エネルギー(その6)(中国製風車」が倒壊事故 同社の風車は全国に400基も、水素1 水電解装置 “グリーン水素”の大量製造時代へ 世界で400超のプロジェ…=中園敦二、脱炭素の切り札?にわかに脚光を浴びる「アンモニア発電」とは何か、再エネ推進派でも意外と知らない「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の違い) [技術革新]
エネルギーについては、昨年1月3日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その6)(中国製風車」が倒壊事故 同社の風車は全国に400基も、水素1 水電解装置 “グリーン水素”の大量製造時代へ 世界で400超のプロジェ…=中園敦二、脱炭素の切り札?にわかに脚光を浴びる「アンモニア発電」とは何か、再エネ推進派でも意外と知らない「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の違い)である。
先ずは、2月2日付けデイリー新潮「「中国製風車」が倒壊事故 同社の風車は全国に400基も」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/02020556/?all=1
・『傾き始めた菅政権の切り札「脱炭素化」の出鼻をくじいた格好だ。2050年までの温室効果ガス実質ゼロを目指し、再生可能エネルギーが脚光を浴びている。その折も折、長崎に設置されていた中国製風車が根元から倒壊したのだ。 「ドーン!」 けたたましい音が轟いたのは、昨年10月1日13時頃。長崎県松浦市に設置されていた小型風力発電機が根元から倒壊した。 小型とはいえ、発電機は高さ20メートルほど。風速6メートルなら年間8万キロワット以上を発電することが可能だ。事業主の企業は経産省が所管するFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)に参画し、2018年に都内にあるHYエネルギーという会社が約2千万円で販売しているこの風車を購入し、設置していたのである。 事情通によれば、 「HYエネルギーは中国人が経営者で、かつては自民党の二階俊博幹事長の次男が役員として名を連ねたことで知られていました。この発電機を購入した事業主はメンテナンス費用を差し引いても年間200万円ほどの利益が上がる予定でした。10年で初期投資を回収できるはずだったのに、それが2年で倒れてしまったのですから、大損です」 製造元はGHREという中国の会社。風車は中国の工場で作られたため、販売元のHYエネルギーとGHREの間で責任のなすり合いとなっているのである』、「小型風力発電機が根元から倒壊」、僅か「2年で倒れ」たとは、いかにも「中国製」らしい。「販売」した「HYエネルギーは中国人が経営者で、かつては自民党の二階俊博幹事長の次男が役員」、なるほど。
・『ボルトが折れる 事故直前に辞任するも、今も事故対応をしているHYエネルギーの前代表が言う。 「今回の事故は、タワーと土台を溶接で繋いでいる部分の少し下、タワーの下部がポキッと折れてしまったことで起きました」 その原因については、「風車の羽根を結合する際、ボルトが強度不足だった可能性があります。羽根がガタガタと揺れてしまい、その振動でタワーに過重な負担がかかり、倒壊したのではないか。実際、GHREのボルトは設置の際によく折れていて、GHREの工場に改善の要求を出していたんです」 かたや、GHRE日本事業部のマネージャーは上海から記者に電話をかけてきて、こう反論するのだ。 「弊社からすればHYエネルギーの主張は事実に反します。ボルトの強度については出荷前に第三者機構によるレポートで確認済みだからです。向こうの主張はエビデンスに基づいているのでしょうか。今回の事故については調査中で、本当の原因が突き止められ次第、公表する予定です」 倒壊から3カ月以上が経過しても、両社の主張は平行線を辿るばかり。さらに不安視されるのは、 「ウチが手掛けた同じ型の発電機は全国で100基ほどが稼働しています。目視と音の検査で異常はありませんでしたが、今後もっと詳しい検査を行う予定です」(HYエネルギーの前代表) 他の企業が設置したものも含めると、GHRE製の小型風車は日本で400基が稼働中とも言われている。 経産省の担当者に聞くと、 「小型風力発電機について、設置されている数は把握できていません」』、原因は不明だが、「GHRE製の小型風車は日本で400基が稼働中」、恐ろしい話だ。
次に、本年2月21日付けエコノミストOnline「水素1 水電解装置 “グリーン水素”の大量製造時代へ 世界で400超のプロジェ…=中園敦二」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210302/se1/00m/020/027000c
・『“グリーン水素”の大量製造時代へ 世界で400超のプロジェクト 水電解装置は風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーにより生み出された電力余剰分で水を電気分解して水素に変換し、エネルギーを貯蔵することができる。グリーン水素を製造する市場でいかに高効率に水素を製造するか。水電解装置の需要が高まり、国内外の企業が参入している。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などによると、実用技術としては、(1)アルカリ水電解法、(2)固体高分子型(PEM型)水電解法──の2種類がある。アルカリ水電解法はスケールメリットがあり、特に大規模プラントで低コスト化が期待できる。PEM型水電解法は同じ面積に流す電流(電流密度)がアルカリ水電解法に比べて高いため装置を小型化できるが、部材が高価でコストがかさむ。ただ、最近の活発な研究開発で規模、コストとも差は縮まっているという』、なるほど。
・『旭化成が世界最大級 国内で注目されるのが旭化成だ。2020年7月に実証試験を兼ねて本格稼働を始めた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R)にアルカリ水電解装置を納入した。 水を電気分解して水素を発生させる水電解装置は、消費電力が大きいほど、多量の水素を作り出すことができる。旭化成は、10メガワットという大きな電力で水素を発生させる装置を開発。単体の水電解装置としては世界最大級という。世界市場で高いシェアを誇る自社の食塩電解プロセスを流用して開発が可能となった。同社は装置のコスト低減と長期耐久性検証を続け、展開を狙う。 日立造船はPEM型水電解法の装置を開発し、周辺機器を含めたシステムを販売する。同社は水素にCO2を加えてメタンを作る「メタネーション」技術の開発にも取り組む。 三菱パワーは固体酸化物形燃料電池(SOFC)を扱っているが、SOFCの発電の仕組みを逆反応させて、水から水素と酸素を発生させることで、効率の高い固体酸化物形電解設備(SOEC)となる。今後、水電解装置への応用についても動きが出てくると期待される。 国際エネルギー機関(IEA)などによると、20年6月現在、稼働中の水電解プロジェクトはドイツ、日本などで169件あり、アルカリ水電解法とPEM型水電解法がほぼ二分するが、プロジェクト規模についてはアルカリ水電解法が6割以上を占める。 また、計画中のプロジェクト件数は公表されているものだけで現状の1.6倍の257件に上る。稼働中と合わせると400を超えるプロジェクトが存在する』、「稼働中の水電解プロジェクトはドイツ、日本などで169件あり、アルカリ水電解法とPEM型水電解法がほぼ二分」、「計画中のプロジェクト件数は公表されているものだけで現状の1.6倍の257件」、まだまだこれからのようだ。
・『EUだけで4兆円市場 欧州連合(EU)の水素戦略は30年までに電解装置40ギガワット(1ギガワットは1000メガワット)・水素1000万トン製造を目標にしており、「電解設備コストは1メガワット当たり約1億円で、EUだけで4兆円の市場規模になる。世界的に見ても参入企業は増える」(大手シンクタンク)。海外勢はシーメンス(ドイツ)、Nel(ノルウェー)などが設置を進めており、コスト低減のため大型化を図っている。また、ITM(英)は住友商事と協定を結び、住商は日本での販売代理店となった。 日本企業も海外で動いている。三菱重工業は豪州のH2Uインベストメンツ社へ出資し、同社が検討中の水電解事業に参画する。再エネから水素を製造して地域への供給を目指す。また、ドイツでバッテンフォール(スウェーデン)、シェル(英蘭)などと協働して、グリーン水素製造・供給・利用事業の実現可能性の検討を開始。閉鎖予定の石炭火力発電所跡地で100メガワット規模の水電解プラントを建設する。 ただ、日本企業は「国内需要がほとんどなかったこともあり、装置の大型化に5年以上遅れている。このままでは欧米メーカーに太刀打ちできなくなる」(業界関係者)と懸念する声もある』、「日本企業は」「装置の大型化に5年以上遅れている」、またまた後塵を拝するとはやれやれだ。
第三に、.3月3日付けエコノミストOnlineが掲載した日本総合研究所ディレクタの段野孝一郎氏による「脱炭素の切り札?にわかに脚光を浴びる「アンモニア発電」とは何か」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210302/se1/00m/020/035000c
・『主に農業肥料用途として使われているアンモニア(NH3)が、発電用燃料としてにわかに注目されている。 「二酸化炭素(CO2)フリー」の発電燃料として活用できることが現実味を帯びてきたからだ。 アンモニアの製造方法は100年前に確立された「ハーバー・ボッシュ法」で、天然ガスなどに含まれるメタン(CH4)から分離された水素(H)と、大気中の窒素(N)を高温高圧で合成する。 可燃性があるアンモニアは燃料になり得るが、従来の製造方法では、多大なCO2を排出した。原料として天然ガスなどの化石燃料を使用し、さらに合成プロセスで多量のエネルギーを必要とするためである。 前者については、メタン由来水素を、水を再生可能エネルギーで分解する「グリーン水素」、または、メタン由来水素ではあるが製造工程で出るCO2を回収する「ブルー水素」に置き換えることで削減が可能だ。 後者についても、少ないエネルギーで済む合成プロセスの開発が進む。 こうした新たなプロセスでアンモニアを作れば、CO2フリーのクリーンな発電燃料となる。 ここで、アンモニアでなく、グリーン・ブルー水素をそのまま発電燃料として活用するということも可能ではある。しかし、水素は燃焼速度が速いという特性があり、既存の発電所で混焼させる場合は、同じく燃焼速度が速いガス火力での混焼が主体となる。 この点で、日本はベース電源として石炭火力が多く、石炭はガスと比べて燃焼速度が遅いため、そのままではグリーン・ブルー水素の活用が難しい。 そこで、石炭に近い燃焼速度を持つアンモニアの形に変え、石炭火力発電所のCO2排出量を下げる目的で使おうという動きが活発化している』、「水素は燃焼速度が速いという特性があり、既存の発電所で混焼させる場合は、同じく燃焼速度が速いガス火力での混焼が主体となる」、「石炭に近い燃焼速度を持つアンモニアの形に変え、石炭火力発電所のCO2排出量を下げる目的で使おうという動きが活発化」、「混焼させる場合は」「燃焼速度」が問題になるようだ。
・『今治・伊藤忠が利用検討 国内では、電力・ガス・商社・船舶会社などから構成される「グリーンアンモニアコンソーシアム」が、再エネ由来のグリーンアンモニアの普及に向けて活動を進めている。 具体的には、2021年度から、東京電力ホールディングスと中部電力の合弁によるJERA・碧南石炭火力発電所(愛知県)内の出力100万キロワットの発電機で、アンモニアを20%程度混焼させる実証実験を検討している。 石炭燃料代替以外の用途では、ガスタービン、船舶用ディーゼルエンジンなどに活用することを念頭に研究開発が行われている。 今治造船・三井E&Sマシナリー・日本海事協会・伊藤忠エネクス・伊藤忠商事は、「アンモニア焚(だ)き機関」を搭載する船舶を共同で開発することに合意している。 加えて、アンモニアは水素のエネルギーキャリア(運搬方法)としても期待されている。 水素は密度が小さいため、(1)液化、(2)圧縮、(3)有機ハイドライド(トルエンと合成)、(4)水素吸蔵合金 ──といった常温常圧以外での輸送方法が必要である。 いずれも輸送のための新たなインフラ構築が必要になる。 一方、前述したように、アンモニアは肥料用途での商用実績があり、輸送インフラも整備されており、使用時に水素を取り出すことなく燃焼させることが可能であるため、既存のアンモニア流通経路が活用できる。 現在、アンモニアは、(1)肥料用途が主体で、需要地が偏在する、(2)原料は天然ガスと大気であり供給地の制約が少ない、(3)ハーバー・ボッシュ法が確立されており供給地の制約が少ない ──といったことから、需要地近接型の工場立地で、地産地消がなされてきた。 国内では、主に工業ガス会社が供給や製造、輸送を担い、肥料や化学用途の需要家が消費してきた。 しかし今後は、脱炭素化での用途が新たに増加することが見込まれる。 現在、国内では年間約100万トンが消費されているが、経済産業省資源エネルギー庁は、発電や船舶などの「燃料用」として、30年には300万トンの需要を想定する。 需要増に対応するには、国内の供給網だけでなく、海外からの調達が必要になる。 具体的には、ブルー水素由来のアンモニアが製造可能な産油・ガス国や、グリーン水素由来のアンモニアが製造可能な水準まで再生可能エネルギーの製造コストが安価になると見込まれる北米・豪州・中東からの輸入も必要になるだろう。 国内の輸送は既存インフラが活用できる見通しであるが、新規用途として発電側で混焼させるための設備投資(アンモニア貯蔵タンクや混焼設備)も必要となる』、「水素」で運搬するよりは、確かに実績のある「アンモニア」で運搬する方がよさそうだ。
・『課題はNOX、臭い 脱炭素としてのアンモニア利用にも課題は存在する。 その一つは、Nを含むことであり、燃焼時に窒素酸化物(NOX)の排出量の増加が見込まれる点だ。CO2が減ったとしても、NOXが増えてしまえば社会的影響は大きい。 現在では、アンモニアをボイラーに投入する位置を工夫することによってボイラー内でのアンモニアの燃焼性を改善させること、既存の脱硝装置を活用することなどにより、大幅に改善が図れることが判明してきている。 二つ目は、アンモニア特有の臭気である。 小型のアンモニア燃料電池の開発なども進むが、一般家庭・住宅が存在する地域での使用は、万が一の漏えいを想定すると現実的ではない。 アンモニアはあくまでもBtoB(法人対法人)分野での脱炭素用途に使われるものと割り切った方がよいだろう。 水素・アンモニアの利用自体は国内でもたびたび盛り上がってきていたが、世界市場で潮目が変わったのは20年7月に公表された「欧州水素戦略」であろう。 戦略で、欧州連合(EU)は「グリーン水素」を戦略的産業と位置付けた。この動きには、脱炭素政策と一体化したEU、特にドイツの通商政策を垣間見ることができる。 EUが石炭などからの脱却を目指す中、独シーメンスに代表される重工メーカーもポートフォリオを転換し、石炭火力からの撤退、再エネ・水電解事業への傾斜を深めてきた。 そして、欧州水素戦略発表の2カ月後、シーメンスは独最大の水素製造プラントを建設すると発表したのである。 この間、日本は「天然ガスと省エネこそ『低炭素』」という論陣を張ってきたが、EUはゲームのルールを「低炭素」から「脱炭素」に変え、通商政策と合わせて市場の覇権を握ろうという動きを見せている。 日本の実情を踏まえ、50年を見据えた際、再エネ普及、水素・アンモニア混焼といった施策は確かに有効な打ち手である。しかし、それだけでは脱炭素に至らない。 CO2の回収・利用・貯留(CCUS)といった施策も必要になるであろうし、受け身対応ばかりでは、気候変動コストも今後、上昇の一途をたどるであろう。 短期的な対応はもちろん必要であるが、新たな「市場(ゲーム)」で、どのような国益を勝ち取るかといった大局的な視点も必要である』、「日本は「天然ガスと省エネこそ『低炭素』」という論陣を張ってきたが、EUはゲームのルールを「低炭素」から「脱炭素」に変え、通商政策と合わせて市場の覇権を握ろうという動きを見せている」、日本も「新たな「市場(ゲーム)」で、どのような国益を勝ち取るかといった大局的な視点も必要である」、その通りだろう。
第四に、.3月3日付けエコノミストOnline「再エネ推進派でも意外と知らない「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の違い」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210302/se1/00m/020/032000c
・『現在、脱炭素が産業界の一大テーマになったことから水素に注目が集まるが、現状、日本では石油精製での利用や食品添加物などの産業用原料に使う、という小さなマーケットに過ぎない。では、今後、大規模消費が期待されるエネルギー用途としての水素の生産、貯蔵・運搬、利活用はどのように変化していくのである』、興味深そうだ。
・『3タイプある水素 水素は、原料や生産過程での二酸化炭素(CO2)排出の有無によって三つに大別される。 現状では主に化石燃料由来の副生成品としての水素が市場に出回っており、これらは「グレー水素」と呼ばれる。製造過程でCO2が出るからだ。 その手順は、(1)天然ガス中のメタン(CH4)や石油製品であるナフサなど、炭素と水素から成る物質(炭化水素)を水蒸気と化学反応させ、水素と一酸化炭素(CO)に分ける、 (2)COについては、水蒸気と化学反応させ水素とCO2に分ける ──という2段階だ。 「グレー水素」の製造過程で出るCO2を回収・利用・貯留する技術(CCUS)と合わせることで、水素の製造過程全体で見ればほぼ「CO2ゼロ」にできる。このような水素は「ブルー水素」と呼ばれる。 「貯留」は地中に埋めること、「利用」はガス田や油田に圧入して産出量を増やす技術「増進回収法(EOR)」などを指す。 ブルー水素は、原料である化石燃料のコストが低いことから、グリーン水素に比べても総コストが低いとされる。 しかしCCUSには「実際に地中貯留で漏れが生じていないか」「地中環境への影響は」といった評価基準がない。設備投資も高く、開発途上の技術である。 また、貯留が大量かつ経済的に可能な場所が、米国、豪州、中東産油国などに限られることから、ブルー水素は輸入が基本となる。 水を再生可能エネルギーで電気分解し、製造過程でまったくCO2を発しないのが「グリーン水素」だ。 ただ、水電解の市場は成熟しておらず、導入費用も高い。世界的にはコストが低下している再生可能エネルギーも、日本ではまだ高く、水素製造コストを下げるためには、更なるコスト削減が求められる。 最近5~10年は、脱炭素という観点からの水素はグリーンとブルーに限定されているが、水素の市場拡大のためには、グレーも一定の役割を果たすことには留意が必要だ。 例えば既に30万台以上普及している家庭用エネファームなどの燃料電池は天然ガスを水素に変換して利用しているが、発電効率が高いので省エネとCO2排出削減に一定の役割を果たしている』、「世界的にはコストが低下している再生可能エネルギーも、日本ではまだ高く、水素製造コストを下げるためには、更なるコスト削減が求められる」、そのためには「再生可能エネルギー」購入価格の弾力的見直しが必要だ。
・『アンモニア運搬 現実的 貯蔵・運搬についても数種類あるが(表)、今後数年単位で商用化が進むのはアンモニアに合成しての貯蔵・運搬とみられている。 これは、水素(H2)と、空気中の窒素(N2)を反応させてアンモニアにして運搬する手段である。 主な用途は火力発電所の燃料で、水素に戻さず、アンモニアのまま、石炭と混焼させる。アンモニアは従来、農業肥料としても世界中で取引されており、貯蔵・運搬・取引方法が確立されている。ただし、劇物であるアンモニアは、街中に持ち込むような分散型利用には適さない。 他には、液化や圧縮がある。 液化は水素ガスをマイナス253度に下げ、体積を約800分の1にすることで、貯蔵・運搬スペースをコンパクトにできる。 海外から天然ガスを輸入する際に液化するのと同じ原理だ。 ただ、ここまでの低温にするために、要するエネルギーを削減することが課題だ。 同じガスから液体にするのにも、トルエンを使う手法がある。 水素をトルエンと反応させて、メチルシクロヘキサン(MCH)に転換し、液状で貯蔵・運搬する「有機ケミカルハイドライド法」だ。 水素ガスの体積を約500分の1に圧縮可能で、常温・常圧で輸送でき、既存の化学タンクやタンカーを使えるのがメリットだ。 水素利用地で、触媒を用いて水素を分離する(脱水素)が、この際、熱の投入が必要であることが課題であろう。 圧縮は、ガスのまま圧縮して貯蔵・運搬するが、圧縮にも限度があり、大量輸送には向かない。製造拠点から近い場所で使う「地産地消」向けだ』、「アンモニアにして運搬する」のは慣れ親しんだ方法だ。
・『大規模供給網は必須 では、水素の利用はどの分野で広がるのだろうか。 国際エネルギー機関(IEA)の「Energy Technology Perspectives 2020」によると、世界の水素需要は2019年の7500万トンから50年には約3億トンになるとの見通しもある(図)。 欧州では、まずは、主に軽工業などの小規模産業向けから開始し、徐々に市場を広げる戦略を取る。これに対して、日本では火力発電所での大規模需要を目指す。 というのは、電力業界にも脱炭素が求められる中、日本では再生可能エネルギーの急速な伸びが容易ではなく、東京電力福島第1原発事故後は、原発再稼働も困難になっている。 こうした状況では、既存の石炭火力発電所へのアンモニア混焼や水素・アンモニア専焼ガス火力発電が重要なオプションとなる。 電力会社の水素利用が進めば、日本では、大口需要が一気に発生する。1ギガワットの水素専焼発電所が年間に消費する水素の量は約20万トンであり、燃料電池車(FCV)の200万台分に相当する。欧州の市場とは対照的だ。 しかし、まだ、大口需要に対応できる水素サプライチェーンが確立されていない。 水素の大口需要に対しては、資源会社や商社のノウハウが期待できる。資源を安定・大量調達し、需要家を確保・整理する能力に長(た)けているからだ。 しかし、資源会社や商社にとっても水素は新領域で、設備投資も膨大になる。初期には取引価格も安定しないだろう。 新たなエネルギー市場が生まれようとする中、民間のみの資金力・価格調整力では限界がある。 研究開発や設備投資を支援する補助金や投融資制度、カーボンプライシングなどで化石燃料価格を高く設定するといった公的制度の議論は避けて通れないだろう』、説得力ある主張で、同感である。特に、「カーボンプライシングなどで化石燃料価格を高く設定する」、この方向を積極的に推進すべきだろう。
先ずは、2月2日付けデイリー新潮「「中国製風車」が倒壊事故 同社の風車は全国に400基も」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/02020556/?all=1
・『傾き始めた菅政権の切り札「脱炭素化」の出鼻をくじいた格好だ。2050年までの温室効果ガス実質ゼロを目指し、再生可能エネルギーが脚光を浴びている。その折も折、長崎に設置されていた中国製風車が根元から倒壊したのだ。 「ドーン!」 けたたましい音が轟いたのは、昨年10月1日13時頃。長崎県松浦市に設置されていた小型風力発電機が根元から倒壊した。 小型とはいえ、発電機は高さ20メートルほど。風速6メートルなら年間8万キロワット以上を発電することが可能だ。事業主の企業は経産省が所管するFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)に参画し、2018年に都内にあるHYエネルギーという会社が約2千万円で販売しているこの風車を購入し、設置していたのである。 事情通によれば、 「HYエネルギーは中国人が経営者で、かつては自民党の二階俊博幹事長の次男が役員として名を連ねたことで知られていました。この発電機を購入した事業主はメンテナンス費用を差し引いても年間200万円ほどの利益が上がる予定でした。10年で初期投資を回収できるはずだったのに、それが2年で倒れてしまったのですから、大損です」 製造元はGHREという中国の会社。風車は中国の工場で作られたため、販売元のHYエネルギーとGHREの間で責任のなすり合いとなっているのである』、「小型風力発電機が根元から倒壊」、僅か「2年で倒れ」たとは、いかにも「中国製」らしい。「販売」した「HYエネルギーは中国人が経営者で、かつては自民党の二階俊博幹事長の次男が役員」、なるほど。
・『ボルトが折れる 事故直前に辞任するも、今も事故対応をしているHYエネルギーの前代表が言う。 「今回の事故は、タワーと土台を溶接で繋いでいる部分の少し下、タワーの下部がポキッと折れてしまったことで起きました」 その原因については、「風車の羽根を結合する際、ボルトが強度不足だった可能性があります。羽根がガタガタと揺れてしまい、その振動でタワーに過重な負担がかかり、倒壊したのではないか。実際、GHREのボルトは設置の際によく折れていて、GHREの工場に改善の要求を出していたんです」 かたや、GHRE日本事業部のマネージャーは上海から記者に電話をかけてきて、こう反論するのだ。 「弊社からすればHYエネルギーの主張は事実に反します。ボルトの強度については出荷前に第三者機構によるレポートで確認済みだからです。向こうの主張はエビデンスに基づいているのでしょうか。今回の事故については調査中で、本当の原因が突き止められ次第、公表する予定です」 倒壊から3カ月以上が経過しても、両社の主張は平行線を辿るばかり。さらに不安視されるのは、 「ウチが手掛けた同じ型の発電機は全国で100基ほどが稼働しています。目視と音の検査で異常はありませんでしたが、今後もっと詳しい検査を行う予定です」(HYエネルギーの前代表) 他の企業が設置したものも含めると、GHRE製の小型風車は日本で400基が稼働中とも言われている。 経産省の担当者に聞くと、 「小型風力発電機について、設置されている数は把握できていません」』、原因は不明だが、「GHRE製の小型風車は日本で400基が稼働中」、恐ろしい話だ。
次に、本年2月21日付けエコノミストOnline「水素1 水電解装置 “グリーン水素”の大量製造時代へ 世界で400超のプロジェ…=中園敦二」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210302/se1/00m/020/027000c
・『“グリーン水素”の大量製造時代へ 世界で400超のプロジェクト 水電解装置は風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーにより生み出された電力余剰分で水を電気分解して水素に変換し、エネルギーを貯蔵することができる。グリーン水素を製造する市場でいかに高効率に水素を製造するか。水電解装置の需要が高まり、国内外の企業が参入している。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などによると、実用技術としては、(1)アルカリ水電解法、(2)固体高分子型(PEM型)水電解法──の2種類がある。アルカリ水電解法はスケールメリットがあり、特に大規模プラントで低コスト化が期待できる。PEM型水電解法は同じ面積に流す電流(電流密度)がアルカリ水電解法に比べて高いため装置を小型化できるが、部材が高価でコストがかさむ。ただ、最近の活発な研究開発で規模、コストとも差は縮まっているという』、なるほど。
・『旭化成が世界最大級 国内で注目されるのが旭化成だ。2020年7月に実証試験を兼ねて本格稼働を始めた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R)にアルカリ水電解装置を納入した。 水を電気分解して水素を発生させる水電解装置は、消費電力が大きいほど、多量の水素を作り出すことができる。旭化成は、10メガワットという大きな電力で水素を発生させる装置を開発。単体の水電解装置としては世界最大級という。世界市場で高いシェアを誇る自社の食塩電解プロセスを流用して開発が可能となった。同社は装置のコスト低減と長期耐久性検証を続け、展開を狙う。 日立造船はPEM型水電解法の装置を開発し、周辺機器を含めたシステムを販売する。同社は水素にCO2を加えてメタンを作る「メタネーション」技術の開発にも取り組む。 三菱パワーは固体酸化物形燃料電池(SOFC)を扱っているが、SOFCの発電の仕組みを逆反応させて、水から水素と酸素を発生させることで、効率の高い固体酸化物形電解設備(SOEC)となる。今後、水電解装置への応用についても動きが出てくると期待される。 国際エネルギー機関(IEA)などによると、20年6月現在、稼働中の水電解プロジェクトはドイツ、日本などで169件あり、アルカリ水電解法とPEM型水電解法がほぼ二分するが、プロジェクト規模についてはアルカリ水電解法が6割以上を占める。 また、計画中のプロジェクト件数は公表されているものだけで現状の1.6倍の257件に上る。稼働中と合わせると400を超えるプロジェクトが存在する』、「稼働中の水電解プロジェクトはドイツ、日本などで169件あり、アルカリ水電解法とPEM型水電解法がほぼ二分」、「計画中のプロジェクト件数は公表されているものだけで現状の1.6倍の257件」、まだまだこれからのようだ。
・『EUだけで4兆円市場 欧州連合(EU)の水素戦略は30年までに電解装置40ギガワット(1ギガワットは1000メガワット)・水素1000万トン製造を目標にしており、「電解設備コストは1メガワット当たり約1億円で、EUだけで4兆円の市場規模になる。世界的に見ても参入企業は増える」(大手シンクタンク)。海外勢はシーメンス(ドイツ)、Nel(ノルウェー)などが設置を進めており、コスト低減のため大型化を図っている。また、ITM(英)は住友商事と協定を結び、住商は日本での販売代理店となった。 日本企業も海外で動いている。三菱重工業は豪州のH2Uインベストメンツ社へ出資し、同社が検討中の水電解事業に参画する。再エネから水素を製造して地域への供給を目指す。また、ドイツでバッテンフォール(スウェーデン)、シェル(英蘭)などと協働して、グリーン水素製造・供給・利用事業の実現可能性の検討を開始。閉鎖予定の石炭火力発電所跡地で100メガワット規模の水電解プラントを建設する。 ただ、日本企業は「国内需要がほとんどなかったこともあり、装置の大型化に5年以上遅れている。このままでは欧米メーカーに太刀打ちできなくなる」(業界関係者)と懸念する声もある』、「日本企業は」「装置の大型化に5年以上遅れている」、またまた後塵を拝するとはやれやれだ。
第三に、.3月3日付けエコノミストOnlineが掲載した日本総合研究所ディレクタの段野孝一郎氏による「脱炭素の切り札?にわかに脚光を浴びる「アンモニア発電」とは何か」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210302/se1/00m/020/035000c
・『主に農業肥料用途として使われているアンモニア(NH3)が、発電用燃料としてにわかに注目されている。 「二酸化炭素(CO2)フリー」の発電燃料として活用できることが現実味を帯びてきたからだ。 アンモニアの製造方法は100年前に確立された「ハーバー・ボッシュ法」で、天然ガスなどに含まれるメタン(CH4)から分離された水素(H)と、大気中の窒素(N)を高温高圧で合成する。 可燃性があるアンモニアは燃料になり得るが、従来の製造方法では、多大なCO2を排出した。原料として天然ガスなどの化石燃料を使用し、さらに合成プロセスで多量のエネルギーを必要とするためである。 前者については、メタン由来水素を、水を再生可能エネルギーで分解する「グリーン水素」、または、メタン由来水素ではあるが製造工程で出るCO2を回収する「ブルー水素」に置き換えることで削減が可能だ。 後者についても、少ないエネルギーで済む合成プロセスの開発が進む。 こうした新たなプロセスでアンモニアを作れば、CO2フリーのクリーンな発電燃料となる。 ここで、アンモニアでなく、グリーン・ブルー水素をそのまま発電燃料として活用するということも可能ではある。しかし、水素は燃焼速度が速いという特性があり、既存の発電所で混焼させる場合は、同じく燃焼速度が速いガス火力での混焼が主体となる。 この点で、日本はベース電源として石炭火力が多く、石炭はガスと比べて燃焼速度が遅いため、そのままではグリーン・ブルー水素の活用が難しい。 そこで、石炭に近い燃焼速度を持つアンモニアの形に変え、石炭火力発電所のCO2排出量を下げる目的で使おうという動きが活発化している』、「水素は燃焼速度が速いという特性があり、既存の発電所で混焼させる場合は、同じく燃焼速度が速いガス火力での混焼が主体となる」、「石炭に近い燃焼速度を持つアンモニアの形に変え、石炭火力発電所のCO2排出量を下げる目的で使おうという動きが活発化」、「混焼させる場合は」「燃焼速度」が問題になるようだ。
・『今治・伊藤忠が利用検討 国内では、電力・ガス・商社・船舶会社などから構成される「グリーンアンモニアコンソーシアム」が、再エネ由来のグリーンアンモニアの普及に向けて活動を進めている。 具体的には、2021年度から、東京電力ホールディングスと中部電力の合弁によるJERA・碧南石炭火力発電所(愛知県)内の出力100万キロワットの発電機で、アンモニアを20%程度混焼させる実証実験を検討している。 石炭燃料代替以外の用途では、ガスタービン、船舶用ディーゼルエンジンなどに活用することを念頭に研究開発が行われている。 今治造船・三井E&Sマシナリー・日本海事協会・伊藤忠エネクス・伊藤忠商事は、「アンモニア焚(だ)き機関」を搭載する船舶を共同で開発することに合意している。 加えて、アンモニアは水素のエネルギーキャリア(運搬方法)としても期待されている。 水素は密度が小さいため、(1)液化、(2)圧縮、(3)有機ハイドライド(トルエンと合成)、(4)水素吸蔵合金 ──といった常温常圧以外での輸送方法が必要である。 いずれも輸送のための新たなインフラ構築が必要になる。 一方、前述したように、アンモニアは肥料用途での商用実績があり、輸送インフラも整備されており、使用時に水素を取り出すことなく燃焼させることが可能であるため、既存のアンモニア流通経路が活用できる。 現在、アンモニアは、(1)肥料用途が主体で、需要地が偏在する、(2)原料は天然ガスと大気であり供給地の制約が少ない、(3)ハーバー・ボッシュ法が確立されており供給地の制約が少ない ──といったことから、需要地近接型の工場立地で、地産地消がなされてきた。 国内では、主に工業ガス会社が供給や製造、輸送を担い、肥料や化学用途の需要家が消費してきた。 しかし今後は、脱炭素化での用途が新たに増加することが見込まれる。 現在、国内では年間約100万トンが消費されているが、経済産業省資源エネルギー庁は、発電や船舶などの「燃料用」として、30年には300万トンの需要を想定する。 需要増に対応するには、国内の供給網だけでなく、海外からの調達が必要になる。 具体的には、ブルー水素由来のアンモニアが製造可能な産油・ガス国や、グリーン水素由来のアンモニアが製造可能な水準まで再生可能エネルギーの製造コストが安価になると見込まれる北米・豪州・中東からの輸入も必要になるだろう。 国内の輸送は既存インフラが活用できる見通しであるが、新規用途として発電側で混焼させるための設備投資(アンモニア貯蔵タンクや混焼設備)も必要となる』、「水素」で運搬するよりは、確かに実績のある「アンモニア」で運搬する方がよさそうだ。
・『課題はNOX、臭い 脱炭素としてのアンモニア利用にも課題は存在する。 その一つは、Nを含むことであり、燃焼時に窒素酸化物(NOX)の排出量の増加が見込まれる点だ。CO2が減ったとしても、NOXが増えてしまえば社会的影響は大きい。 現在では、アンモニアをボイラーに投入する位置を工夫することによってボイラー内でのアンモニアの燃焼性を改善させること、既存の脱硝装置を活用することなどにより、大幅に改善が図れることが判明してきている。 二つ目は、アンモニア特有の臭気である。 小型のアンモニア燃料電池の開発なども進むが、一般家庭・住宅が存在する地域での使用は、万が一の漏えいを想定すると現実的ではない。 アンモニアはあくまでもBtoB(法人対法人)分野での脱炭素用途に使われるものと割り切った方がよいだろう。 水素・アンモニアの利用自体は国内でもたびたび盛り上がってきていたが、世界市場で潮目が変わったのは20年7月に公表された「欧州水素戦略」であろう。 戦略で、欧州連合(EU)は「グリーン水素」を戦略的産業と位置付けた。この動きには、脱炭素政策と一体化したEU、特にドイツの通商政策を垣間見ることができる。 EUが石炭などからの脱却を目指す中、独シーメンスに代表される重工メーカーもポートフォリオを転換し、石炭火力からの撤退、再エネ・水電解事業への傾斜を深めてきた。 そして、欧州水素戦略発表の2カ月後、シーメンスは独最大の水素製造プラントを建設すると発表したのである。 この間、日本は「天然ガスと省エネこそ『低炭素』」という論陣を張ってきたが、EUはゲームのルールを「低炭素」から「脱炭素」に変え、通商政策と合わせて市場の覇権を握ろうという動きを見せている。 日本の実情を踏まえ、50年を見据えた際、再エネ普及、水素・アンモニア混焼といった施策は確かに有効な打ち手である。しかし、それだけでは脱炭素に至らない。 CO2の回収・利用・貯留(CCUS)といった施策も必要になるであろうし、受け身対応ばかりでは、気候変動コストも今後、上昇の一途をたどるであろう。 短期的な対応はもちろん必要であるが、新たな「市場(ゲーム)」で、どのような国益を勝ち取るかといった大局的な視点も必要である』、「日本は「天然ガスと省エネこそ『低炭素』」という論陣を張ってきたが、EUはゲームのルールを「低炭素」から「脱炭素」に変え、通商政策と合わせて市場の覇権を握ろうという動きを見せている」、日本も「新たな「市場(ゲーム)」で、どのような国益を勝ち取るかといった大局的な視点も必要である」、その通りだろう。
第四に、.3月3日付けエコノミストOnline「再エネ推進派でも意外と知らない「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の違い」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210302/se1/00m/020/032000c
・『現在、脱炭素が産業界の一大テーマになったことから水素に注目が集まるが、現状、日本では石油精製での利用や食品添加物などの産業用原料に使う、という小さなマーケットに過ぎない。では、今後、大規模消費が期待されるエネルギー用途としての水素の生産、貯蔵・運搬、利活用はどのように変化していくのである』、興味深そうだ。
・『3タイプある水素 水素は、原料や生産過程での二酸化炭素(CO2)排出の有無によって三つに大別される。 現状では主に化石燃料由来の副生成品としての水素が市場に出回っており、これらは「グレー水素」と呼ばれる。製造過程でCO2が出るからだ。 その手順は、(1)天然ガス中のメタン(CH4)や石油製品であるナフサなど、炭素と水素から成る物質(炭化水素)を水蒸気と化学反応させ、水素と一酸化炭素(CO)に分ける、 (2)COについては、水蒸気と化学反応させ水素とCO2に分ける ──という2段階だ。 「グレー水素」の製造過程で出るCO2を回収・利用・貯留する技術(CCUS)と合わせることで、水素の製造過程全体で見ればほぼ「CO2ゼロ」にできる。このような水素は「ブルー水素」と呼ばれる。 「貯留」は地中に埋めること、「利用」はガス田や油田に圧入して産出量を増やす技術「増進回収法(EOR)」などを指す。 ブルー水素は、原料である化石燃料のコストが低いことから、グリーン水素に比べても総コストが低いとされる。 しかしCCUSには「実際に地中貯留で漏れが生じていないか」「地中環境への影響は」といった評価基準がない。設備投資も高く、開発途上の技術である。 また、貯留が大量かつ経済的に可能な場所が、米国、豪州、中東産油国などに限られることから、ブルー水素は輸入が基本となる。 水を再生可能エネルギーで電気分解し、製造過程でまったくCO2を発しないのが「グリーン水素」だ。 ただ、水電解の市場は成熟しておらず、導入費用も高い。世界的にはコストが低下している再生可能エネルギーも、日本ではまだ高く、水素製造コストを下げるためには、更なるコスト削減が求められる。 最近5~10年は、脱炭素という観点からの水素はグリーンとブルーに限定されているが、水素の市場拡大のためには、グレーも一定の役割を果たすことには留意が必要だ。 例えば既に30万台以上普及している家庭用エネファームなどの燃料電池は天然ガスを水素に変換して利用しているが、発電効率が高いので省エネとCO2排出削減に一定の役割を果たしている』、「世界的にはコストが低下している再生可能エネルギーも、日本ではまだ高く、水素製造コストを下げるためには、更なるコスト削減が求められる」、そのためには「再生可能エネルギー」購入価格の弾力的見直しが必要だ。
・『アンモニア運搬 現実的 貯蔵・運搬についても数種類あるが(表)、今後数年単位で商用化が進むのはアンモニアに合成しての貯蔵・運搬とみられている。 これは、水素(H2)と、空気中の窒素(N2)を反応させてアンモニアにして運搬する手段である。 主な用途は火力発電所の燃料で、水素に戻さず、アンモニアのまま、石炭と混焼させる。アンモニアは従来、農業肥料としても世界中で取引されており、貯蔵・運搬・取引方法が確立されている。ただし、劇物であるアンモニアは、街中に持ち込むような分散型利用には適さない。 他には、液化や圧縮がある。 液化は水素ガスをマイナス253度に下げ、体積を約800分の1にすることで、貯蔵・運搬スペースをコンパクトにできる。 海外から天然ガスを輸入する際に液化するのと同じ原理だ。 ただ、ここまでの低温にするために、要するエネルギーを削減することが課題だ。 同じガスから液体にするのにも、トルエンを使う手法がある。 水素をトルエンと反応させて、メチルシクロヘキサン(MCH)に転換し、液状で貯蔵・運搬する「有機ケミカルハイドライド法」だ。 水素ガスの体積を約500分の1に圧縮可能で、常温・常圧で輸送でき、既存の化学タンクやタンカーを使えるのがメリットだ。 水素利用地で、触媒を用いて水素を分離する(脱水素)が、この際、熱の投入が必要であることが課題であろう。 圧縮は、ガスのまま圧縮して貯蔵・運搬するが、圧縮にも限度があり、大量輸送には向かない。製造拠点から近い場所で使う「地産地消」向けだ』、「アンモニアにして運搬する」のは慣れ親しんだ方法だ。
・『大規模供給網は必須 では、水素の利用はどの分野で広がるのだろうか。 国際エネルギー機関(IEA)の「Energy Technology Perspectives 2020」によると、世界の水素需要は2019年の7500万トンから50年には約3億トンになるとの見通しもある(図)。 欧州では、まずは、主に軽工業などの小規模産業向けから開始し、徐々に市場を広げる戦略を取る。これに対して、日本では火力発電所での大規模需要を目指す。 というのは、電力業界にも脱炭素が求められる中、日本では再生可能エネルギーの急速な伸びが容易ではなく、東京電力福島第1原発事故後は、原発再稼働も困難になっている。 こうした状況では、既存の石炭火力発電所へのアンモニア混焼や水素・アンモニア専焼ガス火力発電が重要なオプションとなる。 電力会社の水素利用が進めば、日本では、大口需要が一気に発生する。1ギガワットの水素専焼発電所が年間に消費する水素の量は約20万トンであり、燃料電池車(FCV)の200万台分に相当する。欧州の市場とは対照的だ。 しかし、まだ、大口需要に対応できる水素サプライチェーンが確立されていない。 水素の大口需要に対しては、資源会社や商社のノウハウが期待できる。資源を安定・大量調達し、需要家を確保・整理する能力に長(た)けているからだ。 しかし、資源会社や商社にとっても水素は新領域で、設備投資も膨大になる。初期には取引価格も安定しないだろう。 新たなエネルギー市場が生まれようとする中、民間のみの資金力・価格調整力では限界がある。 研究開発や設備投資を支援する補助金や投融資制度、カーボンプライシングなどで化石燃料価格を高く設定するといった公的制度の議論は避けて通れないだろう』、説得力ある主張で、同感である。特に、「カーボンプライシングなどで化石燃料価格を高く設定する」、この方向を積極的に推進すべきだろう。
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