の大半は中国ワクチンの生産量に高度に依存する羽目になってしまう。こうして中国は新たな政治秩序を打ち立てようと考えているのだ、という。 こんな状況を考えると、ワクチン実用化をただ、ただ喜ぶわけにはいかないだろう。日本は来年の東京五輪を実現するためになんとしてもワクチンを確保したいと考えているところだろうが、ここで中国製ワクチンに頼ろうとすることだけは避けてほしいと思う。 それよりも、日本は少し遅れてでも、やはり自前のワクチン開発を成功させなければならない。それは自国民の健康と安全のためだけでなく、ポストコロナの世界秩序にも影響するのだという意識も必要だ』、「南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い・・・すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加」、「ワクチン外交」はタダではなく、しっかり「代金」を取ったり、「ツケ」払いで「借金」させているようだ。

次に、12月2日付けNewsweek日本版「オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声」を紹介しよう』、どういうことだろう。
・『<楽園のような島を買ってビーチや滑走路へのアクセスさえ禁じたのは、中国人専用の観光地にするためか?>  オーストラリアの島の土地を買い上げた中国の不動産開発業者が、オーストラリア人の立ち入りを禁じて、地元住民や観光客が不満を募らせている。 問題のケズウィック島は、人気の観光スポットとなる可能性を秘めた島だが、チャイナ・ブルームという企業がその一部を買った。島の住民は、同社が楽園のようなこの島の一部地域への立ち入りを禁じていると訴えている。住民によればチャイナ・ブルームは、住民のビーチへの立ち入りや、ボートでの着岸を禁止。滑走路へのアクセスまでも禁じたという。 島に住む複数の家族はさらに、チャイナ・ブルームはこの島の観光業を死に追いやろうとしていると訴える。住民が所有する物件をAirbnbで観光客に貸し出したり宣伝したりすることも禁じられたというのだ。 「彼らは、オーストラリア人を島から追い出したいのだと思う」と、元住民のジュリー・ウィリスは、オーストラリアのニュース番組「カレント・アフェア」に語った。「彼らはこの島を、中国人向け観光専用の島として使いたいのだろう」』、「島の一部を買った」だけなのに、「チャイナ・ブルームは、住民のビーチへの立ち入りや、ボートでの着岸を禁止。滑走路へのアクセスまでも禁じたという」、こんな勝手なことが許されるのだろうか。
・『インフラ投資を歓迎する当局  ウィリスとパートナーのロバート・リーによると、2人が抱えた問題はさらに深刻だったという。というのも、2人は2月になって、それまで6年間にわたって借りていた不動産から3日以内に退去するようチャイナ・ブルームから言い渡されたからだ。2人は物件を購入しようとしたが、チャイナ・ブルームから、物件に不具合が生じた場合の修理にあてる費用として、保証金10万オーストラリアドル(約770万円)を要求された。 ウィリスはこう語る。「彼ら(チャイナ・ブルーム)は、私たちが物件を買うのをあきらめるよう仕向けていたのだと思う。私たちにここにいて欲しくないのだ」 ケズウィック島は、ウィットサンデー諸島に属する島の1つで、オーストラリア北東部にあるクイーンズランド州の海岸線の中ほどの沖合に位置する。 ケズウィック島の大部分は国立公園に指定されている。クイーンズランド州資源局の広報担当者は、チャイナ・ブルームと住民の間に存在するいかなる問題も、解決されることを望んでいると述べた。 広報担当者は、チャイナ・ブルームが道路やボート用のスロープ、桟橋や港湾関連など島のインフラ改善に取り組んでいる点にも留意する必要があると指摘。少数の住民が申し立てている問題の大半は当事者同士で解決されるべき問題だと語った。 中国とオーストラリアの間では最近緊張が高まっている。中国政府当局者が、オーストラリア軍の兵士がアフガニスタン人の子どもを殺そうとしているように見える偽画像をツイートした件では、オーストラリア政府が中国政府に謝罪を要求している。 オーストラリアは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源に関する調査を要求する動きの先頭に立っているほか、中国政府によるオーストラリアへの内政干渉にも神経をとがらせており、両国の関係は悪化の一途をたどっている』、「州資源局の広報担当者は、チャイナ・ブルームが道路やボート用のスロープ、桟橋や港湾関連など島のインフラ改善に取り組んでいる点にも留意する必要があると指摘」、地方自治体にとっては、「インフラ投資を歓迎」なのだろうが、「オーストラリア政府」は地方自治体の行き過ぎに目を光らせるようだ。

第三に、12月16日付けNewsweek日本版が掲載した 中国出身で日本に帰化した評論家の石平氏による「中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/sekihei/2020/12/post-13_1.php
・『<今年10月からのわずか2カ月あまりの間に、人権と安全保障をめぐる西側先進国による対中包囲網の構築が本格化した。地政学的な大変動が東アジアで起き始めている> 今年の10月初旬から12月中旬にかけて、この地球上では「中国」との関連で一連の目まぐるしい出来事が起きている。筆者の目からすればそれらは全て、今後の世界の対立構造を強く予感させるものだ。 まず10月1日、日本の茂木敏充外相が外遊先のフランスでルドリアン外相と会談。同日、ドイツのマース外相ともテレビ会議形式で協議した。この2つの会談を通じて日仏独3カ国の外相は東シナ海や南シナ海情勢について、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携強化で一致したという。 10月6日には日米豪印の外相が東京で一堂に集まり、第2回の4カ国外相会議を開いた。上述の日仏独外相会談と同様、この会議の中心テーマはやはり「自由で開かれたインド太平洋の実現」である。会談で4か国の外相は海洋進出を進める中国を念頭に、日本が提唱している「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進し、より多くの国々へ連携を広げていくことが重要だとの認識で一致した。 このように、日本の主導で欧州の主要国であるフランスとドイツ、そして環太平洋地域の主要国であるアメリカとインドと豪州が団結し、中国の覇権主義的な海洋進出を封じ込めようとする姿勢を鮮明にした。誰が見ても「中国包囲網」の構築を意味するものだ。 中国の王毅外相は同13日、外遊先のマレーシアの記者会見で日米豪印外相会議に触れ、「インド太平洋版の新たなNATO(北大西洋条約機構)の構築を企てている」「東アジアの平和と発展の将来を損なう」と批判し警戒心を露わにした。日米豪印4カ国の戦略的意図を一番分かっているのはやはり中国自身で、自分たちが包囲されつつあることに危機感を募らせているのであろう』、「日本の主導で欧州の主要国であるフランスとドイツ、そして環太平洋地域の主要国であるアメリカとインドと豪州が団結し、中国の覇権主義的な海洋進出を封じ込めようとする姿勢を鮮明にした。誰が見ても「中国包囲網」の構築を意味するものだ」、「中国」としては面白くないだろう。ただ、日本としては、インドもRCEP(東アジア地域包括的経済連携)に入れようとしたが、インドは自由化に耐えられないとして参加しなかった。
・『ニューヨークで起きたもう1つの動き  前述の東京会議が開かれた当日の10月6日、太平洋を越えたニューヨークではもう1つ、中国に矛先を向ける重要な動きがあった。この日に開かれた人権を担当する国連総会第3委員会の会合で、ドイツのホイスゲン国連大使が日米英仏を含む39カ国を代表して中国の人権問題を批判する声明を発表したのだ。 声明は新疆ウイグル自治区における人権侵害の問題として、宗教に対する厳しい制限、広範で非人道的な監視システム、強制労働、非自発的な不妊手術を取り上げた。声明はまた、7月に中国共産党政権が香港で国家安全維持法を施行後、政治的抑圧が強まっていることも非難した。39カ国は、中国政府が香港住民の権利と自由を守るよう要求。チベットにおける人権侵害についても言及した。 この声明に賛同した国々は上述の日米英仏以外にも、イタリアやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどが名を連ねている。G7のメンバー国の全て、そしてEUの加盟国の大半がその中に入っている。つまり、少なくとも人権問題に関していえば今、世界の先進国全体が一致団結して中国を批判する立場をとり、そして中国と対立しているのである』、「少なくとも人権問題に関していえば今、世界の先進国全体が一致団結して中国を批判する立場をとり、そして中国と対立している」、「中国」が強面の姿勢を強めていることも影響しているようだ。
・『西側先進国vs「ならず者国家」の構図  一方の中国はどのように西側先進国に対抗しているのか。実は10月5日、同じ国連総会の第3委員会において、中国は一部の国々を束ねて西側に対する「先制攻撃」を仕掛けた。その日、中国の張軍・国連大使はアンゴラ、北朝鮮、イラン、キューバ、ジンバブエ、南スーダン含む26か国を代表して、アメリカと西側諸国による「人権侵害」を批判した。 中国自身を含めて、上述の国々に「人権」を語る資格があるのか疑問だが、それにしても世界の「問題児国家」「ならず者国家」あるいは化石のような独裁国家が中国の旗下に馳せ参じ、「反欧米」で結束したこの構図は実に興味深い。それはそのまま、「中国を基軸とした独裁国家群vs西側民主主義先進国群」という、新しい冷戦構造の成立を予兆するものではないか。 11月に入ってからも中国と西側諸国との「衝突」が絶えない。11月18日、イギリス、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、カナダの外相は、中国が香港での批判的な声を封じ込めるために組織的活動を行い、国際的な義務に違反していると非難する共同声明を発表した。それに対し、と、外交儀礼上では普段あり得ないような暴言を吐いて5カ国を批判した』、「「中国を基軸とした独裁国家群vs西側民主主義先進国群」という、新しい冷戦構造の成立を予兆するものではないか」、「中国側の国々はロクなところがないようだ。「中国外務省の趙立堅報道官は翌19日、「(5カ国は)気をつけないと、目玉を引き抜かれるだろう」」、との「批判」には、外交でこんな言葉を使っていいのかと、驚かされた。
・『オーストラリアに喧嘩を売った中国外交官  そして11月30日、今度は趙立堅報道官が5カ国の中のオーストラリアに喧嘩を仕掛けた。彼は豪兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを突きつけているように見える偽の合成画像をツイッターに投稿。豪州のモリソン首相は激怒して当日のうちに記者会見を開き、画像は偽造されたものだと指摘した上で、「非常に攻撃的だ。中国政府はこの投稿を恥じるべきだ」と批判。中国政府に謝罪と即時の削除を求めた。 もちろん中国政府はこうした削除と謝罪の要求にはいっさい応じない。趙報道官の投稿した映像は今でもツイッターにアップされたままであり、彼の上司にあたる華春瑩報道局長もオーストラリア政府に反論し、趙報道官の投稿を擁護した。 しかし中国側のこのような横暴な態度はさすがに先進国一部の怒りを買った。フランス外務省の報道官は同日30日、「投稿された画像は特にショッキングで、コメントは偏っており、侮辱的だ」「中国のような国の外交に期待される手法として不適当だ」と批判した。12月1日、ニュージーランドのアーダーン首相は記者団に対してこの一件に触れ、「事実として正しくない画像が使われた」と指摘した上で、中国に懸念を直接伝えたと明らかにした。 12月2日、今度はアメリカ国務省がこの件に関する態度を表明した。ブラウン報道官代理は「(中国共産党がオーストラリアに対して取った行動は)精査なしの誤情報流布と威圧的外交の一例」と厳しく批判。合成画像の投稿について「共産党であることを考えても、さらにレベルの低い行動だ」と、矛先を中国共産党に向けた。 このように、中国外務省の報道官がオーストラリアを攻撃するためにツイートした画像は、オートスラリアだけでなくその友好国からの反撃を招くこととなった。そしてこの一件はまた、中国と欧米世界との対立を浮き彫りにした』、「中国」「外交」のネジが外れてしまったようだ。
・『西太平洋上に現れた新たなプレーヤー  12月5日、産経新聞のネット版である産経ニュースは、独自の報道として重大な意味を持つ動きの1つを伝えた。日本の自衛隊と米軍、フランス軍が来年5月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)など離島の防衛・奪回作戦に通じる水陸両用の共同訓練を日本の離島で初めて実施することとなったというのである。 産経の記事は、「日米仏の艦艇と陸上部隊が結集し、南西方面の無人島で着上陸訓練を行う」と伝えた上で、「東シナ海と南シナ海で高圧的な海洋進出を強める中国の面前で牽制のメッセージを発信する訓練に欧州の仏軍も加わり、対中包囲網の強化と拡大を示す狙いがある」と解説した。 ここでもっとも重大な意味を持つのは、フランスがアメリカとともに参加することである。アメリカは日本の同盟国だから、日米合同で尖閣防備の軍事訓練を行うのは当たり前だが、フランスの参加は意外だ。フランスはすでに意を決して、自分たちの国益とは直接に関係のない東シナ海の紛争に首を突っ込み、中国と対抗する日米同盟に加わろうとしているのだ。もちろん中国からすれば自国に対する敵対行為であるが、フランスは一向に構わない。 実は欧州のもう一つの大国イギリスもフランスと同じような計画を考えている。共同通信は12月5日、「英海軍、空母を日本近海に派遣へ 香港問題で中国けん制」という以下のニュース記事を配信した。 「英海軍が、最新鋭空母『クイーン・エリザベス』を中核とする空母打撃群を沖縄県などの南西諸島周辺を含む西太平洋に向けて来年初めにも派遣し、長期滞在させることが5日分かった。在日米軍の支援を受けるとみられる。三菱重工業の小牧南工場(愛知県)で艦載のF35Bステルス戦闘機を整備する構想も浮上している。複数の日本政府関係者が明らかにした」』、「イギリス」はともかく、「フランス」までが乗り出してきたのには驚かされた。狙いは何なのだろう。
・『英海軍が日本近海に現れる本当の狙い  1人の日本国民として中国の軍事的膨張を真剣に憂慮している筆者は、ネット上でこの記事に接した時には大きな感動を覚えた。大英帝国としてかつて世界の海を制覇したイギリスが、空母打撃群を派遣して日本周辺の海に長期滞在させるのである。「長期滞在」だから、パフォーマンスのためでもなければ単なる示威行動でもない。イギリスは日米同盟と連携してアジアの秩序維持に加わろうとしている。その矛先の向かうところは言うまでもなく中国である。 共同通信の記事は、空母打撃群派遣の狙いについて「香港問題で中国けん制」とも解説しているが、イギリスがいまさら武力を用いてかつての植民地の香港を奪還するようなことはありえない。ロンドンの戦略家たちの目線にあるのは当然、日本周辺の海域で軍事的紛争がもっとも起きやすい場所、尖閣や台湾海峡、そして南シナ海であろう。 もちろん、老練な外交大国・軍事強国のイギリスは、一時的な思いつきでこのような意思決定を行う国ではない。むしろ、深慮遠謀の上での長期戦略だと見ていい。かつての世界の覇主だったイギリスはどうやら中国を戦略的敵国だと認定し、この新覇権国家の膨張を封じ込める陣営に加わろうとしている。 そして、この原稿を書いている12月16日、大ニュースがまた飛んできた。産経新聞の報じたところによると、ドイツのクランプカレンバウアー国防相は15日、日本の岸信夫防衛相とのオンライン対談で、独連邦軍の艦船を来年、インド太平洋に派遣する方針を表明。南シナ海での中国の強引な権益拡大をけん制するため、「自由で開かれたインド太平洋」に協力する姿勢を明確にした。 戦後は軍の対外派遣に慎重だったドイツもつい重い腰を上げて、対中国包囲網の構築に参加することになった。来年、英仏独3カ国の海軍に米海軍と日本の海上自衛隊が加わり、世界トップクラスの海戦能力を持つ5カ国海軍が日本周辺の海、すなわち中国周辺の海に集まって中国封じ込めのための「海の長城」を築こうとしているのである』、「戦後は軍の対外派遣に慎重だったドイツもつい重い腰を上げて、対中国包囲網の構築に参加することになった」、というのも驚きだ。
・『人権と安全保障という「2つの戦線」  以上、今年10月初旬から12月中旬までの2カ月間あまりにおける世界の主要国の動きを概観したが、これらの動きをつなげて考えると、世界の主な民主主義国家は今、2つの戦線において対中国包囲戦を展開していることがよく分かる。 戦線の1つは人権問題の領域である。中国共産党政権が国内で行なっている人権侵害と民族弾圧に対し、欧米諸国はもはや黙っていない。中国に「NO」を突きつけそのやりたい放題と悪行をやめさせようとして、多くの国々がすでに立ち上がっている。ドイツの国連代表が国連総会の場で、39カ国を束ねて中国の人権抑圧を厳しく批判したのはその最たる例だが、民主主義国家のリーダー格のアメリカも、香港自治法やウイグル人権法などの国内法をつくって人権抑圧に関わった中国政府の高官に制裁を加えている。 人権問題の背後にあるのは当然、人権を大事にする民主主義的価値観と人権抑圧の全体主義的価値観の対立である。今の世界で人権問題を巡って起きている「先進国vs中国」の対立はまさにイデオロギーのぶつかり合い、そして価値観の戦いである。世界史を概観すれば分かるが、価値観の戦いあるいはイデオロギーの対立には妥協の余地はあまりない。双方が徹底的に戦うのが一般的である。 欧米諸国と中国が戦うもう1つの戦線はすなわち安全保障、とりわけアジアと「インド太平洋」地域の安全保障の領域である。東シナ海と南シナ海、そして尖閣周辺や台湾海峡などで軍事的拡張を進め、この広大な地域の安全保障と秩序を破壊しようとする中国に対し、アメリカと日本、イギリスとフランスドイツ、そしてオーストラリアとニュージーランド、さらにアジアの大国のインドまでが加わって、政治的・軍事的対中国包囲網を構築している。 逆に言えば、今の中国は人権・民主主義など普遍的な価値観の大敵、世界の平和秩序とりわけインド・太平洋地域の平和秩序の破壊者となっている。今や世界の民主主義陣営の主要国であり、世界のトップクラスの軍事強国である米・英・仏・独・日・印・豪が連携して、まさに文明世界の普遍的価値を守るために、そして世界とアジアの平和秩序を守るために立ち上がろうとしている』、どうも筆者は、「中国」との対立に焦点を当てるの余り、経済面での「中国」の魅力を無視しているが、現実にはその経済力に魅せられる面も大きい。
・『世界の歴史がまさに今、動いている  しかし、2020年秋からの数カ月間で、上記2つの戦線において対中国包囲網が突如姿を現し迅速に形成されたのは一体なぜなのか。去年までは中国との経済連携に関心を集中させていたドイツやフランスは一体どうして、軍事力まで動員してはるかインド・太平洋地域に乗り込んで中国と対抗することにしたのか。そして、形が見え始めた西側諸国と中国との対立構造は、今後の世界に一体何をもたらすのか。 こういった大問題については稿を改めて論じてみたいが、2020年の秋、われわれの住むこの世界でとてつもなく大きな地殻変動が起きていることは確実であろう。歴史は今、まさに動いているのである』、確かに「対中国包囲網が突如姿を現し迅速に形成された」のは事実であるが、それは前述の通り、「対立」だけではない。協力・協調もあることを忘れるべきではないだろう。
タグ:石平 JBPRESS Newsweek日本版 中国情勢 福島 香織 軍事・外交 (その10)(こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国、オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声、中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった) 「こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国」 「中国製ワクチン」は「2~8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい」、「途上国」にとっては魅力的だ 「中国のワクチン外交宣言」とは本音丸出しだ 中国製ワクチンの効果に疑問符も ワクチンメーカー康泰生物のスキャンダル 「当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた」、やはり報道の自由がない中国では、問題を隠蔽され易いようだ 中国のワクチン外交に対抗せよ 南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加 「ワクチン外交」はタダではなく、しっかり「代金」を取ったり、「ツケ」払いで「借金」させているようだ 「オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声」を紹介しよう』 オーストラリアの島の土地を買い上げた中国の不動産開発業者が、オーストラリア人の立ち入りを禁じて、地元住民や観光客が不満を募らせている 島の一部を買った」だけなのに 「チャイナ・ブルームは、住民のビーチへの立ち入りや、ボートでの着岸を禁止。滑走路へのアクセスまでも禁じたという」、こんな勝手なことが許されるのだろうか インフラ投資を歓迎する当局 州資源局の広報担当者は、チャイナ・ブルームが道路やボート用のスロープ、桟橋や港湾関連など島のインフラ改善に取り組んでいる点にも留意する必要があると指摘」、地方自治体にとっては、「インフラ投資を歓迎」なのだろうが、「オーストラリア政府」は地方自治体の行き過ぎに目を光らせるようだ。 「中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった」 今年10月からのわずか2カ月あまりの間に、人権と安全保障をめぐる西側先進国による対中包囲網の構築が本格化した。地政学的な大変動が東アジアで起き始めている 日本の主導で欧州の主要国であるフランスとドイツ、そして環太平洋地域の主要国であるアメリカとインドと豪州が団結し、中国の覇権主義的な海洋進出を封じ込めようとする姿勢を鮮明にした。誰が見ても「中国包囲網」の構築を意味するものだ 「中国」としては面白くないだろう。ただ、日本としては、インドもRCEP(東アジア地域包括的経済連携)に入れようとしたが、インドは自由化に耐えられないとして参加しなかった ニューヨークで起きたもう1つの動き 少なくとも人権問題に関していえば今、世界の先進国全体が一致団結して中国を批判する立場をとり、そして中国と対立している」 西側先進国vs「ならず者国家」の構図 「中国を基軸とした独裁国家群vs西側民主主義先進国群」という、新しい冷戦構造の成立を予兆するものではないか 中国外務省の趙立堅報道官は翌19日、「(5カ国は)気をつけないと、目玉を引き抜かれるだろう」」、との「批判」には、外交でこんな言葉を使っていいのかと、驚かされた オーストラリアに喧嘩を売った中国外交官 「中国」「外交」のネジが外れてしまったようだ 西太平洋上に現れた新たなプレーヤー 「イギリス」はともかく、「フランス」までが乗り出してきたのには驚かされた。狙いは何なのだろう 英海軍が日本近海に現れる本当の狙い 戦後は軍の対外派遣に慎重だったドイツもつい重い腰を上げて、対中国包囲網の構築に参加することになった」、というのも驚きだ 人権と安全保障という「2つの戦線」 どうも筆者は、「中国」との対立に焦点を当てるの余り、経済面での「中国」の魅力を無視しているが、現実にはその経済力に魅せられる面も大きい 世界の歴史がまさに今、動いている 確かに「対中国包囲網が突如姿を現し迅速に形成された」のは事実であるが、それは前述の通り、「対立」だけではない。協力・協調もあることを忘れるべきではないだろう
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