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異次元緩和政策(その35)(大幅な税収不足なのに財政支出を増やしているのは日本だけである 米英欧日の「量的緩和」を比較する、40兆円の日銀ETF 「個人に直接譲渡」案が急浮上 香港では事例あり 日本で実施するリスクは?、インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束) [経済政策]

異次元緩和政策については、昨年10月3日に取上げた。今日は、(その35)(大幅な税収不足なのに財政支出を増やしているのは日本だけである 米英欧日の「量的緩和」を比較する、40兆円の日銀ETF 「個人に直接譲渡」案が急浮上 香港では事例あり 日本で実施するリスクは?、インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束)である。

先ずは、12月14日付けPRESIDENT Onlineが掲載した日銀出身で日本総合研究所調査部主席研究員の河村 小百合氏による「大幅な税収不足なのに財政支出を増やしているのは日本だけである 米英欧日の「量的緩和」を比較する」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/41313
・『政府は新型コロナで冷え込む経済対策のため財政支出を急拡大させている。このまま財政拡張路線を取りつづけて大丈夫なのか。日本総研の河村小百合主席研究員は「日本だけでなく、アメリカ、イギリス、欧州の中央銀行も資産買い入れ政策を実施したが、その中身はまったく異なる」と指摘する——。(第2回/全3回) ※本稿は、河村小百合『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会)の一部に加筆・再編集したものです』、興味深そうだ。。
・『米英欧日を「量的緩和」と一括りにする日本メディアのお粗末  米連邦準備制度(Fed)やイングランド銀行(BOE)といった海外の主要中央銀行は、2008年秋のリーマン・ショックの直後の2008年末ないし2009年初の時点で軒並み、従前の金融政策運営上の手段であった政策金利をほぼゼロ%近傍まで引き下げてしまった(図表1)。 国際金融市場はマヒ状態に陥り、各国は多くの国民が職を失って失業率が急上昇するなど1930年代の「大恐慌」(The Great Depression)以来の「大不況」(The Great Recession)に直面していた。“暗黒のトンネル”が果たしていつまで続くのか、全く見通しの立たない初期段階で、彼らは従前からの金融緩和手段であった「政策金利の引き下げ」を、早くも使い尽くしてしまっていた。こうした状況はしばしば“ゼロ金利制約(※1)”と呼ばれる。 ではそのとき、これらの主要中銀の首脳陣は何を考え、自らの金融政策運営を行っていったのか。各国政府は必要に応じてどのように対応したのか。とりわけわが国のメディアでは、リーマン・ショック以降の彼らの金融政策運営を、「量的緩和」と安易に一括りにして報道することが多かった。 しかしながら実のところは、黒田総裁率いる日銀の「量的・質的金融緩和」とは様々な側面でかなり異なっている。今回は彼らの黒田日銀とは“似て非なる”金融政策運営の内容を概観してみよう。 ※1:中央銀行が通常の金融調節を通じて引き下げ誘導できる名目金利の範囲はゼロ%までであることをいう』、欧米の金融政策運営を詳しく見ていこう。
・『【米国】新手段は慎重に試し、出口問題も誠実に説明  Fedは、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長の下で、リーマン・ショックに遭遇した。経済学者でもある同議長はFRB理事だった2000年代前半、海の向こうでわが国がバブル崩壊による銀行危機に直面し、日銀が結果的には欧米各国よりも約10年先行する形で“ゼロ金利制約”に直面し、苦慮している様子を注視していた。 2004年には共著で論文を執筆し、“ゼロ金利制約”のもとで考えられる金融政策運営の3つのオプション(新たな手段)を提言していた。 ①政策金利を将来にわたって超低水準で据え置くことをあらかじめ約束する「フォワード・ガイダンス(以下FG)」 ②中央銀行のバランス・シート(以下BS)上で資産構成(短期債と長期債)を入れ替える「オペレーション・ツイスト」) ③中央銀行の資産買い入れによって、マネタリーベース(中銀が民間銀行経由で供給する総資金供給量)の規模を拡大させる「量的緩和」 これらは、Fedが金融危機以降に自らも“ゼロ金利制約”の当事者となって、新たな金融政策運営を展開していくうえでの理論的なバックボーンとなった。 もっとも、バーナンキ議長率いるFedは、議長自らが考案した理論を現実の効果のほどを無視して強行するようなことは決してしなかった。経済学や金融論は社会科学であるゆえ、机上で構築した理論が、現実の世界でも通用するかどうかをあらかじめ実験室内で実験して、その妥当性を確認することができる自然科学とは異なる筋合いのものである。新たな理論に基づく政策手段の効果のほどは、いずれかの中銀が先行して実際に導入した結果から判断するよりほかにない。 Fedは“ゼロ金利制約”に初めて直面した2008年末、この点に忠実に、バーナンキ議長が論文で提唱した3つの新たな手段のうち、唯一の先行例として日銀が2001~06年に実施していた「量的緩和」の効果を徹底的に検証した。「量的緩和」政策導入当初、日銀自身やFRB理事時代のバーナンキ氏は実体経済へのプラス効果を期待していたが、それは認められなかった、という事実を素直に受け止めたうえで、「量的緩和」の部分を根本から見直した。 そして、日銀のようにマネタリーベースの増加を金融政策の目標に据えることは決してせず、長期金利の上昇抑制による実体経済の下支えを企図する「大規模な資産買い入れ(LSAP)」にその名称も改め、Fed自身が「量的緩和」と称することは決してなかった。他の「FG」や「オペレーション・ツイスト」とともに、効果が未知の新たな金融政策手段として期限を区切って試行し、そのつど効果を確認してから次の政策展開を虚心坦懐に考える、という形で危機後の政策運営を展開していったのである。 この点は、黒田総裁が2013年春の日銀総裁就任前に国会において、「白川総裁時代までは、日銀の金融政策が不十分だったから、わが国は長年、デフレから脱却できなかった」と述べ(※2)、日銀自身の2000年代の量的緩和について、日銀自身による分析を含めてすでに明らかになっていた結果を謙虚に受け止めようとせず、マネタリーベースの拡大を目標に据える金融政策運営を強行したのとは、極めて対照的な政策運営であった、と言えるだろう』、「Fed」の「政策運営」は、「効果が未知の新たな金融政策手段として期限を区切って試行し、そのつど効果を確認してから次の政策展開を虚心坦懐に考える」、という着実で誠実な運営だ。これに対し、「黒田総裁」の「政策運営」は、「謙虚さ」「誠実さ」を欠いているようだ。
・『バーナンキ議長が先頭に立って説明を行う  そしてFedの場合、金融危機後にLSAPに取り組んだ初期から、出口問題を内部で検討し、その概要を2010年初という早期の段階から、バーナンキ議長が先頭に立ち、その効果ばかりでなく、後々起こりかねない“都合の悪いこと”も含めて、異例の政策の「出口」をどのような手段で切り抜けるのか、今後どのような金融政策運営を行っていくつもりなのか、といった点に関して、議会や記者会見等の場を通じ、丁寧な説明を行っていった。 LSAPは長期金利の上昇を抑制するうえで、一定の効果があることを確認できつつあったが、いつまでも続けられるわけではないこと、株式市場等の過熱といったリスクを惹起しかねないこと、先行きの金融情勢次第ではFedの財務が傷み、最悪の場合には連邦政府へのFedの納付金が枯渇する期間が続きかねないこと、といった点を、具体的な試算結果も合わせて公表し、米国民や市場関係者に誠実に、正直に説明していったのである。 そしてFedはその後、“2%の物価目標”に過度にこだわることなく、金融政策の正常化を断行していった(図表2)。米国の消費者物価前年比が安定的に2%を超えているとは言えず、かつ失業率も7%近い状態にあった2014年1月から、Fedは資産買い入れの減額を開始し、わずか10カ月後には新規買い入れを一切停止した。2015年入り後は、原油安の影響等もあって、世界的にも物価指標の下振れが長引いていた時期であったが、Fedは同年末に危機後初の利上げに踏み切り、2016年末からはほぼ3カ月に一度のペースで断続的に利上げを継続していった。 (米連邦準備制度の政策金利(FFレート・ターゲット)と米国の雇用・物価指標等の推移のグラフはリンク先参照) これらはすべて、米国の実体経済の回復度合いのみならず、Fed自身が先行きに抱えかねないリスクの大きさを慎重に判断したうえでの金融政策運営だった。さらに2017年10月以降、コロナ危機到来前までの期間においては、Fedは最大で月当たり500億ドル(≒邦貨換算1$=105円として、5兆2,500億円相当)もの巡航速度で、米国債およびMBSを満期落ちさせる形で、売却損を被ることなく手放し、資産規模を縮小させる正常化プロセスを進めていた。 コロナ危機前に正常化が最も進展していた2019年8月末時点において、Fedは総資産をピーク時(2017年9月末)の約4.5兆ドルから約3.8兆ドルにまで縮減させていた。先行きの金融政策運営上の支障となり得る、民間銀行がFedに預ける当座預金は、同じく約2.2兆ドルから約1.5兆ドルにまで、この期間中に実に3割以上縮減させていたのである。 Fedを凌駕する規模で資産を膨張させている今の日銀に、市場金利の上昇を怖れず「月当たり5兆円」もの規模で国債を手放していくという正常化のプロセスを、自らの手で実施する覚悟が果たしてあるのかどうか。 その覚悟もないのに、「2%の物価目標」の未達を“大義名分”に、政権の顔色を窺い、漫然と国債等の買い入れを続けて自らが抱え込むリスクを恐ろしいほどまでに膨張させ、「導入した当事者である自分たちの任期中には正常化を実施する気などさらさらありません」とでもいわんばかりの中央銀行には、そもそも、セントラル・バンカーとして、金融政策運営の一環としての「量的緩和」などに取り組む資格などないといえよう』、極めて厳しい日銀批判だ。「2010年初という早期の段階から、バーナンキ議長が先頭に立ち、その効果ばかりでなく、後々起こりかねない“都合の悪いこと”も含めて、異例の政策の「出口」をどのような手段で切り抜けるのか、今後どのような金融政策運営を行っていくつもりなのか、といった点に関して、議会や記者会見等の場を通じ、丁寧な説明を行っていった」、日銀とは大違いだ。
・『【英国】量的緩和のコストは政府が負担すると明確化  英国においてもリーマン・ショック後の2009年春、米Fedとほぼ同じ時期にBOEが“ゼロ金利制約”に直面し、まずは社債等の民間債券を、ほどなく英国債を大量に買い入れる量的緩和に踏み切らざるを得なくなった。 ただし、英国の場合特筆すべきは、こうした新たな金融政策手段を採用する時点においてリスクが明確に認識されていたことだ。それは以下の3点に整理できる。 ①BOEが多額の債券を買い入れるという金融政策運営は永続させることはできず、時が経てばいずれ正常化させざるを得ないこと ②その局面では、実体経済の回復に伴って良い意味での市場金利の上昇が見込まれ、それは同時に債券価格の下落を意味するため、正常化の局面でBOEが買い入れた債券等を売却すれば、多額の売却損を被りかねないこと ③それは中央銀行であるBOEの信用に重大な悪影響を及ぼしかねないこと BOEは1999年に政府からの独立性を獲得したが、それは金融政策運営の“手段の独立性”の側面にとどまり、米Fedや欧州中央銀行(ECB)のような“目標設定の独立性”までは得られず、その権限は政府(財務省)の側が握っているという関係にある。 しかしながらこうした危機の局面では、政府と中央銀行とのいわば“二人三脚”で金融政策運営に当たるような関係が奏功し、未知の新たな金融政策手段を導入するBOEに過度な負担を負わせず、将来的に起こり得べきコストは、すべて国(財務省)の側が負担する、という政策上の枠組みを新たに構築したうえで、量的緩和への着手が行われたのである』、日本ではこうした点は曖昧なままである。
・『BOEが量的緩和のための子会社を作り損益を明確にする  具体的には、いずれ出口の局面で損失がかさむことを見越し、量的緩和はBOE本体のBS上ではなく、BOEの子会社である資産買い入れファシリティ(APF)を設立し、その勘定で実施されることになった。こうした明確な区分経理により、量的緩和に伴う損益は毎期、明確に把握されて対外公表され、将来的にあり得る損失は全額英政府が負担することとされた。英政府が負担できる金額にはそのつど、上限を設け、それが折をみて引き上げられる形(図表3)で、その枠内でBOEは量的緩和を実施していったのである。 (資料)英財務大臣・BOE総裁間のAPF関連での各年の公開書簡(Exchange of letters between HM Treasury and the Bank of England)等を基に日本総合研究所作成。 (資料)英財務大臣・BOE総裁間のAPF関連での各年の公開書簡(Exchange of letters between HM Treasury and the Bank of England)等を基に日本総合研究所作成。 そしてBOEは、ひとたび量的緩和が出口の局面に入れば、それまで利益を計上していたAPFがどのような形で損失を計上することになるのかという問題に関する試算結果を対外公表して明確に国民に示した(図表4)。それによって英国民は、BOEの量的緩和によって長期金利が低下するというメリットが得られるばかりでなく、いずれは自分たちに負担が回ってくることになりかねないことを明確に認識できるようになったのである。そしてその損失の規模は、先行きの金利情勢次第で大幅に変化する。BOEはさらに、APF、ひいてはBOEの損失額を簡単に試算できるスプレッドシートをHP上で提供している』、「量的緩和はBOE本体のBS上ではなく、BOEの子会社である資産買い入れファシリティ(APF)を設立し、その勘定で実施されることになった。こうした明確な区分経理により、量的緩和に伴う損益は毎期、明確に把握されて対外公表され、将来的にあり得る損失は全額英政府が負担することとされた」、ここまで明確に区分経理するとはさすがだ。日銀も爪の垢で煎じて飲むべきだろう。
・『【欧州】国債買い入れよりも財政再建が先  2008年のリーマン・ショックに続いて、2009年秋以降欧州債務危機に見舞われたECBは、主要な中央銀行のなかでも、最も厳しい金融政策運営を迫られた中央銀行であるといえよう。 今となって振り返れば、最も厳しかったのは、ドラギ氏がECB総裁に就任した2011年秋から、ギリシャが1年間に二度にわたる財政破綻を引き起こした2012年にかけての時期であった。しかしながら、そうした厳しい局面に際しても、ECBは安易に各国債を買い入れる危機対応策は採らず、あくまで、民間銀行への資金供給(リファイナンシング・オペ)を、危機対応として長期化、大規模化させることを通じて、民間銀行が保有している各国債を手放さなくて済むようにする、という間接的な支援にとどめた(図表5)。これが奏功して、債務危機が一服した後、大きく膨張していたECBのBSは急速に元の規模へと縮小することとなった。 (ユーロシステムの資産/負債の主な内訳別推移(2007~19年)のグラフはリンク先参照) ギリシャのユーロ離脱が取り沙汰され、債務危機の緊張がピークにあった2012年7月、ドラギ総裁は「ユーロを守るためにやれることはなんでもする」と発言した。続く9月のECBの政策委員会で導入された、債務危機対応のための新たな方策は「短・中期国債の買い切りオペ(※3)」であったが、これには申請国があくまで、ユーロ圏が定める厳しい財政再建プログラムを自ら断行することを条件に、ECBが当該国の短・中期国債の買い切りオペに応じる、というものであった。 ※3:買い切りオペレーションの略。金融調節の一環として、中央銀行は金融機関から国債などを買い入れている。その際、売り戻しの条件がついていない「買い切り」の取引をこう呼ぶ。 要するに、「財政再建が先、中央銀行による国債の買い入れは後」というもので、この枠組みが設けられたこと自体は、危機的事態の沈静化に大きな効力を発揮したものの、実際に適用を申請する国はなかったのである。そして欧州では債務危機が一段落した後、わが国では考えられない迅速なペースで財政再建が進められ、それが結果的には現下のコロナ危機下での財政面での対応余力を生み出すことになった』、「「財政再建が先、中央銀行による国債の買い入れは後」というもので、この枠組みが設けられたこと自体は、危機的事態の沈静化に大きな効力を発揮」、原則がキチンと守られているのは、ドイツの影響もあるのだろう。
・『日銀の「量的・質的金融緩和」がもたらした財政の弛緩  「やれることは何でもやる」。これはわが国でもかつて耳にしたことがあるフレーズだ。2013年3月衆議院議院運営委員会における所信表明のなかで、黒田総裁は「もし私が総裁に選任されたら、市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向けやれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたいと思う」と述べた。そして就任直後の同年4月から「量的・質的金融緩和」を実施し、今日に至っている。 その考え方はまさに、「デフレ脱却、ないしは2%の物価目標の達成が先」=「中央銀行による国債買い入れが先、財政再建は後」というものだ。そして、その後の日本の財政規律の弛緩ぶりは今まさにみてのとおりの状況になっている。 以上は、海外の主要中銀がこれまで展開してきた金融政策運営のごく一部のエピソードにすぎない。日銀を含む主要中銀が、これまでどれほどのリスクをとる金融政策運営を行っているかは、最も端的にはその資産規模の推移に表れる(図表6)。 (主要中央銀行の資産規模の推移(名目GDP比)のグラフはリンク先参照) コロナ危機下にある現時点に至るまで、日銀がいかに他の主要中銀とはかけ離れた過剰なリスク・テイクを行っているのかは、このグラフから一目瞭然だろう。次回は、わが国がこのまま突き進んでいったとき、その先で待ち受ける事態はいかなるものなのかについて考えることとしたい』、「名目GDP比でみた資産規模」、で日銀の異常な「リスク・テイク」ぶりが明らかである。「出口戦略」を考えておくべきだろう。

次に、12月19日付け東洋経済オンラインが掲載した経済ジャーナリストの森岡 英樹氏による「40兆円の日銀ETF、「個人に直接譲渡」案が急浮上 香港では事例あり、日本で実施するリスクは?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/397007
・『「はたして出口はあるのだろうか」 日本銀行内部で頭の痛い問題になっているのが、2010年12月の金融緩和以降、営々と買い続けてきたETF(上場投資信託)の出口戦略だ。「ETF買い入れは、主要中央銀行では日銀しか行っていない奇策。それだけに出口戦略も難題と言わざるをえない」(市場関係者)。 日銀が11月26日に発表した2020年4~9月期決算によると、保有するETFは9月末時点(時価ベース)で40兆4733億円まで膨張している。20年3月末の31兆2203億円から約30%増加した格好だ』、「出口戦略も難題」なのは確かだ。
・『GPIFを抜いて日本最大の株主になった日銀  「株高により含み益が前年度末の3081億円から半年間で5兆8469億円へ大幅に増加したことが大きく寄与した」(機関投資家)とされる。結果、最終損益に当たる当期剰余金は9288億円と、過去最高の水準を記録した。 日銀の足元の保有株式残高は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を抜き、いまや日本最大の株主だ。 「3月末時点ではGPIFの国内株式の保有残高は、日銀を約1兆円上回っていたが、GPIFは株式の持ち分が基本ポートフォリオの資産配分の上限を超えたことから10月以降、残高を落とす一方、日銀は買い入れを継続していることから時価ベースの残高は逆転している」(機関投資家)とされる。日銀のETF保有残高は東証1部時価総額の7%程度まで膨らんでいると見られている。 コロナ禍にもかかわらず株価が上昇を続けており、日経平均株価はバブル崩壊後、29年ぶりの最高値を更新した。日本最大の株主となった日銀は、自作自演の「官製相場」を演出し、その恩恵を最も受けているわけだ。 しかし、この「官製相場」は一度舞台に上がると降りるに降りられない、「ネバーエンディングストーリー」になりかねない危うさを秘めている。 2013年春に黒田東彦氏が日銀総裁に就いて、間髪を入れずに断行した量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和は、バズーカ砲に例えられたように、デフレにあえぐ日本経済を下支えする効果は絶大だった。 消費者物価指数(CPI)はお世辞にも目標とされた2%には到達できていないが、マネタリーベースの拡大および長期国債、ETFなどの買い取りは市場に安心感を醸成した。 とりわけ株式市場は円安効果も手伝い、大きく上げに転じた。異次元緩和を契機に株式市場はリスクオフからリスクオンに転換したように思える。「買い本尊として日銀が控えていることは何よりの安心材料」(市場関係者)というわけだ』、「この「官製相場」は一度舞台に上がると降りるに降りられない、「ネバーエンディングストーリー」になりかねない危うさを秘めている」、同感である。
・『時間とともに大きくなった副作用  しかし、時間の経過とともに異次元緩和の効果が薄れる中、日銀は順次追加の緩和策に踏み込んだ。マイナス金利の導入はその代表だ。よりカンフル剤的な施策に踏み込むにつれ、副作用も大きくなっていった。金融機関の収益圧迫はその象徴的な事象だ。そこにコロナ禍が追い討ちをかけた。 日銀は今年3月、3年半ぶりに追加緩和に踏み切った。直前にFRB(連邦準備制度理事会)が緊急の追加利下げに踏み切り、政策金利をゼロ%にすることを決めたことを受けた措置でもあったが、柱は以下のとおりだ。 ① 年間6兆円をメドに買い上げているETF(上場投資信託)を2倍の12兆円に増やす。 ② REIT(不動産投資信託)の買い入れ額を年間900億円から2倍の年間1800億円に増額する。 ③ 企業への直接的な資金繰り対策として社債やCP(コマーシャルペーパー)の購入について、9月末までに2兆円増す。 ④ 民間金融機関が融資を増やすよう資金供給の枠組み(8兆円規模)を創設し、9月末までゼロ%で貸し出す。 コロナ禍を受けて日銀がETFの買い入れを増額するなど、追加緩和策に踏み出したことで、これまでマグマのようにたまり続けてきたある疑念が頭をもたげた。日銀のバランスシート悪化への懸念だ。 日銀の買い入れたETFはこの時点で30兆円を超えており、「日経平均株価が1万9500円を割り込むと含み損になる」と黒田総裁が参議院の予算委員会で発言したことも不安をあおった。 株価も下落基調で、このままで推移すれば、いずれ日銀は一般企業でいう総資産を自己資本等(資本金、引当金勘定、準備金)で割った自己資本比率がマイナスに転じ、債務超過に陥るのではないかと危惧された。 もちろん、日銀は日銀券を発行する発券銀行であり、自己資本を銀行券で割った自己資本比率は8%超を維持している。いずれにしても、こうしたリスクを冒してでも日銀が追加緩和に踏み込まざるをえないところに新型コロナウイルスの影響の深刻さが見て取れる。) さいわい、日銀をはじめとする主要国中央銀行の一斉金融緩和が効を奏し、コロナ禍にもかかわらず、金融システムは揺らぐことなく、株式市場はむしろ暴騰している。根底にあるのは、中央銀行が市中にばら撒いた過剰なマネーにほかならない。 しかし、追加緩和の副作用は日銀そのものに逆流し始めている。 3月の追加緩和に伴い日銀の資産残高は9月末で、前年同期比21.1%増の690兆0269億円に膨らんだ。内訳は国債が前年同期比10.5%増の529兆9563億円、J-REIT(不動産投資信託)が同19.9%増の6420億円、そしてETFが同24.5%増の34兆1861億円などだ。いずれの保有残高も過去最高額となっている。 残高が増えるにつれ、その出口戦略は難しくなる。「最大の保有者である日銀が売りに出れば、それだけで価格が下落し、日銀は損失を抱えるというジレンマに直面する」(市場関係者)ためだ。 とくに株式は国債のように満期まで持ち切るという対応ができない。どこかの局面で売る行為が必要になる。いったい、どうするのか。まさに日銀が頭を抱えるゆえんだ』、「確かにETFの「出口戦略」は難しそうだ。
・『ETFの買い入れ決めた元幹部が戦略提案  そこで浮上している案の1つにETFを個人に直接譲渡して保有してもらうという構想がある。提案しているのは、元日銀理事で、日銀のETF買い入れ政策を決めた当時の企画局長、櫛田誠希氏(現・日本証券金融社長)だ。 個人の購入希望者を募って、日銀が保有するETFを譲渡するという案で、「一定期間、相応のインセンティブ付与を前提に売却制限を付して譲渡する」ことなどが考えられている。 つまり、ETFを割引価格で個人に譲渡する。譲渡後は一定期間保有を義務付けるというスキームである。日銀が保有するETFは株価上昇で含み益があり、相応の割引価格でも日銀に損失は生じない。かつ、売却制限を課すことで市場インパクトを減殺できるというわけだ。 同時に、この個人への譲渡案は、「貯蓄から投資(資産形成)」を推し進める金融庁にとっても渡りに船となる。「預貯金を中心に積み上がる個人金融資産を投資に振り向けたい金融庁にとって、日銀のETFを個人に割引譲渡することはまさに一石二鳥の妙案といえる」(市場関係者)。 実は1990年代後半のアジア通貨危機時に、香港政府が市場から株式を買い上げ、その出口戦略として買い上げた株式でETFを組成し、価格を割り引いて個人に譲渡したことがある。この施策はその後の個人投資家の育成に資することになったと評価されている。 だが、はたして同様のことが日銀でも可能なのか。日銀のETF保有額は香港の事例と比べようもないほど巨額であり、「割引価格で譲渡しても、その後の株価下落で個人投資家が損失を被るリスクは消えない」(市場関係者)ことは確かだ。日銀の悩みは深い』、「個人への譲渡案」はなかなかいいアイデアだ。

第三に、1月7日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/401891
・『1月4日の金融市場ではアメリカの期待インフレ率を示す10年物ブレークイーブンインフレ率(以下10年BEI)がついに2%を突破するという動きが見られた。その傍らで10年債利回りは0.90%付近、ドルインデックスもおおむね90付近で横ばいとなっていたので、期待が先行して高進している構図が鮮明である。 10年BEIの2%突破は2018年11月16日以来、約2年2カ月ぶりであり、FRB(連邦準備制度理事会)が2019年に利下げ路線に転換する以前の水準に回帰したことになる。2018年11月といえば、すでにFRBが年3回の利上げを済ませ、翌月には4回目の利上げを敢行するタイミングである。今とは対照的だ。感染拡大が深刻度を増すたびに裁量的なマクロ経済政策の発動が期待され、10年BEIが上がるが、実体経済はついてこない、という構図が続いて、そろそろ1年になる』、「アメリカ」には「10年BEI」など重要な経済指標がある。
・『「アメリカ」には「10年BEI」など重要な経済指標がある  こうしたインフレ期待の高まりと、インフレ耐性に優れるとされる株価の上昇は一応の整合性が取れる。だが、理論的には人々の期待するインフレ率が上昇すると、名目金利も相応に上昇すると考えられる。いわゆる「名目金利=実質金利+インフレ期待」で定義されるフィッシャー効果の議論だ。 昨年来の株価上昇は、インフレ期待上昇に伴う実質金利の低下によるもの、という解説が目立つ。その説が正しいとすれば、名目金利上昇に伴う実質金利上昇は株価下落を招く可能性が高い。利上げや量的緩和の縮小といった具体的な正常化プロセスが始まらなくても、経済・金融情勢が正常化に向かう過程で名目金利が上昇するというのは「普通のこと」だ。その「普通のこと」、すなわちフィッシャー効果の発現を、FRBがどれくらい抑制しようとするかが2021年には問われるだろう。 真っ当に考えれば、FRBの責務は株価の高値維持ではなく「雇用の最大化」と「物価の安定」の2つなのだから、明らかに先走っている株価の騰勢にブレーキをかけること自体は、さほど不思議なことではない。しかし、コロナ禍からの立ち上がりを図ろうとしている最中、あえてそうした株価潰しをやることについては相応の勇気が必要なのは間違いない。 したがって、「どれくらい抑制するのか」というさじ加減が重要になる。まず、名目金利の行方について、さまざまな見方がありうる。現状から横ばいでまったく変わらないという見方もあれば、大きく上がる、小さく上がる、もしくは逆に、感染再拡大に応じて下がっていくという見方もあるかもしれない』、「なるほど。
・『名目金利はつれて上昇するのか  筆者は、有効なワクチン接種も順次始まっている以上、2021年のアメリカの金利が「横ばいでまったく変わらない」という想定には無理があるという立場だ。実際、10年BEIの上昇スピードが速いので実質金利低下ばかりに目が行くが、昨年10~11月を境に名目金利も少しずつ上昇している。 アメリカ10年金利は、1~3月期に1.0%台に乗せ、年央までに1.2%、年末までに1.5%程度までの範囲ならば上昇余地があり、ドル相場の一方的な下落もこれに応じて止まると考えている。 逆に、ここからアメリカの金利が下がる展開があるのだろうか。ないとは言えない。コロナ変異種の強毒化やそれに伴うワクチンの無効化など、コロナ絡みでは何が起きるかわからない。実情はどうあれ、2021年はメディアを中心として副作用の存在をことさら喧伝する時間帯が必ずあると筆者は考えている。その際、思惑主導でアメリカの金利が低下する可能性はリスクシナリオとして十分想定されるものだ。金利は上昇に賭けておくほうが無難だとは考えるが、逆サイドのリスクがゼロというわけではない。 話をアメリカの金利上昇に戻す。金利が上昇すれば株価の調整だけでなく、ドル建て債務を積み上げた途上国への影響も懸念されるだろう。リーマンショック後、金融市場ではドルを安価で調達できるようになり、とりわけ新興国では民間部門を中心としてドル建て債務が急速に積み上がったという経緯がある。 こうした、いわば「ドル化した世界」の危うさは過去に本コラムへの寄稿『「ドル化した世界」がFRBの利上げ路線を阻む』でも議論したことがあるので今回は詳しく議論しないが、まだ多くの途上国がドル建て債務を抱えたままの状態が放置されている。かかる状況下、アメリカの金利が上昇する過程では株価の動揺に加え、新興国通貨の価値下落が当該国の債務負担を増すという展開も十分懸念されるものだろう』、「金利が上昇すれば株価の調整だけでなく、ドル建て債務を積み上げた途上国への影響も懸念」、その通りだ。
・『2021年はタカ派とハト派のバランスに腐心  一方的に緩和方向への政策運営に尽くせばよかった2020年とは異なり、2021年以降のFRBは国内外への影響に鑑み、タカ派とハト派のバランスを取ることに腐心する難しい局面に入る。必然的に、アメリカの金利の低下とこれに伴うドル安だけを既定路線として見ておけば済んだ2020年とは違った相場観が求められる。 筆者はドル高局面への転換とまでは言わないが、アメリカの金利とドルの相互連関的な下落がいったん収束し、次の潮流に向かう「踊り場」のような年に2021年は位置づけられるのではないかと考えている』、「アメリカの金利とドルの相互連関的な下落がいったん収束し、次の潮流に向かう「踊り場」のような年に2021年は位置づけられるのではないか」、「踊り場」とは上手く表現したものだ。
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